従軍慰安婦問題をめぐる日本の裁判所,腰抜け状態で国家権力側の望む忖度判決しか出せない裁判官,最高裁に自分の「オトモダチのオトモダチ」を送りこんだ日本の首相

 従軍慰安婦問題で櫻井よしこなどを提訴した植村 隆・元朝日新聞記者は,国策裁判で敗訴させられた

 安倍晋三の力強い実質的な支援を受けた櫻井よしこのほうは,「勝った,勝った」と,官軍意識丸出しに遠吠えする

 「 石が流れて木の葉が沈む」この国の現状は,まだ先進国でいるつもりだが,正義に関する議論の水準は,世界のなかでは完全なる孤児

 
  要 点・1元朝日記者の敗訴が確定  慰安婦報道訴訟」『朝日新聞』2020年11月20日朝刊35面「社会」が,つぎのように報じていた。

 元慰安婦の証言を伝える記事を「捏造」と記述されて名誉を傷つけられたとして,元朝日新聞記者で『週刊金曜日』発行人兼社長の植村 隆氏がジャーナリストの櫻井よしこ氏と出版3社に計1650万円の損害賠償などを求めた訴訟で,最高裁第二小法廷(菅野〈かんの〉博之裁判長)は植村氏の上告を退けた。請求を棄却した一,二審判決が確定した。〔2020年11月〕18日付の決定。

 

 植村氏は1991年,韓国人元慰安婦の証言を朝日新聞で2回記事にした。これに対して櫻井氏は2014年,月刊誌『WiLL』『週刊新潮』『週刊ダイヤモンド』で「捏造記事」などと指摘した。2018年年11月の札幌地裁判決は,韓国紙や論文などから,植村氏の記事が事実と異なると櫻井氏が信じる「相当の理由があった」と請求を退けた。今年2月の札幌高裁判決も一審を追認した。

  要点・2 安倍晋三(現在の自民党政権とこの前首相)を忖度した裁判所の判断に,まともな判断力は皆無,信頼度もゼロかマイナスの水準

【参考記事】これは,2020年11月23日補遺

 付記)最後に挙げた「澤藤藤一郎のブログ」は,法律の専門家がする解説になっている。当該裁判で実質,「植村 隆は負けておらず,櫻井よしこらは勝っていない」点を指摘している。正確にくわしくしりたい人は,面倒でも,澤藤のこのブログの記述を読んで理解してほしく思う。

  要点・3 櫻井は1994年に『櫻井よしこが取材する』という本をダイヤモンド社から公刊していたが,この本はたとえば,こう解説されていた。① の記述に進んで記述をつづける

 
  櫻井よしこ櫻井よしこが取材する』ダイヤモンド社,1994年

 櫻井の本書は,第3者からつぎのように,こういう書物ですよと紹介されていた。

 「世の中こんなにたくさんオカシナことがある。新聞の報道,テレビの政見放送,官僚の論文,法廷での陳述…。著者独自の視点でメスを入れる。これからの日本はどんな国でありたいのか,あるべきなのかを,日本人である私たちが考え,論じ,選択していかなければならない」。

 註記)「はばたきライブラリー」『社会福祉法人 はばたき福祉事業団』2020年8月11日 午後 4:31:30 更新,https://www.habatakifukushi.jp/old/library/cat111/cat121/post355.html

 この『櫻井よしこが取材する』の27-29頁に収録されていた一文が,つぎの「従軍慰安婦問題の責任」であった。この文章についてはすでに紹介したことがあったが,再度,その画像資料でもかかげておくが,このなかで櫻井よしこはこう指摘していた。

 今回の実態調査は,必ずしも完全なものではないかもしれないが,日本人全体が目をそらし続けてきた日本現代史の汚点について,事実を明らかにしていくための第1歩として評価されるべきであり,この努力は今後も継続されていくべきであろう(27頁)。

 

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 といってはいたものの,いまではこの文句はすっかり衣装タンスの奥に放りこんだまま,虫食い状態にさせてきた。本日記述することになった,櫻井よしこ従軍慰安婦問題に対する「21世紀になってからの基本的な態度」は,かつて「日本現代史の汚点」である指摘していた従軍慰安婦問題をめぐって,まっとうなリベラルな感覚をたずさえて自然体で認知しようとしていた立場を,完全に放逐していた。従軍慰安婦に関した彼女の立場は一転し,そのような「歴史の汚点」として認識されるべき歴史問題を,いっさい存在しなかったという立場に変更(偏向)していた。

 従軍慰安婦問題について1990年代初めから,朝日新聞社の記者として記事を書いていた植村 隆が,櫻井よしこなどを,捏造よばわりして侮辱したという理由(名誉毀損)で提訴したのは,2015年2月のことであった。それから早,満5年以上が経過したが,最高裁までいって植村は敗訴して〔させられて〕いた。

 しかし,その裁判の経過を観察してみると,安倍晋三前政権〔菅 義偉現政権〕の顔色をうかがってきた裁判所(と担当した裁判官,究極的には,その後方に控えている最高裁事務総局を掌握する司法側の権力者たちなど)が,『植村 隆を負かせ,櫻井よしこを勝たせた』という基本の構図を提供した。

 本日の記述はそのあたりの関連事情からまず間接的に説明しておき,徐々に核心の話題に迫る順序となる。

 

 ②「木澤克之と加計孝太郎と安倍晋三と。-仲良きことは麗しいか?-」『澤藤統一郎の憲法日記』2020年11月18日,http://article9.jp/wordpress/?p=15947

