原発事業は採算がとれず,国際競争に負けてきた日本企業(東芝・三菱重工・日立製作所)側の経団連幹部が,日本は原発をもっと利用せよと主張する救いがたい倒錯

 経団連原発推進の立場は「経済の論理」にまったくそぐわない「原発・製造費の高価水準」(いまでは1基1兆円)を無視している,おまけに原発の危険性も軽視したあげく,なによりも環境問題に対する害悪性に目とつむった主張まで平然と繰り出している

 海外との販売競争に勝てない「高単価の,売り物になりえない日本の原発」を,国内電力会社に対してなのであれば「買ってもらえる目算」でもあるのか,東電福島第1原発事故の後始末のめどさえ,少しもついていない現況のなかで「原発を新増設せよ,買え!」という,いわば狂気に近い発想

 

  要点・1 原発よさらば(!)の時代に,まだ原発を郷愁する錯誤,原発に「抱きつかれ心中」をしたいのか
  要点・2  「3E+S」に関して完全に不合格であった原発を,いまさらにように積極的に利用せよ(再稼働させろ)といってはばからない「経済界指導者の繰り言的な没論理の奇怪さ」


 「脱炭素へ原発『国が前面に』 経済界,政府に要請 『新増設へ環境整備を』」日本経済新聞』2021年2月25日朝刊5面「経済」

 今〔2021年〕夏にも策定される次期エネルギー基本計画をめぐり,経済界が政府に原子力発電の推進を明記するよう促している。〔2月〕24日に開かれた総合資源エネルギー調査会経済産業相の諮問機関)の分科会では,脱炭素社会の実現に向けて二酸化炭素(CO2 )をほぼ排出しない原子力発電所の新増設方針を明確にし,再稼働の推進へ国が前面に立つよう求める声が上がった。

 補注)「二酸化炭素(CO2)をほぼ排出しない原子力発電所」というのは,以前と異なった表現である。以前は通常,ただ「二酸化炭素(CO2)を排出しない原子力発電所」と表現していた。だが,最近はこの「ほぼ」(など)を付すことによって,地球温暖化原発が有利なエネルギー生産装置である点にまつわる疑念を封鎖しようとする意図を添えるようになった。

 この表現上における〈微妙な操作〉は,その「ほぼ」を付すか否かによって含意させたい相違点にかかわっている。実は,そこにあっては,決定的に重要である「認識の変更」が介在していた点を,なるべくおだやかに覆い隠すそうとする意図がうかがえる。原発そのものは,稼働中においても「炭酸ガスの排出から自由でありえない」技術的な仕組になっている。原発発電では,直接利用できないまま外部環境に向けてそのまま排出するエネルギー量が膨大な比率を占めている。

 日本や韓国の原発が海岸沿いに立地するのは,冷却水を海水に依存しているからである。その冷却される対象のエネルギー量となると,政府機関側の説明ではたいした水準ではないかのように,偽り的に語られるのがつねである。だが,そのような実態はありえない。欧米によくあるような,内陸で河川から冷却水をとって使用する原発では,電力生産に生かされない熱量は,河川の流水を利用し,水蒸気に変えて空中に放散する。

 炭酸ガスの排出がうんぬんされる議論は,地球温暖化の問題に直結させられてのそれであったゆえ,原発炭酸ガスを「ほぼ出さない」(ただし電力を生産する工程に限定した話題)という主張は,文字どおり〈ほぼ〉限定的にしか妥当しえない一時的の独特な理屈に過ぎない。

 以上の「補注」的な議論は,前後する日経記事を全文紹介したのちに,後段において(※※)印を付けた段落にまで進んでから,あらためて継続させたい。
 
〔記事に戻る→〕 〔2月〕24日の分科会は2050年までに温暖化ガス排出実質ゼロを実現するとした政府目標や次期エネルギー基本計画について経団連日本商工会議所,連合,全国消費者団体連絡会から意見を聞いた。

 大きな焦点は原発政策だ。現行計画では2030年度の発電量に占める原発比率を20~22%としているが,足元では6%と差が大きい。目標達成には30基ほどの再稼働が必要とされるが,東日本大震災後は9基にとどまる。

【参考画像】-この資料によれば,2021年1月現在において稼働していた原発が占める電力生産における比率は 3.4%であった-

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 経団連の越智 仁副会長は,原子力について「(安定供給,経済効率,環境性の)バランスに優れている」と指摘。「原発の新増設やリプレース(建て替え)の政策方針への位置付けが不可欠だ」として,次期計画に合わせて明記するよう求めた。

