原発事故のツケを人間・人類側は払いつづけられるか,原発事故の後始末と廃炉の作業は延々と未来に永続していく

ああ,本当に恐ろしいことになっている,原発の事故の後始末やそして廃炉だとかは「気の遠くなるような」作業だと告白されている,「原爆の双生児である原発」を電力を生産させるために利用したツケは,人類・人間の未来に向けて,果てしなく重くつらい債務を課した 

 

  要点:1 最近の新聞に出ていた原発関連の記事を数点,そのまま引用するが,われわれが原発を導入・利用した大失敗は,いまや自明に過ぎる事態となった。
  要点:2 真山 仁が語るの奇妙な原発「推進」感 


 「〈社説余滴〉横たわったままの原子炉」,村山知博(むらやま・ともひろ,科学社説担当)『朝日新聞』2019年12月15日朝刊6面「オピニオン」

 その大きな鋼のカプセルは7年半もの間,広島県呉市の工場の倉庫で横たわったままだ。円筒形で内径は7メートル以上あり,立てれば高さは20メートルを超す。試験で高温にさらされたせいか,表面は茶色っぽい。〔これは〕原子炉圧力容器といい,中で核燃料を燃やして湯を沸かす装置である。Jパワー(電源開発)が青森県大間町で建設している原発の心臓部に据えられる。

 大間原発は2014年の営業運転をめざして2008年に着工したが,福島で原発事故が起きたため主な工事が中断した。いま,原子力規制委員会が審査しており,運転が始まるのは早くても2016年度ごろになる。圧力容器が広島から青森に運ばれる日は,まだ先だ。

 昨年,大間町の建設現場を訪れる機会があった。津軽海峡を望む敷地は広大で,原子炉建屋用に組まれた足場の威容が,いまも目に焼きついている。大きな圧力容器も現場に運ばれれば,いくつもある設備の一つにすぎなくなる。原発という施設は,とにかく巨大で複雑なのだ。

 なにしろ,最新鋭のものは百数十万キロワットもの出力がある。建設に数千億円かかっても十分に元がとれる,というのが長いこと業界の常識だった。ところが最近,海外では再生可能エネルギーのコストが下がり,安全対策費のかさむ原発が太刀打ちできなくなっている。

 補注)最新鋭のLNGを焚く火力発電方式では,最大出力が百数十万キロワットのものがすでに稼働している。燃料効率はLNGを利用する「コンバインドサイクル」方式の発電だと,その効率は60%を超える水準まで開発され,実用化している。他方の原発はあいもかわらず3分の1であり,計画されている改良型でもそれに数%の足す程度でしかない。同じ火力でも原子力とLNGとでは勝負がついており,それも大差である。

〔記事に戻る→〕 吹いてくる風で風車を回し,降り注ぐ日光を太陽光パネルで受け止める。再エネ発電は原発と違ってシンプルだから,普及すればするほど安くなるのだ。天候に左右されるため電力の安定供給に不安があるものの,諸外国はさまざまな工夫で弱点を克服している。かたや原発には事故のリスクがつきまとい,放射性廃棄物の処分という難問もなかなか解決できない。日本も,そろそろ再エネに軸足を移す潮時だ。

 「原発の技術を失うわけにはいかない」という声もある。だからといって,各国がしのぎを削る再エネの技術開発やビジネスに乗り遅れていいはずはない。すでに風車や太陽光パネルの分野では,日本企業は存在感を失いつつある。もう原発の新設を打ち止めにしては。横たわる圧力容器をみて,そう思った。(引用終わり)

 

 「〈廃炉時代〉(上)原発解体,後始末に数十年 廃棄物処分,メド立たず」日本経済新聞』2019年12月16日10面「科学技術」

 日本で原子力発電が始まって60年近くが過ぎ,運転を終えた原発を解体する本格的な廃炉時代を迎えた。一般の商用原発では18基の廃炉が決まり,今後も増える見通しだ。東京電力福島第1原発事故の影響で安全規制が厳しくなり,研究用の原子力施設も廃止が続く。後始末の作業は数十年かかるうえ,廃棄物の行き先が決まっておらず,出口は遠い。  

