安倍晋三政権の目詰まりした愚鈍な空虚さ,そして北朝鮮による日本人拉致問題を,横田 滋の死去を契機に再考する

北朝鮮拉致被害者の蓮池 薫は拉致加害者でもあったと指摘した古川利明『〈さるぐつわ〉の祖国』2011年
                   (2016年5月4日)

 

  要点:1  「忘れられる前に忘れられた問題」  北朝鮮による日本人拉致被害者は,あの国のための工作員要員として拉致され,そして利用された事実もあった

  要点:2 安倍晋三政権にとっての北朝鮮・日本人拉致問題の利用価値

 

 🌑 前   言  🌑

 イ)  2020年6月5日,中学1年生のとき北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父親,横田 滋(87歳)が亡くなった。安倍総理大臣は6月5日夜,記者団に対した「総理大臣としていまだにめぐみさんの帰国が実現できていないことは断腸の思いであり,申しわけない思いでいっぱいだ」と述べていた。

 だが,安倍晋三のその薄っぺらい言辞に対しては,ネット上には批判が殺到してもおり,「なにが断腸の思いだ」,北朝鮮問題をさんざん自政権維持・高揚のため最大限に利用してきただけではないかと,それはもうボロクソに非難されていた。

 安倍晋三はそれでもなおオウム返しに,例の聞き飽きたお得意の文句であるが,「拉致被害者の方々のふるさとへの帰還を実現するために、あらゆるチャンスを逃すことなく,果断に行動していかなければならない。思いを新たにしている」と述べていた。

 ツイッターから放たれていた批判は,たとえば「横田 滋さんが亡くなった。享年87。無念を思っていたら安倍さんが出てきて『断腸の思いだ』ときた。安倍さん,違う。それは拉致被害者家族が声を振り絞っていう言葉だ。あんたにそれを口にする資格はない。分断を煽り,政治利用しただけじゃないか。一度でも金 正恩に会ったか,訪朝したことがあるのか」という “立川談四楼 @Dgoutokuji の指摘” が,そのもっとも代表的な意見として披露されていた。

 つぎの画像資料は,金 正恩の妹にせっかく会えた好機が生まれていたにもかかわらず,安倍晋三はこのように「われ関せずの表情」で,無視していた。「外交の安倍?」という冗談があったが,確かに冗談としては真実であった。もっとも,本人が無能ゆえに犯した「こうした無視をする態度だった」とも理解できるが,ともかく,国際スポーツ大会が開催されていた舞台を介して,世界中に向けて自分の哀れな姿をさらした。 

 

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 あるいは,安倍晋三は「コロナ汚染でも利権優先」させ,「日本人の不幸を利用するだけ利用する最低の政治屋」であり,「拉致被害者家族も利用,NHKなど大メディアを使ってのパフォーマンス」ばかりであったと断定されていた。

 「NHKニュースで『拉致被害者を救済のため,米国と連携していく』何十回と,多くの日本人をだましていったことか」。「メディアも具体的に『どう救済するのか?』と突っこめよ。洗脳だけか?」よ,と非難がごうごうであった。

 結局はついでに,どうしようもないあの「国営放送の犬・アッチ・イケー」も,抱き合わせで批難されていた。

 くわえては,「拉致被害者救う会の青いリボンのバッジは議員全員外せ! 付けてる意味がない」という批判まで巻き起こっていた。

   ★ いまとなってはほほえましい話題 ★

 

 「ネトウヨあるある『ブルーリボンバッジの着用を厳しくチェック』」『ネトウヨ大百科』2019年06月02日16:00,http://blog.livedoor.jp/ntuy_hyakka/archives/17383833.html という記述が,こういう「ひとつの説明」を与えていた。

 

 安倍総理が常日頃から付けているブルーリボンバッジ。説明するまでもないが北朝鮮に拉致された日本人を救出することを目的とした運動の一環として作られたものである。

 

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 ネトウヨさんの調査によれば,青丸がついているのはバッジを付けている愛国議員,赤丸がついているのはバッジを付けていない反日議員ということらしい。なかにはバッジをつけていない議員は北朝鮮工作員なのではという見方もある。〔しかし〕バッジはあくまでパフォーマンスの一種に過ぎない。

 

