2021年1月18日の菅 義偉首相による施政方針演説は,この政治屋の無策証明になっていた

 菅 義偉「施政方針演説」に読みとれる空虚さ,コロナ禍に無力・非力でありつづけて来た自民党公明党政権

 いまだに東京オリンピックを開催し,「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証(あかし)」にできるなどと妄想している,果てしもなく絶望的な「亡国の首相」ぶり 

 菅 義偉が施政方針演説のなかでいわく,「東京オリンピックパラリンピックは,人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,また,東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思います。感染対策を万全なものとし,世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するとの決意の下,準備を進めてまいります」

 これをごく一般的な国民的・庶民的な感覚で論理的に精一杯表現するとしたら,五輪やる「カネ・ヒマ」などあるなら,そのために充ててきた経費全部を新型コロナウイルス感染拡大「問題」に向けるべきであったが,時すでに遅し

 IOC関係者などのほうからは,コロナ禍のもとで東京オリンピックの開催是非はWHOの判断を仰ごうなどと無責任きわまりない発言がなされている状況のなかで,「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」に利用したいという五輪開催を夢想するのは,非現実的きわまる感覚マヒ

 【参考記事】

 ましてや「東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思」うのは,菅 義偉1人だけの勝手であっても,この国の首相が口にしてよい文句ではない。「原子力緊急事態宣言」も解除できない現状のなかで,五輪を開催したとしてなんの意味があるのか

 菅 義偉首相が1月7日,新型コロナウイルス感染拡大「問題」に向けて発令した「緊急事態宣言」に関しては,一月後には「絶対に・必らず」コロナ禍を収束させると発言していたが,これを聞いた瞬間,「アチャー,これはダメだ」という印象を抱かされた

 【参考記事】

 

  2021年1月初旬に菅 義偉が語ったことなど

 「頑なにコロナ対策の失敗を認めない菅首相 ブレーンの心も折れたか」『YAHOO!JAPAN ニュース』2021/1/15 (金) 7:05  配信,https://news.yahoo.co.jp/articles/e19db94e4542df9f180667b31340b3bf3d7d82e0(元記事『NEWSポストセブン』)が,菅 義偉の首相としての言動を,つぎのように報告していた。

 --菅 義偉・首相は年初からの10日間で4回,国民に語りかけた。1月4日の年頭会見では,「絶対」とこう強調した。

    「医療崩壊絶対に防ぎ,必要な方に必要な医療を提供いたします」

 1都と3県に緊急事態宣言を発出した1月7日の記者会見では「必らず」とこう断言してみせた。

    「1か月後には必らず事態を改善させる。そのために総理大臣としてありとあらゆる対策を講じてまいります」

 しかし,国民の何人がそれを信じただろうか。「あらゆる対策」といいながら,菅首相はコロナ変異種が国内で発見されても11か国とのビジネス往来の停止を先送りし,Go To イートの停止も「自治体の判断」に任せて,全国半数の県で続けられている(1月7日時点)。

 補注)その後,「11か国とのビジネス往来」は1月14日から停止せざるをえなくなっていた。

 菅首相自身,自分の言葉を信じてはいない。会見翌日に出演したテレビ朝日報道ステーション』のインタビューでそれがはっきり分かった。もし,1か月後に結果が出なかったら営業規制の対象拡大や宣言延長の可能性はあるのか。国民がしりたい疑問だ。

 そのことを問われると,こういってのけた。「仮定のことは考えない」〔などと発言もしていが,いったい〕, “あんたが考えなければ誰が考えるんだ” と国民を呆れさせた。

 1都と3県に続いて大阪,京都,兵庫の知事が緊急事態宣言を要請すると,その判断も丸投げした。

 「政府の分科会の専門家は『もうしばらく様子をみて,分析したい』という方向だったようだ。いずれにしろ,必要であればすぐ対応できるような準備をしている」(1月10日のNHK『日曜討論』)。

