朝総聯の朝鮮学校と北朝鮮金王朝

朝総聯(在日本朝鮮人総聯合会)が日本における教育機関朝鮮学校に注入してきた政治戦略的な方針・意味

 

 【要  点】  民族教育機関などではなくて,北朝鮮王朝:金 日成創始による「半封建的・反人民的な疑似社会主義独裁国家体制」のために存在してきた朝鮮学校の「衰退・凋落ぶり」

 

 李 修京・東京学芸大学教授「【寄稿】 『朝鮮学校』教科書の中の在日同胞(前編)-朝総連系コミュニティの拠点-」『統一日報』2020年1月1日

 最初に,最近における朝鮮学校の現状について説明したの『統一日報』の記事から紹介する。

 --日本の法務省によると,2019年6月現在における朝鮮籍者数は特別永住者2万8393人,永住者432人,永住者の配偶者7人,定住者101人,日本人配偶者とその子ども42人を合わせた2万8975人だ。そのうち1万9433人が東京・大阪・兵庫・愛知・京都・神奈川・埼玉で暮らしている。もちろん,朝鮮籍を堅持する同胞のなかには,民族の分断を認めず,ひとつの統一国家であることを主張する人もいる。そうした人びとを除いた多くは朝総連組織の関係者,または支持者とみられる。

 現在は,かつてのように理念的な参与や対立があったころとは異なっている。民族という漠然とした枠組や帰国することのできない祖国,もしくは居住地・日本とはまったく異なる体制に懐疑的な人びとも増えた。それに伴い日本国籍・韓国国籍を取得する人も増加した。父は朝鮮籍で,母やきょうだいは韓国や日本国籍を取得したという多国籍家庭も増えている。韓国戦争以降,反帝国主義革命論と金 日成・金 正日体制の維持に向けた朝総連系の絶対的役割などが朝鮮学校民族教育に多分に内包されていた。現在は朝鮮籍者の人口から推測できるように,国家体制や絶対偶像的思想教育は下火になっている。

 日朝国交正常化には至らないものの,在日朝鮮籍者のほとんどは解放前から居住していた特別永住者,または永住者の子孫にあたる。解放直後,同胞たちは在日朝鮮人連盟(朝連)が運営する国語講習所などの民族教育運動で全国的に勢力を拡げていった。北に傾倒する朝連は韓国系民団と袂を分かち,思想的に対立せざるをえなかった。

 朝連解体後の1955年,北から莫大な資金援助を受けて結成した朝総連は事実上,北の支配体制下に収まることになった。先進国である日本で暮らす北の海外公民組織として,朝総連は東西冷戦体制のなかで理念対立の前衛部隊となった。そして自由主義陣営側の米国,日本,同族の韓国と対峙し,北の教育指針に従って同胞教育を展開してきた。

 たとえば,歴史教科書には日帝占領期の1930年代には金 日成の活躍が紹介されているが,「(1936年に)金 日成元帥は朝鮮革命の性格と動力,階級的力量関係を分析し,共産主義者らの指導下で全民族的な反帝統一戦線を組織できる可能性が成熟したことを指摘。すべての愛国力量を網羅した反日民族統一戦線体から祖国光復会を結成する方針を示した」(1964年『歴史』150頁)など,抗日武装闘争家としての金 日成の業績が記述されている。

 日本で成長する子どもたちに韓民族の足跡を紹介するよりも,反米反日という排他的・闘争的な精神武装に臨むことに注力した。こうした内容は,現実との乖離にほかならなかったのである。

 北韓政権の支援金も減少し,学校運営が財政的困難に陥るなか,1959年から始まった北送事業で北に渡った約9万3000人に対する人道的責任の追及,日本人の拉致被害者問題などの政治的懸案という重石が朝総連の首を絞めていった。朝総連は北の体制が硬直化したことで,北韓と国交のない日本社会に追いこまれるようになった。

 朝総連はしかし,朝鮮学校を日本社会の排外主義に抗して保護者及び児童たちが結束するコミュニティーの拠点として機能させた。思想教育とハングル〔北朝鮮で使用される朝鮮語の〕教育に注力して組織力を維持させてきた。低月給にもブレない教育信念を応援するため,日本と平壌をつなぐ教員研修がおこなわれ,次世代の言語教育に力を注いだ。その結果,朝鮮学校出身者たちはある程度のウリマル〔北朝鮮での朝鮮語のつもりだがすっかり在日風のそれ〕を駆使できる。

