原発の後始末・廃炉の問題からあらためて観てとるべき「原子力を利用した発電方法」の非経済性・不合理性・危険性

東電福島第2発電所廃炉には44年かかるというけれども,まず最初の段階においてその建設のために最短でも5~6年をかけていて,それで実際に稼働できた期間は最長でも30年未満となれば,これほど割の合わない,つまり経済性計算でみても,収益貢献:利潤獲得の面でこれほど不合理性に沈んでいた設備投資はなかった

だから,国家側が各電力会社に対しては「地域独占の企業形態」「総括原価方式という会計方法」「送・配電設備の専有権」を付与して事業経営を存続させてきた。だが,「3・11」以後の原発はその不合理性・非経済性が本来どおりあらわになった

 

  要点・1 原発は現実において,「安全・安価・安心」どころか「危険・高価・不安」であるという本来の特徴を,余すところなくさらけ出すほかない時代になっている

  要点:2 自国で電力生産に使用することはもちろん,海外に原発という製品を製造・販売することすら,日本の企業(製造業:東芝日立製作所三菱重工業)にとってはもはや不可能になったではないか

  要点:3  『悪魔の火』と人類・人間とが円満に共存できるわけがない


 「福島第2,廃炉に44年 東電、規制委に計画申請」朝日新聞』2020年5月30日朝刊27面「社会」

この記事に出ている「廃炉,計画申請」については,さきに,東電のホームページに掲載されている解説文を参照してもらうといいかもしれない。東京電力(現在の正式社名は東京電力ホールディングス)は,「福島第2原子力発電所」の「廃止措置の概要」を2020年5月29日にあらためて発表しており,これが,この ① のニュースの材料になっていた。

 註記)当該のホームページは,https://www.tepco.co.jp/nu/f2-np/decommission/index-j.html

 東京電力は〔5月〕29日,福島第2原発福島県)全4基を廃炉にする廃止措置計画の認可を原子力規制委員会に申請した。約10年ごとに4段階に分けて進め,開始から完了までにかかる期間は44年とみこむ。地元が県外搬出を求めている約1万体の使用済み核燃料については,最終的な処分先を明記しなかった。

 

 作業は規制委の認可後に地元の了解をえてはじめる。建物などの解体に約2800億円,使用済み燃料の再処理費などをあわせた事業全体では約4100億円かかるという。使用済み燃料はプールから取り出したあと,敷地内に設ける貯蔵施設で保管し再処理事業者に渡すとしたが,県外搬出の時期や最終的な処分先は盛りこんでいない。

 

 福島第2は東日本大震災津波で浸水して停止。東電は2018年に廃炉を決めた。福島第1原発(全6基)とあわせて計10基の廃炉を並行して進めることになる。

 この福島第2原子力発電所は,福島県双葉郡楢葉町(敷地の一部は富岡町)にある東京電力ホールディングスの原子力発電所である。略称は,福島第2原発とか,2F(にエフ)とも呼ばれている。なお,福島県は,東京電力の事業地域ではなく,東北電力の事業地域である。

 この福島第2原発の発電設備は,以下のとおりに説明できる。

 福島第2原発は,東北地方太平洋沖地震により全基が廃炉になっていた。原子炉形式は4基すべてが沸騰水型軽水炉であり,定格出力も全基が同じ110万kWであった。運転開始の時期は,

   1号機 1982年4月20日

   2号機 1984年2月3日,

   3号機 1985年6月21日,

   4号機 1987年8月25日

であった。

 現在(今日)は2020年5月31日になっているが,2011年3月11日の東日本大震災とこれに誘発された東電福島第1発電所の大爆発事故は,東電の保有する原発全基を稼働停止にさせていた。以降,今日まで19年以上もの長期間,再稼働されることがないまま,福島第1原発にくわえて福島第2原発も正式に廃炉処分されることが決定した。

 その間,福島第1原発の稼働期間が「3・11」の発生した2011年で終わった事実はさておいても,第2原発の再稼働はなされないまま廃炉となった。福島第2原発の場合,とくにその稼働できていた期間を計算してみると,こうなる。なお,各原発が建造された期間はそれぞれ異なるが,5~6年とみなしておく(これは若干控えめの観方だが)