 菅首相は二言目には「必要があれば躊躇なくやる」というが,必要かどうかの判断は丸投げだ。そんな総理に,危機の打開を託せる道理がない。

 今日の時点で,最新のコロナ禍関連の報道としては,こういうものがあった。

     渡航歴ない静岡の3人,変異種に市中感染か…英国由来で感染力高い可能 ◆
  =『読売新聞 オンライン』2021/01/19 06:39,https://www.yomiuri.co.jp/national/20210118-OYT1T50233/

 

 厚生労働省は〔1月〕18日,新型コロナウイルスに感染した静岡県内の男女3人から,英国で流行する変異種が検出されたと発表した。3人に海外への渡航歴はなく,渡航歴がある人との接点も現時点で確認されていない。感染経路が不明な変異種の感染者が明らかになるのは初めてで,厚労省は変異種の市中感染が広がっている可能性があるとして警戒を強めている。

 

 発表によると,変異種が見つかったのは,静岡県内の20歳代女性とその濃厚接触者の40歳代女性のほか,60歳代男性。3人は,県内の同じ地域に居住している。いずれも今月上旬に症状が出て,現在は自宅で療養中だという。3人に海外への渡航歴はなく,厚労省の担当者は「国内で感染したとみられる」とし,感染経路を調べている。

 

 英国由来の変異種は,従来のウイルスより感染力が最大70%高い可能性がある。国内ではこれまで,南アフリカとブラジル由来の変異種も含めて41人の感染者が確認されているが,いずれも海外から入国した人や,渡航歴のある人の濃厚接触者だった。

 

 18日夜,東京都内で記者会見した国立感染症研究所の脇田隆字所長は「面的な広がりをもって,市中感染が起きているという認識はしていない」との見解を示した。今後,静岡県内で変異種の感染状況の調査体制を強化するという。

 

 厚労省はこのほか,英国から入国した東京都の20歳代男性1人からも英国の変異種がみつかったと発表した。


 「菅 義偉首相・国会施政方針演説」2021年1月18日から抜粋しつつ

 1) ブラックユーモアとしての施政方針演説

 まず最初に,菅 義偉は「内閣総理大臣に就任し,政権を担って4カ月,直面する困難に立ち向かい,この国を前に進めるために,全力で駆け抜けてまいりました。そうしたなかで,私が,一貫して追い求めてきたものは,国民の皆さんの『安心』そして『希望』です」と来た。

 この施政方針演説は冒頭から怖い文句を出している。菅 義偉の政治はそもそも特高的・憲兵隊的なな国民監視体制を採っており,「オレのいうことを聞かない奴は潰す」がモットーである専制的独裁志向の為政をしている。

 結局,コロナ禍のためにそれでさえ不安になっている国民たちの気持を逆なでするかのような為政しかできない,この政治屋:菅 義偉君の口を介して,「一貫して追い求めてきたものは,国民の皆さんの『安心』そして『希望』です」と説かれた分には,冷汗モノでしかありえない。

 2)【観光立国】で菅 義偉首相いわく,「我が国には内外の観光客を惹きつける『自然,気候,文化,食』がそろっており,新型コロナを克服した上で,世界の観光大国を再びめざします」と。

 コロナ禍を促進・昂進させる結果を誘引しただけであった「Go To トラベル」キャンペーンや「Go To イート」政策を,しかも私権(私物化の「いまだけ,カネだけ,自分だけ」の4流政治)がらみに展開してきた張本人の1人が,いったいなにをいうかと思いきや,最後の部分でこういう〈空念仏〉まで唱えていた。

 夏の東京オリンピックパラリンピックは,人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証(あかし)として,また,東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思います。感染対策を万全なものとし,世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するとの決意のもと,準備を進めてまいります。

 

 まずは,1日も早く感染を収束させ,皆さんが安心して暮らせる日常,そして,にぎわいのある街角を取り戻すため,全力を尽くします。未来への希望を切り拓くため,長年の課題について,この4カ月間で答えを出してきました。