 一方,朝鮮学校の在学生徒数は1970年代初め4万6000人に達していたが,1990年代に入ると急減した。原因は,冷戦の終息と1991年の入管特例法にある。特別永住権者の退去要件緩和後に組織離脱者や帰化者が増加したことで朝総連系人口が急減し,就学年齢の子どもも減少した。現在,朝鮮学校は全国に60校,在学生徒数は約6000人だ。

 朝鮮学校は現実を直視し,2003年におこなわれた教育課程改編で教科書を大幅に改訂する。従前の北韓(彼らの表現では “祖国”  )重視教育にくわえ,日本の地域住民としての立場を確立するという現実を教科書に盛りこみはじめた。それにより,朝鮮学校の教科書には在日同胞の足跡と活躍,日本社会の構成員としての生活ノウハウなどが詳しく記載されている。

 残念なことに,韓国の教科書には在日同胞に関する記述がほとんどない。つまり,同胞教育の面においては韓国や民団よりも朝総連がはるかに積極的であることを否定できないのだ。
 (後編に続く)(この後編は用意できしだいここにつづけて追補するかたちで掲載する予定)

【参考記事】

 「朝鮮学校生徒減少の背景に少子化 帰化・国際結婚で深刻に」『産経ニュース』2019.12.30 17:39,https://www.sankei.com/life/news/191230/lif1912300016-n1.html

 

 10年前の平成21〔2009〕年から児童・生徒数が3000人以上減り,来年には5000人を切ることが確実な情勢になった朝鮮学校朝鮮大学校を除く)。背景には,在日韓国・朝鮮人少子化が進んでいることが挙げられる。帰化や国際結婚に伴う日本国籍の選択などにより,日本以上に深刻な状況に陥っているとみられる。

 

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 法務省の在留外国人統計によると,韓国籍朝鮮籍を別々に公表するようになった平成27〔2015〕年12月に朝鮮籍の18歳以下の子供は3120人だったが,〔平成〕30〔2018〕年12月には2343人に減少。令和元〔2019〕年6月には,2235人まで減った。韓国籍の子供も同じ傾向がみられる。

 

 歴史的にみれば,昭和60〔1985〕年の国籍法改正で,父母のどちらかが日本人であれば日本国籍を取得することが可能となり,日本人と在日韓国・朝鮮人が結婚した場合に日本国籍を選択するケースが増加。帰化の条件も緩和され,日本人化が進んでいるという。

 

 朝鮮籍であっても,本国や朝鮮総連という政治的な側面から距離を置きたいと考える人も少なくない。在日韓国・朝鮮人社会に詳しい関係者は「いまの子供たちは在日4世,5世の世代で,日本定住が大前提。朝鮮の言葉や文化を継承してほしいと願う祖父母や両親の影響が強くないかぎり,あえて朝鮮学校には通わせないだろう」とみる。

 

 こうした朝鮮学校離れの流れを高校・幼保の無償化が後押ししているとみられ,この関係者は「朝鮮学校の生徒・児童数の減少や統廃合が進んでいることを寂しいと思う人もいるだろうが,大半は時代の流れでやむを得ないと考えているに違いない」と強調した。


  宋 基燦「『語られないもの」としての朝鮮学校-在日民族教育とアイデンティティ・ポリティクス』岩波書店,2012年

 (この ② からの記述は,旧ブログ 2017年7月18日の復活・再掲となる。以下にまず,その主題と副題をかかげてから内容の記述に進みたい)

 主題「在日3世の研究者が,韓国出身の研究者が書いた朝鮮学校研究書を論評する立場,そして朝鮮学校朝鮮大学校を検討するための『視点(その基礎知識の必要性)』

  副題1朝鮮学校に対する地方自治体の補助金問題」

  副題2「永山聡子「『語られないもの」としての朝鮮学校-在日民族教育とアイデンティティ・ポリティクス』」一橋大学『〈教育と社会〉研究』第23巻,2013年8月28日」

  副題3「在日3世だという永山聡子が,この宋 基燦の『「語られないもの」としての朝鮮学校-在日民族教育とアイデンティティ・ポリティクス-』を論評する意味はなにか,よく理解できない書評であった」


 いまから5〔7〕年前であった,宋 基燦『「語られないもの」としての朝鮮学校-在日民族教育とアイデンティティ・ポリティクス-』(岩波書店,2012年6月)という研究書が公刊されていた。著者は韓国出身で現在は日本の大学で教員(立命館大学准教授)を務める学究である。 

