東電福島原発事故における放射能汚染水問題の解決には,あと何年の歳月がかかるのか,「悪魔の火」との因縁つきあいは,未来永劫に続くのか

 東電福島第1原発発電所原発が爆発事故を起こしていたが,廃炉工程に漕ぎ着ける以前に,その後始末が未達成のままである「汚染水の問題」

 2013年9月IOC総会で,フクシマは「アンダーコントロールだ」といって大きなウソをつき,2020東京オリンピックの招致に成功した安倍晋三の政権であったが,その開催が延期されて以後,今日の日付はもう「2020年の9月11日」

 コロナ禍のためにおそらくは,東京オリンピックの開催そのものが不可能だといわれている状況のなかで,東電福島第1原発の事故現場は「汚染水問題で溢れんばかりの窮状」に追こまれている

 その間,安倍政治の「いまだけ,カネだけ,自分カネだけ」であるさもしい政治屋の精神は,まさしく「後進国化しつつあるこの日本国」を,みずからがあえて急速に貶める役目を機能させてきた。安倍のデタラメとウソを充満させた為政の結果は,2020東京オリンピックの招致・開催の延期=失敗をもってしても端的に反映されている。

 

  要点:1 《悪魔の火》に手を出した人類・人間側の罪業は「永遠に不滅」

  要点:2 東電福島原発事故現場の汚染水問題としてトリチウムという核種

   ◆ 安倍政権の「幻」に身を委ねた日本~菅政権は「幻」を継承するのか               少子高齢化,借金,原発……。そして,国力の衰退から目をそむけた安全保障論 ◆

 = 大野博人・前朝日新聞論説主幹『論座』2020年09月10日,https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020090900001.html

 

 福島第1原発事故は「起きた」のではなく,いまも「起きている」。廃炉には,何十兆円というコストと最短でも何十年という時間がかかるとみられている。

 だが,安倍晋三首相は五輪誘致に「アンダーコントロール」というレトリックをもち出した。実際はアンダーコントロールどころか,廃炉への道はいまも予測できない試練に満ちている。

 その点でも,廃炉事業は日本にとって五輪など取るに足りないくらいの世紀のメガプロジェクトのはずだ。過酷な現実を,幻で覆い隠す。東京五輪はその象徴的な事例だ。それが本当の幻になるとしたら,皮肉というしかない。

 
  湯之上隆(技術経営コンサルタント・元半導体技術者「安倍首相の大嘘『状況は制御されている』を実現する秘策を考えた」論座』2013年9月18日

 a) この ① に紹介する記事は『論座』に7年前に執筆されていて,記事の分類としては「エネルギー・原発東京五輪」に区分けされていた。これまでの7年間,この3つの問題「エネルギー」「原発」「東京五輪」のそれぞれを囲んでいた関連する情勢が急速に変動してきた。

 エネルギー問題は,すでに原発不要である電源問題(電力需給問題)の核心を明確にしてきた。原発そのものの問題に関していえば,東芝・日立・三菱重工などが原発を商売のネタにすることじたいに失敗してきた経緯もあった。2020年東京五輪の開催は「1年延期」の措置となったが,専門家たちは多分「99%」その開催は無理だという意見である。コロナ禍が疫病的に有する歴史的な特性に鑑みれば,1年あとに五輪を開催したいと希望するのは,ある意味ではすでに〈与太話〉に近い。

 b) ともかく,2013年9月6日から10日,アルゼンチンのブエノスアイレス開催されたIOC(国際オリンピック委員会)総会は,2020東京オリンピックの招致を決定していた。その招致のために日本国首相である安倍晋三は,つぎのように世紀の大ウソをついて,演技していた。

 フクシマについて,お案じの向きには,私から保証をいたします。状況は,統御されています。東京には,いかなる悪影響にしろ,これまで及ぼしたことはなく,今後とも,及ぼすことはありません。

 

 Some may have concerns about Fukushima.  Let me assure you, the situation is under control. ……

 下線を付した箇所は,もともと英語で “The situation is under control” と表現されていた。「アンダーコントロール」のこととなれば,安倍晋三が政治家として放ってきたウソは数々あれど,このウソは彼の真骨頂であった。

