再生可能エネルギーによる電力調達・供給を強調する論説をめぐり考える電源問題,再生可能エネルギーを前面に置いて強調する論旨と,これに否定的・消極的に応答しつつ原子力電源を擁護したい原発推進派の苦しい論旨

 再生可能エネルギーを最大限に有効に開発・導入・利用する方途に疑念はないが,原発をこれからも大いに新増設しようと企図する無謀に,いまどき賛成する者などいない

 ドイツの原発廃絶問題を契機に考えるさい,日本のエネルギー問題について議論する立場の虚々実々,それらに観てとれる本質問題はなにか,ドイツの電力事情を美事としてだけ語ることができない現実的な背景

 

  要点・1再生可能エネルギー」問題に渋々対応する日本のエネルギー事情

  要点・2原発の新増設」など必要がない日本において原発支持派の苦しい論陣


 「〈第4の革命  カーボンゼロ〉 風力と太陽光が主力に  私の見方  アゴラ・エナギーヴェンデCEO パトリック・グライヒェン氏」日本経済新聞』2021年1月12日朝刊3面「総合・経済」

【前  言】 この記事は再生可能エネルギー関連の企業幹部であるパトリック・グライヒェンが語る「マイ・オピニオン」である。ドイツにおける電力事情に関する論説として読むとしたら,その利害関係を念頭に置き,慎重に吟味する余地もある。もっとも,日本の原子力村的な立場にある人たちにとっては,聞きたくもない意見がたくさん含まれている。こちらの人たちの「再生可能エネルギーに対する反撥論」はつづけて後段で聞いてみることになる。

 ※人物紹介※ Patrick  Graichen は,2001年独連邦環境省入省,2007年に気候・エネルギー政策の責任者となる,京都議定書や独政府のエネルギー・気候統合計画などを担当。2012年にシンクタンクであるアゴラ・エナギーヴェンデ創設に参画し,2014年から現職。

 --ドイツのエネルギー転換とは,化石燃料原子力中心の構造から100%再生可能エネルギーへと変革することだ。産業政策の面も,社会変革の要素もある。

 ドイツの2020年の電源構成は,再生エネが全体の46%程度を占める規模になったようだ。6%だった20年前から40ポイント置きかわった。2030年65%が政府目標だが,達成可能だ。われわれは70%にすべきといっている。

 補注)2011年の「3・11」東日本大震災発生とこれによって惹起された東電福島第1原発事故は,当時からいまもなおドイツの首相を務めているメルケルの,それまでにおけるドイツの原発利用方法を,根本から変えさせた。

 それは,メルケルの立場を「原発の廃止⇒利用」からさらに「完全廃止」へと転換させ,ドイツのエネルギー(電源)構成の中身を完全に変換させる「重大な契機」を提供した。

 メルケルのそうした対応ぶりに比して,当事国であるこちら日本は,原子力村を中心圏内(根城)にしていまだに,原発が電源において占める比率を2030年において「22-20%」にするとこだわっている。いってみれば,妄想に近いエネルギー観を捨てられないでいる。

 「3・11」以後,日本における電力事情は,再生可能エネルギー中心になるエネルギー供給体制を,いますぐには確立できないにしても,10年単位でもって着実に計画を立て実行していく意欲さえあれば,けっして不可能ではない再エネ問題への取り組みを,わざと意図的に抑制してきた面があった。

 少なくとも「3・11」以降,日本における電力消費量じたいは1割は減少した。これには節電意識と省エネ努力が効いていたが,今後において電力消費量が逓増していく展望はない。したがって,現状のなかでは再生可能エネルギーの比率をいかに高めていくかに,日本の電力事情としても最大の課題をして有している。

 しかしながら,原子力村的な抵抗勢力の基本的な考え方では,そうした再エネ中心の電源構成をめざす方途は絶対に許せない(許さない!)という時代錯誤の妄想にとりつかれてきた。こちらの利害集団勢力の立場は,再生可能エネルギーの発展可能性を否定的にしか認識しようとしない。

 だが,「3・11」以降における世界各国の電力事情を観ればただちに理解できるように,なおも原発を導入・利用するという一部の国々における動向,つまり独裁国家体制である中国やソ連などの,軍事面にかかわる思惑をさておけば,「3・11」的な危険性,つまり地球破壊(壊滅?)を惹起している原発利用の超高度なその危険性は,けっして軽んじることなどできない,人類史にとっての大問題でありつづけている。