 問題を風化させないという意味では効果的ではあるが,着用したからといって拉致被害者が帰ってくるわけではない。そういう意味では,国際会議の場などで日本側の出席者が着用するなどで十分で,バッジをつけているか否かで愛国かどうかを判断するのは危険だと思うのだ。

 ロ)  以下のごとき指摘があったが,検討に値する意見である。

 どこまで信憑性があるのかはまったく不明だが,横田めぐみの真実は,誰よりも蓮池 薫と祐木子の夫妻が承知している。2人がテレビカメラの前に出てきて事実をいえばよい。

 なかでも横田早紀江が「北朝鮮のいうことは嘘ばかりで信用できない」とか,「めぐみちゃんがどうなったか本当の真実がしりたい」とか,いつまでもいつまでもいいつづけているのはおかしくないか。

 蓮池 薫と祐木子の2人に聞けばよいではないか。蓮池 薫は金 英男とも職場の同僚で,二つの家族は同じ集落に住んでいて,なにからなにまでしりあった仲だったはずだ。実際に帰国した直後は「母乳が出なくて云々」の証言をしていた。

 北朝鮮に真実を教えてもらえなくても,蓮池 薫に聞けば,1993年から1994年にかけての横田めぐみの真実については明らかになう。そして実際に,横田夫妻は蓮池夫妻からすべてを聞き出しているはずで、それにもかかわらず「真実がしりたい」と言うのはおかしくはないか。

 補注)関連して付言すると,蓮池 透(薫の実兄,すでに有名人だが)は,薫からそのあたりの真実(真相:事実)を「聞かされている」か「聞かされていない」かどうかは分かりにくいが,本ブログ筆者は後者である可能性を採る。

 薫の立場に即していえば,「墓場までもっていくべき〈自分の過去に関する記憶〉をもっているものと推測する。実兄である透は事後,政治活動までする人生を歩んでいたが,その言動のはしばしからは,実弟北朝鮮に拘束されていた時代の実像が,肉親の立場からする説明としてもうひとつすっきりとは伝わってこない,つまり明確に浮かせうる材料がみつからない。いいかえれば,兄は,弟が北朝鮮に拘留されていた時期の「本当の事実」をしらされていない可能性が大きい。

 それゆえ薫が,透に対しても絶対に話していない「なにか」を隠しもっているのではないかと疑ってみることは,けっして根拠のない推論だとはいえない。以上の推定話は,蓮池 透『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』講談社,2015年を読んでも変わらなかった。

〔記事本文に戻る→〕 2002年の9月に一時帰国前の蓮池 薫夫妻が平壌空港でキム・ヘギョンの顔を抱いている写真がある。この写真がなにより雄弁に真実を語っている。横田早紀江とマスコミは,今度の金 英男の1件を北朝鮮の謀略といい,壮大な演出だというのだが,謀略であり演出なのは,いったいどちらなのか。いい加減に,この壮大な茶番劇の卓袱台をひっくり返す人間は出て来ないのか。

 註記)「横田早紀江の壮大な演出と謀略-週刊現代横田めぐみ死亡説-」『BACK TO THE MIDDLE 世に倦む日々,critic3.exblog.jp』https://critic3.exblog.jp/5141345/ 2006-06-29 23:30 参照。

 ハ) 横田 滋・早紀江夫妻にとっては,娘めぐみのそのまた娘,つまり女孫になる「キム・ヘギョン:金 恵慶」もしくは「キン・ウンギョン:金 恩慶」という人物の姓名のうち,後者の漢字には「恩」が付けられている点に関心を向けてもいい。

 横田夫妻は以前,北朝鮮側の特別の配慮のもと,モンゴルでこの孫のヘギョンに初めて会っていた。しかも,日本にかえってきてから,かなり喜んでいたかのように報告していたが,その意味あいをどのように酌みとるかについて,関心をもって語る人がいないのではない。

 補注)こういう指摘もある。かつて横田 滋は,孫にあたるウンギョン氏と会ったことを「お会いできた」と表現した。この表現は,ウンギョン氏が天皇陛下のように身分の高い人物であることを意味している。くわえて,安倍政権と拉致家族会(とくに横田夫妻)の異常なまでの関係から,……事実である可能性は高いと思っている。

 註記)「〈批判殺到! 『何が断腸の思いだ』〉 安倍首相『帰国実現できず断腸の思い』滋さんの死去に(朝日新聞)」『阿修羅』2020年6月6日 20:10:55,http://www.asyura2.com/20/senkyo273/msg/233.html