 建造のために要した期間よりも問題は廃炉のために要する期間の長さである。福島第2原発の場合では,その間において稼働できた期間は,

   1号機が28年と11月,

   2号機が27年と1月,

   3号機が25年と9月,

   4号機が23年と7ヶ月

であった。またこのように稼働してきた期間のなかには,途中において必要となっていた保守・点検の期間を含んでいるゆえ,本当の稼働時間はもっと少ない期間になる。 

 ここまでの記述ですでに了解できると思うが,福島第2原発の稼働期間はいずれも30年未満になっていたので,当初の建築のために要した工事の期間はひとまず脇に置いて考えてみても,この福島第2原発全4基の廃炉のために要する期間が「44年」だと説明されている点からしてすでに,その電力生産のために実際に稼働されて期間よりも長い。

 しかも,世界中でいままで,廃炉工程にまで進んだ原発の事例の「その後」を参考にしてみると,44年間で終わるはずだという保証は,実は全然ありえない。とりかかるべき一連の廃炉工程は,半世紀・1世紀単位といった長期間にわたる作業の連続を強いる。ところで,本ブログ筆者がこの問題を考えるとき,いつも参考にする記述があった。

 その記述を再度検索して探しだし読んでみた。以下の引照はだいぶ長くなるが,② として引用しつつ,独自に討議もくわえながら記述していきたい。

 原発廃炉という後始末の問題が,いかにやっかいな作業工程にならざるをえないかについていえば,人類・人間はこれほどまで手ごわい電力生産の方法を選択・利用してしまった責任を,今後に向けて何世紀でもかけて果たさねばならず,それ相応の覚悟を要求されている。

 というのは,いったい何世紀が経ったら,その廃炉という原発の後始末が完全についたといえる日が来るのか,本当のところ,いまの段階では正確には予測ができないからである。ただひとつ確実にいえるのは,その廃炉という工程は半永久的につづく作業を,われわれに課しているに違いない点である。

 原発という電力生産方式を人類・人間が選択した「基本的な過ち」は,いってみれば「原爆」は兵器として保有していても使用しなければ害悪は発生しないが,「原発」の日常的な利用は,わざわざあるいはむざむざその害悪の発生を予定し,実際に発生もさせている。これほどムダばかり多く,馬鹿らしいエネルギー生産・利用の方法はほかにはない。


 廃炉作業の費用と期間に隠されている原発の真っ黒な現実。廃炉だけに特化した『廃炉庁』を早急に作れ!」鈴木 耕『時々お散歩日記』2013-08-21,http://www.magazine9.jp/osanpo/130821/

 毎日新聞(〔2013年〕8月19日付)の特集記事が興味深い。イギリスの原発廃炉作業に関する2面にわたる特集だが,それを日本の場合と比較して調べているところがなかなかいい。

 まず,イギリスの例ではこんな具合だ。

  ◆「解体先進国」英の原発 稼働26年 廃炉90年 ◆

 a) 世界でもっとも廃炉作業が進む原子力発電所のひとつ,英ウェールズ地方のトロースフィニッド発電所(出力23.5万キロワット,炭酸ガス冷却炉,2基)の作業現場に入った。1993年の作業開始から20年。責任者は「すでに99%の放射性物質を除去した」と説明するが,施設を完全に解体し終えるまでになお70年の歳月を要する。(略)

 1965年に運転を開始し,1991年に停止した。原子炉の使用済み核燃料(燃料棒)は1995年に取り出されたが,圧力容器周辺や中間貯蔵施設内の低レベル放射性物質放射線量は依然高い。このため2026年にいったん作業を停止し,放射線量が下がるのを待って73年に廃棄物の最終処分など廃炉作業の最終段階に着手する。(略)