 昨日(11月17日)の『毎日新聞』夕刊が,「最高裁判事が高校生にオンライン講義 法曹の魅力伝える初の試み」という記事を掲載している。

 「若い世代に法曹の仕事の魅力を伝えようと,最高裁の木澤克之判事(69差異)が16日,須磨学園高校(神戸市)の2年生400人に向けてオンラインで講義した。初の試みで,生徒らは『憲法の番人』と称される最高裁の判事の声に耳を傾けた」。

 補注)前後する文意で受けとめてみる,この表現『最高裁判事憲法の番人』とは,より正確にたとえるとしたら『権力側の単なる番犬』となるほかない。

 最高裁と学校の教室をウェブ会議システムで結び,2016年に弁護士から最高裁判事に就任した木澤判事が約50分にわたって語りかけて,こういったという。

 「『社会のルールをめぐるトラブルを一つ一つ解決するのが裁判の役目。ルールを安定させ,信頼できるものにするのが法律家の仕事』と解説した。『裁判官として一番大事にしていることは』との質問には『結論が正義にかなっているかどうか,よく考えること』と答えた」。

 同じ言葉も,誰がいうかで印象は大いに異なる。ほかの判事がこういえば無難な内容だが,この人が口にすれば大いにシラける。

 彼は,1974年に立教大法学部を卒業し,1977年に弁護士登録をしている。東京弁護士会に所属し,東京弁護士会人事委員会委員長(念のためだが,人権委員会委員長ではない)や立教大学法科大学院教授などを務めたという。それだけなら,なんの問題もない,普通の弁護士。

 この人,立教大学で,加計孝太郎という有名人と同級生だったという。その誼で,加計学園という学校法人の監事の役に就いた。これも,まあ,問題とするほどのことではなかろう。

【参考画像】 以下の画像資料と文章は,本ブログ https://socialsciencereview.hatenablog.com/entry/2020/03/07/143429  から転載した。

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  註記)http://fujiwaraha01.web.fc2.com/fujiwara/article/zaikai201804.html  参照。

 

   補注)以上の文中では,つぎの2個所を,「加計孝太郎が岸信介〔の〕子供で」「一緒に遊学〔し〕ていた」と補正しておく。  出所)安倍内閣の弾圧で廃刊になった雑誌が放った最終号の暗黒日本暴露の特大スクープ」『阿修羅掲示板投稿者フランクリン,2018年3月16日 22:46:45,http://www.asyura2.com/18/senkyo241/msg/511.html

〔記事に戻る→〕 よくしられているとおり,加計孝太郎には,安倍晋三という「腹心の友」がいた。木澤は,加計孝太郎に誘われて,安倍晋三とゴルフを楽しむ仲となった。こうして,加計を介して,「アベ・カケ・キザワ」の濃密な関係ができた,と思われる。濃密の評価は推測だが,少なくも,そうみられる状況ができた。これで,問題を孕むこととなった。もっとも,これだけならまだ問題は顕在化しない。

 問題は,木澤克之が最高裁判事に任命されたことだ。任命したのは,もちろん安倍晋三である。これは,大問題ではないか。安倍晋三は,加計孝太郎のために,岩盤にドリルで穴をこじ開けて,加計学園が経営する大学の獣医学部開設に道を開いている。腹心の友のために,不可能を可能としたのだ。これが行政私物化と世の顰蹙を買ったアベノレガシーのひとつである。

 その安倍晋三が,加計学園監事の弁護士を最高裁判事に任命したのだ。トモダチのトモダチの任命である。行政の私物化だけではない,司法の私物化ではないか。

 この木澤という人,立教大学出身の初めての最高裁判事だという。周囲がその姿勢や人格を評価した結果であれば,その経歴は誇ってよい。しかし,オトモダチのおかげで加計学園監事となり,オトモダチのオトモダチと懇意になっての,最高裁判事任命はいただけない。子どもたちの前で,正義を語る資格に疑問符が付く。

 この人,すでに前回(2017年10月〔これは,引用元のブログ『澤藤統一郎の憲法日記』中の記述という意味〕)総選挙のさいの最高裁裁判官国民審査を経ている。そのさいの,「最高裁判所裁判官国民審査公報」における経歴欄に,加計学園監事の経歴を掲載しなかったことが,話題となった。最高裁ホームページには,いまも明記されているにもかかわらず,である。

 私も東京弁護士会所属だが,この人のことは,最高裁判事就任までしらなかった。しってのあとは,とうてい「正義を語る人」のイメージではない。「有力な人,権力をもつ人に擦り寄って仲良くすれば世の中を上手に渡れますよ」と,子どもたちに「教訓」を垂れるにふさわしい人のイメージなのだ。大新聞が,無批判に木澤の行動を報じていることに,違和感を覚える。(引用終わり)

 以上は,最高裁の判事にまで安倍晋三は,自分の親友である加計孝太郎のオトモダチ〔のそのまたオトモダチ〕を送りこんでいたという話題である。以前から本ブログ筆者は,安倍が首相の地位を長々と維持してきたために,この国は「私物化・死物化・負の遺産化」の内政と外交しかなしえなくなるとともに,腐敗と堕落の隘路に向かい突入していく「政治極道の道」を選んだ事実を批判してきた。

 安倍晋三は首相であったときよく間違えて,自分の立場のことを「私は立法府の長」と自称していた。それも一度ではなかった。2007年5月の場合も入れると本当は3回もその発言をしていたとされるが,さらに4回から5回あったという指摘もある。ここでは,つぎの2例のみ言及しておく。