 21世紀に入ってからとくに2002年9月17日の出来事として,北朝鮮を訪問した小泉純一郎首相(当時)と会談した金 正日総書記は,日本人の拉致問題を認めただけでなく,謝罪もしたうえで,関係者は処分済みだと首脳会談で語った。この〈画期的な出来事〉を契機にして,在日朝鮮人北朝鮮を支持する在日たち)が大いに失望する結果が生まれた。このために,「朝鮮人総聯合会から離反していく者の数」がさらに拍車をかけられたかのように増えていった。 

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  出所)http://www.sankei.com/politics/photos/140816/plt1408160005-p1.html

 現在,「朝鮮」籍を有する在日「朝鮮人」の総数は3万2461人である(2016年12月時点,法務書在留外国人統計〔旧登録外国人統計〕)。在日外国人としての韓国(朝鮮)人の統計は,国籍法の改正などで日本国籍を取得する者の数が増えていくなかで,韓国籍である在日の統計も以前から減少しはじめており,こちらは52万7077人である(同上,2016年12月時点。ただし,在留資格が「特別永住」である在日韓国籍人は33万8950人で,外国人人口全体では14.2%にまで減少している)。

 前段のような在日韓国(朝鮮)人の人口推移は,朝鮮総聯の支持者(盟員)であってもすでに,「韓国籍」に正式に移行する手続〔歴史的な事情があって簡単に変更できる〕を済ましている者たちが非常に多くいた(出ていた)事実を教えている。総聯をいまでも熱心に「支持せざるをえない特別の事情がある」人たちを中心に,ごく一部の在日朝鮮人のあいだでしか「『朝鮮』籍」(この国籍は架空国家に関する暫定的な名称・指称であるが,旧日帝時代とのかかわりがあって,いまだに使用されている)は保持されていない。

 つまり,北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)を支持する在日朝鮮人であっても,生活の都合上「朝鮮」籍をだいぶ以前から韓国籍に変更していた者が多い。これらの者たちのなかには,在日本大韓民国民団という韓国系の在日組織のなかにもぐりこんで「悪さをたくらんできた」事例もあって,韓国籍だからといって大韓民国系の在日ではない場合もあるゆえ,注意(留意)をもって接する必要がある。

 その意味では「国籍別の統計」をもって表現する場合,在日「朝鮮〈籍〉」人の人口はもはや3万人台しか存在していない。この情勢のなかで,しかも日本各地の朝鮮学校は縮小・消滅していく過程も経てきた。この朝鮮学校のために地方自治体の補助金は,分かりやすくいえば「点滴であるか」のような「経済的な効果」を挙げている。日本の学校であればふつうは,その補助金は法人の財政にとって貴重な収入の一部である,という位置づけになる。それに対して,朝鮮学校においては「とてもだいじで非常に貴重な収入源」になっている,という評価づけができる。

 いずれにせよ,小泉純一郎首相の2002年訪朝以来,朝鮮学校朝鮮大学校も含めて)に子ども・若者を通わせる在日朝鮮人たちは,実は以前から彼ら自身が知悉していた北朝鮮事情だったとはいえ,さらに大きく失望させられた。このために,朝鮮総聯に所属しつづけようとする人数はさらに,ひたすら減少の一途をたどるほかなくなっていった。

 朝鮮総連の勢力はいまでは,往事の面影などまったくないほどに減衰した。要するに,在日朝鮮人における「朝鮮」籍の減少傾向はその端的な反映:指標である。それだけに,地方自治体が朝鮮学校に予算措置として支出してきた補助金が,多くの都道府県で停止されているいまの状態は,朝鮮学校側にとってみれば「死活問題にも近い意味づけ」ができるほどに,きびしい教育環境を意味する。ということで,つぎの ③ の話題に移ることなる。

 

  朝鮮学校による補助金不支給問題「提訴」に関する報道-『産経新聞』と『朝日新聞』の対照-

 1)「補助金不支給は『適法』,朝鮮学校側が敗訴 大阪地裁」(『朝日新聞』2017年1月27日朝刊)

 学校法人「大阪朝鮮学園」(大阪市東成区)が,大阪府と同市による補助金の不支給決定のとり消しなどを求めた裁判の判決で,大阪地裁(山田明裁判長)は〔1月〕26日,決定は「裁量の範囲内」と認め,請求を棄却した。学園側は控訴の意向を明らかにした。朝鮮学校に対する自治体の補助金不支給をめぐる司法判断は初めて。

