日本は単一純粋民族だいう〈大昔からの虚説〉がいまごろ明確に実証されつつあって,21世紀の「異民族・多人種の混淆」が進む現状(続・1)

 人種だとか民族だとかについて歴史社会学的にまともにとりあげ考えてきたことのなかった日本人・日本国

 21世紀になってみてよく分かるのは,すでに多人種的・多民族的な国家内体制になっているのは,ラグビー日本代表チームだけではなかった事実
 
  要点:1 人種・民族といった政治的・社会的な諸要因に対して真っ向から本格的に対処してこなかった日本政府,これからもっと苦労が増える

  要点:2 いまや日本人には「いろいろな日本人」が存在する時代であり,何人として異人「性」をどこまで気にするようでは,国際社会の日本国はなりゆかない

            f:id:socialsciencereview:20200914110117j:plain

  要点:3 大坂なおみの「黒人差別問題抗議の姿勢」にたじろぐ日本側の反応は,時代錯誤の「人種観」にまみれており,いまだに人種差別の潜在的な意識にとらわれている。企業の社会的責任問題があれば,スポーツ選手・アスリートの社会的責任問題もありうる


 「〈私は〇〇人〉あなたは何人ですか? ウエンツ瑛士さん,田所昌幸さん」朝日新聞』2019年12月31日朝刊9面「国際」

             f:id:socialsciencereview:20200914100111j:plain

 

        f:id:socialsciencereview:20200914102341p:plain

 私たちの世界は多様化している。国境を越えていまほど多くの人びとが行き来する時代がかつてあっただろうか。仕事で,観光や留学で,あるいは,戦火や貧困を逃れて生き延びるために。現代は様々なルーツをもつ人びとが共存する時代だ。

 それは日本も変わらない。外国にルーツをもつ人をみかけることは,日常でも珍しくなくなった。今年のラグビー・ワールドカップでは,多くの外国出身選手を含む日本代表に国中が沸いた。2020年の東京五輪には世界からたくさんの人たちがやってくる。そんないまだからこそ考えたい。そもそも「〇〇人」とはなになのか。

 補注)以上のごとき「問題提起的な書き出し」で始まっていたのが,この解説記事であった。

 だが,昨〔2019〕年の大晦日に掲載されていたこの「日本社会の国際化」に関する問題を,「人種・民族の要因」から考えなおそうとしたこうした解説記事における内容は,今〔2020〕年になってみると,新型コロナウイルス感染症・問題」は,いま(9月現在)もなお世界各国で猛威を振るっている。

 今後において,その第2波からさらに第3波がこの冬にかけて襲来が懸念されている。2020東京オリンピックの開催はすでに延期が決まっていたが,多分,最終的には中止になりそうである。このオリンピック開催に関連する項目・事情については,その見通しが完全に狂わされたまま,停頓している。

 たとえ,2020東京オリンピックが開催ができたとしても,かなり縮小されたかたちでしか実施できないという観測がなされている。

 また,現在進行中でなお世界的な流行となっているコロナ禍のために,昨〔2019〕年中に日本を訪れた外国人観光客数は,過去最高の「3119万人」にまで増加していたところが,今〔2020〕年は猛烈に激減せざるをえなくなっている。

 補注中の 補注)こういった経過にもなっている。2020年6月になると訪日外客数は 2600人にまで落ちこんでいた。2020年上半期(1月~6月)の合計は,前年同期比76.3%減の394.7万人にとどまった。

 上にかかげてあった図解(図表)のなかには,各種の統計・数値が並んでいるけれども,この統計そのものが多分,2020年からは大幅に変動するはずである。その原因はいうまでもなく,「新型コロナウイルス感染症」がもたらす全世界への悪影響にあった。この解説記事には2人の人物が登場しているが,ウエンツ瑛士については父がドイツ系アメリカ人である事例として話題にされている。

 ウエンツ瑛士は,母が日本人であるがその容貌はほとんど欧米系白人の姿にみえるゆえ,日本社会のなかではどちらかと,有利になってつまり得することが多い「肌の色」である。昨日(2020年9月13日)までなんどもとりあげきたが,同日には,全米オープン日本国籍をもつ大坂なおみ(22歳)が,みごと2度目の優勝を果たしていた。

