日本がこれからさらに導入・利用していく「再生エネ:風力発電」に関した日本経済新聞の報道は,原発コストと直接比較する記事を同じ紙面で書きたくないのか

 風力発電(など再生エネルギー)のコストは確実に安くなっており,原発のコストは逆に高くなるばかり,それだけのことであった,今後においてもその差はさらに拡大していく,再生エネルギーの導入・利用については,いつまでもモタモタしていたい「経済産業省・エネルギー資源庁の〈原発大好き〉という時代錯誤」,「持続可能な開発目標」に逆行し,この目標を「破壊もする原発

  
  要点:1 原発の不利・弊害には触れずに棚上げしたまま,再生エネルギーとしての風力発電を記事にする日本経済新聞

  要点・2 原発の問題性,持続可能な開発目標にはほど遠いというか,その逆効果しか生まない「電源として原子力発電所を利用していく立場」の深刻な反時代性

  要点・3 原発は原爆とは双生児である出自の関係


 「〈第4の革命 カーボンゼロ大電化時代(1)〉 緑の世界と黒い日本,『再生エネが最安』GDPの7割 普及阻む制度の壁」日本経済新聞』2021年3月1日朝刊1面

 電化の時代が訪れる。カーボンゼロの達成には化石燃料をなるべく燃やさず,温暖化ガスを出さない電気で社会を動かす必要があるからだ。太陽光や風力を操り,電気をためる蓄電池を押さえた国がエネルギーの新たな覇者となる。日本も再生可能エネルギーの導入と電化を加速するときだ。

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 1) 1回転で2日

 高さは東京都庁を上回る260メートル。羽根は107メートルと東京ドームの本塁から外野両翼のポールに届く。1回転で1世帯の約2日分の電力を生む。建設中の英国沖ドッガーバンク風力発電所は,このタービンをまず190基建てる。完成時の発電出力は大型原発3基分の360万キロワットで,英国の電力需要の5%をまかなう。

 補注)ということは,イギリスにおける電力需要は360万㎾ ✕ 20 =7200万㎾になる。比較する材料として,日本の電力需要についての,経済産業省・エネルギー資源庁の関連資料も挙げておく。

 イギリスの人口は2019年で6669万人,日本は同年の人口は1億2616万人。産業部門の構成内容が別途問題になるが,ここではひとまず度外視しても,イギリスのエネルギー消費は単純に観て,人口1人当たりでは日本よりかなり多めである。

【参考図表】 日本におけるこの電力事情から,なにがうかがえるか? とくに目立つのが製造業を中心とした産業諸部門の衰退である。エネルギー消費水準から推定できるのが,その種の事情である。家庭用の電力需要は,21世紀にはいってからというもの,その全体に占める比率としては,ほとんど変化がない点が特徴的である。

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〔記事に戻る→〕 デンマーク沖に30年前にできた世界初の洋上風力の発電出力は5千キロワット。羽根の巨大化で1基の出力は約30倍になった。1基建設する日数も28日から半日に縮み,基礎や電線の規格を統一して発電費用が下がった。

 「欧州勢が提案する価格の安さには驚かされる」。秋田県由利本荘市の九嶋敏明副市長は舌を巻く。市沖合で計画される大型洋上風力事業は5月に入札があるが,欧州勢に有利ともみられる。

 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の試算では世界の電力需要は2050年に48兆キロワット時と2017年の2.2倍になる。脱炭素のため石油や石炭の代わりに電気で車や工場が動くからだ。しかも二酸化炭素(CO2 )を出さない電気が要る。再生エネの発電量は7.5倍になり,全体に占める比率も25%から86%に高まる。再生エネによる「大電化時代」が始まった。

 日本政府は,現在ほとんどない洋上風力を再生エネ拡大の切り札とする。2040年に発電出力を計4500万キロワットまで増やす計画だが,由利本荘の洋上風力も出力73万キロワットと英ドッガーバンクの5分の1。2020年の発電量に占める再生エネの比率は英国42%,ドイツ45%に対して日本は2割どまり。周回遅れは否めない。

