地獄の「釜の底」でのように溜まっている「東電福島第1原発事故現場の燃料デブリ」の除去は簡単ではなく,福島第1原発事故現場の後始末はこれからも長びく

 スリーマイル島原発事故の現場は “いまどうなっている” か,チェルノブイリ原発事故の現場は「石棺化した姿」を,これからも永遠にさらしつづけていく

 東電福島第1原発事故の後始末は,実質的にはにっちもさっちもいかないでいる事後処理の最中であり,その廃炉工程にまで進める以前の状態にとどまっている

 その後において現場を始末する作業が原子炉(圧力容器・格納容器)の周辺でおこなわれてきたものの,実際に実現できたことといえば「お庭のお掃除」程度であり,これで「関の山」

 過去10年間(2011年3月~2021年2月〔3月〕)を費やしてきた「東電福島第1原発事故の後始末」は,これからもただ時間だけをかけていく「予定」だけについては語れても,その「今後におけるみこみ」についてはまともに語れていない

 

  要点・1 福島第1原発事故の後始末(廃炉ではなく)は,未来永劫に続く人類・人間側の苦役

  要点・2 日本政府は,原爆の被爆国であるとともに原発事故の当時国となった「自国の惨状」をありのままに認知できないまま,『原子力の魔性』に “アンダーコントロール” されている


 スリーマイル島原発事故から40年  事故の教訓考える集会」『サイカル  SCIENCE & CULTURE  journal by NHK』2019.03.28,https://www.nhk.or.jp/d-navi/sci_cul/2019/03/news/news_190328-3/

「福島第1原発廃炉  スリーマイル原発を参考」   スリーマイル島原発2号機は,世界で唯一,事故で溶け落ちた核燃料が周りの構造物と混ざり合ってできた燃料デブリを取り出した経験をもつ原発である。同じように核燃料が溶け落ちた福島第1原発廃炉に向けた工程は,当初,スリーマイル島原発廃炉を参考に策定された。

 スリーマイルでは,燃料デブリはほとんどが原子炉のなかに留まっていたが,建屋のなかの放射線量を下げたり,原子炉の内部を調査したりするのに時間がかかり,取り出しが始まったのは事故から6年後で,全体のおよそ99%にあたる130トン余りを取り出し,作業が終了したのは事故から11年後であった。

 一方,福島第1原発では,3基の原子炉でメルトダウンしていることや,燃料デブリが原子炉にとどまらず格納容器まで広がるなどさらに深刻な状況にあることも考慮し,燃料の取り出しの開始は事故から10年後とスリーマイルよりも時間がかかるとしている。

 また,最終的に廃炉を完了する時期については,スリーマイル島原発では,隣接する1号機の運転が続いていることも踏まえ,運転の終了後に残る建屋や施設を解体するとしている。

 これに対し,福島第1原発では,廃炉の終了までの目標を事故後30年から40年としているが,取り出した燃料デブリやさまざまな廃棄物の処分方法などは決まっておらず,東京電力はなにをもって廃炉の終了とするのか定義することは困難だとしている。(引用終わり)

 原発事故としてのスリーマイル島原発と東電福島第1原発を比較する。まず,前者は圧力容器内での溶融であったが,後者は格納容器まで溶融していた。つぎに,事故の後始末がいちおう付いたのは,前者は11年後であったが,後者はいまだにデブリの取り出し作業にとりかかれていない。

 そもそも,事故を起こした原発の基数がスリーマイル島原発は1基であったのに対して,東電福島第1原発事故は3基が大事故を起こしていた。なによりも「福島第1原発」の「廃炉の終了までの目標を事故後30年から40年としている」けれども,2011年3月11日東日本大震災に惹起した数日後に連続して発生した原発事故であって,いまだに,取り出すべき「燃料デブリやさまざまな廃棄物の処分方法などは決まっておらず」という段階に停頓している。

 要は,東電福島第1原発事故の後始末「現状」は,スリーマイル島原発事故の後始末・整理とは比較にならないほど複雑・困難なのである。こちらでは,これからの迎える課題があれこれと山積した状態にある。

 

  2020東京五輪のために福島を犠牲にした安倍晋三竹田恒和は同罪

 安倍晋三前首相は,東京に五輪を招致するために2013年9月に開催されたIOCの会議のなかで,東電福島第1原発事故は当時においてすでに,つぎのように「脳天気」きわまりないどころか,完全に虚偽の説明をしていた。

