在日米軍厚木基地の騒音問題などで苦しむ地域市民にがまんだけを強いる米日主従関係の本質

  日本の空は主に米軍が領有,騒音に苦しむ基地周辺地域住民
                   (2014年5月21日)


 【要 点】 日米安保条約体制下,理不尽で不当ながまんを強いられつづけている米軍基地周辺に暮らす住民たち,これは平和の国でいられる日本の代償か?


 厚木基地所属の米軍機から部品落下 神奈川の住宅街」朝日新聞』2014年1月10日朝刊報道

 米海軍厚木基地広報部によると,2014年1月9日午後2時半ごろ,神奈川県綾瀬市寺尾北2丁目の住宅街に,訓練飛行中の同基地所属の空母艦載機FA18E「スーパーホーネット」の部品が落下した。安全が確認されるまで,同型機の飛行を停止するという。

 県警大和署の調べでは,落ちたのは長さ約17センチ,幅2センチ,厚さ 0.5センチの金属片。民家のアルミフェンスの上部がへこみ,停車中のワゴン車の側面ドアのガラスに約5センチの穴が開いたという。

 同基地をめぐっては,所属するヘリコプターが昨〔2013〕年12月に同県三浦市で不時着横転し,一昨年にも所属する航空機の一部が落下した。基地の地元の綾瀬,大和両市の市長は〔2014年1月〕9日夜,基地司令官に抗議した。

 --そもそも,民間航空会社が安全第1に旅客を運ぶために航空機を運航させるのと,軍隊(空軍)の戦闘機〔など〕が有事に備えてふだんから訓練飛行させるのとでは,基本的にまったく性格の異なる航空機の管理・運営・整備がなされている。この点はいうまでもないことがらである。

 つまり,前段のごとき戦闘機(軍用機)の諸事故が,民間機とはいちじるしい確率の差(事故や支障や不具合を高い頻度で発生させるという必然的な事由があること,双方におけるその格段の違い)をもっていて,なんらおかしいことはない。むしろ,それが通常の態勢である。この当たりまえの事実を念頭において,今日の記述をしていく必要があり,避けては通れないその前提条件である。

 厚木基地とこれをかこむ周辺住宅地の様子は,昔〔戦前・戦中〕から旧大日本帝国軍の飛行場が立地・存在してきた地域とはいえ,現在ではこれほどまわりが住宅密集地となった状況のなかで,米軍(空軍)と航空自衛隊が共用する基地として使われている。

f:id:socialsciencereview:20200127081233j:plain  註記)https://www.kanaloco.jp/article/entry-38083.html

 こうした軍事的な基地の現状じたいが異様であるという認識が,自然に出てきて,少しもおかしくない。実は後段で触れるように,本日は,厚木基地の騒音問題をめぐり1976年に始まった訴訟「飛行差し止めを訴え」の判決が下される予定がある(その後,この訴訟は第5次まで進展している,この記述では2014年5月時点の話題となっている)。

 

 「住宅上空,爆音の恐怖 軍用機音,年2.3万回 第4次厚木基地訴訟あす判決」朝日新聞』2014年年5月20日夕刊

 この記事は,社会面に「住宅上空,爆音の恐怖 軍用機音,年2. 3万回 第4次厚木基地訴訟あす判決」という見出しの記事を載せていた。明日(今日の2014年5月21日)この判決が注目されるというのであった。その記事の内容は,こう報道されていた。

 --ベッドタウンの真ん中にあり,米海軍と海上自衛隊が使う厚木基地(神奈川県大和市綾瀬市)。騒音に悩む周辺住民約7千人が損害賠償や飛行差し止めを国に求めた裁判の判決が〔2014年5月〕21日に横浜地裁でいい渡される。被害は東京都町田市から神奈川県藤沢市までに及び,地元自治体は236万人が影響を受けていると訴える。

 家族連れや航空ファンが見守るなか,戦闘機やヘリコプターが轟音をたてて離着陸を繰り返す。今月3日,一般開放された厚木基地の春祭りには5万5千人が訪れた。会場には「空美(そらみ)ちゃん」と呼ばれる航空機好きの若い女性も目立った。

 東京都目黒区の派遣社員(36歳)は「機能を追究した美しいスタイルがなんともいえない」。横浜市の会社員(29歳)も「国を守る任務に心が熱くなる。国際情勢も気になってくる」と話す。だが基地直近に住宅が立つ様子は初めてしった。会社員は「周りの人が騒音をずっと聞くと思うと大変なこと。基地の場所はむずかしい問題ですね」とい言った。

