日本の軍隊(自衛隊3軍)の兵員(要員)調達不足と少子化問題,軍隊は暴力装置であり,そこに属する兵士たちはその機能の効率的な発揮のために存在する

 日本社会はいまや少子化の時代に当面している,防衛省自衛隊3軍は兵員不足にいかに対応していくか重要な課題


  要点・1 いまの自衛隊においてだが,兵士(一兵卒)の命が「昔,一銭五厘だった時代」と,完全に異なっているといえるか

  要点・2 自衛隊内で発生しているイジメ問題は,旧陸軍内務班のそれに似ているのか

 

 「〈政界 Zoom〉『日本の守り』少子化の影,自衛隊,担い手不足深刻」日本経済新聞』2020年11月20日夕刊2面「ニュースぷらす」

 少子化が日本の守りに影を落としつつある。陸海空の自衛隊で任期制自衛官の採用は2019年度まで6年連続で計画を下回り,担い手不足が深刻だ。ミサイル防衛の要となるイージス艦を増備しにくくなるなど部隊の整備や運用にも影響が出てきた。

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 〔2020年〕10月30日,衛藤征士郎防衛庁長官自民党の国防議員連盟が国会内で岸 信夫防衛相に新型イージス艦を2隻増備するよう求めた。中国や北朝鮮の軍事的脅威に備えるため「要員と予算が必要だ。大臣のリーダーシップでお願いしたい」と訴えた。

 イージス艦弾道ミサイルを打ち落とす能力を備える防御力の高い護衛艦である。計画を断念した地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として浮上するものの,運用には1隻300人が必要となる。

 海自は人員不足を理由に増備に後ろ向きで,みかねた議連が予算と合わせて増員も要請した。自民党内には「人手不足のせいで抑止力を強化できなくなりつつある」との危機感がある。

 自衛隊の採用は幹部を養成する「幹部候補生」,部隊の中核となる「一般曹候補生」,任期制の「自衛官候補生」などに分かれる。このうち採用時の人数がもっとも多いのは高卒者が中心で任期2~3年の「自衛官候補生」だ。

 自衛官候補生の採用者数は2014年度以降,6年連続で計画を達成していない。2019年度の採用数は海自と空自が計画を1割ほど下回った。2018年度には陸海空全体の採用達成率が7割にとどまった。

 50歳代の定年まで働く「一般曹候補生」と異なり,任期満了後に勤務継続か民間などへの就職を選べる自衛官候補生は民間企業とも競合する。「アベノミクス」による景気拡大が続き,雇用を増やした民間に人材が流れた面があるものの,採用難の根源的な問題は少子化にある。

 自衛官の採用対象年齢は2018年まで18~26歳だった。この人口は1994年の1743万人をピークに減少に転じ,2019年は1133万人と3割以上減った。自衛隊の応募者数は8万人程度で1990年代のピーク時から半減した。

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 2018年から採用対象年齢の上限を32歳に引き上げても,少子化はさらに加速する。2018年に1903万人いる18~32歳は国立社会保障・人口問題研究所の予測では2028年に1750万人,2038年に1563万人に減る。10年ごとに200万人少なくなる。

 人口が減っても守るべき国土は狭くならない。むしろ自衛隊の仕事は増えつぐけている。沖縄県尖閣諸島領海侵入を繰り返す中国公船の背後には軍艦が控えていることが多い。中国の海洋進出が活発になるにつれ,万が一に備えて周辺海域に張り付かせる自衛艦を増やさざるをえない。

 北朝鮮をめぐってはミサイル発射への警戒や,国連決議で輸入を制限する原油や石炭の洋上取引「瀬取り」の監視にあたる。2020年からは中東海域での民間船舶の安全確保のために護衛艦を派遣した。

 新たな任務の多くが関係する海自の人手不足はとくに深刻だ。2018年度の採用達成率は6割に満たず,陸自や空自と比べてもっとも低かった。背景には海の上での生活が続く職場環境のきびしさがある。

 10月に中東派遣から帰港した護衛艦の乗員は新型コロナウイルスの影響で一時上陸ができず乗員は5カ月も艦内での生活を続けた。海自はメールなどを使えるよう護衛艦内の通信環境の改善を進めており「海の仕事の魅力を伝えて人材を集めたい」と語る。

 領空侵犯を監視する空自も似た悩みがある。日本列島の外側を囲むように置くレーダーサイトは都市部から遠いため若年層が嫌がる。

 阪大准教授を経て2015年まで在日米海兵隊の政務外交部次長を務めたロバート・エルドリッヂ氏は「グローバル化で若い優秀な人材は国内企業だけでなく海外企業にも引っ張られるようになった。自衛隊は以前にも増して人が集まりにくくなる」と話す。

