日産前会長ゴーンの「逃亡」は,政府(司法)と日産(西川広人など)の連係プレーの結果として「生まれた歓迎すべき事態:厄介払い」

カルロス・ゴーンだとか稲盛和夫だとか有能・辣腕の経営者は従業員の首切りが得意技,ともかくゴーンに復活させてもらえた日産であったが,いまはこの前会長を国外に追放できて万々歳,政府と腕を組んで追い払った甲斐があったというもの

 

  要点:1 カルロス・ゴーンに乗りこんでもらい,企業合理化を徹底的に実行する彼の凄腕に頼らねば,いまごろはこの地上から消滅していた日産自動車であった,ところが,いまとなっては「NISSAN はもともと日本の会社だ」といいはれる勝手ないいぶんにも,一理はあるかのように振るまえる状況ができていた

  要点:2 2018年までに日産の幹部らは日本の経済産業省にいき,ゴーン抜きでも日産の経営はできると直訴した。そこで政府と日産は示しあわせ,ゴーンが役員報酬を過少申告したという話をもとに,詐欺容疑で逮捕されるよう画策した

  要点:3 安倍晋三,菅 義偉など政府の要人と高級官僚がゴーン追い出し劇に加担していなかったなどとは,誰も考えていない。日産は,V字回復を実現したあと「ゴーンは要らなくなった」,その人がまさにレベノンに逃亡してくれたのだから,これはたいそう好都合であった。これで,別の意味でいっても一安心といえ,ともかく厄介払いも一気に実現できたというわけ

  要点:4 日本とフランス,これをかこむアメリカを中心とした国際政治経済関係のなかに「暗闇的な背景・事情」はないのか?


 「安倍首相,ゴーン被告逃亡に『日産内で片付けてもらいたかった』」毎日新聞』2020年1月8日 22時31分,最終更新1月8日 23時25分,https://mainichi.jp/articles/20200108/k00/00m/040/302000c

 安倍晋三首相は〔1月〕8日夜,キヤノン御手洗冨士夫会長らと東京・銀座の日本料理店で会食した。金融商品取引法違反の罪などで起訴され,レバノンに逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告についても話題になった。

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 同席した自民党河村建夫・元官房長官によると,ゴーン被告の記者会見も話題になり,首相は「本来,日産のなかで片付けてもらいたかった」と語ったという。(引用終わり)

 つまり,日本国の首相である安倍晋三が〔1月〕8日夜に,自民党河村建夫官房長官御手洗冨士夫キヤノン会長らと会食していたとき,河村健夫の話としてであるが,前日産自動車会長カルロス・ゴーンの放った “日本政府批判” に関して,「本来,日産の中で片付けてもらいたかった」と発言した点は,ゴーン被告が,日産の「クーデター」に日本政府関係者が関与したと示唆した「関連の事情」を,ごく自然に認める発言ではないかということである。 

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 1月8日(現地時間)レバノンで記者会見をしたゴーンは,政府関係者の姓名を具体的に挙げることは避けていたが,それは自分のレバノンにおける立場が,まだ完全には「安全地帯に居る」といえない状況を踏まえて禁欲したからだと思われる。このゴーンの記者会見の内容はユーチューブ動画記事で視聴できるが,日本国営放送であるNHK(イヌ・あっち・イケー)ではなく,テレビ東京が中継するかっこうになっていた。

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  註記)「〈2020/01/08 にライブ配信カルロス・ゴーン被告が記者会見 逮捕に関与した日産・日本政府関係者の実名公表か」https://www.youtube.com/watch?v=ot5G14GZNyc

   ◆「ゴーン被告,逃亡手段は語らず 『嫌疑,真実ではない』独演2時間半」◆
           =『東京新聞』2020年1月9日夕刊 =

  【ベイルート=竹田佳彦】 保釈中に不正に出国した前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(65歳)が〔1月〕8日午後(日本時間同日夜),逃亡先のレバノンの首都ベイルートで記者会見し,逮捕が「日産と検察の陰謀」と主張して無実を強調した。国営通信NNAによるとレバノン検察は9日,日本政府が国際刑事警察機構(ICPO)に提出した手配書に基づき,聴取する。