 補注)この「(安定供給,経済効率,環境性の)バランスに優れている」という経団連副会長のいいぶんは,完全なる偽説であった。いまの時代になってもまだ,この種のデタラメな主張を,しかもここまで正々堂々と,なんら恥じることもなく唱えられるのは,「原発教信者」の発言だとしか形容できない。

 原発は40年運転が原則で,特例で60年への延長が認められる。新増設ができなければ36基(建設中含む)の設備は2060年に40年運転の場合で3基,60年の場合は8基に減る。事業者の技術や人材維持のためには「今回見直すエネルギー基本計画がぎりぎりのタイミングであるという強い危機感をもっている」(越智氏)と強調した。 

 政府は「現時点で新増設は考えていない」(梶山弘志経産相)との立場だが,2050年の目標を達成するうえで一定の活用を求める声は根強くある。日商の三村明夫会頭は「安全性を確保したうえでの原発は欠かせない」と明言。

 新増設や早期再稼働に向けて「国が前面に立って原発政策を前進させることを強く期待する」として,電力会社や自治体まかせにしないよう求めた。連合の神津里季生会長は中長期的には原発への依存度を低下させる必要があるとしつつ「代替となる電源が確立されるまでの間は再稼働が必要だ」と述べた。

 補注)連合の神津理季生会長は「労働者(一般庶民?)の生活や立場の視点」はゼロだとみうける。原発の利用について国民・市民側の意見を聞けば,その過半数が反対である事実は,いままで一定して変わらぬ事実である。ところが,この神津は大企業労組の立場・イデオロギー的な心情を強く共有しているせいか,経営側の利害・関心に近接・一致していく「原発・賛成」の見地を遠慮なく披露している。

 たとえば『朝日新聞』2016年10月世論調査は,「原発再稼働『反対57%,『賛成』29%」と報じ,さらに『毎日新聞』2017年3月世論調査は,「原発再稼働 反対55%,賛成26%,差拡大」と報じていた。世論調査に対して示してきた「国民・市民側の原発観」は,その中間的な(どちらともいえないとする)意見はひとまず置いてみても,現在まで一貫して「再稼働に反対する回答」が「賛成のそれ」の倍を記録してきている。

〔記事に戻る→〕 もっとも原発には慎重な意見も根強い。分科会では全国消費者団体連絡会の二村睦子理事が新増設に反対を表明した。「原発に頼らないエネルギー構造に転換すべき政策が必要」と主張し,足元で発電量の18%にとどまる再生可能エネルギーの比率を30年に50%以上に引き上げるように求めた。

 補注)二村睦子のこの指摘(反論)は,日本から海外に視線を向けて評価するまでもなく,あまりにも当然に過ぎる。例を挙げると,『日本経済新聞』2020年1月4日,https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54032220U0A100C2000000/ の報道は,「ドイツ再生エネ46%,初めて化石燃料を上回る 2019年」という見出しの記事をかかげていた。

 このドイツ(ヨーロッパのほぼ中央に位置する国)が,日本の「3・11」(2011年)による東電福島第1原発事故発生を契機に(衝撃を受けていた),それまでの原発使用の路線をあらため,「原発廃絶の途」を選択した事実はみのがせない。ちなみに日本における再生エネの電源比率は,2011年の10.5%から2019年の19.2%であり,実質的に周回遅れの感が否めない。その原因はいまだに原発の稼働にこだわっている点にある。

〔記事に戻る→〕 再生エネについては経団連も「主力電源として大量導入が不可欠だ」(越智氏)という立場だ。ただ発電量が天候に左右されることから,低コスト化とともに安定供給の要件を備えることも必要だと付けくわえた。

 補注)この再生エネの難点だと指摘されている諸点,「天候に左右される点,低コスト化(未達成),安定供給」という3点については,それなりに解決されているか,あるいはより実践的に克服された運営方式がすでに確立されている。こちらの事実に触れずに,このような記事を書くのは,いたって不公正・不公平な報道の仕方である。

 あえて極論するに,お話にならないような〈扇動的な記事〉だといえなくもない。関連させて触れるべき重要な事実は故意に避けておき,原発推進論イデオロギーに益するような文面しか,それも中立を装いながらだが,書いていないのである。