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 12月6日,静岡県御前崎市にある中部電力浜岡原発1,2号機に入った。2009年に稼働をやめ,全国でも作業が先行する原発だ。2号機の原子炉建屋内では原子炉の解体に備え,炉内の放射性物質の汚染を減らす作業の準備をしていた。圧力容器や配管の内側表面にできた放射性物質を含む膜を薬品で溶かして除去する。

 隣接するタービン建屋では原子炉で発生した熱エネルギーを電気に変える巨大なタービンと発電機を撤去,解体が進む。タービンなどの部品をノコギリ状の刃で切断する。研磨剤を吹き付けて表面の放射性物質を削りとって除染する。中部電浜岡原発の山元章生廃止措置部長は「安全の確保を最優先に計画的に進めている」と話す。

 廃炉の〔段階はこうなるわけで〕

  第1段階は核燃料搬出などの準備期間,

  第2段階でタービンなど原子炉以外の設備撤去,

  第3段階が原子炉解体,

  第4段階で建物を解体する。

 浜岡1,2号機は第2段階の後半で,2023年度に第3段階に入り,2036年度までに建物の解体を終える予定だ。

 解体技術は確立しているが,問題は放射性廃棄物の量をどう減らすかだ。日本全体では一般の原発で18基の廃炉が決まった。2011年に炉心溶融事故を起こした福島第1原発の6基を含めると24基。日本で稼働した57基の約4割を占める。40基近くの原子炉の廃止が決まっている米国などに次ぐ規模だ。

 補注)ところで,日本の国土面積は約37万km²,アメリカはアラスカ州も含めて約983万km²である。原発1基当たりのその平均面積を求めて比較するのも,ある一定の意味がある。

〔記事に戻る→〕 低レベル放射性廃棄物は浜岡1,2号機では約2万トンに達する。全国18基で16万トン超にのぼる。第3段階での発生が多く,遠からぬ将来に廃棄物の行き先が問題になる。廃棄物は汚染レベルの高い順に「L1」「L2」「L3」の3段階に分かれ,電力会社が処分する責任を負う。受け入れ自治体を探すのは容易ではなく,処分場のメドはほとんどたたない。

 地下70メートルより深くに約10万年埋めておく必要があるL1は規制基準も整備されていない。1998年に運転を止めて最初に廃炉作業を始めた日本原子力発電の東海原発茨城県)は真っ先に影響が出そうだ。「廃棄物を入れる容器の基準ができないと,原子炉の解体を始められない」(日本原電)。当初は2017年度に廃炉完了の予定だったが,廃棄物問題もあって2030年度に変更している。

 補注)それでいて,「東海第2,想定超える見積額 原発安全対策工事費,予定額との差700億円」『朝日新聞』2019年12月17日朝刊3面「総合」という報道もあった。

 福島第1事故の2011年以前に廃炉が決まっていたのは,日本初の商用炉である東海原発,浜岡1,2号機の3基のみだ。同事故後,津波対策などを強化した新規制基準が施行された。原発の運転を原則40年に限定した。1度にかぎり20年の延長が可能だが,老朽化の影響を原子力規制委員会が厳しく審査する。

 補注)参考になると思うので触れておくが,鉄道で新幹線用車両はほぼ20年間で廃車にされている。

 電力各社は安全対策費と原発の再稼働で得られる利益をてんびんにかけて,経済性にみあわない原発廃炉を決める。廃炉の数が増えるうえに処分場の整備も滞れば,全国の原発放射性廃棄物が敷地内に残りつづける。廃炉作業が遅れる恐れもある。廃炉時代にやるべきことが問われている。


 「〈廃炉時代〉(下)研究機関でも滞る作業 『甘い見積もり』頭抱える規制委」日本経済新聞』2019年12月23日朝刊11面「科学技術」

 日本で唯一,廃炉を終えて更地となった原子炉がある。日本原子力研究開発機構の動力試験炉「JPDR」(茨城県東海村)だ。1963年に日本初の原子力発電に成功し,1996年に更地になった。日本初の廃炉に成功したはずの原子力機構が廃炉をめぐって揺れている。