 

 皆さんに我が国の将来の絵姿を具体的に示しながら,スピード感をもって実現してまいります。1人ひとりが力を最大限発揮し,たがいに支え,助けあえる,「安心」と「希望」に満ちた社会を実現します。

 3)   この結論部の主張は「国家主体」の存在(その意識をもち,決断をする組織人格体)が欠落している。この国の未来像は国民たちが,もっぱらかつひたすら「自助」で生活を構築・展開していくべき必要性を定言している。国家の責任である「公助」はどこにあるのか(?),皆目見当すらつかない「迷演説」になっていた。

 「国家じたい」が「力を最大限」に「発揮し,たがいに支え,助けあえる」医療体制を構築することに第1義的な関心がなかった,いままで政府による「対・新型コロナウイルス感染問題」に対する対応ぶりは,国民たちの日常生活に対して「不信」と「絶望」を与えつづけてきた。

 菅 義偉の施政方針演説は,〈現状のごとき不安な社会〉を踏まえていえば,言語道断どころか支離滅裂のきわみであり,つまりは絵空事である。

 4)   そもそも菅 義偉は前段で,自身が2020年9月16日,首相になって以来,「未来への希望を切り拓くため,長年の課題について,この4カ月間で答えを出してきました」と誇っているが,実際にその間に進行してきた日本の政治の評価については,「政府への忖度心あふれる新聞社」による世論調査の結果(最新)であっても,内閣支持率が不支持率を下回る結果に転じていた

 ※-1 菅内閣「不支持」49%・「支持」39%で初の逆転,コロナ対策に強い不満か,読売世論調査

  --『読売新聞 オンライン』2021/01/18 08:09。

 

 ※-2 菅内閣の支持率は33%で,2020年12月12日におこなった前回調査の40%から7ポイント下落した。不支持率は57%(前回49%)だった。2020年9月の政権発足直後の調査で64%だった支持率は,前回に続いて大幅に低下し,不支持率が上回っている。

  --『毎日新聞 Web 版』2021年1月16日 17時00分。 

 菅 義偉自身は誇れるものとして表現しているらしいが,「この4カ月間で答えを出してきました」といった政権の行状は,国民たちからすると,以上のような評価を下されていた。菅 義偉君,冗談も休み休みいったらどうか,というところである。

 だが,この首相は,コロナ禍の発生・継続を奇貨として,戦前・戦中のごとき特高警察や憲兵隊などによるごとき監視体制をととのえようとしており,「国民たちの日常生活」を強権・強圧的に見張り,不当かつ不法な統制をくわえようとしている。となれば,菅 義偉はすでに首相失格の烙印を押されたも同然である。

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 【参考記事】

 

  コロナ禍が猛威を振るっているヨーロッパのなかでも,フランスの場合を実際に体験しつつある日本人がこう指摘

    ★〈声〉日本の対策,人権配慮あるか懸念
       大学生 高山清人(フランス〔在住〕22歳) ★
     =『朝日新聞』2021年1月19日朝刊「オピニオン」=

 

 私はフランスに留学中だ。2回のロックダウンを経験し,ホームシックにもなったが,いまは帰国したくないとも思う。日本では,基本的人権に十分配慮がなされていないように思えるからだ。

 

 「自粛警察」が,その典型。休業要請や外出の自粛に応じていないと匿名で通報したりする。日本の新型コロナ対策は任意が原則だが,その背後に「空気」という曖昧な同調圧力も働いているのではないか。

 

 かたやフランスでは,外出や営業の許可条件は具体的に列挙され,違反すれば罰金を科せられるが,ルールは明確だ。取り締まるのも警察官で,民間人が民間人を「いやがらせ」する例は聞かない。

 

 人権上の問題は「自粛警察」だけではない。第1波のさい,日本政府は有効なビザをもつ外国人の再入国を拒否した。日本に住む外国籍の私の友人は日本を離れられず,家族と断絶され,苦悩していた。