 日商の三村会頭は「(再生エネの固定価格買い取り制度の)国民負担は年2.4兆円に達しており,今後もますます増える」と指摘。再生エネの必要性は理解しつつも,エネルギーコストの上昇が産業競争力に及ぼす影響に懸念を示した。(引用終わり)

 補注)先日,2021年2月13日午後11時08分ごろ,2011年3月11日東日本大震災の余震とみられる「福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震」が発生し,最大震度6強を観測した。

 このとき,東電福島第1原発事故現場では3号機において,いってみれば「3・11」以降, “水没状態” にさせて冷却中であった格納容器のなかに〔ただ,そこだとは完全に特定できてはいないが〕,圧力容器から溶融・落下し,固形化して溜まった状態にあるとみられる「デブリ」(ないしはその周辺)あたりに,あたらしく発生したらしい一定の亀裂(破損)から水漏れが起きていた。

 以上の話題に直接関連していえば,前段記事のなかで「日商の三村会頭は「(再生エネの固定価格買い取り制度の)国民負担は年2.4兆円に達しており,今後もますます増える」という段落があったけれども,東電福島第1原発事故の後始末のために,これまでいかほどの経費がかかってきたかという事実に関する話題など,どこ吹く風とばかりに三村会頭はそのように身勝手なことばかりをいっていた。

 「福島第1事故の対応に最大81兆円 シンクタンクが試算」というニュースに,われわれが接したのは,2019年3月であった。それよりも以前,経済産業省が2016年に公表した試算によると,その金額は約22兆円と見積もられていた。

 この原発事故にからんで発生している莫大な事故対策費を無視してなのか,それともなにもしらずになのか,「(再生エネの固定価格買い取り制度の)国民負担は年2.4兆円に達しており,今後もますます増える」などと,この点だけをとりだして強調するのは,脳天気にもなりえない愚かな発言である。

 

  熱交換率の非常に低い原発をこれからも新増設しろという,恐ろしくも頑迷な珍論に対する批判

 a) さて,ここで,前段において(※※)印を付けておいた話題に戻り,議論したい。

 要は,いまどきになってもまだ世界各国では,熱交換(有効)率が30%を少し上まわる程度の性能しかもたない原発という装置が,そのまま新設までされつづけている。こうした原発の発電方式はその熱交換率が非常に低水準であるにもかかわらず,これからもまだ新設を予定している原発が待ちかまえているけれども,それ以上の熱交換率の実現に向けて,たとえば10%単位以上に改善・向上しうる技術的なメドは,全然立っていない。

 LNGを燃料にする火力発電は最新式の場合,熱交換比率は6割台にまで到達している。これは原発の約2倍の比率にまで到達している。しかも,その発電機1基の能力が100万㎾水準のものがすでに多数稼働しており,原発の標準的な発電能力と変わらなくなってもいる。

 たとえば,東京電力東京電力ホールディングス)のホームページをのぞけば分かるように,火力発電(原発も火力だがこの点はさておき)の能力として明示されている「設計熱効率(%)(LHV)」のなかには,LNGを燃料とする発電機の場合,「(最高の)61%」(川崎発電所)が出ている。逆に,最低の熱交換比率である発電機としては,横浜発電所での,石油を燃料とする「(最低の)41.6%」が記されている。

 補記)低位発熱量基準(LHV基準,Lower Heating Value)とは「燃料が燃焼した時に発生するエネルギー(発熱量)を表示するさいの条件を示す」。

 註記)「電力供給設備 2019年3月現在」『東京電力ホールディングス』https://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/electricity-supply/thermal-j.html

 ところが,原発の熱交換比率はいまだに「30%と少々である」ままに留まっている。となれば,燃料をLNGに使用する最新式の発電機1基(100万㎾の出力水準)で,原発の同じ「100万㎾出力水準の発電機:原子炉」(半世紀以上もその熱効率にめだつ改善・向上なし)だと,こちらの2基分に(も)相当する。

 b)「建設費の比較」(発電出力 1基:100万kW として)

 ここでは,出力が100万kWである発電所を対象として考える。発電設備本体の費用はタービン建屋などを含み,1000億円となる試算できる。このうち,発電所の建屋の一般的な費用負担は,タービン建屋:20億円,管理棟:10億円の合計30億円程度とされている。したがって,建屋を除く発電設備本体費用は970億円,建屋は30億円となる。

