菅 義偉首相が国家最高指導者として「コロナ禍と戦える資質」を決定的に欠く確かな理由

 いままで国民たちはさんざんに,新型コロナウイルス感染拡大「問題」に対峙させられ苦しんできている

 だが同時に,当事者能力のない総理大臣 菅   義偉の存在によって,まさしく「バカな大将,敵(コロナ)より怖い」目 に遭わされつづけてもいる

 菅 義偉は,官房長官職の時はそれなりに,あの「ウソだらけの安倍晋三」首相のために役立ってきたのかもしれない,ところが,いまとなっては「〈億の害〉があっても〈無の利〉である」政治屋であるほかない事実を,正直に露呈させている

 

  要点・1 このままいったら日本は五輪どころか「無輪の国」になってしまい,まともに道路を走行することが不可能な,無舗装的な5流国家にまで沈淪するかも……

  要点・2 国家観も歴史観もなにひとつもちあわせないこの首相の指揮下では,コロナ禍の現状日本は打開できない,ともかく選手交代が「必らず・絶対に」必要……

【参考記事】

 


 🌑 前   論  🌑

 『朝日新聞』2021年1月15日朝刊の社会面に,「都立・公社3病院 コロナ専門〔病院〕へ」という見出しの記事が出ていた。ここでは,同日の『日本経済新聞』のほうから関連する記事を引用する。

 東京都の小池百合子知事は〔1月〕15日の記者会見で,都立病院と都が出資する公社病院の一部を新型コロナウイルス対応の「重点医療機関」にすると発表した。都立広尾病院(渋谷区),公社の荏原病院(大田区),豊島病院(板橋区)の3病院が対象。通常の入院や外来を大幅に縮小し,逼迫しているコロナ用の病床を確保する。

 

 都は都内14カ所の都立・公社病院で受け入れるコロナの入院病床を現在の約1100床から1700床へと5割増やす。その増床分の大半を3病院でまかなうが,ほかの都立病院などでもコロナ向けの病床を増やす。小池氏は拡充の時期について「できるだけ早く」進めるとした。

 

 東京都心部の基幹的な医療機関である広尾病院は,コロナ以外の入院は原則制限する方針だ。外来の初診はほかの公的病院や民間病院で対応してもらうように要請している。

 註記)「都立広尾など公的3病院,コロナ『重点医療機関』に」asahi.com 2021年1月15日 18:03,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB1574J0V10C21A1000000

 補注)この記事の関連では,都立広尾病院産婦人科に通院してもうすぐお産の時期を迎える女性が,いきなり転院を迫られてしまい, “困った事情” に追いこまれている件は,後段で言及する。

 それにしても驚くのは,小池百合子都知事がいまごろにもなってからようやく,コロナ禍向けの医療体制として都立病院などからその3病院を選び,コロナ向けの専門病棟を設けることにした「決断の遅さ」である。「遅きに失する」とか形容するには,全然似つかわしくないくらい大幅に遅れた措置であった。もちろん,やらないよりは数段マシであるが。

 中国政府は昨年(2020年)1月中に,武漢新型コロナウイルスの感染発症が確認されたのを受けて,2月2日までに大規模な専門病棟(千人を収容できるプレハブ棟)を,突貫工事をもって完成させていた。このことは,われわれがまだよく記憶している件である。

 ところが,日本の病院体制においては,既存の病院が個別にコロナ病棟(ないしは病室)を用意するかたちで,コロナ禍に対応するための医療体制を整えてきた。前段の都立広尾病院の話題については,早速,つぎのようなニュースが報じられていた。

       ◆ 都立病院で出産できず困惑の妊婦 ◆
  =『NHK NEWS WEB』(首都圏 NEWS WEB)2021年01月14日07時16分,https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210114/1000058921.html

 

 東京・渋谷区の都立広尾病院など都内の3つの病院が実質的に新型コロナウイルスの専門病院となることを受けて,これらの病院で近く出産する予定だった妊婦からは困惑の声が上がっています。

 

 このうち都立広尾病院で来〔2〕月4日に帝王切開で出産する予定だった20代の女性は,今月8日に受けた妊婦健診のさいに,病院側から突然「2月,3月が出産予定日の人は広尾病院での出産ができなくなった」と伝えられたといいます。

 

