どうにもならない「東電福島第1原発事故の後始末」,いつになったら「廃炉工程」にまで進める日が来るのか,いまだに五里霧中状態で惨憺たる事故現場

 原発は「原子力(原爆)の平和利用」などといったマヤカシの標語が,早半世紀以上の昔,アメリカ大統領の口を通して提示されていた

 いまとなってみれば,2011年「3・11」東電福島第1原発に発生した深刻・重大な事故は,原爆に似た爆発事故を起こした「MOXを利用していた3号機」が とくに,事後,非常に始末に悪い状態のまま,今日まで来ている

 この状況は,これからも時代を10年単位で刻みながら,しかも解決の抜本には至りえないままズルズルと引っ張っていくほかない「東電福島第1原発事故の〈現状〉」を意味している

 げに恐ろしき原発,技術的には湯沸かしヤカン程度の発電装置が原子力を利用する機械であるがために,これからも人類・人間に対して非常な危険性を災厄としてをもたらしつづける

 

  要点・1 原発は廃絶する必要がある

  要点・2 しかし,それでもその後始末や廃炉工程は半永久的に仕事・負担を課し,人類・人間はその事後管理に精力を費やしていく

  要点・3 原発再稼働を叫ぶ自民党系議員は日本もいま核兵器がほしいと考えている


 「MOX燃料加工事業の概要」に関する日本原燃の説明

 日本原燃日本原燃株式会社)のホームページには,原発にかかわる企業としてその事業の目的をめぐって,自社のシンボルマーク(以下の画像資料)を,イメージ的にだがこう説明している。

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 当社のシンボルマークは,日本原燃が,社会と調和しながら発展していく姿を表しています。

 横長の無限大は,当社を表し,成長する若葉と原子燃料サイクルをイメージしています。

 縦長の無限大は,永遠に発展する地域社会をイメージしています。
 また,中央の輪は,二つの無限大を結びつけ,当社と地域社会とのコミュニケーションの輪を広げ,調和と信頼の醸成をイメージしています。

 JNFLは,Japan Nuclear Fuel Limitedの略称です。

 日本原燃は1992年7月1日,日本原燃サ-ビス株式会社(1980年3月1日設立)と日本原燃産業株式会社(1985年3月1日)が合併し,資本金4,000億円をもって発足した。

 株主構成は全国9電力会社,日本原子力発電(株),その他74社である。

 補注)大手電力会社10社とは,東京電力関西電力中部電力東北電力九州電力中国電力四国電力北海道電力北陸電力沖縄電力の10社を指す。ここで「全国9電力会社」とは,沖縄電力をのぞいた各社を意味する。沖縄電力原発保有していない。

 売上高は,1971億4200万円(2019年度)。

 従業員数は,2928人(2020年4月1日時点)(青森県出身者  1,828人)。

 事業内容は,つぎのとおりである。

 ウランの濃縮

 原子力発電所等から生ずる使用済燃料の再処理(※)

 (前記 )に関する海外再処理に伴う回収燃料物質および廃棄物の一時保管

 低レベル放射性廃棄物の埋設

 混合酸化物燃料の製造(※※)

 ウラン,低レベル放射性廃棄物および使用済燃料等の輸送

 前各号に付帯関連する事業

 事業所一覧〔のうち〕の所在地

  再処理事業所,青森県上北郡六ヶ所村大字尾駮字沖付4番地108

  濃縮・埋設事業所,青森県上北郡六ヶ所村大字尾駮字野附504番地22

 以上のうちとくに,事業内容の「混合酸化物燃料の製造」(※※)について説明しておく。

 東電福島第1原発事故で爆発事故を起こした1号機・2号機・3号機のうち,「核爆発を誘発した」と指摘されてもいる3号機が,この「混合酸化物燃料」を焚いて発電していた。次表は参考資料であるが,東電福島第1の3号機はもちろん記載されていない。(クリックで拡大可)

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 「MOX燃料(モックスねんりょう,Mixed OXide)とは,混合酸化物燃料の略称である。要は「混合された酸化物」のことだが,以下のように説明される。

