国民生活を向上させるつもりがない安倍晋三自民党政権の「社会政策:貧困の哲学」は,いつまで続くのか(2)

教育・住居・医療など社会政策問題では相も変わらず「安倍自民党流の無方針と粗雑」,先進国にあるまじき貧困路線,格差社会を不可避にする「百年の大計:教育理念なし」の政権(2)-就活の問題と高等教育制度の乱立・混迷-

 

  要点:1 教育費・住居費・医療費で,誰もが経済面で心配のない国家扶助体制を準備・実施しないことには,格差社会の幅は今後も広がるばかりである

  要点:2 軍事費の乱費的な支出や無駄金バラマキ外交の「国際アホノミクス的なアベノポリティックスの弊害」の犠牲が,社会保障・福祉制度の不備・不全状態を余儀なくしている

  要点:3 大学進学への経費がどうしてこれほど高くかかるのか? そもそも元のとれない高等教育課程への進路に意味があるのか?


 「教育無償化,どんな制度?(上)-幼児・保育 利用料が対象」日本経済新聞』2019年10月23日夕刊

 虫の音が聞こえる秋の夜,筧家では恵と幸子が食後のデザートに梨を用意しています。ソファに座ってテレビを観てていた良男。テレビでは消費税増税後,暮らしにどのような影響があったか特集しています。梨を運んできた恵もソファに座りました。

   そういえば子どもを保育所に通わせている先輩が,今月から保育料がかからなくなったから,消費増税でも負担が大幅に減ったと話していたわ。

 幸子  〔2019年〕10月から幼児教育・保育の無償化が始まったからね。消費増税で増えた国の税収の一部を子育て世帯に還元する施策よ。無償となるのは3~5歳児の子どもが通う保育所や幼稚園の利用料金ね。原則,4月時点で3歳の子からが対象だけど,幼稚園に限って3歳の誕生日から無償になるの。住民税が非課税の家庭では0~2歳児の保育料も無償化の対象となるわ。

 良男  タダで保育所や幼稚園に通えるのか?

 幸子  無償化の対象は保育料など月々の利用料金よ。給食費や制服代などは対象外なの。自治体によっては,給食費分を独自に助成金を出して無償化するケースもあるようね。

 恵  利用料を払わなくてよくなるなんて助かるよね。

 幸子  無償化となる仕組は施設によっても違うわ。認可保育所認定こども園,一定の条件を満たした幼稚園では保育料や利用料を払う必要がなくなるの。自治体の認可を受けていない認可外保育所やベビーシッター,一部の幼稚園などは利用者が支払った利用料金を後日,還付する仕組よ。ただこちらは上限が決められているので,完全に無償にならない可能性もあるわ。

 恵  上限はいくらなの?

 幸子  3~5歳児の認可外保育所やベビーシッターは月3万7000円が上限よ。ただ認可外保育所に入っている子は誰でも3万7000円を還付されるわけではないの。事前に住んでいる自治体で「保育の必要性がある」と認定を受けた子が対象となるのよ。保育の必要性は,両親が働いている証明書などを提出することで認定を受けられるわ。

 良男  幼稚園は?

 幸子  一部の対象外の幼稚園の場合は月2万5700円が上限。幼稚園でも,通常の降園時間以降も夜まで預かってもらって両親が働く家庭もあるわね。この預かり保育の利用料については,月1万1300円が上限よ。幼稚園の上限2万5700円と足して月3万7000円で,認可外保育所の上限額と同額になるの。預かり保育についても,保育所同様に保育の必要性の認定が必要よ。両親が働いているわけではないのに,用事があって預かり保育を利用する人は対象とならないわ。

 恵  そんなに還付して大丈夫なのかしら。

 幸子  保育所の保育料などはもともと,実際にかかる費用の半分以上を国や自治体の公費で負担していたの。たとえば認可保育所の3歳児の保育にかかる費用は1人当たり平均7万円だけれど,実際に利用者が負担するのは月平均3万円よ(2017年度財政制度等審議会資料より)。今回,無償となるのはその利用者負担分が対象なので,消費増税で増えた分すべて使うわけではないのよ。

 良男  消費増税の還元策がなんで幼児教育や保育の無償化なんだろう。

 幸子  少子化が進むなか,経済的な理由で「子どもをもてない」「もう1人産むのは諦めた」という声も少なくないのよ。明治安田生命保険が〔2019年10月〕15日に発表した0~6歳の子どもがいる人へのアンケート調査では,子育てにかかる費用は平均月4万687円で,毎月2万3620円不足していると感じていることがわかったわ。