 

 そしていま,日本政府は海外から帰国する日本人や在留資格のある外国人に,入国後14日間の待機などを誓約させ,従わない者の氏名や国籍を公表するという。対象となる人の権利にも十分配慮してほしいと願う。

 まるで戦時体制下の軍国日本の諸世相を彷彿させるのが,現状のコロナ禍下の21世紀日本である。安倍晋三東條英機に並べて立たせて比較する話題に触れたことがあったが,こんどは,菅 義偉を憲兵に,それも下士官のそれにたとえたらいいかもしれない。しかし,いまは1940年代前半の時代ではない。

 

 ここまで書いてきたところへ,開催中の大相撲1月場所関係の記事として,こういう報道がなされていることに気づいた。

 記事の見出しは「大相撲・九重部屋で親方ら5人新たに感染判明 全力士が休場中」『毎日新聞』2021年1月19日 00時38分  となっており,本文は「九重部屋初場所前に協会が実施したPCR検査の結果,前頭・千代翔馬十両・千代鳳,幕下以下の力士2人が陽性で,所属する全力士らが休場している」と書いていた。

 日本相撲協会は,1月場所が開始される寸前であったが,その2日前の8日に力士や関係者全員のPCR検査を実施した結果,陽性が判明した力士たちを休場させたりして,この場所の興行にこぎつけていた。そのニュースについて本ブログ筆者はすでに,つぎの記述で言及していた。

 この記事を書いたあとに湧き出てきた疑問が,かつてWHOの事務総長がこう語っていた事実に関連することがらであった。

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は〔2020年3月〕16日の記者会見で,新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け,感染者の特定が鍵を握るとして,対象を拡大して徹底的にウイルス検査をおこなうよう各国に求めた。「検査,検査,検査。疑わしい例はすべて検査するのだ」と述べた。

 註記)「 WHO事務局長,検査の徹底要求」『京都新聞』2020年3月17日 18:56, https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/189313

 というのは,日本相撲協会は1月8日という日付,1月場所が開始される寸前の時期にあわててPCR検査をしたかのように受けとれるが,テドロス事務総長の指示にしたがえば,場所の開催中にも検査しなくてもよいのかという疑問を,本ブログ筆者はもっていた。

 新型コロナウイルスの感染が陽性になる・ならないという問題については,2週間という期間をかけて観察されるべき必要性が強調されていた。とすると,九重部屋の親方・力士・行司たちだけでなくても,つまり,ほかの部屋(まだ感染者を出していない)であっても,これから発症する事例が絶対にないとはいえないし,場所中にもさらにPCR検査をおこなっておくことは,用心に越したことはない対策として,むしろ必要な措置である。

 日本相撲協会の興行はある意味,東京オリンピックの開催にとっても,非常に重要な関連性を有することはいうまでもない。ということであれば,菅 義偉や森 喜朗,小池百合子などの利害にとって,以上のニュースはまことに嫌な中身である。

 

  情けない日本の報道機関,外国のマスコミ・メディアに東京オリンピックの開催「不可能性」を語らせる腰抜けぶり

 2020東京オリンピックのスポンサー(オフィシャルパートナー)にくわわっていない『東京新聞』が,つぎの報道をしていた。

 1)「東京五輪中止の可能性,米紙が報道 IOCでも『安全な大会開催は不可能』との声も」『東京新聞』2021年1月16日 10時27分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/80267

【ニューヨーク=共同】 米有力紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は〔1月〕15日,新型コロナウイルスの影響で今夏の東京五輪の開催見通しが日々きびしさを増しており,第2次大戦後,初の五輪開催中止に追い込まれる可能性があると伝えた。

 

 同紙は,日本と米国,欧州主要国で感染拡大が続き,国際オリンピック委員会(IOC)らの間で,安全な五輪開催は不可能との声が出はじめたと指摘。ディック・パウンドIOC委員(カナダ)が開催に「確信がもてない」と述べたことなどを挙げた。

