日本原子力村の雇われ芸人・石坂浩二の哀れ,原発推進の宣伝マンとして毎年出場してきた愚の骨頂

またぞろ「原発=厄介もの」でも電源として有用だと喧伝する電気事業連合会の恣意的な広告(石坂浩二のCM),はて「原発炭酸ガスを随伴的にたくさん発生させる火力発電」の1種ではなかったか
                   (2019年3月22日)
 

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  要点:1 いまどき,原発再稼働に異様にこだわる「原発もちの電力会社」,そして経済産業省資源エネルギー庁の旧態依然,その原子力村的なエネルギー観

  要点:2 原発のコスト「論」から観たら論外であり法外の原発必要論

  要点:3 石坂浩二原発の本質を理解できているのか疑問あり


【前  論】

 2020年3月,「またまた石坂浩二電気事業連合会CMに出演,総スカンを食っている」(これが題名)と批判されていた。

 註記)『阿修羅掲示板』2020年3月6日 02:34:20,http://www.asyura2.com/19/genpatu52/msg/545.html
 
 またまた石坂浩二電気事業連合会CMに出演,厳しい批判を浴びている。

  ユーチューブ動画記事はこれ( ↓ ),「対話篇」(電気事業連合会,2020/2/28)

 

 

 「発電時にCO2 を排出しない」というが,採鉱・精錬や廃炉に大量の石油を使うので,原子力も莫大な量のCO2 を放出している。いつもとおりのマヤカシである。〔このような〕原子力推進CMに出演すれば総スカンを食うのは明らかで,イメージを大切にする芸能人は避けるのが普通である。

 〔それでも〕あえて出演するということは,趣味の骨董に金を使いすぎたのか,石坂浩二は相当金に困っているのだろう。そういう金欠芸能人につけこむのが原子力ムラのいやらしいところであるが,札束ビンタに屈していいなりになる人間も情けない。

 下にツイートを引用するが,否定的なものだけを選んだわけではない。

 「石坂浩二」,「電気事業連合会」,「原子力」などで検索すると,出てくるのは99%,彼に批判的なツイートなのである。国民の9割以上は原子力反対である。

 いくら石坂浩二を出そうが,デタラメを並べようが,もうだまされることはない。彼と原子力ムラに対する憎しみを煽るだけだ。石坂浩二を出演させている放送局や番組のスポンサーに抗議の声を送って,芸能界から彼を追放しよう。(引用終わり)

 以上,『阿修羅掲示板』の記述からの引用であるが,本(旧)ブログは以前,この石坂浩二原発CM出演を批判していた。それは1年前,2019年3月22日の記述であった。今日〔2020年3月6日〕に復活させるのが便宜と考え,つぎにその全文を再掲する。

 

  電気事業連合会原発CMのコッケイ

 まず最初に挙げてみるつぎの画像資料は,電気事業連合会原発CMのひとつである。いつもの石坂浩二が出演している「編」のひとつで,最新公表されていた動画である。

 冒頭から一言で切り捨てていってしまえば,詭弁と虚説のないまぜ状態を演出されてCM動画であった。本ブログは以前にも,石坂浩二が出て宣伝する原発必要論をとりあげ議論したことがある。それにしてもあいもかわらず,旧態依然でしかない変奏曲的な「原発擁護〈節〉」には呆れるほかない。しかし,呆れているだけでは能がないので,あらためて批判しておかねばなるまい。

 そのCM動画から2画像を切りとって紹介する。今年〔2020年〕の宣伝と内容は,前年〔2019年〕と同工異曲であった。

 

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出所)以上は,https://www.youtube.com/watch?v=apd-4uKLFKU  から切り貼りしたが,この住所の「元のユーチューブ動画記事」は削除されており,現在〔2020年3月〕は閲覧できない。 

 現在〔こちらでは2019年3月のこと〕,電事連が流している「電気事業連合会(fepc channel)」のこの動画CMは,「円の上の石坂さん」篇ということであった。本ブログ筆者が,上のユーチューブ動画で視聴した時刻:2019/03/22 5:45 ですでに,「968,561回(ほど)視聴(されてきた)」と,この動画の下枠に付記(その閲覧回数が計上)されていた。

