原発は時代遅れの発電装置,「公害問題の魔王」である原発を維持したいイデオロギーの根拠は「原爆保持願望」か

原発の維持・再稼働にこだわる日本政府のエネルギー政策は現実無視の観念論,原発に執心するかぎり「再生エネルギーの開発・利用」は,これからも遅れをとる

                   (2019年3月11日)

 

  要点:1日本経済新聞』は,政府経産省原発維持・再稼働政策をそのつど「風見鶏的に支持していく」のか,それではいずれ大恥をかくことにならないか,日経の立場の有効性はすでに時間的にも空間的にも余地を与えられていないのではないか

  要点:2 1945年3月10日「東京下町大空襲」から2011年3月11日「東電福島第1原発事故」へ,そのあいだで考えるべきこと


 日本経済新聞』2019年3月11日朝刊35面「社会1」

 引用する記事の見出しは東京大空襲74年,遺族ら追悼 戦争,繰り返さない」

 一晩で約10万人が犠牲になったとされる東京大空襲から74年を迎えた〔2019年3月〕10日,遺骨が納められている東京都慰霊堂墨田区)で法要が営まれ,遺族らが犠牲者を追悼し,二度と戦争を繰り返してはならないとの思いを新たにした。

 法要には遺族ら約600人が出席。東京都の小池百合子知事は追悼の辞で「戦後生まれの世代が大半を占めるようになったいまだからこそ,私たちには戦争の悲惨さを風化させることなく,命の尊さや平和の大切さをつぎの世代に語り継いでいく重要な使命がある」などと述べた。秋篠宮ご夫妻も参列し,焼香された。

 都慰霊協会によると,犠牲者名簿には遺族の申し出などにより新たに89人が加わり,計8万1147人になった。身元が判明した遺骨約3700人分について都が引きとりを呼びかけているが,この1年間で引きとりはなかった。

 祖母ら親族を空襲で亡くしたという千葉県市川市の長谷川一江さん(71歳)は献花し「平成は,日本で戦争がない時代になろうとしている。つぎの時代も平和であってほしい」と話した。

 埼玉県北本市の中尾真人さん(70歳)は母親の家族9人が,倒壊した家屋の下敷きになるなどして犠牲になった。母親から当時の話をよく聞いていたといい「二度と戦争はあってはならない」と力をこめた。

 1945年3月10日未明,米軍のB29爆撃機約300機による市街地への無差別爆撃で,下町を中心に大火災が起きた。東京は1942年から終戦までに100回以上の空襲を受け,焼け野原となった。

 

 東日本大震災きょう8年」『日本経済新聞』2019年3月11日朝刊1面,冒頭ではなく,左・下部に配置された記事

 東日本大震災は〔2019年3月〕11日,発生から8年を迎え,各地で平成最後となる追悼の集いが開かれる。避難者全体の数は約5万2千人に減ったが,福島では東京電力福島第1原子力発電所事故の影響でいまも約3万2600人が県外で避難生活を送る。(関連記事を社会面,特集23~26面に)

 政府の復興・創生期間が終わる2020年度末まで残り約2年。岩手,宮城,福島の3県の災害公営住宅は計画戸数の95%以上が完成。今〔3〕月23日には岩手の宮古-釜石で,津波で被災した鉄道の運行が始まる。

 

  「エネルギー改革 道半ば 震災8年,影響今も 火力依存で高コスト 原発新増設,方針示せず」日本経済新聞』2019年3月11日朝刊5面「総合・経済」

 さきに断わっておくが,この記事はいまだに「原発にこだわる政府の基本的な立場」を解説(支持?)する内容である。この要点は「貿易赤字の原因」は「原発稼働が十分でないところにある」とみなす短絡した思考回路にみいだせ,いわば,ともかく「原発再稼働推進」の立場が露骨に前面に押し出されている。

 もっとも,今後における中長期的な観点のみならず,当面の短期的な視点から観ても必要不可欠である「再生可能エネルギーの開発・利用」に関する問題じたいは軽視されたまま,「3・11」の影響で未稼働状態を強いられている「現有設備:既存の多くの原発」を,ともかく動かしたくてしようがない安倍晋三政権のあせりに迎合する報道が,この『日本経済新聞』では基調になっている。