 「インターンシップ(就業体験)などで若者に自衛隊への関心をもってもらう施策が必要だ」と指摘する。(引用終わり)

 補注1)自衛隊に関してはもちろん,ネット空間上にはいろいろな情報が溢れている。先日から関連する報道があったが,ここでは,まともに事実をとりあげ批評もしていたネット記事のうち,つぎの ② の議論を紹介しておく。

 補注2)「自衛隊員の給与概算」はこうである。

   兵士(士)の年収は約300万円~320万円
   下士官(曹)の年収は約300万円~640万円
   尉官の年収は約352万円~720万円
   佐官の年収は約528万円~960万円
   将官の年収は約960万円~3200万円

 

 「レーダー照射問題の強硬姿勢の裏で,海上自衛隊が「イジメ自殺」を過労死として隠蔽しようとしていた!」『リテラ』2018.12.31 09:58,https://lite-ra.com/2018/12/post-4463.html

 a) 日韓両国にとって大きな火種となったレーダー照射問題。日本の防衛省自衛隊は安倍官邸に押されるかたちで韓国に対して「事実をごまかしている」と強く批判しているが,その自衛隊が一方で,自分たちの内部の不祥事をごまかし,なかったことにしようとしていたことが判明した。

 隊内のパワハラ・イジメで幹部自衛官が自殺していたことを隠蔽し,過労死として処理しようとしていたというのだ。自殺したのは西森文彦3等海尉(32歳)。今〔2018〕年9月,神奈川県横須賀基地の補給艦「ときわ」の司令部事務室で首をつっていた。

 これは,ジャーナリストの寺澤 有氏のスクープによって判明したものだ。これまでも自衛隊の実態を取材してきた寺澤氏だが,12月12日,Kindle で『海上自衛隊が幹部間のイジメ自殺を隠蔽』を発表,そこで西森3等海尉の自殺と,その背景に艦長や上司のパワハライジメがあったことを報じた。

 「遺書はありませんでしたが,乗員の多くが,高木征教艦長(2等海佐),中永浩幸副長(同)らによる 西森3等海尉へのイジメを目撃しています。『バカ』『辞めろ』『死ね』などと暴言を吐いたり,処理しきれないほど大量の課題を与えたり,艦内から陸上へ出ることを禁止したりと,イジメは執拗にくりかえされたそうです」(防衛省関係者のコメント,同書より)。

 しかも,問題なのは,海自がこの自殺を「過労死」として処理,隠蔽しようとしていたことだ。そのため,複数の「ときわ」乗員が公益通報公益通報者保護法に基づく内部告発)をおこない,11月30日付で全乗員に「パワハラに関する実態調査」を実施せざるをえなくなった。

 詳細は『海上自衛隊が幹部間のイジメ自殺を隠蔽』(Kindle版)をぜひ読んでほしいが,その結果,寺澤氏が報じたように「艦長が『休むな』と指示」「上官が『死ね』『消えろ』などと発言」「自殺前夜にバインダーを投げつけた」「別の上官が家に帰らせないと指導」「艦長が他の乗員を殴ったり,ノートを投げつけたりした」などのパワハライジメが明らかになった。

 海自は〔2018年〕12月18日,ようやく事故調査委員会を設置し,一部の新聞もパワハラ自殺だったことを報道。12月27日には高木艦長が更迭される事態となったが,公益通報と寺澤氏のスクープがなければ,自殺は過労死として処理され,イジメやパワハラは完全に隠蔽されてしまっただろう。

 しかも,だ。防衛省はこの期に及んで,まだ責任逃れをしようとしている。いじめた直接の加害者である高木艦長は更迭処分にしたが,隠蔽についてはいっさい説明しようとせず,隠蔽にかかわったとされる幹部の存在も公表していないのだ。

 さらに,事件をスクープした寺澤氏が〔12月〕25日におこなわれた岩屋 毅防衛相の記者会見はじめ,会見への出席を要求したところ,防衛省は「フリーランスの庁舎への入構を認めない」という理由で,会見出席を阻止しつづけている。

 これは,今回の事件をイジメ自殺だけにすませ,「防衛省の隠蔽」の追及を封じこめようというものだろう。まったく呆れるほかはないが,自衛隊パワハライジメと自殺,そして隠蔽は今回に始まったものではない。

 b) 警察が現場に来る前に遺体処理 … 自殺やいじめの隠蔽が横行する自衛隊

 なかでももっとも有名なのが2004年に起こった海自「たちかぜ」事件だろう。護衛艦「たちかぜ」の乗員(当時24歳)が電車に飛びこみ自殺した。遺書には上司を名指しで「許さねえ」と記されており,海上自衛隊横須賀地方総監部が内部調査をおこなったところ,「虐待」が判明する。虐待をおこなっていたのが艦歴2年の古参,2等海曹だった。2曹は玩具のガス銃や電気銃で後輩を打ったり,殴る蹴る,恐喝するなどの犯罪行為を繰り返していたという。