 「技術的,時間的に見積もりが甘い」。11月28日,原子力規制委員会の田中 知委員は険しい表情で原子力機構に改善を求めた。規制委による同機構の東海再処理施設(茨城県東海村)の監視チーム会合では規制委側から厳しい指摘が相次ぐ。

 東海再処理施設は原子炉で使い終わった核燃料をリサイクルする日本初の再処理工場だった。2007年に運転が終わり,原発廃炉に相当する廃止措置を進めている。

 70年にわたり国費約1兆円をかける一大事業だが,トラブルで進んでいない。廃止措置といえば,運転をやめて設備などを取り除いて,建物を解体するのが一般的だが,同工場はなぜか「稼働」を許されている。

 同工場には高い放射線を長期間出す廃液が約350立方メートル残る。液体のままでは漏洩した場合のリスクが高い。本格的な廃止措置の前に,工場の一部を稼働し廃液を溶けたガラスと混ぜて固める「ガラス固化体」を作る必要がある。この作業が滞っている。7月に約2年ぶりに再開したが漏電で停止。原子力機構は再開まで最長2年かかる可能性を規制委に報告した。

 規制委の更田豊志委員長は「ぬかるみに足を取られているが,発電炉のように駄目ならやめなさいというわけにもいかない」と頭を抱える。収益増につながる再稼働に向けて,電力会社は原発の安全審査に必死に取り組む。一方,研究機関の廃止措置は積極的に進める動機づけが難しい。

 原子力機構は前身の組織から,日本の原子力研究を黎明期から支えてきた。ただ,福島第1原発事故後の規制強化や施設の老朽化にくわえ,同機構の安全管理の不備に厳しい目が向けられ,機構の研究施設の多くは廃止が決まった。機構の原子力関連施設の半数近くの40超にのぼる。

 一方で研究炉などの新設は予算が付かず停滞している。国が次世代原子炉の柱に据えてきた高速炉開発はトラブル続きだった高速増殖炉もんじゅ福井県敦賀市)の廃炉を迫られた。研究者のなかからは「もはや日本廃炉機構だ」と皮肉る声も出る。2018年12月,機構は今後70年で79施設の廃止措置に1.9兆円が必要だとの試算を示した。

 原子力施設の廃止措置に詳しい福井大学の柳原 敏特命教授は「施設ごとの計画や工程管理が不十分。作業が遅れれば,費用は増えつづける」と指摘する。

 原子力機構は大学や企業が保有している研究・教育用の研究炉などの廃炉でも重要な役割を担う。廃炉作業などで出た放射性廃棄物の処分を担うことが2008年に決まっているためだ。廃棄物を引き取る対象は大学,企業,病院など約2400事業者にも及ぶ。

 処分場所を確保する必要があるが,10年以上たったいまも「具体的な見通しは立っていない」(原子力機構)。原子炉の解体に着手できない大学もある。処分先が決まらなければ廃炉で出た放射性廃棄物は溜まりつづける。

 補注)いわゆる原発の操業は,その後景においては「トイレのないマンション」状態の継続を余儀なくされているという話題である。この難題はいまだに解決不能であるだけでなく,解決の見通しすらつけられない,いわばみっともない状況に置かれてきた。

 福島第1事故で失った原子力への信頼をこれ以上損なわないためにも研究施設の廃止措置に失敗は許されない。原子力機構は重責を負っている。(引用終わり)

 こういってはなんだが,「福島第1事故で失った原子力への信頼」というものからして,もともと虚像の「想定」であったのだから,事故を起こしていないほかの原発群に対して,このような発言をすることじたい,幻想曲を奏でているに過ぎない。実際としては無意味は発言である。場合によっては有害無益。


 原発廃炉,漂流する処分策 放射性廃棄物16万トン超 『10万年埋設』適地少なく」nikkei.com,2019年12月16日,https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20191216&……