 その基本路線が「日本財界〔政界〕御用新聞紙」でもある『日本経済新聞』の報道姿勢に貫かれてきた。なお,以下に記事を引用しつつ論じる内容は,途中に補注の記述も相当量挿入されている。そのために読みづらい個所があるかもしれないが,その点は留意して読んでほしい。

 --東日本大震災の発生で日本の電力体制は大きな打撃を受けた。8年が経過したいまも影響は消えていない。原子力発電所の再稼働は政府が思うように進まず,再生可能エネルギーの普及も遅れ,化石燃料を使う火力発電への依存度は8割を超えている。エネルギーのコスト競争力は日本経済の基盤だ。道半ばの改革を前進させなければ成長の足かせになる状況が続く。

 補注)この指摘は絶対的に過誤だとはいえないまでも,かなり現状をおおげさに解釈している。「化石燃料の多用」に原因する「エネルギーのコスト競争力」の減退は,そもそもアベノミクスに起因する問題でもあったのだから,このように表面的な言及の仕方はなにか「底意」があるのではとまで疑わせかねない。

 少なくとも2011年3月以来,直後の困難な時期をのぞけば,日本経済が競争力を減退させたとはいってもこの現象は以前からのものであって,「3・11」のせいにすべてを押しつけるような解釈はいただけない。

 1)電源3%止まり(「原発」が占める割合が3%ということ)

 「原子力政策に関して,国民からまだ十分な理解をいただいいているとは思わない。不断の活動を続けていかなければいけない」。〔2019年〕2月,世耕弘成経済産業相閣議後の記者会見でこう強調した。

 補注)経済産業省担大臣のこの発言は,もともと無理筋の発想にもとづいていた。国民たちの6割から7割までが,いままで継続的して「原発の再稼働には反対の意思」を明示してきている。にもかかわらず「国民からまだ十分な理解をいただいいているとは思わない」というのは,原子力政策がすでに崩壊している実情はさておいても,ずいぶんと倒錯した(国民の意思総体に反した)現状認識である。

 電力会社が当面する営利・採算の事情しか考慮しない経産省大臣の発想そのものに問題があった。「原発に対する認識を変える」のは国民たちの側であって,「政府にはその意思がない」と宣言したも同然の発言であった。まさしく原発問題に対していえば,政府側の “反・国民的な基本姿勢” が露骨に表現されている。

〔 ③ の記事に戻る→〕 2011年3月11日に発生した巨大な津波を受け,東京電力は福島第1原子力発電所で未曽有の原発事故を起こした。震災前に全体の25%を占める主力だった原発は54基すべてが停止。いまも再稼働は9基で,2017年度は電源全体の3%にとどまる。

 電力各社は原発の代わりに火力発電の稼働を増やさざるをえず,大きな副作用を伴った。液化天然ガス(LNG)など燃料の輸入が急増。2011年から2015年まで貿易赤字が続き,2018年も再び赤字に転落した。2011年以降の累計赤字は約31兆円に上る。

 補注1)貿易収支の主要原因が本当に火力発電部門の燃料輸入だけだったかについては,根本的な疑問があり,これに関しては反論が明証的に提示されていた。

 本ブログは以前,こう指摘したことがあった。これは,本日〔ここでは2015年8月11日の〕NHKラジオ第1で午前6時43分から放送された「社会の視点・私の視点」に出演した諸富 徹(京都大学教授)は,原発の不必要性とこれに代替していく必然性のある再生可能エネルギーの普及事情を,先進国全般にわたる電力需給に関する説明としてもおこなっていたと。

 補注2)本(旧)ブログの2015年08月11日の記述,「貿易収支の赤字原因が『火力発電』だから,根拠もなくコストの安い原発を再稼働させろと主張したのは『いつの話』であったか?(その1)」( 現在は未公表)を参照されたい。

 補注3)NHKラジオ第1で2014年4月11日午前6時43分から放送された「社会の視点・私の視点」での諸富 徹の解説については文章化(要約)されているので,これを借りて関連の説明としたい。題名は『エネルギー基本計画案を考える』であった。なにが指摘されていたか注意して読みたい。

 「貿易赤字化石燃料輸入が理由か?」という問題が提示できる。原発依存から離れられない理由として,原発停止中のいま,化石燃料の輸入で貿易赤字が増え,電力料金が値上げされるからとしているが,これは国民をミスリードしている。