 当時,JOC会長であった竹田恒和もつぎの大ウソをついていた。竹田は,IOC総会の開かれるブエノスアイレスで会見したさい,「東京は福島から250キロも離れているから安全」と発言。まるで「東京が安全ならばよい」とも聞こえる差別的な発言をおこない,福島の関係者からも強い批判を浴びた。

 安倍晋三の首相としての「デタラメとウソ」の発言,くわえて竹田恒和の同様な発言ともに,2020東京オリンピックが開催できるのであれば,どのような虚偽を申したてても許されるという専横で驕慢な基本姿勢を,とことんバカ正直にムキ出しにしていた。しかし,いまの今日は2020年の9月11日である。1ヵ月ほど前に開催されていたはずだった東京オリンピックは,延長が決まっているものの,99%は消滅したと観測していい。

 c) 安倍晋三竹田恒和の大ウソは,いったいなんのために放たれていたのか? 安倍晋三のミエのためか? 第2次安倍政権の7年と8ヵ月,晋三はこれといったまともな業績を挙げられないまま,日本の憲政史上「最長になったがただ最悪だけであった首相」としての〈迷声〉(=至悪の評判)を残した。2020東京オリンピックの開催・招致の問題は,そのあだ花として飾られるに違いあるまい。

 2020東京オリンピックの開催がともかく延期になったとはいえ,問題は「東京都側の事情」よりも,東電福島第1発電所の大爆発事故のために,県土(風土:とくに土壌)をひどく汚染されたままにある福島県浜通り地区」が深刻である。ここまで以上の前置きを書いてから,この ① の記述としてさらに,それも「3・11」が発生してから半年後に公表されていた文章を引用する。

 ここに描かれている東電福島原発事故現場は,それから8年半も時間が経過してきたものの,基本的にはなにも変化がないどころか,事態はむしろ深刻化してきた。この ① の内容は,原子力を使い電気(エネルギー)をえる「科学技術のあり方」が,いかに反人類的・非人間的であるかを,嫌というくらい教えている。 

 以下,① として挙げていた『論座』2013年9月18日の記述からの引用となる。

 --私〔湯之上隆〕は,2020年の東京五輪開催決定を,どうしても心の底から喜ぶ気になれない。その原因は,安倍晋三首相が最終プレゼンで,福島原発の汚染水問題に対して,「状況は完全に制御されています」「汚染水は福島第1原発の 0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされています」と発言したことにある。

 日経新聞は〔2013年〕9月10日の社説で,安倍首相の「状況は制御されている」という発言に「違和感がある」と書いているが,違和感なんてものじゃない。大嘘じゃないか! ここ数カ月の報道をみるかぎりでは,汚染水問題は刻々と深刻さを増している。

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 数字が二転三転するのでどれが正しいか分からないが,経済産業省が2013年9月3日に公表した資料によれば,福島第1原発1~4号機には山側から,1日1000トンの水が流れこみ,このうち400トンが原発建屋に流入している。残りの600トンの一部がトレンチ内の汚染源に触れて,汚染水として海に放出されている。

 東電では汚染水をくみ上げタンクに貯蔵しているが,そのタンクは1000基を超え,貯蔵されている汚染水は34万トン以上になり,今後どこまで増えつづけるのか分からない。

 さらにタンクの一部から高濃度放射性物質を含む汚染水300トンが漏洩したことが発覚し,〔2013年〕8月末には,原子力規制委員会が国際原子力事象評価尺度にもとづいて「重大な異常事象」に当たるレベル3と判断し,国際原子力機関IAEA)に報告した。

 このような事態のなかで,いったいどのような認識をすれば,「状況は制御されている」ことになるのだろうか? 誰がみても五輪招致のために,大嘘をついたことは明白ではないか。

 その証拠に,9月13日に福島県郡山市で開催された民主党の会合で,東電の山下和彦フェローは,「想定を超えてしまうことが起きていることは事実だ。いまの状態はコントロールできていないと考えている」と述べている。また,原子力規制庁の小坂淳彦・地域原子力規制統括管理官も汚染水の貯蔵タンクに関し「管理できるところが管理できていなかった」と語っている(日経新聞電子版〔2013年〕9月14日)。