 この動画CMの公表開始は,2019/02/28 であった。その主旨はこう説明されている。

 あなたは,日本のエネルギー自給率がどれくらいかしっていますか? 実は8%。多くを海外に依存しているんです。電力の安定供給のためには,火力,再生可能エネルギー原子力をバランスよく組みあわせるエネルギーミックスが必要だと考えます。

 以前であれば原発原子力を燃料とする発電)がないと,日本のエネルギー資源は枯渇していくみたいな調子であったものが,いまでは,2011年に発生した「3・11」東日本大震災と東電福島第1原発事故を受けてなのか,また世論の3分の2は確実に「原発不要・廃止」に賛成する動向を強く意識してなのか,さすがに原発なしに日本のエネルギーはまともには供給できないという主張はできなくなっている。

 補注1)日本政府は以前であれば,原発が全電源に占める比率を50%以上にする計画であった。2050年をめざしてそう企図されていたが,いまでは「夢物語」としては,まさしく悪夢であった。

 補注2)鈴木達治郞「震災8年,ますます失墜する『原子力への信頼』迷走する原発政策に,社会の監視・評価能力を高めよう」(『WEBRONZA』2019年3月11日,https://webronza.asahi.com/science/articles/2019030700006.html)が,つぎの調査結果を紹介
していた。

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 最近,第3者研究機関(民間シンクタンク日本経済研究センター)が発表した試算によれば,東電福島第1原発事故における廃炉にかかる費用は,デブリのとり出しを先送りすることで,廃炉や賠償など事故対応の費用(石棺によってデブリや建屋を覆う)を,2050年までに35兆円に抑えられるけれども,これに対して,汚染水から放射性物質を完全にとり除く方法を採る場合は,その経費が80兆円に膨らむ可能性がある報告していた。というのは,とくに除去がむずかしいトリチウムの処理に40兆円と膨大な費用がかさむとみるからである。

 註記)日本経済研究センター「〈エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル 続・福島第一原発事故の国民負担〉 事故処理費用,40年間に35兆~80兆円に-廃炉見送り(閉じ込め・管理方式)も選択肢に,汚染水への対策が急務-」2019年03月07日発表,https://www.jcer.or.jp/policy-proposals/2019037.html

 「3・11」の東電福島第1原発事故は,一度でも原発という装置・機械が大事故を起こしたとなると,原発事業として電力を発電する技術の方式がその根幹からゆるがされただけでなく,もはや完全に否定されるべき電源が原子力であるとみなされざるをえなかった事実を,否応なしにかつ決定的に教えていた。

 だが,現に原発保有している電力会社は,東電のように手持ちの原発を再稼働できない事情をかかえる以外の各電力会社は,多額の設備投資をしてきたというのに,いまだに未稼働状態に置かれている原発の再稼働に向けて,それはもうたいそう必死になって努力してきた。

 現在〔2019年3月現在の話〕,再稼働にこぎつけた原発9基のうちでは九州電力の4基が一番多いが,すでに九電の管内とされる地域では,「3・11」を契機にして太陽光発電が非常に普及してきた。そのために,原発を稼働させている時間帯においては,電力の需給関係で供給が過剰となっており,太陽光による発電分の受け入れを断わる事態まで生じていた。

 半年前(2018年9月)の時点で,こういうニュースがあった。つぎの ② に紹介する。

 

 「太陽光で電力供給過剰が問題に,九電が急ぐ火力制御の次の一手 再エネ発電事業者と協力」(『ニュースイッチ 日刊工業新聞』2018年09月14日,https://newswitch.jp/p/14422

 九州電力太陽光発電など再生可能エネルギーの出力制御への準備を進めている。電力の需給バランスを保つため出力を抑える制御で,再エネ発電事業者の協力をうる。今秋に実施の可能性があり,実行されれば離島以外では全国で初めて。カギを握るのが天候だけに予断を許さない状況が続く。

 電力の安定供給には需要と供給のバランスをとり,周波数を一定にすることが必要。周波数の大きな変動は発電設備の停止を引き起こし,大規模な停電につながる可能性がある。夏から秋にかけて気温が下がると空調利用に影響して電力需要が小さくなる。従来は火力発電所を制御するなどして対応してきた。