 

 近年の貿易赤字の原因として,原発停止による化石燃料輸入費の増加が挙げられるが,実際には,貿易赤字の第1の原因は日本企業の輸出競争力低下と海外生産の増加で,輸出が伸びていないのに対し,輸入のほうは,一貫して増加がみられることにある。

 

 化石燃料の輸入について詳しくみてみると,原油については,輸入量は原発事故後も微減で推移しているが,価格の高騰がいちじるしく,また為替レートもアベノミクスによる円安で,この両方の価格効果が相まって,化石燃料の輸入額を増加させているのが実際である。ただ,天然ガスの輸入については,数量は微増で推移しているが,輸入価額としては,円安による高騰によることのほうがはるかに影響は大きい。

 

 ここで参考にまで,「円ドルの為替相場」に関する統計図表のひとつを,以下に紹介しておく。安倍晋三は他人事のように問題を語っていたけれども,「火力燃料の円安による高騰」が生じてきた重要な真因は,この首相の姓をつけた「〈アベノミクス〉(通称をアホノミクス・ダメノミクス・ウソノミクス・サギノミクス,総じてアベノリスク)」にあった。この事実を忘れてはならない。日本政府や経済産業は,完全に責任転嫁のリクツを語っている。第2次安倍政権が成立したのは2012年12月26日であった。

 

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 出所)「円ドル為替相場の移り変わりをグラフ化してみる(最新)」『ガベージニュース』2018/12/29 10:06,
http://www.garbagenews.net/archives/1969250.html

 諸富 徹の解説をつづけて引用しておく。

 プラザ合意以降経済動向の変移や世界情勢に連動するかたちで上下はしていたものの,100円から150円 / ドルのレンジ内で収束していた円ドル為替相場の均衡が,2007年夏以降の円高以降大きく崩れていく様子が分かる。いいかえれば「1ドル100円の防衛ラインが突破された」とでも表現できようか。

 

 2008年の「資源価格高騰」以降大幅な円高・ユーロ安の動きをみせていることから,世界的規模で為替市場に大きな変動が「資源価格高騰」(自身かそれを引き起こした元の原因である金融危機)によって発生したとみるべきだろう。

 

 〔そしてなによりも〕2012年の政情変化に伴う為替関連の施策方針の大幅変更を受け,大きく円安の方向に為替レートは変動(【本日〔2014年4月11日〕,日本銀行が発表した『「量的・質的金融緩和」の導入について』】で紹介した,いわゆる「異次元緩和」も一因〔になって〕)し〔ていたし〕,

 

 米FRBの量的金融緩和政策第三弾(QE3)の終結が宣言され(2014年10月29日),その直後に日銀が追金融緩和政策を打ち出したこと(【日銀の追加金融緩和政策に関する覚え書き】)が影響し,相場は再び大きく円安の流れを示した。

〔ここで再び ③ の記事に戻る→〕 2017年に入ってからは国際関係における政情不安定や欧州で相次ぐテロ事案,中東や朝鮮半島での情勢不安定化などを受け,じわりと円高が進み,2016年12月の1ドル117円11銭を天井に,少しずつだが円高ドル安の流れに。昨今では2018年3月の106円19銭を底に,再び円安ドル高の動きを示している。

 補注)要するに,日本が輸入する品目はどれでも円安のために相対的にだいぶ高くなっていた。火力発電のために必要となる化石燃料(石炭・石油・LNG)だけでなく,原発(これも火力発電)も燃料棒の原料は輸入している。こういう指摘もある。

 原発1基(100万kw時)を1年間運転するのに必要なウラン燃料は30トン」。この「30トンの燃料を作るために」「ウラン残土‥‥240万トン,鉱さい(低レベル廃棄物)……13万トンを生み出す!」

 「現在,ウランをとり出したあとのウラン残土は全世界で16億8000万トンにのぼるといわれ,野積みにされたまま放射性物質をまき散らし,被害を出しつづけている」。

 こうした核燃料を精製するための製造過程で発生している社会的費用が「外部費用」化されてしまい排除されてきた部分が,まだ問題として残されている。いまのところ,核燃料棒を製造していく製造工程における原価計算のなかに,その種の原価部分は計上されるわけもない。