 英国放送協会(BBC)は,「日本政府は(福島原発の汚染問題)解決に7年の猶予を与えられた」と伝えた。また,東電が汚染水問題に対処するため社外専門家として招いた米原子力規制委員会(NRC)出身のレイク・バレット氏は,「汚染水対策には10年以上かかる」と述べた。さらに廃炉までの道のりは,約30年は修羅場が続き,最終的には100年近くかかるという。

 補注)2013年9月からちょうど7年が経った「現在の2020年9月」時点であるが,東電福島原発事故現場は,廃炉工程に向かおうとしているにせよ,根本的にはいつごろになったら終結のめどがつきそうかについて,全然展望ができていない。

 ましてや,「汚染水対策には10年以上かかる」し,それ以上に,その「廃炉までの道のりは,約30年は修羅場が続き,最終的には100年近くかかる」と指摘されている。だが,こうした指摘についても,確実な保証があるわけではない。

 その程度に受けとっておくべき話題であった。2020年の9月現在になってみれば,以上の理解はより確実化した。それだけのことである。

〔記事に戻る→〕 安倍首相は,世界数十億人を前にして大嘘ともいえる啖呵を切ったのだ。いってしまった以上,7年後には「状況は完全に制御できている」ように実行に移してもらいたい。約束を違えれば,世界中から「日本の首相は大嘘つき」「日本人も大嘘つき」と非難を浴びることになるだろう。

 補注)前段でも触れたが,ここで要求されていたその「7年後」とは,すでに来ていた。安倍晋三は例によって責任など,けっしてとらない「大ウソつき」であったが,この嘘つきでしかない政治屋としての彼の本性は,大昔から周知の事実であった。

 しんぶん赤旗』2013年1月13日(日)の記事,「安倍内閣,反省なき原発推進 事故を招いた『A級戦犯』」https://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-13/2013011301_04_1.html がすでに,安倍晋三原発「観」を,「『安全神話』の答弁」だと,こう批判していた。

 「地震津波等の自然災害への対策を含めて原子炉の安全性については… (中略) 経済産業省が審査し,その審査の妥当性について原子力安全委員会が確認しているものであり,御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期している」。

 

 これは,日本共産党の吉井英勝衆院議員(当時)の質問主意書(2006年12月13日提出)に対する第1次安倍晋三内閣による答弁書(同月22日付)の一節であった。津波地震によって原発の炉心冷却機能が失われ,メルトダウン炉心溶融)をもたらす危険性を警告した吉井氏に,答弁書はことごとく「安全神話」にもとづいて回答した。

 

 質問主意書は,地震による送電鉄塔の倒壊などで外部電源が失われたさいに,内部電源=ディーゼル発電機やバッテリーなどの非常用電源も働かなくなった場合には「機器冷却系は動かないことになる」と警告。スウェーデンのフォルスマルク原発で2系列の非常用電源が同時に故障した例も示し,全国の全原発についての検討状況をただしていた。

 

 これに対し答弁書は,過去にも落雷や鉄塔倒壊で送電が止まり,原子炉が非常停止した実例が日本にあることを認めながら,日本の原発はフォルスマルク原発と「異なる設計になっている」から「同様の事態が発生するとは考えられない」と断言し,警告をいっさい無視した。

 

 メルトダウンをもたらす燃料焼損の可能性についても,「経済産業省としては,お尋ねの評価はおこなっておらず,原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期している」と自信たっぷりに宣言していた。

 (中略)

 当時,第1次安倍内閣経産相として原発の推進と規制の両方に責任を負っていた甘利 明氏(経済再生担当相)は,原発事故後の2011年6月18日放映のテレビ東京番組の収録のさい,吉井氏の質問主意書の写しを示され,黙りこくってインタビューを途中退席。警告を無視した責任を真摯に反省する姿勢はいまだみせていなかった。(引用終わり)

 とくに,甘利 明について『しんぶん赤旗』は,2016年4月1日の記事「〈主張〉甘利氏口利き疑惑  黙っていてもやり過ごせない」https://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-01/2016040101_05_1.html  という記事において,甘利のごね得ぶり(そのズル賢さ)は,安倍晋三首相の庇護のもとでこそ可能な行動であった点を伝えていた。