  フクシマについて,お案じの向きには,私から保証をいたします。状況は,統御されています。東京には,いかなる悪影響にしろ,これまで及ぼしたことはなく,今後とも,及ぼすことはありません。

 註記)https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0907ioc_presentation.html

 「状況は,統御されています」(the situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo)などと,大ウソをついていた安倍晋三の罪は重い。前段の文句に関連させていうと,当時JOC会長であった竹田恒和も,つぎのように虚偽の説明をしていた。これも犯罪的な言動であったといって,なにもおかしくはない。

 国際オリンピック委員会International Olympic Committee,JOC)は〔2013年9月〕7日に総会をおこない,マドリードイスタンブール,東京の3都市から投票で開催地を決定するが,それに先がけておこなわれた東京五輪招致委員会の記者会見では,福島の現状と放射能の影響について質問が集中した。

 註記)引用は以下も,「五輪招致目指す東京,福島に関する懸念に質問集中」『AFP』2013年9月5日 12:32,発信地:ブエノスアイレス/アルゼンチン,https://www.afpbb.com/articles/-/2966271

 

 「水は安全ですし,放射能のレベルもまったく問題はありません。安倍晋三(Shinzo Abe)首相が責任をもって解決すると発表しています。2020年の東京にいっさい問題はありません」。

 補注)この「東京への影響はない,いっさい問題はない」という弁舌じたい,嘘でしかなかった事実は,東電福島第1原発事故の実際・実情をまともにしっている人びとであれば,専門家でなくともすぐに指摘できる点であった。

 

 2012年にIOC委員に選出された竹田理事長は,東京の放射線量については継続的にチェックをしているが,警戒に値する数値はまったく出ていないと語っている。

 

 「放射線量は安全なレベルにあります。3500万人の人びとがみな普通に生活しています。この問題への懸念は必要ないのです」。

 補注)この指摘にも妥当する批判としていえば,福島県など,被災地の人びとの存在をそっちのけにした話をしており,「同じ日本人同士」に関する言及の仕方としてみてもとうてい許容できない発言をしていた。

 

 会見の序盤では,五輪招致の成功が地震津波の傷を癒すと語っていた竹田理事長だが,放射能に関して質問が集中するとしだいにいら立ちをみせ,最後は話をまとめるのにも苦労する様子をみせた。

 

 「現時点では,この問題について首相が最終プレゼンテーションで話すことになっていますし,食べ物などについてもIOCに再び確約してくれるはずです」。

 

 「東京に問題はありません。東京で問題があった人間は1人もいません。東京と福島は250キロメートル離れています。東京と福島は遠く離れているのです」。

 補注)この説明になると竹田恒和は,福島県を切り捨てた発言をしていた。それでいて,福島の復興の証しにもなるものして,2020東京五輪の開催を実現させるのだと,JOC幹部たちは強説してきた。その結果がいまの時点でどうなっていたかは,申すまでもない。

 JOC(日本オリンピック委員会)会長であった竹田恒和は,その後,フランスの司法当局から「五輪を東京に誘致するための活動」に関して,各国の五輪関係者幹部に対する贈収賄事件の嫌疑をかけられていた。フランスの司法当局が,2020東京五輪招致に絡む贈賄容疑で竹田恒和の訴追に向けて予審手続を開始したという報道がなされたのを受けて,竹田はその地位から退かざるをえなくなっていた。

 いずれにせよ,竹田恒和は2013年9月の時点で,日本国東京都の「水は安全ですし,放射能のレベルもまったく問題はありません。安倍晋三(Shinzo Abe)首相が責任をもって解決すると発表しています。2020年の東京にいっさい問題はありません」と,単純だが大きな嘘をついていた。当時「東京の水」になにも東電福島第1原発事故の影響がなかったというのも,完全にうそであった。

 東電福島第1原発事故が発生した直後の時期,つぎのような報道もあった。後半の段落を引用する。

    ◆ 都が乳児のいる家庭に水配布へ 水道水から放射性ヨウ素
        asahi.com 2011年3月24日 0時28分 =

 

 東日本大震災を受け,都は〔2011年3月〕21日の降雨の影響を調べるため,22日午前9時に同浄水場からサンプルを採取。23日午前11時ごろ,基準を超える値を検出したと報告を受けた。同日午前9時のサンプルでも190ベクレルを検出した。