 

 ゴーン被告が公の場で話すのは,2018年11月の逮捕後初めて。各国メディアを前に,ゴーン被告は冒頭「出国の手段は話さない。なぜ脱出したのか話すために来た」と宣言。妻キャロル容疑者(53歳)=東京地検特捜部が偽証容疑で逮捕状=との接触禁止や弁護士が立ち会わない1日8時間の取り調べなど,日本の司法制度に対する不満をまくしたてた。「日本で拘束され,人権と尊厳を奪われた。嫌疑は真実ではなく,私は逮捕されるべきではなかった」とも主張した。

 

 約2時間半の会見では,不正とされた支出などについて,他の役員らが署名した書類を提示して無実を主張。日産から自分の追放にかかわった人物として西川広人前社長(下掲画像)や経済産業省出身の社外取締役ら経営陣5人の実名をあげた。「レバノン政府に迷惑がかかる」として実名は挙げなかったが,日本政府関係者の関与にも言及した。

 

 補注)なおゴーン前会長は,自分の告発に関係した日産側の人物として,西川広人前社長兼最高経営責任者,川口 均元副社長,ハリ・ナダ専務執行役員,今津英敏元監査役,大沼敏明元秘書室長,豊田正和社外取締役の6人の実名を挙げている。

 

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〔記事に戻る→〕 レバノンに逃亡後,ICPOの国際手配で今後は渡航先によっては拘束される可能性がある。ゴーン被告は業績が低迷した日産を復活させた実績をもち出し「自分は不可能を可能にする」と強調。数週間以内に,無罪を示すさらなる証拠を示す考えを示した。

 

 参加したメディアはゴーン被告が選別した。会見で参加した日本メディアの少なさを問われたゴーン被告は「多くは日産や検察の情報を垂れ流してきた」と批判。終了後に会見場外であいさつすると述べたが,無言のまま会場を去った。(引用終わり)

 ともかくも,このゴーンの記者会見は本来であれば,NHKが中継してなんらおかしくなかった。むしろ,そうしていたほうが当然であった。ところが,「国民たち・皆さまの忠犬」ではけっしてなく,「安倍晋三の私物化政治」のためのイヌ・あっち・イケ化している国営放送に対しては,そうした期待は望むべきもなかった。NHKは,いったいなんのために国民たちと受信契約を結んでいるのか? この程度のアベ:忠犬的な報道姿勢では,政権の問題をまともにとりあげられない。このような国営放送ならば要らない,無用・不要。

 企業の立て直し,経営の合理化(もちろん人員整理が重要なテコになるもの)の実行は,なにもゴーンの場合だけではなく,最近に日本においてもっとも評判だったのは,京セラの稲盛和夫の場合もそうであった。稲盛のその有能かつ辣腕ぶりはとくにJALに対して振るわれたものであったが,この実績は日産におけるゴーンのそれと並んで,日本の産業界のなかでは高い評価をえていた。よって,この稲盛とゴーンを並べて比較しつつ吟味してみるのが一興である。

 

 稲盛和夫日航会長『160人を残すことは可能だった』と口滑らせる」『安全問題研究会』2011-02-11 23:07:35,https://blog.goo.ne.jp/hitorasiku/e/f13480334ba15dc3d9c518adf6bfb59f

 2011年2月8日のことであった。日本記者クラブ稲盛和夫日航会長の記者会見がなされていた。そのとき,つぎのごとき仰天発言が飛び出していた。

 稲盛会長「(被解雇者)160人を残すことが経営上不可能かといえばそうではないのはみなさんもお分かりになると思います,私もそう思います。しかし,一度約束をし,裁判所も債権者も,みんなが大変な犠牲を払って,これならよろしいと認めたことを,1年も経たないうちにですね,反故にしてしまう。いままで,JAL経営者というのは,すべてそうやって反故にしてきたと。そのために,信用ならないんだと言われ続けてきたと。(中略) 一度(更生計画を)認めてもらったものを・・・  (中略)  やめるわけにはいかない」。