 要は,「デタラメとウソ」のかぎりを最大限に尽すことを,行動の基準とする安倍晋三とこの政権のあり方であったゆえ,彼らに対して「真摯」な姿勢を期待することなど,本来ありえない〈想定〉である。

湯之上隆の記事に戻る→〕 また,2020年の五輪が終了したあとに,ホッとして手を抜かれても困る。もしかしたら,緊張感が緩むこちらの方が問題かもしれない。実際のところ日本は,数十年~100年にも及ぶ廃炉処理にどう対処していったらいいのだろうか?

 汚染水対策のように緊急性の高い問題もあるが,廃炉のためには基礎的な研究や技術開発が必要な課題も山積しているに違いない。そのような研究や技術開発を100年にもわたって続けるには,もはや廃炉処理専門の大学をつくるしかないのではないか。そしてその大学は,防衛大学校のような性格をもたせるべきであろう。

 教員は全国の大学の原子力関係学科から招集する。そんなことはすぐにはできないと反論されそうだが,日本の非常事態なのである。その道の専門家ならば招集に応じるべきである。また,防衛大学校と同じように,学生は特別職国家公務員として入校させ,学生手当を支給し,廃炉処理の専門家として養成するのである。

 原子力関係学科への志願者も電力会社への就職希望者も減り続けているなかで,優秀な研究者や技術者を確保し,危機的状況を乗り越えていくには,このようなことが必要だと思うのだが,いかがであろうか?(引用終わり)

 さて,いずれにせよ,廃炉処理問題にまで広がっているのが汚染水問題であったが,原発事故現場の事後管理問題は,今後に向けても膨大な国家予算を喰いつづけていく。廃炉事業を商売にしてみたらいいという発想は,もちろんありうる。けれどもいまの段階では,日本の原発事業を事前評価してみるに,そこまで考えられるような余裕がそもそもほとんどない。

 ともかく,前段までの原発問題の全般にまで連なる話題であるが,湯ノ上隆が披露した「批判的な議論」は,原発事業そのものの「日本における〈悲劇的な様相〉」を,東電福島原発事故を媒介に描写していた。より現実的に深刻である問題は,東電福島原発事故現場における「汚染水問題」処理方法に限定してみたところで,いまの段階(2020年9月)になってもまだその抜本的な解決策が定まっていない点にあった。

 唯一,採りうるその最終的な解決策は「太平洋への排水」となる。そのさい問題の「汚染水」についていえば,地上で処理したあとでも最終的に残るほかない「トリチウムの問題」は,そのまま大海になかに流しこんで拡散させる方法しか採れない。


 「〈東日本大震災10年へ 3・11の現在地〉汚染水,逃げ続ける国」朝日新聞』2020年9月11日1面

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 「根本的な問題解決を先送りせず,国として責任をもって対応策を早急に決定していただきたい」。〔2020年〕8月7日,経済産業省副大臣室。東京電力福島第1原発を抱える福島県双葉町の伊沢史朗町長は,松本洋平副大臣を前に,たまりつづける処理済み汚染水を最終的にどうするか,これまでにない踏みこんだ言葉で国の判断を迫った。

 水の保管タンクは原発敷地内で1千基を超える。有力視されている「海洋放出」は新たな風評被害を招くとして,県内の市町村議会で反対表明や保管継続の要望が相次ぐ。一方,まちの目と鼻の先に増えつづけるタンクを抱えていては,復興が進まない。伊沢氏の危機感に,松本副大臣は「責任をもって方針を示したい」と,いつも通りの応答を繰り返すだけだった。

 補注)2019年4月11日,「WTO上級委〔員会が〕,福島原発事故後の韓国の水産物輸入禁止措置について韓国側勝訴」という報道があった。つまり,韓国による福島など日本の8県産の水産物輸入禁止は不当として日本が提訴している問題に対して,世界貿易機関(WHO)は同日日,韓国の措置を妥当とする最終判決を下していた。