 補助金支給にさいし,橋下 徹府知事(当時)は2010年3月,「朝鮮総連と一線を画すこと」「北朝鮮指導者の肖像画の撤去」など4要件を提示。学園側は応じ,2010年度分は支給された。しかし2012年3月,生徒の訪朝が問題化。朝鮮総連との関係が疑われたため,府は2011年度の補助金8080万円の不支給を決定。市も2650万円を不支給とした。

 判決は,補助金憲法や関連法令からも,学園側に受給する法的権利があるわけではないと指摘。「ほかの学校と補助金に差異があってもただちに平等原則には反しない」とした。不支給になれば「学習環境の悪化などが懸念される」と言及したが,府の要件を満たしていない以上,「支給を受けられなくてもやむをえない」と述べた。また,支給先選びや要件提示について「府の裁量の範囲内」と認定。学園側が「教育への不当な政治介入で違法・無効だ」と主張した点については「学園を狙い撃ちした措置ではない」と退けた。さらに市の不支給についても「違法な手続はない」とした。

 京都大大学院教育学研究科の駒込 武教授(教育史)は「民族的少数者が自国の言語や文化を学ぶことは子どもの権利条約で保障されているのに,府は4要件で国同士の関係を教育にもちこんだ。明らかな狙い撃ちだが,判決はそれを追認してしまった」と批判。「行政に一定の裁量があるのは事実だが,恣意的な判断では行政への信頼が失われる」と話した。

 判決を受け,大阪府松井一郎知事は「府の主張が認められた。今後とも私立学校の振興に努める」とコメント。大阪市の吉村洋文市長は会見で「朝鮮学校補助金支給は考えていないのできわめて妥当な判決。今後も方針は変わらない」と話した。

 補注)専門家である学究の駒込 武が,朝鮮学校にまつわる以上のごとき問題を批判する見地は,あくまで一般論からする指摘である。これに対して松井一郎府知事などの立場は,極右である政治的イデオロギーを特殊的に濃厚に帯びている。それゆえ,両者〔駒込に対する松井ら〕のいいぶんじたい,初めからとうてい,噛みあわない関係にある。

 いったいに,朝鮮学校側のいいぶんはあまりにも「民族偏執狂的」に過ぎ,かつ「独裁国家的」そのものでもある。とりわけ,極端に「特殊過ぎるその個人崇拝の教育思想」は,いまもなお日朝両国間には国交が回復されていない事情もあってか,教育の領域においても要らぬ政治的な摩擦を,わざわざ生む背景を提供させている。もっとも,松井のような立場がさらにきわまっていけば,北朝鮮に対しても韓国に対しても区別なく,一定の抑圧的な政策などを浮上させる可能性がないとはいえない。

 その具体例がある。東京都の小池百合子知事は,桝添要一前知事が進めてきた1件,すなわち,廃校した都立高校の敷地と校舎を「第2韓国学校」に貸与する計画を阻止していた。

 「彼ら」にあって共通する心情(思想以前のイデオロギー的な感性)は,北朝鮮に関しても韓国に関しても「北朝鮮排撃」的・「嫌韓」的な心情が,彼らの精神構造の奥底には隠されている。

 桝添要一前知事は韓国の大統領にも要請されていたのだけれども,その「第2韓国学校」のために廃校した都立高校の用地・建物を貸与しようとした一件は,小池知事によっていとも簡単に廃棄されていた。

 すでにフランス学校のためにであれば,こちらは廃校になった都立学校の敷地を売却していた事実に比較するに,非常に対照的な対応が観察できる。どだい「北朝鮮と韓国」の区別もできない〔しようとしない〕ような「小池流になる都の為政」は異様である。小池百合子も本質的には極右の政治家である〔面目躍如!〕ためか,北朝鮮はさておき韓国との友好関係すら毀損する行為を平然とおこなっていた。

〔記事に戻る→〕 「なぜ,自国の言葉や文化を学ぶことが否定されなければならないのか。怒りで体が震える」。大阪朝鮮学園の玄 英昭(ヒョン・ヨンソ)理事長(60歳)は判決後に会見し,声を振りしぼった。学園が運営する初級・中級学校は9校あり,2016年5月現在で956人が通う。2011年度から停止された補助金は学校経費の約1割。老朽化した校舎の修理や教材購入費に影響し,児童・生徒にしわ寄せが出ているという。

 補注)この朝鮮学園側のコメントは奇妙である。まるで補助金でもって朝鮮学校は成立しえているかのようにも聞こえるからである。もちろん,補助金が支給されなければ困ることは困るが,話を聞いていると一部分にあてはまる話のたぐいではなく,「相当に肝心な予算部分」になっているらしいのが,朝鮮学校にとっての補助金である。以前において朝鮮学校地方自治体からの補助金を,目的外に流用していた事実はよくしられているし,児童・生徒「個人」向けの補助金などを巻き上げることもやってきた。