 補注)先日,テレビに出ていた自衛隊ヨイショ番組に,陸上自衛隊の「女性のある陸曹」の「表情や態度,立ち振る舞い」を垣間見たとき,旧・大日本帝国陸軍の内務班的な雰囲気を感じさせてくれた。旧軍の内務班における壮絶なイジメは,いくたもの自死事件を発生させてきたが,その実相が明らかになることはない。関連して問題になる隠蔽などの行為(対応)は,当然の出来事(事件ではなく)であるに過ぎない。

 さすが21世紀の現在になっているとなれば,同じ軍隊でも自衛隊のなかでイジメ(肉体的および精神的な虐待行為)が発生している事実が,敗戦前における旧軍におけるようには始末できずに,世間側に対して公表せざるをえない場合も出てきた。企業における過労死の問題も重大であるが,軍内部(自衛隊内)におけるパワハラ行為は,本来から特殊な制度である軍隊組織におけるそれであるゆえ,問題そのものが内部に隠蔽されやすい。

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 上官といってもピンキリであるが,兵卒層に対してはすぐ上の上官に相当する陸曹・海曹・空曹あたりからイジメやパワハラが発生しやすいことは,みやすい道理である。旧陸軍であれば2年兵が初年兵イジメを,自分たちが以前やられていたように,こんどは攻守ところを変えて(相手を変えて),順繰りにやり返すのは,兵舎内の日常的な風景であった。

〔記事に戻る→〕 また2014年9月1日には同じく海自の横須賀護衛艦乗務員が,上司の1等海曹からペンライトで頭を殴られたり,館内の出入り口の扉で手を挟まれたり,バケツをもって立たせられたりするなどのイジメやパワハラを受け,自殺を遂げた。しかも自殺の2日前,隊員は上司のイジメを理由に配置転換を求め,面談をおこなうなどの訴えも起こしていた。自衛隊もイジメを把握していたが,それを防ぐことができなかったのだ。

 これらの自殺はいちおう,イジメが原因であることが明らかになったが,表沙汰になっていないものも山ほどある。自衛隊の内部に詳しいジャーナリスト三宅勝久氏による『自衛隊員が泣いている』花伝社,2013年には多くの自衛隊員の自殺事例とそれを招いた自衛隊の “暗部” ,そして隠蔽工作が詳細に描かれている。

 たとえば,2012年の航空自衛隊入間基地で若い隊員が4階建ての隊舎からの転落死した事件だ。

 〈調べていくと不審な事実が浮かんできた。「自殺」と判断したのは狭山警察だが,同署が現場にいったのは発見から4時間後。自衛隊から警察に連絡はなく,病院からの通報で警察は事件をしった。警察が来るまでは警務隊が捜査していたとされるが,じつは警務隊到着前にすでに現場が片付けられていたらしい〉(『自衛隊員が泣いている』より)。

 転落という不審死にもかかわらず,現場保存がされていなかったのだ。それも身内の自衛隊の手で。

 まだある。同書には2007年5月14日,北海道名寄市陸上自衛隊で25歳の隊員・植田大助さんが首つり自殺した事件も紹介されている。この自殺も20万円がはいった金庫を盗んだという濡れ衣を上司に着せられたことに対する “抗議の自殺” だった可能性が高いという。植田さんは部隊の金庫当番を命じられていた。「盗難事件」はそれからわずか20日後のことだ。遺書には「金庫を盗んでいない」「もう限界です」「犯人をみつけてくだいさい」と記されていた。生前の植田さんの話や,上司である中隊長の言動に不審を抱いた家族はこう推測している。

 「何ものかによって罠にはめられたのではないか」

 「一連の不自然な行動や言動をみていると中隊長が犯人なんじゃないかとすら思えてくるんです」

 なんらかの理由から植田さんが中隊長に目をつけられ,そのため濡れ衣を着せられた,遺族はそう考えたのだ。

 c) 自衛隊が抱える構造的問題,安倍政権でもっと自殺者が!