 なんとも気が遠くなるような話だ。これ〔2013年〕までに20年間を費やして廃炉作業をおこなってきたが,最終処理まであと70年かかるという。つまり,合計で90年の歳月が必要ということになる。しかも,これは深刻な事故を起こしたわけでもなく,普通に運転をして普通に廃炉作業に入った原発で,なおかつ23.5万キロワットという小さな原発である。それでもこれだけの時間が必要なのだ。

  補注) ① の東電福島第2原発の場合では稼働期間が,このイギリスの実例の年数とほぼ同じであるが,廃炉〔のために要する期間〕のほうは44年と断わられており,だいたい半分の期間になっている。しかし,これはサバを読んでいるのではないかと疑わせるくらいに,短い期間である。実際に欧米で実施されているが,廃炉工程にかかる期間が44年というのは,ありえない・考えられない短さである。

 b) 問題はそれだけではない。大きくのしかかるのが「廃炉費用」だ。このトロースフィニッド原発廃炉にかかる総費用は約6億ポンド(約900億円)になるという。だがこれは,現段階での試算。あと70年間に,それがどうなるかは実は誰にも分からない。この費用問題について,〔前掲『毎日新聞』の〕同記事はつぎのように書く。

 (略)事故を起こした東京電力福島第1原発1~4号機を除けば,国内の商用原発廃炉作業が実施されているのは,日本原子力発電東海原発(出力16.6万キロワット,炭酸ガス冷却炉)と中部電力浜岡原発1号機(54万キロワット,沸騰水型),同原発2号機(84万キロワット,同)の計3基にとどまる。

 補注)ここの話は2013年時点のものであり,現在〔2020年5月〕段階の日本においては,つぎのように,廃炉となった原発が増えている。

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 日本原電は,東海の廃炉費用を計850億円とみこみ,2020年度までに終了させる予定。中部電は浜岡1,2号機の2基で841億円かかると想定し,2036年度までに終える計画だ。(略)

 一方,福島1~4号機の廃炉費用は「青天井」になっている。東電は4基の廃炉処理にこれまで9579億円を投じたが,放射性汚染水問題については収束のめどが立たないうえ,溶けた燃料の回収・保管には新たな研究開発費用が必要となる。(略)

 補注)東電福島第1発電所の大事故は,この4基の原発で生産した電力の販売で上げた収益など,それこそものの数ではないくらいにまで食い潰しつつある。国家予算をいまでは注入しつつある。金食い虫になっているわけであるが,大事故を起こしたなりにいつ寿命が尽きるがどうかさえ分からぬほど,長生きしそうな “この虫” なのである。

 またさきに引用した図解には,つぎのような図解もつづいいて出されていたが,このような異様な長期間にもわたり廃炉行程があとに引くという〈技術的な特性〉=「短所・不利」は,原発を導入する最初の時期においてはほとんど触れられることもなかった。

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 この図解を示していた文書,『原子力発電所の解体(一般廃炉)の現状と課題について』平成31〔201〕年4月23日資源エネルギー庁https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/020_04_00.pdf  は,だいたいにおいては〈画餅〉を描いているとしか受けとるほかない。だから,前後において引用している文章の筆者も,こういう懸念を表わしていた。

〔記事に戻る ↓ 〕

 c) だいたい,この廃炉費用の各電力会社の概算が怪しい。ほんとうに,こんな見積もりで廃炉は可能なのか? イギリスは「廃炉先進国」といわれている。その先進国が「廃炉には計90年かかる」と想定しているのに,日本の場合,たとえば東海原発ではこんな工程表が作成されている。

 この日程表は「令和2〔2020〕年度に解体・撤去の23年間の工程を終了させる予定になっている」と断わられていたが,このとおりには進捗していない。

 原子炉領域解体前工程  1998~2013年( 16年間   )
 原子炉領域解体撤去   2014~2019年( 5. 5年間)
 原子炉建屋解体撤去   2019~2020年( 1. 5年間)
 原子炉領域以外の撤去  2001~2020年( 18. 3年間)
 放射性廃棄物の短期処理 1998~2020年( 23年間)
 原発廃止後の高レベル放射性廃棄物の恒久処理・隔離・管理に関しては未定。数千~数万年が必要(2020年~)。