 「汚染水対策の一環として,海洋への放出も検討されるべきだと考えます」。原子力規制委員長だった田中俊一氏が,首相官邸4階であった各省の副大臣級が集まる会議でこう訴えたのは,約7年前の2013年12月18日のことだ。

 この年,福島第1原発では高濃度汚染水漏れが続き,全国的に不安が増大。国が対策に乗り出していた。2週間前には国際原子力機関IAEA)の来日調査団が,放射性物質を排出基準以下に処理して海に放出することも検討すべきだと助言。地元関係者らとの合意形成を促していた。

 会議のトップは,廃炉・汚染水対策を管轄する茂木敏充経産相(当時)であったが,「さまざまな想定をしながら検討していきたい」と田中氏の発言を引きとった。

 だが,政府が選んだ道は,関係者との対話ではなく,有識者会議をつくることだった。水の処分の技術的検討に約2年半,風評被害対策なども踏まえた検討に3年あまり。今〔2020〕年2月に公表された経産省小委員会の提言は,海洋放出を「確実に実施できる」と位置づけつつ,方針を決定するのは政府だと念押しした。6年がかりで,投げたボールが戻ってきただけだった

 2013年末に約40万トンだったタンクの水は約3倍の120万トンに。茂木敏充小渕優子,宮沢洋一,林 幹雄,世耕弘成菅原一秀梶山弘志の7氏が経産相のいすに座り,ずっと首相だった安倍晋三氏は退陣する。田中氏はいう。「世論をごまかすような議論で時間を稼いだだけ。政治は逃げたんですよ」

 東日本大震災と福島第1原発事故から10年の節目まで,〔2020年9月〕11日で,あと半年となる。日本の屋台骨を揺るがした未曽有の災害に,私たちはどう向き合ってきたのか。思い描いた未来の姿にたどりつけたのか。この10年を俯瞰(ふかん)し,復興の現在地を見つめ直す企画を随時掲載する。

 この ② の記事は「1面の記事を受けて2面に続く」構成になっていた。この2面全体を充てた記事は,「東日本大震災10年へ 3・11の現在地」と題して,汚染水問題をとりあげ,解説を試みていた。ここでは見出し関係の文句と図表のみ参照しておくだけとする。

 まず大見出しが実質的に3項目並んでいる。    

 「汚染水対策,場当たり9年半  国『増加ゼロ いつになるかは分からない』」

 「国と東電,低姿勢で譲歩迫る  漁業者『時間はあった。また見捨てるのか』」

 「水産物の輸入停止なお  中韓福島県産以外も」

 くどいようだが,安倍晋三は2013年9月の時点で,東電福島原発事故現場における放射能汚染問題は “アンダーコントロール” だと確言していた。さらに,JOC会長の竹田恒和は,東京は福島から250㎞も離れているから,こちら(TOKYO)で五輪を開催して大丈夫だと請け負っていた。その後7年も時間が経過してきたが,実際における「真実の状況」は,この解説記事が触れているとおりの苦境に追いこまれている。

 つぎにこの2面の解説記事にそえられていた図表などを紹介しておく。

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 この図表のなかに記入されていることば「処理済み汚染水」は,ほかのマスコミ・メディアの表現によると,単に「処理水」と書かれたりもする。その場合は「汚染」という事実を隠蔽しがちになる点が否定できない。トリチウムはともかく,最終的に除去できていない放射性物質である。

 トリチウムの害悪性にかかわる問題は,「原子力規制委員長だった田中俊一」がしらないわけではあるまい。ただし,それを承知のうえでなおかつ,田中は「汚染水対策の一環として,海洋への放出も検討されるべきだと考えます」と語っていた。

 原発事故にかかわるこの種の問題は,その後における解決への道のりじたいに関してからして,非常に困難な障害をもちこんでいた。そもそもの問題は「厄介ものである放射性物質」に原因していた性質上,あえて「原発反対派の原子力工学者たちの意見」に聞くまでもなく,それほどむずかしく理解する必要はない。

 また,原発事故を起こした「原子力村」側に属する当該の専門家たちは,トリチウム問題に関するその対応ぶりをみると,「非常に雑な対応」(要は小バカにしてみくびりながらのそれ)をもって,素人である当該の住民たちを片付けようとしてきた。いわば,その地域住民を「ひどくぞんざいにあつかう無責任な対応」に終始していた。