 なお本日の話題は,白人みたいな「肌の色」をもつウエンツ瑛士から,ほとんど黒人の姿にみえる大坂なおみのほうに,移しての記述となっている。記述量の関係を配慮し,ウエンツに関した記述は,次回の記述にゆずることにした。

 

 大坂なおみのスポンサー一覧!   全豪優勝した時株価どうだった?」『テニスマニア1』2020年2月6日,https://tennismania1.com/osaka-naomi-sponsors-list/  がかかげていたつぎの一覧を,画像資料で紹介しておく。なおみが再度優勝したことで,これらの会社の株価に “良い影響が生じる” という点に関した分析・観測もあるが,ここではこの点は触れない。 

 f:id:socialsciencereview:20200914103619p:plain

 大坂なおみはともかく「日本国籍」をもつ超一流のテニスプレイヤーとして,最近(2020年5月)に発生した「アメリカにおける黒人差別問題」(白人警官による黒人容疑者身柄確保時にそのやり方が過ぎて殺人行為となった事件など)を契機に,つぎのように批評される関連の発言をしていた。少し長くなるが,全文を引用する。

 

 大坂なおみ,全米優勝に “時代遅れ” スポンサーが『ホッとした』理由」『Smart FLASH』2020.09.13 18:00,https://smart-flash.jp/sports/115468

 a) 2020年9月13日(日本時間),大坂なおみ(22歳)が,決勝の舞台でアザレンカ(31歳)を破り,2年ぶり2度めとなる全米オープン優勝の栄冠に輝いた。この結果に,「スポンサー企業もわれわれも,正直ホッとしています」と語るのは,大手広告代理店関係者だ。

 大坂なおみといえば,2019年の年収は3740万ドル(約40億2000万円)に達し,世界の女子アスリート史上,最高の高給取りとなった。その収入を支えるのは,莫大な契約料を支払うスポンサー企業たち。日清食品など,名だたる日本企業も名を連ねている。

 「一部の日本企業が気にしているのは,大坂なおみさんの人種差別への抗議活動なんです」(同前)。大坂は,全米オープンの前哨戦だった『ウエスタン・アンド・サザン・オープン』でベスト4に進出するも,ウィスコンシン州で起きた白人警官による黒人銃撃事件に抗議して,準決勝を棄権すると発表。

 また,新型コロナ対策として試合中に着けているマスクに,警察による人種差別的な暴力の被害に遭った黒人犠牲者の名前が書かれていることも,注目を浴びている。「2020年は大統領選があるので,米国のセレブたちは自身の政治姿勢を,ますます明確にします。大坂選手による人種差別に抗議する意思表示も,米国では自然なこととして受け入れられるのです。

 b) でも日本企業のなかには,こうした積極的な政治的発言を “リスク” だと考える企業もあります」(スポンサー企業関係者)。実際,日本の一部ファンからも,大坂の試合棄権発言について「スポーツに政治をもちこむな」「選手だから試合に集中してほしい」という声があがった。

 「もちろん,大坂選手が人種差別問題に熱心に取り組んでいることは尊重しています。でも,日本にいて海外からの報道だけで人種差別問題に触れている人たちには,大坂選手が抗議のアクションを起こさざるをえない米国内での緊迫した空気感は,必らずしも伝わっていません。大坂選手の気持ちが日本国内にうまく伝わらず,『なぜ彼女は “政治活動” に,あんなに必死なのか』と思われる可能性を心配してしまうんです」(別のスポンサー企業関係者)。

 そんななかでおこなわれた全米オープン決勝だが,彼女が「優勝」したことで,すべてが「丸くおさまる」ことになりそうだという。

 「企業がアスリートと契約するさいに,もっとも重視するのは “勝利” なんですよ。試合以外の場で,どんな “政治的発言” で注目を集めようと,本業で活躍してくれればいいんです。その意味で,大坂選手が見事に優勝を勝ちとってくれたことに安堵しています」。

 なんとも時代遅れな姿勢だが,日本国内からも,大坂選手の抗議活動に対して冷淡な一部の日本企業や市民感情に,「それでいいのか」と疑問の声があがりつつある。「もう,時代は変わりつつあるんですよ」と,前出の大手広告代理店関係者は語る。