〔記事に戻る→ 燃料を多少高くても買わざるをえない状況は,電気代の上昇などを通して国民や企業の負担を高めた。原油やLNGといった天然資源は相場変動が激しい。発電全体に占める火力の割合は2010年度の65%から2017年度で81%まで高まり,不安を抱えこんでいる。

 世界の脱炭素化の流れへの逆行も問題だ。二酸化炭素(CO2 )排出量が多い石炭火力は比較的安価で発電力が大きく,当面は欠かせない。だが環境重視にカジを切る世界の投資家や銀行が資金を引き揚げる動きを鮮明にするなど,逆風は強い。

 原発の再稼働が足踏みするなか,期待がかかるのは再生可能エネルギーだ。2018年7月に国が改定したエネルギー基本計画では,再生エネを将来の「主力電源」にすると明記した。2030年度には全体の22~24%(現状は16%)に高めるとかかげた。(引用終わり)

 2)目立つ割高

 だが,いまの拡大策は持続性に乏しい。2012年に始めた固定価格買い取り制度(FIT)は普及を後押ししたものの,高コスト体質を生んだ。買い取り価格は電気代に上乗せされ,その負担は2018年度で 2. 4兆円に上ぼる。

 事業者の創意工夫やコスト削減意欲も引き出せていない。太陽光の買い取り価格は徐々に下げてきた。だが2018年度は1キロワット時あたり18円と世界のコスト(2017年上半期で 9. 1円)のほぼ2倍だ。

 いま,必要なのは実現への工程表を着実に示すことだ。火力発電への依存度をできるかぎり下げ,競争力のある再生エネの拡大を進める。さらに,あいまいにしてきた原発の新増設に関する議論を進める必要もある。

 再生エネで重要なのは官による育成から,民間の力を生かす方向に軸足を移すことだ。経産省は2019年度から固定価格買い取り制度の価格をさらに下げ,対象を安い電力だけに限る「入札制」も拡大する方針を打ち出す。コスト目標を具体的に定めた上で競争をテコに実現できるかが鍵になる。

 補注)この段落の言及は興味深い。かつて原発の導入,電源としての利用については,本来「採算では難があった」この原発の技術経済的な特性に鑑み,「国策民営」「地域独占」「総括原価方式」をもって国家権力側が手厚く保護・支援する体制のもとにおこなわれてきた。

 しかもそのさい,国家権力側は「原発神話」(安価・安全・安心)という虚偽のイデオロギーも,対社会に向けて散布し,普及(啓蒙?)させてきた。けれども,結果的には「3・11」(東日本大震災と東電福島原発事故)の発生によって,そうした「国民向けの教説」は成立しえなくなった。

 原爆用の技術を応用して電力生産用に充当するという「原発の技術的な発想」は,経済的にも社会的にも文化的にもすべて「反作用の負的な機能」を基本的に潜在させていた。原発の技術はそうした宿命を背負って誕生していた。いざ有事発生(深刻・重大な原発事故が発生)という段には,チェルノブイリ原発事故や東電福島原発事故が実証したように,もはやとりかえしのつかない「地球環境の破壊」まで随伴させる結果をもたらす。

 「原発以外の火力発電」のために必要な燃料費が割高で困るとか,再生可能エネルギーの開発・利用が(日本では)未熟だという事情があるならば,まずは再生可能エネルギーの開発・利用のほうにもっと国家の総力を注入する必要があるし,そうしていけば徐々に,火力発電全体の比率は落としていける。そのさい最初に削っていくべき「火力」がほからならぬ「原発」(これも火力の1種である)という厄介モノ:邪魔モノであった。

 チェルノブイリ原発事故や東電福島原発事故は,原子力という《悪魔の火》を利用してきた電力生産方式であった原発の技術特性ゆえ,大事故を起こした後始末だけでなくて,通常における廃炉工程に関してでも,原発利用における「未来の世界には暗い見通し」しかありえかった。くわえていえば,原発の「技術経済に関しては固有である〈大きな不利〉」が潜在していた。だから,日本経済新聞社の立場といえども,つぎのようにいわざるをえない。