 同書では防衛省が公開した自衛隊員の自殺死亡者数の一覧が掲載されている。それによれば,1994年から2003年にかけて,年間50人~80人ほどで推移してきた自殺者数が,2004年から2006年までは100人となり,その後80人台となっている。

 〈自衛隊の自殺率は10万人あたり35人~40人で,省庁のなかで突出して高い〉(同書より)。

 そして自衛隊員の自殺には必らず組織ぐるみの隠蔽がつきまとう。前述の「たちかぜ」事件ではイジメをおこなっていた2曹は懲戒解雇され,刑事事件でも立件されたが,自衛隊は自殺との因果関係さえ認めなかった。そのため両親が真相を求め国を提訴。だが自衛隊は自殺に関する内部アンケートを隠蔽するなどして,ようやく最高裁で国の責任が認められたのは2014年4月になってからだった。

 要するに,自衛隊という組織は裏でこういう事態を頻発させていたわけだ。そして,今回の「ときわ」でのイジメ自殺とその隠蔽。これはもはや,構造的な問題といっていいだろう。

 補注)繰り返し的な指摘になるが,旧大日本帝国陸海軍においては,このようなイジメ(や虐待)の行為が表面に出て問題になるなどといったことは,ほとんどありえなかった。しかし,いまの防衛省自衛隊3軍では必らずしもそうはいかない。ただし,昔でも現在でも “軍隊であるという共通性” からして,事件が発生していても内部だけで処理・隠蔽して済ましておき,なにもなかった事案にできる可能性が高いことは,戦前も戦後も同様である。

〔記事に戻る→〕 実際,建前上は軍隊ではないとされる自衛隊だが,その体質はむしろ悪名高き旧日本軍のそれを受けついでいるといわれてきた。世界の軍隊のなかでも桁外れに過酷といわれていた暴力支配。満州関東軍が国民を見捨ていち早く逃亡したことに象徴されるような,上層部の無責任体質,自分たちの戦争犯罪の証拠をかたっぱしから焼き捨てた隠蔽体質。これらが,自衛隊のイジメ自殺や隠蔽を生んでいる部分があるのではないか。

 しかも,こうした状況は安倍政権による安保法制成立で,今後,海外派兵など戦闘リスクを伴う任務が増大すれば,より拍車がかかることは確実だ。実際,『しんぶん赤旗』の調査によるとアフガニスタンイラクの両戦争に派兵された自衛官のなかで,自殺者が2014年3月末時点で少なくとも40人にものぼった。これは国民平均に比べ約3~16倍,自衛官全体と比べても約2~10倍だという。

 補注)戦争(戦場の現場),そしてこれに似た状況のなかに送りこまれる兵士たちが実際に体験してき思い出話については,旧日本軍兵士の体験に関するものだけでも,ユーチューブ動画でいくらでも視聴できる。2010年代になってからだが,すでに御年90歳前後を超えた旧日帝の兵士たち(生き残った帝国臣民たち)が語ってくれた体験は,まさしく想像を絶した “残酷物語”  “修羅・地獄絵” そのものである。

 ただし,戦場ではなにが起きていたのか,実際に死線をさまよわされた人にかぎって,その体験を語りたがらないものである。要は,実際に戦闘を体験してきた人びと,そして,自分のまわりで仲間たちが砲弾のための吹っ飛ぶ光景などを目の当たりにしてきた人びとにとって,戦争体験とは「生き地獄」へと送りこまれた人生の記憶になっていた。しゃべりたくないのは当然である。

〔記事に戻る→〕 防衛省は2016年,陸海空の幕僚監部服務室にパワハラホットラインを置くなどの再発防止策を打ち出した。しかし,こうした体質を温存させ,隠蔽を続けている限り,絶対にイジメや虐待,パワハラがなくなることはないだろう。

 〈自衛隊は,内部から変わる事の出来ない組織です〉

 先に紹介した『自衛隊員が泣いている』にはこんな一文が記されている。(引用終わり)

 以上は,2018年12月時点における記事の紹介であった。つぎは,それよりもさらに3年前に書かれた記事の紹介となる。名づけて「自衛隊残酷物語」?

 

  三宅勝久「『自衛隊はブラックでした』窃盗,強姦,脱走,自殺…就活失敗でやむなく入隊して知った “人間破壊工場” の実態」『My News Japan』22:51 05/07 2015,http://www.mynewsjapan.com/reports/2152

 私大新卒で企業への就職をめざしたがことごとく失敗し,海上自衛隊に入ったAさん(24歳)。犯罪や自殺がありふれた異常な世界だった。ストレスから精神がおかしくなりそうになって8ヶ月で退職した。若い人に対して「自衛隊はやめたほうがいい。どうしても入るのなら必ず逃げ場をつくっておけ。そうしないとストレスで死んでしまう」(大阪市内で)。

 内閣府の調査によれば自衛隊に対して好感をもつ国民は9割にのぼるという。だが, (…中略…) そこでみたのは想像を超す「ブラック」な世界だった。直接的な暴力こそなかったものの,狭い艦内で先輩から胸倉をつかまれてすごまれるなどの仕打ちを頻繁に受け,精神的に追いつめられた。