 良男  主にどんな費用がかかっているんだろうか。

 幸子  子育てで負担が大きいと感じている費用について「保育園・幼稚園代」と答えた人が66.9%でもっとも多かったわ。2番目は「習い事やお稽古事の費用」(41%)。3番目の「食費」(27.6%)の倍以上も保育園・幼稚園代を負担に感じる人がいるのね。

 恵  だから子育て世帯にとって無償化は助かるわけね。

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 幸子  そうね。同じ調査では無償化について74.5%が「賛成」と答えているわ。ただ,「無償化の導入によってさらに子どもをほしいか」との問いでは「さらにほしい」と答えた人は2.2%にとどまったわ。「年齢的にむずかしい」(44.3%),「生活費は増税で負担増になる」(38%),「いまの人数で十分」(33.2%)といった回答に次いで,32.8%が「教育費や保育料が補助されても,習い事などで教育費がかかる」と答えているの。無償化でお金の心配が完全になくなるわけではなさそうね。「保育園探しが大変だから」という理由を挙げる声も7%あったわ。

 良男  待機児童の問題も相変わらず深刻だからな。

 幸子  2018年10月時点の待機児童は4万7198人。前年同期から8千人余り減ったとはいえかなりの人数ね。無償化をきっかけに保育園に預けて働きはじめたいと考える人も少なくなさそうだから,待機児童対策は急務といえるわ。明治安田生命の小玉祐一チーフエコノミストは「保育園不足を放置したままでは『幼児教育・保育の無償化』策が逆効果になりかねない」と指摘しているわ。(引照終わり)

 以上,長い引用・紹介になった。指摘されている基本の問題は,いったいなにか? 少子高齢社会が大問題だと叫ばれているなかで,この問題を根本的に打開するための社会政策が,政府によって積極的に提示されているようには,全然感じられない。とりわけ,子育てそのものにかかる経費の負担が最大の隘路=制約になっている。

 子どもの数が増えない原因は,

 出生が可能である夫婦などがすでに「年齢的にむずかしい」(44.3%)社会層になっているとか,

 税金面で「生活費は増税で負担増になる」(38%)とか,

「いまの人数で十分」(33.2%)といった回答」まで出ている。

 とくに,最後の答えは何人の子どもがいる夫婦などのその答えなのか不詳だが,要は全体的に少子高齢社会を少しでもいいから,改善に向かわせるための要因がみつけにくい。

 婚姻件数そのものが減少傾向にあり(2010年に70万214件〔確定値〕が2020年には58万5389件〔予測値),婚姻の時期も高齢化してきた。

 国家・地方自治体があせって, “少子高齢社会で大変だ” と一般論としてはいいつづけてきた。だが,そのなかにあって,婚姻・同居などしている男女が子どもを産もうとする意欲を積極的にもてないでいる状況は,まだ持続している。この趨勢を抜本から変えられるだけの基盤造りが,とくに政府次元ではまだまだ不十分なままに経過してきた。

 「無償化の導入によってさらに子どもをほしいか」との問いでは,「さらにほしい」と答えた人は 2.2%にとどまった」などと聞かされたとなれば,出生率の改善・向上を期待したい立場としては,グーの根も出ないほどがっくり来る回答であった。

 初婚の年齢については,こういう指摘がある。

 ※-1 女性の平均年齢

 2018年に厚生労働省がおこなった人口動態調査の結果では,女性の平均初婚年齢は29.4歳です。これを早いとみるか遅いとみるかには個人差がありますが,2011年以降の同調査から,女性の平均初婚年齢は29歳を超えています。20代前半で結婚する女性より,30歳前後で結婚する女性のほうが多くなりつつあるといえるでしょう。

 

 また,1995年の同調査では,女性の平均初婚年齢は26.3歳だったことから約20年の間に晩婚化が進んだことが分かります。

 

 ※-2 男性の平均年齢

 男性の平均初婚年齢は女性よりさらに少し上回り,31.1歳です。男性の平均初婚年齢も調査を開始した1995年には28.5歳と,現在の女性の平均初婚年齢より若く,当時に比べると女性同様,晩婚化が進んだといえます。