 補注)この「英国42%,ドイツ45%に対して日本は2割どまり」という指摘については,さらに正確な説明が必要である。2019年の日本の事情については,こう指摘されていた。

     ★ 2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)★
 =『isep(環境エネルギー政策研究所)』2020年4月10日,https://www.isep.or.jp/archives/library/12541

 ※ 日本国内の自然エネルギーによる発電量の割合は18%を超え,太陽光は7%に ※

 

 2019年(暦年)の日本国内の全発電量(自家消費含む)に占める自然エネルギーの割合は前年の17.4%から18.5%に増加したと推計される。

 

 日本国内の太陽光発電の年間発電量の割合は,2019年には前年の6.5%から7.4%に増加し,VRE(変動する自然エネルギー:太陽光および風力)の割合は7.2%から8.2%に増加した。

 

 バイオマス発電(2.7%)の年間発電量は前〔2018〕年から2割,風力発電(0.76%))および地熱発電(0.24%)も1割程度増加しているが,水力(7.4%)は前年からほぼ横ばいだった。

 

 化石燃料による火力発電の年間発電量の割合は前年の78%から75%に減少したがまだ高いレベルであり,原子力発電は前年の4.7%から6.5%に増加した。

 

 欧州では,すでに自然エネルギーの年間発電量の割合が30%を超える国が多くあり,デンマークは84%に。VRE(変動する自然エネルギー)の割合もデンマークの55%を筆頭に20%を超える国が多くある。

 

 EU全体の2030年に向けた高い自然エネルギー導入目標と合わせて各国では中長期的な高い導入目標をかかげており,自然エネルギー100%で電力供給をめざす国もあるが,これらと比べて日本の2030年の導入目標24%はとても低い。

 

 中国でも自然エネルギーの割合は水力発電を含めて全発電量の26.4%に達しており,風力発電が5.5%,太陽光発電も3.1%になり,VRE割合(8.4%)が原子力の4.8%を大きく上回っている。

 補注)日本はいまでは,再生エネルギーの導入・利用の度合いで判断すると,先進国中では後尾に着けていながら,なかでも原発を22~20%にまで戻して維持することばかり考えている。引用している本日の日経記事も,どうやら原発のことにこの記事のなかで,この事実に直接言及するのは「不要」と考えているらしく,いっさい触れるところがない。

 

 調査会社ブルームバーグNEFは発電所を新設した場合にどの電源が一番安いかを国・地域ごとに調べた。1世帯が4カ月間に使う1000キロワット時の電気をつくる場合,もっとも安い電源は日本が石炭火力74ドル(約7800円),中国は太陽光33ドル,米国は風力36ドル,英国は風力42ドルだった。日本は太陽光124ドル,風力113ドルと高い。

 補注)なぜ日本がこのように,再生エネである太陽光と風力の発電においてコスト高であるのかについて,日本経済新聞は,直接触れようとはしていない。

 

 要は,原発の再稼働を大々的に復活させたい「日本政府と財界」側の意向が,再生エネの発電単価をいつまでも,このような高い水準に留めておく有力な原因になっていた。

 

 再生エネの導入・利用に関して日本が周回遅れだといわれる事由は,ある意味で国策的に結果させられた顛末である,と受けとられてもいいのである。

 

 今日〔2021年3月1日の時点の「ドル円為替は 106円50銭」ほどであるが,以上に出ていた数値を単純に1ドル=100円で計算してみると,こうなる。

 

  中国の太陽光  1キロワットのコスト 3.3円
  アメリカの風力 1キロワットのコスト 3.6円
  イギリスの風力 1キロワットのコスト 4.2円

  日本の太陽光  1キロワットのコスト 12.4円
  日本の風力   1キロワットのコスト 11.3円  

〔記事に戻る→〕 再生エネが最安電源である国・地域の国内総生産(GDP)をあわせると,世界の4分の3に迫る。再生エネが最安の国を緑,天然ガスが最安を灰色,石炭ならば黒で世界地図を塗ると「緑の世界と黒い日本」が浮かぶ。