 窃盗や強姦,自殺といった事件がありふれる異常な環境。「このままでは精神が壊れてしまう。無職でもいい」と逃げだすように退職し,人間らしい暮らしを取り戻した。自衛隊にいこうとする若者や,自衛隊を美化する風潮に,Aさんは警鐘を鳴らす。

 以下の記述で【Digest】となる問題は,つぎのとおりだが,引用じたいは途中までの紹介とする。

 ◇ 「精神壊してまで働く意味って…」
 ◇   無所属プータローの恐怖
 ◇   強姦事件発生
 ◇   部隊配属,胸倉つかまれる毎日


 ◇   窃盗・盗撮――艦内のすさんだ環境
 ◇  みんな辞めたがっていた
 ◇   戦場にいくようになれば自殺激増まちがいなし
 ◇ 「精神壊してまで働く意味って…」

 「自衛隊をやめたいま思うのは,精神壊して働くくらいなら生活保護もらうほうがいいということです。ばかばかしいじゃないですか。首くくってまで仕事したいですかって…」。関西在住の男性Aさん(24歳)は,自衛隊で鍛えた大きな声でそう話す。

 私立大学の新卒で民間企業への就職をめざしたが失敗し,任期制の一般入隊枠で海上自衛隊に入った。とりあえず3年勤めて別の仕事をみつけるつもりだった。そこでみたのは,想像以上に「ブラック」な職場。高いストレスにさらされ,ふつうの人がおかしくなり,性犯罪,脱走,自殺がありふれている異常な世界だった。

 「ストレスがマッハで高くなる。逃げ場がないとおかしくなる。自衛隊にいって働いてみてそう思います。無意味な訓練 … いい方悪いですけど … 。確かに体力はつきます。でも精神力がつくかどうかは疑わしいですね。精神力がつくというより,ある程度のストレス耐性がつくと考えたほうが正しい。肥溜めにいたら火あぶりにされないかぎりは大丈夫だと思えてくる」。

 Aさんは8ヶ月ほど勤めたところで限界を感じ,辞めた。精神を病んでしまうよりは無職のほうがまだいい,そう考えた結果の判断である。もっとも,就職活動をしているときの心境はちがった。「なんでもいいから仕事をみつけて働かなきゃいけない。プータロ―になったしまう」と焦っていたという。

 杉並区にある自衛隊の募集事務所。大学や高校で募集活動をおこなっている。国民の自衛隊に対する印象は良いが,自衛官自身が感じている自衛隊はけっしてよいものではない。

 ◇-1 無所属プータローの恐怖

 大学ではコンピューターを学んだ。だがシステムエンジニア(SE)を仕事にするのは躊躇があった。労働環境が過酷で心身ともにボロボロになるとしったからだ。だから,最初はエスイー以外の仕事を探して民間企業への就職をめざした。 

  …(中略)…

 成績は悪くない。試験も合格点を取る。なぜ受からないのかAさんは理解できない。就活開始に出遅れたことだけは確かだった。時間がたつほど採用枠が狭くなり,受けるほうも疲れてきてモチベーションが下がる。そんな状態で就活を続けても無駄だとAさんは思いしる。

 このままでは就職浪人間違いなしだった。両親のもとにいるかぎりは経済的に困窮しているわけではない。しかし精神的には苦しかった。働かなければいけない,と焦った。文系一筋のAさんが自衛隊を選んだのは,こうした「無所属プータロ―」の恐怖からだったという。

 「憂鬱ですよ。人格否定されないからまだいいですけど。まわりは決まっていっているのに,俺どうすんのという状況で。焦りましたね本当に。一番こわかったのは無所属になる,所属なしになるということです。こわかったすよ。卒業して学生の肩書がはずれるのがこわかった。プータロ―になるのは不安でしたね」。

 2014年夏,海自横須賀教育隊所属の新隊員が海水浴場で強姦事件を起こして逮捕された。Aさんは舞鶴教育隊で「事件を起こすと(休暇返上で)全員教育隊に戻すぞ」と説教されたという。男性ばかりの閉ざされた世界での生活は,異性に対する感覚も異常になってくるという。

 ◇-2 強姦事件発生

 「任期制で海上自衛隊に入り,1任期の3年だけやって,あらためて転職活動しよう」。それが当初の計画だった。試験には受かり,海上自衛隊舞鶴教育隊に入った。ある程度の覚悟はしていた。確かに訓練はきつかった。

 「文科系だったので中学1年以来運動やっていないという感じでした。きつかったですよ。体鍛えるのこんなに大変だったのかと。腕立て伏せを延々とやったり。結構理不尽なことありました。腕立て伏せずっとやって,いっち,にい … とゆっくりやって,腰が落ちたら,おい腰おとすんじゃねえよ,みたいにケツたたかれたり」。