 註記)「発電所の建設費(100万kW)」(東京都環境局ホームページ),https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/tochi_energy_suishin/index.files/5_hatudennsyo_kensetuhi.pdf

 【補  論】  すでに3年前に,こういう『東京新聞』の報道があった。全文を紹介したい。この原発の販売価格だとLNGを燃料する最新式の発電機を10基調達できる計算になる。

 

     原発,コスト増でも推進 1基4400億円試算 実情1兆円超 / エネ計画素案 ◆
  =『東京新聞』2018年05月17日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/722

 

 経済産業省が〔2018年5月〕16日に公表した2030年に向けた新しいエネルギー基本計画の素案で,将来の電源構成を決めるさいに大前提となる各電源のコスト推計に,近年の原発建設費の高騰を反映させていないことが分かった。

 

 建設費は政府が4年前に前回計画を策定したさいに前提とした「1基4400億円」から,原発メーカーや商社によると倍の1兆円以上になっている。だが,経産省は「もっとも安い電源」とした前回推計は堅持。電源構成に占める原発の割合を現状の2%弱から2030年度に20~22%に拡大する方針をそのまま踏襲する。

 

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 専門家からは「原発がコスト競争力を失っている状況を反映しないのはおかしい」(自然エネルギー財団大野輝之常務理事)との批判が出ている。

 

 素案が前提にしているのは政府が2015年にまとめた試算。1基当たりの建設費を4400億円円と推定。原発の発電コストを「1キロワット時当たり10.1円以上」と推計し,このうち3.1円が建設費に相当する計算で,石炭火力(12.3円)や水力(11円)より安い電源と位置付けた。

 

 しかし,その後,三菱重工がトルコで進める計画や東芝が米国で着手した事業(現在は米企業が継承)では建設費が1基あたり1兆円を超えている。東京電力福島第1原発事故後,安全規制が強化されたためだ。単純計算で発電コストに占める割合は6.2円以上になり,原発の発電コストは13.2円以上に上がる。石炭火力や水力を上回り最も安い電力ではなくなる。

 

 龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)によると前回の政府試算以降に明らかになった福島事故処理費の膨張を勘案した事故リスク対応費の増加分なども算入すれば,原発発電コストは「17.6円以上」に上がり,太陽光電力の入札価格の17.2円(2017年度,大規模設備対象)も上回る。

 

 これらの状況にもかかわらず,経産省は素案では原発について「低廉で変動がない重要な基幹電源」の位置づけを変えていない。

 

 原発は現在5基が再稼働しているが20~22%の達成には30基程度の稼働が必要になり,老朽原発が多いことを考えれば新設も必要になる可能性がある。

 

 素案は原発堅持の一方,太陽光など再生可能エネルギーの比率目標は従来通り22~24%に据え置いた。

 

 経産省はホームページで国民からの意見を募集する「意見箱」やパブリックコメント(意見公募)を経て,7月上旬に閣議決定する方針だ。

 

  ※ 4年の変化反映せず ※

 経済産業省のエネルギー基本計画の素案は,2014年以来4年ぶりの見直しをうたいながら,この間の情勢変化に正面から向きあったとはいえない内容となっている。

 

 東京電力福島第1原発事故以降,再稼働した原発は8基で,2016年度の電力量に占める原発の割合は1.7%。2030年度の目標の20~22%を実現するには,稼働から40年たった古い原発を10数基,運転延長したり,原発を新設したりすることが必要となる。どちらも実現性に乏しい。

 

 福島の事故以降,原発の安全対策規制が強化され建設費用は増加。工期の遅れも常態化している。米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリックは,米国で原発新設の工期遅れを繰り返し2017年3月に破綻。三菱重工業などがトルコで進める原発計画は,総事業費が当初想定の2倍の4兆円以上に膨らむとみられ,伊藤忠商事が3月に撤退した。日立製作所が進める英国の原発新設も総事業費が3兆円規模に膨らむことから,支援をめぐる英政府との協議が難航している。

 

 一方,再生可能エネルギーはコスト低下と導入拡大が進む。2017年の太陽光発電の平均入札価格は2010年の3分の1以下の11円に低下。2015年には累積設備容量で風力発電原発を超え,2017年には太陽光発電原発を追い抜いた。

 