 補注)参考にまでこういう歴史的な事実を挙げておく。いまから半世紀ほど前の時期だと,日本の会社(一流の大企業)が,たとえば在日韓国・朝鮮人(一流大学卒であっても)をいっさい雇用しようとはしなかった事実,大学関係でいえば国立大学でも特別な場合を除外して,けっして在日の大学院卒を専任教員として採用していなかった事実などを想起してみればいい。公務員関係もむろん「国籍条項」を楯に使い,門戸を完全に閉ざしていた。

 大坂なおみがそれでは,優勝以外のより下位の順位で全米オープンのテニス試合を終えたとしたら,その順位によっては文句や苦情(批判)がもっと出てくるのか? この種の問題は,なおみが日本人の母とハイチ人でアメリカ国籍の黒人系の父との間に生まれた女性である事実と,なにも関係がないとはいえない。

 なおみが完全に白人系のテニスプレイヤーだったとしたら(ここではひとまず仮定でものをいうが),まったく同じような懸念や印象が語られると考えていよいのか? ともかく企業経営にとっては,スポンサーについている選手(アスリート)が,なんといっても優勝してくれるのが一番・最高によろしいのであり,いわば万能薬的な広告経済的な社会的効能が,その優勝でもって期待できることになる。

 日本の企業や大学もいまでは「人事・採用面での国際化」など当然も当たりまえになっている事実に鑑みていえば,なおみが政治的な自分の意見を大事な試合にかけて発言した言動に,必要以上に神経質になるこの国内の会社は異常に「お尻の穴が小さい」。

 企業の社会的責任問題(CSR:corporate  social  responsibility)に関した意識水準の高い会社であれば,大坂なおみが発言した程度の内容にビクビクするとは思えないし,逆の観方で判断するに,まともな国際企業(global enterprise)とはみなせない。「日本の常識がいまだに世界の非常識である」場所から,日本の企業は早く脱却する必要がある。

〔記事に戻る→〕 「これだけSNSが発達したなかで,『自分の意見をしっかりいえる』というアスリートに,むしろ魅力を感じている企業も増えてきています」。つぎに大坂なおみが挑戦する大舞台は,9月20日から始まる全仏オープン。もし早々に敗退するようなことになれば,スポンサー企業たちが,またも右往左往することに……。(引用終わり)

 勝って「なんぼのプロスポーツ界」である。企業のほうも当然のこと,計算高く「大坂なおみ」選手の実力を買っての「広告経済的な打算」となっている。だが,なおみほうはおそらく,ここまで自分の人生を生きてきたなかで「黒人であるとみなされるほかない『なおみの立場・境遇』」に関して,日本の会社関係の人びとは,その理解が絶対的に不足している。

 ところで,大坂なおみに関したその問題をすでに論じた記述が,9月13日時点ですでに登場していたので,これをつぎの ③ で詳しく参照したい。なお,ウエンツ瑛士の話題はあとまわしにして,本稿の「続・2」をさらに用意し,そちらでとりあげ記述することにしたい。

 

 「全米決勝進出! 大坂なおみの『黒人差別抗議マスク』に冷ややかな反応しかしない日本のマスコミとスポンサーの意識の低さ」『リテラ』2020.09.13 01:53,https://lite-ra.com/2020/09/post-5631.html〔~ post-5631_5.html〕

 この『リテラ』の記述は大事な論点に触れているので,全文ではないが,かなりくわしく参照する。

 1) テニスの大坂なおみ選手が,全米オープンで2年ぶりに決勝に進出した。決勝は日本時間〔9月〕13日早朝におこなわれる予定でまだ勝敗はわからないが,いずれにしても,この間の大坂の戦いの軌跡は,まちがいなく歴史に残るものだ。

 補注)大坂なおみはこの決勝にも勝っていた。

 2回目の全米決勝進出だからではない。テニスプレーヤーとして大きな大会の試合に取り組みながら,同時にこれまでだれもやらなかったかたちで反差別のメッセージを発信しつづけたからだ。(中略)

 大坂選手は,1回戦,今〔2020〕年3月に自宅で寝ていたところを警察官に撃たれて死亡したアフリカ系女性ブレオナ・テイラーさんの名前が,白抜きでプリントされた黒いマスクをつけて登場。

 全米オープンの決勝戦までの7試合につけるため,黒人差別・ヘイトクライムによって命を奪われた犠牲者たちの名前を記した7枚のマスクを用意したことを明かし,「(犠牲者が多く)7枚のマスクでは数が足りないことを,とても悲しく思います。なんとか決勝まで勝ち残り,すべてのマスクをみせたい」と語っていた。 (中略) その後,大坂選手は宣言どおり勝ちつづけ……た。