 また,別の問題として,「家族会」(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)や「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)が,篤志として寄進された多額の金銭の用途をめぐって,つぎのような疑念を残していた。

      有田芳生稿「拉致問題『家族会』元会長の回想記は真実か」◆
 =『BLOGOS』2013年11月07日 16:16,https://blogos.com/article/73195/

 

 〔2013年〕11月7日(木)拉致問題の「救う会」佐藤勝巳元会長が,『統一日報』に回想記を連載している。11月7日付で73回になる長期連載だ。年内まで続くようだ。この連載のここ数回で「家族会」の会計問題を取り上げている。

 

 佐藤氏は「横田 滋氏の会計未発表や大スキャンダル事件を,議連,マスコミ,週刊誌などは程度の差はあれしらない者はいない」とする。佐藤氏が支持者から1000万円の寄付をもらったにもかかわらず,その行方が不明となったことは報道され,しられているが,指摘される横田疑惑など、あえて噂を流す者がいたので関係者は「しらない者はいない」ということだろう。

 

 佐藤氏の金銭問題は、たとえば青木 理『拉致と人々』岩波書店〔2011年〕に詳しい。しかし「家族会」の問題など、社会的にはほとんどし知られていない。横田 滋さんが新聞に折りこまれた広告に領収書を貼り付けて,会計処理をしていたことは,拉致問題対策本部の担当者たちがよくしっている。

 

 もちろん問題があれば明らかにすべきだ。佐藤元会長がここまで書くのなら,「家族会」は事実関係を明らかにする責任がある。

 だが,このように有田芳生が指摘した「家族会」や「救う会」関連の会計不明朗問題は,世間の人びとの関心を大きく惹くものとはなっていなかった。「指摘される横田疑惑」とはなんであったのか,関心がもたれていい問題ではなかったかという疑念は,いまも残されたままである。

 ニ) 俗っぽい表現になるが,真理「性」がわずかでもありそうな推測話としては,金 正恩と,横田夫妻の孫に当たる金 恩慶(金 恵慶)とは,金 正日の子ども同士に当たるのではないかという〈疑惑〉があった。金「恩慶=恵慶」という姓名(の名付け方とその使用)は,いかにも意味深長である,という解釈が十分に可能である。

 以上の話題は,かなり “推理小説的な筋書き” も混ざりこんでいるかもしれない。けれども,話半分にでも真剣に聴いておく余地がある。安倍晋三による対・北朝鮮外交が「安倍政権の維持のために悪用ばかりされてきた」事実と,あたかも合わせ鏡になっているかのような「拉致問題に関した日朝間の政治現実的な話題(その裏話的な秘話)」が,過去から現在までずっと取り残された状態にあっても,いまだにまともに解明されずに放置されてきた。

 以上の前提話を踏まえたうえで,本ブログ筆者が旧ブログで書いてあった「北朝鮮事項」を,横田 滋「死去」という訃報に接したのにさいして,あらためて復活させてみることにした。旧ブログ「2016年05月04日の記述の題名(タイトル)」は冒頭に記載してあったが,もう一度,主題・副題のかたちにして,その文句をつぎに書き出しておく。

 主題北朝鮮拉致被害者の蓮池 薫は拉致加害者でもあったと指摘した古川利明『〈さるぐつわ〉の祖国』2011年」

  副題1「忘れられる前に忘れられた問題-北朝鮮による日本人拉致被害者は,あの国のための工作員要員として拉致され,そして利用された事実もあった-」

  副題2安倍晋三政権にとっての北朝鮮・日本人拉致問題の利用価値」


  古川利明『〈さるぐつわ〉の祖国-朝鮮拉致被害者たちはなぜ日本で「何もしゃべれない」のか?-』2011年9月

 最近,Amazon の通販でこの本,古川利明『〈さるぐつわ〉の祖国-朝鮮拉致被害者たちはなぜ日本で「何もしゃべれない」のか?-』(第三書館,2011年9月)を購入し(ちなみに購入できた価格は¥192-),読んでみた。

 その感想としては,いままではっきりと認識できていなかった「当然の事実」,すなわち,蓮池 薫を代表的な人物として挙げて話題にすることになるが,彼は第1義的にはもちろん「拉致被害者であった」けれども,北朝鮮にすっかり洗脳されてしまい,あの国の工作員として日本に潜入(密入国)し,第2義的には「実際に日本人を拉致する側(加害者)の立場」になって,「北朝鮮のために働いていた事実」があったことである。