 原子力発電所廃炉が相次ぎ,今後大量の放射性廃棄物が発生する。廃炉予定の18基について集計すると16万トン超にのぼり,これら廃棄物のゆき先はいまだに決まっていない。地下に10万年埋めておく必要がある放射能レベルが比較的高い廃棄物の規制基準はまだない。規制の整備や処分地の選定が急務だ。

 東京電力ホールディングスは〔2019年〕9月末,福島第2原発4基(福島県)の廃炉経済産業省に届け出た。2011年の東日本大震災炉心溶融事故を起こし特殊な廃炉作業が進む福島第1原発を除くと,一般の原発18基で廃炉が今後進む。

 原発立地自治体の元助役から幹部らが金品を受け取っていた関西電力でも福井県にある原発4基の廃炉が決まっている。本格的な廃炉時代を迎え放射性廃棄物の処分が大きな課題になる。

 2017年の原子炉等規制法の改正に伴い電力各社は廃炉に関する基本方針を2018年12月までに発表し,今後の廃炉に伴う放射能レベルごとの廃棄物を試算した。集計すると,18基で約16万5000トンの放射性廃棄物が発生するみこみだ。

 国内で排出される産業廃棄物の約3億9000万トン(2017年度)に比べるとわずかだが,危険な放射能を帯び厳重な管理が必要だ。核燃料近くにある機器ほど放射能に汚染され,規制は放射能レベルの高い順から3段階に分かれる。各レベルに応じて処分方法も決まっている。もっとも低いレベルには原発内の配管やコンクリートなどがあり,穴を掘って地表に近い場所に埋める。

 課題は,このなかでもっともレベルが高く厳しい管理が求められる「L1」の規制基準が定まっていないことだ。原子炉で使っていた制御棒や核燃料を入れていた箱などが該当し,全体の2%を占める。規制庁は基本方針を示しているが,埋設施設に求める要件など詳細を示しておらず,電力各社が具体的な検討をできない状況だ。

 原子力規制庁はこれまで「事業者が処分の方針を示さないと規制基準は作れない」との立場だった。一方の電力業界は「規制を決めてもらわないと場所も設計方針も決められない」として基準作りの議論が約1年にわたり,止まっていた。

 「鶏と卵の関係になっていた」。原子力規制委員会の更田豊志委員長は〔12月〕2日,規制側と事業者側のにらみあいについてこう表現し,基準作りを再開する意向を示した。

 規制庁の基本方針でL1は,地下70メートルより深く火山や活断層の影響がない場所に施設を作って埋める。300~400年は電力会社が放射性物質の漏洩を監視し,その後,国が埋めた場所の掘削を規制する。約10万年は地下に埋めておく必要があり管理が大変だ。「規制基準を踏まえ,全国共通課題として協力して処分場の検討をしていく」(電気事業連合会)。

 補注)「300~400年は電力会社が放射性物質の漏洩を監視し,その後,国が埋めた場所の掘削を規制する」という仮定:想定は,疑問しか感じさせない。東電や関電という会社が300~400年にも,間違いなく「いまの・そのままで存続しているか」? 話は超絶演技的に,はるか彼方における「歴史の未来話」である。

 いまから逆に3世紀も4世紀も前を思い出してみた気分になって,はたして,そちらから現在がみえていたかを考えてみればいい。廃炉問題に関する「未来観」は想像を絶する,なんというかSF的な展望までが必要である。

〔記事に戻る→〕 基準ができても処分が進むわけではない。膨大な廃棄物を埋める処分場のメドがほとんど立っていないからだ。関電の不祥事で原子力への不信が強まっていることも足かせとなる恐れがある。

 福島第1原発事故後,原子力に厳しい目が注がれ,長期にわたり放射線を出す廃棄物の処分地を受け入れる自治体を探すのは容易ではない。規制では,電力会社が処分することになっているが,いつまでに処分地を決めるのかは明確になっていない。