〔記事に戻る→〕 20年前,変動の大きい再生エネがこんなに増やせると思っている人はいなかった。ここまで増えても電力供給は安定し,停電も起きない。風力と太陽光のコストを下げ,安定供給になんの問題も起こすことなく再生エネを利用している。

 「再生エネは高い,電力網を不安定にする」と考える人がいるようだが,技術の進化をみるべきだ。世界中で太陽光は安くなった。日本が高コストだとすれば行政のハードルだけ。ドイツの最初の壁は,初期に再生エネを高額で買い取りすぎ,電気料金への上乗せが高くなったことだ。もうひとつは脱石炭の遅れ。温暖化抑止には早く石炭火力をやめる必要があるが,政治家は躊躇していた。

 電気料金はピークを過ぎた。2020年がピークで2021年以降やや下がり,2~3年の横ばい状態のあと2030年に向けて下がっていく。太陽光発電の買い取り価格は当初1キロワット時あたり60セント(約76円)だったが,いまや風力や太陽光は5~6セント。入札制度の効果もあったが,なにより技術の進展がきいている。

 有効な策は3点あった。ひとつは再生エネに電力網へのアクセスを保証することと優先的に使うことだ。まず再生エネ,そして石炭やガス,原子力という優先順位を決めた。コスト削減につながり,風力か石炭のどちらを使うかは経済性の問題に落ち着いた。ふたつめは国による固定価格買い取り制度(FIT),みっつめは発送電の分離だ。

 水素は期待が先行しすぎている。夢の燃料かのように語られているが,どこかで水素じたいを大量に作る必要がある。高価なため,代わりがきかないときにだけ使うものだ。乗用車や暖房には使わないだろう。電気自動車やヒートポンプのほうがはるかにエネルギー効率がいい。化学や鉄鋼,そして日も照らず風も吹かないときのためのバックアップ電源だ。水素は石油やガスをすべて置きかえられる奇跡の燃料ではない。

 天然ガスはつぎの10年はつなぎの燃料となり,2030年以降に脱・ガスが議論されるだろう。ガス供給網の一部は水素に転用し,そのほかは閉鎖することになる。ボイラーのためのガス供給網は,ヒートポンプの普及で不要になる。電化がガス暖房を置き換える。

 エネルギー転換には風力と太陽光が有効ということだ。世界のどこでも当てはまる。もう同じ実験をする必要はない。ドイツは2000年当時,地熱や潮力も含めさまざまな技術にFITを導入した。その競争を勝ち抜いたのが風力と太陽光だった。

 カーボンニュートラルとは,経済のすべてを再生エネにもとづく電化をするということ。主力の1次エネルギーは風力と太陽光だとの考え方に転換するのが戦略の出発点になる。ドイツの過去の経験からの科学的な帰結だと強くいいたい。(聞き手はフランクフルト = 深尾幸生)

 

  現在において日本の電力事情に関してもっとも必要な方途は,風力発電を最大限に開発・利用すること

 原子力村のほうからは,再生可能エネルギーの開発・導入・利用に対してひたすら水を差すたがるような言論しか聞こえてこない。原発は再生エネの対極に位置する,いってみれば電力問題になかでは異端児であるだけでなく,完全に「悪魔の申し子」である。

 そうでなければ,原発の大事故を起こしたチェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)や東電福島第1原発事故(2011年3月11日)が実証してきたような惨状の発生させるわけ,いいかえれば,この地球環境に対して永久に消えない原発公害的な深手を与えるわけがない。

 再生可能エネルギー原発とは対極にあるエネルギーである。再生エネを日本もさらに開発・利用していくのが正常な方向性である。この事実は,原子力村の人びとが束縛されている〈現世的な利害〉や〈イデオロギーの絡み〉はさておいても,いまでは日本の社会に広く承知されてもいることがらであった。

 とはいっても,再生可能エネルギー関連の産業の事業展開が万々歳ですべてを進行させえているとはいえない。このあたりに関する議論は,再エネに反対したいような「原子力村の人びとの吐く意見」も含めて,より詰めた議論をおこない,関連する疑問や批判に答えておく必要がある。