 

 都は「21日の雨で大気中の放射性物質が溶けこんだため,濃度が上がったのではないか」とみている。サンプル採取から発表まで24時間以上かかったことについては「最大限早く対応した。発表が遅れたとは考えていない」としている

 

 【参考資料】-出所として本文とは直接には無関係の資料であるが,基本的に関連性のある統計-

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 放射性ヨウ素が体内に入ると甲状腺がんなどの原因になることがある。原子力安全委員会は飲料水について,1キロあたり300ベクレルという基準を定めているが,子どもは放射性ヨウ素甲状腺にたまりやすいため,厚労省は牛乳や乳製品については1キロあたり100ベクレルという基準を設定。同省は21日,この値を水道水にも当てはめ,乳児に与えないよう全国に通知していた。

 

 都は原発事故後,放射性物質の除去効果が期待できるとして浄水に使う粉末活性炭の量を通常の3倍にしていたが,今回の検出結果を受けて通常の4倍に増やした。農林水産省は製造や流通,市場の各団体に対し,「食品加工などの際に都の水道水を使うことは問題がない」として,冷静な対応を求める文書を〔2011年3月〕23日に出した。

  安倍晋三前首相は自分の任期中,国会のなかで118回もの偽証を重ねてきたと正式に認定されているが,以上のごとき福島第1原発事故にまつわる〈大ウソ〉は,その計算の回数には計上されていない。竹田恒和はとみれば,安倍晋三の尻馬にも乗った要領で,いっしょになって嘘の上塗りをしていた。


 「〈東日本大震災10年 3・11の現在地)40年で廃炉,無理と言えず 前提のデブリ除去,年内の着手断念」朝日新聞』2021年2月11日朝刊1面

 この原発事故関連の記事「本文」の紹介は,だいぶ後段に移ってからとなる点を断わったうえで,さきに以下の議論をおこなっておきたい。

 2011年「3・11」からだと,ちょうど1カ月前の本日:2月11日を期して準備,報道されたものと思われるが,この『朝日新聞』朝刊1面冒頭記事の見出し文句が目に入った時,この「40年で廃炉無理と言えず」という文句の部分がすぐには理解できなかった。

 要は「東電福島第1原発事故の後始末(⇒廃炉問題なども含めた全工程として)」が「40年で廃炉工程まで完了(終了)できる」か,とあらためて問われた時,そもそも「無理難題である」「至難の課題である」と答えるほかなかった。いいかえれば,その40年という年数をかければ,その事故現場を更地にまで戻せるというみこみは,まったくありえない予測であった。

 本ブログはすでに,以上に指摘した東電福島第1原発事故の「後始末」(およびこれに続くはずの「廃炉工程」)の問題は,『苦難に満ちた行程』になっている点を,たび重ねて執拗に指摘し,議論してきた。

 ところが『朝日新聞』はまだしも,『日本経済新聞』のほうは「資本制企業の営利原則」を尊重した論調を基本方針をするためか,いつまでも中途半端で煮え切らない原発論に終始している。

 本日2021年2月11日『日本経済新聞』朝刊1面(左側上部)には,連続物の解説記事として,つぎの画像資料で紹介する「見出し」でのように論じていた。ここでは,この見出しだけでも読み出してもらえば好都合である。ただ,この記事からはつぎの段落( a) と b) )のみ,次段に引用しておく。

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 a) 核燃料が高温で溶け落ちる炉心溶融メルトダウン)を1~3号機で起こした福島第1の廃炉で,デブリ搬出は当初から最難関とされてきた。強い放射線が作業を阻むからだ。原子炉建屋の前に立つと,測定器の放射線量は急上昇する。東電廃炉推進カンパニーの小野明代表は「全体工程が遅れるわけではない」と話すが,終わりはみえない。

 b) 原発事故の処理にけりをつけないかぎり,福島の本格的な再生はみえてこない。日本のエネルギー政策も漂流する。この10年,随所であらわになったのが東電任せの限界だ。廃炉や処理水対応だけでなく,再稼働や核のごみ処分まで,どれも国が前面に立たなければ解決できない。福島の復興をどうなしとげるか。世界も注視していることを忘れてはならない。(引用終わり)

 以上の記事の文面には〈悲観的な文句〉が並んでいる。要するに「福島の本格的な再生はみえてこない」のであり,結局は現時点から「終わりはみえ〔てい〕ない」と指摘している。この「東電任せの限界」が「国が前面に立たなければ解決できない」と,日経のこの特集記事は説明している。だが,この理解は甘すぎる。