 大坂の黒人差別への抗議行動が初めてクローズアップされたのは,今〔2020〕年5月25日にアメリカ・ミネソタ州ミネアポリスでアフリカ系男性ジョージ・フロイドさんが警察に殺害されたことをきっかけに,全米に広がっていった黒人差別への抗議運動,Black Lives Matter に参加したことだった。

 〔彼女は〕……ツイッターなどで繰り返し差別への抗議を熱心に発信し,路上の抗議運動にも参加。大坂選手のツイートには,彼女の知性とセンスを感じさせるユーモアを交えながらも,その言葉には強い怒りと切実さがハッキリとこめられていた。

 ……大坂選手は差別そのものに怒っているのはもちろん,差別に対していまもまだ多くの人が沈黙していること,さらに多くの人が大坂選手に沈黙を強いてくることにも,強い違和感を吐露していた。

 自身が差別への抗議を表明するとともに,繰り返し大坂選手が訴えていたのは,差別をなくすために,沈黙するのではなく,もっと多くの人に発言してほしい,動いてほしいということだった。

 2)「抗議の意思を示すためにたったひとりで全米オープンの前哨戦ボイコットを表明」

 こうした行動に,アメリカや日本のネトウヨから「スポーツに政治をもちこむな」「日本には差別はない」などとクソリプが多数送りつけられたが,大坂選手は敢然と反論,口をつぐむことはなかった。

 7月にも「Esquire」に寄稿し,ジョージ・フロイドさんの死の数日後にミネアポリスに飛んでいたことを明かし,「差別主義者(レイシスト)でない」というだけでは,十分じゃない。私たちは「差別主義者(レイシスト)」でなければならない」と語っていた。(中略)

 全米オープンの前哨戦であるウエスタン&サザン・オープンでベスト4まで勝ち進んでいた大阪選手は,8月27日に予定されていた準決勝をボイコットすることを表明したのだ。

 私はアスリートである前にひとりの黒人女性です。黒人女性として,私のテニスをみてもらうことよりも,いま緊急に注意を払うべき重大な問題があると感じています。

 

 私がボイコットしただけですぐになにかが大きく変わるなどとは思っていませんが,白人がマジョリティを占めるテニス界で対話を始めることができれば,正しい方向へ向かっていくための一歩になると考えます。
警察の手により黒人が虐殺されつづけるのを目にすることは,正直いって,吐き気がします。

 

数日ごとに(黒人犠牲者の名前の)新しいハッシュタグが生まれることに疲れきっていますし,何回も何回も同じ話を繰り返していることにヘトヘトです。いったいいつまで繰り返されるのでしょうか。

 #JacobBlake, #BreonnaTaylor, #ElijahMcclain, #GeorgeFloyd〉
    (〔以上は〕英語バージョンを編集部で翻訳したもの)

 NBAバスケットボールなど他競技でも,チームとして抗議のボイコットの動きはあったが,白人がマジョリティである競技で,たったひとりでこうした行動を起こすことは,大きな勇気が必要だったことは想像にかたくない。もちろん棄権はランキングに影響するなど,選手としてのリスクも小さくないことはいうまでもない。それでも大坂選手は「テニスより大事なことがある」と,抗議を表明したのだ。

 この大坂の勇気ある行動を受け,ATP男子プロテニス協会),WTA(女子テニス協会)USTA(全米テニス協会)は連名で「テニス界は結束して,人種的不平等や社会的不公正と対峙する」とする声明を発表。大坂の試合も含め〔8月〕27日に予定されていたすべての試合を,翌日以降に延期することで,大坂の反差別に連帯した。

 3) 銃撃に抗議して大会ボイコットを表明した大坂をネトウヨだけでなく日本のマスコミも攻撃

 ところが,日本ではこの大坂の行動について「スポーツに政治をもちこむな」「大会やスポンサーに迷惑」「対戦相手に失礼」などと批判の声が噴出。

 たとえば,『日刊スポーツ』は8月27日に「大坂なおみの棄権,それでもやはり違和感」と題し,〈多くの人が大坂を支える。家族,親友,ファン,スポンサー,マネジメント会社,大会,ツアー,ライバル選手,そしてメディアなど,数え上げたらきりがない〉〈日本人のように「忖度(そんたく)」しろとは思わないが,この棄権という直接的な行動の陰で,大坂を支えるために走り回っている人がいるのも確かだ〉と,暗に忖度しろと批判。