 補注1)この点(事実)は,蓮池 薫『拉致と決断』(新潮社,2012年)を注意深く読めば,さらに理解できる問題性である。北朝鮮の支持者は『在日朝鮮人』(日本で生まれいままで生きてきた朝鮮総聯系の人びと)であっても,その洗脳をあらためて「洗い流す作業(覚醒させ正常に戻す手当)」に困難が控えている事実からも,前段の指摘の妥当性・合理性が理解できる。もっとも「北朝鮮のために働く事実」は,なにも拉致の任務・作業だけではないが……。

 f:id:socialsciencereview:20200608090616j:plain 週刊現代』2004年1月6・13日号,モデルは藤原紀香

 補注2)公平を期すためにまえもって,つぎの記事も紹介しておく。こちらは前後して述べる内容に疑義を呈している記事である。「蓮池さんが日本人拉致? 『週刊現代」特ダネの真贋』」(『JCAST ニュース』2006/12/26 19:08,http://www.j-cast.com/2006/12/26004615.html?p=all)。しかし,これは,北朝鮮という国の特殊性:実体をまともに踏まえた記事ではない。常識など通用しないあの国家体制をどう理解するか,相当慎重な態度・視座が要求されている。

 --古川利明『〈さるぐつわ〉の祖国-朝鮮拉致被害者たちはなぜ日本で「何もしゃべれない」のか?-』の316頁以下が,本日とりあげようとする中身を記述していた。なお,この記述が引照していたのは,『週刊現代』2007年1月6・13日合併号に掲載されていた「◆つぎの記事◆」の内容であった。この内容を以下にくわしく紹介する。

  ◆ 横井邦彦稿,家族会の暗部 蓮池 薫さんは
     拉致工作員として日本に上陸していた(反米嫌日戦線)◆

 a) 拉致家族も拉致実行犯であったことを隠して,世論操作する安倍内閣。本日発売(2007年1月時点の話),週刊現代の衝撃スクープだ。

 この記事によれば,社会主義労働者党を結成した横井邦彦氏が北名古屋市鴨田小教諭だった1986年3月18日,卒業式予行演習後の体育館に侵入した蓮池氏に声をかけられ,他の複数の工作員により拉致されそうになったという。

 横井氏の証言によれば,国政選挙の候補予定者(同年7月の参院選に出馬落選)が失踪すれば,警察が黙っていないと告げると,蓮池氏は,拉致を断念し「口外したら命はないぞ」と捨て台詞をいい去っていったそうだ。

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 出所)上の人物の画像は,あるツイッター画面  https://twitter.com/dgtvxsqnmf8bsfn愛知 名古屋市 中川区  Joined April 2018〕から拾ったものであるが,これは,同一人であると思われるツイッターの「以前における住所」 https://twitter.com/zr8k名古屋市  Joined July 2012〕を更新(別途,新規に開設)したものと思われる。前者では,自分の氏名を横井邦彦だと,はっきり名のっている。

 つぎにかかげる,古川利明『〈さるぐつわ〉の祖国』316頁の「画像の人物」と比較してみると,その間において年齢が増えた分だけの変化が反映されているものの,人相は間違いなく一致している。横井は特徴(個性)ある容貌をもった人である。

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 「蓮池氏ら拉致被害者5人が帰国してから,内閣府拉致問題・連絡調整室,外務省北東アジア課,新潟警察の3つの部署が,5人に対し個別に任意で話を聞いてきました。なかでも一番詳しく聴取したのは,内閣府拉致問題・連絡調整室です。内閣府には『蓮池ファイル』と呼ばれる膨大な証言録があって,外務省も必要に応じて問い合わせていました」。

 「当時このファイルを管理していたのは,現在,首相首席秘書官を務める井上義行氏ですが,実際にファイルを作成したのは,蓮池氏への面会担当者でもあった小城徳勇氏です」(外務省元北朝鮮関係者)。蓮池氏は,「金 日成政治軍事大学を卒業して,烽火大学に進学した」と横井氏に話したという。