〔記事に戻る→〕 同席した原告代理人の丹羽雅雄弁護士も「判決は補助金の支給要件について形式的な判断をしただけ。学習権や学校の歴史的,社会的役割にいっさい触れなかった不当判決」と断じた。

 補注)ここでいわれる朝鮮学校側の「学習権や学校の歴史的,社会的役割」こそが,実は本当には問われている一番肝心な争点であった。朝鮮学校側はいままであまりにもひどい「金 日成・金 正日崇拝教育」を反省するそぶりを,補助金がほしいがために弱めるかのような姿勢(譲歩)を示してきた。だが,そこには,通常日本国内で唱えられる「思想・信条・言論の自由」とは真逆の問題点が伏在していた。

 日本国も昔は,天皇の『御真影』の問題があって,北朝鮮のいまに関連させていえば,その見本みたいな「教育勅語による教育体制」を臣民たちに強制していた。北朝鮮がいまやっている偉大なる指導者同志2名のお写真を教室内に飾ることの〈教育的な意味〉は,日本側もよくよく承知のことがらである。

〔記事に戻る  ↓  〕
 傍聴した保護者からも落胆の声が漏れた。高 吉美さん(45歳)は「日本人社会で生きるなかで,民族の誇りをもたせたいと子ども3人を通わせた。その思いが裁判官に届かなかった」と涙ぐんだ。自身も朝鮮学校出身。裁判が起こるまでは府や市から「差別されている」と思ったことはなかった。「時代が逆行し,そういう日本になってしまったのか」と感じた。「私たちマイノリティーの声はしらずしらずのうちに否定される。これからも声をあげていきたい」と力を込めた。

 補注)朝鮮「民族の誇り」があったからこそ,以前において朝鮮学校地方自治体からの補助金など,相手にもしていなかった歴史も記録されている。ところが,いまでは「背に腹はかえられない」財政的な事情があるせいか,このように「補助金がなければ民族教育ができない」みたいな主張の展開(豹変ぶり)になっている。

 その意味では,いささかならず違和感を抱かせる発言になっている。また「裁判が起こるまでは府や市から『差別されている』と思ったことはなかった」という感想は,どう聞いても “創り話” に聞こえる。この点は,在日朝鮮人の立場にしてみれば,基本的には「分かりきっていた『歴史の問題』」に属する,つまり大昔から存在してきた「差別の問題」のひとつではなかったのか? いうことがいちいち大げさで,いかにも芝居がかっている。こうした話法には鼻白むほかない。

〔記事本文に戻る ↓ 〕

 2)大阪朝鮮学園補助金めぐる経緯

   1987年 大阪市補助金の支給制度を開始

   1992年 大阪府補助金の支給制度を開始

   2010年3月12日 橋下 徹府知事(当時),補助金支給要件に「朝鮮総連と一線を画すこと」を提示

   2011年3月8日 大阪朝鮮学園が「特定の政党・団体の干渉を受けず自主的に運営」と回答
   補注)この回答はありえない,想定などできない「〈嘘〉の応答(みえすいたウソということ)」としかいいようがない。

   同年3月25日 府が初級・中級学校の補助金(2010年度)支給を決定

   同年11月27日 橋下氏が市長,松井一郎氏が府知事に当選

   2012年3月16日 生徒の訪朝が問題化

   同年3月29日 府が「朝鮮総連と一線を画す点が確認できない」として補助金8080万円(2011年度)の不支給決定

   同年3月30日 市が補助金2650万円(同)の不支給決定 

  註記)以上 ② の 1)2)は,http://digital.asahi.com/articles/ASK1V4PQGK1VPTIL00V.html

 3)「補助金支給『要件満たさぬ』 大阪朝鮮学園の請求を全面棄却 大阪地裁判決」(『産経ニュース』2017.1.26 17:31 更新)

 この『産経新聞』の報道は,記述している文章そのものを『朝日新聞』のものと,よく比較対照させながら読むとおもしろい。記事そのものではなく,各新聞社の解釈(論説としての「記述の傾向」)が興味深い『差』を作っている。