 この工程表を,前出のイギリスの例と比べてみるがいい。その楽観的見通しに愕然とする。東海原発は2020年までに,つまり,作業に入ってから23年間ですべての廃炉処理が終了するとしているが,イギリスの場合は90年間を要する,といっているのだ。

 出力はほぼ同じ程度だし,炭酸ガス冷却炉方式も同じ。ならば,なぜこんなにも処理期間に差があるのか。日本の廃炉技術がイギリスと比べ,3分の1ほどに期間を短縮できるほど進んでいるというのか。

 東海原発の場合はともかく,東電福島事故原発の最終的廃炉に,いったいどのくらいの期間が必要なのか。東電によれば,こんな具合だ(NHK〔2013年〕6月27日配信)。

 東京電力福島第1原子力発電所廃炉に向けた工程表の改訂を,政府と東京電力は,27日の会議で正式に決定しました。(略)

 

 溶け落ちた核燃料の取り出しを始める時期について,1号機から3号機の号機ごとに差をつけているのが特徴で,もっとも早いケースでは,1号機と2号機でこれまで目標としていた平成33年(=2021年,注・NHKはなぜか西暦を使わない)度末より1年半,前倒しするとしている一方,現場の状況によっては,すべての号機で反対に遅くなるおそれもあるとしています。そして,核燃料を取り出したあとの原子炉建屋の解体など,廃炉の作業は最長40年に及ぶとしています。(略)

 補注)いままで,東電福島第1原発の事故現場において,各原発からデブリの取り出し作業の試みがなされてきた事実は,なんども報道されてきた。だが,作業工程が本格的に開始できることになったと伝える記事は,いまだになにひとつ出ていなかった。あるのはいつも,延期・先送りの報道ばかりであった。

 d) ほとんど絵に描いた餅だろう。安定的に冷却停止し,スムーズに廃炉作業に入った小規模の原発でさえ,イギリスの場合は90年が必要といっているのだ。溶融核燃料がどこにあるかさえ分からず,現在も大規模な高濃度汚染水の漏出を止めることすらできていない東電や政府が,廃炉作業は「最長で40年」……。よくもこんな工程表を恥ずかしげもなく発表できるものだ。

 補注)安倍晋三君の政治手法ではないが,ともかく東電側も「廃炉工程・やってる感」だけは,必死になってとりつくろってきている。そうでもしないことには,世間に対してかっこうがつかないし,いまでは血税を多額投入している事態の申しわけにもならない。

 東電福島第1原発廃炉」のために計上されるべき総経費については,つぎの統計(推定)を参照しておきたい。

    ◆ 福島第1原子力発電所の事故処理費用の試算 ◆

 課題    従来想定   改革提言   日本経済研究センターの独自試算

 廃炉   2兆円    8兆円       11~32兆円
 賠償   5兆円    8兆円       8~8.3兆円
 除染・中間貯蔵施設
     4兆円    6兆円        30兆円
 合計  11兆円    22兆円       50~70兆円

 

  出所) 日本経済研究センターの小林辰男・主任研究員ら。

  註記) 寺岡篤志日本経済新聞社会部記者「原発処理費用,22兆円のウソとそのワケ 国民負担,国と電力会社のフリーハンドに」『日経ビジネス』2017年4月26日,https://business.nikkei.com/atcl/report/16/042000132/042500003/

 廃炉費用にいたっては,日本政府(経産省)の試算のいい加減さは目に余る。東海原発廃炉費用を885億円とみこんでいるが,それはあくまで23年間で終えるという想定上でのこと。この期間が延びれば,当然のように費用も増えていく。

 しかも,白々しく断わっているように「原発廃止後の高レベル放射性廃棄物の恒久処理・隔離・管理に関しては未定」なのである。つまり,その費用がいくらかかるか分からないので,廃炉費用には入れていない,ということを意味する。

 e) 要するに,数万年かかるはずの処理・隔離・管理の費用はまるでここには含まれていないということだ。こんな無責任な話があるだろうか。ツケはすべて未来の世代へ遺しておく。「いくらかかるかしらないが,あとはよろしく」というわけだ。これがこの国の「原発行政」の実態なのだ。