 補注)飛行機(軍用機?)好きが,たまに基地見学に来て,航空機を見物するのは楽しいことかもしれないが,その基地周辺でふだん生活する住民にとっては,ひどい騒音の苦痛を日常的に受けるほかない,逃げられない生活の状況に置かれている。上記裁判はその問題に抗議する住民側の訴えである。

 基地周辺には小田急や東急,相鉄の路線が乗り入れ,都心のベッドタウンとして人口が増えつづけてきた。南北に延びる飛行ルートの直下にも住宅が密集する。基地所属の米空母艦載機パイロットは「いろんな条件で操縦してきたが,厚木への離着陸はもっとも緊張するもののひとつ。恐ろしく思うこともある」と明かす。

 基地から北に約1キロの保育園を訪ねた。戦闘機が近づくと室内の会話がまったく聞こえない。昼寝をしていた子は起こされ,顔をこわばらせる。保育士にしがみついて離れない子も。伊知地るみ園長(53歳)は「子どもは恐怖でしゃべれなくなる。異常な体験が園でも家でも続いていく。慣れるしかないけれど,そんな理不尽を認めていいはずがない」と話す。ジェット戦闘機は編隊でつぎつぎに飛ぶため音が数分続くこともしばしばだ。

 大和市によれば,基地から1キロの住宅街での騒音回数は昨〔2013〕年1年間で約2万3千回。最高音は120デシベルで,電車のガード下(100デシベル)を上回る。

 防衛省は,町田市から神奈川県藤沢市まで南北30キロに及ぶ一帯で騒音が基準を超えるとして住宅防音工事の助成をしてきた。一方,地元自治体によれば,騒音苦情は横浜や川崎,鎌倉各市などでも寄せられ,影響人口は236万人に及ぶ。

 途中であるが,大阪国際空港伊丹空港)も似たような騒音問題をかかえている。ただしこちらは,民間航空機だけの離着陸に発する騒音問題である。

 補注)大阪国際空港伊丹空港)も住宅街の真ん中の位置している。この民間専用の空港でも騒音問題のために,周辺地域の住民に対して多大な生活妨害が発生しており,この問題をめぐっては各種各様の対策・措置がなされてきている。しかし,厚木基地のような軍用基地では,また次元の異なった国家(日本国およびアメリカ合衆国)側の,地域住民の日常生活などほとんど無視した管理・ 運営がなされてきている。

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 出所)大阪国際空港「騒音」区域指定図,http://zakumi23.com/?eid=39

 「飛行差し止めを訴え」。--厚木基地の騒音訴訟は1976年に始まった。3度の裁判で「騒音は違法」として損害賠償を命じる司法判断が定着。だが「目的は騒音をなくすこと」とする住民側は2007年に4次訴訟を起こした。

 原告は大和,綾瀬,町田市などの約7千人。航空機の騒音基準「うるささ指数」(W値)が75以上の住民が,提訴時で総額53億8500万円の賠償を求めた。原告の一部は夜間の飛行差し止めなども請求。国は,(1)米軍機の飛行を制約する権限がない,(2)自衛隊機の騒音は防音工事で対応してきたと反論している。

  ◆「キーワード〈うるささ指数(W値)〉」◆


 航空機による1日のうるささを表わす基準。騒音の大きさや継続時間,頻度,発生する時間帯を加味して算出する。夜の方がうるさく感じるため,夜間は昼間の3倍,深夜から早朝は10倍に頻度を補正する。W値75以上の区域が,国の住宅防音工事の助成対象になる。  

 

 ③ 厚木基地周辺騒音問題の深刻さ

 つぎにかかげる図表は,町田市が作成した厚木基地周辺の騒音分布地図である。これは,「つぎの地図は,2012年度に,神奈川県及び基地周辺12市に寄せられた苦情から,住所地(町名まで)が判明した苦情4,112件について,その発生場所を示したものです」という地図による図解である。

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 ※-1 地図上の赤丸1つは,町名まで判明した苦情1件を表わす。

 ※-2 青い線は,国が2003年,2004年に実施した騒音調査に基づくW値75のコンターライン。

 ※-3 基地周辺12市とは,大和市綾瀬市相模原市藤沢市茅ヶ崎市,海老名市,座間市横浜市,町田市,川崎市鎌倉市平塚市

 出所)厚木基地周辺における騒音苦情の発生地点」(厚木基地騒音対策協議会作成資料) ,https://www.city.machida.tokyo.jp/kurashi/kankyo/minomawari/souon/souon/kujyou_titen.html