 国際的には国際原子力機関IAEA)が放射性廃棄物に関する指針を設け,各国はこの指針に準じて廃棄物を管理するが,日本は適した土地が少なく制約は大きい。

 L1の廃棄物が最初に発生するのは中部電力浜岡原発1,2号機。2023年度には原子炉の解体に着手する見通しだ。廃炉作業で出た廃棄物は当面,原発敷地内で一時的に保管する。処分地の選定が進まなければ,廃炉が滞る恐れもある。

放射性廃棄物   原子力発電所などの原子力施設で発生する人体に有害な放射線を出す廃棄物。原発の運転や廃炉で出る低レベル放射性廃棄物と使用済みの核燃料を再処理して出る高レベル放射性廃棄物に大別される。

 低レベル廃棄物は放射能レベルの高い順に「L1」「L2」「L3」の3段階に分かれ電力会社が処分する責任を負う。放射線を長期間出す高レベル廃棄物は国主導のもとで原子力発電環境整備機構(NUMO)が地下300メートルより深い安定した地層に処分する計画だが,最終処分場の選定が難航している。

 

 「〈真山 仁の Perspectives:視線〉8:福島第1原発朝日新聞』2019年12月18日朝刊15面「オピニオン」

 

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  【写真】   東京電力福島第1原発を訪れた作家の真山仁さん。後方の1号機まで約100メートル。防護服もマスクも着けず,軽装備で視察できる=福島県大熊町,仙波理撮影

 補注)事故った原発敷地に向かい,「山登り」みたく形容するのは,誤導的な記述である。

 

 1)   人の働く場所らしい風景,ようやく 2011年12月16日。

 野田佳彦首相(当時)は,事故を起こした福島県東京電力福島第1原子力発電所(以下イチエフ)が,「冷温停止状態にある」と宣言した。原発における冷温停止とは,原子炉に制御棒を挿入して核分裂を抑え,原子炉内の水温が100度未満になった状態を指す。「冷温停止状態」というのは,それにくわえ,「原子炉から大気への放射能の漏れを大幅に抑える」ことが可能になった状態だ。

 あの宣言から,今年(2019年)で約8年になる。そこで12月5日,私はイチエフを訪れた。約4年半ぶりの再訪だった。多くの人にとって,イチエフの記憶は,水素爆発によって建屋の屋根が吹っ飛び,白煙を上げた時で止まっているのではないだろうか。そして,膨大な放射能の影響で人は立ち入ることもできず,いまだ事故の収束など到底不可能だと考えられているのではないだろうか。

 だが,事故が発生した瞬間から,イチエフは日々変化をしつづけている。私は,2008年に小説『ベイジン』を出版した。本作で原発の甚大事故を描き,2018年には,甚大な原発事故を起こした電力会社を投資ファンドが買収する物語の「シンドローム」を発表,エネルギー問題は小説家としての私のライフワークになった。

 初めてイチエフを訪れたのは,「シンドローム」の取材のためだった。頭まですっぽり包む防護服,全面マスクという物々しい格好での見学だった。敷地内の土壌に染みこんだ放射性物質の除染や汚染水の処理が進んでいた。また,地下水の汚染を防ぐための遮水壁の工事もおこなわれていた。

 敷地には,数え切れないほどのタンクが並んでいた。タンク内には,多核種除去設備(ALPS)などで汚染水から可能なかぎりの放射性物質を取り除いた処理水(なおもトリチウムが含まれた水)が貯蔵されている。

 補注)そのタンク群は,これからも無限に増えていくほかない見通しのままである。その風景になにか明るい希望でもあるかのように真山 仁は描いていくつもりか?

〔記事に戻る→〕 あれから4年半……。前回訪問した時にはなかった建物が登場していた。新事務本館と呼ばれる施設だ。2016年10月から業務を開始したイチエフの拠点で,約900人が勤務している。鉄骨3階建て,延べ床面積約2万3600平方メートルの広さがある。エントランスは天井までの吹き抜けになっていて,広いロビーはガラス張りの屋根から自然光が射(さ)す。

 ようやく人の働く場所らしい風景が戻ってきた。そして,イチエフ最大の変化は,軽装備で視察できるようになったことだ。処理水をためるタンクは増えているが,恐怖心を伴う緊張感はもはやなかった。ただ,ときどき胸ポケットに挿した線量計から被曝量を警告するアラームが鳴ると,「あっ,ここは原発事故現場なのだ」と実感した。