 この4年の変化を踏まえれば原発の目標を下げ,再生エネの目標を引き上げるのが自然だ。だが,両方とも変えずに据え置くという経産省の姿勢からは,原発の存続をめざす意図が透けてみえる。

 率直に感想を述べるとするが,経済産業省・エネルギー資源庁による「原発関連のエネルギー観」は,時代錯誤を地でいっている。そうでないというためには,軍事面との意味関連を的確に説明しておく余地があった。しかし,それでもなお,再生エネの方途・将来性との「話の折りあい」がつかない「なんらか残余の介在物」を強く感じさせている。


 「S+3E(3E+S)」とは,なにか

 a) この「S+3E」(3E+S)は,

     エネルギーの安定供給(Energy Security),

     経済効率性(Economic Efficiency),

     環境への適合(Environment),

     安全性(Safety)

からなり,日本のエネルギー政策の基本となる概念だと説明されてきた。ところが,いまとなっては,この基本条件に照らして判断するとしたら,そこから「もっとも遠い離れてしまったエネルギー生産の方法」が,ほかならぬ原発そのものになっていた。

 まず,電力の安定供給面では原発が一番優れているという判断は,大間違いであった。つまり逆にいえば,操業率の弾力的な適応性やその即応的な融通性がゼロ(以下か,ときにはマイナスに働くもの)であるのが原発であった。

 原発は安定的な電力の供給源ではなく,ムダな電力を生産せざるをえない時間帯(とくに電力需要が低下する夜間・深夜)になっても,操業度を落とせない(稼働率を調整できない)という,別言すれば木偶の坊的な発電装置であった。

 ところが,いうにこと欠いて,その決定的な欠点・短所・不利点を逆手にとったつもりになってなのか,原発はベースロードとして使える電源だという,基本から無理筋の主張が従来はまかり通っていた。だが,現在においてもまだ,過去の幻想であった「原発=ベースロード」をもちだし議論するのは,破綻したリクツの再現にしかならず,真っ黒に汚れたボロぞうきんを医療衛生用のガーゼだといいくるめる口調に等しい。

 以上「ベースロード」に対する批判点は,とくに都留文科大学の高橋 洋が,その問題点を十二分に分かりやすく批判してきた。

 b) つぎに,経済効率性に関して原発が一番有利だったという事情は,もうありえない嘘説になっており,むしろ実質的には一番高い原価を発生させているのが原発である。

 東電福島第1原発事故によって発生した後始末費として提示された「81兆円」という金額は,国民・市民たちがこれから何十年でもかかって電気料金を介して誅求されつづけていくなかで,補填されていくそれになっていた。

 さらに,環境への適合といった要請にとって,もっとも不適・不要かつ非常に有害であるのが原発である。原発が環境への悪影響ばかりもたらす発電装置・機械である事実は,チェルノブイリ原発事故や東電福島第1原発事故によって,あますところなく実証してきた。

 c) くわえて,安全性に関してはなにをかいわんやであり,事故を起こしても起こさなくても,もともとその安全性の問題に関しては,最悪な技術的な諸条件を背負っているのが ,もとより“原発に固有の総合的な特性” であった。

 なかんずく,原爆という兵器・武器に原子力を使用するであれば,それなりに応用技術としてひとつの利用方法になっていた。とはいえ,原発の燃料として原子力を使用するとなれば,原爆として固有である「兵器・武器のとりあつかい」に固有である危険性といつも隣り合わせを覚悟していなければならない。

 その危険性が実際に発生させたのが,スリーマイル島原発事故(1979年3月),チェルノブイリ原発事故(1986年4月),そして東電福島第1原発事故(2011年3月)であった。

 今後においてもしも,旧ソ連や日本の原発が起こした重大かつ深刻な事故に相当する原発の大事故が発生したら,この地球にまた大きなやけどの跡の残すだけでなく,全世界的な規模になる災害・被害をもたらす。

 そうした事態はあってはならないものであるが,原発が現在,地球上には5百基近くも存在するゆえ,けっして杞憂ではありえない。いうまでもないが,原発の本源的な技術の述特性が原発に由来するゆえ,その危険性は従来の諸技術が発生させる事故とはまったく異質であり,異次元に及ぶとも表現しておいたほうが適切である。

 以上は,まともな原子力工学者なれば,誰もが認めざるをえない真実である。もっとも,彼ら全員がその種の真実を実際に口に出して語りうる否かは,別問題でありつづけてきたが……。


