東京オリンピックの開催は99%ムリだと断定しつつ批判する本間 龍の議論,JOC側の五輪組織委員会もすでに承知でいるはずの問題なのに,国民たちにはなにもいえずに黙りこんでいる現状(窮状?)

 コロナ禍が収束するかどうかさえまったく分からない「来年以降の見通し」のなかで,「ボランティアへの参加詐欺」や「観客への感動詐欺」を高く売りこむ「国際大運動会」を開催したい東京五輪組織委員会の幹部面々,その厚顔無恥さだけは金メダルもの

 

 【要  点】 2020年夏はめずらしくも7月いっぱいつゆが明けずに冷夏で経過したが,もともと酷暑・猛暑の時節に東京でオリンピックを開催するという “狂気の沙汰” の実現を,まだ諦めていないIOCの立場・発想は,考えられないほどにオリンピック独善的なエゴをムキ出しにしている。山本リンダが1972年に流行らせた歌:「どうにもとまらない」が “ヘソ出しルック” で踊りながら歌っていたことを思いだした

 

  公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の役員一覧は(2020年9月9日現在),こういう構成である。

 名誉会長
  一般社団法人日本経済団体連合会名誉会長
  キヤノン株式会社代表取締役会長兼社長CEO 御手洗 冨士夫
 
 会 長
  元内閣総理大臣
  公益財団法人日本スポーツ協会最高顧問    森 喜朗


 副会長
  衆議院議員
  2020年東京オリンピックパラリンピック大会推進議員連盟幹事長
  公益財団法人日本スポーツ協会副会長      遠藤 利明
  パナソニック株式会社代表取締役社長      津賀 一宏
  公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構顧問  河野 一郎
  国際オリンピック委員会委員
  公益財団法人日本オリンピック委員会会長
  国際柔道連盟理事               山下 泰裕
  国際パラリンピック委員会理事
  公益財団法人日本障がい者スポーツ協会理事   山脇 康
  東京都副知事                 多羅尾 光睦

 

 専務理事(事務総長
  株式会社大和総研名誉理事           武藤 敏郎

 常務理事(副事務総長
  元文部科学省スポーツ・青少年局長       布村 幸彦

 常務理事
  公益財団法人日本オリンピック委員会専務理事  福井 烈


 理 事
  作詞家                    秋元 康
  麻生セメント株式会社代表取締役会長      麻生 泰
  国際オリンピック委員会オリンピックプログラム委員会委員  荒木田 裕子
  公益財団法人日本スポーツ協会副会長兼専務理事  泉 正文
  福岡ソフトバンクホークス株式会社取締役会長
  一般財団法人世界少年野球推進財団理事長      王 貞治
  日本政府代表
  中東和平担当特使               河野 雅治
  東京都議会議員                小山 くにひこ
  スポーツ庁長官                鈴木 大地
  東京都議会議員                髙島 なおき
  株式会社コモンズ代表取締役会長        高橋 治之
  公益財団法人日本オリンピック委員会副会長
  公益財団法人日本サッカー協会会長
  国際サッカー連盟カウンシルメンバー      田嶋 幸三
  オリンピアン(体操)             田中 理恵
  オリンピアン(柔道)             谷本 歩実
  トヨタ紡織株式会社取締役会長         豊田 周平
  東京都オリンピック・パラリンピック準備局長  中村 倫治
  公益財団法人日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会参事 中森 邦男
  パラリンピアン(水泳)    成田 真由美
  写真家
  映画監督           蜷川 実花
  衆議院議員          馳  浩
  東京都議会議員        東村 邦浩
  公益社団法人関西経済連合会会長
  住友電気工業株式会社取締役会長
  近畿陸上競技協会副会長
  公益財団法人日本陸上競技連盟評議員
  一般財団法人大阪陸上競技協会会長    松本 正義
  参議院議員               丸川 珠代
  公益財団法人日本スポーツ協会常務理事  ヨーコ・ゼッターランド
  公益財団法人日本陸上競技連盟会長    横川 浩
  国際オリンピック委員会委員
  国際体操連盟会長            渡邉 守成


 監 事
  公益財団法人日本オリンピック委員会監事/弁護士  塗師 純子
  東京都会計管理局長                佐藤 敦

    (以下,後略)

 「肩書きなどをみせびらか」すために「氏名もついでに添えられている」かのような「東京五輪組織委員会の最高幹部たちの一覧」である。なかでも,現在,山下泰裕が務める公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)会長は,前代は元皇族の末裔であった竹田恒和が務めていた。だが,2020東京オリンピックの誘致問題で賄賂行為の疑いで国際的な警察捜査の対象になっていた事実を受けて,その会長職から降りるほかない仕儀になっていた。

 そもそも,JOC会長に元皇族を充てていたというJOCの組織運営問題もあったが,このオリンピックという国際大運動会がいまでは,完全に商業主義(金儲け)のためのものになりかわっていた事実が,一番注目されてよい。

 オリンピック大会としての「本来の理念や目的」は,すでに完全に形骸化した。アマチュア精神などどこかへ吹っ飛ばした状態のまま,ともかく,各種目において勝てる選手がメダル獲得めざして戦うだけの “国際的な競技大会” になっている。

 ところで,実際にオリンピック大会を開催するに当たり,ボランティアたちに対しては,先験的に「無条件に感動できる!」「無報酬で奉仕できる!」といった精神論的な昂揚策に頼るだけの動員体制を敷いていた。そのうえで,しかもただ働きを当然とみなし,大勢の人たちを酷使する条件に関しては,「オリンピックなのだからみんながんばって甘受できるよね」「喜んで自分の労力を精一杯に提供するよね」と無理強いをしている。