 東電も国も,いったん大事故を起こしたらとうてい解決などできない「東電福島第1原発事故」を,現実に起こしていたのである。もともと「国策民営」の原発事業であったからには,国家が前面に出てきて,その解決・処理に全面的に関与したかたちで当たるほかなくなかった。かといって,原発事故をめぐる議論の方向性としては,国家の手で始末が付けられうるとだけ期待して終えられるものでは,けっしてない。

 チェルノブイリ原発事故の現場のように,いままで2回にわたり石棺化工事をおこない,その現場の封印だけはすませている。だが,東電福島第1原発事故の後始末は事故発生以来,10年が経過した現在でもまだ,その実質的なありようとしては出発点に留め置かれている。この実情そのものは,かぎりなく悲観的かつ悲愴的な様子になっていた「日本の原発事故現場」を風景を描いている。

 「シーシュポスの神話」という話題に触れないわけにいかない。この神話はこう解説されている。

 神を欺いたことで,シーシュポスは神々の怒りを買ってしまい,大きな岩を山頂に押して運ぶという罰を受けた。彼は神々のいいつけどおりに岩を運ぶのだが,山頂に運び終えたその瞬間に岩は転がり落ちてしまう。同じ動作をなんど繰り返しても,結局は同じ結果にしかならないのだった。

 原発という発電のための装置・機械は,人間がかかわってはいけないエネルギー源を利用した。放射能物質に原因する事故からは,その魔性がいきなり飛び出してくる。東電福島第1原発事故の後始末「作業」は,まだ廃炉行程にまでは進捗していない段階に留まっている。

 にもかかわらず,すでに前段に触れたごとき「シーシュポスの神話」的な労苦が強いられてきた。10年一昔というが,もうすぐ,「3・11」直後の原発事故からその「一昔の時間」が経過する。おそらくこれからもその10年単位で数えられる一昔は,なんどでも反復されざるをえない。

 東電福島第1原発事故がこれまで対策としておこなってきた作業は,実態としてみるに「同じ動作をなんど繰り返しても,結局は同じ結果にしかならない」それであった。チェルノブイリ原発事故の現場現場は,当初から「シーシュポスの神話」に降参していた。そのままに,現場を埋めて隠すための工夫である「石棺化」を処置しておいたのである。事故現場の処理方法としては,あくまで “一時しのぎ” であり,実態としては問題 “先送り” であった。

 それにくらべて東電福島第1原発事故の後始末は,いったいどのように理解され,表現されたらよいのか? 原子炉の「圧力容器・格納容器」ともに,事故を起こしていない原発廃炉と同様に始末していく作業を想定している。けれども,そのような方向性が基本から無理を含むどころか,初めより絶対に実現不可能な方向にあらざるをえない点は,原子力工学の専門家たちも先刻承知しているごとき,もとから「難物中の難物」的な問題ではなかったか?

 

  記事本文(『朝日新聞』朝刊1面記事,③ でとりあげはじめた)の引用を,ここから始める。

 --あと1カ月で事故発生から10年を迎える東京電力福島第1原発。敷地内の放射線量はかなり下がったが,廃炉作業は大幅に遅れ,30~40年で完了する目標はかすんできた。廃炉の最終的な姿を語らずに時期だけをかかげるこれまでのやり方は,限界に近づいている。

 「目標通りできないのはじくじたるものがある」。国と東京電力は昨〔2020〕年12月24日,福島第1原発で2021年中に予定していた溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し着手を1年程度延期すると発表した。東電の廃炉部門トップの小野 明氏は,記者会見で無念さをにじませた。

 直接の理由は新型コロナウイルスだった。英国で開発中の専用ロボットアームの動作試験が,工場への出勤制限などの影響で滞った。英国では変異ウイルスも猛威を振るい,日本へ運ぶめどもたたなくなった。

 未曽有の原発事故を受けて,国と東電が2011年12月に廃炉工程表をかかげてから,工程は遅れに遅れを重ねてきたが,今回の延期には特別な意味がある。「30~40年後に廃炉完了」と並んでずっと堅持してきた「10年以内のデブリ取り出し着手」という重要目標を断念したことになるからだ。