 「2020年10月26日  日本気候リーダーズ・パートナーシップ(jclp)」の議論

 日本の2050年温室効果ガス実質排出ゼロ目標の達成に向け,「2030年までに再エネ比率50%」という野心的な目標の設定を求めます。気候危機の回避と日本の競争力の維持向上に,いまこそ 政治のリーダーシップが求められている。

 「S+3E」から「2S(Safety & Sustainability)」へ,基本原則を改定現行のエネルギーミックスは,「安全性を大前提とし,自給率,経済効率性,環境適合を同時達成する(S+3E)」としている。

 しかし,気候危機に鑑みれば,環境適合性は経済効率性と同列ではなく,それ以上の重大性をもつ。気候危機回避,自給率改善,経済の持続的発展を包含する「持続可能性(Sustainability)」を,「安全性(Safety)」と併せて基本原則とすることを求めねばならない。

 註記)https://japan-clp.jp/wp-content/uploads/2020/10/7098c11edc0488955e1b41bc8762e890.pdf

 

  国際ビジネスファイナンス研究会報告書『エネルギーミックスに関する一考察』2016年8月4日の主張

 エネルギー政策の要諦は「S+3E」を実現するための最大限の取り組みであるとされた。すなわち,エネルギーミックス選択にあたっては

  安全性(Safety)を前提とした,
    エネルギーの安定供給(Energy Security),
    経済性の向上(Economic Efficiency)
    環境への適合性(Environment)

が求められるということである。

 これまでも,3Eをおたがいにトレードオフ化(トリレンマ化〔競合的に身動きできなくさせる駆け引きの材料に〕)させないとしてきたが,東電福島原発事故を経験して安全の確保が大前提とされた。

 註記)「エネルギーミックスに関する一考察」reitaku.repo.nii.ac.jp › file_no=1,106頁。

 

  原子力市民委員会が声明「エネルギー基本計画は原発ゼロ社会の実現を前提に見直すべき」を発表(2018/5/15,http://www.ccnejapan.com/?p=8798

 この声明は,経済産業省総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会のエネルギー政策に関する「意見箱」にも提出したものである。長い文章であるが,以下に全文を引用する。本記述の ⑤ までを総括した中身になっている。

 --2011年3月〔11日)の東日本大震災東京電力福島第1原子力発電所事故(福島原発事故)から7年が経過した。しかし,エネルギー政策は,福島原発事故の教訓を踏まえた方向に転換されておらず,エネルギーを取り巻くきびしい現実に対応しているとはいいがたい。

 政府のエネルギー政策において重要な基準とされている「S+3E」の観点からも,福島原発事故のような過酷事故を,日本社会は受け入れることができない。現行の「エネルギー基本計画」における原発の位置づけを全面的にあらためる必要がある。

 2017年8月からの総合資源エネルギー調査会基本政策分科会における「エネルギー基本計画」の見直しの審議では,現行の「エネルギー基本計画」を踏まえてつくられた「長期エネルギー需給見通し」(2030年のエネルギーミックス)を変更せずに,原発比率については20~22%の実現を前提に議論が進み,原発を「重要なベースロード電源」とする骨子案が示された。

 さらに経産省の「エネルギー情勢懇談会」では,気候変動に関するパリ協定の発効を前提とした2050年以降をみすえた長期的な脱炭素のエネルギー戦略がテーマとなっているにもかかわらず,いまだに原発固執する産業界寄りの議論が繰り返され,長期的にも原発を脱炭素化の選択肢として温存する提言が出されている。

 このような政府内での原発の維持や延命政策を前提とする「エネルギー基本計画」の見直しの議論には多くの問題点がある。「エネルギー基本計画」は,以下の論点からあくまで原発ゼロ社会の実現を前提に見直すべきである。

 第1に,原子力発電の根本的な問題点を直視し,原発ゼロをめざすべきである。

 これまでのエネルギー基本計画見直しの議論には,福島原発事故の教訓を活かし,パリ協定のもと,国際的な気候変動問題への責任を果たし,中長期的に持続可能な社会を実現するというビジョンが欠けていた。

 政府は,非現実的な原子力維持目標に固執し,再生可能エネルギーの導入や省エネルギーを軽視している。そのため,本格的な気候変動対策を停滞させている。これでは,これまでのエネルギー政策の失敗を繰り返すだけである。