 補注)なかでも記憶に強く印象づけられている1件があった。それは,薬剤師をかり出そうとした案件であったが,あまりにもひどくも搾取的な労働条件に対して薬剤師側からは猛反発が湧き上がっていた。そのときにゆきかった薬剤師側から提示された意見・批判はもっともなものばかりであった。

 要は,オリンピックの開催問題になると,誰もが実質的に無条件で完全に組織委員会の思うとおりに無償で奉仕するのが当然であるといったふうな,JOC側の無神経というか傲慢以外のなにものでもない超エリート意識でもってする大衆動員が全面的に展開されるゆえ,まともに常識のあるつもりでいる人びとからはただちに反発・反感しか出てこなかった。

 しかし,とくにJOCの役員のなかでも常勤の理事(専務理事や常務理事)は,好条件の待遇をうけていながら,前段のような国民・庶民たちのオリンピックへの動員体制を当たりまえと心えている。

 現在のオリンピックは,国際大運動会としてそれも完全に商業主義・営利化してしまった。はたして,このオリンピックじたいを,いまの時代になって開催する必要があるのかという疑問を,それも基本的な問題点として問われてよい時代になっている。にもかかわらず,いつまで経っても,クーベルタン男爵(フランスの教育者で,古代オリンピックを復興させ近代オリンピックの基礎を築いた創立者)の気分だけは,純粋に維持しているつもりである。  

 さて,いうまでもなかったが,2020東京オリンピックの開催予定は7月下旬から8月上旬にかけてであった。だが,コロナ禍のために延期になっている。前段に役職と氏名を紹介してみた「IOC五輪組織委員会の構成員」たちに関しては,つぎのような関心事が語られていた。

   ★ オリンピック延期で「コスト削減」をうたうも…… ★

 

 なお,今〔2020〕年3月のオリンピック延期決定を受け,オリンピック組織委員会は大会の位置づけや原則,今後のロードマップを公表。

 

 〔この〕延期で数千億円規模の追加費用が発生するとみられるためか,国民や都民から理解をうるために「サービス水準の見直しを含んだ効率化・合理化を進め,簡素(シンプル)な大会とする」という文言があり,「とくに予算影響の大きい分野を含め,すべての分野を対象に効率化・コスト削減を検討」と記されています。

 

 しかし,残念ながら2020年8月8日現在,前述した役員報酬に関する約款が更新された形跡はありません。つまり「すべての分野を対象に効率化・コスト削減を検討」とうたいながら,1人あたり年間最大2400万円にもおよぶ報酬を率先して減額しようとする動きはみられないわけです。

 

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  補注)このIOCの役員・評議員たちに適用される俸給表は「10万円刻みの号俸」になっている。この点は,いかにも鷹揚(簡潔?)に作成された俸給表だという印象を受ける。

 

 ボランティアにタダ働き以下の待遇を強いる一方,各種経費まで全額負担されるなど,十分な待遇が約束されている組織委員会の役員。報酬をうることは悪いことではない。だが,すべての分野を対象としたコスト削減を訴えるのであれば,まず隗より始めてみることを薦めたい。

 註記)「東京オリンピック組織委員会,追加費用対策で『コスト削減』強く訴えるも自らの役員報酬(年間2400万円)はそのまま」『Buzzap!』2020年8月10日 20:00,https://buzzap.jp/news/20200810-tokyo-olympic-stipulation-cost-cut-2021/

 補注)IOCの役員たちの誰々が,実際に,どの号俸や経費を支給されているのか,いまここでは分からない。

 ウィキペディアの記述のなかには,東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の「2015年度(平成27年度)は,約290億円の黒字となった。収入が約407億円で,支出が約116億円だった(事業費・管理費の計で,役員報酬が6747万円,顧問料が1億1313万6656円」と説明されている。

 そのうちの役員報酬とは多分,主に「専務理事の武藤敏郎」と「常務理事の布村幸彦と福井 烈」の3名に支給されている金額と推測しておく。顧問料という金子も曲者の費目に感じられるが,詳細はここでは不詳であるので,それ以上は言及できない。

 ちまたでは,前段の俸給表だけをみて前段のように「1人あたり年間最大2400万円にもおよぶ報酬」が,役員〔たち〕に支給されていると推測していた。役員たち全員が月額200万円の俸給を支給されているとは思えないので,このあたりの判断には注意したい。

 「『役員』とは理事および幹事を指すもので,『報酬』とは別に交通費 / 通勤費,宿泊費などの旅費,手数料などを含んだ「費用」の項目があります」。「役員報酬一覧はこんな感じ。月額最大200万円,年額にして最大2400万円が支給されます」と書かれているからといっても,繰り返して断わっておくが,その全員がこの200万円を月給としてもらえているわけではない。

 いずれにせよ,東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は,以上のごとき報酬・経費関連の情報を,より具体的に公表する義務がある。

 

 「〈新型コロナウイルス〉東京で新たに102人感染 月曜 100人超は8月末以来」asahi.com 2020年10月26日 14時51分,https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20201026001658.html

 東京都が〔10月〕26日,新型コロナウイルスの感染者を新たに102人確認したことが分かった。検査態勢の影響で感染者数が少なくなる傾向にある月曜日としては,8月31日(100人)以来の100人超えとなった。また都は同日,都内の感染者が累計で8人減ると発表した。

 

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 以上の記事に関連しては,すでになんどか指摘した点であったが,要は安倍晋三君が首相のとき,つまり2020年5月25日に「日本モデル」によってこそ日本は新型コロナウイルス感染症に打ち勝ったなどと,医学史的には想像を絶するような「無理解=脳天気」を全開にさせた状態で「対・コロナ勝利宣言」を放っていた事実を,いまごろではあるが,再度想起しておきたい。