 原子炉の使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウムを再処理により取り出し,二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を4-9%に高めた核燃料である。

 MOXは主として高速増殖炉の燃料に用いられる(前掲表では日本の「ふげん」)。既存の軽水炉用燃料ペレットと同一の形状に加工し,適切な核設計をおこなったうえで適切な位置に配置することにより,軽水炉のウラン燃料の代替として用いることができる。これをプルサーマル利用と呼ぶ。

 以上はウィキペディアの説明である。このなかでの「適切な核設計をおこなったうえで適切な位置に配置する」という点には,ある種の恐ろしさを感得されて当然である。そこには,原子力工学的な意味あいでの「MOXの不安定性」が潜んでいる。

 1) 「プルサーマルの危険性を警告する」『核情報』(核情報ホーム>MOX)2006. 2,http://kakujoho.net/mox/mox99l_s.html  は,2011年「3・11」より12年前の記述であった。1999年10月,エドウィン・S・ライマン博士核管理研究所(NCI)科学部長の講演を介して,つぎのようにMOXの利用危険性について警告していた。

 補注)ここでは全文を紹介できず一部を引用するだけなので,興味ある人は上の住所を直接訪ねて読んでほしい。

 なお,前段の記述中にあった点,「原子炉の使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウムを再処理により取り出し,二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を4-9%に高めた核燃料である」という事実,ならびに「適切な各設計」「適切な位置に配置」などとも断わられていた点には,あらためて注意しつつ読みたい。

  MOX燃料が炉心に4分の1〔この場合だと25%〕装荷されていた場合の潜在的ガン死は8630人から7万700人。急性死は44人から827人。MOX燃料が炉心全部に装荷されていた場合の潜在的ガン死は1万5900人から15万5000人。急性死は64人から2420人。

 原文註記)これらの計算は,放出割合がウラン燃料の場合とMOXの場合とで同じだとの想定のもとにおこなわれたものであり,事故から生じる影響の差は,炉内にある総量の差からのみ来るものである。しかし,実際はそうではないかもしれない。

 

 たとえばフランスでおこなわれた VERCOURS という実験では,燃焼度47ギガワット日 / トンのウラン燃料の燃料棒からのセシウムの放出の割合が18%でしかなかったのに対し,燃焼度41ギガワット日 / トンのMOX燃料の燃料棒では,58%に達した。

 

 MOXの使用に伴って増大する危険の大きさからいって,県や国の規制当局はどうしてこの計画を正当化できるのだろうかと問わざるをえない。その答えは,原子力産業会議が発行している  Atoms in Japan  という雑誌のなかにみいだすことができる。

 

 『通産省科学技術庁,福島でのMOX使用を説明』という記事は,つぎのように述べている。

 

 「MOX使用に関する公の会合に出席した市民が,『MOXを燃やす炉での事故は,通常の炉での事故の4倍悪いものになるというのは本当ですか』と聞いた。返答は,事故が大規模の被害を招くのは,燃料が発電所の外に放出された場合だけだ,というものだった。MOXのペレットは焼結されているから,粉状になってサイトの外に運ばれていくというのは,実質的にありえない。だから,事故の際のMOX燃料の安全性は,ウラン燃料の場合と同じと考えられる」。

 

 この返答こそが,MOXの使用を計画している電力会社は,プルトニウムのサイト外への放出に至る事故の影響について評価する必要はないと判断した原子力安全委員会の間違った論理を要約しているといえる。

 補注)この「事故の影響について評価する必要はないと判断した」という点じたいが,非常に恐ろしい技術的(非科学的)な見地であったといわざるをえない。思考停止以前に思考放棄である立場を,それもバカ正直といっていいくらいに告白している。

 

 この論理を使えば,日本の当局にとって都合のいいことに,通常の炉心よりずっと多量のアクチニド 註記)に関連した深刻な安全性問題を,無視することができるのである。MOX燃料は,ウラン燃料と同じく,炉心損傷を伴う重大事故のさいには,細かなエアゾールのかたちで拡散しうるのである。