 ここではくわしく紹介できないが,たとえば「ドイツのエネルギー転換の変革がスピードと参加に関する議論を巻き起こす」 『Energy Democracy』2016年12月1日,https://www.energy-democracy.jp/1719#more-1719  と題した論稿があった。これは,① に登場したアゴラ・エナギーヴェンデCEO パトリック・グライヒェンの意見にも論及していた。ただし,4年前の記述であった。 

 この論稿は長文であるので,ここではごく一部のみ引用する。

 --「再エネにとっての新時代」が到来しているなかで,未来の再エネよりも「時代遅れの石炭火力」の供給が多いことが,〔再エネ〕系統の拡張が必要な理由だと述べている。最近のグリーンピースの調査も,再エネではなく従来型の発電所で発電される電力が系統をブロックしているという,よく似た結論になっていた。

 グリーンピースのエネルギー専門家であるアウストルプは,政府が再エネの導入と〔各エネルギー〕系統の拡張の歩調を合わせようとしていることについて,「意味がなく,再エネに歯止めをかけるいいわけにしかならない」と述べている。さらに,「再エネの発電がピークを迎えている時であっても,原発は最大負荷で運転してい」るが,「本来は,柔軟性のない発電所を取り除くことを目標とすべきで」あるとも述べている。

 補注)ここで「原発は最大負荷で運転してい」る点が強調されている。原発というものは通常時において,最大負荷(稼働率100%)で運転していないと,安定性(安全性)に問題が生じやすい発電装置・機械である。この原発に関する理解は初歩的な知識である。原発が発電方式としては技術的に木偶の坊であるゆえんがあった。したがって,つぎの段落における記述も続いていた。

 パットリック・グライヒェンは,地域か観た場合,多くの化石燃料原子力発電所が,再エネの発電量が最大の時に発電量を抑えるには柔軟性がなさすぎるために,これらの批判が正当化されているのだろうと述べていた。

 より早い再エネの成長を擁護する人たちはまた,グリーンな電力の普及にブレーキをかけることによって削減できるコストはわずかにすぎないと主張している。

 応用生態学研究所がバーデン・ヴュルテンベルク州環境省のために作成した調査報告では,再エネの成長を制限しても,消費者の電力価格が受ける影響はわずかしかないと試算される理由は,莫大なコストが,20年前の高い買取価格を受け取っている初期の再エネ設置にかかっているからであった。逆に最新の再エネ設備が受け取ることができる価格は低いため,コストに与える影響は小さい。

 アゴラ・エネルギーヴェンデ研究所によれば,再エネ賦課金の額は2023年にピークを迎え,その後は減少に転じていく。「予測されるEEG賦課金の現象の主な理由は,2023年からEEGの初期に建てられた高価な設備に対する補助期間が切れる一方,新しい設備はとてもコスト効率的に発電しており,さらに安くなることが期待されています」とパトリック・グライヒェンは述べている。

 補注)EEG賦課金とは,再生可能エネルギー法(Erneuerbare-Energien-Gesetz)に関する事項である。

 こうした再生可能エネルギー利用促進論に対した “原子力村的な発想” にしたがえば,日本の場合をドイツの事例に比較する論法が批判されることになる。そのさい,つぎのごときお決まり的な反論が登場する。この ③ として紹介する。

 
 「海外電力関連 トピックス情報」「【ドイツ】 ドイツの再生可能エネルギー拡大を支える『他国の原子力』」電気事業連合会』2019年12月24日,https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1259821_4115.html

 この「電気事業連合会」のいいぶんを引用する前に,あえて釘を差しておくことがある。それは,このような反論の展示をもって,日本における再生可能エネルギーのさらなる開発・導入・利用に「水を差す事由」には,けっしてなりえない点である。。

 --ドイツは福島第1原子力発電所事故から10年以上遡る1998年以来,脱原子力再生可能エネルギー(再エネ)拡大をワンセットで推し進める政策を継続している。1998年から2016年までに,ドイツの発電電力量に占める再エネの割合は2.6%から27.5%に拡大し,環境先進国のイメージを世界に定着させることに少なからず貢献した。

 補注)その後,ドイツは2011年「3・11」の直後に発生した東電福島第1原発事故をみせつけられて,それまでは逡巡していた原発の廃絶を決めた。電事連のいいぶんは,この世紀に記録された日本の原発大事故を,観てみない振りをしたかのような記述をしている。