 

 男女ともに30歳前後が平均初婚年齢である日本では,30歳を過ぎて未婚であってもさほど気にする必要はないのかもしれません。

 註記)「結婚する平均年齢って? 年代別の割合や年齢差のある結婚についても」『tapple』2019.12.25,https://tapple.me/lab/encounter/44162/

 最後の一言は,少子高齢社会の問題の解決をめざす議論をするためには,妨害因子になるほかないものである。それはともかく,それでは男女ともに,1995年以前の初婚年齢にまで引き下げられる方策がないのかと考える余地がある。「現状ではない」としかいいようがない。

 大学進学率は,2019年3月に高校を卒業した105万6千人のうち,大学・短大には 57万9千人,54.8%(現役. 進学率)が進学している。この若者層が卒業するまで就活にはげむ,そして就職・就業するのは,浪人生活なしとして,23歳の誕生日が年度中に来る時期である。専門学校や高専などに進学している者も,そのほかに大勢いる。

 そうした現状のなかでは,大学卒業後にすぐ結婚する若者の男女がかぎられてくるのは,理の必然である。とくに女性は「結婚⇒出産⇒育児」というライフサイクル(人生行程)については,昔ではあれば20代の前半に結婚してそのサイクルに進む場合,つまり専業主婦になる経路をたどることも多かった。しかし,専業主婦で女性が生活をしていける夫婦形態は少なくなっている。

 だが,いまの時代に「大学は出たけれど・・・・」,大企業に就職ができないだけでなく,正規社員にもなれない若者が多い。結婚などできないと諦めている彼らもいる。それではどうするか? 関連しそうな新聞の解説記事を読んでみたけれども,それは既婚者たちの子育てに関して生じている困難の問題であった。すなわち,それ以前の段階における未婚者の話題,当然(多分)子どもをもたない社会集団に関する話題ではなかった。

 補注)2018年に関する数値として「男性 21.2%,女性 55.3%が非正規雇用形態で就業している。

 一難に遭遇させられるその前段階においてすでに,そのほかの一難が待ちかまえている。少子高齢社会で日本は大変だ,人口がみるみるうちに減っていくぞといいながら,この国のあの「世襲3代目の大▼カ政治屋」ときたら,軍事費ならば気前よくポンポンとアメリカのトランプの機嫌取りをするみたく買いこみ増やしてきた。さらに,外交面ではこちらでも威勢よく国民の税金を諸外国にバラマくばかりで,内政をまともに大事にして優先するという基本方針(均衡感覚)すらもちあわせていない。

 この首相の第2次政権もすでに満7年以上が経ってきたが,少子高齢社会に少しでも歯止めをかけられる方策は,実質なにも準備できなかった。いまから4年前にこういう話題が,にわかに社会の関心を集めたが,このときからどのくらい改善・進歩してきたといえるのか? 皆無に等しいといっても過言ではない。


 「『保育園落ちた日本死ね』と叫んだ人に伝えたい,保育園が増えない理由」(『駒崎弘樹 認定NPO法人フローレンス代表理事』2016年02月17日,https://www.komazaki.net/activity/2016/02/004774/)という記述があった。長いので冒頭しか紹介しないが,これを題材にしてさらに,日本の保育所問題がどのくらい改善され向上したかを考えてみたところで,それほど芳しくとはいえない。

 こんばんは,都内で13園の小規模認可保育所を経営する,中小企業のおっさんの駒崎です。今日〔2016年2月17日〕は,ネット上でバズっている魂の叫びに,保育園現場から,また政府の審議会委員の立場から答えたいと思います。

 

  魂の叫び「保育園落ちた日本死ね!!!」※

 

 ある保育園入園審査に落ちた方の,ネット上の魂の叫びが,さざ波のように広がっています。「保育園落ちた日本死ね!!!」 分かる,分かるよ。なにが一億総活躍社会だよ,と。私活躍できないじゃん,と。そのとおり。じゃあ,政府はなにもしていないのか?

 いままで,アベの政治は,なにかをやってきたか。だが,いずれにせよ,その後も出生率指数のもちなおしに向かいうるような気配は,皆目なしである。なぜか? つぎに「保育園落ちた日本死ね!!!」の文句を,次段にあらためて紹介しておく。この叫びが話題になってから,丸4年が立ったが,このとき指摘された点が,いかほど改善されているか。

   ※ 保育園落ちた日本死ね!!!(2016-02-15)※
    http://anond.hatelabo.jp/20160215171759

 何なんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ?