 --朝鮮学校への補助金支給を打ち切られ,学ぶ権利を侵害されたとして,大阪府下で初中高級学校など10校を運営する学校法人「大阪朝鮮学園」(大阪市東成区)が,大阪府大阪市に不支給決定のとり消しなどを求めた訴訟の判決が〔1月〕26日,大阪地裁であった。山田明裁判長は「府市の定めた交付要件を満たしておらず,不支給はやむをえない」として訴えを全面的に退けた。学園側は控訴する方針。

 判決理由で山田裁判長は,補助金に関する要件や規則は行政内部の事務手続を定めたものに過ぎず,申請者の法的権利を認める趣旨は含まないと指摘。事務手続を超えた行政処分には当たらないとして「とり消しを求める訴訟の対象にならない」と述べた。

 外国人学校のうち学園だけが不支給とされたことから,学園側は「公権力による差別だ」と主張したが,判決は「交付要件の設定には相応の理由があり,行政の裁量の範囲内。学園を狙い撃ちにしたとはいえない」と結論づけた。

  ※ 学園理事長「怒りに体震えた」※

 判決によると,学園への補助は府が昭和49〔1974〕年度,市が62〔1987〕年度からそれぞれ実施していたが,府は橋下 徹知事時代の平成22〔2010〕年,在日本朝鮮人総連合会朝鮮総連)と一線を画すことや,北朝鮮指導者の肖像画を撤去することなど,新たに4項目の交付要件を順守するよう要請。〔平成〕23〔2011〕年度の申請については要件を満たしていないとして府が不支給を決め,市もこれに同調した。

 判決後に記者会見を開いた学園の玄 英昭理事長は「怒りに体が震えた。勝利する日まで闘いつづける」と話した。一方,大阪市の吉村洋文市長は「きわめて妥当な判決だ。補助金の支給は考えておらず,今後もその方針は変わらない」とコメントした。

 註記)http://www.sankei.com/west/news/170126/wst1701260077-n1.html

 4)「【大阪朝鮮学園敗訴】 生徒が金 正恩氏に永遠の忠誠補助金不支給「政治介入」主張を “一蹴” 」(『産経ニュース』2017.1.26 22:11 更新)

 大阪府内で初中高級学校など10校を運営する「大阪朝鮮学園」が,府や大阪市補助金の不支給決定のとり消しなどを求めた訴訟の判決で,大阪地裁は〔1月〕26日,全面的に学校側の訴えを退けた。原資が税金である以上,交付を受けようとする私立学校には「一定程度の政治的中立性が要求される」と判示し,特定の政治団体や政治指導者と距離を置くよう求めた大阪府の要件について「相応の合理性がある」とした。

 補注)ここでいわれている「一定程度の政治的中立性」とは,どこまでも,日本国とこの地方自治体(こちらは誰が首長であるかによって時に大きく変動するが)の判断によって「変化を来たすほかない基準」に依っている。なお,大阪府に関してその具体的な説明はここでは不詳である。

  ※ 校長が資料提出を拒む…地裁「府の判断には合理的理由」※

 今回のケースで問題とされたのは,たとえば校内にかかげられた故金 正日総書記の肖像画であり,朝鮮総連の指導による思想教育の有無だった。大阪朝鮮学園は,肖像画を撤去する方針は示したものの,生徒が北朝鮮でおこなわれた「迎春公演」に参加し,そのなかで金総書記や現指導者の金 正恩氏に永遠の忠誠を誓ったとされる点については,公演主催者を尋ねる府の再三の質問にも,校長が資料提出を拒んでいた。

 こうした学校側の対応に,判決も「朝鮮総連の主催のもとに迎春公演に参加したと疑うに足りる状況が生じていた」と指摘。交付要件を満たすか確認できない以上,不支給とした府の判断には合理的理由があったと評価した。 訴訟で学校側は「教育現場への不当な政治介入だ」と主張したが,判決が言及したように,府が提示したのはあくまで補助金交付の要件に過ぎず,教育内容を縛るものでもない。そもそも公金をあてにしなければ,要件を気にする必要もなかった。

 補注)この『産経新聞』の指摘,つまり「そもそも公金をあてにしなければ,要件を気にする必要もなかった」といわれた点は,まともな判断(批判)である。前段でも言及したとおり,昔の朝鮮学校は「金 日成から教育援助金をもらっていた事実」を誇っていた時期もあって,そのころはむろん,地方自治体からの補助金など関心外であった。ところがいまでは「貧すれば鈍する」の好例見本を演技している。

 判決後に会見した学園の玄英昭理事長は「怒りに体が震えた。朝鮮学校だけを公的助成から排除することは民族教育の権利を否定する不当な差別だ」と述べた。一方,大阪府松井一郎知事は「府の主張が認められた」とコメント。大阪市の吉村洋文市長は「きわめて妥当な判決。朝鮮学校補助金を支給しない方針は変わらない」と語った。

