日本の原発産業の撤退が意味した歴史的な含意,東芝・三菱重工・日立製作所ともにコケた原発事業,その後味の悪さ

 「原発は原爆だ」という技術的な原点を忘れないための議論,原発に事故など起きたら,地球環境はさらにもっと最悪の状況に追いこまれる。それはもともと原発=原爆だから……

 日本の原発産業が没落した事実は,「原子力を発電に利する危険性」に備える安全対策のために上昇した「製造原価」をもって,説明される

 中国やロシアは,原発事業を国家的に支援する事業の展開として進出しているが,それでも原発に再び大事故など起こした分には,地球環境が大破壊される


  要点:1 原発事業から全面撤退を余儀なくされた日本の重工業-東芝三菱重工日立製作所の哀れ

  要点:2 採算のとれない,危険もいっぱい,将来性もない原発固執してきた日本の大会社・重工業の愚かな誤算

  要点:3 残された困難は,社会的効用の面では生産性・効能性ゼロである原発廃炉事業であり,こちらに利益獲得の機会を期待するほかなくなった「日本原発・産業事情」のお粗末


 「日立、英原発から撤退 再エネ台頭、採算難しく」日本経済新聞』2020年9月17日朝刊1面

 日立製作所は〔2020年9月〕16日,英国で原子力発電所の建設から運営までを担う一貫プロジェクトから撤退すると発表した。2019年に計画凍結を発表したが,総事業費が膨張し採算のメドが立たなかった。再生可能エネルギーが台頭するなか,原発の競争力は低下している。政府の原発輸出戦略はゆきづまっている。

 同日の発表文で,日立は新型コロナウイルス感染拡大の影響などで厳しさを増す投資環境を撤退理由にあげた。今後,英国政府などと建設予定地の扱いや協力体制を話し合うという。すでに2019年3月期に約3000億円の損失を計上しているため,今回の撤退による業績への影響は軽微だ。

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 日立は2012年に買収した英ホライズン・ニュークリア・パワーを通じて英中部アングルシー島原発2基を新設する計画だった。だが約3兆円に膨らんだ総事業費をめぐる英国政府との交渉や,運営を託すはずだった国内電力大手との出資交渉が難航。2019年1月に計画凍結に追いこまれていた。

 その後も欧州連合(EU)からの離脱をめぐる混乱のなかでジョンソン英政権との新たな資金支援交渉も進まず,状況の打開がみこめないとして計画から手を引く。(引用終わり)

 これで,日本社会を一時期騒がせていた東芝原発事業に関する失策の連続という出来事などを介して,日本企業がかかわってきた原発という製品全般は,いまとなってみれば “完全にお荷物” であったどころか,下手をしたら大会社の屋台骨さえ揺るがす危険な要因になっていた。

 日立製作所の会長である中西宏明は,2018年5月31日から現在も日本経団連の第14代会長を務めている。この日本経団連の歴代主要幹部が所属する会社こそ,原発産業に一番深くかかわり,そして失敗を重ね,撤退に至っていた。その代表的な「3社である東芝三菱重工日立製作所」は,日本の製造業の名声をみずから落す経営戦略を採用し,展開してきた。

 つぎの表は日本経団連内の歴代会長・歴代評議員(審議員)議長の会社名と個人名であるが,上記の3大企業に東京電力をくわえて並べてみれば,日本における原発事業の主柱が読みとれる。もっとも,2011年東日本大震災と東電福島第1原発事故によって,これら日本の名声の高い大会社・製造業は,すっかり「往事の隆盛ぶり」を殺がれてしまい,元気をなくしてしまった。

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 原発の製造・販売という事業=商売が,1基5千億円だとか1兆円もの価格になっては,おいそれとこの製品を買ってくれるような国々はなくなってきた。その穴を埋めているのが,国営企業ばりに原発事業を展開している中国やロシアであって,日本の東芝三菱重工日立製作所の経営力をもってしては,もはや歯が立たない事業部門が,原発の事業部門になっている。