  牧田 寛・稿「東京電力トリチウム水海洋放出問題』は何がまずいのか? その論点を整理する」『『HARBOR BUSINESS Online』2018.09.04,https://hbol.jp/174094

 この牧田稿は長文であるが,いうなれば「処理済み(?)汚染(!)水」という問題の核心を突いた解説がなされている。以下の引用では,より参考になりそうな段落だけを抽出している。素人のわれわれにもすんなり理解がいく解説である。なにが肝心な問題であるかも分かるはずである。単に「トリチウムという核種」をめぐる廃棄問題なのではなくして,原発をめぐる国家行政全体の問題「性」が浮上している。

 1) トリチウムは大きな害が起こりにくい?

 トリチウムは,溶融炉心デブリ(瓦礫)冷却水の水とそれに含まれるホウ素が中性子照射されることによって発生するため,溶融炉心を水で冷却するかぎり発生しつづける。実際には地下水の浸入によっても発生する。

 トリチウムは,水素の放射性同位体で,水素とほぼ同じ化学的,物理的性質を示しすので,水から分離することがたいへんにむずかしく,結果として放射能を帯びた「トリチウム水」が増えつづけ,タンクが年々増えてゆくことになっている。トリチウムは放射性核種で,半減期は約12年である。非常に低いエネルギーの β 線を出して安定元素のヘリウム3に変わる。

 しばしばトリチウムは「遺伝子を破壊する悪魔の放射能」などと呼ばれるが,実際には生物濃縮せず,水として体内に摂取した場合の生物学的半減期は約10日,有機物として摂取した場合は40日で,多くは水として取りこまれ「体に取りこみやすく出ていきやすい」放射性物質である。また水であるゆえ,体の特定の部位に集まって滞留することは起こりにくい。この点がセシウム137やストロンチウム90,ヨウ素131とは大きく異なる。

 したがって,大量のトリチウムを摂取する,常時微量のトリチウムに晒されるといったことがないかぎり,大きな害は起こりにくい。一方で,長年の原子力施設からの放射能漏れにより定常的にトリチウムに晒された結果,周辺住民に大きな健康被害が出たとして,いまだに争われているニューヨーク州ロングアイランドのような事例もある。

 もともとこの「トリチウム水」は,2013年内には海洋放出によって処分することが考えられていたが,ALPSの開発の大きな遅れやトリチウム以外の核種の残留などで延び延びになり,2018年の現時点では敷地の余裕がわずかとなり,切羽詰まった状態にある。

 その結果,国と東電は,福島県内で数年間にわたりトリチウム海洋処分に関するPA(パブリック・アクセプタンス:社会的受容)活動を精力的に行っており,2018年8月30,31日の公聴会はその総決算といえるものであった。

 もっとも,「社会的受容を求める活動」といえば字義どおりならばよいが,ほとんどの実態はカネと権力を使った強権的詐術といってよく,きわめて強い批判を浴びている。玄海原発九電やらせ事件などが記憶に新しい。福島核災害などの原子力重大事故の根本にも “PAによる原子力従事者の自己暗示=安全神話の一種” がみられる

 註記)以上,https://hbol.jp/174094

 2)結論ありきの政府・東電公聴会

 〔2018年9月〕23日の『河北新報』での報道では,その「トリチウム水」から,告知濃度限度を超えるヨウ素129が,2017年の1年間〔だけ〕で60回検出されたこと,さらにルテニウム106,テクネチウム99をくわえると,2017年だけで65回,告知濃度限度を超えていたことが分かった。その後,ストロンチウム90の告知濃度限度超過も分かった。

 さらに,ヨウ素129とルテニウム106は,昨〔2017〕年から今〔2018〕年にかけての84回の分析のうち,45回と過半数で告知濃度限度を超えていたと報じられている。実際問題として,PAのセレモニーとしての「公聴会」はシナリオが決まっており,前提が覆されるような事実が出てきても,「トリチウム水」の海洋放出というシナリオの書きかえができない。結果,公聴会当日は海洋放出への反対意見が相次ぎ,大荒れとなった。