 註記)アクチノイドとは,原子番号89から103まで,すなわちアクチニウムからローレンシウムまでの15の元素の総称である。

 

 米国で研究されているメカニズムの一つは,炉心溶融発生ののち,原子炉容器が高圧で破損するというものである。

 原発におけるプルサーマル方式によるMOX利用には,特有の危険性が控えている。「3・11」直後における東電福島第1原発事故「3号機の爆発事故」は,1号機や2号機などと同じに水素爆発であったとみなされてきた。しかし,この点はすでに非常に有名な画像資料によっても依然,根本的に疑われつづけている。

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 以下は,この  1)  での「結論」からの引用となる。

 --日本の規制担当者にとって,日本の原子力発電所が米国のものよりリスクが相当低いと考えるのはばかげている。したがって,日本は,MOX燃料を使用する計画を再検討しなければならない。米国の例にならって,重大な封じこめ機能喪失事故が日本でも起こりうるという事実を受け入れ,MOX燃料の使用のリスクを評価すべきである。

 

 このような評価を厳密かつ正直におこなえば,日本の当局は,MOX使用に伴うリスクの増大は,日本人にとって受け入れることのできない重荷であり,将来の日本の原子力産業の焦点は,通常のウランを使った既存の原子力発電所の安全な運転におくべきだ,との結論に至らざるをえないだろう。

 「3・11」を起きる12年前にこのように指摘・批判されていたが,東電福島第1原発の大事故は,以上のごとき「通常時の運転」に関して発生したものではなく,21世紀に特筆大書されるべき原発の大事故東日本大震災によって惹起した大津波によって冠水した4基全部が水素爆発〔など〕する事故)になっていた。しかも,MOX燃料を使用してきた3号機が爆発事故を発生させていた事実は,格別に関心を向けて分析する問題になっていた。

 前掲の画像資料でも分かるように,3号機の爆発はまるで打ち上げ花火のように,噴煙をまっすぐ上空に舞いあげる様子を記録していた。対して,1号機の水素爆発が水平方向に爆風を拡げていたが,こちらの様子とは対照的に3号機は,上方に向けてまっすぐ噴煙を吹きあげていた。

 2)「『福島第一原発3号機は核爆発だった』原発設計技術者が東電,政府を批判AERA dot.』2020.3.9 08:00,https://dot.asahi.com/wa/2020030600008.html(元記事『週刊朝日』2020年3月13日号)

 福島第1原発の事故では1,3,4号機が水素爆発を起こし,大量の放射性物質が大気中に拡散した。だが,3号機は核爆発だったのではないかとの疑惑がある。実際,3号機が爆発した瞬間には黒煙が舞い上がり,白煙が立ち上った1号機とは様相が違った。

 「3号機で核爆発が起きた」と主張する原発技術者は何人かいる。そのなかでもっとも詳しく解説しているのが,三菱重工業原発の設計技術者を務めた藤原節男氏(70歳)だ。

 「3号機の爆発では原子炉建屋南側で一瞬オレンジ色に光り,黒いキノコ雲状の煙が上空600メートルまで立ち上りました。これは温度が1万度以上の高温になる核爆発の特徴です。大きな被害が出なかったのは,爆発の規模が原爆の1万分の1から10万分の1程度と小さかったからです」。

【参考画像】(クリックで拡大可)

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 上の画像のもとのユーチューブ動画がこれ(  ↓  )である。

 

 www.youtube.com

 藤原氏は3号機が核爆発した証拠として13個の根拠を挙げている。以下が主なものだ。

   ※-1 屋根フレームの鉄骨が飴細工のように曲がった。爆発で建屋のスレート屋根が吹き飛び,圧力が外部に逃げたにもかかわらず曲がっているのは,核爆発で局所的に超高温部が発生したために起きた現象。