 

 何が少子化だよクソ。子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからwって言ってて子供産むやつなんかいねーよ。不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増やせよ。

 

 オリンピックで何百億円無駄に使ってんだよ。エンブレムとかどうでもいいから保育園作れよ。有名なデザイナーに払う金あるなら保育園作れよ。

 さてところで,2020東京オリンピックは,総額でざっと3兆円そのもの予算が一時的な無駄遣いを意味している。東京が猛暑の時期に2週間ほどやる国際大運動会のために,大枚はたくカネがあったら,このママのいうことなど,しごく簡単に黙らせられる(満足させられる)はずである。

 安倍晋三君は2013年9月,IOCの総会で「東京にオリンピックを招致するために」「アンダーコントロールという大ウソ」を,いつもの癖でもあったが,平然と吐いていた。「彼という自分のミエ」のために開催するのが,2020東京オリンピックである。ところがいま〔2020年3月段階〕,新型肺炎コロナウイルスの感染拡大問題を理由に,このオリンピック大会を延期をするかという声が,数日前,JOC内部からも出ていた。中止にはしたくないし,という事情もあると推察するが……。

 いまの安倍晋三にとっては「一億総活躍社会」とかいったお得意である空虚な標語は,彼自身のためのである虚無的な「やってる感」に利用できれば,あとはポイ捨ての対象でしかないのである。北朝鮮による日本人拉致問題は,どうなっているか? 「彼ら:アベたち」が好んで,上着に着けているブルーリボンバッチは,もともとダテであったに過ぎない。

 このバッチは「拉致問題:やってる感」のための象徴みたいな小道具である。だから,いまとなっては,いいかげん外しておいたほうがよいのでは? かの国の最高指導者同志にさえ,アベ君が小馬鹿にされてきた実績ならば,日朝関係にしかと記録されている。どのみち,アベ君には外交力がない。「外交の安倍」というのは,海外諸国はアベが持参する手土産を褒めていうことばであった。

 ここで( ↓ )「保育園落ちた日本死ね!!!」に戻る。

 どうすんだよ会社やめなくちゃならねーだろ。ふざけんな日本。保育園増やせないなら児童手当20万にしろよ。保育園も増やせないし児童手当も数千円しか払えないけど少子化なんとかしたいんだよねーってそんなムシのいい話あるかよボケ。

 

 国が子供産ませないでどうすんだよ。金があれば子供産むってやつがゴマンといるんだから取り敢えず金出すか子供にかかる費用全てを無償にしろよ。

 

 不倫したり賄賂受け取ったりウチワ作ってるやつ見繕って国会議員を半分位クビにすりゃ財源作れるだろ。まじいい加減にしろ日本。(引用終わり)

 「国会議員を半分位クビにすりゃ財源作れる」ことは確かであるが,ただしそれでは約150億円程度にしかならないと,その後指摘されていた。そうではなく,安倍晋三自身がさんざん無駄遣いしてきた数十兆円単位の国家資金に注目して,モノをいい批判したほうが的を射ている。東日本大震災・東電福島第1原発事故によって福島県浜通り地区は,公共施設の復旧はできてきているものの,避難地域に指定されていた市町村を中心に人口が戻らない。

 オリンピックなどやっているヒマがあるのであれば,この国のどこへ予算を振り向けるべきかは,いちいちこまかくいうまでもなく,以前から一目瞭然であった。それなのに,あのトンデモの総理大臣は,最近も相変わらず完全に子どもの首相である立場でする行動様式しか発揮できていない。このままでは,この国がますます疲弊させ破壊していくばかりであった。
 
 ここで教育無償化の話題に戻るが,本質面をとらえない議論がゆきかっているだけでは,問題の根幹は把握できないと痛感する。

 

 「教育無償化,どんな制度?(下)-大学・短大 低所得者に限定」日本経済新聞』2019年10月30日夕刊

 「満も梨,食べる?」 幸子の声で満もくわわりました。満の手にはリーフレットが。「学校にあったよ。『学びたい気持ちを応援します!』って書いてある」と満。良男は「そうか,大学も来年から無償化か」と満面の笑みで幸子に話しかけました。

 良男  こちらの無償化はどんな仕組なの?