 女性は現在,国が指定する難病を抱える双子を育てていて,出産後,子どもに発作が起きたさいにもそばにいられるよう,双子のかかりつけの医師がいる都立広尾病院で出産することを望んでいました。

 

 女性は「ショックと驚きでパニックになってしまい,これからどうしたら良いのだろう,安心して産むことができる病院がなくなってしまったという不安でいっぱいになりました」と話していました。

 

 その後,病院側から紹介された複数の別の病院に問いあわせましたが,いずれも出産にかかる金額が高かったり距離が遠かったりして,いまも出産する病院が決まっていないといいます。

 

 女性は「東京都や渋谷区にもお金の相談をしましたが,差額は自己負担なので病院と話しあって欲しいといわれるばかりでした。お金のない人たちは,遠くまで歩いて病院に通わなくてはいけないのでしょうか。家で産めばよいのでしょうか。追いつめられていますが解決方法がなく,どうしたらよいかわかりません。金銭面やメンタル面のケアも考えた政策をしてほしいです」と話していました。

 この実例が,コロナ禍という異常な社会状況(緊急事態)のなかでの出来事とはいえ,いままで,日本が少子化対策にとりくんでいたはずであるにもかかわらず,このようにひどい理不尽な産科医療事情を突発的に作りだしている。しかも,この妊婦の話によれば,ほっぽり出されたかのようなあつかいを受けている。

 政府や都の次元で,以上のごときしわ寄せが妊婦に全面的に転嫁されていながら,これを事後,即座に善処する手当がまったく準備されていないという体たらくである。

 これでは,2021年には80万人を切ることになりそうだと予測されている「新生児出産数」(2020年の妊娠届出数は前年比▲4.4%で84.6万人,2021年の出生数は前年比▲7.5%の78.4万人と予測されている)は,下手をすると(すでにヘマを冒しているが!),別個に不確定要因がもたらされたりして,もっと落ちこむかもしれない。現在,妊娠している人たちの「実在」を念頭において,そのような〈悲観的な想念〉が浮かぶしかないのは,どうしてか?

 

 小沢一郎氏,菅首相を酷評『アドリブがきかない』」『日刊スポーツ』2021年1月15日12時23分,https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202101150000221.html

 立憲民主党小沢一郎衆院議員は〔1月〕15日,ツイッターを更新し,菅 義偉首相の発信力に強い疑問を示した。「記者会見やテレビ出演の総理は,余裕がまったくないようにみえる」と指摘。

 「単純ないい間違えの問題ではなく,おそらく基礎的用語や対策の内容をよく理解していない可能性が高い。だからいつも台本どおりでアドリブがきかない」と,酷評した。そのうえで「(会見を仕切る)内閣広報官は追加質問を許さず,テレビ局にクレームを入れる。そんな総理でよいわけがない」ともつづった。(引用終わり)

 小沢一郎のこの菅 義偉「評」は,文句なしに的の中心を射ている。菅は首相としてなどという以前に,自分が答えねばならない諸問題に関して「基礎的用語や対策の内容をよく理解していない可能性が高い」というよりは,ずばりいって「全然,判っていない」としか観察できない。それらについて勉強していないというよりは,なにも理解できていない。これではお話にもならない。

 

  菅 義偉の天敵的な東京新聞記者,望月 衣塑子+特別取材班『菅 義偉 不都合な官邸会見録』宝島社が2021年1月9日に公刊されていたが,2021年1月15日には早速,この本に対する書評(アマゾンのブックリビュー)が書かれており,こういう感想を述べていた。

    最悪の菅首相の本質がわかる良書

 

 こうも早く菅首相のメッキ(化けの皮)が,全国民の目に分かるように剥げるとは思わなかった今日このごろです。やはり,パンケーキおじさんを装うカモフラージュだけでは国民の目を騙せませんでした。

 

 ただ,菅 義偉という人が,首相の器も,決断力も,指導力も政治哲学やビジョンもない人間であることは,官房長官時代の菅氏をみていれば驚くに値しません。とくにそのことは,東京新聞の望月記者に対する菅氏の記者会見答弁をみているとよくわかります。

 

 そういう意味で,この本を読むと,菅 義偉という人がいかに首相にふさわしくない人であるのかということがあらためてよく分かります。裏で人を恫喝したり,人事で締め上げるだけでは,本当の意味での指導力を発揮することはできないのです。

 