 原発を取り巻く現実はきびしい。2014年度に原発の年間発電量はゼロとなり,その後の原発の再稼働も数基に留まり2016年度実績では総発電量の2%にも満たない。原発を維持することが,電力会社の経営にも重大な影響を及ぼしている。

 新規制基準や原子力規制行政における多くの欠陥,原子力損害賠償制度の不備,運転開始後40年を超えた老朽化原発の運転延長問題,放射性廃棄物の処理・処分の問題などの点でも,原発は困難に直面しており,経済的合理性も失われている。原発のもつこれらの根本的な問題点を直視し,原発ゼロをめざすべきである。

 見直しの前提として総発電量に占める原発の割合を2030年に20~22%にするとしているが,そのようなことは現実には不可能だと考えるのが合理的である。この前提の実現には,廃止が決まっている18基以外の原子炉42基(建設中の3基の原発を含む)のうち約8割を再稼働させ,さらに40年間と決められている老朽原発の運転期間をさらに20年間延長させる必要がある。

 しかし,再稼働や老朽原発の運転期間延長等で原発を維持することに実現性も国民的支持もない。各種の世論調査によれば,原発再稼働に関しては国民の過半数が反対している。

 これまで再稼働した原発は8基(2018年5月現在〔2021年1月18月現在は9基が稼働中だが,そのうち5基は停止中)に留まり,16基は適合性審査への申請の目途さえたっていない。まして,立地自治体や経済界が経済的理由で要望しはじめている原発の新設やリプレースも,その実現の見通しはまったくないのである。

 第2に,新規制基準に基づく審査では原発の安全性が確保されない。

 政府は,原発依存度を可能なかぎり低減するとする一方,「世界でもっともきびしい水準の規制基準」に適合すると原子力規制委員会が認めた原発については再稼働させるという方針をもち,なし崩し的に再稼働を進めている。

 しかし,立地審査指針が採用されないなど新規制基準には多くの欠落項目や問題点がある。こうした基準にもとづく適合性審査は,原発の安全性の確保の観点からすれば不十分である。地震津波・火山などの自然災害への対策や原子力防災を含めた原子力規制行政の問題点も,解消されていない。

 さらに,例外的にのみ認められるはずの20年間以内の運転延長がなし崩し的に認められはじめている。だが,老朽化した多くの原発には安全上の深刻な問題がある。さらに,原発のテロ対策も明らかに不十分である。原子力防災に対する政府や自治体の危機管理対処能力もきわめて貧弱である。

 多くの国民や周辺自治体などから原発再稼働に反対の意思表示がされているにもかかわらず,再稼働にあたっての同意は,立地自治体のみでよいとされている。これらにみられるように,政府が原発を稼働させる大前提としている「安全性の確保」はされていないし,国民の意見も無視されているのである。

 第3に,原子力発電の真の発電コストは高く,隠されたさまざまなコストとリスクがある。

 福島原発事故の損害賠償や除染・中間貯蔵施設建設等のため,すでに10兆円を超える資金が東京電力支援のために使われている。また,事故収束や行政の事故対応にも多額の資金が投じられている。これらを合計すれば,福島原発事故による費用は現時点で20兆円を超える。

 総合資源エネルギー調査会発電コスト検証ワーキンググループは,新設の原発(モデルプラント)が火力よりも発電コストが安いという計算結果を2015年に公表した。だが,事故後に必要となった費用を適切に評価すれば,原発のコストは明らかに高い。また,実績値で評価した場合には,発電コストは火力発電を大幅に上回る。

 コスト検証ワーキンググループの示した発電コスト計算は,新設の原発(モデルプラント)についての非現実的な前提にもとづいている。実際には,原発の建設コストは福島原発事故後に急騰している。そのために,米ウェスティング・ハウス社は倒産し,日本の東芝は経営危機に陥った。このような現実を政府はあらためて認識すべきであり,原発に関する経済性評価を一(いち)からやりなおすべきである。

 実際には経済性がない原発電力自由化のなかで延命させるために,賠償費用等の一部を託送料金によって回収するなどの措置が政府によって講じられつつある。くわえて,原子力損害賠償法に定められた賠償額を有限にしようとする動きも政府にみられる。これらは,原発が国家の支えなしに自立できない,コストとリスクの高い電源であることを示している。