 幸子  大学や短期大学,専門学校といった高等教育機関への進学を支援する新しい制度のことね。消費税増税で増えた税収を財源に,2020年4月から実施される予定よ。内容は授業料などの減免制度と,返済の必要がない給付型奨学金の拡充の2本立て。対象は住民税非課税世帯とそれに準じる世帯の学生なの。3~5歳の子がいれば所得に関係なく全世帯が利用できる幼児教育の無償化と違って,利用者が限定されているのよ。

 満  なんだそうか……。うちは対象じゃなさそうだね。

 幸子  安倍晋三首相は先日の所信表明演説で「来〔2020〕年4月からは,真に必要な子どもたちの高等教育も無償化いたします」といってたけど,低所得世帯を指しているようね。しかも所得水準で支援割合が違うの。両親と本人,中学生の4人世帯を例に挙げると,年収約270万円までの住民税非課税世帯は上限額を利用できるけど,それを超えると3分の2に減り,約300万円で3分の1,約380万円を上回るとゼロになる。

 良男  中途半端だな。

 幸子  そんな批判もあってか「国は無償化という言葉を使わなくなった」と大和総研の研究員の是枝俊悟さんは指摘するわ。文部科学省の資料では「修学支援新制度」となっているようね。対象は75万人程度をみこんでいるそうよ。

 満  前はなかった制度なの?

 幸子  授業料減免は各高等教育機関が個別に対応していたけど,今回は国が統一的な基準をつくって支援するの。日本学生支援機構(JASSO)が支給する国の奨学金は,以前は返す必要がある貸与型だけだったけど,2017年度に返済不要の給付型ができて,今回それを拡充するの。授業料減免で学費を補い,奨学金で生活費を賄って,学業に専念してもらう考えね。

 補注)ここで指摘されている奨学金制度の話題は,本来の給付型奨学金に触れている。だが,この記述にしたがって考えると,日本学生支援機構「学業に専念してもら」えない貸与型奨学金の制度を,いままでもそしてこれからも運用していくことに基本方針に据えていた。結局,この機構の業務内容はその根幹においてなにも変質させえていない。

 良男  いくらもらえるのかな。

 幸子  まずは奨学金からね。金額は国公立や私立といった進学先,自宅や自宅外といった通学形態で変わる。大学でみると,もっとも少ない国公立の自宅生で年間約35万円,もっとも多い私立の自宅外生で約91万円(ともに上限額)ね。2019年度は24万円と48万円だったから,1.5~2倍近くに増えるわ。給付型はこれまでは住民税非課税世帯しか申しこめなかったけど「準じる世帯」にも対象が広がったの。

 補注)今回の制度変更によって国立大学生のなかでは約5千人が,従来の授業料減免制度が適用されなくなるという矛盾がすでに指摘されている。つまり,いいことだけであるような制度変更ではない事実は,ここでは指摘されていない。

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 満  成績もよくないとダメなんでしょ。

 幸子  収入基準と資産基準(生計維持者2人の場合は2000万円未満),それに本人の学力基準があるの。学力は申込時までの評価が5段階で3.5以上などね。高校在学中に申しこむ「予約採用」はこれまで各高校に枠があったけど,2020年度から全員採用になるのよ。

 良男  授業料減免の方はどうなっているんだい?

 幸子  大学や専門学校といった学校の種類にくわえて国公立か私立かでも金額が異なるの。上限額がもっとも多い私立大は入学金約26万円(1回限り)と授業料約70万円(年間)の計96万円。国立大は約28万円と約54万円で計82万円になるわね。給付型の対象者は授業料減免も受けられるので,たとえば私立大の自宅外生は給付型と授業料減免を合わせて約187万円になるわね。

 満  私立の有名大学なんかも対象になっているの?