 補注)「安倍晋三首相による『私は立法府の長』発言4事例+番外『立法府の私』1事例を再確認する~2007年5月11日~2018年11月2日」『弁護士・金原徹雄のブログ』2018年11月3日,http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/52635022.html

 ※-1 2016年5月16日,安倍晋三は首相としてだが,衆議院予算委員会において山尾志桜里議員の質問に答え,「議会については,私は立法府の長」と発言した。

 

 ※-2 2018年11月2日,安倍晋三は再度となるが,やはり衆院予算委員会の答弁で,国民民主党奥野総一郎との質疑応答において,みずからを「立法府の長」といい間違える場面があった。

 「世襲3代目のお▲カ政治屋」が,そうした初歩のそのまた初歩的な,勘違いとは思えない “超絶的なデタラメ発言” をなんどでも,しかも無意識的な次元で放てる感覚は,常人には理解の域を超えている。

 だが,『澤藤統一郎の憲法日記』2020年11月18日「木澤克之と加計孝太郎と安倍晋三と。-仲良きことは麗しいか?-」が批判した内容は,安倍晋三が本気で,自分は「行政府の長」以外に「立法府の長」も兼ねているかのように,つまり,錯覚ではなく「そういう存在であるつもりになりきっていた自分」を説明していた様子に触れていた。

 さて,2020年2月ごろから本格的に,日本社会にも重大な影響を与えはじめた新型コロナウイルス感染症に対する安倍晋三政権(当時)の対応ぶりは,完全なる「私物化・死物化・負の遺産化」路線以外のなにものでもなかった。

 今朝〔2020年11月21日〕閲覧した『東京新聞』のあるネット記事は,「Go To トラベル『一時中断を』 東京都医師会長が強く訴え 新型コロナ感染者急増で」(2020年11月20日 20時06分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/69632)と報道していた。だが,菅 義偉政権は,その「Go To トラベル」が「Go To トラブル」の一線すらすでに超えつつある現状を,軽視どころか,あえて無視している。ここまでやるとなれば事態はすでに暴政状態(コロナ禍対策の次元ではすでにアナーキーに近い政情)に突入しつつあると解釈されて,なんらおかしくない。

 政府のそうしたみっともない対応ぶりに背中あたりに控えているのは,利権がらみにの私物化政治そのものであった。「Go To トラベル」は,目先の「経済の論理」にのみこだわる姿勢を如実に表現する。まさしく,これから冬にかけてはコロナ禍が急速に拡大しそうである状況が明白である。にもかかわらず,現在,この災厄に直接対応して当たる政府担当大臣が西村康稔経済再生大臣の無責任な放言ぶりときたら,菅 義偉政権の本質を分かりやすく教える材料にまでなっていた。

 

 「重症者,第2波超え 現場『国は何もしてくれないのか』」asahi.com 2020年11月20日 5時00分,https://digital.asahi.com/articles/ASNCM7SMDNCMULBJ00C.html?ref=mor_mail_topix1

 新型コロナウイルスの感染が急拡大するなか,〔11月〕19日に開かれた専門家の会合では,高齢の感染者や重症者が増えている厳しい状況が報告された。冬に向けてさらに深刻化する恐れがあるものの,政府は感染者を減らすための強い対策を打ち出せないでいる。

 「今後,重症化する人が増加する。救急医療の受け入れや手術を抑制しないといけない状況になると想定される」。19日の専門家組織の会合後,座長の脇田隆字国立感染症研究所長は会見で,いまの感染状況に危機感を示した。感染拡大の要因には,つぎ三つが挙げられた。

 ▽-1 基本的な感染予防対策がしっかりおこなわれていない,
 ▽-2 人の移動の増加,
 ▽-3 気温の低下。

 メンバーの尾身 茂氏も「なにかしら対応が必要なのは間違いない」と話し,20日開催の政府の分科会で対策を提言する考えを明らかにした。

 〔11月〕9日,専門家組織のメンバーが多く参加する政府の分科会は,対策強化を求める緊急提言を出した。会長の尾身氏は「急激な感染拡大に至る可能性が十分ある」と強調した。だが,19日の会合の評価では,改善はまだみられない。むしろ「2週間で2倍を超える伸び」などきびしい言葉が並ぶ。危機的な局面で人びとの行動に影響力を持ってきた尾身氏らの訴えだが,人出の状況などからはその効力に陰りもみえる。

 補注)ところで,児玉龍彦生物学者,現在は東京大学先端科学技術研究センター がん・代謝プロジェクトリーダー)いわく,政府の専門家会議には感染症対策の「専門家がいない」。

 この点をもっともミジメに象徴してきた人物が,先日,食事の仕方では「マスクをこう外し……」などと講釈した尾身 茂である。自分が専門でない感染症の猛威に対面していうことが,「食事をするときは……」ときたとなれば,なおさらそういう印象は回避できない。これは,専門家でなくとも誰にでも簡単に吐ける文句。

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 児玉龍彦のような人材を専門家会議に採用できない,なにか特別の理由でもあるのかもしれない(もっとも児玉は東京都世田谷区で保坂展人に前面協力してコロナ禍対策に努力中である)。延期になっていた東京オリンピックを開催させることしか念頭にない自民党政権こそが,そのようにお寒い状態のまま,自縄自縛的なコロナ禍対策に終始している。