 同紙は9月3日にも,「今回はテニスとは関係のない問題であり,棄権ではなく,別の方法での発信を考えても良かったと思います。スポーツ選手の行動は子どもへの影響が大きく『主義主張があれば競技を棄権してもいい』と思わせてはいけない」などというスポーツ倫理学の専門家のコメントを掲載した。

 さらに,大坂選手の声明に賛同し〔たゆえ〕大会そのものが1日延期されるという一定の成果をえたことから大坂選手が準決勝に出場することになったにもかかわらず,多くの日本メディアは「棄権表明の大坂なおみ一転出場へ」と,あたかも大坂選手が心変わりしたかのように報じた。

 大坂選手の反差別の気持ちはまったく変わっていない。大坂選手は,1日延期された準決勝に「Black Lives Matter」という文字と,1950年代公民権運動の時代からシンボルとなってきた拳のイラストの入った黒いTシャツで登場。あらためて,反差別の意思を鮮明にした。ウエスタン&サザン・オープンは準決勝を突破したのちケガにより決勝は棄権することになったが,大坂選手の差別への強い抗議の気持が揺らぐことはなかった。

 補注)ここまで『リテラ』の解説を読んでみて痛感するのは,日本の社会側では “大坂なおみの真情” は,ほとんど理解できていない事実である。「なおみの生まれ・育ち,家庭環境(父母の事情・背景)」などを,少しは調査してみれば,以上のごとき「反・なおみ」の論調がただちに出てくるわけがない。なおみは,自分の父の出自関係を自分で学んでいるというではないか? 彼女が “父のそのなに” をあらためてしろうとしているかを説明しろというのは,ヤボというものである。

 さらには,試合後の会見で「人種差別はアメリカだけの問題ではありません。世界中にあります。毎日のように人びとを襲っている問題です」「広く伝えることで,意識を高めてもらいたい」「助けになっていると感じるし,助けになりたい」と語るなど,大会中くり返し,反差別のメッセージも発信してきた。

 1968年マーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺された約半年後のメキシコ五輪の表彰式で,黒い手袋をはめた拳を突き上げ差別に抗議した,陸上のトミー・スミス選手とジョン・カーロス選手は,その行為を咎められ,オリンピックとアメリカスポーツ界から追放された。

 それから52年経ったいま,大坂選手の行動そしてそれが大会もメディアも巻きこみ,世界中で多くの賞賛を集めていることは,半世紀を経ても差別と犠牲者がいまだ絶えない現実と同時に,世界が反差別に向かってわずかながら前進していることも示してくれている。

 補注)やはり昔のことであったが,黒人の超有名なトランペッターであったルイ・アームストロングは,白人に対してまともに口をきこうとしたら,「オマエは喇叭だけを吹いていればいい,黙っていろ!」と,こっぴどく叱られたという話もあった。脚の早い黒人はこれまた,オマエたちはただ走っていればいいのだ,とだけ片付けられてきた。

 本ブログのなかでは,1936年ベルリンオリンピックのマラソンで優勝した孫 基禎選手のことをとりあげたが,当時の大日本帝国側にとってこの孫は,たいそう迷惑な「五輪マラソンでの優勝者」になっていた。その理由は申すまでもあるまい。

 大坂なおみは,自身のもつ日本人の由来からではなく,「黒人としての出自・立場」から「ものを申す立場」に追いこまれていたのである。この事実は,前段の孫 基禎がベルリンオリンピックのマラソンで優勝してから84年が経っても,いまもなお基本的には同じ感覚・精神でもって,日本側は「なおみは,いい過ぎだ,黙っていたほうがよい」と批判していた。今回,このなおみに対するこの種の「日本側からの反応」は,まったくの時代錯誤としかいいようがない「島国根性」的な応答でしかなかった。

 4) 大坂なおみの抗議行動への冷ややかな反応で分かった日本のスポンサーの意識の低さ
 しかし,日本はどうか。いまだに「スポーツに政治をもちこむな」などという大坂選手に対するバッシングの声が止まない。ネットでは「しょせん,日本人じゃない」などという差別的な言葉すら投げつけられている。〔9月〕11日の『報道ステーション』(テレビ朝日)では,大坂選手の6枚のマスクにプリントされた黒人被害者たちを当時のニュース映像とともに詳細に紹介していたが,こうした報道はごくわずかだ。