 菅首相の問題点を,さらにいうならば,いまの自民党政治の問題点を正しく洞察するためにも,タイムリーな良書であると思います。

 コロナ禍が猛威を振るいはじめてからすでに丸1年が経過してきた現状のなかで,医療崩壊(壊滅)が医師たちから指摘されている。日本国総理大臣菅 義偉の国家指揮ぶりに透視できる「首相としての〈器〉じたいの欠損度合」は,修復不能と診断されて,なんらおかしくはない。

 というよりは,最初から国家最高指導者の任務に就くために資質など皆無であったこの政治屋に,なにかを期待することじたいが無理難題であったとなれば,現状のごとき不始末の連続的な発生は目も当てられない。

 

 しかし,菅 義偉的に押しつけられた無理難題だといって済まされる「いまの日本国内の事情」ではない。東京新聞』2021年1月14日が「柴又の料亭『川甚』がコロナ禍で創業231年の歴史に幕 寅さんロケ地,倍賞千恵子さんも『寂しい』」との見出しで,こう報じていた。

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 江戸時代から続く川魚料理の名店で,夏目漱石ら文豪に愛され,映画「男はつらいよ」では寅さんの妹さくらの披露宴で舞台になった東京・葛飾柴又の料亭「川甚」が,コロナ禍による経営難を理由に1月末で閉店する。創業231年。都内で相次ぐ飲食店の「コロナ閉店」のなかでもっとも歴史ある店。日本食の文化継承に影響が出ると心配する声も上がる。

 註記)『東京新聞』2021年1月14日 20時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/79904

 昨年(2020年)9月のことであったが,東京都足立区にある西新井大師の門前にある割烹料理店が,こちらもコロナ禍が原因になり閉店に追いこまれていた。やはり『東京新聞』が2020年10月31日に,「175年続く割烹や老舗居酒屋の閉店相次ぐ… コロナ禍が決定打」との見出しで,この店のことなどを,つぎのように報じていた。

 新型コロナウイルスの影響で飲食店の経営が悪化するなか,東京でも多くの人に愛された老舗や有名店が相次ぎ閉店している。消費税率の引き上げに伴う利益の減少や,後継者不足などもあってきびしい経営が続いていた店がコロナにとどめを刺された格好だ。政府の支援策の息切れが響き,のれんを下ろした店もある。

 

  ※ 売り上げ減続き,店主「辞めるならいま」※

 「状況が良くなるとも思えない。借金したくないしやめるならいまだなと…」。新橋駅前の居酒屋「新橋三州屋」(港区)の見米健司社長(60歳)は話した。9月で50周年を迎えたが30日に閉店。45年来の常連という川崎市の池川靖彦さん(75歳)は「会社員時代から毎月通った思い出の店。8カ月ぶりに来たら閉店でショックだが,最後に来られて良かった」と語った。

 

 〔2020年〕4月以降の売り上げは前年比9割減。最近はややもちなおしたものの7割減が続いた。持続化給付金なども受けとったが,人件費や家賃を「とても穴埋めできなかった」と見米さん。政府の「Go To イート」の恩恵を十分に受けるには予約サイトへの登録が必要で,60~80代の従業員に対応はむずかしかった。

 

 江戸時代に創業の「割烹  武蔵屋」(足立区)も9月末,175年の歴史に幕を下ろした。近くの西新井大師の参拝客の減少や宴会自粛が響いた。店主の江川彰一さん(61歳)は「『忘年会や新年会シーズンまでは』と踏んばってきたが,限界だった」と明かした。(後略)

 註記)『東京新聞』2020年10月31日 05時50分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/65403

 このニュースは2020年10月31日に報道されていたが,その後においても,似たような事例が枚挙にことかかない。本ブログ筆者の実家近所にある老舗の割烹まで廃業したという前段のごときニュースに接して,コロナ禍の災害としての意味を,あらためて考えさせられたしだいである。ともかく,コロナ禍のせいで人命が奪われているだけでなく,事業・商売が否応なしに壊滅されつづけている。

 前段の記事に書かれていたように,日本の場合は「持続化給付金」関連の補助金・支援金が必要かつ十分というには,はるかに及ばない。ヨーロッパでもたとえばイギリスのそれと比較してみればよいのであるが,日本の場合は当初から気持程度の支援しかなされておらず,現にバタバタと倒れるように中小・零細の事業所が消滅しつつある。