 しかし近年は太陽光発電の増加などで,春や秋など電力需要が比較的小さい時期,太陽光の出力が大きい昼に供給力が需要を上回る状況が発生している。九州本土での太陽光の接続は7月末時点で803万キロワット。2012年に再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)が始まって以降に急増し,同年度末に比べると約7倍になっている。

 九州電は太陽光の電力を受け入れるため発電所などの設備を駆使する。火力発電所の出力を下げ,ダムを活用する揚水発電所の水のくみ上げに電力を使い,大容量蓄電池に充電するなど対処してきた。それでも5月3日13時には太陽光の出力が需要の8割程度を占めた。これは火力や揚水による調整余力がわずかしかない厳しい需給状況を意味する。

 出力制御が九州本土で実施されるのは,火力や揚水,九州と本州をつなぐ送電線で本州に送電するなどで対応しても供給力が需要を上回る場合。今回の対象となる太陽光は2万4000件で合計出力は約430万キロワット。事業者にはダイレクトメールを送って協力を求めているほか実施の見通しをホームページや電子メールでしらせる仕組を整えた。

 出力制御に大きく影響するのが天候だ。太陽光による発電と空調利用の需給両面を左右する。雨の降り方によっては揚水の活用に制約が生じるため台風の接近などにも細心の注意を払う。九州電の担当者は天候予測をにらみ,過去の需要実績や発電所の状況などを加味して需給予想の精度を上げている。(引用終わり)

 以上の記述の理解を助けるために,つぎの画像資料を引用しておく。関連する説明は,この画像を引用した原文中にあるので,参照されたい。

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 出所)「九州電力が再エネ出力抑制の前にすべき6つのこと(プレスリリース)」『isep 環境エネルギー政策研究所』2018年9月21日,https://www.isep.or.jp/archives/library/11321

 補注)この記述は,九電に対して当該問題に関する具体的な提言を論議していた。上の画像に表現された九電管内での「再生エネルギーの開発・利用」状況は,その最右翼の位置を占めるはずの風力発電が僅少の割合でしか出ていない。

 この再生エネ間において顕著な不均衡は,太陽光発電に対する国家補助政策の行き過ぎが効いていたために発生していた。原子力原発)はこの画像でみてもいまや〈お邪魔虫〉的な存在になっている。

 参考にまで挙げておくと,前掲の論稿「九州電力が再エネ出力抑制の前にすべき6つのこと(プレスリリース)」が提言している要点は,つぎのものであった。

  1 関門連系線を最大限活用する
  2 火力発電所(とくに石炭火力)および原子力発電所の稼働抑制
  3 需要側調整機能(デマンドレスポンス)およびVPP(バーチャルパワープラント)の積極導入
  4 出力抑制した自然エネルギー事業者への補償
  5 「接続可能量」の廃止と「優先給電」の確立
  6 電力需給調整の情報公開の徹底

 以上のなかでVPPとは,こう解説されている。途中であるが参考にすべき内容といえる。

 VPP(バーチャルパワープラント)とは,太陽光や風力,地熱など,さまざまなタイプの再生可能エネルギーが徐々に普及している現在,それに呼応するようにクローズアップされている新たな構想である。これは,直訳の「仮想発電所」という言葉が示すように,大規模な施設や設備を必要とする従来の発電所ではなく,

 小規模な再生可能エネルギーの発電施設や,燃料電池などを使用した蓄電施設,デマンドレスポンスなどによる省エネのとり組みから生じる電力,さらに,小規模な電力の需要抑制システムなど,さまざまな電力のリソースをまとめ,あたかもひとつの発電所のように機能させるという考え方である。

 註記)「VPP(バーチャルパワープラント)推進の背景とそのメリット」『UNISYS Foresight in sight』https://www.unisys.co.jp/solution/lob/energy/cis/column/vpp.html

 前段に引用した記事のなかに説明されていた太陽光発電業者に対する九電側主導の対応=制限は,電源の組みあわせ論の「見地・じたい」に関するかぎり,一般論としてはきわめてまっとうな筋道をめざしている。