 補注)「朝鮮学校だけを公的助成から排除することは民族教育の権利を否定する不当な差別だ」という理屈には,どうしても無理がある。公的助成がなければできないのが民族教育なのであれば,極右の朝鮮嫌いの首長たちは,朝鮮学校には補助金を絶対に出さないという心情(潜在意識にある差別感情)を,大いに昂進させて顕在的に強化するはずである。

  ※ 識者「真っ当な判決」と評価 ※

 朝鮮学校の問題に詳しい西岡 力・東京基督教大教授の話。「北朝鮮の独裁体制を称賛するような教育をする朝鮮学校に,公的補助金を支給することの方がおかしく,真っ当な判決だといえる。そもそも補助金をもらうなら,条件をきちんと守るのは当たりまえだ」。

 補注)この西岡 力がはたして,真っ当な北朝鮮関係の識者といえるかどうが疑問があるけれども,ここで指摘(批判)されているごとき文句,「独裁体制を称賛するような教育をする▽▽学校」という外国人学校が,朝鮮学校以外にはないという絶対の保証はない。どの国の外国人学校であれ,「自国体制を称賛する民族的(ナショナル!)な教育」はしている。問題はその内容,ありよう,特徴である。
 註記)記事は,http://www.sankei.com/west/news/170126/wst1701260117-n1.html
        http://www.sankei.com/west/news/170126/wst1701260117-n2.html

 

 朝鮮学校調査報告書」(2013年11月)

 東京都のホームページに『朝鮮学校調査報告書』(更新日:平成29〔2017〕4月12日)が掲載されている。つぎの資料である。発行部署は「私学部 私学行政課専修各種学校担当」。

  1)『朝鮮学校調査報告書の概要』(平成25〔2013〕年11月) PDF [188KB]

  2)『朝鮮学校調査報告書』(平成25〔2013〕年11月) PDF [718KB]

  3)『東京朝鮮学園の施設財産にかかる状況について』(平成29〔2017〕年4月) PDF [121KB]

 1)の『朝鮮学校調査報告書の概要』にはこう書かれている。「朝鮮学校朝鮮総連と密接な関係にあり,教育内容や学校運営について, 強い影響を受ける状況にある」。これはいうまでもない,あまりに当然の事実であるが,これに対して朝鮮学園(朝鮮総聯の傘下組織であるのだが)は,こう主張している。「朝鮮総連朝鮮学校にさまざまな支援をしてくれているが,朝鮮総連の指導のもとに学校運営がおこなわれている事実はない」。

 こういう譬えをしておく。「東京都は都立高校にさまざまな支援(?〔こちらでは当然の関係だが〕)をしてくれているが,都の指導のもとに学校運営がおこなわれている事実はない」。この種の説明を借りて類推すれば,朝鮮学校側の理屈が詭弁以外のなにものでもない点は,即座に理解できる。

 2)の『朝鮮学校調査報告書』の「Ⅲ まとめ」(30-31頁)は,こう書いている。

  教育内容及び学校運営

 朝鮮学校朝鮮総連と密接な関係にあり,教育内容や学校運営について,強い影響を受ける状況にある。

  ○ 社会の教科書に,朝鮮総連朝鮮学校を設置・運営している旨の記述がある。
  ○ 教科書の奥付に,編纂者が「総連中央常任委員会教科書編纂委員会」であることが明記されている。
  ○ 歴史・音楽の教科書は,北朝鮮の指導者を礼賛するなど特有の内容である。

   ・ 「現代朝鮮歴史」(高級部)の教科書には,「敬愛する金日成主席様」「敬愛する金 正日将軍様」などの記述が 409頁中353回登場する。
   ・ 「音楽」の教科書には,金 日成・金 正日を礼賛する歌曲が掲載されている。

  ○ 朝鮮学校の職員室及び高級部の教室には金 日成・金 正日の肖像画が,初級部・中級部の教室には金 日成・金 正日を描写した絵画が掲示されている。
  ○ 高級部の生徒は「在日本朝鮮青年同盟(朝青)」に加盟。朝青は,朝鮮総連の傘下団体であり,その組織規約には,「朝青は,自己の全ての事業を総連の指導の下に進める」などと規定されている。
  ○ 各朝鮮学校内には朝鮮総連の傘下団体である「教育会」や「在日本朝鮮人教職員同盟(教職同)」が存在する。

 