 さらに廃炉作業をむずかしくしている事情がある。それは「初期に建設された原発は将来の廃炉を想定して設計されていない。初めて経験することが多く,手探りの作業だ」と記事の中でイギリスの作業計画部長が語っている点だ。

 実は同じことが,日本の原発にもいえるのだ。

 f) 福島原発が爆発したとき,現場は大混乱に陥った。その大きな原因のひとつに,基本設計図が見当たらなかったことが挙げられている。福島第1原発・1号機は1971年に運転開始という古い原発だ。その設計・建設は,ほぼ米GE社の主導でおこなわれた。このときの基本設計図は,GE社が特許権等をたてに全面開示しなかったといわれている。

 そんな事情なのだから,この当時の設計思想に将来の廃炉計画が反映されていたとはとても思えない。まさに,手探りで廃炉作業を進めていくしか方法はないのだ。しかも,例の「安全神話」に象徴されるように,当時の設計思想に「過酷事故後の処理方法」などが盛りこまれていたとは考えられない。であれば,過酷事故処理費用など,これまで世界中の誰も試算したことはないということだ。

 東電はこれまでに,1兆円近くの廃炉費用を,福島事故原発に投入しているが,これがどこまで膨らむか,東電内部でも試算不能との声も挙がっていると聞く。最近の高濃度汚染水の海洋漏出の惨状をみれば,もはや東電は当事者能力を完全に失っているとしかいえない。

 そのため,ついに政府が費用投入して,汚染水対策に乗り出さざるをえなくなった。ここに,いったいどれだけの我々の税金が投入されるのか,多分それは天文学的数字になるだろう。

 しかも破廉恥なことに,東電は「柏崎刈羽原発を再稼働しなければ,電気料金の再値上げも考慮せざるをえない」と,またしても電気代を人質にしてわれわれ消費者を脅迫している。政府はわれわれの税金を汚染水処理に投入,さらに東電は電気代値上げでわれわれ消費者からむしりとる。これが「原発事故処理」ということなのだ。

 g) 前出の記事によれば,2007年に経産省が試算した廃炉費用は,全原発(54基)廃炉の場合は,総計で3兆円だったという。これは,全原発が安全に冷温停止し,すんなりと廃炉作業に入れた場合の試算だ。福島原発事故などのような想定はいっさいない。それでも3兆円。

 しかし,この試算もそうとうにおかしい。前述したように,廃炉に伴う最終処理,すなわち「高レベル放射性廃棄物の恒久処理・隔離・管理」費用が,ここにはいっさい含まれていないのだ。数万年単位の気が遠くなるほどの時間が必要とされる維持管理に莫大な金がかかるのは,それこそ小学生にだって分かる。

 それを,経産省も電力会社も学者も,みんな目をつぶって無視してきたわけだ。前出の記事を繰り返すが,イギリスの場合はもっと費用も大きく見積もっている。

 (略)一方で廃炉のコストは国民に重くのしかかっている。英国政府は発電効率が悪い初期の原発は民営化できないため早期に停止させることを決定。こうした旧型原発については政府が保有し,廃炉費用も政府負担と決めている。政府が負担することになる費用の総額は約590億ポンド(約8兆8500億円)とみこまれているが,さらに膨らむ可能性もある。(略)

 トロースフィニッド発電所の場合も,2005年度時点で約3億ポンド(約450億円)と見積もられていた廃炉費用は作業過程でコストがかさみ,2012年度の見積もりでは約6億ポンド(約900億円)と7年間で2倍に膨らんだ。稼働中に引き当てられていた積立金は新規原発建設などに回されたため十分でなく,廃炉コストは最終的に税金で穴埋めされる予定だ。(略)