 

 この発言が収録されている〔ビデオ録音の時間帯〕のは,1時間08分12秒ころからである。日航トップみずから「整理解雇は不要だった」と認めてしまった。裁判所や債権者の手前,メンツでやってしまったということらしい。しかし,メンツで首切りされ,路頭に迷ってしまう160人にしてみればたまったものではない。

 

 どうしても経費節減が必要なら,日航から月に580万円もの報酬を受けとっている片山英二・管財人,月に280万円もの報酬を受け取っている石嵜信憲・管財人代理がまず率先して報酬を返上してはどうか。彼らは日航のためを思い,熱い思いで再建を引き受けたのだから,それくらい簡単だろう。

 

 首切りしたのが企業再生支援機構という国家権力だけに,裁判の行方を楽観はできない。しかし,この発言が整理解雇をめぐる2労組(乗員組合・CCU)との裁判で会社側を一層苦しい立場に追いこんだことは確かだ。

 ところで,斎藤貴男カルト資本主義-オカルトが支配する日本の企業社会-』(文藝春秋,1997年,文春文庫版,2000年)は,こういう事実を指摘していた。つまり,稲盛流京セラ哲学を一刀両断する議論を披露していた。

 斎藤は,「稲盛和夫の持論と行動」を「なにもかもが矛盾している」と批判したうえで,「 “稲盛哲学” ないし “京セラフィロソフィー” は,その実どこまでも人間を企業に縛りつけ,奉仕させるために内面から操り,究極の奴隷とする呪術的便法に過ぎない」と,切り捨てている

 「稲盛のオカルトへの関心には明確は目的があったことを示している。彼はオカルトを,あくまでも企業経営,もっといえば,従業員の労働のモチベーションに役立てる便法として活用したかったのである」。

 「あくまでも現世的利益追求と一体となって受け入れられる稲盛の宗教的言辞」。

 「彼はオカルトや人生を語りながら,その実,企業の,経営者の論理こそ絶対的普遍的な価値観だといっているとしか思えなかった」。

 「稲盛はヒトラーを敬愛してやまない。さすがに公の席や著書のなかではあまり触れないが,身内意識の強い盛和塾の場では,あの殺戮者を一再ならず絶賛していた」。

 註記)斎藤貴男カルト資本主義-オカルトが支配する日本の企業社会-』文藝春秋,1997年,155頁,139頁,159頁,131頁。なお,文春文庫版の該当頁は少しズレていて,異なるので注意されたし。


 「〈空の安全・安心を! 整理解雇四要件を守れ!〉」『JAL闘争を支える京都の会 News』No.27,2014.3.30,京都市東山区今熊野南日吉町17FAX:075-531-3856,E-mail:komai123@kfa.biglobe.ne.jp,http://sasaerukai.com/kakuchi/kyoto-27.pdf

 この件については公開されているパンフレットを紹介しておけば,概略は理解できるはずである。稲盛和夫は有能辣腕なカリスマ的経営者として評判が高いものの,彼が活躍している舞台裏では,その水準が高ければ高いほど「裏・闇的な逆評判」もまた,それ相応に潜在させていることになる。

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 「〈WeekryZenshin-TOP〉日産が1万人超す大リストラ 解雇は殺人だ! 労組で反撃を」『前進』第3062号,2019年8月26日 

    日産が1万人超す大リストラ 解雇は殺人だ!

        労組で反撃を 労働者を犠牲に「業績回復」狙う ☆

 補注)『前進』(週刊新聞)は, 1959年9月20日に第1号を発刊していたが,刊行元は中核派であり,この機関紙である。

 カルロス・ゴーンなきあとの日産自動車が,労働者への大合理化・大量解雇攻撃に突進している。西川広人社長ら日産経営陣は〔2019年〕7月25日の決算会見で「業績回復」を叫び,2023年3月末までに世界14拠点で1万2500人以上の人員削減をおこなうと打ち出した。約13万9千人の全労働者数の約1割に相当するすさまじい大リストラである。