 前掲記事の図表は,なにを物語っていたか。すなわち,その5月25日あたりを「底」にしていたわけであるが,コロナ禍の感染者数そのものの趨勢は,その後もじりじりと増加しつづけ,つゆの最中であった7月下旬から8月になると,さらに増加していた。このままだと冬を迎えて懸念される状況が起こりそうである。

 つぎの図表は,東京都におけるコロナ・ウイルス感染者数を,7月下旬から記録している。これは,日本全体のその数になかで占める統計としては,「下止まり」している傾向を明確に指示している。さらに用心をもって今後に接すべき実態を教示している。

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 関東地方でみれば,7月いっぱいはつゆが明けずに冷夏気味であったが,そのつゆが明けた8月になってからは,「第2波」の襲来を思わせる感染者発生数を記録してきた。安倍晋三が独り相撲で7月25日に,「日本モデル」がコロナウイルス問題に打ち勝ったなどといえる筋合いなど,これぽっちも許さない現実の推移が記録されていた。

 今冬を迎えて日本でもさらに発生を予想するほかない「コロナ禍の第2波(あるいは第3波か)」の襲来をめぐっていえば,これを「予期」しなければならない「現実政治の緊急的な問題」とはまったく無縁の立場にいた前総理大臣「安倍晋三君の無教養ぶり」(医学的知識の全面的な欠落)は,日本におけるコロナ禍対策を混乱させてきた。

 なかでも「PCR検査体制をどうする,こうするなどと,まだ議論している」日本における新型コロナウイルス防疫対策のお寒い体制は,この国における感染症対策面を医療体制として評価するに,実質的に後進国である事実まで暴露させていた。とくに,厚生労働省感染症研究所の独裁的で恣意的な対策・行動は,対コロナ禍に対峙する官庁としてのほとんど無策どころか,かえって有害な存在でしかなかった。

 ともかく,コロナ禍が2020東京オリンピックの開催を延期(1年)させたが,その後において話題になってもいるように,はたして1年後に本当に開催できるかという問題については,すでにIOC側のバッハ会長も欧米における感染者数(死亡者数)が,依然,収まりも減りもしない状況をみせつけられて,いまではかなり開催には弱気になっている(中止を決めているという情報もある)。

   ◆ コロナ新規感染,世界で再び拡大 1日あたり初の50万人超 ◆
     =『日本経済新聞』2020年10月26日朝刊4面「国際」=

 

【ニューヨーク=大島有美子】 世界で新型コロナウイルスの新規感染が再び加速している。1日あたりの世界の感染者数は23日,初めて50万人を超えた。米国では中西部を中心に感染拡大が続き,欧州でも再拡大が勢いを増す。北半球が冬にさしかかるなか,各国は感染封じこめのための措置を迫られている。

 

 米ジョンズ・ホプキンス大によると,〔10月〕23日の世界の新規感染者数は50万6570人。7日移動平均ベースでみても過去最高の41万人となった。累計感染者数は日本時間25日午後3時時点で4260万人を超えた。国や自治体による外出制限措置やマスク着用の習慣の浸透などにより9月にかけて新規感染の増加は抑えられていたが,10月以降に急増している。

 

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 国別にみると,米国では〔10月〕23日と24日のいずれも約8万4000人と過去最高水準だった。感染の基調を測るため7日移動平均でみると,24日時点で約6万7000人となり,7月のピークに近づきつつある。米国ではこれまで3つの感染の波がみられ,拡大の中心地域が異なる。3~4月が東部ニューヨーク州,7~8月は西部カリフォルニア州や南部フロリダ州テキサス州だった。

 

 感染の「第3波」となっている足元では中西部での感染拡大が深刻だ。ウィスコンシン州ノースダコタ州オハイオ州など約30の州・地域で24日に新規感染者数で過去最高を更新した。トランプ米大統領は22日の大統領選の討論会で「感染拡大は峠を越えた」と強調したが,このまま続けばその規模は第2波を上回る公算が大きい。

 

 米国の感染状況を分析する「COVID トラッキング・プロジェクト」によると,全米の入院患者数は24日時点で4万1千人おり,10月はじめと比べて3割増えた。1日当たりの死者数も徐々に増えており,医療体制の逼迫も懸念される。米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「陽性率の高い状態のまま,冬に突入してはいけない」と警鐘を鳴らす。

 

 欧州でも感染拡大が収まらない。7日移動平均でみた欧州連合(EU)27カ国と英国の新規感染者数は24日に15万人超となり,10月1日時点と比べて3倍と急増した。フランス,英国,スペインなどで過去最高水準で推移している。

 

 欧州ではここにきて,再びロックダウンなど感染防止策を講じる国が増えている。ポーランドは〔10月〕24日,飲食店や一部学校の閉鎖,外出制限など部分的なロックダウンを導入した。ドゥダ大統領のコロナ感染も判明した。スロベニアのロガル外相の感染も明らかになった。アイルランドでは住民の外出を自宅から5キロメートル圏内の運動に限るといったロックダウン措置を22日に導入した。

 以上の記事を読んでみて,また日本国内におけるコロナ感染者数の趨勢経緯を観て,1年延期にされた東京オリンピックの開催そのものが,はたして可能かどうかについて,まだその可能性があると思いたい人は,よほどの楽観論者である。というよりは,コロナ禍に対する認識が,医学的にという以前に,常識的になっていないと批判されていい。

【参考記事】


  石川智也・ジャーナリスト,本間 龍「東京五輪開催は99%あり得ない。早く中止決断を-スポンサー企業に名を連ねた新聞社に五輪監視は不可能だ-」論座』2020年09月27日,https://webronza.asahi.com/national/articles/2020092400006.html?page=1〔~ page=6〕