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 数年前まで石炭やガスが優位だったが,技術革新と規模拡大で,この10年で太陽光は8割,陸上風力は4割安くなった。石炭火力から撤退を進める独電力大手RWEのマルクス・クレッバー最高財務責任者(CFO)は「再生エネのメジャープレーヤーに変身しなければ将来はない」と話す。

 日本はクリーンな風力や太陽光を使って発電しても,電力会社の送電網につながりにくい。送電網の運用が電力会社から独立しておらず,電力会社の自前の火力発電所原発の接続が優先される。

 補注)やはりこの日経記事が触れない事実があった。送電網を所有する大手電力会社は,まず未稼働中の原発があってもそのすべて100%稼働する状態を設定し,つぎにこれに合わせて必要となるその送電網容量も想定していた。

 そこで,保有する原発のうち未稼働の原発があっても,この分の送電網必要容量に応じてできるその空き「分」は,他社に提供しないという運用方式を採っていた。そのために,自由化された電力業界全体に対して「自由営業を妨害する」ことになる「恣意的な対応」がまかり通っていた。

 2) 送電網が左右

 接続の技術面の調査は3カ月以内に終える決まりだが,守られないことも多い。1年かかった例がある。平地が広く,強い風が吹く北海道は再生エネの適地なのに接続と引きかえに電力会社から蓄電池の整備を求められる。周波数安定の名目で数十億円かかる例もある。市民風力発電(札幌市)の鈴木 亨社長は「このままでは事業じたいがなりたたない」と話す。

 英国も風力発電が急増し,送電網の容量が不足した。2011年から発電量が多すぎる時は風力などの出力を抑えることで,再生エネも送電網に接続しやすくした。接続までの期間は5分の1に縮み,イングランドの再生エネ導入量は2011年の約600万キロワットから2017年に約2500万キロワットに拡大した。

 補注)それでイギリスの再生エネの単価が安価になった。しかし,日本はこのイギリスから10年は遅れた再生エネの給配電制度しか整備されていない(そうしようと努力する気がない)。

 日本も2021年に英国をまねた制度を全国に広げるものの,抜け道がある。送電網が満杯になれば再生エネの出力を抑えるのは同じだ。英国は送電会社が再生エネ事業者に補償金を払う一方,日本は払わずにすむ。「迷わず止められる。大手電力には楽な制度」と大手電力の幹部は明かす。

 補注)そもそも経済産業省・エネルギー資源庁は,原発の電源比率をこれからも22~20%に維持したいと欲求している。だが「3・11」以後,日本において原発が電源に占める実際の電力生産量は,最高時であっても全需要に対して1割未満に留まっていた。原発の稼働が全面的に停止していた時期もあった。

 日本では,再生エネの導入・利用をうながす条件が十二分にもあるにもかかわらず,なぜか,原発の再稼働にこだわりつづけてきたあまり,再生エネの開発・展開を実質的には妨害する国家政策の立場が露骨であった。それでいて(だからとういべきか),いまとなっては「再生エネの利用度は世界の趨勢のなかで〈周回遅れ〉」だという,実にみっともない電源をめぐる事情になっている。

 カーボンゼロに向けた電化競争は,再生エネを早く普及させた国ほど有利になる。再生エネを妨げる制度を見直し,大量導入とコスト低減の歯車を一刻も早く回さなければ,日本は世界から完全に取り残される。(引用終わり)

 日本経済新聞はこのように強調していながらだが,ふだんはほかの記事のなかで伝えるはずの原発「観」そのものが,「原発を積極的に利用する視座」をけっして否定しておらず,しかも事実にはみずからしらぬ振りをしてきた。