 「Go To トラベル」も「Go To イート」も,安倍晋三前政権以来の「私物化政治=利権為政」に沿った狙いしか意図されていなかった。そのために,コロナ禍対策の経済的支援としてはもとより的を外していたことは,事実がそのとおりに物語ってきている。

【参考記事】


 「菅政権は,政権の意に沿わない者へは恫喝・圧力・制裁しか頭にないのか」『まるこ姫の独り言』2021. 01. 15,http://jxd12569and.cocolog-nifty.com/raihu/2021/01/post-108546.html

 昨日の記事にも書いたが,入院拒否の患者には懲役刑とか,罪を犯したわけでもないのに圧力をかけることしか頭にない。こんどはいきなりの,コロナ病床増の勧告,そして拒否なら公表もありうると脅しをかける。

 「感染者受け入れ,病院へ「勧告」可能に…拒否なら公表も」『読売新聞 オンライン』2021/1/15 (金)  5:09  配信。

 政府は,新型コロナウイルス患者用の病床を確保するため,感染症法を改正し,行政が病院などに患者の受け入れを勧告できるようにする方針を固めた。感染状況が悪化している地域では病床不足が深刻になっており,医療機関への働きかけを強めることで医療提供体制を維持する狙いがある。

 自民党の考える施策で医療体系体制を維持する狙いがあるのは分かる。感染状況が日増しに悪化して,病床不足が深刻化しているから,こういった圧力をかけて病床数を増やそうとするのも分かる。

 が,そもそも自公政権がベッド数を減らして来たのに,コロナが国中を抜き差しならぬほど蔓延したら,こんどは増やせ増やせはないだろうに。しかも,秋冬にコロナ感染が拡大することは,去〔2020〕年のうちから分かっていたことだ。

 政府御用じゃない学者たちは,声を大にしていまから対策を打っておくべきだと提言してきた。岡田〔晴恵〕氏,児玉〔龍彦〕氏,倉持〔仁〕氏等々・・・・。〔1月14日の〕木曜日のモーニングショーにはノーベル賞学者の本庶〔佑〕氏,大隈〔良典〕氏がともに出演して,政府の対策への提言をしていた。

 とくに本庶氏は当初からPCR検査の重要性を訴えていた人で,今回も「コロナ専門病院設置」「隔離と食事提供策でホテル・飲食業を支援」,これでホテルと飲食業界にもプラスになり,効率的に経済が回せる方法だと熱く述べていたが,この発言は本庶氏の1年前からの持論で,なんどとなく厚労省に訴えて来たそうだが,聞く耳をもたなかった厚労省,そして政府の無能無策が,ここまでの感染拡大の一因でもある

 誰も使わないアベノマスクなんて,無能無策の最たるものだ。素人でも特効薬のないいまは,PCR検査を拡充して,無症状の陽性者を炙り出す以外,感染拡大の歯止めをかけられるものではないと思ってきたが,それこそ権威あるノーベル賞学者の提言さえ,聞こうとしなかった政府のかたくなな姿勢は,どこからきているのだろう。

 まったく理解できない。自分たち無能無策は棚に上げて,したがわないと,やれ罰則だと圧力をかけても,それで物事が解決するとは思えない。

 今回だって,いくらベッド数を増やしたからといって,いますぐ使える医療従事者が増えるわけでもない。増やしたくても増やせない背景をなぜ考えようとしないのか。

 別に医療機関は,サボって患者を受け入れないということでもないし,いまでも一杯いっぱいの医療機関ばかりだろうに,それに対してムチ打つような病院名を公表という制裁は止めるべきだ。

 短絡的に恫喝・圧力・制裁などでは,ないも解決しない。自民党はいつの時代になっても村社会的な発想しか持てないようだ。

 

 「かたくなにコロナ対策の失敗を認めない菅首相 ブレーンの心も折れたか」『NEWSポストセブン』2021.01.15 07:00,https://www.news-postseven.com/archives/20210115_1628085.html(『週刊ポスト』2021年1月29日号)

 a) 菅 義偉・首相の行動に側近たちも

 危機に臨む総理大臣に求められるのは,正確な現実認識と,国民に語りかける「言葉」の誠実さだろう。緊急事態宣言で国民は生活にきびしい制約を求められている。

 それでも一歩ずつ危機の出口に向かって進んでいる実感があれば,「希望」をもって耐えられるが,総理の言葉が信じられなければ,国民に希望を見出す力そのものが生まれない。