 この朝日新聞社系のネット記事『論座』に収録されていた対話記事は,ほかの大手紙ではまだまともに議論されていない「東京オリンピック開催不可」の背景・事情を,本間 龍に語らせている。だいぶ長文であるが,あえてここに転載した(読みやするための工夫をくわえてある)。

 その最後のほうの箇所で,本間がこの「僕のインタビューが朝日の媒体に載るんですか?」と尋ねていたところは,「爆笑か」それとも「失笑か」という形容のそのどちらともいえない気分にさせられた。

 

 石川智也の話(談)

 「もうやれないだろう」「それどころではない」。多くの人が内心そう思っているのではないか。

 東京五輪パラリンピックの延期決定からそろそろ半年。人びとの会話から五輪の話題はもはや消えつつある。コロナ禍が経済と国民生活を蝕みつづけるなか,なお数千億円の追加費用を投じ五輪を開催する正当性への疑問は膨らむばかりだ。

 それでも国,東京都,大会組織委員会は,五輪を景気浮揚策にすると意気ごみ来夏の開催に突き進んでいる。いや,突き進む,は不正確な表現かもしれない。組織委の現場ですらいまや疲労感が漂い,職員たちの士気は熱意というより惰性と日本人的な近視眼的責任感によって支えられているようだ。

 まだ日本中に五輪への「期待」が充満していたころから東京五輪に反対してきた作家の本間 龍さんは,いまあらためて「早々に中止の決断をすべきだ」と訴えている。

 行き過ぎたコマーシャリズム,組織委の不透明な収支,10万超のボランティアを酷暑下に無償で動員する問題点などを早くから指摘してきたが,それ以上に,多額の税金を投じたこの準公共事業へのチェック機能を働かせてこなかったメディアに対する批判の舌鋒は鋭い。

 「議論されて当然の問題が封殺されてきたのは,朝日新聞をはじめとする大新聞が五輪スポンサーとなり,監視すべき対象の側に取りこまれているからです。新聞は戦中と同じ過ちを繰り返すんですか?」

 これまで大手メディアには決して登場することのなかった本間さんに,あらためて東京五輪の問題点に切りこんでもらった。(以上,石川智也)

※人物紹介※ 本間 龍(ほんま・りゅう)は,1962年東京生まれ,1989年に博報堂に入社し,2006年に退社するまで営業を担当。その経験をもとに,広告が政治や社会に与える影響を題材にした作品を発表している。著書に『原発広告』亜紀書房,『原発プロパガンダ岩波新書,『電通大利権』サイゾー,『ブラック・ボランティア』角川新書など。

 なお,以下で◆はジャーナリストの石川智也,★以下が本間 龍である。

 

 1)『あらゆる判断材料が「中止」を示している』

 ◆ 安倍晋三前首相は2年あるいは4年延期論を振り切り,「ワクチン開発はできる」と来夏開催を早々に決めました。景気対策の効果をより早く出したいとの思惑があり,小池百合子都知事とも利害が一致したようです。しかし,NHKの〔2020〕7月の世論調査では,「さらに延期すべき」が35%,「中止すべき」31%,「来夏に開催すべき」26%(朝日新聞の調査では来夏開催は33%,再延期32%,中止29%)と,国民の意見は割れています。

  ★ 東京五輪の開催はワクチンや治療薬の開発が間に合うかどうかにかかっていますが,可能性はきわめて低いでしょう。世界保健機関(WHO)は今月,コロナワクチンの普及は来年中盤以降との見方を示し,9月8日には世界の製薬・バイオ企業9社が拙速な承認申請はしないという共同声明を発表しました。

  いくら政治の圧力で開発を急いでも,重篤な副作用が発生して訴訟沙汰になれば会社は潰れる。当然の判断です。

  政府と都,組織委は9月4日に合同のコロナ対策調整会議を開きましたが,入国した選手を「隔離」して複数回のPCR検査を受けさせる,といった案が話しあわれたらしいですね。でも選手やコーチ,関係者を合わせて数万という数の人の健康管理を徹底するのは,きわめて困難です。

  また,事前合宿をする各国の選手を迎える「ホストタウン」が全国400以上で決まっていますが,多くはコロナ専用病床などない小さな自治体です。地域住民が不安なく受け入れられる態勢をこれから準備できるでしょうか。

 ◆ IOCと日本側は「簡素化」について話し合いを進めていますが,報道によれば,開閉会式の縮小にはIOCは否定的とのことです。簡素化の内容にもよりますが,どうなるにせよ,延期による追加費用は3千億円とも5千億円ともいわれています。

  ★ IOCのバッハ会長は「熱狂的なファンに埋め尽くされた会場をめざしている」といっていますし,無観客や客席大幅削減での開催は,入場料収入や巨額の放映権収入をあてにしている組織委やIOCにとってはありえない選択です。

  コロナ対策は「簡素化」の真逆をいくものです。選手村専用の感染検査態勢や機器等の準備,選手や関係者専用の病院と語学力のある医療従事者の確保,各会場やバックヤードでの検温器や空気清浄機,扇風機などの設置,その運用のためのマンパワーの確保……こうした対策費を上乗せすれば,追加支出が5千億円程度で済むとはとても思えません。

  組織委はいまスポンサー企業への協賛金追加拠出を要請しはじめていますが,組織委だけで負担しきれない追加費用は,一義的に開催都市の東京都が支払うことになります。つまり都民の税金で穴埋めするわけです。