 補注)前段で触れた孫 基禎選手(下掲画像真ん中の人物)の場合は,当時なりに帝国日本の政治・外交そのものに深く関連せざるをえない話題になっていた。それも「韓国・朝鮮が日本の植民地であった」時代における問題であった。なんといっても,これに一番神経質になって騒ぎ,厳重に警戒したのは日本側であった。なぜそうであったのか?

 f:id:socialsciencereview:20200914093217j:plain

 

-------------------------

 

  つぎの画像資料は大坂なおみがとりあげた「黒人の犠牲者6名」。

 

   f:id:socialsciencereview:20200914093517p:plain

 また,『毎日新聞』は9月11日に「大坂なおみの人種差別抗議に国内外で温度差 スポンサーの微妙な事情」という記事を掲載。

 「上まで勝ち上がっている時にやらなくてもね。できればテニスのプレーでもっと目立ってほしいんですけど……」

 「黒人代表としてリーダーシップをとって,人間的にも素晴らしい行為だとは思うが,それで企業のブランド価値が上がるかといえば別問題。とくに影響があるわけではないが,手放しでは喜べない」

 「人種差別の問題と本業のテニスを一緒にするのは違うのでは」などという,大坂選手の支援企業やスポンサー関係者の声を紹介していた。

 彼らはいったい,なんのために大坂選手のスポンサーになっているのだろう。記事では具体的な企業名は明記されていないが,大坂選手のスポンサーということは世界での知名度やブランドイメージを上げたいと考えているのだろうが,それにしてはあまりに世界の実情に対する認識も人権感覚も欠けているとしかいいようがない。

 ただし大坂選手自身は,こうした日本のスポンサーの反応をある程度予想していたかもしれない。アメリカ『TIME』(8月20日)のインタビューで,ジョージ・フロイドさんが殺されたミネアポリスを訪れたことで「人生が変わった」と話したうえで,スポンサーについてこう語っている。

 「多くのアスリートは発言することで,スポンサーを失うことを恐れています。私の場合,多くのスポンサーが日本の企業なので,本当にそうです。彼らは,私がなにを話しているかわからず,困惑したかもしれません。でも,なにが正しいのか,なにが重要か,話さなくてはならないと感じる瞬間は訪れます」。

 補注)日本企業は大坂なおみをCMに出演させ,自社の業績上昇に活用したいわけである。それも,なおみが半分日本人である因縁もたぐり寄せたかたちで,そうしていたはずである。だが,彼女の身体は「半分は黒人系のハイチ人でアメリカ国籍人の父親の子ども」でもある。彼女は自分自身を主に黒人のうちに分類しているようにしか感じられない。むろん,日本人だと認識している部分もあるけれども,部分的であり極小であるかのように「観じ」られる。

 スポンサーが困惑するかもしれないけれども,それでも話さなくてはならない,正しいこと,重要なことがある。そんななか,ジョージ・フロイドさんに続き,ジェイコブ・ブレイクさん銃撃事件が起き,大坂選手はボイコットを表明,全米オープンでは7枚のマスクを身につけ,反差別を訴えたのだ。

 日本のメディアでは,大坂選手について「日本人らしい謙虚さ」「日本の心」などと強調されることが多い。しかしそれは,多様なバックグラウンドをもつ大坂選手の,ほんの一面にすぎない。

 周知のとおり,大坂選手は日本人の母とハイチ出身の父の間に生まれ,アフリカ系のルーツももち,アメリカで育った。日本でもアメリカでも多くの差別に晒されてきたことも想像にかたくない。差別に憤り,ときに激しい言葉も使いながら発言するのは当然だし,それも大坂選手の魅力ろう。

 ところが,日本では大坂選手の怒りがきちんと伝えられていない。テニスは強いけど,控え目で自分の意思で発言したりしない,ただ自分たちの「日本スゴイ」を満たしてくれる。そんな都合のいい存在に押しこんでおきたいのではないか。

 補注)大坂なおみの場合,そうは “問屋が卸さない人物” である「スポーツ選手・アスリート」であった。ところが,日本側の企業にしても平均的な人びとにしても,そのあたりの問題は,感性の次元においてすら,まともに認識できていない。