 この騒音地図を別の統計・数値で表現したものが,つぎの「 町田市に寄せられた苦情件数」である。出所は同上である。

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 さらに,町田市に寄せられた航空機騒音等に関する苦情・意見の中から代表的なものを,以下のように掲載(列記)していた。これは,2014年5月時点で参照したものであるが,本日 2020年1月27日時点でのぞいたものと共通している。当然の事情であるが。

   ★-1「騒音がもの凄く,テレビの音も聞こえない,会話すらできない」。

   ★-2「頭痛が止まらない。病院等公共施設にも深刻な影響を及ぼしている」。

   ★-3「子どもが怖がって寝付かない」。

   ★-4「訓練の詳細をなぜ教えてくれないのか。あまりにも勝手ではないか」。

   ★-5「低空飛行・編隊飛行をしている。事故を起こすのではないかと心配だ」。

 補注)これらの苦情に関連させていえば,要は「軍の論理(立場)」にあっては,住民の生活(立場)など考える余地など,まったくといっていいくらい含まれていない。米「軍の目的」のためであるから「我慢しろ:受忍すべき」だという,国家側の問答無用的な理屈しか,まともには伝わってこない。

 ここでは,非常に明快に,市民の利害:日常生活側において最低限必要であるはずの〈静穏の確保必要性〉の問題など,軍事目的のためとなれば,それも米軍基地が占有しているこの厚木基地においては,わずかも入るすきまもないといった〈基本的な特性〉が露骨に現われている。

 軍隊側にいわせれば「訓練の詳細をなぜ教えてくれない」と問われても,答えないのは当然の理屈である。また「事故を起こすのではないかと心配だ」という点に対しても,軍事訓練に対してそんなナマッチョロイことをいっていたら,パイロットの伎倆向上など不可能だ,すべては「込みでの話だ」という横柄かつ粗雑な答えしか返ってこない。今後は,すでに特定秘密保護法が施行されている日本国になっているからには,米軍基地の関連について住民側が特定の反対の意志や運動をすることは,ますます困難な条件がくわわった。

 もっぱら騒音の問題からのみ軍事基地を問題にし,前述に指摘した裁判が審理されているけれども,この種の問題の本質面にまでどの程度まで踏みこめるのか,あまり期待はしないほうがいい。日本の裁判所は,最高裁に近づけば近づくほど,より露骨に・赤裸々に「国家のための司法」でしかない性格を表現していく,そうした基本性格をしっかりと有している。この事実は「砂川判決」(1959年12月)のときからすでに自明に属するものである。

 --最近作として,日本における裁判所官僚制度の組織的・人的硬直性を指摘し批判する,瀬木比呂志『絶望の裁判所』(講談社,2014年2月)が刊行されている。この本などを読めば,日本の裁判所が市民の立場からは期待などできない〔しないほうが得策である〕「国家権力体のための司法組織」に終始しているか,その本質および実態が理解できるはずである。

 ましてや,日米安保条約体制下,厚木基地は,米軍(空軍)および航空自衛隊の軍用目的のための存在している。敗戦直後(1945年8月28日),マッカーサー元帥が降り立ったのがこの飛行場であった。いまではともかく,アメリカ空軍と航空自衛隊が共同で使用している軍事基地である。

 最近かまびすしく議論がゆきかっている「集団的自衛権行使の問題」とも絡めて考えるに,「国民(市民・住民)の生命や財産」を守るのだという軍隊が,それも他国の軍隊が主に,周辺地域に暮らす人びとの生活に騒音問題を深刻にもたらしている実態を,われわれはどのように受けとめるべきか,もっと真剣に再考しなければならない。

 前掲の「厚木基地周辺における騒音苦情の発生地点」は,こう訴えている。「このように,航空機騒音等に苦しむ声が市に多数寄せられております。市では,被害の軽減に向けて,厚木基地周辺自治体と協力して,米軍及び日本政府に対し訓練飛行の中止や飛行の制限等を強く要請しています。詳細は,『市の取り組み』をご覧ください」。

 以上は,2014年5月に閲覧したとき読めた町田市関係の文章であったが,2020年1月にあらためて閲覧してみると,こまかい表現で違いがあった。つぎに2020年1月における文章も紹介しておくので,比較してみるといい。2014年5月のときにあった形容詞の「強く」が削除されている。

 「このように,航空機騒音等に苦しむ声が市に寄せられております。市では,被害の軽減に向けて,厚木基地周辺自治体と協力して,米軍及び日本政府に対し訓練飛行の中止や飛行の制限等を要請しています」。