〔記事に戻る→〕 ソフトバンクの子会社「アグープ」のデータで,緊急提言が出た〔11月〕9日と1週間後の人出を比べると,東京駅で4.4%減,札幌駅で2.7%減,大阪駅で1.2%減にとどまった。名古屋市の栄駅はほぼ横ばい,福岡市の天神駅は逆に4%増えた。4月の緊急事態宣言では,大阪駅で53%減,東京駅で42%減などと大きく減っていた。

 メンバーの1人は会合後,「いまの状況がかなり厳しいということが伝わっていない」と焦りを見せた。保健所の負荷が増し,医療現場の逼迫感は病床使用率という数字でみるよりはるかに強いと指摘する。

 東京大の広井 悠准教授(都市防災)が指摘するのは,「警報慣れ」という現象だ。「なんども警報が出て自分が無事だと,『つぎも大丈夫だろう』と事態を過小評価しがちだ」

 広井さんは「夏の第2波は死者は大きく増えずに収まったが,現在の第3波は亡くなる恐れが高い高齢者も増えている。適切なリスク意識をもってもらうことが重要だ」。症状がなくても感染していて,人にうつすリスクもある。「若い世代には,『高齢者のために行動を変えよう』と説明することも有効だろう」と話す。

 今後の見通しについて,順天堂大の堀 賢教授(感染制御学)は「このままでは東京都内だけで1日1千人の新規感染者もありうる」と警鐘を鳴らす。

 とくに懸念されるのが,中高年層への感染の広がりや,高齢者施設などでの集団感染に伴う重症者の急増だ。自治体の発表を厚生労働省が集計したデータによると,11月18日は全国で重症者が280人に達し,「第2波」ピークの259人を超えた。緊急事態宣言が出ていた「第1波」ピークの328人には及ばないものの,感染から重症化までに2週間ほどの時間差があり,いまの増加ペースが続けば12月にも上回る可能性がある。
医療現場からは悲鳴「なんの対策もしてくれないのか」。

 北海道ではすでに医療の状況が切迫している。 (…中略…)  北海道以外でも17都府県(19日午後7時時点)が今月に入って1日あたりの新規感染者数が過去最多を更新した。

 東京都の感染症医療体制協議会委員を務め,病床の調整を担う山口芳裕・杏林大病院高度救命救急センター長によると,ここ1週間で,陽性と判明する前に呼吸苦で酸素吸入が必要な状態となり救急車で運ばれる患者や,入院先で重症化して転院する患者が急激に増えているという。これまではクラスター対策の延長で高齢者を早めに医療につなぐことができていたが,それができなくなっており,「第1波の状況と似てきている」と指摘する。

 岐阜県で開催中の第48回日本救急医学会学術集会長の小倉真治・岐阜大教授(救急・災害医学)は「危機感はきわめて高い。いま,警戒を呼びかけても結果は2週間後にしかわからない。通常の医療にも深刻な影響が出る『ポイント・オブ・ノーリターン(後戻りできない地点)』を超えないために,『第1波』以上に気を引き締めて,感染対策をしてほしい」と話した。

  ※ 首相周辺「経済止めず,対策するしか」※

 感染者増に政府も危機感を示すが,打つ手は限定的で,国民の「自己防衛」に委ねる部分も大きい。菅 義偉首相が〔11月〕19日に国民に求めたのは,3密の回避など基本的な感染防止策の徹底だった。会食時の感染リスクについて注意喚起し,飲食するときだけマスクを外し,会話はマスクを着用しておこなう「静かなマスク会食」を提案した。

 みずから「今日から徹底する」とも語り,同日昼に首相と会食した公明党山口那津男代表によると,たがいにマスクを着けて経済政策や外交について意見を交わしたという。首相の呼びかけの背景には,今春の緊急事態宣言時に国内経済が傷んだことから,同じ事態を繰り返したくないとの考えがある。

 首相周辺は「また自粛を呼びかけたら飲食店が倒れる。経済を止めないギリギリのところで対策するしかない」と語る。政権幹部も経済活動を止めれば「コロナよりも,経済で苦しむ人の方が多くなってしまう」と強い懸念を示す。

 補注)安倍晋三にしても菅 義偉にしても,これら政治屋の考えること,いいだすことのすべてが,いかにチマチマした貧しい内容でしかない事実には,呆然・唖然・脱力するほかない。本日(11月20日)『朝日新聞』朝刊の天声人語は,こう指摘していた。後半の5分の3ほどを引用する。

 話は,このところの政治家たちの「会食指南」である。あくび指南ほどばかばかしいとはいわないが,菅首相の「静かなマスク会食」にしろ,小池東京都知事の「5つの小(こ)」にしろ,問題の大きさに比べて,ちんまりした話だ。

 

 昨日は田村厚生労働相が,飲食用のフェースシールドなるものの使い方をテレビカメラの前で実演していた。政治家たちはなにかメッセージを発しているつもりなのだろうが,医療の専門家たちの危機感とは隔たりがある。

 

 東京都医師会が緊急記者会見で,「Go To トラベルの一時中断を」と求めていた。いまのまま放っておくと,必らず医療崩壊につながるという。経済との両立というと聞こえはいいが,感染防止の努力を Go To が打ち消しているのが現状か。ここで事業を見直せば,よほど意味のあるメッセージになる。

 

 政治家たちが会食指南に終始するなら,この人たちに任せていて大丈夫だろうかと……あくびではなく,ため息が出る。 

〔本文・記事に戻る→〕 官邸幹部らはいまの感染状況を「欧米の状況に比べても日本はまだ大丈夫。医療体制にも余裕はある。状況は想定内だ」とみる。日本医師会が観光支援策「Go To トラベル」を「感染者急増のきっかけ」と〔11月〕18日に指摘しても,加藤勝信官房長官は「感染防止策によって旅行による感染リスクは低減できる」と主張。加藤氏は19日の記者会見でも「考え方になんらの変更もない」とした。