 第4に,意思決定プロセスに,市民からの意見を聴取し,反映する努力をおこなっていない。

 政府内で,非現実的な「エネルギーミックス」を前提にした議論がおこなわれているのは,エネルギー政策形成において民主的な意思決定プロセスが欠けているからである。経済産業省が所管する審議会は,委員の構成をはじめ,原発を推進してきた産業界や電力会社の意向が色濃く反映されている

 「エネルギー基本計画」の見直しに代表されるエネルギー政策の策定では,意思決定プロセスのあり方から見直す必要がある。

 3・11後のエネルギー基本計画の見直しでは,前政権下で国民的議論がおこなわれ,原発ゼロをめざすことがいったんは決定された。2010年のエネルギー基本計画の見直しのさいには公聴会までは開催されたが,今回の見直し過程では意見箱の設置に留まり,また受け付けた意見に関する検討・分析や反映などはまったくなされていない。

 第5に,原子力発電が「ベースロード電源」という発想が電力システム改革を後退させている

 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の骨子案では,原子力を引きつづき「重要なベースロード電源」として位置づけ,年間発電量に占める割合を2030年までに20%以上と2017年の約3%から大幅に増やそうとしている。

 原子力発電や石炭火力発電を電力供給のなかで重要視して「ベースロード電源」とするという考え方は,電力自由化再生可能エネルギーの大量導入が進むなかではもはや時代遅れであり,欧州では,「ベースロード電源」という発想そのものすらなくなっている。むしろ電力システムの調整力が重要視され,硬直的な運用しかできない原発は調整力を阻害する存在になってきている。

 原発を「重要なベースロード電源」に位置づけたことにより,再生可能エネルギーの導入が現実に阻害され,導入コストの低減を妨げている。原子力を含む「ベースロード電源」をフル稼働させることを前提にしているため,算定される系統の空き容量がゼロとなり,再生可能エネルギーの系統接続が大幅に制限されるという理不尽な事態が起きているのである。

 すなわち,原発を無理に維持しようとするために電力システム改革そのものが後退している。日本では,電力システム改革の第一弾として電力広域的運営推進機関が2015年4月に発足し,2016年4月から電力の小売り全面自由化がおこなわれた。しかしながら,他方で,電力システム改革のもとでも原発を維持するための仕組がつぎつぎに構築されている。これは,電力システム改革の理念を大きくゆがめている。

 原子力市民委員会は,2014年の「エネルギー基本計画」や2015年の「エネルギーミックス」の策定にさいし,国民的合意を得ながら原発ゼロ社会の実現をめざすよう提言してきた。

 また,2014年4月には『脱原子力政策大綱2014』を,2017年12月には『脱原子力政策大綱2017』を公表し,福島原発事故の被害の全貌や後始末をめぐる問題,放射性廃棄物の処理・処分や原発再稼働を容認できない技術的根拠を指摘したうえで,原発ゼロ社会を実現するための行程を発表してきた。

 さらに新規制基準のさまざまな問題点について特別レポート5『原発の安全基準はどうあるべきか』も発表している。

 「エネルギー基本計画」は,原発のさまざまな問題点を直視し,早期に原発ゼロ社会を実現することを前提におくべきである。そのうえで,「エネルギー基本計画」を,再生可能エネルギーの野心的な導入目標や国際的に責任のある温室効果ガスの削減目標を含む,日本社会を持続可能で真に豊かなものにするエネルギー基本計画へと全面的に作りなおすべきである。(引用終わり)

 日本政府の経済産業省・エネルギー資源庁は,以上のごときに明示的に批判されている「現代的なエネルギー観」とは,まったきに逆方向を志向していて,いまもなおその立場を変えようとはしていない。この国におけるエネルギー政策は,もしかすると,再度「3・11」のような原発大事故でも起こらないと,このようにきびしく指摘されているはずの “日本的な原発に関する「エセ有利観」” を永遠に変えられないのか?

 本日のこの記述で冒頭にとりあげた記事,「脱炭素へ原発『国が前面に』 経済界,政府に要請 『新増設へ環境整備を』」『日本経済新聞』2021年2月25日朝刊5面を読んだ時,日本の経済界「最高指導者がいまだに旧来の原発エネルギー観に拘泥しつづけている様子」に接して,21世紀の日本はこのままでは本当に,エネルギーという課題の側面からも,さらにダメになっていくほかないと実感させられる。

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