 結局,公聴会2日目の〔2018年〕8月31日が締め切りだった市民への意見募集は,9月7日消印有効と延長されるなど,PAとしては惨憺たる結果に終わっていた。

 そもそも,「トリチウム水」という説明が事実と異なっていたことが第1の問題であった。「トリチウム水」ならば,放射性核種はトリチウムのみであり,総量規制・濃度規制を遵守し,経過と結果について情報を誠実に公開すれば,市民の合意のもとにロンドン条約との整合性をとったうえで,海洋放出処分ができるはずであった。

 ところが実際には,トリチウム以外に告知濃度限度を超えるヨウ素129,ルテニウム106,テクネチウム99,ストロンチウム90が過半数の測定で検出されていた。東電はそのことを認識していまが,生データを公開していたものの,事実を説明していなかった。

 生データは膨大であり,精査しなければ分からない。そうしたうえで,東電はこれまで,「測定している62種類の放射性物質は,他核種除去装置によって告知濃度限度以下まで除去でき,残るはトリチウムだけである」と説明してきた。

 これでは,放射性物質の海洋放出処分の大前提である市民の同意はえられず,同意をうるための大前提である信頼が崩れてしまった。 そのような「やってはいけないこと」を長年やってきて,それがバレたのが去る〔2018年8月〕23日から31日までの一連の事件だったといえる。

 こうなると最大の当事者である漁業従事者,漁協,漁連は怒った。トリチウムだけならば濃度と総量を守り,情報を公開しながら事故を起こさないように海洋放出を実施すれば影響はまずない。

 ところが,生物濃縮性が強く,半減期がきわめて長いために事実上減衰しないヨウ素129が混ざっていたとなれば,海のブランドは深海の底に失墜する。いくら濃度が低くても放出による総量が長年の蓄積によって無視できない量になれば,なにが起こるか分からない。

 食品,口に入るものの価値の大部分は「信用」である。その信用をこういった裏切りにより破壊されることは看過できるわけがない。もともと海を破壊したのは,国と東電である。その国と東電がまたやらかしたとなれば,もはや聞く耳すらもたれなくなる。

 私〔牧田 寛〕には直接の利害はありませんが,過去7年間,トリチウムについては基準を守るかぎり,海洋放出はやむをえないという考えでした。ただしそのためにはつぎの条件が必須と考えていました。

  1 トリチウム以外の放射性核種は,検出限界以下または基準値を下回っていること
  2 トリチウムは総量,濃度ともに基準厳守(1990年代のPWR発電所程度)
  3 厳密かつ正確かつ公正かつ透明な管理と情報公開がおこなわれること

 このたった3つの当たりまえの,実はとても甘い条件のうち2つが破棄されたことになる。こんなことで海洋放出を認められるのか。私は「否」と答える。

 これは,福島第1〔原発〕の地震津波による被災をほぼ正確に予見していたにもかかわらず,コストダウンのために握りつぶし,結果として福島核災害を引き起こした東電と政府の過去の行為となにも変わらない。

 註記)以上,https://hbol.jp/174094/2

 補注)前段の「補注」において,「2019年4月11日,『WTO上級委〔員会が〕,福島原発事故後の韓国の水産物輸入禁止措置について韓国側勝訴』」という事実に触れていたが,さもありなんという経過になっていたというべきか?

 3) 今後「トリチウム水」(ALPS処理水)はどうなってしまうのか?

 ALPS処理水を事故前の環境放出基準を遵守して海洋放出する場合,40年程度の期間を要し,結局,いまの小型タンクでは耐久性や管理の煩雑さから維持できなくなると考えられる。

 トリチウム放出管理目標値を変更するのならば,それは別に審査と市民による合意の手続を経ねばならない。また,放射性物質を生産をおこなわない陸上施設から海洋に放出するので,ロンドン条約との整合性をとる必要があり,条約締結国からの合意をうる必要がある。この環境基準を大きく緩和するという手続について政府,東電はたいへんに軽くみこんでいる。過去の公害,鉱毒などによる環境破壊と被害の歴史を省みれば,とても考えられない行為である