 ところが,つぎの ② において紹介する2つの記事は,本日日経朝刊の3面コラム欄に出されていたものであるが,以上に論じてきた再生エネの積極的な導入・利用の必要性を裏面から強調する内容になっており,事実として相当に皮肉な「紙面の構成」になっていた。。


  本日『日本経済新聞』の電力事情関係記事2点

 1) 「〈第4の革命 カーボンゼロ〉英,再生エネ接続容易に  需給に応じ柔軟に運用」『日本経済新聞』2021年3月1日朝刊3面(なお,この記事は1面の続編に当たるが,こちらの内容をこのように別の紙面に移してとりあげるところが〈ミソ〉になっているのかもしれないと,あえて推察しておく)

 英国で再生可能エネルギーが飛躍的に拡大したきっかけは,2011年に導入した「コネクト&マネージ」という送電線の利用ルールだ。再生エネを送配電網に「コネクト」(接続)させることで発電比率を高めることを目的にした。(1面参照⇒ ①の記述)

 それまでは,火力発電所原子力発電所の電気だけで送配電網の容量が一杯になりそうな場合,再生エネは発電しても送電網に接続できなかった。接続には送配電網が増強されて容量に空きができるのを待つ必要があった。新ルールは再生エネも差別なく送配電網に接続させ,さまざまな発電所からの電気の流れを「マネージ」(管理)して調整した。

 補注)前段で触れておいた事実であるが,日本では大手電力会社は「原発を全基再稼働させた時」を想定しておき,このために使用される送電網の容量を現在確保している状態にありながら,同時にまた,日本にある原発全基のうち「その1割未満の稼働率状態」が「3・11」以後における “これまでの実績” でもありながら,その「空きの理由」を盾にして送電網の利用をかたくなに拒む姿勢を採ってきた。

 経済産業省・エネルギー資源庁の態度とみるや,そうした実態を積極的に改善させるための政策的な配慮をしていない。この点は,いかにも原発再稼働にこだわりつづける政府の基本方針が《時代後れ》であるかを,端的かつ如実に教えている。いまや日本は電力事情に関していえば,完全に後進国家体制になっている。

〔記事に戻る→〕 再生エネは発電出力が天候に左右され,電力供給が送配電網の容量を超えることもある。その場合は再生エネ事業者に出力抑制を求め,電力の需要と供給を均衡させる。そのさい,発電事業者には抑制を受け入れた対価を支払う。送配電網の容量が空いた時だけ接続できた従来より再生エネ業者にとって投資や採算を計算しやすくなった。

 英国では2000年代から風力発電が増えて供給過剰になった。電源に占める再生エネの比率は2010年に7%だったが,ルール変更の2011年以降に急上昇し,2020年は42%だった。再生エネを主力電源に育てることをめざす日本も2018年に「日本版コネクト&マネージ」を導入した。柱の一つは送電網の空き容量の定義変更だ。

 送電網は1本の電線が故障してもほかの電線に電気を流し,停電などを防ぐ。送電網はいつも一定容量の空きが要るが,以前はすべての電源が最大限に発電した瞬間も空きが確保できるように運用されていた。

 たとえば,燃料費が高く,緊急時以外は動かさない石油火力もフル稼働する前提で空き容量を計算していた。空き容量は小さくなり,再生エネを接続しにくかった。2018年からはより実態に近い算定方法にあらためた。経済産業省によると原発6基分にあたる約600万キロワットの容量拡大効果があった。

 補注)ここで奇妙に思うことは,前段で指摘したように,「現存する原発全基の再稼働」を日常的に踏まえて確保している送電線の「空き:要領」が,最優先的に空きのままでに維持されてい事情は,いっさい言及されない説明(記事)になっている。