 菅 義偉首相は年初からの10日間で4回,国民に語りかけた。1月4日の年頭会見では,「絶対」とこう強調した。「医療崩壊を絶対に防ぎ,必要な方に必要な医療を提供いたします」。

 1都3県に緊急事態宣言を発出した1月7日の記者会見では「必らず」と,こう断言してみせた。「1か月後には必らず事態を改善させる。そのために総理大臣としてありとあらゆる対策を講じてまいります」。

 しかし,国民の何人がそれを信じただろうか。「あらゆる対策」といいながら,菅首相はコロナ変異種が国内で発見されても11か国とのビジネス往来の停止を先送りし,Go To イートの停止も「自治体の判断」に任せて全国半数の県で続けられている(1月7日時点)。

 菅首相自身,自分の言葉を信じてはいない。会見翌日に出演したテレビ朝日報道ステーション』のインタビューでそれがはっきりわかった。もし,1か月後に結果が出なかったら営業規制の対象拡大や宣言延長の可能性はあるのか。国民がしりたい疑問だ。

 そのことを問われると,こういってのけた。「仮定のことは考えない」。-- “あんたが考えなければ誰が考えるんだ” と国民を呆れさせた。

 1都3県に続いて大阪,京都,兵庫の知事が緊急事態宣言を要請すると,その判断も丸投げした。

 「政府の分科会の専門家は『もうしばらく様子をみて,分析したい』という方向だったようだ。いずれにしろ,必要であればすぐ対応できるような準備をしている」(2021年1月10日のNHK『日曜討論』)。

 菅首相は二言目には「必要があれば躊躇なくやる」というが,必要かどうかの判断は丸投げだ。そんな総理に,危機の打開を託せる道理がない。

 b) ブレーンの「支える気持ち」が折れた

 「この総理には無理だ」。そう痛切に感じているのは感染対策にあたっている政府の専門家たちだ。

 厚労省クラスター対策班メンバーだった理論疫学者の西浦 博・京都大学教授は緊急事態宣言の直前,菅首相の楽観論の機先を制するタイミングで,今後の感染状況について厳しい試算を公表した。

 飲食店の営業時間短縮を中心とする緊急事態宣言では,東京の感染者数は2か月後(2月末)も現在と同水準の1日約1300人,昨年の宣言並みのきびしい対策を取ったとしても,新規感染者が1日100人以下に減るまでには約2か月かかるという内容だ。「1か月で改善」は無理という試算である。

 菅首相は,そうした専門家の懸念に有効な反論ができない。政府が感染対策の方針を誤っている時,総理が失敗を認め,批判に耐えて方針を修正していく姿勢をみせれば,まだ「この総理は現実を直視している」と国民の信頼を取り戻すことができる。

 ところが,菅首相はかたくなに失敗を認めない。専門家はそうした姿勢に不信感を強めている。

 政府のコロナ感染対策分科会の尾身 茂会長もその1人だろう。菅政権は昨年11月に「勝負の3週間」をかかげ,感染対策を打ち出した。当時,Go To が感染拡大を招いたとの批判を浴びた首相は,「分科会からトラベルが感染拡大の主要な要因でないとの提言をいただいている」と専門家に責任を転嫁した。

 それに対して尾身会長は国会の閉会中審査(12月16日)に出席し,「人の動きを止めることが重要で,Go To も考えるべきと再三申し上げている」と,Go To 停止を進言したことを証言して,首相に冷や水を浴びせた。

 厚労省の専門家組織「アドバイザリーボード」も勝負の3週間の後,〈全国的に感染が拡大することが懸念される〉という感染状況の評価を発表し,〈新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難な状況が懸念される〉と医療崩壊の危機に警鐘を鳴らした。

 c) 厚労省の専門家が「勝負の3週間」は “敗北” だったと結論づけたのだ。それでも,首相は耳を貸さなかった。

 「私は昨年11月以降,専門家のご意見に沿って Go To トラベルを順次停止し,飲食店の時間短縮を要請しました。早期に取り組んでいただいた地域ではその効果が現われ,感染を抑えることができています」。

 1月7日の会見ではそう自己正当化したが,詭弁である。「早期に取り組んでいた」はずの大阪も,首都圏の1週間後に宣言発出へと追いこまれたことからも明らかだ。

 報道ステーションでは,「去年の暮れにですね,(東京の新規感染者数)1300人というのがありました。あの数字を見た時に,かなり先行き大変だなと思いました。想像もしませんでした」と語った。