 補注)この加藤勝信官房長官も支離滅裂「発言」が多い。ご飯論法の使い手(迷手)らしく,問題の焦点を分かりにくくする話法しかできていない。この種の官房長官は要らない。交替を要する。

 ただ,政府の対策には苦しさものぞく。政府は人の往来などを促す方針を続ける一方で,都道府県知事には飲食店への営業時間短縮要請などを検討するよう求めた。これを後押しするための「協力金」の原資も500億円用意。トラベルを始め,Go To キャンペーンを使うかどうかは「国民のみなさんの判断だ」(西村康稔経済再生相)との発言も出ている。

 補注1)この西村康稔経済再生大臣は,コロナ禍のさきゆき:見通しについて,数日前「神のみぞしる」といったり,ここでの発言のように「トラベルを始め,Go To キャンペーンを使うかどうか」といったりで,要は「国民のみなさんの判断」に任せるなどと,政府側の態度としては完全に責任放棄,いいかえれば,ここまでひどくタワケタ対応を恥ずかしげもなく,明示していた。この人,いったいどの国のどの担当大臣じゃ,かと突っこみを入れる必要がある。

 補注2)当然のこと,「西村経済再生相のツイッター『神が救ってくれるんじゃ?』と総ツッコミ状態」『YAHOO!JAPAN ニュース』2020/11/20(金) 22:08 配信,https://news.yahoo.co.jp/articles/46a1bb35773ad46db19ce74ff28352b2c49c71be(元記事は『デイリー』)だと非難されていた。まともな内閣の時期であれば,この一言で西村は大臣を首になっている。

 国民の「自己防衛」頼みで,どこまで感染拡大を抑えられるのか。今後の感染状況の推移について19日夜の会見で問われた西村氏は,分科会の尾身茂会長の考えを引用しつつ「どうなるかは神のみぞしる」。立憲民主党幹部は,首相みずら求めたのが「静かなマスク会食」にとどまったことをこう批判した。「こういうのを弥縫策という」。(引用終わり)

 そうである,いまの政府が新型コロナウイルス感染拡大問題に立ち向かいみせている対策(「やってる感」)は,どこまでも弥縫策でしかありえない。12月下旬には冬至を迎え,2021年1月から2月上旬にかけて本格的な寒さが来る。だが,そのとき,日本列島はどのようなコロナ禍の拡散状態になるのか心配である。なにせ,当事者能力を欠落させた現政権のことである。なにが起きても不思議ではないのが,菅 義偉政権の危機管理能力「低水準ぶり」である。

 ここで,記述を当初の話題に戻したい。要は「私物化・死物化・負の遺産化」の恩恵を最大限に享受できているのが,櫻井よしこが立場であった。櫻井は,元朝日新聞社記者・植村 隆から「記事捏造」の件で提訴されていた。だが,安倍晋三など政権側の庇護(つまり最高裁 ⇔ 裁判所全体)のおかげで,本来であったらよしこ側が完全に「大負けしていても,なんらおかしくなかった」裁判が,当初から勝利できていた。

 櫻井よしこは,以上の事実「ともかく自分が植村に完勝した」という点を踏まえて,自分のホームページはそれはもうすごい勢いで「自身の正当性」を高らかに叫んで(吠えて)いた。しかし,そうか,待てよ,よく吟味しなければなるまい。

 今回の裁判という「事件の性質」(民事か刑事か)に違いあれ,問題のあり方に注目して吟味したいのであれば,つぎのような,安倍晋三君の「ほかのオトモダチの存在(山口敬之)」にも関心をもたねばなるまい。櫻井と山口の両者にはもとより,アベとは親しいオトモダチだという「共通する事項」があった。

 山口敬之(やまぐち・のりゆき,1966年生まれ)の場合,伊藤詩織に対して起こした強制性交事件に対して,安倍晋三首相(当時)が介入を指示し,いったんは出ていた山口の逮捕を撤回させていた。これにまったく同じ種類の対応が実は,植村 隆が櫻井よしこらに対して起こした民事裁判にさいしても,裁判所の舞台の上で措置(演技)されていたと判断されても,なんらおかしくない。

 植村 隆が櫻井よしこなどを相手取って民事訴訟をおこした裁判は,札幌地裁から札幌高裁とつづけて植村の敗訴に終わった。その時点を迎えてだが,本ブログ筆者(だけでないと思うが)は,最高裁でも植村が逆転勝訴することは,99.99%ありえないと感じていた。

 したがって,冒頭で引用した2020年11月20日朝日新聞』朝刊の記事が,植村の最高裁への上訴が退けられた結果を報じていたのは,予測どおりであった。このあたりをめぐる事情が,つぎの ④ ⑤ に参照する記事で説明されている。札幌高裁から札幌地裁へと日付(時間:経過の順番)では,逆順に紹介する。


 「植村 隆・元『朝日』記者裁判,櫻井よしこ氏免責は政権『忖度』か」週刊金曜日』佐藤和雄・2020年2月28日 5:35PM,http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2020/02/28/antena-659/〔~ 2/〕から

  ★ 札幌高裁の判断-忖度裁判のつづき- ★

 元『朝日新聞』記者の植村 隆氏(韓国カトリック大学校客員教授,『週刊金曜日』発行人)が,国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこ氏と櫻井氏のコラムを掲載した出版社3社を訴えた札幌訴訟の控訴審判決が〔2020年〕2月6日にあった。