 日産はすでに今〔2019〕年5月に4800人の人員削減を打ち出していたが,4~6月期の連結営業利益が16億円に落ち込み,1091億円だった前年同期から98・5%減少。世界販売台数は6.0%減となった。この「過去10年で最悪」の結果を受けてリストラ計画を積み増した。

 米国やインド,メキシコを含め8拠点で約6400人以上を来年3月までに削減する。その後,2020年度から小型車を製造する欧州やアジアの6拠点で6100人以上を削減する計画だ。国内では福岡県と栃木県の工場を対象に,期間工労働者の契約更新を止めることで880人の首切りを行う方針だ。

 日産による全世界と日本の労働者の大量解雇は,絶対に阻止しなければならない。

 労働者の希望はどこにあるのか。必要なのは,首切りを許さず真っ向から闘う労働組合だ。資本の存続のために首切りにも反対できない労働組合は,労働組合ではない。韓国・民主労総の闘いに学び,解雇攻撃に立ち向かい「1人の首切りも許さない」労働組合を現場からつくり出そう。

 日産経営陣は,ゴーン体制のもとでの無理な経営拡大路線が業績悪化につながったとし,今回の首切りを正当化している。だがこれは,大恐慌のなかで日本帝国主義の製造業が大崩壊しはじめたことを意味する。労働者を解雇しなければ生き延びられない資本主義など打ち倒すべきだ。

 補注)中核派は多分判っているはずだと思うが,資本主義に「労働者の解雇」は付きもの(憑きもの?)であるのだから,このように左翼陣営の立場から「労働者を解雇しなければ生き延びられない資本主義」という表現は,あまりにも当たりまえすぎて,若干の無理がある。

 換言すれば「労働者をいつでも都合により解雇する」のが「資本主義」をまとっている「企業経営の本性(本質)」である。それだけのことでしかない資本制企業の特性に関して,対話を初めから不能にしそうな議論はいただけない。左翼に特有である修辞法のことなので,この程度の指摘に留めておく。

〔記事に戻る→〕 サプライチェーン(供給連鎖)のトップにある自動車メーカーのリストラは,直ちに,部品・原材料などを納入する下請け・孫請け全体に及ぶ。膨大な数の労働者の失業・解雇に直結する。非正規職労働者を必要な時だけむちゃくちゃに酷使しておきながら,資本にとって要らなくなればただちに使い捨てるというのか。労働者は物ではない!

 大量解雇の嵐に絶対反対しよう

 解雇の嵐は日産にとどまらない。東芝,パイオニアルネサスエレクトロニクスなどの大企業が軒並み,今後数年で数千人規模の大量人員削減を打ち出し,解雇や退職勧奨が始まっている(表)。メガバンクでも三菱UFJ,三井住友,みずほグループなどですさまじい人員・店舗削減が開始されている。世界大恐慌の再爆発が迫る中,非正規職労働者を先頭に,労働者がつぎつぎと路頭に放り出されている。 

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 経団連と安倍政権・厚生労働省は,解雇自由と労働組合破壊を狙い,「解雇の金銭解決制度」創設をあくまで狙っている。どんな不当解雇でも金銭さえ払えば解雇撤回しなくてよいとし,組合破壊を目的とした首切りもやりたい放題となる制度だ。不当労働行為は完全に野放しとなる。

 だがこれは,労働組合を絶滅することなしには貫徹できない。だからこそ,攻撃の切っ先として国鉄闘争破壊と全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への大弾圧があるのだ。「労働組合なき社会をつくる」攻撃に対してすべての労働者の怒りを結集し,首切りと闘う労組を再生しよう。(引用終わり)

 

  稲盛和夫カルロス・ゴーン

 稲盛和夫はいまも日本の経営者として権威ある存在である。カルロス・ゴーンは1999年に,消滅寸前になっていた当時の日産に乗りこみ,この会社をV字回復させた。もっともそのV字型の業績回復は,前後する会計期間を経理的に操作(やりくり)した部分も多分にあったと指摘されてもいる。