 高台に立ち,1号機から4号機までを一望した。事故発生前は白と水色の模様が同じように塗装された4棟の建屋が並んでいた。それが水素爆発などで外壁がほぼなくなり,各棟ごとに異なる増築がおこなわれ,まるで未来の宇宙基地かと思うような奇妙な外観に変貌している。事故によって溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)や金属片などの状況調査が進んでいる。遮蔽物の向こうのみえない場所で,気の遠くなるような廃炉作業が始まっていたのだ。

 補注)厳密な意味でいうと,まだ,「廃炉作業」ははじまっているとはいえない。爆発事故まで起こした原子炉の後始末に取り組もうとしているわけであり,そのとっかかりの段階に「留め置かれている」に過ぎない。

 「まるで未来の宇宙基地」? この真山はいったいなにをいいたいのか? 事故原発の未来に明日などはない。後始末をただ苦役のごとくに継続していくほかないフクイチの現場である。未来ということばを使うときは,廃炉工程にまで至ることができたそのあとであっても,さらにまた,延々とつづく「賽の河原の石積み」に等しい作業が,いわば無限的な工程として待ちかまえていることを覚悟すべきである。

 そうでなければ,300年・400年とか10万年もかけて廃炉にしたあとでもなおも,それにつづく放射性廃棄物の始末(管理!)をしていかねばならないなどというわけがない。

〔記事に戻る→〕 また,1号機と2号機前に設置された排気筒の切断作業が始まった。高さが120メートルある排気筒は,事故のさい,ベントした放射性物質を含む蒸気を放出した。放射能に汚染されたうえに,劣化も進んで,倒壊の恐れがあるため,上部61メートルを解体することになったのだ。

 通常であれば,排気筒にやぐらを組んで作業員が解体作業を行う。だが,放射線量の問題もあって,ロボットによる遠隔操作で,筒を23回に分けて切断する方式がとられた。その作業を進める地元企業「エイブル」の岡井 勇さんに話を聞いた。

 事故前から東電の設備のメンテナンスを請け負っていた同社にとっても今回の切断作業は「初めての試み」だ。「難易度の高い作業ですが,地元企業の使命として,挑戦したいと手を挙げた」と岡井さん。

 実はこの取材の直前までロボットでの切断が難航しており,作業員が排気筒を上って,切断作業をおこなっていた。「排気筒周辺の線量を確認し,交代で作業をすれば可能だと判断した」と岡井さんは話すが,「自分たちがやらねば誰がやるんだ」という気概が,地元出身者が多い社員に浸透しているから実現した,という。

 

 2) 事故,無責任体質が呼んだ

 現状のイチエフを,東電はどのように考えているのだろうか。「一番気にかけているのは,リスクをリスクとしてみきわめて慎重に進めること。未知の領域での作業なので無理はしない」と磯貝智彦所長はいう。また,「事故前までは地域とのコミュニケーションが不足していた。社内外のコミュニケーションの機会を増やすように努めている」とも話す。

 補注)「安全神話」にかつては満ち溢れていた原子力村の内部事情ではあった。けれども,いま,そこでは「未知の領域での作業」が進められていくのだと説明されている。神話でもって安全が語られなければならなかった事情=理由が,いまとなってみればより鮮明になってきた。

 その神話は大噓であった。原発は事故を起こさなくとも,その廃炉作業に立ち入るとなれば,何世紀も,否,なんと百世紀(10万年先)先までの時間の長さを考慮して対応しなければならないというではないか。トンデモどころか,途方に暮れるほどに長い時間をかけた対処が要求されている。この種の未来の問題について,いったい誰がどのように責任をもつというのか。

 しかし,いくら人間が長生きできる時代になったといっても,せいぜい100年=1世紀である。この人間がいまの時点で,何世紀も先,百世紀ものずっと先になったときにでも,原発廃炉が残した「糞尿:放射性廃棄物」の存在を考慮していなければならないというのは,冗談にもなりえない「噴飯もの」の要求である。