 5) 大坂なおみが2回戦後の会見で「人種差別はアメリカだけの問題ではない」と語った意味

 以前,日清のアニメCMで描かれた大坂選手の肌が,ホワイトウォッシュされており問題になったときも,そうだった。このとき,大坂選手はいまのように強い抗議や憤りなどは表明していないが,実際はこのCMについて不適切との認識を示していた。ところが,複数のメディアが誤訳とミスリードによって「気にしていない」「なぜ騒いでいるかわからない」などと報じた。

 補注)本ブログ内ではとくに,つぎの記述が「ホワイトウォッシュ」関連の内容になっていた。

  ネトウヨに限らずメディアにも,差別について怒ったり,発言してほしくないという潜在的な願望があるのだろう。それが「賢い大人の対応」とも思いこんでいる。しかし,大坂選手はちがう。理不尽な差別や人権侵害には,こうして毅然と声をあげる,それがほんとうの彼女なのだ。しかも,その言葉からは激しさだけでなく,知性とユーモア,そして史上最高年収を手にした女性アスリートにまでなった者としての,社会的責任感さえ感じる。(中略)

 6) 大坂なおみが2回戦後の会見で「人種差別はアメリカだけの問題ではない」と語った意味。

【参考画像】

      f:id:socialsciencereview:20200912091944p:plain

 以前,日清のアニメCMで描かれた大坂選手の肌がホワイトウォッシュされており問題になったときもそうだった(上の画像がそれ)。このとき,大坂選手はいまのように強い抗議や憤りなどは表明していないが,実際はこのCMについて不適切との認識を示していた。ところが,複数のメディアが誤訳とミスリードによって,「気にしていない」「なぜ騒いでいるかわからない」などと報じた。

 ネトウヨに限らずメディアにも,差別について怒ったり,発言してほしくないという潜在的な願望があるのだろう。それが「賢い大人の対応」とも思いこんでいる。

 しかし,大坂選手はちがう。理不尽な差別や人権侵害には,こうして毅然と声をあげる,それがほんとうの彼女なのだ。しかも,その言葉からは激しさだけでなく,知性とユーモア,そして史上最高年収を手にした女性アスリートにまでなった者としての,社会的責任感さえ感じる。

 註記)以上,https://lite-ra.com/2020/09/post-5631_5.html  まで参照。

 補注1)「大坂選手,黒人への思い胸にV 差別撤廃願い,マスクに7人の名前」『日本経済新聞2020年9月14日夕刊9面「社会」のなかに,以上の言及につぎの段落があった。これをもって補足し,本ブログ筆者の議論も添えておきたい。

 (前略)

 〔大坂なおみは〕警官による射殺や暴行,白人男性による殺害で命を奪われた黒人被害者名が入ったマスクの着用を1回戦から始めた。決勝までの試合数と同じ7枚を用意し,約束どおりにすべて披露した。

 

 頂上決戦では,入場時に2014年に警官の発砲を受けて死亡した12歳(当時)の黒人少年,タミル・ライス君の名前が入ったものを身に着けた。大会中に被害者家族から感謝のメッセージも受けとり,「泣かないようにするのが大変だった。自分の行動が心に響いたのなら,私にとってもぐっとくるものがある」と後押しになった。

 

   f:id:socialsciencereview:20200831055846j:plain

 父のレオナルド・フランソワさんがハイチ出身,母の環さんが北海道生まれ。3歳の時に米国に移住した「マイノリティー(人種的少数派)」という立場が,いまの人権意識の原点だ。トランプ大統領が「ごみだめ」と例えた貧困国ハイチの歴史について父から多くの話を聞き,「自分にとってストーリーを広めたり,誰かの経験を聞いたりすることはとても価値があること」と語った。

 

 新型コロナウイルス禍でツアー大会が中断していた時には街に出て,多くの黒人たちとデモに参加した。差別に抗議するため,8月下旬の大会では「私はアスリートである前に黒人女性。私のテニスをみるより,もっと注意を向ける多くの重要なことがある」と一度は棄権を表明した。

 

 今回は名前入りマスク姿で7試合に登場して訴え,沈黙より行動を実践した。強い信念を力に変え,最高のパフォーマンスで女王に返り咲き,「この期間で人間としてより成長することができた」と充実感に包まれた。(引用終わり)