 補注)東電側におけるこの「断念(蹉跌,みこみ違い)」は,あまりにも当然のなりゆきであった。東電は一貫して,廃炉の最終的な姿を語らずに時期だけをかかげるこれまでのやり方」を維持してきた。東電側がそうした立場を示しつづけるほかなかった内情は,廃炉工程に関した話題の終期を確実に予測できる手がかりを,いままで,まったくつかめないでいた経緯をもって説明できる。

〔記事に戻る→〕 デブリは,溶けた核燃料が周りの金属などと混ざりあって固まった物質。強い放射線を放ち,ロボットすら容易に近づけない。硬さも成分も,どこにどれだけあるかも詳しくは分からない。1~3号機に残る総量は推定で約800~900トン。その取り出しは,前人未到の最難関の事業だ。

 補注)「前人未到の最難関の事業だ」といわれるとき,この難関の程度(最高?  最悪?)というものが,いったい “どの程度の性質のもの” になりうるのかについては,実は,その見当すらほとんどついていなかった。「3・11」の大津波に襲われて発生した東電福島第1原発事故は,《悪魔の火》に特有である「本来的な害悪性」を大発散させてしまい,より深刻かつ重大な事故をもたらしたのである。

〔記事に戻る→〕 当初の工程表では,取り出し前に遠隔でデブリを切断・掘削して性状を調べることも想定していた。だが,カメラ調査すら予定どおり進まず,進むほどに困難さがみえてきた。国と東電は改訂にあわせ,着手時の取り出し規模を「小規模」から「試験的」へと後退させたが,「10年以内」だけは変えなかった。「30~40年」の全体シナリオを守るための一線だったからだ。

 今回延期された「2号機での試験的取り出し」で取るデブリの量は数グラム程度。実際の作業は,長さ約22メートル,重さ約4.6トンの特殊鋼製ロボットアームの先端に付けた金属ブラシでデブリの表面を拭ったり,小さな真空容器でチリを吸い取ったりするだけだ。懸命につなぎとめてきた目標が,コロナ禍でついに取り繕いきれなくなったのが実情だ。

 補注)コロナ禍の関連はもちろん排除できない突発的な要因に位置づけられてもいいが,こちらの問題は数年後には必らず収束はする問題であるゆえ,原発事故の問題に対して「要らぬ関連づけ」まではしないほうが,基本的な考え方としては無難である。

 それでも,廃炉を技術面で率いる原子力損害賠償・廃炉等支援機構の山名 元・理事長は「1年の遅れは,全体の遅れに比べたらたいしたことない」と話す。廃炉完了の時期を見直す気もない。「いまの時点で『40年は無理』なんてとてもいえない。もうちょっと調べさせて欲しい。40年をめざして全力でやる。これじたいは,むずかしい仕事を進める一つの原動力なんです」。(⇒2面に続く)

 補注)この山名 元という姓名の原子力工学者は,東電福島第1原発事故の後始末問題には,以前より関与してきた人物である。それにしても,この記事の文面に表現されている “文言の息苦しさ” といったら,これはものすごい。上に示唆されている年数は,はたしてどのくらいの長さになりうるというのか?

 ※-1「1年の遅れは,全体の遅れに比べたらたいしたことない」

 ※-2「40年をめざして全力でやる。これじたいは,むずかしい仕事を進める一つの原動力」

 以上の2つの文句をかけあわせて追及してみる。その「1年の遅れ」から推理できそうなその「全体の遅れ」とは,「40年をめざして全力でやる」べき「むずかしい仕事を進める一つの原動力」に関連するなにかだ,という具合に表現されている〔と解釈しておく〕。

 だがそれでは,その期間が実際には何十何年,否,百年以上にも長くなるかもしれない可能性が大いにありそうである。そのように解釈するほかないのだが,このあたりに関する詮議は,極力,遠回しに語られている。

 さらに,記事の本文としてつづいているこの2面の記事に関しては,図解・図表を主に紹介しておき,本文のほうからは小見出しの文句を引っぱりだしたり,ごく少しだけ本文の文句を紹介しておくだけとする。この記事じたいの見出しは「〈東日本大震災10年 3・11の現在地〉 廃炉の『最終形』,示さぬまま」という文句が付けられていた。

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 補注)この図解・図表をみて驚いた点がある。それは,東電福島第1原発事故に関連した図解・図表である点に関した指摘となる。いままでは,具体的な表現として記入されることのなかったはずの「約100年後,約300年後」といった「長い年数」が,ここに至って初めてより明確に表記されている。