 原子力に関しては段階的閉鎖を進めており,2022年までにすべての原子炉が閉鎖される予定である。1998年に約30%であった発電電力量に占める原子力比率は,2016年には13%まで縮小した(国際エネルギー機関〔IEA〕データ))。2019年11月現在,運転中の原子炉は7基となっている。

 「脱原子力+再エネ拡大」と「電力の安定供給」は両立するのかという問いに対し,両立すると回答する場合に決まって引きあいに出されるのが,「ドイツは電力輸出国である」というセンテンスである。確かに,ドイツが年間ベースで電力輸出超過であることは事実だ。しかしそこで忘れてはいけない別の事実が,2点ある。

 まずドイツではこれまで,再エネ増加の一方で,石炭火力発電がベース電源として供給力を支え,天候や季節で大きく変動する再エネのバックアップの役割を果たしてきたことである。これは,ドイツの二酸化炭素排出量削減にとって大きなブレーキとなった。

 もうひとつは,大陸欧州のなかほどに位置するドイツにとって,電力輸出国であることは電力完全自給とイコールではないということである。ドイツでは年間ベースで輸出超過といっても,……電力需要のピーク期(冬季)に再エネの出力が下がった場合には,供給力が需要を下回る時間帯が発生する。この状態で大停電が起きないのは,ひとえにこのギャップを国外からの電力輸入で埋めることができるからである。

 一方,海に囲まれた島国で送電網の国際連系がないわが国(日本)では,いかなるときも自国の電源のみで国内の電力需要の変動に対応しなければならない。出力の変動が大きい再エネのバックアックも,すべて国内で確保するほかない。

 ドイツにおける電力輸出入の状況……〔を観ると〕,国際連系する送電線を通じて,隣りあう国々の間では常時,電力の輸出入がおこなわれている。……ドイツでは再エネが低調な間は輸入超過となり,その電力は主にフランスやスイス,チェコデンマークから来ている。デンマークを除き,これらの国々はすべて原子力国である。ドイツが変動の大きい再エネを増やしてこられたのは,国内の石炭火力と,近隣の原子力国からの電力輸入によって需給のバランスを取ることが可能だからである。

 補注)この段落での記述,「これらの国々はすべて原子力国である」というのは誤導的である。それら国々によって原発が占める割合は,それぞれバラバラの比率である。まるでフランスのように,それらすべての国々が7割以上も原発に依存しているわけではない。次表を参照しておきたい。いろいろとこれら各国なりに原発事情が控えているではないか。なかでも,デンマーク原発はない。

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 さらにいえば,ドイツの電力安定供給に一役買っているのは輸入だけではない。ドイツにおける再エネの一大電源地帯は,風力発電の多い北部沿岸部だが,同国では架空送電線に対する周辺住民の反発が根強く,国内を縦断する送電網の新設が進まない。このため大規模な電力消費地を抱える国土南部に電力を送ることができず,余った電力は隣国に流れこんだおち,他国を迂回して国土南部に供給されるかたちとなっている。

 ドイツ北部からの電力は,西側ではオランダに流れこみ,その一部がベルギー,フランスを経由してドイツ南部に流れこむ。東側では,チェコポーランドに流れこんだ電力の一部が,オーストリアを通ってドイツ南部に入る。このように他国を電力の迂回路にすることでドイツは供給の安定を確保しているが,一方で通り道となる周辺国では,強風時にドイツから流入する電力で系統の安定に支障が出るなど,問題が発生している。(中略)

 こうした状況を勘案すると,供給力の落ちこみを避けるのはむずかしく,いずれは「ドイツは電力輸出国である」というセンテンスが通用しなくなる日が来るかもしれない。そのころには,ドイツだけでなく欧州の多くの国で旧型の火力発電所等が閉鎖されるため,大陸欧州全体で安定した電源の設備容量余力が小さくなると考えられる。

 補注)ここの「分析としての主張」は再生可能エネルギーの今後を,故意にいっさい無視した論旨になっている。それゆえ,かなり強引なリクツであるだけでなく,眉ツバものにもなっている。

 こうした状況を見越して,チェコでは2036年までに原子炉の新設をおこなう計画である。ポーランドも,原子力発電の新規導入を計画している。フランスも減原子力とはいいつつ,現在の設備容量を維持する方向である。その結果,2030年代の終わりには原子力も石炭火力も手放すドイツでは,こうした原子力をもつ隣国の電力への依存が,いま以上に高まると考えられる。(引用終わり)