 ともかく,1932年1月21日生まれで,もうすぐ御年88歳になる稲盛和夫は,京セラや第二電電創業者を経たのち,現在は公益財団法人稲盛財団理事長,「盛和塾」塾長を務めている。そして,大ナタを振るって経営を再建させた日本航空の名誉会長でもある。

 一方のカルロス・ゴーンは,稲盛が日本国内版の偉大な経営者であるのに比較して,国際的に非常に有名な経営者である。ブラジル出身の実業家として経歴を積みあげ,日本政府からは2004年に藍綬褒章を受章している。経営者としての経験は主に,フランス企業のミシュランルノーである。

 ゴーンは1999年以降,日本では,ルノー日産自動車三菱自動車工業の株式の相互保有を含む戦略的パートナーシップを統括する「ルノー・日産・三菱アライアンス」の社長兼最高経営責任者を務めていた。だが,2018年11月に東京地検特捜部に金融商品取引法違反の容疑で逮捕され,その後解任されていた。レバノンへの逃走劇は,その延長戦の第1幕であって,ゴーン側からの反抗が開始されたと観ることもできる。

 ところでここで,稲盛和夫カルロス・ゴーンを対置させて観察するとしたら,いったいどのような対照的な風景が,いいかえると「日本の経営者・対・国際の経営者」の比較論が可能となりそうか?

 たとえば,稲盛和夫が日本人ではなくて外国人だったらどうか? 斎藤貴男が指摘・批判したように稲盛はヒトラー礼賛を,内々の場所であったものの,堂々と公言(!)していた。逆にカルロス・ゴーンが日本人だったどうか?

 今回,安倍晋三や菅 義偉までが,もしかしたら裏舞台でからんでいたといった疑いが出ても,なんらおかしくない「ゴーン追放劇」は,「政府の要人たちの一群」と 「NISSAN の日本人幹部たち」(代表はさきほど登場したあの西川広人が代表であり,司法当局とは司法取引をしていた)とがつるんでいたかのようにして,もちろん司法も遠くのほうでだが,協力したかのような関係を推測させる構図でもって,この活劇の展開になっていた。

 2001年当時,「日産自動車株式会社 社長兼最高経営責任者」であった,企業改革経営者表彰受賞者 カルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)」の同年までの経歴は,こうなっていた。つぎの註記にかかれているように,これは首相官邸ホームページの記事である。「まだ削除されていない」(?)とでも観たらいいのか。

 註記)https://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2002/ghosn.html


略 歴

 1954年3月9日 ブラジル生まれ
 1974年  (仏)国立理工科大学(Ecole Polytechnique)に入学
 1978年  (仏)国立高等鉱業学校(Ecole des Mines de Paris)を卒業

 1978年 ミシュラン入社
 1981年  (仏)ル・ピュイ(Le Puy)工場長就任
 1984-85年 土木建設, 農業機械用タイヤ研究開発部門統括
 1985-89年 ブラジル・ミシュランの社長(ミシュランの南米事業全般を統括)

 1989年 ミシュランの北米子会社の社長,CEO(最高経営責任者)に就任
 1990年 北米ミシュランの会長,社長,CEOに就任 (ユニロイヤル・グッドリッチタイヤを買収し,北米ミシュランの抜本的なリストラを遂行。両社の統合および北米におけるマルチ・ブランド戦略などを推進)

 1996年10月 ルノーに入社
 1996年12月 上級副社長(Executive Vice President)に就任 (研究部,車両開発部,製造部,パワートレーン部,購買部及びメルコスール市場を担当)

 1999年6月 日産自動車のCOO(最高執行責任者)に就任
 2000年6月 日産自動車の社長に就任
 2001年6月 社長兼CEOに就任
 現在(当時) (仏)ルノー社,(米)ミラント社,(米)アルコア社の取締役を兼務