 これが真実としたら,蓮池 薫氏はスパイのエリートであったこととなる。横田めぐみさんもスパイに日本語を教えていたそうだし,拉致被害者が拉致実行犯になる可能性を否定することはできない。いままで,マスコミは一部を除き,拉致家族会のいいなり報道に終始していた。

 宮崎 学は〔2006年〕10月の一水会フォーラムにて,拉致家族会に対するこのような報道の姿勢を批判している。それと,気になるのが,拉致問題に関しての報道のあり方なんです。これも,悪役と被害者というものをきわめて対照的に描いている。事実,被害者は宮崎 学被害者なんですがね。被害者の立場にあまりにも感情移入しすぎている傾向がある。僕はそのように思います。

 ですから,これは劇場型ということであれば,あるとき,これは醒めるときがくる。そういう種類のものだろうと。これは,皆さんご異論があるだろうと思いますが,拉致被害者小泉純一郎がいって帰ってきた。何人か帰されてきましたが,この時に僕がいったのは,残された人たち,あるいは殺された人たちがいますね。

 この人たちと,帰った人たちの関係はきちっと報道されているのだろうか。つまり,一番しっているのは帰ってきた人たちなんですわ。その人たちは責務としていう必要がある。僕はそう思ったわけですね。すぐに批判を受けたわけですけれども。報道のあり方として考えた場合に,そう思うわけです。

 簡単に想像できるのは,残された人は,北朝鮮に反抗的な人,帰ってきた人は,北朝鮮に忠誠を誓っている人,美しい国北朝鮮に「愛国心」をもっている人ってこと。まさか,祖国北朝鮮を裏切り,日本に帰らないだろうと思われた人たちのみを,北は日本に「一時帰国」させた

 北朝鮮拉致事件に関して当事者でありながら強行な態度に出ているのは,帰国した拉致被害者が,拉致の実行犯でもあったことに起因しているのではないか? 安倍政権の支持率維持〔これは第1次安倍晋三政権時の話であるが〕に,拉致問題が利用されている現実をどう思っているのか?

 蓮池〔薫〕氏よ,真実を語ってくれ。

 b) 正直にいいます。いまさら隠していてもしかたがありませんので,私がしっていることをすべていいます。私(横井邦彦)は1986年に日本で蓮池 薫氏に会っています。正確には,拉致されそうになったという方が正しいいい方だと思います。拉致被害者が日本で拉致未遂事件を起こしていたなどという話は,にわかに信じがたいからこれまで黙っていたのです。

 補注)蓮池 薫が北朝鮮に拉致されたのは,1978年7月31日。なおこういう指摘がある。蓮池が2002年10月15日に「帰国後,地村夫妻から『先生』と呼ばれていたことなどから,帰国者5人の中でも目付役的な存在と目されたが,本人はこれを否定」。

 註記)http://nyt.trycomp.net/jokyo/05.html ただし,朝鮮語(韓国語)における「先生」の語感は日本語とは異なる点も含むので,注意が必要である。

 テレビで蓮池 薫氏が飛行機のタラップから降りてくるのをみたときには,「あのヤローだ」ということはすぐに分かりましたが,この時期は私とマルクス主義同志会の関係が極端に悪くなっており,最終的に私がマルクス主義同志会から追い出され,赤星マルクス研究会をつくり,ホームページを立ち上げるという私の人生の大きな転回点だったので,私自身が拉致問題どころではなかったということも大きな理由のひとつです。

 それに,赤星マルクス研究会を立ち上げてすぐに,「実は私は」などと名乗り出ることは,私自身の売名行為のようで気に入らなかったし,あのころはまだ蓮池 薫氏の家族が北朝鮮に残っており,彼に「お前,あの時のヤツだろう」などというのも酷だと思ったので黙っていました。

 しかし,いまの私は失うものはなにもないです。だから正直に言います。私は,1986年当時愛知県の小学校の教師でした。私の勤務していた小学校は愛知県西春日井郡西春町にある鴨田小学校という学校でした。

 1986年3月の下旬のことでしたが,そのとき私は視聴覚担当をしていたので,鴨田小学校の体育館で,卒業式の練習を終えて,1人で会場の放送用具の整理をしていました。蓮池 薫氏はそこへやってきました。そこで30分ぐらい彼と話をしました。