 

 現状の開催計画でも約1万人の選手らは,競技終了直後に選手村を離れることを求められるなど日本での行動はきびしく制限され,取材記者も東京都内での自由な移動は禁じられるだろうと指摘。開催される場合,選手や関係者らが従来にない不自由さを強いられるとの見通しを示した。

 1年延期になっている2020年東京オリンピックの開催(決行)を信じたい菅 義偉は,だから,冒頭に紹介したように,

 「東京オリンピックパラリンピックは,人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証(あかし)として,また,東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思います。感染対策を万全なものとし,世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するとの決意の下,準備を進めてまいります」

などと,脳天気である精神状態さえですら,はるか以前に通り越していたかのような,いってみれば「『希望的観測』という名のアクセル」を目いっぱいに踏むだけの発言をしていた。

 現時点において評価するとしたら,すでに人間・人類側が新型コロナウイルスによる感染症によって「打ち負かされている」状況に置かれており,世界的規模でもっての感染が急速に拡大しつつある。

 にもかかわらず,いまごろになってもまだ,日本の首相が独自に「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」を口にしたり,さらにいえば,1年前から現時点までまで 「連続して後手後手にまわってきた」のが,日本におけるコロナ禍対策であった。要は,失敗ばかり重ねてきたのである。同時にまた,原発事故を惹起させた「東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」などと発言できるその神経が疑われる。

 「Go To トラベル」キャンペーンを積極的に展開させてきたためにコロナ禍をさらに拡大させる結果を呼びこんでいた当人が,新型コロナウイルスの「感染対策を万全なものとし,世界中に希望と勇気をお届けできる〔五輪〕大会を実現する」ことなど,とうてい無理ではないか。そうだというほかない段階になってもまだ,菅 義偉は,首相の施政方針演説のなかで,実にみっともないホラー(法螺)話を吹聴していた。

 すでに,日本の政治じたいが完全にコロナ禍に「打ち負けている」わけである。ところが,安倍晋三前政権を引きついだ菅 義偉現政権が,いまだに「コロナ・ウイルスに打ち勝つ」と念仏を唱えているようでは,片腹痛いどころか五臓六腑全部がきしみだすほかない。冗談にもならない言辞が菅 義偉の口から吐き出されていた。

 2) 『東京新聞2021年1月19日朝刊の記事が菅 義偉の施政方針演説を,つぎのように批判していた

 東京オリンピックの開催に関しては,東京新聞社はそのスポンサー企業としてオフィシャルパートナーにはなっていない。『東京新聞』は,菅 義偉の施政方針演説を遠慮なく分析・批判していた。

    ◆「経済成長」「観光立国」宣言するも…コロナ収束への展望は?

            菅首相の施政方針演説〉◆
 =『東京新聞』2021年1月19日 06時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/80637?rct=coronavirus

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 コロナ禍が収まらず,政府が11都府県に緊急事態宣言を出し,「医療崩壊」の懸念も強まるなかで菅義偉首相がおこなった施政方針演説。

 いつまでの宣言解除をめざし,収束への道筋をどう描いているのかという展望を,首相が口にすることはなかった。相対的に「経済の成長」や「観光立国」など,収束を前提にした政策に力点を置いた印象が強く,国民の疑問に答えたとはいいがたい。

 1) 見通し説明せず願望を語るだけ

 首相は演説の冒頭で「深刻な状況にある新型コロナを1日も早く収束させる」と強調。「いま一度,国民の協力をいただきながら難局を乗り越えていく」とも訴え,まずコロナ対策から語りはじめた。

 だが,対策の内容は飲食店の営業時間短縮,テレワークの7割実施など,宣言の再発令時に言及した項目ばかりだった。国民の関心が高い緊急事態宣言の解除の見通しは明確に説明せず「ステージ4」から早急に脱却したいと話すにとどめた。