〔記事に戻る→〕 では,原発を抱える地元は,現状をどう把握しているのか。以前にも取材した福島第2原子力発電所の地元,富岡町役場の福祉課長杉本良さんと再会した。杉本さんは,現在も自宅が「帰還困難区域」にある。「役場での業務を再開したのは,2017年3月からです。放射線量は下がっていても,国の許可がなければ立ち入れない地域はいまなお残っている。また,耕作放棄状態が続いていたので,農業を再開するのも大変なんです。それでも,一からやり直していくだけ」。

 嘆くより前に進む……。その思いは,きれいごとではなく,そこで生きていくための当たりまえの姿勢なのだ。

 補注)チェルノブイリ原発事故の周辺地域の「その後・風景」を,真山 仁はどう観ているのか? 東電福島第1原発事故も同じ風景を作っている。「嘆くよりも前に進む」とはいっても,「帰還困難区域」には立ち入れない。それでなくとも日本政府はその区域を故意に矮小化する指定をしてきた。

〔記事に戻る→〕 富岡町にある「廃炉資料館」にも立ち寄った。元々あった旧エネルギー館を改修し,「原発事故の事実と廃炉作業の現状などを確認する」施設として,昨年11月30日にオープンした。展示の大半は,事故についての「おわびと検証」だ。なかでも印象的だったのは,東電の「おごりと過信」が事故を生んだと,繰り返し謝罪していることだ。

 それを,「おためごかし,欺瞞」と切り捨てるのはたやすい。実際,おごりと過信が本当にあらためられたのかは,今後の東電の原発に対する取り組みでしか証明できないだろう。ただ,その言葉を,明確に伝えているのは評価すべきではないか。

 補注)東電福島第1原発事当時の幹部3名の裁判が進行中である。すでに,海渡雄一・東電刑事裁判被害者代理人弁護士稿「東電旧経営陣無罪判決,裁判所が犯した七つの大罪」『WEBRONZA』2019年09月25日のような記事もあるが,裁判の問題はまだまだこれからも展開されていくはずである。この裁判でも旧東電の幹部たちは,つぎの段落で触れられている「傲慢な企業人」である目線=価値観を,けっして捨ててはいない。

 原発事故が起きるまでは,電力会社の企業イメージは総じて「上から目線の傲慢な企業」だった。にもかかわらず,それをものともせず我が道を行くのが電力会社だった。それを思えば,隔世の感がある。

 補注)その後の東電「像」(東京電力ホールディングスの実態)を,真山 仁はどう観ているのか? いままでも無責任でありつづけてきたこの電力会社が,いかほどあの大事故の責任を負ったといえるのか? いまでは,この会社の「上から目線の傲慢な体質」が消えたとでもいいたいのか?

 「原発は安全だとだまされた」という国民の怒りを招いた原因を反省するのは,けっして悪いことではない。情報を積極的に開示しようとする姿勢は,これから先も変わらず大切にして欲しい。

 誰もが理解できる「ことば」で伝える,そして,それを実行する責任感をもつということが,日本人は苦手だ。そんなことをわざわざ表明したら,失敗した時に手ひどい非難を受けるからだ。だから,責任を追及されるような言葉は極力発しない。

 それが,無責任体質を生んだ。原発事故とは,そんな日本的組織体質が呼び寄せた最悪の不幸だった。

 補注)「3・11」以前までにおいて,反原発の思想をもち行動もしてきた人びとに対して,東電〔や国家〕を代表とする原子力村:マフィアは,いまもなおその「無責任体質」を矯正できていないのではないか? あれだけの世紀に残る超大事故を起こした東電が,いまでは生まれ変われたかのような表情をみせて,企業活動をできているとでもいいたいのか。そうだとすれば,それはずいぶんとのどかな風景である。それゆえ,つぎのような話題を呑気に語っていられるのか?