  施設財産

 学校敷地内に教育目的以外に継続的に使用される施設がある,朝鮮総連及びその関係団体等に経済的便宜を図るなど,朝鮮学園は準学校法人として不適正な財産の管理・運用を行っている。

  ○ 第6学校(大田区千鳥)及び西第2学校(町田市金森東)の敷地内に,朝鮮総連支部等の事務所が存在している。朝鮮学園は,学校施設の一部を朝鮮総連支部等に無償で長期間貸与している。
  ○ 朝鮮学園は,在日朝鮮人団体のために土地(世田谷区経堂)を購入し,固定資産税程度の極めて低廉な賃料で貸与している。
  ○ 朝鮮大学校小平市小川町)のグラウンドを,朝鮮総連関係企業の負債のために担保提供している。

  施設財産にかかる改善指導と朝鮮学園の意向

  ○ 本調査で判明した不適正な財産の管理・運用について,都は,平成25年9月に朝鮮学園に対して,文書による改善指導を実施した。
  ○ これに対して,10月に,朝鮮学園から改善指導に対する回答書が提出された。回答書の中で,朝鮮学園は,「朝鮮学校が苦難の歴史を経ながらいまなお存続し,半世紀以上にわたり民族教育の場を守ってこられたのは,祖国と広範な在日同胞の支援があったからにほかならず,このような客観的・歴史的経緯を勘案した場合,学校施設の一部に対する利用を単に画一的に財産管理・運用面だけで捉えることは必らずしも妥当ではない」という見解とともに,「法令を遵守し,より適正な学校運営を図るため,当学園の財産管理・運用につき,年度内に改善措置を講じる考えである」旨の意向を示した。

 --以上の「まとめ」でも,朝鮮学校は日常的に,通常の認識では想像もできないような大胆さと粗雑さをともないながら,運営されている教育機関であることが察知できる。

 さてここで,冒頭に触れた,永山聡子「『語られないもの」としての朝鮮学校-在日民族教育とアイデンティティ・ポリティクス』」(一橋大学『〈教育と社会〉研究』第23巻,2013年8月28日)が記述しているうちから,つぎのごとき,やや不可解な段落をあえて参照しておく。

 永山は,同稿の末尾「註10」のなかで,つぎのような,ふつうの「朝鮮学校」に関する理解では思いもつかないような解釈(しかもわざわざ言及する必要もない点)を提示していた。

 「北海道から九州まで全国にあるすべての朝鮮学校は総聯本部の教育局によって管理される中央集権的な教育体系の中に位置づけられる(p.154)。基本的には日本社会のそれと相違ないといえる」。
 註記)永山,前掲稿,90頁・右段。

 たしかに,中央集権的な教育体系が日本の文部科学省によって維持・運営されていることは,事実である。だが,この主張を,ここでの記述以上に「なにかを論証(実証)させようとする意図」はないらしいが,それでも「註」のなかで議論をもちだすこうした論法は,不用意・不徹底・不公平であり,「論文」全体における論旨の構成方法において問題を残している。

 永山は自身の立場についてさらに,つぎのように説明をくわえてはいるけれども,読むほうからして感じるほかない〈特定の不可解さ〉が,解消できていない。要は,消化不良の論点理解をわざわざ表現化する余地はなかった。

 評者は,直接的に朝鮮学校在日コリアン研究を学術的に専攻しているわけではない。

 しかし,本書がとり組んでいる方法としての「省察的人類学」に共感し,構築主義民族主義を理解する立場を共有している。そして,なによりも,評者自身が境界を往来する存在である。時には揺るがない在日コリアン3世であり,時には「記憶の共同体」に深く入りこめない「日本国籍」保持者であり,時にはその現状さえも「客観視」してしまう学究者である。

 したがって著者が述べる「言語障害」を経験している。経験しているからこそ,「語れない」ことを語る研究者にならなくてはいけない。今後どのような「振るまい」が求められるのか,どのような時代を模索すべきか,そのことを考えさせられる作品であることを添えて本書の書評を終わることとした。
 註記)永山,前掲稿,90頁・左段。註記の番号2点は削除した。

 

  再度『統一日報』の別記事紹介

 在日韓国系の新聞紙『統一日報』2016年4月8日は「朝鮮学校補助金 文科省が事実上の『再考』通知,総連への制裁強化 子どもたちに罪はないが……」という見出しの記事を掲載していた。そして,この記事の続編部分(段落)はさらに「『異様な教育』拭えず 政治思想浸透の生命線に」という見出しをつけた記事も掲載していた。

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