 補注)フランスが「減原子力とはいいつつ,現在の設備容量を維持する方向」だというのは,奇妙な見解(解釈)である。フランスも再生可能エネルギーの方途を積極的に採っていくことに変わりはない。ただ,あまりにも原発が占める比重が高くて,このあつかいには困っている。

 さて,以上に紹介した意見は「【作成:株式会社三菱総合研究所】」であって,結論でいいたい要点は,最初から「日本財界側の総意として」の見解であり,分かりきっていた。つまり原発の絶対必要論であって,さらにいうと,日本はドイツとは違って島国であるから,原発の必要度はもっと高い・あるといいたいだけのこと。

 この日本においてなお,原発が必要である主張したい「原子力村的」な「電源エネルギー構成論」は,一見正しいかのように聞こえるところがあったとしても,実は意図された短見のエネルギー観に満ちていた。要は,再生可能エネルギーの将来性をなにかつけては否定したい立場が露骨に表出されている。

 

  日本列島全体における電力送電問題など

 日本列島は確かに,ドイツがヨーロッパ大陸で位置する地理的な条件とは,まったく別様である。日本列島はとくに南北に長く伸びており,そして経度的にも関東から九州までは,東西に広がっている。そのせいか,いままで地域ごとに立地・経営されていた大手電力会社が,「3・11」以前までであれば非常にはっきりしていたように,電力を融通しあう送電線を,かぼそい容量でしか設営・確保していなかった。

 もともと東西日本で別々である電力の周波数は,東京を中心とする東日本で50Hz,大阪を中心とする西日本で60Hzである。この種の技術的な違いもくわわって,送電線網の整備には困難が加重されていた。とりわけ今冬は,寒さがきびしいためにつぎのような事態も起きていた。    

 あらためていうが,今回における電力融通は,今冬の寒さがとくにきびしくなっている条件のもとでなされている。このたび厳冬のなかで,10年の1度あるかないかと指摘された “電力逼迫事情” が発生していた。

 そういう報道もなされていたが,原子力村的なエネルギー「感」で応えるとなれば,早速,「原発の有用性」ウンヌンの話題が再起動されそうである。だが,こうした原子力村風になる〈定番の感想:反応〉は,もともとあまりにも意図的だという意味で拙速であって,いわば瞬間湯沸かし的な反応であって,説得力を欠く。

 「3・11」発生以前,日本全国の電力会社間で相互に電力を融通できる容量(送電線のそれ)は非常に少なかった。その後,徐々に整備されてはいるものの,この相互の電力融通関係は,もっと日常的に使い勝手のよい,より太いものに改善していく必要がある。

 また,民間企業内で独自に発電施設(火力にもならず水力も含む)を有し,その能力に余裕もあって,これを非常時に活用できる態勢もあるとなれば,電力会社側でこの余剰能力を即応的かつ円滑に活用するためには,ふだんから相互間の態勢作りを整備しておくことも課題になっている。

 今冬のきびしさのために電力不足気味になった東電は,つぎのようなニュースを提供していた。

     ◆ 東電,企業の自家発電から電力調達へ   LNG在庫不足で ◆
  = nikkei.com 2021年1月6日 18:00,https://www.nikkei.com/article/DGXZQO

 

 東京電力ホールディングスの送配電子会社,東京電力パワーグリッド(PG)が自家発電設備をもつ企業に電力の融通を要請していることが分かった。相次ぐ寒波で暖房用電力の需要が急増するなか,発電燃料の液化天然ガスLNG)が不足して発電量が不足する恐れがあるためだ。他業界の協力もえて安定供給をめざす。

 この報道にさらに関連しては,前段階において報じられていた記事も引用しておく。

    ◆ 東電PG,2日連続で他社から電力融通 寒波で需要急増   LNGスポット一段高   パナマ通航に遅れ ◆

 = nikkei.com 2021年1月4日 19:15,https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ0430U0U1A100C2000000

 

 石油や鉄鋼,化学大手などは一部の製造拠点で発電設備を備え,発電した電力を生産活動に使っている。東電PGは発電設備をもつJFEスチールや住友化学,ENEOSホールディングスなど複数の企業に,余った電力を供給してもらうように打診している。余剰電力を生み出すために発電設備の稼働率を上げてもらうことも要請している。JFEは川崎市千葉市に発電設備をもち「可能なかぎり対応したい」としている。