 日本のこれら大企業・製造業がこれから原発事業で商売になる「商圏」をみいだすとしたら,そのもっとも適当な事業領域対象は,日本国内でもそろそろ廃炉になる原発が順次登場してくる事実に求めるしかなくなっている。 

 ここで,日本原子力発電(株)廃止措置プロジェクト推進室長山内豊明・稿「日本の原子力発電所廃止措置の現状と課題について~安全かつ効率的な廃止措置に向けて~」の「1.日本における廃止措置の現状」から,つぎの頁を参照しておく。これにつづけて『東京新聞』からは「原発の稼働状況に関する図解」も借りて,紹介しておく。

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  原発の技術的な理不尽性・本来的な不幸性を集約的に表現する《悪魔の火》としての基本性格

 ※-1「〈ふくしまの10年 読者から〉原発事故を忘れないで」東京新聞』2020年09月16日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1658 から

 事故から10年近く経ち「放射能のことだけが記憶され,あの事故がなぜ起きたかなど本質的なことが忘れられている」……。

 「避難区域解除や損害賠償打ち切りなど,その度に被災者は選択を強制されてき」たが,「人びとを,時間を,村や町を切り裂く選択を強制する始まりとなった原発事故を忘れて欲しくない」。

 「戻ってくる住民が高齢者ばかりなのが気がかりだ」。「事業は続いても,人っていう部分でふるさとからいなくなっちゃう不安があ」る。

 「3・11」に支援と復興がなされたはずの東電福島第1発電所の大爆発事故で被災地にされてしまった地域とここに暮らしていた人びとは,いまでは完全に軽視あるいは無視される最近になっている。

 ※-2 原発とはなんであったのか?

 原子力情報資料室・調査レポート『何も生み出さなかった10兆円 -有価証券報告書をもちいた原発のコスト検証結果-』2020/08/31,https://cnic.jp/9414 から

 さきに,その調査レポートを直接読みたい人は,つぎの「原子力政策経済性資料ダウンロード」https://cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2020/09/20200831_10trillion.pdf をのぞいてほしい。

 ここでは,同レポートから,以下の段落を引用する。

 2011年の東京電力福島第1原発事故以降,多くの原発が運転を停止しており,その維持費は電気料金として請求されています。そこで電力各社の有価証券報告書に記載されている原子力発電費を検証しました。2011年度から2019年度の原子力発電費総額は15.37兆円,うち発電に寄与していない原発分は10.44兆円だったことがわかりました。

 この詳細については,前記の調査レポートを参照を期待しておき,その「概要」欄のみつぎに引用する。

     ◆ タイトル『何も生み出さなかった10兆円 ◆
  有価証券報告書をもちいた原発のコスト検証結果〈概要〉-

 

 概 要

 2011年の東京電力福島第1原発事故以降,多くの原発が運転を停止している。その一方で,維持費は電気料金として請求されている。そこで電力各社の有価証券報告書から,原子力発電費を取り出し,発電に寄与していない原発のコストを検証した。

 

 2011年度から2019年度の原子力発電費は15.37兆円。うち,原発で発電した分を除くと,10.44兆円に上ることが分かった。電力消費者は,2011年度から2019年の間,なにも生み出さなかった原子力の維持コストを10兆円以上負担させられていたことになる。

 

 原発が再稼働した電力会社の原発発電単価は事故前の2倍に増加している。

 

 再生可能エネルギー賦課金(FIT賦課金)の2012~2019年度総額は11兆円であり,まったく発電しなかった原発のコストはこれに匹敵する。

 

 原発依存度低減のために,廃炉に関連する費用を託送料金に転嫁する「廃炉円滑化負担金」が2020年度から導入された。原発依存度を低減するために廃炉のコストを消費者転嫁するのであれば,廃炉を推進するために少なくとも原発維持費の経過措置料金への原価算入は見直すべきだ。

 