 札幌高裁(冨田一彦裁判長)は,櫻井氏が植村氏の記事を「捏造」と表現するさいに,植村氏本人に取材して事実関係を確認する必要はなかったとの判断を示し,植村氏の請求を棄却した。これまでの最高裁判例から大きく外れる異例の判断だ。櫻井氏のやりかたが司法で追認されれば,当事者に確認しないままのフェイクニュースが社会に氾濫するのではないか。

 植村氏は1991年,韓国人元「慰安婦」の金 学順さんの証言を取材。記事は同年8月と12月,『朝日新聞』に掲載された。この記事に対し櫻井氏は2014年に月刊誌『WiLL』4月号で「植村記者が真実を隠して捏造記事を報じた」と指摘。『週刊新潮』『週刊ダイヤモンド』誌上でも植村氏の記事を「捏造」と断定する論文やコラムを書いた。

 名誉毀損訴訟では,記事などによって誰かの名誉を傷つけたとしても,記事の重要な部分の事実関係が「真実」という証明ができたり,「真実と信じる」に相当の理由があったりすれば,免責される。

 一審の札幌地裁では,櫻井氏の論文などが植村氏の社会的評価を「低下させた」と認めた。その一方,櫻井氏が他の新聞記事や論文などから,植村氏が〈金 学順さんが人身売買されて慰安婦となったと知りながら,女子挺身隊と結びつけた〉という捏造記事を書いた,と信じたことには「相当の理由がある」などと結論づけた。

 このため控訴審で最大の争点となったのは,櫻井氏が植村氏が捏造記事を書いたのが真実と信じたのに相当の理由があったかどうかだった。これまでの最高裁判例では「確実な資料や根拠に基づき真実だと信じることが必要」とされてきたからだ。

 植村氏が捏造記事を書いたと信じるのであれば,事実関係の確認など本人へ取材を申しこむのが,ジャーナリズムの世界ではある意味「ルール」のようなものだ。

 【判決文「単なる慰安婦」とは】

 しかし,今回の判決は,金 学順さんの記者会見を報じた韓国紙『ハンギョレ』,訴状,月刊誌の記事の3点だけで十分であり,「あらためて取材や調査をすべきであったとはいえない」との判断を示した。さらに「推論の基礎となる資料が十分あると評価できるから,事実確認のため,本人への取材を経なければ(真実)相当性がみとめられないとはいえない」と述べた。

 植村氏は記者会見で「取材もしないで,嘘の報道ができることになる。フェイクニュースを野放しにすることになる」と指摘した。

【参考記事】

 判決文のなかで異様さが目立つのは,1991年8月の植村氏の記事についてのくだりだ。「日本の戦争責任に関わる報道として価値が高い反面,単なる慰安婦が名乗りでたに過ぎないというのではあれば,報道価値が半減する」。だから櫻井氏が,「植村氏が女子挺身隊と慰安婦を関連づけた」と信じたことには相当性がある,というのだ。

 「単なる慰安婦」とはなんだろうか。経緯はさまざまだろうが,多くの女性たちが自分の意思に反して「慰安婦」にさせられ,尊厳を踏みにじられた。もはやこれは世界の常識である。そうした犠牲者に対し,「単なる慰安婦」と呼ぶ感覚は,司法への信頼を大きく損なうだろう。

 朝日新聞』の「首相動静」で調べると櫻井氏は頻繁に安倍晋三首相にインタビューや会食をしている。たとえば〔2020年〕1月17日,日本料理店「下関春帆楼 東京店」で葛西敬之JR東海名誉会長らとともに。

 首相とこれほど近い櫻井氏である。札幌高裁の冨田裁判長は,トラの尾を踏むことを恐れたのだろうか。「忖度」はあったのか。「政権への忖度はあった」と書く場合には,ご本人への取材申しこみは必須だと思うが,この判決文を読むと「しなくてもいいよ」といわれているような気がする(佐藤和雄・ジャーナリスト,2020年2月14日号)

 最後のことばを佐藤和雄は皮肉をこめて書いている。ともかく,櫻井よしこ安倍晋三とは非常に親しい間柄にある。いわゆる,彼ら・彼女流儀に「オトモダチ同士」である。安倍の親友になると,必要に応じていろいろと,権力側から絶大な恩恵が与えられてきた。まるで独裁政権側の権力者の庇護において,特定の気に入られたヒトたちだけが,あれこれと特権を与えられている。その種のいかにも “素敵な政治環境” が櫻井よしこたちにかぎっては保障されているのである。

 しかし,その反極側に立たされて,櫻井よしこらを提訴し,裁判を戦ってきたのが植村 隆であった。さて,ジャーナリストの佐藤和雄はつぎのようにも解説していた。もう一度抜き書きしておく。

 札幌高裁(冨田一彦裁判長)は,櫻井氏が植村氏の記事を「捏造」と表現するさいに,植村氏本人に取材して事実関係を確認する必要はなかったとの判断を示し,植村氏の請求を棄却した。これまでの最高裁判例から大きく外れる異例の判断だ。櫻井氏のやりかたが司法で追認されれば,当事者に確認しないままのフェイクニュースが社会に氾濫するのではないか。

 冒頭に引用した『朝日新聞』2020年11月20日の関連記事は,最高裁が高裁につづいて「これまでの最高裁判例から大きく外れる異例の判断」を下し,「櫻井氏のやりかたが司法で追認されれば,当事者に確認しないままのフェイクニュースが社会に氾濫するのではないか」という危険性を認めていた。