 巷にみられる,薄めて捨てれば無問題という意見に対しても,公害防止という観点からは「貯めた汚染物質を薄めれば捨ててよい」という考えとして,強い違和感をもつ。軽々におこなえば,たいへんな悪しき前例となる

 私〔牧田〕は,身近に土呂久鉱毒事件と水俣公害,カネミ油症事件をみて育ってきたので,21世紀にもなって,このような身勝手なことを「公害発生企業」と「その共犯関係にある国」がおこなおうとすることには恐怖すら感じる

 註記)以上,https://hbol.jp/174094/3

 4)「『公害防止』の観点からまっとうな対応をせよ

 国と東電は,公聴会では恒久タンクによる保管を排除して,

   1 海洋放出
   2 地中への圧入
   3 大気への拡散
   4 地下埋設

を提案した。

 そうだとしても,現状における「現実的な方策」は,石油備蓄基地に準じた大型タンクによる長期保管か,海洋放出しかないと考えられる。このトリチウム水」=ALPS処理水問題の本質は公害である。公害対策を最優先にすることを考えるとなれば,安易に格安な手法を選べばかえって高くつく。市民の合意をうるにしても原子力PA(public acceptance)のような卑劣な手法は論外である。(引用終わり)

 註記)以上,https://hbol.jp/174094/4

 「3・11」以前の原発安全神話の “ゾンビ的な生き残り精神” が,東電福島原発事故における汚染水の処理問題にさいしても,そのまま隠されている。国家(その間でいえばほとんど安倍政権であった)の国民・県民に対する基本姿勢は,完全に舐めきっていたものだったしか受けとりようがない。

 原発という「厄介もの」は,《悪魔の火》を焚いて電力をえようとしている最中に重大な事故など起こした分には,以上のように議論し,批判し,憂慮するほかない難問を,人類・人間史に対して投じる。それも,まるでおもちゃ箱をぶちまけたかのように,であった。汚染水の問題を,それこそ「お茶を濁す」かのように処理しようとするかぎり,原発問題の基本解決は永久に不可能である。

 

 【参考記事】「東京電力福島第1原発 ようやく見えた建屋地下の床」東京新聞』2020年09月02日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1653

 東京電力福島第1原発で,長らく事故収束作業の現場を苦しめてきた高濃度汚染水問題。注水による原子炉冷却が続くかぎり,汚染水の発生も続く。しかし,1~4号機周りの地下水を減らし,建屋内の汚染水処理を進めた結果,ようやくタービン建屋などにたまる汚染水がほぼなくなり,地下階の床がみえてきた。現状を報告する。

 1)   津波で水没-当初,建屋地下は3~4メートルも水位

 東日本大震災の大津波で,福島第1の建屋地下には津波による海水がたまり,電源盤や非常用発電機などは水没した。炉心溶融で原子炉が損傷したのちは,冷却のため注入された水が高濃度汚染水となって地下に流れこみつづけている。

 2011年当時,たまった汚染水は計約10万トンで,地下階は3~4メートルの水位があった。配管の貫通部などから地下水が建屋に流入し,汚染水の水かさを増やすため,汚染水量はなかなか減らなかった。

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 2)   ようやく汚染水は減少  されど難題は原子炉建屋

 しかし,2014年以降,上流側の井戸や建屋周りの井戸から地下水をくみ上げたり,敷地を徹底的に舗装するなどの対策を取った。大穴が開いていた3号機タービン建屋にはカバーも設置された。

 炉心が冷えてきたことで注水量も減らし,グラフ(下図)のとおり,汚染水量は急速に減った。今〔2020〕年に入り,事故を起こした1~4号機のタービン建屋や隣接の建屋でほぼ汚染水がなくなった。9月に常設の排水ポンプが稼働すれば,安定的に汚染水のない状態が維持できるようになる見通しだ。

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 ただ,10年近くも汚染水に漬かっていたことで,放射線量は非常に高い。作業員が近づける目安の毎時100ミリシーベルトを超える地点がいくつも確認されている。原子炉への注水が続くなかで,原子炉建屋や汚染水を一時貯蔵する建屋の水抜きをどう進めるのか,具体的なことは決まっていない。 

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