 だが,この理屈がそのまま原発を再稼働させ,その電源における比率を2030年時点で「20~22%」にまで引き上げたいとする「電力会社側や経済産業省資源エネルギー庁(国家)側,広くは原子力村じたいの欲求」に逆用されているゆえ,これが核心の問題,換言すると「再生エネルギーの開発・利用」に対する阻害外要因になっている。

 なかんずく,国民たちの啓蒙に向けて放ってきた「原発CMの狙い」は,最初に紹介したごとき「原発絶対必要論」を大前提にしていた。そのさい,原発については,ほかの電源とも共存させうる領域を確実に確保・維持しようと狙っている。

 もっとも,いまどき原発という電源を,ベースロードに位置づけようと繰り返す考え方は,完全に間違えている。にもかかわららず,この原発の電力を優先させて使わせようとする「宣伝の方向」が定められていた。しかしながらここでは,原発に依存する電力生産そのものが不要になっている現実が,あらためて強調されねばならない。

 補注)九電は原発を全基未稼働の状態のときでも,電力会社として電力供給力に困窮したという事態は生じていなかった。もちろん「3・11」以降における話題である。

 要するに九電管内においては,太陽光発電の供給力がものすごい勢いで伸張してきていた。しかし,電源構成内容の日々刻刻における動きに対応して均衡をとる体制がまだ未発達:未整備であり,十分に対応できていない。日本の電力事情に関してはそうした改善点が残っており,未然において調整しようとする態勢はなかった。

 一方に,いわゆるスマート・グリッド(次世代送電網;電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し,最適化できる送電網)が未整備である現状がある。他方に,原発を再稼働させたら九電管内のように,太陽光発電の容量が相対的に非常に多い比率を占める地域では,ただちに後者が邪魔者あつかいされるような電力事情の中身・構成になっている。

 そもそもスマート・グリッドの十分な構築が未検討・未確立のままである実情のなかで,九電のように電力需給関係をめぐるやりとりが,操業度で融通の利かない「原発を稼働させる」のだから,いざというときはともかく「太陽光発電は遠慮していろ」といった,いうなれば電源構成間のごぜりあいみたいな交渉事(九電の場合ももちろんこの電力会社に主導権がある)は,再生エネルギーの開発・利用が後手にまわっていた日本に特有の現象である。

 

 「安全でも安価でも安心でもない原発」の困ったとりあつかい

 スリーマイル島原発事故(1979年3月)は,原発という発電方式に基本的な疑問を突きつけていた。さらに,チェルノブイリ原発事故(1986年4月)は,原発に大事故が発生すると地球環境がどのように破壊されるか実地に証明していた。そして,東電福島第1原発事故(2011年3月)は,原発という電力生産の方法が,人類・人間にとっていまやとうてい採算の合わないものであり,「反文明的な非利器」(事故を起こせば「即:凶器」)である事実を白日のもとにさらけ出した。

 そうはいっても,日本の電力会社は原発保有しない沖縄電力をのぞくすべての会社が原発保有している。それゆえ,現在のように再稼働が電力会社が望むようには進展していない状況のなかでは,なんといっても,資産(資金運用)面で大きな負担が強いられている。

 各電力会社は,なんとしてでも原発を再稼働させたいという欲求を抱いている。当面する財務管理会計上の計算から観れば,原発を稼働させえない現状は,いうまでもなくとても深刻な経営問題である。かといって,原発の再稼働が無条件に許される事情にはない。原発不要論の世論は圧倒的な趨勢であり,この国民たち側の判断はいまも変わりはない。

 だが,それでもともかく,電力会社側はなんでもかんでも原発を再稼働させて,当面の経営状態を財務面において改善・向上させたいことだけは確かである。電力会社の経営者でなくとも,会社の幹部であれば誰でもそう考える。という事情を踏まえていえば,電気事業連合会原発CMが,いわば「手を変え品を変え」る要領で,それこそ必死になって実行されている。

 視点を変えて以上の希望をとらえてみれば,電力会社が原発の電源において占める比率を「2030年に 20~22%」(と経済産業省資源エネルギー庁が提示していると,今回の原発CMも断わっている)にしたらいい,なぜなら,原発の燃料(核燃料)は「準国産」だから〔といっても本当はウソに近い理屈でしかないが〕といった論理構成になっていた。