〔記事に戻る→〕 原発は国の方針をあらためて明確にする必要がある。2030年度に原発比率を20~22%にするとかかげるが,老朽原発廃炉が相次ぎ達成がむずかしいのは明らか。だが原発に批判的な世論が多いなかで正面からの議論を避けてきた。

 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は「再生可能エネルギーだけで電力をまかなえるとは思っていない。どんどん(再稼働を)やるべきだ」と強調する。自民党の関係部会などでは「新増設やリプレース(建て替え)を視野に入れなければならない」といった声が出はじめた。安全対策を万全にしたうえで将来,何基の原発が必要なのかを明確に示し,国民の理解をうる努力が不可欠だ。

 補注)この段落の主張には無理と矛盾が含まれている。「安全対策を万全にした」ところで,原発に大事故が起きないという絶対の保証はない。「3・11」以後における2010年代,火力発電用の燃料費が「アベノミクス」のせいで高くなっていた時期であっても,原発を1基も稼働させなえかった約2年間,日本の電力需給事情に決定的に困難な状況は生じていなかった。

 いまでは「3・11」当時とは違い「再生可能エネルギーの開発・利用」が大幅に進展しつつあり,これからもさらに期待できる動向がある。こうした電力構成(電源の内容)に関する方向性は,日本でも実際に起きている自明の趨勢である。それゆえ「安全対策を万全にしたうえで将来,何基の原発が必要なのかを明確に示し,国民の理解をうる努力が不可欠だ」といった主張は,

 ここまで参照してきた記事の最初に紹介されていた「世耕弘成経済産業相のいいぶん」,「原子力政策に関して,国民からまだ十分な理解をいただいいているとは思わない。不断の活動を続けていかなければいけない」2019年2月という意見とともに,旧来の立場をただオウム返しに唱えているだけであり,なにも進歩のない化石的な見解であった。

〔記事に戻る→〕 地球温暖化対策の国際的枠組「パリ協定」が発効し,日本も貢献が求められる。再生エネの拡大を進める一方,当面,使いつづける火力発電の効率を高めるとり組みも深掘りが欠かせない。

 補注)原発の新機種,つまり「若干改良はできた(が,まだ全然普及していない)新型原発」の熱交換率は,「従来型原発33%」にわずか「数%」の向上を付加しえているに過ぎない。それに比べてたとえばLNG火力発電になると,それがすでに60%にまで到達している。燃料効率の次元での勝負は決着済みであった。

 着実なエネルギー戦略を示せていないことは,将来の課題を先送りしていることにほかならない。エネルギー供給の道筋をつけるため,ギアを切り替える必要がある。(杉原淳一,竹内宏介)(引用終わり)

 最後のこの主張「エネルギー供給の道筋をつけるため,ギアを切り替える必要」とは,原発の代替・新設も考慮に入れた提言であった。しかし,この発想のままでは「着実なエネルギー戦略を示せない」。というのは,とくに原発という「電源の問題」に関して「将来の課題を先送りしている」からである。換言すると,この日経の記事内において錯綜する論理の展示は, “天に唾するかたち” で終始している。

 

  臨終の床に着いている「日本の原発
    -『朝日新聞』2019年3月10日朝刊の記事を参考に-

 この『朝日新聞』朝刊3面に掲載されたこの記事の見出しは,「原発事故の費用『最大81兆円』 経産省公表は22兆円 民間シンクタンク試算」とある。参考にまで,以下のごとき国家財政(「2019年度予算案の構成」)に関する予算の事情も,併せて聞いておきたい。こちらの国家予算はもちろん1年次分として用意された金額であるが,とりあげている問題を「比較するための数字」として挙げている。

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   出所)https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_yosanzaisei20181221j-01-w450

 政府は〔2018年12月〕21日午前,2019年度予算案を閣議決定した。国の予算の基本的な規模を示す一般会計の歳出総額は101兆4564億円と,2018年度当初予算(97兆7128億円)を3兆7437億円上回り,当初予算として初の100兆円を超えた。

 註記)nikkei.com 2018/12/21 10:34,https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL20HSU_R21C18A2000000/

 経産省も含めて原子力ムラの構成員たちは,「3・11」の東電福島原発事故の後始末と,これに続くはずの廃炉工程のためにかけねばならない経費総額は,はじめのころはせいぜい “1桁台の兆円単位” で済まされるかように装っていた。けれども,先日,経産省が正式に公表していた「21. 5兆円」という数値そのものが,政府の利害・立場がかかわらない「民間シンクタンクの試算」になると,なんと「最大81兆円」にまで跳ね上がっている。