 壊滅寸前の日産を窮地から救出したゴーンであった。政府から勲章までもらったと経歴には書いてある。けれどもこんどは,日本からの逃亡劇を大成功させ,レバノンにもぐりこんでいる。この逃亡劇を完遂させたゴーンのことについては,実は,安倍晋三君や菅 義偉君とこのまわりに付いている高級官僚たち,そして日産の西川広人君たちは,これでこそ本当に「ゴーンを厄介払いできた」,「これから長期間をかけて,あいつを,裁判にかかわらせておき,さらに国内に閉じこめておく」よりも,そして裁判の結果が無罪になったとした場合よりも,よほどマシな現状が生まれたと喜んでいるのではないか。正直いって……。

 

 【補遺:1-川勝宣昭の露骨な民族主義

  ◆ 日産の “暴君” と対決した元広報マンはゴーン事件をどう見る ◆

 日産自動車カルロス・ゴーン元会長の逮捕劇。時を同じくして話題になったのが,この人〔川勝宣昭〕が書いた『日産自動車 極秘ファイル 2300枚』(プレジデント社〔2018年12月)という本だ。数十年前にも日産には「暴君」が存在した。労組のドン,塩路一郎氏である。当時,若い広報マンだった著者は,この塩路体制にぶつかっていく。 

 迫真のドキュメントにはうならされるが,同時にいくつもの疑問が浮かぶ。ドンを追い出したのに,またドンに牛耳られた日産。ゴーン事件をどう見ているのか,日産にはなぜ似たような事件が起こるのか。
 註記)『MOMENT 日刊ゲンダイ』2019年01月22日〔この日付は若干早めであるかもしれない〕,https://moment.nikkan-gendai.com/videos/13644

 この川勝宣昭の発言(判断)は,日産の最高経営者として19年間居たゴーン会長に関して,その任期中の半ばころまではよかったが,その後はおかしくなり,独裁的になってしまった(悪くなった⇒「悪徳経営者」になった)と断わったうえで,今回における日産からの「ゴーン逃亡という顛末」をよしとする立場を濃厚に示唆している。

 すなわち,川勝は,日本政府の関与があって当然とする思考方式を抱いている。そうだとみなされてもいい基本姿勢を保持している。いうなれば,ある種の日本民族的なナショナリズムを遠慮なく全面に出した語り口が披露されていた。日産がルノーに助けられた20世紀末の記憶は,いっさい忘れたい口調でもあった。

 川勝いわく「スキャンダルを出してでもゴーンを倒す」ことが必要だったと。ルノーに日産は43%もの株を保有されたという「原点の出来事」も,なるべく忘れていたいかのような気分を出しながら,そう語っていた。結局,「この本日の記述全体」がいわんとした中心の論点にもかかわる「説明」を,川勝は与えてくれたことになる。

 

 【補遺:2 -弁護士資格をもつアホンダラ法務大臣,森 雅子の想像を絶する失態:失言

 「『司法の場で無罪証明を』 森法相がゴーンの『日本で推定無罪の原則が守られてない』という主張を自ら追認」『深海 BUZZAP!(バザップ!)』2020年1月9日 18:25,https://buzzap.jp/news/20200109-presumption-of-innocence-ghosn/

 この記述から「冒頭」と「末尾」の段落を引用する。

 「冒頭」 近代法の大原則である「推定無罪の原則」が日本では守られていないというゴーン被告の主張をまさかの法務大臣が追認する事態となってしまいました。詳細は以下から。

  ◆ 森 雅子法相が日本の司法の推定無罪」の原則を否定

 日本時間1月8日22時からおこなわれたカルロス・ゴーン被告の会見を受け,森 雅子法務大臣が深夜に異例の臨時会見をおこなってゴーン被告を批判しました。ですが森法相はその場で「ゴーン被告人に嫌疑がかかっているこれらの経済犯罪について,潔白だというのなら司法の場で正々堂々と無罪を証明すべきである」と明言(魚拓)してしまいました。

 これによって結果的に,ゴーン被告が会見で訴えた「推定有罪の原則がはびこっている」という主張をみずから証明するかたちになっています。当然ですが,日本を含めた先進国の裁判では推定無罪が原則中の大原則であり,これに外れることは,日本の司法が前近代的なものであることをみずから認めることになります。森 雅子法相は自身も弁護士であり,その原則をしらないことは絶対にありえません。