 たまたま,大坂なおみの父がハイチ出身のアメリカ国籍人であって,そのアメリカの大統領トランプがわざわざ,悪口雑言のはけ口を向けたのがハイチという国であった。彼女の母親の国である日本では,なおみに対してだが,全米オープンの試合にかけて,そこまでやる(自分の気持を高揚させる)のはどうかといって,あたかもヒンシュクを買ったかのような態度=拒絶的な反応を示した「日本人・日本民族」が,少なからずいた。 

 しかし,彼女も日本国籍をもっている「日本人でもある」。日本人は “こうであるはずだ” とか,あああらねばならない” といった,それもただ一方的に決めつけた「特定の者たちためだけの〈価値判断〉基準」は,いまのなおみをかこむアメリカ的な国情のなかでは,まったく通用するはずもなかった。 

 そうした米日間をめぐる人種差別問題の本質的なありかもしらずに,なおみがアメリカでテニスの選手権試合を介して主張した「人種差別反対」の言動を,日本に向けてはしてくれるななどとはいうのは,僭越であるどころか,おのれの無知蒙昧を暴露したに過ぎず,恥じるべきであった。

 日本にもまた,まだまだ人種や民族,そして同じ日本人であっても出自の源泉によっては,無条件に偏見を抱き・いきなり差別をする人びとがいくらでもいる。アメリカ人としての彼女の行動をとがめる人は,日本人としての “彼女のなかにあるなにか” に対しても早速,拒絶する意思を押しつけたいのか? 不可解で理不尽な意見・態度であった。

 補注2)2020年9月15日の補述】

 「女王大坂,果てなき成長   2年ぶり優勝   テニス・全米オープン」『朝日新聞』2020年9月15日朝刊19面「スポーツ」から

   ◆ 不当な拘束体験,元世界4位の称賛 ◆

 「私はアスリートである前に,1人の黒人の女性です」。大坂なおみの人種差別への抗議で思い出す事件がある。5年前,私が全米オープンでニューヨークに出張中,宿泊していたホテル前で,黒人男性が白人の私服警官に突然取り押さえられ,手錠をかけられた。

 私は現場でテレビクルーが中継する場面に遭遇し,事件をしった。拘束されたのが元プロテニス選手のジェームズ・ブレークさんだとしり,驚いた。錦織 圭のファンならピンと来るはずだ。

 2008年,18歳の錦織がプロツアー初優勝した大会で決勝を戦った元世界ランキング4位。選手としての実力にくわえ,人格者でしられる。仕事で全米の会場に向かう車を待っていたら,クレジットカード詐欺の容疑者と間違えられた。容疑はすぐ晴れ,警官の暴力的な行為をニューヨーク市長は謝罪した。

 「私は幸運にもメディアで不当さを訴えられるが,一般の人は違う」。ブレークさんはテレビで警察の体質改善を訴えた。事件直後,ツイッターを開設し,みずからSNSで発信力を手にした。

 しかし,大坂が今大会披露した7枚のマスクが示すように,警官らによる黒人への不当な暴力,射殺事件は一掃されない。「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」運動のうねりは,トランプ政権下で人種間の亀裂が深まる米国社会の暗部を映す。

 大坂が2年ぶりの全米優勝を飾った直後,ブレークさんは大坂に向けてツイートした。「あなたの意見表明と,素晴らしいテニスに感謝したい」。人権活動家としての称賛もこめて。

 --以上,なにやかやと,本日の記述も長くなってしまったので,ウエンツ瑛士の話題は,この「続・1」にさらに続けて書くことにした「続・2」にゆずりたい。今日はひとまずここで切り上げておきたい。

 最後になるが,その次回の「続・2」編のために,事前に断わっておきたいことがある。すなわちそれは,「ウエンツ瑛士の白人ハーフ的な問題」の特性と「なおみ的な黒人ハーフの問題」の特性とが相互に絡まりながら,まさしく,日本社会における外国人的な問題状況を《合わせ鏡》的に表現している事情,「この国内部における〈問題の状況〉」のことである。

 ウエンツ瑛士の話題に対してはおだやかに接しうる日本・日本人側ではあっても,なおみの言動に対しては,そうではありえないような「もともとこちら側においては潜在的に隠蔽されていた問題含みの対応姿勢」こそが,実は,あらためて検討されるべき「肝心な論点」として残されている。

------------------------------ 

【「本稿:続・2」】はこちらへ(  ↓  )

------------------------------