 ※-3 要は「3・11」以降,日本の電力産業・エネルギー政策の失敗は電力消費側に対して,以上のごとき負担を強いており,これからもその負担を増やしていく。  

 原発廃炉は,通常の機械・装置とは科学技術的に完全に異質である。すなわち,「原発廃炉させる作業工程管理をこなしていく期間」そのものが異常に長くなっており,40~60年ほど稼働させてきた「原発の後始末のために要する年月(期間)」を上まわっている。いいかえれば,商売の採算・営利計算(取らぬ狸の皮算用的な狙い)とはほとんど無縁である,考えただけでも本当に空恐ろしい,つまり,収支計算ないし経済計算そのものが成立不可だと判断されるほかない《化け物》が,原発廃炉問題として目の前に登場している。

 それは,原子炉のなかで《悪魔の火》を焚く材料に使用される「ウラン燃料の基本特性」に随伴するほかない必然的な技術現象である。要は,原発技術に特有である「放射性物質の後始末」にかかる「手間・ヒマ」(負担)は,これからさらに何十年と時が経っていくにしたがい,もっともっと増大していく。われわれ人類はこの地球の表面に生きる人間として,トンデモなく愚かな電力生産の方式を採用した。現在すでに,その事実を嫌というほど思いしらされつつある。

 ※-4 原子力情報資料室・調査レポート『何も生み出さなかった10兆円有価証券報告書をもちいた原発のコスト検証結果-』2020/08/315  が「4.まとめと考察」で,こう指摘した点を引用しておく。

 2012年の太陽光発電(10kW以上)買取価格は40円 / kWhだった。現時点で原発太陽光発電の単価は同等程度だが,この間,原発の発電単価は2倍になる一方,太陽光発電の売電価格は4分の1程度に低下した。しかも,原発の単価は未稼働期間のコストは含んでいない。含めた場合は,未稼働期間が長くなれば長くなるほど高くなる。

 

 今後,新規制基準適合性審査に未申請の原発が再稼動しようとすれば追加的安全対策費が必要となる。その一方で未稼働期間が長引くほど,発電できる総発電電力量は減り,原発の発電単価は増加していく。もはや原発が安価な電源ではないことは明白な事実だ。〔しかも〕原発廃炉にしても,廃炉に費用が必要なため,維持費のすべてがなくなるわけではない。

 

 しかし,なにも生み出さない原発が,総括原価方式にもとづいて電力消費者にコストを転嫁している現状はやはり異常だ。今〔2020〕年度から廃炉円滑化負担金として,廃炉原発の未償却資産と廃炉積立金不足分が託送料金から回収される。「原発依存度低減」が国民的利益であるとして経営側から電力消費者にコストを移転している。

 

 本来,原発新増設なしを決定した時点で,廃炉脱原発に伴う新たな電源構成が描かれるべきだった。しかし,現状は,実現不可能な電源構成(2030年原発20~22%)の提示と,廃炉原発維持コストの電力消費者全体への転嫁だけがおこなわれている。「原発依存度低減」が廃炉円滑化負担金の託送回収の理由なら,少なくとも,廃炉を促進するために原発維持費の原価算入は見直されるべきだ。 

 もはや「勝負は着いた」というほかないほど「原発の不利性=非経済性=不採算」は明白になっている。しかも,その原因はウラン燃料を燃料に焚くという原発の基本構造にあった。「放射性物質の後始末」の〈やっかい度〉は,ほかのあらゆる機械・装置にかかわるその度合よりも,単に異質であるだけでなく抜群に高い。

 ※-5 最近,日本の大手海運会社商船三井が運行する貨物船 WAKASHIO が,日本時間の〔2020年〕7月26日,モーリシャス沖で座礁し,8月6日になると燃料の重油が海に漏れ出した。〔その〕現時点で1000トンの重油が海に流れ出していると予想されていた。

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 補注)座礁した時点でこの船には,燃料としての重油約3800トンと軽油約200トンが積まれていた。これ以上の汚染を防ぐために,船から石油の抜き出し作業が進められ,流出した油の回収がおこなわれている。

 過去にも原油がタンカーから漏出する事件はたびたび起きているが,それぞれが大変な苦労をしてでも,なんとかその後始末はできていた。またその後,原油漏出事故発生に備えて用意されている材料・装備・情報は,本格的に蓄積・整備されている。これに比較してみればすぐに理解できるように,原発の事故は比較にならないほどに突出して異質であり,その “やっかい度数” も異様にまで高度である”。