 

 関西電力と同社の送配電子会社である関西電力送配電も〔1月〕6日,東電PGと同様の要請を始めた。電力は発電量と消費量が一致しないと大規模停電につながるリスクがあり,通常は自社の火力発電所の出力を調整する。2011年の東日本大震災の直後にも企業から調達したことはあるが,企業の自家発電設備から融通してもらうのは異例だ。

 

 寒波をうけて関東エリアの需給は逼迫しつつある。東電PGは,とくに4日の調達規模は一部の時間帯で最大100万㌔㍗と,単純換算で原発1基分にも上った。

 補注)ここでは「最大100万㌔㍗と,単純換算で原発1基分にも上った」という話法にしているが,なにも原発に比較するだけの論点ではなかった。いつまでも原発をとくにもちだし比較の材料にしておくという筆法じたいに,イヤらしさが漂う。

 

 〔1月〕7日以降は全国的にきびしい寒さとなる見通しで,他の大手電力から必要な電力を調達できない恐れもある。すでに電力需給は全国的にも逼迫しつつあり,6日には関西電力送配電と東北電力ネットワークも他の電力会社から電力を調達した。東電PGは「埋蔵電力」とも呼ばれる自家発電設備から電力を入手し,電力不足に備える。(後略)

 さて,この冬季にあっては太陽光発電は非力であり,その弱点がもろに表面化する時節となる。そこで関心をもたれるのが風力発電である。日本は北日本(北海道・東北)をひとまずのぞいておくとして,風力発電の開発・導入・利用状況が不活発であった。

 とはいえ,九電地域のように太陽光が最大に出力を発揮する時間帯になると,一時的にはこの地域の電力需要の相当部分をまかなえるほどにまで上昇する状況,具体的にいうと,「九州電力では,ピーク時(たとえば2018年5月3日12時台に実際に生じた)に太陽光発電が電力需要の81%に達し,自然エネルギーでは太陽光が最大96%にも達した」こともあった。

 このために,つぎのごとき懸念まで指摘させる事態を随伴させてもいた。

 九州電力がおこなってきたVRE〔自然変動型再生可能エネルギー,Variable Renewable Energy〕の出力抑制については,改善すべき点があると考える。現状のままでは,「自然エネルギー拡大を前提とした合理的な出力抑制」ではなく,「自然エネルギー抑制のための出力抑制」に陥りつつあるように思われるからである。

 註記)「 九州電力自然エネルギー出力抑制への9の提言」『isep 環境エネルギー政策研究所』2020年10月5日 https://www.isep.or.jp/archives/library/12913 

 なお,土木学会開発委員会特別シンポジウム,足利大学理事長牛山 泉『洋上風力発電の主力電源化に向けて』2019年7月1日によれば,「日本の再生可能エネルギーポテンシャル」としての容量(単位;百万kW)は,こう推算されていた。

  太陽光      150百万kW
  風力(陸上)   300
  風力(洋上)  1,600
  中小水力      14
  バイオマス     38
  地熱発電      14
   合計    211,600万kW〔ここからは百万kW表示ではなく万kW表示〕

  原子力発電   4,820万kW〔同上,2011年3月時点〕

 牛山はとくに風力発電の将来性を高く買っているが,この点は海外諸国における実情からも,自然に裏づけられる主張であるに過ぎない。現時点で日本における太陽光発電はすでに,ここに記されている数値をはるかに超えた発電総量になっている(これは統計が2011年3月当時であり,そういう前後関係になっている)。気象条件のからみでいえば,風力発電太陽光発電とは基本的に異なる発電上の特性を有している。

 また,再生可能エネルギーにかかわる各種の発電方式どのように全体的に組みあわせ,有機的に体系づけて活用するかは,スマートグリッドの問題になっている。この問題は,本来であれば大手の電力会社が以前からとりくんでおくべき課題であった。

 だが,原発利用にこだわる旧体制的な,つまり原子力村的な発想は,その課題を毛嫌いし,遠のけてきただけで,再生可能エネルギーの将来を,不必要かつ不当にも阻害してきた。「3・11」はその旧弊を打開させる契機を与えていたはずだが,電力会社側の対応は鈍ぶかった。

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