 それでも意外なことに,体力的なつらさはじきに慣れ,苦痛でなくなったという。腕立て伏せ,腹筋,3キロ走が5級,砲丸投げ走り幅跳び,懸垂が6級で総合6級。最低だったが合格した。

 それよりもつらかったのは,精神面だった。入って1週間は外出禁止。やがて土日休日は外出できるようになったが,舞鶴には遊ぶ場所などろくにない。パチンコか酒を飲むくらい。自由がないことがこれほどきついとは思わなかった。

 「楽しみがなさすぎて精神的に疲れてくる。外出してもなにもないので,土日やることっていったら携帯いじくるかトイレでオナニーするか。みんなそんなんですね。土曜日の朝がいちばんひどいんですが,腹にエロ本仕こんでトイレいって,こすって出してポイ。洋式便所がそれで朝混む」。

 集団で一種異様な精神状態にあったという。とうとう入隊3ヶ月ほどして事件が起きる。横須賀教育隊に所属する18歳の隊員が,休日に海水浴場で強姦事件を起こしたのだ。「おとなしい感じの人だったらしい.....」。(引用はここまで)

 最後のほうでは,なにやら旧日本軍の従軍慰安婦問題を思いおこさせうるような内容に近いものになっていたが,自衛隊という軍隊組織に関して,いわば,いまふうに問題である実相が具体的に指摘されている。

 そこで参考にまで,昔の旧陸軍「内務班」とは,どのような仕組・組織になっていたのか。ネット上にいくらでもある説明から,つぎのものを紹介しておく。

 旧日本陸軍における兵営内の起居の単位。中隊ごとに下士官班長として編制され,戦時編制のもとでは小隊となる。普通,20~30人の兵士が集団生活をおこなった。

 

 たてまえのうえでは,「死生苦楽ヲ共ニスル軍人ノ家庭」などとされていたが,実際には,「私的制裁」という名の,下士官陸上自衛隊ではいえば「陸曹」)や古参兵による無法な暴力が横行し,暴力と厳格な規律とを通じて兵士を軍隊内秩序に強制的に同化させる場となっていた。

 以上は,吉田 裕の解説。

 だいぶ以前,本ブログ筆者は,ロシアの兵舎内で古参兵が新兵に対して殴る・蹴るの暴行三昧の悪業がなされているという情報(動画ではなく画像)に接しえたことがあるが,軍隊組織は,そのような暴力行為じたいがもともと,どうしても発生しやすい特性・状況をもっている。

 徴兵制をなくしたアメリカは,軍隊に女性を正式に採用している。2013年までは女性兵士を戦闘任務から外していた。なかでも海兵隊は女性兵士を起用することに強く抵抗していた。しかし,2016年になると,当時のオバマ大統領はすべての米軍の職種を女性に解放して以来,2109年時点で,米軍の現役兵士約140万人のうち,女性が占める比率は15%になっていた。

 米軍内における男性兵士による女性に対するレイプ(強制性交)事件については,たとえばつぎの記事を紹介しておく。

    ★ 米軍内の性的暴行事件,38%の増加 2018年調査 ★
  =『CNN.co.jp』2019.05.05 Sun posted at 16:58 JSThttps://www.cnn.co.jp/usa/35136523.html

 

 ワシントン(CNN) 米国防総省は〔2019年5月〕5日までに,米軍4軍内で昨〔2018〕年発生した男女兵士に対する性的暴行事件が約38%の激増を示したとする調査報告書を公表した。被害者数は推定で2万500人。類似調査が直近で実施された2016年には1万4900人だった。報告書は被害の形態について体のまさぐり行為やレイプなどを含めている。

 

 17~24歳層の現役女性兵士の被害の発生率が上昇し,男性兵士の場合は2016年調査と比べ目立った変化はなかった。軍種別にみた場合,海兵隊での発生率が約11%ともっとも高かった。2016年には7%だった。海軍,陸軍と空軍の順序で続いたが,4軍での推定での発生率はいずれも増えていた。

 補注)前段の記述中には,「海兵隊は女性兵士を起用することに強く抵抗していた」という表現があったが,この海兵隊が性的暴行事件を一番高い比率で起こしていた。

 

 もっとも悪質な事例のうちの62%は加害者もしくは被害者が飲酒状態のなかで発生。被害者の圧倒的な多数が加害者と顔見しりの関係だった。

 補注)レイプ事件の相手(加害者)がその「被害者の圧倒的な多数が加害者と顔見しりの関係だった」という事実は,軍隊内だけでなく特徴であり,一般的なレイプ事件と共通する特徴である。

 

 性的暴行被害を示唆した兵士3人のうちの約1人は被害を軍内の上司に報告していた。この比率は2016年調査とほぼ同一だった。司令官などは加害者の兵士の3分の2に懲罰を科せる十分な証拠もえていたとした。