 スリーマイル島原発(1979年3月28日)⇒ チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)⇒ 東電福島第1原発事故それぞれの「ビフォー&アフタ-」をみればよく分かる経緯であるはずだが,原発事故にかかわって発生させられる非常事態は「最高度の技術的な困難」を意味していた。この事実は,誰しも認めるほかない「歴史の事実」になっている。

 比較のために公害の事例を挙げて説明するとしたら,日本の足尾銅山鉱毒事件は渡良瀬遊水池にの害悪物質を押しこめておき,換言すればひとまず埋没させて,ごまかすようにしてだが,なんとか後始末している。さらに,水俣病の事例は,水俣湾をつぎのように使い,その後の始末を着けたつもりである。

 ※-5 かつて,水俣湾に堆積した水銀ヘドロのうち,水銀濃度が25ppm以上のものについて,熊本県が14年の歳月と485億円という巨額の費用をかけて,一部しゅんせつ一部埋立工事をおこなった。その結果,水俣には58ヘクタール(東京ドーム13.5個分)の埋立地が生まれた。水俣湾の水質は,海の透明度や汚れの度合いでは熊本県下でもきれいな海のひとつに数えられ,泳いだり遊んだりするのにはなにも心配はない。

 註記)「6 水俣湾はどうなっていますか?」『水俣市水俣資料館』2011年5月17日 午後 4:53:00 更新,https://minamata195651.jp/pdf/tishiki/10tisiki_06.pdf  参照。

 渡良瀬遊水池にしても水俣湾にしても,あえていわせばもらえば,その水底や海底を引っかきまわせば「鉱毒」や「水銀」が舞い上がってくるはずだ,といえなくはない。しかし,ともかく,それら公害物質は沈静化された状態にまで始末はされている。ところが,原発事故の現場はとくにチェルノブイリ地域や,福島県浜通り地区でも東電福島原発事故で汚染された地域は,土壌への汚染が完全に隠しうる日がいつになったら来るのか,適切に答えられる専門家はいない。

 ましてや「金儲けとしての原発事業」が,日本の大会社・製造業の場合でもとうとう立ち往生し,にっちもさっちもいかない状況に追いこまれていた。だから,この原発事業に手を出してきたのは「大間違いであった」という結論にしかなりえない。このあと,廃炉工程に進んでいく予定の原発を多く抱えている日本は,結局,こちらの「廃炉という後始末の商売」に活路をみいだそうほかなくなっている。

 もちろん,そもそも「政治と経済」の原子力問題として考えるとき,原爆技術の不埒な応用であった原発は,その生まれながら特性,これを端的にいえば,経済原理も営利原則のなにもヘッタクレもなくなってきた「その電力生産方式として固有である理不尽性」は,今後においても,人類・人間史に要らぬ重い負担をかけつづけていく。この事実はいわば,あいも変わらぬ「《悪魔の火》の恐怖」の具体的な展開である。これからもその悪魔性は,人類・人間側が嫌というほど思いしらされる違いあるまい。


 「民営原発 行き詰まり 日立,英から撤退 中ロ,存在感一段と」日本経済新聞』2020年9月17日朝刊17面「企業2」(なお,この記事のなかに添えられていた図解は,① でのほうにまわし,さきに参照していた)

 日立製作所は〔2020年9月〕16日,英国での原子力発電所の新設計画から撤退すると発表した。東京電力福島第1原発の事故以降,原発の安全対策費は膨らみ,民間事業者だけで採算を確保するのがむずかしくなっている。脱炭素の観点から原発を推す声がある一方,再生可能エネルギーが普及しコストの優位性は揺らぐ。世界の原発市場では国主導で建設を進める中国・ロシアの存在感が高まっている。(なお,こちら ③ に参照した記事のなかに添えられていた図解は,① のほうで,さきに参照していた)