 イギリスでは29基の原発廃炉が決まっている。その廃炉費用も含めた政府負担が8兆8500億円だという。ところが日本の経産省試算では54基廃炉でも3兆円ほど。この試算がおかしいと思うほうが,普通の感覚だろう。

 h) むろん,福島原発廃炉費用を含めたら,いったいいくらになるのか,見当もつかない。原発はよく「トイレのないマンション」といわれる。

 もし本気で「原発トイレ」を造ろうとすれば,それは数万年単位の維持管理が必要で,すさまじい金額をかけつづけなければならない「究極のトイレ」だ。しかもそのトイレは入ったら最後,どんな悪影響を身体に受けるか分からない危険このうえない「地獄のトイレ」なのである。

 これほどにむずかしい危険なものを,なぜまた再稼働させようとするのだろう。なぜこれからも外国へ売りこもうとするのだろう。

 補注)前段でも触れたが,日本の原発「製造・販売事業」は失速・墜落した。もちろん原価高が原因になっていた。原発コストは安いなどいった,いまではデマとしか理解しようがない「商売のための理由付け」は,原発はまったく提供できていない。原子力空母や原潜に搭載する特殊な原発ならばともかく,いまどき,原発を利用して電気を生産するといた原始的な電力獲得方法は,時代遅れであるだけでなく,地球環境を破壊するもっとも危険な装置・機械であるという事実に鑑みても,論外と位置づけてよい発電の方法である。

 i) 僕は「デモクラTV・本会議」などで「廃炉庁を作れ」と主張してきた。

 汚染水処理ひとつまともにできない東京電力に,もはや「廃炉」を任せておくわけにはいかない。原子力規制委員会も足許がふらついている。つまり,責任をもって「廃炉」をおこなえる組織が,こんな事態になってもどこにもないのだ。

 ならば,他のことにはいっさいかかわらず,ひたすら「廃炉」だけを目的とした「廃炉庁」が必要なはず。政府からも電力マフィアからもどこからも影響を受けず,完全独立した「廃炉庁」を早急に作らなければこの国の未来はないと,僕は強く思うのだ。(引用終わり)

 日本にはすでに,2011年9月12日に原子力損害賠償支援機構が設立されていた。だが,原子力村の構成員とおぼしく組織体制・人員調達になっていたこの機構では,前段の著者が要求するごとき「廃炉庁」の機能発揮は,まともに期待できない。

 2011年「3・11」から1年10ヵ月が経った2012年12月26日,第2次安倍政権が成立していた。だが,この安倍晋三という首相は,原発推進派の立場にあって(とはいってもその関連知識は皆無に近い政治屋であるが),電力会社側の立場だけをひたすら擁護する路線を変えていない。安倍の補佐官を務める有力な1人に今井尚哉がいる。この官僚は経産省エネルギー資源庁出身である。

 いまやすでに日本もそうなっているわけだが,ともかくも原発をひたすら後始末するほかない時代に入っている。この状況のなかでの話となるが,《悪魔の火》を炊いてきた原子炉そのものである『圧力容器』,そしてこれをかかえこんでいる『格納容器』,さらには『建屋』の全体構造などの「原発という装置・機械の関連技術・施設一式」は,それらのなかにしこまれている「いろいろな構造や機能の関係」を介して,放射性物質という猛毒をこの地球環境のなかにばらまきつづけている。その事実は,廃炉工程にまで進んでからであっても,どこまでも着いてまわってくるその《悪魔性》を意味する。とりわけ事故を起こした原発はその悪魔性を最大限に発揮する。


  いまも確実にいえること

 つぎは,原発について「現状はまるで壮大な人体実験」https://www.nap.st/fukushima/?pid=4  という文章から引用する(このホームページの題名と執筆日時は不詳)

 a) 放射性物質というものを人間があつかいはじめてから,そんなに時間は経っていません。くわえて,こうしたデータをうるのに必要な実験は,当然ですが人命がかかってきます,つまり基本的には人体実験,それも多くのサンプルで,長い時間をかけて実験しなくては,必要なデータがえられないのは明らかです。

 もちろん,事故などで被爆した人間の経過を観察して云々はできるでしょう,しかしそうした場合,同環境下に放置はしませんし,意図的に放射性物質で汚染された水・食料を与えつづけたうえで,子供まで作らせてみるでしょうか?(万一そうしたデータが存在したとしても,政治的に存在を認めることはできませんね,それはそれでえらいことになります)