 

 米軍内での性的暴行事件の発生率は,3万4000人余の兵士がなんらかの被害を訴えた2006年以降,全般的には下落基調にあった。ただ,被害者の人数は増減を繰り返していた。

 

 今回の報告書公表に伴いシャナハン国防長官代行は〔2019年5月〕2日,同省内の幹部への書簡で,軍内の性的暴行事件は長年にわたり大きな課題だったとして根絶をめざした追加措置を講じると強調した。また,国防総省当局者によると,長官代行は〔2019年5月〕1日の下院公聴会で,軍内でのセクハラ行為を刑事罰の対象にする考えも表明した。

 さて,ここで問題を日本の戻して考えてみたい。日本の自衛隊も女性の任用を徐々に増やしてきた。先日は,輸送機のC-130Hの機長に空自2佐の女性がいると,テレビのヨイショ番組が紹介したりしていた。

 さらに現在は,尉官位で戦闘機に搭乗する航空自衛隊の女性もいる 註記1)。「女性初のイージス艦長が着任」という1年ほど前のニュースもあった 註記2)。ただし,自衛隊内におけるこの女性たちは,防衛大学校卒のエリートである。

 註記1)参考記事,竹内 修・軍事ジャーナリスト「空自F-15Jに初の女性パイロット誕生の背景 女性と戦闘機の歴史,大戦期はエースも」『乗り物ニュース』2018.08.30,https://trafficnews.jp/post/81314

 註記2)asahi.com 2019年12月2日 11時25分,https://digital.asahi.com/articles/ASMD17F08MD1PLZB009.html

 日本は現状おいてすでに,少子化の趨勢が「もう,どうにも止まらない現状」にある。徴兵制ではない日本の軍隊編制となれば,アメリカ軍(以外にも女性将兵を任用する国々は多くあるが)と同じにまで,女性将兵を活用しなければならなくなるのは,いまからはっきりしている。

 そこで,関連する記事をつぎに紹介してみたい。

 

 「『進む女性登用,潜水艦にも 米軍の取り組み参考に』 海上自衛隊に初の女性潜水艦乗組員が誕生した」日本経済新聞』2020年11月20日夕刊2面「ニュースプラス」(これは,① の同一紙面において続きを構成していた記事)

 自衛隊少子化対策の一つとして女性登用を進める。岸信夫防衛相は自衛隊の人的基盤の強化策に「女性自衛官の活躍の推進」を挙げた。これまで自衛隊に関心をもつ学生の多くは男子だった。応募者は多くの職種で8割超が男性だ。女子学生が関心をもてば裾野は一気に広がる。

 自衛隊では女性の活躍の幅が広がっている。陸上自衛隊では今〔2020〕年3月,有事のさいにパラシュートで最前線に投入される空挺(くうてい)部隊で女性初の隊員が誕生した。海上自衛隊でも初めて女性が潜水艦の乗組員になった。

 補注)やはり先日のことだったが,テレビの自衛隊ヨイショ番組のなかに登場した陸上自衛隊空挺部隊のある隊員は,小銃なども含めて重量で60キログラムにもなる装備を背負って降下すると説明していた。

 仮に身長が170センチメートルで,ふだんから訓練で鍛えている身体ならば,おそらく体重は60キログラムほどに絞りこんでいると推測しておくことにすれば,体重と同じ装備を身に着けて降下するとなれば,それなりに「危険は大きい」ゆえ,ヘマをすると簡単に骨折事故を起こす。

 しかし,軍隊での訓練(実戦でもまったく同じだが)は,その種の危険性が伴うのは計算のうちである。

〔記事に戻る→〕 防衛省は2021年度予算の概算要求で女性自衛官の勤務環境を整えるために50億円を計上した。女性用のトイレや浴場を整備したり,艦艇のなかに専用の区画をつくったりするのに費用をかける。

 2019年3月末時点で全自衛官に占める女性の比率は6.9%だった。10年間で
2ポイント程度上昇したものの,民間企業などを大きく下回る水準だ。逆にいえば増やす余地がまだある。

 米軍は過去半世紀で女性比率を2%から16%に引き上げた。出世しやすい戦闘職を含め,すべての職種で2015年から女性にも門戸を開いた。防衛省内では米軍の取り組みを参考にする動きがある。(引用終わり)

 日本の自衛隊がもしも,米軍の女性兵士任用についての取り組みを参考にするといった場合,前段に出てきた話題「レイプの問題」も,併せて事前に検討しているのか? つぎのような関連記事も出ていたが,軍隊編制における現実的な問題は,いつも・絶えず「戦争(戦闘行為・戦場)」の発生を想定している事実を,われわれは一時でも忘れてはいけない。単なる遊びの「戦争ごっこ」ではない。