 彼の話は彼が拉致被害者であるということと,いろいろな理由で北朝鮮につれてこられたり,自分の意志で北朝鮮に来たりした日本人は100人以上いるということ,自分はそういう人たちの “面倒を見る立場” に置かれているということ,北朝鮮赤軍派で内部闘争があり,北朝鮮当局が田宮を指導部からはずしたがっているということ,北朝鮮に来れば田宮の代わりに私を指導部に入れたいということ,私を北朝鮮に連れていくために,“潜水艦ではない船” で秘密裏に日本にやってきた等々でした。

 もちろん私は,はっきりと蓮池 薫氏の申し出を断わりました。日本の革命運動を北朝鮮でやるということの意味がまったく分からない,日本の革命運動は日本でしかできないのではないかということと,私と北朝鮮政府の見解は大きく異なっており,私は北朝鮮社会主義国家だと思ったことはないというのが断わった主な理由でした。

 そうしたら蓮池 薫氏は,ここまで秘密を漏らしたらこのまま返すことはできない,力ずくでも北朝鮮に連れていく,というとんでもないことをいいだしたのです。しかし,残念なことに蓮池 薫氏はそれを実行することはできませんでした。私は,蓮池 薫氏に彼が私を拉致することができない理由をはっきりと説明しました。

 いうまでもないことですが,私は1986年3月いっぱいで小学校を退職し,社労党(社会主義労働者党)から参議院愛知地方区に立候補することが正式に決まっており,それはもう記者会見を開いてマスコミにも伝えていたからです。国政選挙の立候補予定者が突如としていなくなることの意味を考えなくてはならない,これは普通の人がいなくなるのとはまったく意味が違うのだと。

 しかも私は,労働者階級の利益を守るために立候補するといっているのだから,私を拉致することは朝鮮労働党が日本の労働者階級にケンカを売るのと同じだと,朝鮮労働党が日本の労働者階級の敵となってなお生存を続けることは絶対的に不可能である,というようなことをいった記憶があります。

 私と蓮池 薫氏が話をしている間に,夕方だったのではっきりとはみえませんでしたが,私たちのまわりには数名(2,3人)の不審な人物がいました。蓮池 薫氏は私の話を聞いて,そのなかの指揮者とおぼしき人物のところに相談にいって,数分の間,話をした後で私のところへ戻ってきて,今回はあきらめるといって去っていきました。

 なお「指揮官とおぼしき人物」は,横田めぐみさんのダンナ称する人物〔金 英男のことか〕とよく似ていたような気がしますが,蓮池 薫氏のように数十㎝の至近距離で直接言葉をやりとりしたわけではないので,はっきりと断言できません。このとき,蓮池 薫氏は私にくだらない脅し文句をいくつかいったような気がしますが,それはすべて忘れてしまいました。

 以上が,私がしりえた出来事のすべてです。

 c) それで,拉致被害者が全部は死んではいないという根拠ですが,ひとつは,蓮池 薫氏は拉致被害者のなかでも多くのことをしりうる立場にあり,彼が私にいったことの多くはそれなりに当たっていたということ。

 ふたつめは,蓮池 薫氏のように北朝鮮で特別の任務を与えられて生きていた拉致被害者は彼だけではなく,その他にもいるのではないかということ。そして,そういう人びとは殺されたり強制収容所に送られる理由はないので,彼らがいまだに生きている確率は高いということです。

 なお,こういうことは被害者である私が語るよりも,加害者である蓮池 薫氏が語るべきことがらなのではないですか。なにしろ彼は当事者であり,すべてを語るといっているのだから,私の拉致未遂事件を含めて,すべてを語る責務は私にではなく,彼のほうにあると思います。

 なお,蓮池 薫氏が私のところに来た理由は,彼が私を赤軍関係者と誤解したためです。この誤解についてですが,実は,浅間山荘事件で逮捕された連合赤軍のK氏はどういうわけか,浅間山荘で逮捕されたとき,私の名前と住所と電話番号を書いたメモをもっており,そのことで私の実家にはパトカーが2台も来た。

 そこで私が不思議に思うのは,田宮たちが北朝鮮に渡ったのは1969年で,連合赤軍事件が起こったのは1972年であり,この事件の関係者たちはすべて長期投獄されている。したがって,蓮池 薫氏が私を赤軍関係者と誤解するというのは,理解しがたいものである。

 日本国内の赤軍関係者ならば,私と彼らがまったく異なる政治的な立場に立っていることぐらい,私が説明しなくても彼ら自身が一番よくしっていることがらであるし,北朝鮮赤軍派ならば私の存在じたいをしらないはずである。