 国民・市民の生活や安全を守るのだという軍隊じたいがかかげる目的のためであれば,人びとが我慢の限界などはるかに超えている騒音発生に囲まれる日常生活を余儀なくされても当然だ,文句などいうな,と傲然といいはるのが「国家本来の立場」というものである。

 思い起こせば,大日本帝国時代のこの政府は,まさしくその典型的な代表例:好見本であった。これが,日本全国に点在する在日米軍基地と自衛隊基地の実態をしるうえで踏まえるべき,もっとも大事な核心である。ここには,矛盾しあい,相容れない現実の問題の対立が存在する。

 国家側が専横な態度で,自国民:人びとに対応するかぎり,この問題は永遠に解決するめどが立たたない。沖縄県がこの問題で一番苦しめられている地域である。なにせ,昭和天皇が敗戦後,アメリカに謹上したつもりでいたのが,この琉球の島である。彼がアメリカ側に希望したとおりに,いまもなおオキナワは利用されている。分かりやすくいえば,米軍基地がこの島を踏みつけにしつづける歴史が継続中である。

 アメリカは,いったいいつになったら,この島から基地から引き揚げることになるのか? へたをすると1世紀を越えるかもしれない。あと25年も経てばその年数に到達するのである。

 ちなみに,沖縄県の米軍普天間飛行場(基地)を辺野古地区に移転させる工事がすでに開始されていた。ところが,この移転を完了させる工事の竣工にまで必要な年数は,沿岸区域の埋立工事が難航しているせいで(対象の海底の地質は「マヨネーズ状」だと指摘されていた),最近つぎのような報道もあった。

  ★「辺野古新基地の総工費9300億円  工事完了は『承認』後12年  防衛省が計画変更」★
 =『琉球新報』2019年12月26日 06:30,https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1048549.html


【東京】 防衛省は〔2019年12月〕25日,沖縄県名護市辺野古の新基地建設に関して有識者が軟弱地盤の問題を議論する「技術検討会」を開き,総工費を9300億円とする試算を示した。2014年に明示した3500億円から約2.7倍になった。

 

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 埋め立てなどに要する工期9年3カ月を含め,米軍に施設を提供し事業が完了するまでに必要な期間を12年とした。日米が「2022年度またはその後」と合意した米軍普天間飛行場の返還時期は,2030年代にずれこむことが確実になった。 

 前段で,在日米軍基地が存在してきた期間は,今年(2020年)ですでに75年にもなると記述してみた。ところが,その沖縄県辺野古地域において,普天間飛行場の代替基地が完成する時期が “2030年代にまでずれこむ” と報道されている。防衛省はまことに悠長に語っているけれども,この事実はさらにいえば,辺野古地域にその新しい代替用の基地(飛行場)が完成し,軍用に供されはじめたら,敗戦後からこれまで経ってきた年数は,もしかしたらなどいっているうちに,すぐに1世紀もの期間になっていく。

 

 厚木基地騒音訴訟,自衛隊機の飛行差し止め命令 全国初」 asahi.com  2014年5月21日

 米海軍と海上自衛隊が使用する厚木基地の周辺住民らが,騒音による被害を国に訴えた訴訟の判決が〔2014年5月〕21日,横浜地裁であった。佐村浩之裁判長は,過去最高額となる総額約70億円の損害賠償にくわえて,自衛隊機の午後10時~午前6時の間の飛行差し止めを初めて命じた。米軍機の飛行差し止め請求は退けた。
 註記)http://digital.asahi.com/articles/ASG5K6FD0G5KULOB01T.html?iref=comtop_6_02 2014年5月21日14時22分。

 この横浜地裁の判決に関しては,「米軍機の飛行差し止め請求は避けた」と報道されていた。まさしく『対米従属の米日関係』を正直に表現する「判決」であった。

 在日米軍に対して,日本の裁判所はまともに手出しできない,裁判の相手としてふつうにあつかえず,いつも逃げているという実情がある。「米軍基地がアメリカ国の実質的な植民地状態である事実」が当然視されている。そうとしかいいようがない。

 裁判所は,日本国内の同じ軍事基地における騒音問題について,海上自衛隊のその問題はダメだと裁きうるが,米海軍のその問題には口出しできていない。タブー扱いなのである。同じ騒音でも米軍機の騒音は「なお我慢していろ」と,国民・市民たちに指示するだけであり,まさしく問答無用の判決を下してきた。このような判決がありえていいのか,はたして許されるのか?

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 ※ 本日〔2020年1月27日〕における関連の別編として,つぎの記述が公表されている。

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