 ◆ 戦後最大ともいわれる経済危機で,都はリーマン・ショック時の1860億円を大幅に上回る8千億円規模の緊急対策を発表しました。一方で財政調整基金は底を突きかけ,税収は1~2兆円の減収が予想されています。

  ★ 明日の生活に困っている人がこれだけ発生しているのに,さらに数千億円も投じることが,都民や国民に理解されるでしょうか。

  組織委の森 喜朗会長は,中止した場合には費用が「2倍にも3倍にもなる」といいましたが,その根拠を問われてもまったく明らかにせず,「たとえ話」とごまかしましたね。呆れる話です。バッハ会長は「再延期はない」という意向を示していますから,日本としてはなんとしても開催したいのでしょう。

  でもこのまま来夏の開催にこだわれば,「簡素化」の反対の巨額支出が発生し,「安心安全」とは反対の感染拡大への不安が高まることは,小学生にでもわかることじゃないでしょうか。

  それなのに,組織委も都も国も「予防措置を講ずればなんとか開催できるかも」「ワクチン開発が間に合うかもしれない」と期待を抱き,会場の賃貸料や組織委の人件費など莫大な出費を続けています。IOCはIOCで「2021年夏にこだわったのは日本だ」とすでに責任回避の予防線を張っています。

  あらゆる判断材料が「中止」を示している。いたずらに決断を先延ばして淡い希望を抱かせるのは,世界中のアスリートに対しても失礼です。早々に撤退の判断をすべきでしょう。

 

 2)『招致時の数々のウソ~そもそも開催の大義はあったのか』

 ◆ そもそも本間さんは招致決定のすぐあとから東京大会の問題を指摘し,その開催に反対だといいつづけてきました。

  ★ 僕は五輪そのものを否定しているわけではありません。4年に一度,世界中のトップアスリートが集ってハイレベルの技術を競い合う大会を開くことじたいにはべつに反対しない。

  でも東京五輪は問題が多すぎます。

  まず挙げられるのは,招致時の数々のウソです。招致委員会が発表した「立候補ファイル」には,7月下旬からの開催期間を「この時期の天候は晴れる日が多く,且つ温暖であるため,アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」とあります。

  近年の梅雨明け後の東京の気候を「温暖」などという生やさしい言葉で表現している人がいたらお目にかかりたい。大ウソです。

  〔つぎに〕安倍首相による「アンダーコントロール」発言もそうです。あの招致演説の時点で福島第1原発の汚染水問題はまったくめどが立っていなかったし,その後の東京での建設業界の五輪特需により,被災地では人員・資材不足が深刻化しました。「復興五輪」といいながら,むしろ被災地の復興の足を引っ張っている。「復興」は招致のための方便でした。

  〔さらに〕予算7千億円程度の「コンパクト五輪」のはずが,会計検査院によれば,すでに大会経費として国は1兆600億円を支出しています。表向きの大会予算1兆3500億円と都の関連経費を合わせれば3兆円超。際限のない肥大化です。

  〔くわえて〕エンブレム問題や新国立競技場のデザインをめぐる混乱,選手村用地の不当譲渡疑惑といった不祥事も重なり,さらには,贈賄工作をおこなった疑いで前JOC会長の竹田恒和氏がフランスで予審にかけられるに至りました。

  こうして挙げてみると,開催の大義がそもそもあったのか,きわめて疑わしい。

 

 3)『ボランティアは「やりがい搾取」』

 ◆ こうしたなかで本間さんがもっとも問題だと指摘してきたのが,ボランティアの問題ですね。

  ★ 組織委によると,大会運営にかかわるボランティアは8万人。これとは別に東京都が募集する「都市ボランティア」が3万人で,合わせて11万人にもなります。

  どんなイベントも,入場整理や案内,警備,物販など現場を支えるスタッフがいなければなりたちませんし,五輪ほどの規模のイベントとなれば,これだけの数の人は必要なのでしょう。オペレーションだけで想像を絶しますが,それはともかく,組織委はこれだけのボランティアをすべて無償,つまりタダで使うことを前提にしています

  「全研修に参加できる」「10日以上あるいは5日以上活動できる」「最後まで役割を全うできる」といった条件を課しながら,日当も宿泊費も支給しません。僕は,これは明らかに搾取だと思っています。

  補注)つまり,IOCもJOCも経済的な搾取をオリンピック大会を通しておこなう,それも,日本側では公益財団法人である東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会がおこなうとなれば,なにをかいわんや……。

  つまり,「ボランティア搾取」「やりがい搾取」の上に成立している五輪大会があって,さらにこの大会の頂上にはこの組織委員会の役員や幹部たちが君臨している。いってみれば,組織的な搾取のための体制を,具体的に引き受け指揮し執行する機関であるのが,この公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

 ◆ ボランティアというと,多くの人は「無償」というイメージをもっていますね。

  ★ ボランティアは「志願」「自主的」という意味で,無償などという意味はありません。にもかかわらず多くの人がボランティア=無償と思っているのは,タダで使いたい側の刷りこみによるものでしょう。

  過去の五輪と同様だ,という説明は事実に反します。平昌大会ではボランティアのための宿泊施設と3食分の食事あるいは食費が提供されました。

  ボランティア学の専門家によれば,ボランティア活動の中核的概念は「自発性」「非営利性」「公共性」です。地震津波などのさいに被災地に赴く災害ボランティアはまさにこれらの定義に沿うし,であればこそ,場合によっては無償で働いてもらうことに異論を挟む人はいないでしょう。

  でも,巨大商業イベントと化した現在の五輪は,「世界中のアスリートが競い合う平和の祭典」から大きくかけ離れた,究極の営利活動の場です。東京大会は,その金満ぶりからいっても過去の大会と比べて群を抜いています。

 