 むしろこういう誤解は,私の実家に来たバカなパトカーの関係者のものであったろうし,私に対する拉致計画そのものが,客観的にみれば,社労党(社会主義労働者党)の選挙運動に対する悪質な選挙妨害以外のなにものでもなかったのだから,この計画の主たる発案者は,むしろ北朝鮮政府ではなく,日本国内にいるわれわれ社労党(社会主義労働者党)の参議院選挙への参加を,こころよく思っていない勢力なのではないかと考えるのが妥当であろう。

 そういう点では,これは語られなければならない,闇に葬ってはならない政治的な事件だったと思います。北朝鮮政府(金 正日政権)が,日本の反動勢力とつるんで,日本の労働者階級の選挙闘争を圧殺しようとしたという事実は,歴史のなかにどうしても書き残さなければならない重大な出来事であると私は思うから,あえて真実を語るのです。

 註記)http://ameblo.jp/souldenight/entry-12014029253.html

 再言しておくが,以上の『週刊現代』2007年1月6・13日合併号(32頁,前掲した画像はその表紙,モデルは藤原紀香)の記事は,古川利明『〈さるぐつわ〉の祖国-朝鮮拉致被害者たちはなぜ日本で「何もしゃべれない」のか?-』2011年9月にも,そのままくわしく紹介されている内容であった。

 

  蓮池 薫が口に出せない拉致事情が残っている

 本ブログ筆者は,古川利明が創価学会公明党に関して公刊した本(新刊)はすべて通読していたが,この『〈さるぐつわ〉の祖国』は古本で入手し,初めて一読することになった。

 『週刊現代』2007年1月6・13日合併号の記事となった横井邦彦「『蓮池 薫さんは私を拉致しようと日本に上陸していた』-実名告白」の意見・主張が,そのまま全面的に事実・真実であるかについて それを十全に判断できる材料を筆者側はもたない。だが,古川の本書をあらためて読んだところで,蓮池 薫に関して「いままでなにかすっきりしない〈なにもの〉」かが,いくらかであるが,ボンヤリでも把握できたような感じにはなれた。

 一番肝心なのは,こういうことがらである。蓮池 薫などが日本に当初「一時帰国できた」のは,これは北朝鮮を専門とする研究者に聞かなくとも判る基本事項であるが,北朝鮮当局の期待(つまり指示・命令)を絶対に裏切らない者(⇒それに該当し,自信がもてる日本人拉致被害者)だけを選りすぐって,日本に送りこんだという事実である。この点は,強調し過ぎて,し過ぎることのけっしてない注意事項となる。

 この注意点を確実に前提に踏まえて考えれば,横井邦彦「『蓮池 薫さんは私を拉致しようと日本に上陸していた』-実名告白」『週刊現代』2007年1月6・13日合併号(32頁)の記事は,けっして荒唐無稽ではなく,かなりありそうな実話(真実)として信用することもできる。

 北朝鮮国内において人民(国民・大衆)たちが,実際においてどのような独裁国流の日常生活を強いられているかについていえば,日本国に暮らしている人たちにあっては,想像もつかないほどきびしい現実がある。在日朝鮮人のうち敗戦後9万数千人もの者たちが「故郷」ではなかった地域である北朝鮮に移動した結果,どのような不幸と悲惨が彼らに発生し,さらにくわえては,日本に残っていた親類・縁者まで襲いかかってきたか? すでにその事実史を語っている書物が公表されている。

 補注)参考文献。小島晴則編『幻の祖国に旅立った人々-北朝鮮帰国事業の記録-』高木書房,2014年,小島晴則編『帰国者九万三千余名最後の別れ-写真で綴る北朝鮮帰国事業の記録-』高木書房,2016年は,いかにして「朝鮮人を日本から少しでも多く北朝鮮に追放したか」に関する証拠文書集である。

 いうなれば,在日朝鮮人を体よく北朝鮮に送りこんだ:追っ払った(韓国では『北送』と称しているが)「日本〔国〕側における北朝鮮への帰国事業」は,在日朝鮮人と日本人妻ら9万3340人を,新潟港から北朝鮮に送還していた。