 冒頭に紹介したこの原発CMは,エネルギー源の国産(自国内調達)比率は8%しかないと,最初に強調していた。火力発電用に輸入する石炭・石油・LNGが,本当のところ(実は),アベノミクスの円安誘導策によって割高になっているから困るといいたかった。

 ところで「ドル高・円安」で困っているのは,なにも発電用に輸入する「上記の化石燃料」関連の品目に限られたことではない。貿易収支全体にかかわっている経済項目の価格動向に関する話題になっているのであり,なにも特別に「電源エネルギーをうるために焚かれる化石燃料関係の価格動向」だけにかかわる問題ではなかった。

 とりわけ,原発で焚かれる核燃料を「準国産」などと命名して呼称するのは,マヤカシの形容・表現以外なにものでもない。いずれにせよ,今回(〔2019年〕3月)に入って流されている原発CMは,その前面に出された特徴としてみると,すでに「原発神話」など全然通用しなくなった現状を踏まえている。

 とはいえ,それはかなり苦しい様相をみせていた。つまり「安全・安価・安心」の信頼性(信頼度)で判断したら,その評判:評価などすっかり地に落ちていた原発の再稼働の問題であった。それゆえ,エネルギー自給率8%(もしかしてこれが準国産だという原発の核燃料までも計算のなかに入れた%であるならば,眉ツバどころが欺瞞そのものになる)という貿易収支に関連させうる事情を挙げたうえで,いいかえれば「ひとつの赤字要因でしかない」問題点にのみ関係づけた宣伝しかできなくなっていた。

 

  アベノミクスの悪影響を原発再稼働のために利用する欺瞞のまやかかし

 ちなみに,貿易収支において「赤字」(国外から物品・用役を買うことで生じる支出のことを「赤字を生む原因だ」とだけ,単純に理解させるのは,はっきりいって間違っている)を発生させる舞台ともなる「支出」のうち,『輸入上位10品目の移り変わり』についてつぎの統計数値を参照したい。これからはなにを読みとれるか?

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  出所)http://www.jftc.or.jp/kids/kids_news/japan/item.html

 上表からは,つぎのごとき議論をするが,その前に発電燃料用に直接まわされる輸入品目を抜き出して整理してみたい。

 「1990年輸入総額 33兆8,552億円のうち(比率では),原油および粗油 13.5%,LNG 2.8%,石炭 2.6%で,合計18.9%,金額は6兆3986億円」。

 「2000年輸入総額 40兆9,384億円のうち,原油および粗油 11.8%,LNG 3.4%,〔石炭は10位未満で不掲出で計算〕で,合計15.2〔プラス α 〕%,(となっているがここでは,こちらもひとまず18.9%で計算しておき),金額は7兆7374億円〔を出してみた〕」。

 「2010年輸入総額 60兆7,649億円のうち,原油および粗油 15.5%,LNG 5.7%,石炭 3.5%で,合計24.7%,金額は15兆0089億円」。

 「2017年輸入総額 75兆3,792億円のうち,原油および粗油 9.5%,LNG 5.2%, 石炭 3.4%で,合計18.1%,金額は13兆6436億円」。

 なかでも,2010年と2017年の輸入総額のうちに占める「原油および粗油,LNG,石炭」注目してみるといいが,そのさい,原油のなかには化学製品の原料に向けられる部分が含まれ,LNGのなかには業務・家庭の燃料に利用される部分が含まれ,石炭のなかには一般産業のボイラ燃料やセメント製造用燃料も含まれているので,これらの分は差し引いた議論とする必要もある。

 さて,問題はアベノミクスがその間,円安路線をわざわざ推進してきたために,発電用には多量に使用される石油(粗油)やLNGの輸入価格が急速に上昇してきた。「USドル / 円の為替レート」に関する年間の平均レートは,こう推移していた。

 補注)以下の統計数値は,「USドル / 円の為替レートの推移」,http://www.jftc.or.jp/kids/kids_news/japan/item.html から抜粋。