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 「尾身会長ら専門家が警鐘を鳴らしたのに総理は大晦日まで感染状況の現実をみていなかった。懸命にやってきた分科会やアドバイザリーボードのメンバーは気持ちが折れただろう」(感染症研究者)。

 そうしている間に,医療の最前線は崩壊した。中川俊男日本医師会会長は1月6日の定例会見でこう訴えた。

 「必要な時に適切な医療を提供できない,適切な医療を受けることができない,これが “医療崩壊” だ。医療じたいを受けることができない “医療壊滅” の状態にならなければ医療崩壊ではないというのは誤解で,現実はすでに医療崩壊である」。

 首相が年頭会見で約束した「必要な方に必要な医療を提供する」ことはすでに不可能なのだ。

 

 「特措法と感染症法の刑事罰導入は百害あって一利なしだ」『ビデオ・ニュース』〈マル激トーク・オン・ディマンド〉第1032回,2021年01月16日,https://www.videonews.com/marugeki-talk/1032

※ゲスト※ 米村滋人(よねむら・しげと)東京大学大学院法学政治学研究科教授・内科医。

 

 1974年東京都生まれ,2000年東京大学医学部卒業,医学部在学中の1998年司法試験合格,2004年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了,東大病院,日本赤十字社医療センター循環器科勤務医,東北大学大学院法学研究科准教授,東京大学大学院法学政治学研究科准教授などを経て,2017年より現職。

 

 現在,東京都健康長寿医療センター勤務医(循環器内科)を兼務。専門は民法・医事法。著書に『医事法講義』,共著に『生命科学と法の近未来』など。

  『概要』-以下に引用するこの解説は長くなるが,全文を参照する-

 a) ついこの間まで Go To キャンペーンの中止さえも躊躇していた菅政権は,ここに来て,首都圏に続き関西圏,福岡などでも相次いで緊急事態宣言を発出するなど,ようやく本気でコロナの抑えこみに本腰を入れはじめたようにみえる。しかし,やや遅きに失した感は否めず,感染拡大は一向に衰えをみせていない。

 菅首相は関西地方や福岡の緊急事態宣言発出を発表した1月13日の記者会見で,コロナ特措法や感染症法を改正し,営業停止要請に応じなかった店舗や,感染が明らかになったにもかかわらず入院措置に応じなかった感染者に対して,政府が刑事罰を伴う強制力をもたせる意向を表明した。

 現在の日本の医療危機が実際はコロナの感染拡大によるものではなく,むしろ,医療行政の不作為によって世界一の病床数を誇りながら,病床の転換が進んでいないことにあることをいち早く指摘して話題を呼んだ,東京大学法学政治学研究所の米村滋人教授は,これらの法律に刑事罰を伴う強制力をもたせることは本末転倒であり,百害あって一利なしだと一蹴する。

 b) そもそも現在の感染症結核ハンセン病の感染者の強制収容が法的におこなわれ,蔓延防止の名目のもとで科学的根拠が乏しいにもかかわらず,いちじるしい人権侵害がおこなわれたことの反省の上に立ち,1998年に歴史的な改正がおこなわれて現在に至るものだ。強制入院措置が人権上も,また公衆衛生の実践上も,ディメリットが大きいことは歴史が証明している。

 米村氏は検査を受けて陽性になれば,強制的に入院させられ,拒否すれば刑事罰が与えられるようになれば,検査を受けたがらない人や,個人的に検査を受けてもその結果を公表しない人が続出し,結果的に公衆衛生上の効果が上がらないことが予想されると指摘する。

 とくに,コロナに関しては,個人的に検査ができる検査キットなどが広く普及しはじめている現状では,陽性者に多大な法的リスクを負わせるような法改正をおこなえば,多くの人は自分が陽性である事実を隠すことは目にみえている。強制措置はかえって公衆衛生上のリスクを増大させるだけだというのだ。

 c) また,特措法にもとづく休業や時短要請に応じない事業者に対して,過料や刑事罰を含む法的な拘束力をもたせることについても,慎重さが求められる。十分な補償を受けながら密かに営業を続けるような悪質な事例に対しては,なんらかの罰則が適用されることはあってしかるべきかもしれないが,ほとんどの事業者にとっては,十分な補償がないままで休業を強いられれば,それはただちに死活問題となる