 

   護衛艦にも働き方改革  小さな船体/乗組員,従来の半数 ◆                    =『朝日新聞』2020年11月20日朝刊36面「社会」=

 

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  補記)進水する新型護衛艦「くまの」=11月19日,岡山県玉野市

 

 船体をコンパクト化し,低コストでつくられた新型護衛艦「FFM」の進水式が〔11月〕19日,岡山県玉野市の造船工場であった。海上自衛隊の人員不足をふまえ,乗組員を従来艦の半数にし,休養期間を増やす「クルー制」を採用。「働き方改革」の一環とも言えるが,中国軍の動きを警戒する重要な任務を担うだけに,「人は休ませつつ,艦は動かしつづける」(海自幹部)ことをめざす。 

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 FFMは水中に仕かけられた「機雷」を除去する「掃海艦」の機能も併せもち,1隻で何役もこなせる多機能さが特徴だ。将来的には全護衛艦の半数近くをFFMに置きかえ,主力としていく計画だ。

 

 船体は全長133メートル(基準排水量3900トン)で,建造費は約460億円。通常タイプの護衛艦よりひとまわり小さく,コストも3分の2ほどだ。乗組員も約90人と通常艦の半数で,イージス艦に比べれば3分の1にすぎない。

 補注)この護衛艦の建造費はイージス艦の約3分の1。

 

 さらに関係者の注目を集めているのが,「クルー制」という新たな働き方だ。約90人ごとの4チーム(クルー)で3隻を担当。勤務期間がもっとも長くなったチームが下船して休養に入り,それまで休養していたチームが交代でその艦に乗る,という流れがイメージされているという。

 

 従来の護衛艦はそれぞれ内部のレイアウトが異なり,乗組員が固定され,休みをとることがむずかしかった。FFMは3隻ともレイアウトを同じにすることでクルー制の導入が可能となった。

 

 特定の艦への「愛艦精神」が損なわれるとの懸念も現場にはあるが,自衛隊幹部は「限られた予算と人員不足のなかで,仕方がない流れだ」と話す。

 

 〔2020年11月〕19日の進水式でFFMの艦名は「くまの」と命名された。装備品の確認や乗組員の教育などを経て2022年3月に就役する。FFMは,現在の中期防衛力整備計画(2019~2023年度の5年間)の期間中に計10隻建造される。 

  ともかく戦争などない時期でなのあれば,以上のようなニュースはなんとなく聞き流せる内容になりうるかもしれない。だが,いざ戦時体制(戦争状態としての非常事態発生)となれば,軍事オタク流に「戦艦や戦闘機がカッコいい!」などいって「楽しめるだけの対象」では,まったくなくなる。

 平時の軍隊組織内にあっても「イジメ⇒自殺」,そして「主に男性兵士による女性兵士へのレイプ」などの事件は,現実そのものであった。しかし,こちらの実際問題は,軍隊内に生起している事件だけに表面化しにくい。

 ① と ③ に引用した『日本経済新聞』特集記事の最後には「〈記者の目〉不祥事防止,改革の前提に」という,取材した記者側が感想をまとめた文章が添えられていた。

 戦後の日本は安全保障の議論をタブー視する風潮があった。自衛隊は「目立ってはいけない組織」とされ,転居してきた隊員の住民登録を市長が拒否する事件が起きたこともある。国際協力や災害対応を積み重ね,社会の認識を少しずつ変えてきた。

 

 日本経済新聞社の2019年郵送世論調査自衛隊の「信頼度」は60%だった。裁判所や警察,検察など8項目のなかでトップである。一定の信頼をすでにえているにもかかわらず人手は集まらない。

 

 ひとつの原因は度重なる不祥事だろう。イラク派遣部隊などで日報隠しが起き,パワハラや傷害暴行の懲戒処分件数が増加傾向にある。実力組織であるからこそ内部の不祥事防止策はより重要になる。それは無人機の導入や女性の登用といった改革を進めるための前提でもある。(甲原潤之介)

 本日の記述でもって若干は示唆しえたつもりでいるが,日本国防衛相「自衛隊3軍の内部」では,外部のわれわれにはなかなかみぬきにくい問題が,実際にはたくさん隠されたまま発生している。要は,そうした問題群が「無人機の導入や女性の登用といった改革を進めるための前提」だという指摘と,いかほどにまで関連づけられているかについては,まだ疑問が残っている。

 前段記事が触れていたごとき,自衛隊内部の不祥事に関する実情が,もしもありのままに日本社会のなかに広くしれわたれば,その「自衛隊の『信頼度』は60%」という比率は,確実に低下する。

 まあ,しらぬが仏……。

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