 核兵器使用後の研究があると思いますが,核爆発と原発では,構造も,使用する核物質も異なりますので,役には立たないでしょう。皮肉なことに,核兵器の方が格段に汚染が少ないといわざるをえません。

 とまあ,そんなわけで,今回の参考になるような総合的なデータはないでしょう。
あるのはせいぜい,水の場合だの,大気がどうこうだの,土壌表面だの,外部被曝で何 mSv 浴びた場合だの,セシウムが~だのと,断片的なものばかりでしょう。それらを全部組み合わせたうえで,子孫まで残してみて結果としてどうこう,なんてデータ,あるわけないんです。

 b) さてここで,前例として「チェルノブイリ~」を挙げる人,どうでしょうか?旧ソ連でも,今回の福島より低いレベルの地域で,さんざん初動が遅れたといわれながらも,36時間で避難を開始させています。その後チェルノブイリ原発周辺の広域が立ち入り制限され,高度汚染地域での農牧業は禁止されました。

 くわえてチェルノブイリ周辺は安定陸塊なので地震もほぼないと考えていいですし,海がないので津波もありません,ついでに台風等もありません。事故後の不確定要素は福島より格段に少ないわけです。

 地震津波・台風すべてがある福島,初動で避難の決断も下せなかった政権のもと,より高い汚染度で人が住みつづけ,生産活動まで継続している現状,チェルノブイリは比較対象として適当でしょうか?

 c) 現在,チェルノブイリでもなかった条件下で,大量の日本人が現在進行形で生活しています。これはつまり,さきほどの私の問いに答えを出すべく,壮大な人体実験をおこなっているのと同じ状況です。

 不謹慎ですが,一級のデータが多数えられるでしょう。もちろん,大丈夫だったという結果が待っているかもしれません,しかし,そうでなかった場合のリスクが大き過ぎます。

 私はよく判らないので,逃げるほうを選びます。自分はともかく,命にかかわる賭けに子供たちをも巻きこむより,とりあえず逃げておいて,やっぱり大丈夫だったじゃんバカ,と笑われた方がマシだからです。(引用終わり)

 あえて広義の意味でとらえることにしたら,われわれ1人ひとり自身がおそらく,日本国原子力村の一員になっていないとはいえない。原発で生産する電気を使用するかぎり,そう理解してもいい側面をもつほかない。

 昨今における新型コロナウイルス感染拡大の「問題」に遭遇させられて,いまさらにように「地域分散型の日常生活」「地産地消の衣食住」に必要性が,あらためて強調されている。原発の事故現場に立ち入る人びとの作業衣の姿に,コロナ感染者を治療する医療関係者たちがまとう防護服の姿とは,なぜか重なって映る。

 原発に電力を生産させる技術経済・産業社会的な政治行為は,人類・人間の平凡であるべき “ふだんの生活形態” をぶちこわす結果を生んできた。東電福島第1発電所の大爆発事故は地球の歴史に大きな傷を与えたという意味で,人間がこの大地の上で生きていくための基盤を破壊している。

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 「国際原子力事象評価尺度」で分かるが,最悪の原発事故であった「チェルノブイリ原発事故(旧ソ連,1986年4月26日)」と「東電福島第1原発事故(2011年3月11日)は,人類・人間に対して直接に与えられた原発は止めよ!」という警告であった。しかし,この地球上にあってはまだ原発が新設されつづけている。

 それらの原発も含めて,世界各地にある原発のなかからもう一度で「大事故が発生したとき」は,この地球全体が決定的な打撃(ダメージ:駄目事)を受ける。それでなくとも,原発そのものの「後始末=廃炉」作業にからしてひどく手こずっている。事故の危険性が皆無(けっしてゼロ)ではない原発を稼働しつづけるのは,《悪魔の火》と「日常的に同居しつづける不可避の重大な危険性」を悟ろうとしない愚か者の所為である。

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