  2010年   87.7799 (1ドルに対する円) 
  2011年   79.8070 〔3月11日,東電福島第1原発事故発生〕
  2012年   79.7905 〔12月26日,安倍第2次政権成立〕
  2013年   97.5957
  2014年 105.9448
  2015年 121.0440
  2016年 108.7929
  2017年 112.1661

 さて,問題は2つに分けて観る必要がある。

 ひとつは,火力発電用に輸入される「石油(粗油)やLNGの輸入価格」は,全輸入品目のなかで実際に占めている比率を踏まえておき,これが発電用の使途にまわされて相当の金額になっていく点をしっておく必要がある。

 ふたつは,輸入品目全体(全量)のなかで占める「石油(粗油)やLNGの輸入価格」のその実質的な割合(比率)がとくに意識されるのだとすれば,日本の貿易収支の赤字原因があたかも,もっぱら発電の燃料に使用されるその「石油(粗油)やLNG」が「高くなっていった価格」にあるといってのみおこなわれる説明は,二重三重の意味で事実に合致した説明ではない。事実からだいぶズレた,それも扇動的な宣伝を含み,虚偽の説明にすらなっている。

 そもそも輸入品目すべてに対していえる点があった。2012年12月に成立した第2次安倍晋三政権は,円安・ドル高を経済政策的に誘導するアベノミクスを標榜し,実施してきた。その結果,一時期にはその為替レートを5割までも円安・ドル高(急速に割高)にしていく結果を,政策的に惹起させる行為をみずから採った。これはアベノミクスの数少ない成果〔のひとつ?〕といえよう。

 この安倍政権による,しかも「3・11」(2011年)の東電福島第1原発事故の発生を踏まえたのかとでもいえそうな,以上のごとき電力発電用燃料調達価格を上昇させてきた顛末は,ほとんど人為的な操作によって惹起させられていたともいえる。それゆえ,その原因を放置したまま問答無用に,「火力発電用の燃料は高い」のだから「原発の再稼働」が必要だという論理は,何重もの意味において,作為的に倒錯的な虚偽を塗りこんでいた。そう解釈・批判されて当然である。

 しかも,原発は事故を起こさなくとも,これからあとには必らず迎える廃炉工程における技術経済的な諸問題から,いったいどれほど多くの経費が発生していくのか,いまだに計算不可能でありながらも未知の諸点ばかりである。

 ましてや,大事故を起こしていた東電福島第1原発の後始末には,いまのところでもなんと「80兆円もの超巨額の経費」がかかっていくと,分析・推算されてもいた。けれども今後,この金額でさえもさらにどのくらい増大していくかと問われて,これを否定できる者はいない。

 断わるまでもなく,東電福島第1原発事故現場も含めての話となるが,日本に存在する原発全基がいずれ迎える「通常の廃炉作業」のために必要となる経費の総額は,この先,超巨額というべききわめて高い水準になるはずである。最低限,その覚悟だけは必要である。

 冒頭の ① に紹介した原発CMは,以上に説明した「原発問題に本来的に由来する悲惨と至難な事情」は隠したまま,そのほんの一部の都合のいい事実(発電用の燃料は輸入に頼っていて心もとないという1点)のみを,大げさに誇張していた。それと同時に,反面では原発に固有である非常に都合の悪い事実は,すべて故意に放置しており,「原発再稼働の必要」を唱える宣伝(広義でいえば虚偽の扇動)を試みていた。

 原発そのものがもはや採算がとれない発電装置・機械になった事実は,いまとなっては,否定のしようもない「現実の結果」である。「再生エネルギーの開発・利用」の方途は,日本でもようやく本格的に進行しはじめたものの,この足を引っぱる役目を原発が現に果たしている。

 ある意味でいうとすでに,原発の存在意義は〈風前の灯火〉である。しかし,その《悪魔の火》を完全に日本の国土から消し去ることは,廃炉事業じたいに関する展望を少しでもしればただちに分かるように,至難の業である。

 それはさておき,現有の原発を再稼働させたいと熱望する「電力会社の経営の論理:営利追求の立場」は,ひとまず短期的な視点でのみ理解できる主張ではあっても,未来に向けてはまったく希望がないどころか,「悪魔的な素性と相性」しかもちあわせてない原発に,いったいいつまでもこだわりつづけるのかという疑問に対して,なにも答えていない。

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