 「なんだかんだで日立が原発計画を進めるとの英政府の期待を打ち消したかった」。日立幹部はこのタイミングで撤退を表明した真意をこう語る。背景には英政府のむずかしい状況がある。日立が英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して事業化したのは2012年11月。〔その〕総事業費3兆円のうち2兆円超を英政府が融資し,残りを日立や日本政府,日英の企業などが出資する予定だった。出資者が集まらず,英政府に追加支援を要請したが,メイ前首相が難色を示し,2019年1月に日立が凍結を決めた。

 補注)始めのほうで氏名の出ていた日本経団連会長中西宏明が日立製作所社長を務めていたころに前後する履歴は,つぎのとおりであった。イギリスにおける原発事業部門への進出は,完全に失敗(凍結?)していた。

 2009年4月 代表執行役 執行役副社長
        日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズ社取締役会長(2010年33月退任)

 2010年4月 代表執行役 執行役社長

    6月 代表執行役 執行役社長兼取締役

 2014年4月 代表執行役 執行役会長兼CEO兼取締役

 2016年4月 取締役会長兼代表執行役

 2018年4月 取締役会長兼執行役,現在に至る

 続くジョンソン政権でも欧州連合(EU)離脱をめぐる混乱が続き,エネルギー政策を抜本的にみなおす余裕はなかった。南西部のヒンクリーポイントでは,仏電力大手EDFと中国広核集団(CGN)の合弁事業で原発の建設が進む。ホライズン計画で仮に日立が外れても中国企業が担い手になりうるとの声もあった。

 ただ,新型コロナウイルスの流行で欧州最多の死者を出した英国では,感染源の中国に対する不信感が台頭。与党・保守党内で中国に懐疑的な声が強まり,英政府は中国の華為技術(ファーウェイ)の排除を決めた通信と同様,国の安全保障にかかわる原発に中国がかかわることへの警戒感を強めた。そんななかで英政府が日立による事業再開を模索したと報じられ,日立はそれを否定する撤退表明を出すことになった。

 原発は発電時の二酸化炭素(CO2 )の排出量が石炭や液化天然ガス(LNG)の火力発電所より少なく,低炭素を実現するひとつの手段とされてきた。英政府は2050年に排出量を実質ゼロにする目標をかかげており,そのためには原発が欠かせないとの見方は根強い。中国企業に頼りづらくなるなか,日立の撤退はエネルギー政策の迷走にも映る。

 補注1)この記事の書き方が巧妙である。「原発発電時の二酸化炭素(CO2 )の排出量が……」と説明されているが,原発全体(新設から廃炉の完全な終了までにかかわって排出される炭酸ガスの「総量」)を,あえて無視したこうした筆法は,簡単に批判できる。下手なだましの記事造りだというほかない。

 補注2)その間に中西宏明会長は,日本経済団体連合会経団連)の立場から,以下のごとき言動をしていた。結局,口は災いのもとであった。中西会長は〔2019年〕2月14日,中部電力浜岡原子力発電所を視察したのち,発言した内容が物議を醸すことになった。

  ★ 反原発派の怒りを買った経団連会長,過激発言の裏に国内再稼働の思惑 ★
 =『DIAMOND online』2019.2.26 5:00,https://diamond.jp/articles/-/195127

 

 住民の間で原発に慎重な意見が根強い理由を記者団に尋ねられ,中西会長は「原子力発電所原子爆弾が頭のなかで結びついている人に両者は違うと理解させるのはむずかしい」と答えた。原発を誤解している人が多いとも取れるこの発言が,反原発派の怒りを買い,翌日には経団連会館前でデモまで起きたのである。

 

 ある程度の摩擦は予想できただろうに,中西会長はなぜこのタイミングで〔中部電力の〕浜岡原発をわざわざ視察し,過激とも取れる発言をしたのだろうか。浜岡原発といえば,民主党政権期に発生した2011年の東日本大震災後,当時の菅 直人首相が超法規的措置で “止めた” 原発だ。その是非はともかく,政治が原発への姿勢を明確にした事例である。

 