   ※-2 使用済み燃料プールのある建屋南部を中心に屋根が破壊された。水素爆発なら最上階の5階に充満した水素が爆発するため,屋根はある程度均等に破壊される。

   ※-3 4階の床付近に置かれていたクレーン用モーターなど大型瓦礫(がれき)がキノコ雲から落下したようだ。5階空間での水素爆発なら,5階の床付近に置かれたものを上空高く吹き飛ばすことはできない。

   ※-4 プルトニウム福島県飯舘村や米国まで飛散しているが,これは使用済み燃料プールの燃料の金属成分が蒸発したもの。水素爆発ならプルトニウムの発生源は格納容器内の炉心溶融物(コリウム)に限定されるが,その場合のプルトニウムは二酸化物のままの状態を保っていることから蒸発飛散しない。

   ※-5 福島第1原発事故では,セシウムを含んだガラス質で,微小な球形をしたセシウムボールができた。これは高温高圧下で物質が蒸気とプラズマになり,冷える過程でできたもの。水素爆発ではできない。

 では,どうして核爆発が起きたのか。藤原氏によると,最初に3号機上部で水素爆発が発生し,それから使用済み燃料プールで核爆発が起きたという。

 「まずすべての電源が失われたことで,使用済み燃料を冷やしている燃料プール内の水が沸騰を始めました。このとき,水中のボイド(気泡)が一定量に増えたことで安定した『遅発臨界状態』に達しました。本来,プール内で臨界が起きてはいけませんが,ここまでは原子炉の固有の安全性(自己制御)が機能している状態でした」。

 水の中にどれだけの気泡が含まれるかを示すボイド率は,核分裂制御と密接な関係にある。うまく調整できれば安定臨界状態を保つが,少しでも狂うと原子炉が暴走してしまう。このときの使用済み燃料プールも臨界したとはいえ,安定した状態を保っていたという。だが,ここで思いも寄らぬ事態が起きた。

 「3号機の5階に大量にたまっていた水素ガスが爆発したことで急激な圧力が使用済み燃料プール水面にかかり,水中のボイドが消滅したのです。急速にボイドが減ると激しい核分裂反応が起き,危険な『即発臨界状態』になる。自己制御が利かなくなり,ついには核爆発が起きたのです」。

 使用済み燃料プールの水は本来,燃料の冷却のために使われる。だが,安定して臨界状態を保っていたボイド率が一定以上低下すると,中性子の速度を抑える減速材としての役割が増加し,核分裂を促進してしまう。ほんのわずかな反応度の違いで,即発臨界点に達してしまうのだ。3号機はプルトニウムを再処理で取り出した(プルトニウムとウランを混ぜた)MOX燃料を使う原子炉だったことも,核爆発を起こしやすくしたという。

 一方,こうした核爆発説への異論も少なくない。

 たとえば,東京電力が公表した3号機の写真には使用済み燃料プールの燃料ラック(収納棚)が写っている。爆発したのなら残っているはずがないとの見方だ。また,原発で使う核燃料はウラン濃縮度が低いため,核爆発が起きないのではとの指摘もある。

 藤原氏の反論はこうだ。「核爆発したのは局所的な場所で,被害のない部分を写真として公開しています。また,低濃縮ウランで核爆発が起きないというのは安全神話に過ぎず,実際に爆発を起こした実験結果が米国にあります」。

 そのうえで,3号機は水素爆発だといいつづける東電や政府をこう批判する。「小規模な核爆発だからといって,事実を隠していいことにはなりません。環境中に放射性物質をまき散らしたのだから,飛散した破損燃料や爆発時の環境中性子線の数値など核爆発の証拠となるデータを明らかにすべきです」。

 以上のように説明されてもいる東電福島第1原発事故の後始末については,本日 2021年1月27日の『日本経済新聞』朝刊が,この東電原発問題関係の記事を掲載していた。いつもどおり「事故現場の後始末」が遅々としか進展していなかった事実をめぐり,あれこれと「東電のいいわけを代弁するか」のような論調にも感じられる記事を制作していた。また日経新聞は「3号機の核爆発疑惑」に触れることはしない。