 現在の宣言期間である2月7日までの解除は困難との見方が専門家からも出ている中で「1日も早く」「早急に」との言葉に説得力をもたせる根拠は見当たらなかった。

 2) 医療体制も具体策ほとんどなし

 逼迫する医療提供体制についても「あらゆる方策を尽くし,医療体制の確保を強力に進めていく」と決意を披露したものの,具体策は「病床1床当たり,最大1950万円を助成」という発表済みの対策のみ。時短要請に応じた飲食店への対策でも,懸案である納入,生産など関連業種への支援に言及しなかった。

 約45分間の演説のうち,コロナ対策は8分ほど。衆院本会議場では,首相がテーマを東日本大震災からの復興に移すと,野党席から「これで終わり?」とヤジが飛んだ。

 3) 方針転換示さず抽象的な言葉並ぶ

 昨〔2020〕年10月の臨時国会での所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぎ,社会経済活動を再開して経済を回復する」と力説した首相。約3カ月で感染は拡大し,今回は「コロナ対策と経済の両立」の表現が消えた。

 とはいえ,両立から転換したともいわず,言葉の端々から経済重視の思いがにじみ出た。「ポストコロナの時代においても,わが国経済が再び成長し,世界をリードしていく」との言葉が象徴的だ。

 停止を余儀なくされている政府の観光支援策「Go To トラベル」にこそ触れなかったものの「コロナを克服したうえで世界の観光大国を再びめざす」と明言。東京五輪パラリンピックの開催にも意欲を示し「人類がコロナに打ち勝った証し」と位置づけた。

 4) 感染どう制御していくか分からず

 政府関係者は演説にこめた首相の思いについて「首相として経済にも目配りするのは当然だ」と説明する。演説の締めくくりに,若手時代に政治の師と仰ぐ梶山静六官房長官から「国民に負担をお願いする政策も必要」といわれた経験に触れ「私の信条」と語った首相。

 野党は20日からの各党代表質問でコロナ対策を集中的に取り上げる見通しで,立憲民主党福山哲郎幹事長は記者団に「なぜ医療が逼迫したのか,どう克服するかの説明がまったくなかった。説明をせず,協力だけ求められても国民は納得できない」と指摘した。(引用終わり)


  菅 義偉首相の対コロナ禍対策(違反者取り締まり方法)の基本的な間違い

 ここでは,菅 義偉の考え方,つまり,コロナ禍対策として国家側がたいした手当も支援も準備・提供しないまま(「公助」は完全にあとまわし),ただ一方的に国民たちに協力を要求・強制する手法(「自助」ばかりに頼るそれ)は,完全に初めから失敗を約束されているコロナ禍策としか思えない。

 つぎのごとき国際政治学者の意見を紹介しておき,本日のむすびのための記述としておきたい。この記述を本文すべてを引用すると長くなるので,本日,以上までの記述にとくに関連の深い段落のみ紹介しておく。

 註記)六辻彰二・国際政治学者「入院拒否のコロナ感染者に罰金・懲役」の落とし穴-海外の教訓」『YAHOO!JAPAN ニュース』2020/1/16(土) 8:54,https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20210116-00217785/

 六辻彰二によるこの記述は,まず「『隔離違反』」への罰則」を「諸外国の事例」に即してとりあげてから,つぎにこの「罰則強化の落とし穴」にも言及する。

 なかでも「シンガポールの『成功』」に注目できるとはいえ,「人口が600万人にも満たない都市国家で,おまけに徹底して私生活を監視できれば,罰則も機能するかもしれない。しかし,G. オーウェルの『1984〔年〕』を想起させるほどのシンガポール並の監視体制は,ほとんどの国にとってハードルが高い」ともいって,この前提条件には十分注意するようにうながしている。