 北朝鮮が『地上の楽園』(!?)だというウソ話を信じこまされて「移送された」在日朝鮮人たちは,あの国における現実が実際には大きく違っていた姿を,北朝鮮の港に着いて船を降り立つ直前,それも出迎えに来ていた北朝鮮の人民たちの風采をみた瞬間から,否応なしに気づかされるハメになっていた。

 補注)前段の記述に深く関連する参考文献。

    玉城 素『朝鮮民主主義人民共和国の神話と現実』コリア評論社,1978年。

    金 元祚『凍土の共和国-北朝鮮幻滅旅行-』亜紀書房1984年。

    李 佑泓『どん底共和国-北朝鮮不作の構造-』亜紀書房,1989年。

    李 佑泓『暗愚の共和国-北朝鮮工業の奇怪-』亜紀書房,1990年。

 蓮池 薫が拉致された1978年ころには,在日朝鮮人の「帰国事業」は終末期になっていた。北朝鮮に拉致された日本人被害者たちがその後「完全に洗脳されてしまい」,さらには「拉致する工作員の立場」のほうに自分の人生を大化けさせられることは,ありえない話ではない。日本人拉致被害者とて,あの国のなかで生き抜くためには,しかたなくも採った人生の行路(覚悟したうえで受け入れた末路?)であったかもしれないのである。

 本ブログ筆者は,蓮池 薫『拉致と決断』(新潮社,2012年)を,あらためてもう一度,読みなおす気が出てきた。

 以上に言及したごときに,蓮池 薫が北朝鮮に拉致され虜囚であった期間,自分の置かれた境遇を通して,どのように履歴を形成していったかの諸事情(過去の経緯すべて)は,日本に生還できてからそのすべてをさらけ出すことは,とうていできない相談であったはずである。この点は適切に理解してあげねばならない問題点である。

 補注)参考文献。

    康 明道・尹 学準訳『北朝鮮の最高機密』文藝春秋,1995年。

    朝鮮日報『月刊朝鮮』編,黄 民基訳『北朝鮮-その衝撃の実像-』講談社,1991年。

    林 永宣,池田菊敏訳『金王朝の極秘軍事機密』徳間書店,1994年。

    平井久志『なぜ北朝鮮は孤立するのか-金正日 破局へ向かう「咲先軍体制」-』新潮社,2010年。

    平井久志『北朝鮮の指導体制と後継-金正日から金正恩へ-』岩波書店,2011年。

    蓮池 薫『拉致と決断』新潮社,2012年。

 なお,最後に挙げた蓮池の著書は,事実(真相)を100%書いていると受けとめないほうが,読者の立場としては賢明である。数字を当てて感覚的にいえば「70%位までは真実(実相)を表現している」と受けとめてみればいいかもしれない。

 

  古川利明『〈さるぐつわ〉の祖国-朝鮮拉致被害者たちはなぜ日本で「何もしゃべれない」のか?-』2011年9月の細目目次

 本書の非常に細かい目次が,古川利明自身のブログに記載されていた。「さるぐつわの祖国 単行本」『古川利明の同時代ウォッチング  toshiaki.exblog.jp 』2011年9月24日が,それである。

 本書の分量は,本文の最終ページの「あとがき」474頁まである。本書を読むまえに〔あるいは読まないでもいいが〕,その細目目次だけでもみれば,おおよその内容は感じとれると思う。

 ここではとりあえず,その主要目次などだけを紹介しておく。

   ※-1 内容説明

 彼らは政府,家族会,救う会に真実を語っていない。横田めぐみ「拉致完了」無線を傍受していた公安警察。「金 大中拉致は角栄が条件付事前了承」と韓国高官説。「北でのことを話すと,残留被害者が戻れない」は本当? などなど,拉致問題タブーに挑戦,万人の疑問解明。

   ※-2 目 次

   第1章 拉致問題は “元日本人” 金正日の “ウラの朝鮮戦争” だ
   第2章  「金大中拉致」と「日本人拉致」をつなぐもの
   第3章 タブーとしての「拉致問題
   第4章 直撃・帰国者五人の “見えないさるぐつわ”
   第5章  「蓮池 薫が私を拉致しに来た」(元小学校教諭・横井邦彦)
   第6章  「食い物」にされていった「拉致問題
   第7章  「さるぐつわ」と「拉致問題」の核心Q&A

 --さらに目次の詳細をしりたい人は,出版元のつぎの案内を参照されたい。

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