 「福島第1原発の2,3号機内 高濃度汚染 規制委推計,デブリ搬出難航も」日本経済新聞』2021年1月27日朝刊38面「社会1」

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 【参考画像】 こちらは『毎日新聞』から参照。これは2号機の画像資料であり,「圧力容器内〔だけ〕で溶融し,落下したもの」と仮定して描かれているデブリの様子」は,あくまで「推定された想像図」である。

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 原子力規制委員会の検討チームは〔2021年1月〕26日,東京電力福島第1原子力発電所の事故分析の中間報告案をまとめた。放射性物質の高濃度汚染が残る2,3号機の原子炉建屋上部について,最大7京(京は兆の1万倍)ベクレル程度のセシウム137があると推計した。2022年開始予定の溶融燃料(デブリ)取り出しなど今後の作業も難航が予想される。

 福島第1原発は2011年3月の東日本大震災に伴う津波の影響で原子炉を冷却できなくなり,1~3号機が炉心溶融メルトダウン)を起こした。事故から30~40年後の2041~2051年の完了をめざして廃炉作業が続いている。事故の反省を踏まえて発足した規制委は福島第1の教訓を原子力の安全規制に生かすため,事故分析を重視している。

 補注)この段落の文章は,よく読んでみるまでもなく,その内容に注入されているはずの “論理的な前後関係” が,実は支離滅裂であって脈絡を欠く。以下(引用する記事の本文)につづくその内容に移ってからも,その種の疑問を感じさせていた。

 なかんずく,「事故分析を重視して」と断わられてはいるものの,この「事故の反省」「福島第1の教訓を原子力の安全規制に生かす」というつぎの条件に関していえば,実はまだ「その分析」を生かせる結果・内容が,具体的にはまだ入手・確保できていない。

 つまり,現段階までの関連する実績は,そのような「原子力の安全規制に生かす方途」というものを,「事故分析」の「具体的な内容」に裏づけられたかたちでもって,まだまともに提供できていない。大幅になにかを進捗させえていた実質がありえたかと問えば,本当のところは「全然なしに等しい状態」まま,時間ばかりが経過してきた。

 それゆえ,今後の原発政策に関連させうる「福島第1の教訓を原子力の安全規制に生かすため」の「事故の分析」じたいが,いまだにほとんどなしえていない。2011年3月11日に発生した東電原発の大「事故から30~40年後の2041~2051年の完了をめざして廃炉作業が続いている」というのは,ほぼ無理な展望(はかない期待)だと断定せざるをえない。

 すでに事故以来10年が経過しただけに,原発4基のまわりは観た目には掃除・整理が行きとどいている。だが,とくに溶融を起こした原子炉3基(1・2・3号機)の後始末,その圧力容器の中身についてとなると,まったくといっていいくらい,まともには手出しができていない。

 肝心であるデブリの取り出しは,いったいいつになったらそのための作業を開始できるのかさえ,まだ見通しがついていない。いまだに,その打開・模索に苦しみつづけるばかりであって,いうなれば,現場は停頓した状況に置かれている。

〔記事に戻る→〕 規制委が事故の報告書をまとめるのは2014年10月以来。建屋内の放射線量が下がり,短時間なら立ち入れる場所が増えたため,2019年9月から事故分析の検討を再開した。建屋への立ち入り調査と専門家らとの議論を経て,事故から10年を前に現状の成果をまとめた。

 今回,規制委は事故時の放射性物質の移動経路を調べるために,さまざまな場所の放射線量を測定した。その結果,高濃度汚染が指摘されてきた2,3号機の原子炉格納容器の真上にある鉄筋コンクリート製のふた「シールドプラグ」に残るセシウム137の量を推計することができた。

 セシウム137は事故で環境に放出した代表的な放射性物質で,事故当時,1~3号機の原子炉内には約70京ベクレル存在していた。

 推計結果によると,1号機が100兆~200兆ベクレルだったのに対して,2号機は100倍以上の2京~4京ベクレル,3号機は3京ベクレルに上った。事故によって環境に放出したのは1.5京ベクレルで,多くは建屋内にとどまったほか,建屋内に入ってきた水に溶け出した。