 こうなったとすれば,国民たち・主権者側は裁判所など,いっさい信頼どころか信用すらできなくなった。しかも,ことが「従軍慰安婦問題に限定される」という事由はないゆえ,用心が必要である。

 

 「〈弁護士コラム column〉植村訴訟 / 植村氏や『朝日』に取材せず批判した櫻井氏」『北海道合同法律事務所』小野寺 信勝,2018年12月11日,http://www.hg-law.jp/column/constitution/entry-3052.html

  ★ 札幌地裁の判断-忖度裁判のはじまり- ★

 弁護士の小野寺信勝です。「植村訴訟」の判決は,不当判決というほかありません。しかし,札幌地裁は「捏造」が真実とは認定しませんでした。その判決のポイントについて,『週刊金曜日』(2018年11月23日・1210号)に掲載した解説を全文ご紹介いたします。

 『櫻井よしこは氏はなぜ免責されたのか。不当判決というほかない』

 〔2018年〕11月9日,元『朝日新聞』記者の植村 隆氏が,自身の書いた元「慰安婦」の証言記事を「捏造」と繰り返し非難する櫻井よしこ氏及び『週刊新潮』,『週刊ダイヤモンド』,『WiLL』を発行する出版3社に損害賠償や謝罪広告等を求めた名誉毀損裁判で,札幌地裁(岡山忠広裁判長)は植村氏の請求をすべて棄却したのだ。

 櫻井氏が植村氏による「慰安婦」報道の「捏造」を信じてもやむをえないことが理由であった。植村氏は1991年に元慰安婦である金学順氏の証言を記事にした。櫻井氏はこの記事が「捏造」であると攻撃してきた。櫻井氏の言説の一部を紹介する。

 「過去,現在,未来にわたって日本国と日本人の名誉を著しく傷付ける彼らの宣伝はしかし,日本人による『従軍慰安婦』捏造記事がそもそもの出発点になっている」「植村隆氏の署名入り記事である」(雑誌『WiLL』2014年4月号)。

 

 「植村氏は金氏が女子挺身隊として連行された女性たちの生き残りの1人だと書いた。1人の女性の人生話として書いたこの記事は挺身隊と慰安婦は同じだったか否かという一般論次元の問題ではなく,明確な捏造記事である」(2014年10月23日『週刊新潮』)。

 ところで,なぜ櫻井氏は植村氏の記事を「捏造」と断定するのか。その出発点となったのが1991年8月11日付朝日新聞大阪版の以下の記事である。

 

 「思い出すと今も涙  元朝鮮人従軍慰安婦  戦後半世紀  重い口開く」【ソウル10日=植村 隆】


 日中戦争や第二次大戦のさい,『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行され,日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」のうち,1人がソウル市内に生存していることがわかり「韓国挺身隊問題対策協議会」(尹 貞玉・共同代表,16団体約30万人)が聞き取り作業を始めた。」(1991年8月11日『朝日新聞』大阪版社会面1面)。

 これが「捏造」批判の対象となっている記事のひとつである。その主な論拠は,勤労動員する「女子挺身隊」と無関係の日本軍「慰安婦」とを意図的に混同させて日本が強制連行したかのような記事にしたというものである。また,植村氏の妻が韓国の太平洋戦争犠牲者遺族者の常任理事の娘であることがその動機とされた。櫻井氏はこの論拠にくわえて,金 学順氏は継父に人身売買により慰安婦にさせられたが,これを報じなかったとして,植村氏を攻撃しつづけた。

 補注)ここで再度となるが,櫻井よしこが1994年の時点で,従軍慰安婦問題に対しては,こういっていた事実をあげておく。

 「日本人全体が目をそらし続けてきた日本現代史の汚点について,事実を明らかにしていくための第1歩として評価されるべきであり,この努力は今後も継続されていくべきであろう」。

 註記)『櫻井よしこが取材する』1994年,27頁。

 1)社会的評価低下させた

 しかしながら,植村氏が記事を書いた当時,韓国では「挺身隊」という言葉は「慰安婦」を意味し,日本のメディアもそれを踏襲していた。『朝日新聞』だけでなく,『読売新聞』,『産経新聞』などの他紙も「慰安婦」のことを「挺身隊」と表記していたのである。

 過去の「慰安婦」報道を調べれば植村批判に根拠がないことが分かるはずであるし,せいぜい言葉遣いという枝葉の問題に過ぎない。また,親族関係を以て捏造の動機とすることは邪推というほかない。

 ところで,名誉毀損裁判では,

  (1) ある表現が対象者の社会的評価を低下させたか,

  (2) 社会的評価を低下させたとしても表現者を免責すべき事情があるか,

という2段階の枠組で判断される。そして,(2) は,表現が真実であるか,真実と信じてもやむをえない場合に免責されることになる。前者を真実性,後者を真実相当性という。

 なお,真実相当性は正確には「真実と信じるにつき,相当の理由がある」と表現されるが,わかりやすさの点から「信じてもやむをえない」として紹介している。また,ほか他にも公共性,目的の公益性が必要だがここでは割愛する。

 判決は,櫻井氏が植村氏の「社会的評価を低下させ」たことは認定した。そして,植村氏が「金 学順氏が継父によって人身売買され慰安婦にさせられた」ことは「真実であると認めることは困難である」と認定した。つまり,裁判所は植村氏の「慰安婦」報道の「捏造」が真実とは認定しなかった。ここまでは弁護団の主張が認定された。