 4)『電通が集めた巨額の協賛金。「中抜き」は?』

 ◆ スポンサー企業はロンドン大会が14社(プロバイダー&サプライヤー企業を含め42社),リオ大会が18社(サプライヤー企業を含め48社)でしたが,東京大会は67社でその協賛金は約3500億円にのぼっています。過去最高だったロンドン大会のスポンサー収入は11億ドルですから,その3倍の額です。

  ★ IOCのジョン・コーツ副会長も「驚異的」といっていますね。しかもこの額は,IOCと直接契約して全世界で五輪ブランドを活用した広報活動をおこなえる「ワールドワイドパートナー」14社による破格の協賛金を別勘定にしてのものです。

  組織委と契約する日本国内のスポンサーは,東京大会では上から「ゴールドパートナー」(15社),「オフィシャルパートナー」(32社),「オフィシャルサポーター」(20社)とランク分けされています。

  個々の契約金額はトップシークレットのため明らかにされていませんが,総額から推測して,ゴールドは1社あたり150億円,パートナーは60億円程度と考えられています。ちなみに,ワールドワイドは複数年あるいは複数大会契約で,1年あたり数百億円という桁違いの額を払っている企業もあります。

  東京大会でこれだけの額の協賛金を集められたのは,従来ほぼ守られてきた「1業種1社」の原則を破ってまで,スポンサー収入の最大化を図ったからです。結果,食品業種で味の素,キッコーマン日清食品が名を連ね,印刷業種で大日本印刷凸版印刷が参加するといったカニバリズム(共食い)現象が起き,マーケティング価値は低下している。それでも多くの企業がスポンサーに入ったのは,ライバル社にだけ五輪ロゴをつけさせたくないという競争心を巧みに利用したからでしょうね。

  そして,こうしたスポンサー企業の権利保護ばかり重視し過ぎた結果,アスリートが所属する企業や出身校でも壮行会を公開できないという事態が生じています。

  今回の巨額の協賛金は,組織委の事務局に百数十人を送りこんでいる電通が事実上仕切って集めたものですが,その電通が管理料としてどのくらいのマージンを中抜きしているのかは,明らかにされていません。

  東京五輪は極論すれば電通電通による大会だ,と僕はいっていますが,こういう事情も多くの国民はしらないでしょう。

  ここまで営利事業化,肥大化した現在の五輪が「おもてなし」「一生に一度」「世界の人びとと交流」といった美辞麗句で多くのボランティアを動員し,日当も払わずに拘束するのは「やりがい搾取」「感動搾取」以外の何ものでもないでしょう。

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  あまりの待遇の悪さにSNS上で批判が高まったため,組織委は1日1千円の交通費を払うと決めましたが,地方在住者の上京費用や宿泊費は自己負担という方針は変わっていません。

 ◆ しかも,7月末から8月上旬,パラリンピックは9月上旬までという猛暑下の東京での「奉仕」になるわけですね。ちなみに今〔2020〕年は梅雨明けが遅かったものの,気象庁によると8月の平均気温は東日本で平年を 2.1 度上回り,統計史上もっとも高かったとのことです。

  ★ 国が外出や運動を控えるよう呼びかける熱中症警戒アラートを出しているような環境下で,アスリートたちに競技をさせ,観客やボランティアをも危険にさらすわけです。

  組織委と都は,テントやミストシャワー,打ち水,遮熱材舗装,瞬間冷却剤の配布といった酷暑対策を打ち出し,予算も100億円規模に大幅拡大しましたが,どれも効果は限定的ですし,僕には戦時中の「竹槍作戦」と同様の悪い冗談にしかみえない。熱中症で搬送される人が続出すると思いますが,これも「自己責任」なのでしょうか。

  組織委に「熱中症対策の責任者は誰なのか」と聞いても,「組織委として対策する」「組織委として責任を取る」としか答えない。これでは無責任の連鎖になりかねない。

  酷暑という絶対に克服できない自然条件を重々承知したうえで,それを「温暖」と大ウソをついて招致に突っ走り,あとになって,わずか1カ月程度のイベントのために大金を使わざるをえなくなっている。杜撰きわまる作戦計画で兵站を軽視し,揚げ句に精神論で乗り切ろうとして3万人の死者を出したインパール作戦の愚行と変わらないと思いませんか?

  そもそも,なぜ真夏の開催になったのかといえば,巨額の放映権料を支払う米国のテレビ局の都合だというのは公知の事実でしょう。

 

 5)『現代版「学徒動員」』

 ◆ 放映権料はIOC予算の7割を占めるといわれ,その半分以上を米NBCが払っています。NBCは東京大会までの夏冬4大会の放映権を43億8千万ドル,さらに2022~32年までの6大会の権利を総額76億5千万ドルで取得しました。

  ★ これも商業主義,営利事業の極みですね。商業主義路線に舵を切った1984年のロサンゼルス大会より前は,米3大ネットワークの都合で日程や競技時間が歪められるということもなかったので,開催時期については合理的判断ができていた。1964年の東京大会で組織委がまとめた公式報告書は,10月10日を開幕日にした理由をこう記しています。

 盛夏の時期は,比較的長期にわたって晴天が期待できるが,気温,湿度ともにきわめて高く,選手にとってもっとも条件が悪いうえに,多数の観衆を入れる室内競技場のことを考えると,もっとも不適当という結論に達した。

 補注)前段に出ていたが,繰り返そう。日本の招致委員会が発表した「立候補ファイル」には,7月下旬からの開催期間を「この時期の天候は晴れる日が多く,且つ温暖であるため,アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」とあります。

 

 こういった種類の文句は通常,「最高級の大ウソ」という。安倍晋三のそのアンダーコントロール発言も,もちろん「最大級の虚偽」であった。

  56年前よりもさらに過酷になったいまの東京の気候を少しでも体験したことのある人なら,「もっとも不適当」どころか「開催不可能」というレベルではないですか?