 1号機に比べて2,3号機上部の汚染が高い理由は分かっていないが,今後の廃炉作業の大きな壁となる。規制委の更田豊志委員長は「ふたを外すところから大問題になる。廃炉にとって極めてインパクトの強い情報だ」と話す。

 補注)ここの「2,3号機上部の汚染が高い理由は分かっていないが,今後の廃炉作業の大きな壁となる」という表現は分かりにくい,理解に多少苦しむ。より正確には「2,3号機上部の汚染が高い理由は分かっていないがゆえに,今後の廃炉作業の大きな壁となる」と補足しないと,前後関係での意味がよく通らない。

 1~3号機に約900トン残るとされるデブリの取り出しは2号機で2022年に始まる予定で,廃炉作業でもっとも重要かつ困難な作業とされる。

 最初は格納容器の横から機械を入れて容器の底にあるデブリを取り出すが,いずれ原子炉圧力容器内のデブリを取り出すさいには,高濃度に汚染したシールドプラグを外す必要が出てくる可能性もあり,難航が予想される。

 現地調査を通じ,2号機では排気によって内部の圧力を下げるベントが一度も成功しなかった「確定的な証拠」も把握。放射線量の測定結果からベント時に壊れるはずの板が壊れていなかったという。

 1,3号機はベントに成功したものの,外部に排出したはずの水素や水蒸気などの気体が逆流していたことも判明した。原子力規制庁の担当者は「設計上予想されていなかったことが起きることの事例だ」として今後の安全対策に役立つ可能性があるとみる。

 福島県のテレビ局が撮影した水素爆発の映像(前出)の分析からは,3号機で爆発が複数回起きたことや水素以外の可燃ガスを含んでいた可能性があることも分かった。

 事故をめぐっては,まだ分かっていないことも多いうえ,格納容器内など立ち入れない場所もあり,規制委は事故分析を今後も続ける方針だ。(引用終わり)

 この記事をなんど読みかえしてみても,現状報告としてはたして,原発事故現場=各原子炉の「格納容器⇔圧力容器」の内部が,いったいどのような形状になっているのかがよく伝わってこない。もっとも,その読みとりに苦しむほかないというよりは,実際に誰もよくのぞけていないのが,原子炉の内部(とくに格納容器の様子)であった。

 東電福島第1原発事故に関する新聞報道はいつも,この不明(不詳だらけな事情)であるその事故現場の核心部分については,その周辺をうろうろというか,ぐるぐるまわっているだけに感じる記事しか書けないでいる。

 ともかく,それでも原発は止めない,廃絶はしないという国家の基本方針をけっして否定しない『日本経済新聞』である。そのせいで,原発関連の報道は隔靴掻痒という以前に,もうひとつ本気になって読む気が出ない内容になっていた。


  原発反対の基本姿勢を貫いた小出裕章の見解

 元京都大学原子炉実験所助教小出 裕章「今も収束していない福島原発事故~再爆発防止の応急措置が続く(後)」『Net IB News』2020年04月17日 07:00,https://www.data-max.co.jp/article/35245 から,つぎの段落のみ引用する。

   ※ いずれ産業界は撤退原発の後始末のゆくえ ※

 【質  問】 福島原発,さらに原子力発電の将来をどう考えていますか。

  小出裕章】 広島原爆のウラン約800gは死の灰となり街に降り注ぎましたが,原子力発電所を1年間運転するごとに,広島原爆の1000倍以上の核燃料(ウラン)からの死の灰ができます。原発ではこれだけの死の灰放射能物質をどうしていくのかが問題です。

 福島原発は将来的にどこかの時点で,石棺で封じこめる判断になるでしょう。東京電力福島県に溶け落ちた核燃料を県外に運び出すと約束しています。国と東京電力がつくった事故収束に向けたロードマップは実現がむずかしく,方策を立てる必要があります。