 従順に政府の指示にしたがった結果,会社が倒産したり失業したとしても,政府が補償してくれるわけではないとなると,リスクを承知の上で営業を続けざるをえない事業も出てくるだろう。

 本来は十分な補償によって事業者の協力をえられるようなかたちにしなければならないはずで,それにしたがわない事業者が多く出ているとすれば,それは補償が不十分なために,したがいたくてもしたがえない事業者がたくさんいるということに他ならない。

 むしろ問題は,政府が本来すべきことをやらないまま,もっぱら民間の事業者や個人に犠牲ばかりを求めたあげくのはてに,要請に応じない相手には法の力で相手をねじ伏せてでも犠牲を強制しようとしている政府の姿勢にあるのではないだろうか。これは本末転倒も甚だしい。

 d) 以前から米村氏が指摘するように,日本は人口当たり世界一の病床数を誇る。そして,現在の日本の感染者数は,ここに来て急増しているとはいえ,まだアメリカの75分の1程度,イギリスやフランスの数10分の1程度に過ぎない。にもかかわらず,すでに日本の医療が崩壊の淵にあるとすれば,それはなにか日本の医療行政に重大な欠陥があるとしか考えられないではないか。

 米村氏が指摘してきたように,現在の医療法のもとでは政府は医療機関に対して病床の転換を要請することしかできない。お願いするしかないのだ。結果的に日本の全医療機関の8割を占める民間医療機関のうち,わずか2割程度の病院しかコロナ患者は受け入れていない

 昨今メディアが騒いでいる日本の医療危機や医療崩壊は,コロナ患者を受け入れている全体の3割程度の医療機関でのみ起きていることなのだ。

 こうした状況を受けて1月15日,政府が感染症法の16条の2項を改正して,医療機関に対して感染者の受け入れを現在の「要請」から「勧告」できるようにするとの意向が,一部のメディアによって観測気球のように報じられた。しかし,米村氏は「要請」を「勧告」に変更するだけでは実効性は期待できないと断じる。

 e) そもそも勧告というのは,勧告に応じなかった場合に,そのつぎの段階としてなんらかの強制なり制裁なりが設けられていて初めて意味をもつ。単に文言を勧告に変えても,政府の権限の強化にはつながらず,よって世界一の数を誇る日本の病床がコロナ病床やICUへの転換が進むとは考えにくいと米村氏はいう。

 政府の権限を強化して病床の転換を進めても,人員の確保ができなければ意味がないとの指摘もあるが,これに対しても米村氏は,そもそも政府が医大の定数を抑えて医者の数を制限してきたのも,医師会などの医療界の意向を受けたものだったことを指摘。

 結局,医師会の政治力などとも相まって日本では医療が聖域化し,政治も行政も一切手を付けられなくなっていることの大きなツケが,今回のコロナで回ってきたのだと語る。

 f) 実は1月13日の総理の記者会見で,ビデオニュース・ドットコムの記者の質問に対し,菅総理が意外な言葉を発したことが,一部で波紋を広げている。

 ビデオニュース・ドットコムからの質問で,なぜ政府は医療法を改正して,政府が医療機関に対して命令できる権限の強化を図ろうとしないのかを問われた菅総理は,医療法の問題は「これから検証する」しか答えなかった一方で,唐突に「国民皆保険も含めて検証する」と述べたのだ。

 これを聞いた人のなかには,「質問の意味を理解できなかった総理が意味不明な事をいいはじめた」とか,「総理は新自由主義的な思想的背景から,国民皆保険の廃止を常々考えていたので,本音がぽろっと出てしまったのではないか」などといった観測がネットを中心に広がった。

 しかし,厚生労働委員会の委員で医療行政に詳しい青山雅幸衆議院議員(無所属)は,あの一言は医療界に衝撃を与えたと指摘する。青山氏によると,国民皆保険は,もちろん国民にとってもなくてはならない大切な制度だが,それにも増して医療界にとっては,ほかのなにを措いても絶対に死守しなければならない最大の利権だ。

 総理が場合によっては国民皆保険にまで手を出してくるというのであれば,医療法の改正や感染症法の改正によって,国の医療機関に対する権限を多少強化することくらいは容認せざるをえないと考えても不思議はない。

 実際,あの発言の翌日に,感染症法の改正案の報道が流れたが,医師会や医療界から目立った反対意見は,いまのところ聞かれていない。おそらくあの一言が効いているのではないか,と青山氏はいうのだ。