  面白い話があります。

  五輪反対を強硬に主張しつづけているアナウンサーの久米 宏さんが,自身のラジオ番組で「酷暑の東京での五輪開催は無謀」という内容の放送をしたところ,組織委から反論が届いたと。その内容は「招致の段階で開催時期は7月15日~8月31日から選択するものと定められていた。これ以外の日程を提案した都市はIOC理事会で候補都市としてすら認められていなかった」というものだったそうです。

  これはまさに語るに落ちるというか,要は,開催時期は選べなかったんだから仕方ないという責任逃れと,最初から招致ありきで「アスリートファースト」などまったく考えていなかったということを,みずから告白しているわけです。

  不安や批判の声を受けてか,組織委はボランティアを保険加入させることを決めましたが,それでどこまで不安が解消されるか。

 ◆ 組織委が7月に実施した大会ボランティアへのアンケートによると,回答者の67%が活動時のコロナ感染症対策を不安と答えました。

  ★ コロナが収束していないのに無理に開催して酷暑の季節にマスク着用を義務づけることになれば,熱中症の危険性も増すことになりますよね。

  ボランティア募集はすでに終わっていますが,平昌大会で直前に2千人のボランティアが離脱したように,今後やめる人が続出することも考えられます。もしボランティアが足りないといことになれば,自治体や勤務先や所属団体を通じたさまざまな方法による動員がおこなわれることになるでしょう。というか,これはすでに起きていたことです。

  組織委は2014年に全国800の大学・短大と連携協定を結んでいます。文部科学省スポーツ庁も2018年7月,ボランティアに参加しやすいよう,全国の大学と高等専門学校に大会期間中は授業や試験期間を繰り上げるなどの柔軟な対応を求める通知を出しました。

  NHKがその直後に都内の約130大学に取材したところ,大会期間中の授業や試験をずらすことを検討していたのは79大学,ボランティア参加を単位認定する,もしくはそれを検討しているところは59大学もありました。

  さらには,東京都や千葉県は「体験ボランティア」という名目で中高生をも組みこんでいます。あくまで「任意」「体験」という説明をしていますが,都は学校単位での応募方式を採ったため,現場では半強制的な割り当てと受けとめている教員も少なくない。

  「就職に有利になるのでは」「内申書で不利になるのでは」といった不安や同調圧力からボランティアに参加しようとする生徒学生もたくさんいるでしょう。非営利性や公共性だけでなく,もはや自発性すら希薄化しています。現代版「学徒動員」といったらいいすぎでしょうか? 

  もちろん,みずから手を挙げた人も多いことはしっています。でも,僕にはこの「総動員態勢」がどうにも気持ち悪くて仕方ない。

  こういう,自分が少数派になっているような気分にさせられるのは,やはりメディアが五輪を盛り上げるための報道ばかりしてきて,それに取り囲まれているからでしょうね。

 ◆ 延期決定後,新聞でも来〔2021年〕夏に向けた難題を解説する記事や,簡素化など大会の姿を問いなおす記事は載りましたが,開催そのものを疑問視する報道はほぼ皆無でした。朝日新聞の開会1年前の企画記事なども,アスリートたちの葛藤やこれまでの努力を伝え,担当記者の「やはり五輪をみたい」という思いを紹介する,そんな内容が大半でした。

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  ★ 今〔2020〕年7月23日の開会1年前イベントは,白血病からの復帰をめざす池江璃花子選手を逆境にある東京大会そのものと重ね,なおも五輪が国民的イベントであることを演出しました。

  2024年パリ大会をめざ指しているという彼女が,来〔2021〕年の開催を訴えるために駆り出されることを心底望んでいたのか,みていて痛々しさを覚えましたが,メディアは無批判にその感動物語に乗っかりました。

  延期が決まった直後の4月の段階で組織委は3800人の職員を抱えていますが,都,国,JOC,自治体,電通,スポンサー企業からの出向者と契約社員が支えています。苦しい状況下でも,スタッフも選手もみんな必死に奮闘しているのだから水を差すな,そんな空気をメディアが作りだしているわけです。

  それでも,延期決定前に比べれば,開催断念の可能性に触れた記事や,コラムというかたちながら開催への疑問を率直に出した記事が載るようになってきたとは思いますよ。本当に来夏に開催できるのか不透明な情勢になってきて,書きやすくなったんでしょうね。

  とはいいながら,組織委にとって触れてほしくない「核心的利益」に関することに触れた報道はない。それはつまり,これまで述べてきたような,猛暑下での五輪開催の是非,無償ボランティアへの疑問,大会の大義そのもの,組織委の収支の不透明さといった問題です。

  ボランティアを有償にすれば,100億円単位で計算が狂ってしまう。IOCは1兆3500億円という予算上限を守ることを厳命していますから,これ以上出費を増やせるはずがない。この問題には触れたくないのです。

  収支も,組織委は総額と項目は公表していますが,細目と個々の契約額は明かさない。しかし,五輪は表向き予算だけ見ても国 1500億円,都5970億円の税金を投じて開催する準国家的事業ですよ。収支がつまびらかにならなければ,適切な事業なのかどうか国民や都民が検証することはできないでしょう。

  でも,こうした組織委にとっての琴線に,大メディアが切りこめるはずがない。

  補注)ここでの「琴線」というコトバの使い方に違和感を抱いたので,あらためて調べてみたところ,「『琴線に触れる』を,触れられたくないこと,不快な話題に触れる意で使うのは誤り」という字義であった。訂正は要求しないでおく。