 原子力損害賠償廃炉等支援機構理事長・山名 元氏は,2016年に石棺で被う提案をしましたが,福島県が反発したため発言を撤回しました。溶けた核燃料の福島県からのもち出しができないとはいえず,作業が進まなくても進路変更ができないのではないかと考えています。おそらく30~40年は溶け落ちた燃料の搬出に向けて,原子炉を水で冷やすいまの作業を続けるのではないでしょうか。

 補注1)小出裕章はこのように「おそらく30~40年は溶け落ちた燃料の搬出に向けて,原子炉を水で冷やすいまの作業を続けるのではない」かと指摘している。だが,② の日経記事はその「30~40年」先の時点(小出の年数で計算すると2050年~2060年の時期になる)についてだが,東電原発「事故から30~40年後の2041~2051年の完了をめざして廃炉作業が続いている」と書いていた。

 補注2)今年の1月中には,つぎの報道もあった。このような後始末作業の繰り返しが「はてしなくつづいている」のが,その事故現場におけるのいつもの風景になっていた。

   ★〈福島第一の1週間〉3号機プールで動かせない核燃料8体に ★
 =『東京新聞』2021年01月13日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1757

 

 東京電力福島第1原発では,3号機原子炉建屋上部にあるプールからの使用済み核燃料取り出し作業で,クレーンでつり上げられない核燃料6体が新たに確認された。動かせない核燃料は,取っ手部分が変形しているものも含めて計8体になった。

 

 東電は3月中に取り出しを終える計画を変えていない。東電によると,核燃料6体はいずれも取っ手部分の変形はない。金属製の収納ラックとの間に挟まったがれきを取り除くなどして,動かせるかどうかの確認を進める。

 そもそも,現在まで東電が事故現場で取り組んできた諸作業は,廃炉工程などとはけっしていえず,単なる後片づけ(後始末)と,そしてそのつぎにとりかかるはずの「廃炉工程そのもの」に進むための下準備・調査段階に属するものだけであった。原子力村側の関係人士は自分たちの発言に責任をもたねばならないが,それでも特定のデタラメさを混融させる説明を,いつもどおりに何回でも復唱してきた。

〔小出・記事に戻る→〕 原発を推進する原子力基本法を廃止し,脱原発法案を国会で可決しなければ,原発再稼働は止められず,前には進みません。福島原発の事故は終わってはいません。事故処理などを含め原子力事業は採算が合わず,いずれ産業界は原発から撤退すると考えています。国が進めているからと舵を切っても,明るい将来が待っているとは限らないでしょう。

 

  いまや完全に「トイレのないマンション」状態である日本の原発の「核のゴミ」対策破綻の実際

 ① の日本原燃の話題に戻る記述となる。プルトニウムを混ぜたMOXを原発で燃料として焚かねばならない日本なりに特殊な原発事情に関しては,それなりにその絶対的な苦境が理解できなくはない。原発問題を考えるたびに思いしらされる現実は,原子力村側の立ち位置の「四面楚歌」「八方塞がり」という状況であった。

 別の表現でいえば,現在,にっちもさっちもいかなくなっているのが,日本の原発事情である。またいえば,剣が峰だなどいってカッコをつけるほどの余裕もないほど,その不要性・有害性が明白になっている。つぎの話題に入りたい。

     ◆ トラブルにミス続出,需要もない… それでも「適合」再処理工場 ◆
  =『東京新聞』2020年07月29日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1610

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 a) 青森・六ケ所村の再処理工場が新規制基準に適合。原発の使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)が新規制基準に適合し,稼働への条件を一つクリアした。しかし,原子力規制委員会に寄せられた国民の意見の多くは,運営する日本原燃(原燃)の資質を疑問視し,規制委の委員らも同調した。不安が渦巻くなかで,再処理工場は核燃料サイクルという目的さえ失っている。

 b) 傍聴席からいらだちの声。「技術的能力について,一般の方が非常に心配になられているのは非常によく理解できます」。〔2020年7月〕29日の規制委定例会合で,山中伸介委員は原燃への憂慮を口にした。伴 信彦,田中 知の両委員も同じだった。