 その後に与党へ復帰した自民党安倍晋三政権は,国策民営である原発へのスタンスが曖昧だ。その理由について「首相は強固な政権運営を重視している。それを阻害する原発には首相自身が触れたくない」(政府関係者)といわれている。

 補注3)この「原子力発電所原子爆弾が頭のなかで結びついている人」という理解は当然であり,むしろ正解であった。それゆえ,このように発言した中西自身が「原発と原爆を,まさか完全なる別物と理解しているのだ」としたら,かえって噴飯モノ。

〔③ の記事に戻る→〕 原発のコストの優位性が揺らいでいるとの指摘もある。米投資銀行ラザードによると,発電所を新設した場合,2019年時点の原発の発電コストは千キロワット時あたり155ドルと2011年に比べて6割上昇し,石炭火力などを上回るようになった。一方,風力や太陽光などの再生可能エネルギーは技術革新が進み,コストは40ドル前後と原発の約4分の1にまで下がっている。

 日本では,原発の利用は国が政策を決めて電力会社が実行する「国策民営」で進めてきた。ただ,足元では低炭素には貢献するものの事故が起きれば被害が大きい原発事業に慎重な投資家も多い。資本市場からお金が回らなければ実行役の企業は立ちゆかなくなる。

 補注)ここでも原発は「低炭素には貢献するもの」だと報道されている。けれども,以前とは “基本から異なった表現” を充てて,この記事が書かれている。以前は「原発炭酸ガス出さない発電方法」だと記事は書いてきた。というしだいであり,厳密にいうまでもなく,時代を前後する意味おいて “矛盾をはらんだ報道” を,ともかく第2次微分的な表現を使ってでも, “はぐらかしつつ,つまり,ゴマカシつつ” おこなってきた。断定しておくが,日経の紙面において姑息といってよいその種の表現の変化が調整・脚色されてきた。

 日立は2020年7月,1兆円規模を投じスイスABBから送配電事業を買収。原発よりも再生エネなどで需要増がみこまれる送配電に注力する。仏原子力大手アレバ(現フラマトム)も経営不振に陥り,EDFの傘下に入った。米ウエスチングハウス(WH)は破綻し,世界で原子力企業の経営は揺らぐ。

 補注)EDFとは,フランス電力(Électricité de France)の略称。

 そんななか,国を挙げて支援する中国とロシアの原発関連企業は勢いを増す。日本原子力産業協会によると,2020年1月時点で中国で建設・計画中の原発は43基,ロシアも21基あった。米国の3基やフランスの1基を大きく上回る。三菱重工業原発計画を断念したトルコでは,ロシア国営企業原発を建設している。

 日立関係者は「ホライズンから撤退しても国内の再稼働案件があり,当面は問題ない。ただ中長期的には技術力の維持が課題となる」と語る。英原発計画に乗りだしたのも,原発新設を通じて保守や廃炉の技術を保つためだった。

 コロナで電力需要は落ちこみ,エネルギー政策は不透明さが増す。ただ,再生エネだけでは間に合わず,低炭素をめざしつつ安定的に電力を供給するため原発を進めようとなったさいに中国・ロシア企業ばかりに各国は建設を頼れるのか。安全保障の面からもむずかしい選択を迫られかねない。(引用終わり)

 はたして,原発が「低炭素をめざしつつ安定的に電力を供給するため」に適切な発電方式(電源)だったのかと問えば,これは完全に間違えた認識であるほかない時代状況をむかえている。とりわけ,再生エネルギーによる電力の生産方式が安定的ではないと,一方的に強調したいかのような論旨が問題であった。

 再生エネルギーによる電力生産の発・給・配電管理の運営実態に関する現状認識は,意図的にそっちのけにしたまま,このように偏った記事を書く日本経済新聞社の基本姿勢は高度に要警戒である。

 世界中の電力生産量を合計した電源構成比率のなかで占める再生エネルギーは,2019年で26%である。その2019年における日本国内の全発電量(自家消費含む)に占める自然エネルギーの割合は,前年の17.4%から18.5%に増加したと推計されている。水力発電も含む数値である。くわしくは,この(  ↓  )などを参照してほしい。

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