 

 6)『全国紙すべてが東京五輪スポンサーに』

 ◆ 国内スポンサー第二ランクのオフィシャルパートナーには朝日,読売,毎日,日経の各新聞社が入り,産経新聞社と北海道新聞社もその下のオフィシャルサポーターに名を連ねています。

  ★ つまり,全国紙すべてが東京五輪のスポンサーになっているわけですが,きわめて異様です。

  報道機関がこういうかたちで参画するなんて,ロンドンでもリオでもありえなかった。スポンサーになって協賛金を払うということは,主催者と利益を共有する立場になるということです。公正な報道,ジャーナリズムとしての監視などできるでしょうか。

  テレビ局にとっては,新聞社とクロスオーナーシップで結びついているという以上に,スポンサー企業と,組織委の広報を一手に握る電通の存在が大きいでしょう。テレビCMで3割以上のシェアをもつ世界一の広告代理店である電通は,とくに放送業界にはなお強い影響力をもっています。

  電通は社員の過労死自殺と持続化給付金事務事業の受託問題で世の批判を浴びましたが,電通批判は巨大広告に依存する業界にとってはタブーといってもいい。五輪を批判するということは,電通を批判することであり,CM出稿をしているスポンサー企業を批判することでもある。忖度が働くのは当然です。

  さらにいえば,組織委には助言機関としての「メディア委員会」というものもあり,委員長の日枝 久・フジ・メディアホールディングス取締役,副委員長の石川 聡・共同通信社顧問をはじめ全国紙や在京キー局など大手メディアの幹部や編集委員ら39人がメンバーになっています。「翼賛」という言葉が浮かぶのは僕だけでしょうか。

【参考画像】 下掲の本の発行年月は,昭和17〔1942〕年7月15日であった。戦争中に公刊されていた経営学専門書として,題名(副題)に「翼賛」という文字を使用していた。

 

 1942年の6月であった,旧大日本帝国海軍は,ミッドウェー海戦によって大事な戦力であった空母4隻を失っていた。対米の「太平洋戦争」にあっては,その時点をもって日本側の優勢が頂点を越える予兆になっていた。にもかかわらず旧日帝は,その後も3年と2ヶ月ものあいだ戦いつづけ,結局,敗退(散華!  玉砕?)した。

 

 2020年に始まったコロナ襲来に対する日本政府の対応ぶりは,大東亜戦争に敗北していった旧日帝の歴史を想起させてやまない。

 

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  各新聞社はスポンサー契約を結ぶにあたり「報道は公正を貫く」などと宣言しています。編集と広告・事業の間にはファイヤーウォールがある,と記者たちもいうかもしれない。

  それなら聞きますが,朝日新聞高校野球の女子マネージャーのあり方や炎天下の甲子園大会開催などに対して率先して批判的な記事を載せたことがあるのでしょうか。福島第1原発事故が起こる以前に,電力の寡占政策や原発の危険性と切りむすんだ記事を書いたことがあったでしょうか。だれかに明確に止められたことはなくても,自主規制の蔓延があったのではないですか?

  今回の五輪も,選手たちの思いを聞き,戦後復興の頂点としての前回東京大会を懐かしみ,メダル量産で地元開催を盛り上げたいという金太郎アメのような報道ばかりです。組織委が熱中症対策にがんばっている,苦慮している,という記事はたくさん載りましたが,真夏の開催の危険性やボランティア問題をきちんと検証し疑問を投げかける記事は皆無で,むしろ総動員機運を煽るような報道ばかりが目立った。

 こうした問題をここ5年ほど発信しつづけてきましたが,東京新聞以外の新聞,テレビから取材を受けたことは一度もありません(笑)。そんな僕のインタビューが朝日の媒体に載るんですか?

 ◆ 報道の面では公正な視点を貫く,と朝日新聞はHPで宣言していますし,こうしたオピニオンを封殺すればそれこそ報道・言論機関として致命的で,経営的にもブランド価値を毀損するものでしょう。

  ★ なにも五輪に反対しろとか組織委を叩けとかいっているわけではない。税金の使途や使われ方をきちんと検証し,ごく当たりまえの疑問点を当たりまえに追及すべきではないか。そう投げかけているだけなんですけどね。

  延期による追加費用のためスポンサー企業は協賛金の追加拠出を要請されていますが,コロナ禍で業績が悪化している企業にとって,いまやさらなる出費を正当化する理由はみいだしがたい。中止となれば損害は甚大で,株式会社なら株主から責任を問われかねません。

  もはやこの五輪は誰にとって得になるのかすら,分からなくなってきています。懐が潤って安泰なのはIOCと組織委のごく一部のオリンピック貴族だけじゃないでしょうか。

  それでも,この巨大商業イベントは止まらない。太平洋戦争の時と同じで,だれも責任をとらず決断しないまま,泥沼化しています。もしIOCの主導で中止となったとしても,不可抗力のコロナ感染拡大があったのだから仕方がなかった,という総括になりかねません。

  中止になってから,あるいは閉会してから手のひら返しするのでは遅い。メディアは,招致活動以来のこの五輪の問題点をきちんと検証し,後世のための教訓として残すべきです。さきの戦争での過ちを繰り返さないために。(引用終わり)

 本ブログ筆者はすでに,つぎの記述で2020東京オリンピックの問題をとりあげ議論していたが,コロナ禍の重大な影響は,この国際大運動会を日本で開催する意味どころか,オリンピックという営利事業そのものになりはてている,しかも「ボランティア詐欺」や「感動搾取」を背の裏に隠しもった商業主義である世界大会は,もはやその存在意義すらなくなっていると認識されてよい。

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