 「末尾」 まったく笑えない「司法の場で無罪証明を」という発言。

 ゴーン被告のみずからの経緯を踏まえたうえでの批判,これまでの日本の司法の繰り返されてきた問題点,そして「推定無罪の原則」という近代法の大原則の存在を考えれば,森 雅子法相のこの発言は日本の司法制度の致命的な問題点をみずから世界中に公表したことになります。

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 森 雅子法相はことの重大さに気づいたのか,1月9日16:32のツイートで「無罪を証明」は「無罪を主張」のいい間違えであると釈明し,訂正。ですが,昨〔1月9日〕夜の会見後の 1:35のツイートでも「無罪を証明」と書いており,こちらはツイ消し後未明の 5:16に「無罪を主張」に書き換えたものを,再度ツイートしているため単なるその場の「いい間違え」で済む問題ではありません。

 

 【補遺:3 - ビル・パウエル(Newsweek シニアライター)の指摘】

     ◆「ゴーン追放で日産が払った大きな代償」◆

  =『Newsweek 日本版』,2020年1月9日,https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/01/post-92098.php
  
  『日産から東風へ』

 ゴーンの友人や顧問らによれば,当時ゴーンのもとで日産の副会長を務めていた西川廣人ら日産の長年の幹部らは,ゴーンが築いたグローバル連合(三菱自動車にくわえ,中国,ロシア,東欧の企業も参加)において,日産の重要性が低下しつつあることに危機感を抱いていた。

 杞憂ではない。ゴーンは,前々から企業連合を統括する「中枢の戦略的持ち株会社」を設立する構想を温めていた。1案では,日産の株式は持株会社の株式24%に交換されることになっていた。しかもゴーンはしだいに中国市場に注力しはじめていた。

 中国市場で継続的にシェアを伸ばすうえで,主力になるのは日産ではなく,武漢に本社を置く中国の国有自動車メーカー,2000年代初めから日産と提携している東風だ。だがゴーンは2017年,ルノーと東風の合弁により中国で電気自動車の製造を開始するという計画を発表。ゴーンはこの合弁会社が世界最大の自動車市場である中国市場を支配すると確信しており,日産の幹部はますます不満を募らせた。

 ゴーンに近い筋によれば,のだという。

 ゴーンは当初から容疑を否認。日産と日本の検察は十分な証拠があるとして,裁判になればゴーンは有罪になるはずとみていた。そんな彼らの目の前で,ゴーンは昨〔2019〕年の12月29日,日本を脱出した。日本政府は大恥をかかされた。

 ゴーン逮捕後,日産は2019年最初の3四半期で営業利益が91%減り,1万2000人超の人員削減を発表した。株価は前年比で30%超下落。ゴーンが「クーデター」の張本人とみなす西川廣人は昨年9月に社長兼CEOを退任した。 

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 日産の守旧派はバックミラーに映る外国人を尻目に走り去ろうとしたが,その代償はきわめて高かった。

 ゴーンが2018年11月19日逮捕されて拘留されはじめたころ,すでにつぎのように警告していた識者がいたが,いまとなっては,ほぼこの指摘とおりに事態が進行中である。

  ★ 加谷珪一稿「神格化していたゴーン氏を強烈批判する日本社会の『ヤバい経営感覚』 だから,この国はナメられる」★

   =『現代ビジネス』2018年11月28日,https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58672?page=4

 加谷は,結論部でこう警告していた。「今回のゴーン氏追放劇には,日産を独立させたいとの思惑が働いているとの報道もある。今後のグローバルな企業戦略まで考慮に入れたうえでのクーデター劇ならまだマシだが,単にゴーン氏を追い出したいという情緒的な話だとすると,お粗末きわまりない。場合によってはかつての日産に逆戻りという可能性すらあるだろう」。

 この1年以上も前に「日産のクーデタ劇」に関して解説されていた懸念は,正鵠を射ていたことになる。もしかしたら,このままだと日産は, “逆戻り以上” よりもさらに程度の悪い経営状態に向けてみずからを突入させるための臨界状況を,わざわざ作ったといえなくもない。

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