 今後,イチエフで,議論を呼ぶであろう問題がある。トリチウムを含んだ処理水の問題だ。イチエフ構内にある処理水のタンクは約1千基あり,11月21日現在,約117万トンたまっている。東電の試算では,2022年の夏ごろに総容量が超えるという。その対策をどうするのか?

 国内外の原発で発生したトリチウムを含む処理水は,濃度や量を管理して海洋に放出されている。ただ,イチエフの場合,だから処理水を海洋放水する,というのは,難しいだろう。そもそもトリチウムについての情報発信が希薄だ。放射性物質の放出について過敏な日本で理解をうるには,さらなる冷静かつ客観的な情報公開,および分かりやすい伝達が求められる。

 補注)汚染水(処理水でもまだ汚染はしている)の問題は,いずれ太平洋にぶちまける算段である。このやり方がどのような問題と起こすかについては,別途トリチウムの問題として議論する必要があった。

 「伝える広報から伝わる広報に努めてイチエフでなにがおこなわれているのかを伝えていく。なにが起きても隠さない」。事故後にイチエフの所長も務め,現在は福島第1廃炉推進カンパニー・プレジデントになった小野明常務執行役の決意である。

 補注)この種の意見はいまごろいってみたところで,2階から目薬のたぐいである。

 スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさんらの活動で,温暖化対策のための化石燃料の使用中止が注目されている。グレタさん本人にそんな意思はないだろうが,彼女らの行動は火力発電の代替として原発を推進するしかないという声を生んでいる。

 補注)この真山 仁の発言,すなわち,グレタ・トゥンベリにかこつけて示唆させたい意見:「彼女らの行動は火力発電の代替として原発を推進するしかないという声を生んでいる」といった点は,とうとう本性を現わしたと受けとるほかない。遠回しにいわれてはいるものの,そのようにしか解釈できない意見を,真山は述べている。

 原発を火力のひとつの電源と位置づけしたうえで,今後においてなおその利用を推進させていったらよい,それも「温暖化対策」として有効なのだといった理解は,まことに陳腐な主張であり,基本的な認識として過誤であった。こうした真山 仁の発想は,原発の基本知識に関して,そもそもの初歩から完全に重大な間違いを露見させている。

 すでにいくらでも,その間違いを指摘する資料・文献が与えられている。なにを思ってなのか,いまさらように “完璧ともいっていいくらい” ひどい誤説へと導く発言をしていた。再生エネの開発・利用・普及の問題に言及するまでもなく,それ以前における論点への理解として指摘されるべき『真山の誤謬』がめだつ。

 このような原発問題に関する「オピニオン」を掲載させた朝日新聞社の立ち位置にも問題があった。いつから『朝日新聞』の紙面は,原発の推進を示唆させるかのような意見をいわせる場になったのか?

〔記事に戻る→〕 「今後の発電に原発がどんな役割をすべきなのかは,われわれが考えることではない。とにかく粛々と廃炉作業を続けることに専念したい」と小野さん。事故から8年9カ月,エネルギー問題は,新たな局面を迎えつつある。だからこそ,われわれはもう一度原発とも向きあう時なのだ。(引用終わり)

 なお,小野明常務執行役は,自分の置かれた状況からみて,このようにしか発言も対応もできない「苦しい立場」に立たされている。この程度のことは容易に理解できると思う。

 真山 仁による以上の「原発に対する考え方」は,高木仁三郎や広瀬 隆,小出裕章たちに反論をいわさせたら,「なにかをいうか・この馬鹿者めが」と大反発し,猛批判を繰り出すに決まっている。それはもう,満面一杯に激しい怒気を表わして迫るに違いあるまい。

 真山は結局,原発を推進させたいかのような『基本的な立場』を表明したと受けとられるほかない。いまどき,このようにまで “愚かなエネルギー「感」” を吐いた識者がいたとは驚きである。原発廃炉問題は,どこの山だがしらぬが「軽装備」で山登りに挑戦するのとは,全然わけが異なっている。

 もう一度いう,『朝日新聞』は,原発賛成の〔とみられるほかない〕立場に変節して,このような真山 仁の文章を掲載したのか? 奇々怪々にも感じられる。

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