 六辻はさらに「罰則が効果をあげる前提条件とは」という肝心な論点にも触れて,こう解説している。

 もっとも,そのシンガポールでさえ厳罰主義だけで隔離を進めているわけではない。シンガポール政府は「隔離違反」に罰則を科すと同時に,コロナ感染者が出て所得が減少した家族に500~1000Sドル(4万~8万円)を支給しているほか,コロナで失業した場合には職業訓練などを受けることを前提に月額800Sドル(6万円),犠牲者が出た家族には1万~3万Sドル(78万~235万円)の一時金を支給している。

 

 低所得層の感染者への資金援助は,イギリスなどでもおこなわれている。イギリスの場合,隔離によって働けない低所得層や収入が減少した人には500ポンド(7万1000円)が支給される。しかし,シンガポールの場合,こうした補助は保健当局の指示に従っていたことが前提であり,さらに追跡調査の精度が高いためにウソがバレやすいことが「隔離違反」をよりむずかしくしている。

 

 付けくわえると,シンガポール政府は経営者に従業員が密にならない環境を整えたり,従業員の健康状態を定期的にチェックしたりすることを義務付けており,これらに従わない場合は企業に営業停止や罰金が科されることもある。こうした環境を整えることは,感染した従業員が経営者にそれを隠すこともむずかしくする。

 六辻いわく「こうした制度の組み合わせがあるからこそ,「隔離違反」の罰則は効果をあげやすい。逆にいえば,ただ罰則を強化しても,絵に描いた餅になる可能性すらあるのだ」と。ひるがえって,菅 義偉が妄想しているコロナ禍対策としての「罰則・懲役」法案を検討すると,以下のごとき問題がある。

 だとすると,日本での入院拒否への罰則に関する議論は,必要だとしてもバランスを欠いたものといわざるをえない。菅総理をはじめ政府関係者はしばしば「できることは全部やる」と呪文のように唱えるが,他のできることをすべてやって,そのうえでどうしようもないから罰則,という手順になっていないからだ。

 

 自治体によっては病床が逼迫し,自宅待機中に死亡する人も出ているなか,すべての感染者に「入院」を義務付けることじたい,現実性が乏しい。隔離施設も十分でないなら,症状によっては自宅待機もやむをえないが,無症状だからと勝手に外出する者をどうやって監視・管理するのかについて,政府からは聞こえてこない。

 

 アメリカのように性犯罪の常習者にGPS端末を取り付けることすらしていないのに,コロナ感染者や濃厚接触者にそれができるのだろうか。

 

 あるいは,日本では時短要請に応じない飲食店への罰則のみが注目されやすいが,シンガポールをはじめ各国ではコロナ対策に反する消費者もまた制裁の対象となる。この点も日本では手付かずだ(「静かな年末年始」を呼びかけた張本人たちがステーキパーティやらフグ会食やらしているのでは取り締まりもできないだろうが)。

 

 さらに,日本でも非正規雇用を中心にコロナで失職する人が増えているが,感染者が治療に専念できる体制は十分ではない。労働環境に関しても,政府は企業経営者に密の回避,従業員の安全確保,雇用の確保などを「要請」するにとどまっている。

 

 こうした穴だらけのなか,感染者のみを,しかも法令のうえでだけ厳罰で縛ろうとすることは,政府の「やってますアピール」にはなるかもしれないが,実効性が疑わしいばかりか,ただ感染者への偏見や差別を助長しかねない。必要な場合に厳罰を躊躇しないだけでなく,どうすれば自発的に従うかを考えるところに政治家のウデの見せ所があるはずなのだが。

 菅 義偉の対・コロナ対策の行く末は,すでにいまから予測できそうである。1月7日に発令された第2回目の非常事態宣言は1カ月後の解除を設定しているが,この先の2月7日で解除できるとは思えない。そうなれば,東京オリンピックの開催など,とうてい不可能……。それでも菅は「必らず・絶対に」解除できるかのように発言していた。

 この人,いったい,何人? 宇宙人? 日本国を壊滅させに,どこかの星から派遣されてきた某エージェントか? 本当はガースーでスガ……。

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