 ところが,櫻井氏は,植村氏が金 学順氏が継父により人身売買されて「慰安婦」になった経緯をしりながら報じなかったと信じてもやむをえないと判断した。

 2) 理由を示さず肯定

 裁判所がその根拠にした主な証拠はつぎの3つである。『ハンギョレ新聞』1991年8月15日付,1991年12月6日に金 学順氏が日本政府に戦後補償を求めた訴状,『月刊宝石』1992年2月号に掲載された臼杵敬子氏の論文「もう一つの太平洋戦争」である。

 しかし,裁判を進めるなかで櫻井氏はこれらを誤引用し,恣意的評価をくわえていた事ことが明らかになった。

 櫻井氏は,金 学順氏の訴状を根拠に植村氏の「慰安婦」報道を非難してきた。2014年3月3日の産経新聞に「真実ゆがめる朝日報道」と題したコラムを発表し,「この女性,金 学順氏はのちに東京地裁に訴えを起こし,訴状で,14歳で継父に40円で売られ,3年後,17歳のとき再び継父に売られたなどと書いている」にもかかわらず,「植村氏は彼女が人身売買の犠牲者であるという重要な点を報じ」ていないと非難した。

 しかし,訴状には櫻井氏が引用する記載はいっさいない。彼女は書かれていない事実を引用して,植村氏による「慰安婦」報道の捏造を強調したのである。

 また,『ハンギョレ新聞』には「14歳の時に平壌にあった検番に売られていった」とあり,日本軍に売られたという記載はない。記事には続きがある。「私を連れていった義父も当時,日本軍人にカネももらえず武力で私をそのまま奪われたようでした」。つまり,強制連行の被害者として報じていた。

 前記,臼杵論文に至っては,金 学順氏が日本軍人に売られた記載がないだけでなく,より詳細に強制連行の場面を報じているのである。「養父は将校たちに刀で脅され,土下座させられたあと,どこかに連れ去られてしまったのです」「私とエミ子は軍用トラックで,ついたところが『北支カッカ県テッペキチン』だった」「将校が私を小さな部屋に連れて行き,服を脱げと命令したのです」。

 これらの証拠はどこにも,金 学順氏が人身売買により「慰安婦」になったとは書かれていない。そればかりか櫻井氏により恣意的に評価されてきたものばかりだ。ところが,裁判所は理由を示すことなく,これらの証拠の援用に正確性が欠ける点があっても相当性を欠くとはいえないと真実相当性を肯定してしまった。

 また,植村氏が慰安婦と無関係な女子挺身隊とを結びつけて金 学順氏を強制連行の被害者として報じたことについては,前記のとおり日本国内の報道で慰安婦を意味するものとして「女子挺身隊」という用語が用いられていたことは問題でないとし,真実相当性を認めてしまった。

 3) 杜撰な調査を無批判に

 くわえて,植村氏の妻が太平洋戦争犠牲者遺族会の常任理事の娘であり,金 学順氏を含む同遺族会会員が1991年に日本政府を提訴したとして,植村氏が敢えて事実と異なる記事を執筆したと信じたことに相当の理由があるとした。

 いうまでもなく記事の捏造は記者の重大な職業倫理違反であり,自殺行為である。それほど記者にとって捏造は重い行為である。それを姻族関係を主な理由として,敢えて事実と異なる記事を書いたと信じてもやむをえないと判断することは論理の飛躍である。

 本来,真実相当性が肯定されるためには,「信頼するに足りる合理的な資料に基づき,相当な根拠があると判断するに足りる客観的状況」の存在が必要である。また,ここでいう合理的資料は,1991年当時ではなく,櫻井氏がコラムなどを執筆した2014年当時の合理的資料により判断されなければならない。

 櫻井氏は1991年当時の資料だけを,かつ歪曲した評価をくわえて,植村捏造説を喧伝した。さらに,なにより記事執筆にあたって植村氏はもとより,金 学順氏を始めとする元慰安婦朝日新聞等にいっさいの取材をおこなっていない。なにより彼女は言論に責任を負うべきジャーナリストを自称している。このような杜撰な事実調査を無批判に受け入れ櫻井氏を免責させることは承服できない。弁護団はこの不当判決に控訴して,植村氏の名誉回復のために徹底的に闘う。(引用終わり)

 その間,植村 隆が提訴した裁判は,2015年から2020年まで足かけ6年の歳月が過ぎたが,日本の裁判所は『安倍晋三の親友である櫻井よしこ』を『勝たせるための裁判』を,地裁⇒高裁⇒最高裁と順繰りにおこなってきた

 ところで安倍晋三は,自身のことを「立法府の長」だとなんども間違っていいはっただけでなく,最高裁の判事にまで “自分のオトモダチのオトモダチ” を押しこんでいた。安倍による7年と8カ月の長期政権は,日本の三権分立の大原則を蚕食し,腐食させてきた。それも意図的におこなってきた。

 植村 隆が櫻井よしこなどを提訴し,敗訴に終わった背景に,いったいなに仕こまれていたかは,もういうまでもなく明瞭になっている。植村は,国家権力側によって事前に陰謀された “裁判所の指揮・操作” によって,暴力的に,その被害者の1人にさせられた。結局,いまの日本は『りっぱな後進国発展途上国)』になりさがっている。日本のこれから未来にとって,前首相安倍晋三と現首相菅 義偉とが,どのような位置を占めるかは,一目瞭然になっている。

 まさしくいま,コロナ禍が日本の現状,この国家の「奥底に控える本質」を暴露している最中である。

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