 ただし,青山氏は総理があの単語を意図的に発したのか,それともあれは単なる事故だったのかについては,定かではないともいう。

 g) いずれにしても,コロナの蔓延によって,日本の最後の聖域といっても過言ではない医療界の一端が,「政府は民間医療機関に対して非常時であっても病床の転換すら命じることができない」というかたちで表に出てきた。

 目の前の感染拡大にもしっかり対応しなければならないが,こうした構造問題を放置したまま,事業者や個人に犠牲を強いたうえ,さらにそれに強制力をもたせる法改正をおこなうというのは,やはり順番が逆ではないだろうか。

 この ⑥ に関する寸評は,⑦ のあとにまとめて記述する。

 

 「医学会連合,罰則反対の緊急声明」朝日新聞』2021年1月15日朝刊30面「社会」

 新型コロナ患者が入院を拒んだ場合などに罰則を設けることを盛りこんだ感染症法改正を政府が検討していることについて,日本医学会連合は1月14日,門田守人(もんでん・もりと)会長名で緊急声明を発表した。入院強制や検査・情報提供の義務に罰則を伴う条項を設けることに反対している。

 日本医学会連合は,医学系136学会が加盟する学術団体。緊急声明では,かつてハンセン病などで,「科学的根拠が乏しいにもかかわらず患者・感染者の強制収容が法的になされた歴史的反省のうえに成り立つことを深く認識する必要がある」と説明。

 入院を拒むのにはさまざまな理由があるかもしれず,「感染者個人に責任を負わせることは,倫理的に受け入れがたいと言わざるをえない」とする。日本公衆衛生学会と日本疫学会も同日,連名で同様の声明を出した。(引用終わり)

 要は,菅 義偉がいいたい核心は,こうなっていた。コロナ禍の対策というものは,なによりもまず先に,国民たち側で「自助!」「自助!」「自助!」が絶対に必要だ,というわけであった。

 そしてつぎに,それに努力をしない者は,国家「公助」(?)の見地をもって「罰するぞ!」「課金するぞ!」という脅迫・強制の方法が待ちかまえている。この種の入り組んだ相互関係は,いってみれば,国民と国家との「共助」的な観念の発揚だとでも解釈したらよいのである。

 以上,菅 義偉流の「自助,共助,公助」という方程式の,唯一の絶対に正しく許される解法であった。

 なかんずく,日本の医療制度としての「病院のあり方」は,コロナ禍に対してまともに対応できない弱点を有しており,この事実がいまさらのように露呈させられていた。それにしてもここまで来ると,菅 義偉という首相の存在感は,実は, “無にひとしい” というほかなかった。

 ついでに指摘しておくべきは,「制度的な存在として」なのだが,肝心の厚生労働省という官庁組織の有害無益性が,いつまでもきわだっている事実である。

 もっともそれ以前の重大な問題があった。菅 義偉政権はいまだに,コロナ禍対策として構築されねばならない「有事体制」そのものを,まともに準備できていなかった。というより,菅にはそれにとりかかれるような「国家最高指導者としての理解力や決断力」を,元来もちあわせていなかった。

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 日本の政治の舞台には,あの「嘘つき宰相」の後釜にこの「半グレみたいな首相」が飛び出てきた。この人物にコロナ禍との「昼間の決闘」を期待してみたところで,とうてい無理であり勝負になりえない。この首相の得意技のひとつは,夕刻以降に豪華なランチで会食することでもあったゆえ……。

 なにせ,敵は無数からなる新型コロナウイルスの大群であり,しかも変幻自在に「各種の変異種」まで登場させて襲ってくるではないか。しかも,われわれの味方であるはずの日本国首相:菅 義偉が,いつまで経ってもトンチンカンな言動・対応しか記録していなかった

 くわえてまずいことには,この大将ときたら「▼カ」という形容を冠にいただいており,つまり「コロナという敵よりも怖い」総理大臣だったとなれば,いまこの日本に生きている人びと:われわれは,当分の間,コロナに対する自己防衛に死に物狂いで専念するほかないのかもしれない。やはり「自助,自助,自助!!!」という帰結になるのか。

 この国家の国民たちは,自助ばかり迫られており,いまやそのほとんどが沈没寸前……,冗談ではない。

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【参考記事】

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