〔ここからは,1面の記事から続く「2面の記事」の引用→〕 前記に断わったように,こちら「2面の記事」からは,ごく一部分の段落のみ拾って紹介する。

 a)「世界最悪級の事故を起こした東京電力福島第1原発廃炉」が「『最速で40年』で〔終えられるというの〕」は,全然根拠のない完全ないい過ぎ。

 b)「国と東電がずっとあいまいにしてきた現実を直視する動きが,原発を推進してきた専門家からも出てきた」。

 ■〔見出し:1〕「『30~40年』降ろせぬ旗   すくむ東電・国・地元,住民に動きも」

 ■〔見出し:2〕「海外の事故原発,30年後も解体されず」

 ふつうの廃炉では原子炉や建屋を解体して更地に戻すのが基本だが,炉心溶融を起こした海外の原発は事故後30年以上も解体されていない。

 1986年に炉心が爆発した旧ソ連チェルノブイリ原発4号機は,建屋ごとコンクリートで固めた「石棺」をまるごと鋼鉄製のカバーで覆い,放射性物質の飛散を防ぐ作業が2016年に完了した。管理を続ける以外,方針は未定だ。

 1979年に事故を起こした米スリーマイル島原発は,圧力容器内にとどまったデブリの大半を1990年までに取り出したが,その後は解体せずに管理を継続。2037年ごろの廃炉完了をめざしている(引用終わり)

 東電福島第1原発事故における「廃炉の問題」は,それ以前からなされてきている「現場の後始末問題」とはまた別個に,この現場の状態なりに今後をどのように措置していくのかが,非常に深刻で重たい問題になっている。

 しかも,その事故現場においては地下流水が放射能に汚染されつづけており,おまけにこの汚染水(処理水)は溜まる一方である。現状にあっては,その汚染水(処理水)を沿岸へ排出をしたくともできない現状にある。まさに,東電福島第1原発事故の後始末そのものが,現在のところ,八方ふさがりの状態にある。

 となれば,われわれはここで再度,「シーシュポスの神話」を想起せざるをえない。原発の事故という問題に対峙させられているさい,きれいごとのタテマエ論や,当面だけのゴマカシ論,議論回避の先延ばし論などは,いっさい通じない。なにせ《悪魔の火》が運びこんできた放射性物質が相手であった。


 「『汚染土壌』どこへ  国の費用すでに5兆円」日本経済新聞』2021年2月11日朝刊34面「社会」

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 東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う除染作業で集めた土壌をめぐり,国の費用が膨らんでいる。除染や土壌の中間貯蔵にすでに5兆円超を投じており,最終処分まで含むと費用はさらに膨らむ見通しだ。国は土壌の再生利用や県外への最終処分の道筋も示せていない。(1面参照←前掲に紹介した画像資料「記事」)

 福島県大熊町双葉町に広がる1600ヘクタールの中間貯蔵施設では,県内各地の除染作業で生じた土壌がつぎつぎと運びこまれる。2015年の開始から2021年1月末時点ですでに1037万立方メートルが搬入された。除染中の帰還困難区域から今後発生する土壌を除けば,2021年度内に総量1400万立方メートルの搬入をおおむね終える見通しだ。

 2011年3月の原発事故では,セシウムなどの放射性物質が環境中に放出した。国は表面の汚染された土壌などを集めており,福島県内の中間貯蔵施設にためたのち,県外に最終処分する。2030年以内の県外への最終処分を法律に明記したが,最終処分地も処分方法も未定だ。

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 費用は膨らんでいる。国は2016年に除染や中間貯蔵の費用を6兆円と試算したが,2021年度までにすでに5兆円超を投じた。これには最終処分にかかる分は含まれていない。日本経済研究センターの2019年の試算では,除去した土壌を全て最終処分すれば,除染と合わせた費用は20兆円にもなるという。(引用終わり。以下,後半の段落は省略)

 《悪魔の火》との交際費,いいかえると「この火遊び」をしたあとになって,これを完全に消火しておくために「要することになる(はずの)経費」は,とてもない超巨額になっていくこと(雪だるま式に増えていくこと?)が予想される。

 安倍晋三君,これでも,東電福島第1原発事故現場は “アンダーコントロール” だといいはるのか? これも “偽証罪の一種” に相当する。

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