 幸子  9月に対象校が公表されて,国公私立の大学・短大は全体の97%に当たる1043校が要件を満たし対象になったの。専門学校は62%の1688校だったわ。

 良男  無償化でかなりの家計が助かりそうだな。

 幸子  是枝さんは「授業料は国公立大ならほぼカバーできるけど,私立大は6~7割にとどまる」といっていたわ。文科省の調査では,同じ私立でも文科系学部の授業料は70万円台なのでかなり補えるけど,理科系は100万円を超えるので,これでは足りないわ。生活費を賄う目的の給付型奨学金も十分とはいえない。足りない分は貸与型の奨学金などを利用することになりそうね。

 補注)私立大学はさておき,国立大学に授業料が課せられているという事実そのものに関した疑問は,この解説記事のなかではまったく不在である。ともかく,現状を前提にした説明であるが,大学と授業料と奨学金などの総合的な関係性を配慮した記述にしてくれないと,目先の話題に目線があちこちに拡散される議論しかできない。

 満  なかにはアルバイトに励む学生もいそうだね。

 幸子  対象者は家計の状況にくわえ,学業成績も毎年チェックされるの。留年したり,取得単位が足りなかったりすると支給が打ち切られるだけでなく,返還を求められることもあるので注意しなきゃね。「入学後も気を抜かず,よい成績を残してきちんと卒業する必要がある」とファイナンシャルプランナーの新美昌也さんは忠告していたわ。

 補注)この程度の当たりまえのことが,奨学金に関連させて説明されるところからして,どだいおかしい。奨学金の水準にもよるが,場合によってはアルバイト禁止にし,そのさい,そうさせうる水準の金額を支給する制度的な保障が必要である。だが,ここまで議論は,そうした期待ができそうにもない付近でうろうろしている。

 良男  申しこみなどのスケジュールはどうなってるの。

 幸子  初年度の2020年度分は,給付型奨学金の予約採用の申しこみは終了して年末までに採用候補者が決まる見通しよ。授業料減免は来〔2020〕年4月以降に進学先で手続をする。すでに進学した人の在学採用は11月中に申請するの。初年度は予約採用の時期が後にずれたけど,2021年度からは5~7月に申請し10月ぐらいに候補者が決まる通常の日程に戻るとみられているわ。しっかり確認しておきたいわね。(引照終わり)

 要は,日本の国立大学における給付型奨学金制度は,中途半端というそのまた以前のところで,一時停止状態になっている。制度の改変の仕方が徹底していない。国民たちの不満を目先でごまかすような制度いじりに終始している。

 低所得層に的を絞って奨学金給付や授業料の減免を措置するのではなく,学生の学力や成績を中心にして制度を用意するのであれば,保護者の年収基準によってのみ制限を設けるとかする方法はおかしい。こちらは第2義的な関連づけでよいのである。その点では「機会均等の意味」をとりちがえている。

 第1義に配慮すべき要因は,学生側の勉学意欲と実際の学業成績などであり,つぎの経済的条件(貧富の程度)を考慮してくわえた「奨学金(給付型のこと)の制度設計」をすべきところを,以上を端的に批判してしまえば,まったくの本末転倒,いいかえれば順逆をほとんど踏まえない,それも生半可で小出しの制度変更しかおこなっていなかった。

 「奨学金が支える『Fランク大学』の葛藤と不安 1300万円のハンデを負って通う価値はあるか」『東洋経済 ONLINE』2016/04/26 6:00,https://toyokeizai.net/articles/-/114808?page=3 と題した記述が,つぎのように説明していた。

 

 22歳の時点では,どのようなかたちで働いても,それなりの金額を稼ぐことはできる。しかし,短くない人生。定年といわれる年齢まで,継続して稼ぐことは簡単ではない。

 

 聖学院大学における,正規社員としての就職率は7割程度で,2割強はいわゆる非正規雇用としてのフリーターだ。このランクの大学だと,どこも似たような数字になる傾向が強いという。学生が在学中から,自分の将来や先々の見通しをイメージすることもまた,簡単ではないようだ。

 実際問題としてこのように,大学を卒業しても非正規労働者になる若者はいくらでもいる。この事実は非一流大学の卒業生であれば,その比率が増えている。給付型の奨学金を支給されていた彼らならばともかく,貸与型の若者たちはさあ大変(?)というべき卒業後の生活状況に追いこまれる。

 結婚? 子どもを儲ける? 女性の場合は大卒でも,さらに貧困になりやすい状況のなかに放りこまれている。「女性,とくに単身女性とシングルマザーの貧困問題」が,深刻な現実問題として存在する。

 現状において,少子高齢社会の進行が止まるわけがない。奨学金制度を給付型1本に改善できても,問題がすべて解決できるわけではなく,日本という国家経済・社会全体の今後にもかかっている重要な課題ゆえ,基本的な問題はもっと総合的に解明される必要があった。今日のこの記述ではそこまで議論できない。

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