 延べ765件に上った国民からの意見公募は,「適合反対」の声で埋め尽くされ,原燃の能力不足の指摘だけでも100件以上。傍聴席から「何人も不安視してますよ」といらだつ声が飛ぶ。

 それでも更田豊志委員長が適合と決定するかどうか促すと,委員らは「異存ありません」。原燃の能力については,規制委事務局が今後の検査などで確認するとしただけで,46分間の審議が終わった。

 c) 試験でトラブル,書類でも不備多数,偽りも。再処理の工程では,きわめて強い放射線を出す高レベル放射性廃液が生じる。これを保管するため,ガラスと混ぜてガラス固化体(核のごみ)にする必要があるが,原燃は製造試験でなんどもトラブルを起こした。

 2014年1月に始まった新規制基準の審査では,書類の不備が相次ぎ,規制委の審査担当者も「ミスが多いというのが実態」とあきれたほどだ。2017年夏には,施設の非常用電源建屋への大量の雨水流入が発覚。14年間も点検していなかっただけでなく,「異常なし」と虚偽の日誌を作っていたため,審査は半年ほど中断した。

 審査が事実上終わり,意見公募の受付期間が過ぎた今〔2020〕年6月末になって,原燃は放射性廃棄物の不適切な保管状態を改善していなかった,と規制委に報告。ずさんさは相変わらずだ。

 d) 再処理してもその後は… 。「われわれのミッションは,使用済み燃料を少しでも処理し,空きをつくって,受け入れる体制をつくることだ」と原燃の増田尚宏社長は話した。

 未完成の再処理工場は,全国の原発から出た使用済み核燃料の保管場所になっており,貯蔵プールはほぼ満杯。原発自身のプールに空きがなくなれば,それ以上は稼働できず,電力会社にとって死活問題だ。

 再処理工場は核燃料サイクルの要だが,再処理後に造る混合酸化物(MOX)燃料を使うはずだった高速増殖原型炉もんじゅ福井県)が廃炉となり,存在意義を失った。通常の原発でMOX燃料を使う「プルサーマル発電」も増えるみこみがなく,再処理の需要はない。

 長谷川公一・東北大名誉教授(環境社会学)は「再処理工場は,使い道のないプルトニウムが生み出される矛盾に満ちた施設」と指摘。福島第1原発事故後は世界的に再生可能エネルギーへの転換が進むなかで「激変する環境に対応できない日本のエネルギー政策のシンボルだ」と批判した。(引用終わり)

 以上の記事に対してだが,自民党内ではつぎのような「狂気の沙汰」というほかない原発推進派が,政治勢力として存在している。

 自民の総合エネルギー戦略調査会(会長=額賀福志郎財務相)は近く,原発の新増設の検討などを政府に求める方針だ。提言原案では,再生可能エネルギーについて「最大限導入に挑戦すべき」だとする一方,「全ての需要を満たすことは現実的ではない」と指摘。

 既存原発の最大限活用に加え,新増設やリプレース(建て替え)の検討などを挙げ,「国家戦略としての原子力の持続的な利用システムの構築」を求めた。

 註記)「自民内で原発の増設・再稼働論相次ぐ 首相の目標めぐり」asahi.com 2020年11月27日 21時30分,https://digital.asahi.com/articles/ASNCW73QQNCWUTFK00R.html

 いわれている「国家戦略」「原子力の持続的な利用システムの構築」とは,主に,「原発問題」そのものではなく「兵器としての原爆の問題」にしかなりえない提言・主張である。2020年8月時点の話として日本は,原爆の製造に不可欠の現象であるプルトニウムを,およそ45.5トン保有していた。

 原発の稼働を積極的に提唱する者に共通する議員たちの関心事は,核兵器問題の具体化に向けられていた。それらの人びとにとっては「トイレのないマンション」の問題など目ではなかった(目じゃなかった⇒メジャーの問題ではなかった)。

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