 2019年度一般会計(101兆4564億円)のうち「国債費」(23兆5802億円)を引くと,実際に支出できるその金額は77兆8762億円。この金額よりも「原発事故の費用『最大81兆円』」のほうがまだ大きい。再度断わっておくが,それは1年度の予算に対する「原発事故対策費全額推定」である。だが,あえてこのように比較してみたとしても,意味させようとする核心が削がれることはない。

 さてつぎに,この ③ でとりあげる記事本文を引用する。

 --東京電力福島第1原発事故の対応費用が総額81兆~35兆円になるとの試算を民間シンクタンク日本経済研究センター」(東京都千代田区)がまとめた。経済産業省が2016年に公表した試算の約22兆円を大きく上回った。81兆円の内訳は,廃炉・汚染水処理で51兆円(経産省試算は8兆円),賠償で10兆円(同8兆円),除染で20兆円(同6兆円)。

 経産省試算との大きな違いは,汚染水の浄化処理費用を約40兆円と大きく見積もったことや,除染で発生する土壌などの最終処分費用を算入したことなど。また,この汚染水を,水で薄めたうえで海洋放出する場合は,廃炉・汚染水処理の費用が11兆円になり,総額も41兆円になるとした。

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   註記)「東電福島の処理費用見通し」『日本経済研究センター』2019年3月7日,https://www.jcer.or.jp/jcer_download_log.php?post_id=43790&file_post_id=43792

 これにくわえて事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)をとり出さずにコンクリートで封じこめる,いわゆる「石棺」方式を採用した場合は,廃炉・汚染水の費用が 4. 3兆円になり,総額も35兆円になるとした。ただ,「石棺」方式は,かつて「復興やふるさとへの帰還をあきらめることにつながる」などと問題になったことがある。

 同センターは2年前,総額70兆~50兆円に膨らむとの試算を出したが,その後の汚染水処理や除染などの状況を踏まえ,再試算した。試算を示したリポートはこの費用の増加を踏まえ,「中長期のエネルギー計画の中で原発の存否について早急に議論,対応を決めるときではないか」と指摘した。(小森敦司)(引用終わり)

 ここではさらに,「日本経済研究センター」が2019年3月7日に発表したその文書:「事故処理費用,40年間に35兆~80兆円に-廃炉見送り(閉じ込め・管理方式)も選択肢に-汚染水への対策が急務」も引用しておく。この文書は被災者側が強く反対する「石棺」方式の採用に明確に言及している点に特徴がある。

   ▲ 事故処理費用40年間に35兆~80兆円に ▲
        = 2019年03月07日発表 =

 2017年3月に当センターは,福島第1原発事故の処理にかかる費用が最終的に70兆円近くに処理費が膨らむ可能性があると試算した。2年の経過を踏まえ,関係者へのヒアリングなどを通じた限られた情報をベースに再試算してみた。その結果,汚染水の増加によって80兆円を上回る費用になる恐れがある。

 

 今回,新たに溶け出した核燃料デブリをとり出さず,廃炉を当面見送り,いわゆる「閉じこめ・管理」する場合も試算した。2050年までの総費用は35兆円程度にとどまる(その後の処理・処分費用は未定のままである)。

 

 2年前に当センターは「事故処理費用は50兆~70兆円になる恐れ」で指摘したが,事故から8年間を経過しようとしており,中長期のエネルギー計画の中で原発の存否について早急に議論,対応を決めるときではないだろうか。

 註記1)以上は要約である。https://www.jcer.or.jp/policy-proposals/2019037.html

 註記2)以上の全文は,https://www.jcer.or.jp/jcer_download_log.php?post_id=43790&file_post_id=43792

 上記の文書は註記2)のなかで,こうも述べている。

 総合資源エネ調の試算では,原油価格を100ドル / バレル以上と想定しているが,現状は60ドル程度。さらに世界では,太陽光発電風力発電のコストが大幅に下がり,火力発電よりも安価であるケースが少なくない。

 技術進歩を勘案すると,「再エネは割高」という日本国内での “常識” がいつまで継続するか,分からない。経済性を理由に原発維持を主張することは,もはや論理が破綻しているといえる。

 廃炉措置・賠償費用も国民負担についても説明が不足している。チェルノブイリ原発事故の際には,旧ソ連ウクライナの経済事情が悪かったこともあり,廃炉計画も費用負担も国際協力のもと,透明性をもって実施されてきた。

 福島の廃炉措置も国際協力のもとで,新たな体制を確立し,透明性の高い資金協力と実施体制を検討,構築すべき時期ではないか(4頁)

 

 「〈社説〉原発被害からの復興 福島の『いま』と向き合う」朝日新聞』2019年3月10日朝刊から

 この社説からは一部だけを引用する。

 --東日本大震災東京電力福島第1原発の事故から8年。福島県でいまも,人びとの心に影を落とすのは,放射能をめぐる「風評」と「風化」の問題だ。

 原発周辺は住民の帰還が進まず,むずかしい課題を抱える一方,それ以外の多くの地域では,放射線量が平常の水準に下がっている。食品の安全対策も効果をあげている。

 だが県外を中心に,汚染の被害や健康への悪影響についての誤解,全体的に不安な印象などは消えていない。福島の現状は十分知られておらず,むしろ見聞きすることは減りつつある。

 このあいだに前後する項目, “☆「風評」「風化」の悩み,☆ 問題を克服するには,☆「分断」を超えて” ,の3項目は割愛しておき,つぎは最後部の段落を引用する。

 --事故の被害をめぐっては,「放射能が心配 / 気にしない」のほかにも,「避難を続ける / 地元に戻る」「原発はなくすべき / 必要」など,多くの分断の軸が交錯する。ネット上では激しい攻撃の言葉が飛びかう。多くの人にとって「ややこしそうな」テーマとなり,日常のなかで話題にしにくい空気は地元にもある。

 この状況は,数十年かかる廃炉などの後始末や,住民が散り散りになった地域社会の再生をいっそう困難にしている。だが,原発推進の国策のすえにもたらされた苦しみをとり除くのは,社会全体に課せられた重大な責任である。福島にどう向きあうか,問われつづける。

 まずは等身大の姿をしり,情報やイメージを更新する。そして,こじれた状況を一つひとつときほぐし,人びとがそれぞれの考えを尊重しながら建設的に語りあえる環境をとり戻す。福島が開かれた復興の道のりを歩めるよう,世の中のスイッチを入れなおしたい。(引用終わり)

 さて,ここで安倍晋三首相に問う。こうした「現状が実在する」にもかかわらず,君は,2013年9月7日に開催されていた「東京オリンピック開催を招致するためのIOC総会」における演説で,東電福島原発事故現場の「地下流水の放射能汚染」について「アンダーコントロール」(統御されており問題はない)と,例の得意節で大嘘を発していた。いまから約5〔6〕年前に堂々と披瀝していたこの虚偽ではあったが,いまからでもいい「現実を平然と無視した虚言」を撤回する気はあるのか。このウソひとつだけでも,十分に辞職に値する。

     ★「東日本震災追悼式,中止に 安倍首相,関係者におわび」★

  =『時事通信』2020年03月06日11時12分,https://www.jiji.com/jc/article?k=2020030600382&g=pol

 

 このニュースは,安倍晋三が首相として,こう述べていたと報じていた。

 

 政府は〔3月〕6日の閣議で,新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため,11日に予定していた政府主催の東日本大震災追悼式を中止すると決めた。安倍晋三首相は「あらゆる手を尽くすべき時期であることから,誠に遺憾ながら開催を断念するのやむなきに至った。関係者におわびを申し上げる」との談話を発表した。

 

 安倍晋三君の本当の気持は,こうであると推測する。「誠に遺憾ながら開催を断念するのやむなきに至った」ので,政府主催の東日本大震災追悼式の中止は「万歳(!!!)」? なんといっても,アンダーコントロールの件は,そもそもケリがついていないというか,永遠に片づくみこみもないし……。

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【参考記事】

 「今年も言う,福島原発事故の最大の戦犯は安倍首相だ!  第1次政権時代 “津波で冷却機能喪失” を指摘されながら対策を拒否」『リテラ』2020.03.11 07:52,https://lite-ra.com/2020/03/post-5303.html

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