 要は,この記事に関係するそうした多くもの事実のうち,ある特定の事情に関係するそれも肝心な事実についてとなると,あえて積極的にはとりあげない報道の仕方にしている。つまり,この記事だと「原発稼働時のために備えて確保しているだけで,再生エネの送電用」に回せることができるはずの「空き送電線の容量」は,具体的には語ることをしていない。

 ただし,それでも「燃料費が高く,緊急時以外は動かさない石油火力もフル稼働する前提で空き容量を計算」という別の関係での説明は,この記事における説明にもちだし,強調されるかのような論調になっている。

 補注の 補注)もっとも,日本経済新聞はほかの原発関係の記事では,以上に指摘した「原発未稼働状態」と「空き送電線の容量」との関連に触れていないわけではない。ただ,本日における記事の場合だと,その関連をあえてもちこまない記述を工夫している。これはこれなりになんらかの意図の伏在を感じさせてくれる。

〔記事に戻る→〕 2021年からは送電網の混雑時に出力制御を受け入れることを条件に再生エネをつなぐ「ノンファーム接続」が全国で始まった。ただ,出力を抑制された場合に補償がないなど,仕組が英国と異なる点がある。(引用終わり)

 この最後の段落は,まさにいいっぱなしである。なぜその「仕組が英国と異なる点がある」のかについて,その背景や原因を語るべき記事であるはずのところからすら,確かの姿勢で書いており,大事な点には触れないままで終わらせる記事にしている。

 なぜ,日本では「2021年からは送電網の混雑時に〔のみにかぎってという対応の仕方で〕出力制御を受け入れることを条件に再生エネをつなぐ」ところまでしか,大手電力会社は応じようとしていないのか?

 その点に対しては,それ以上の掘り下げがなされる気配のない紙面の雰囲気になっていた。その程度に「事実関係を伝える」だけの新聞記事で,はたして,読者の誰もが満足する(読んで納得がいく)記事造りになりうると思っているのか? 

 2) 「〈きょうのことば〉使用済み核燃料  数年単位で冷却必要」『日本経済新聞』2021年3月1日朝刊3面「総合・経済」(のコラム記事 )

 ▽ 原子炉で燃料として使用したあとの核燃料。ウランやプルトニウムなど核反応によって生じた放射性物質を多く含み,核兵器への転用もできるため厳重な管理が必要となる。

 

 ▽ 核反応を止めた後もまだ熱をもっており,数年単位の時間をかけて,原子炉建屋にある大量の水をためた使用済み燃料プールのなかで冷却を続ける。東京電力福島第1原子力発電所では3号機のプールに残っていた核燃料の取り出しが直近の課題となっていた。

 

 ▽ 通常の使用済み核燃料は冷却後,再処理工場でウランやプルトニウムなど一部を燃料として再利用したり,強い放射性物質を長期間保存したりする。使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出し,再び原発で使用する仕組を「核燃料サイクル」と呼ぶ。

 

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 このコラム記事(特定の事項を簡潔に解説するために儲けられている欄)は,東電福島第1原発事故の後始末に関してなのだが,「3・11」からもうすぐ10年目の日が来る直前になってようやく,3号機の「プールに残っていた核燃料の取り出し」が完了した,という事実を説明する内容であった。

 この図解においては,1号機と2号機はそれぞれ “2027~2028年” と “2024~2026年” に,その「取り出し開始」の作業をおこなう予定だと記入されている。

 さて,その2028年といったら,東電福島第1原発事故が起きてから早,17年が経つ時期になっている。こういってはなんだが,この作業工程の予想は,実に悠長な「原発事故の後始末・日程」に関した見通であるというほかない。

 しかし,これらの作業工程においては当然,これからも,随伴するコストが多種多様に発生していく。いまの時点にあっての話としてだが,そのために発生する経費がどのくらいになるのかについて,どう予算化していけばいいのか? おそらく概算であってもまだ,その見当がうまく付いていないと想像する。

 いまのところ,原子炉本体(圧力容器と格納容器じたい)を廃炉工程にまでもちこむために必要となる本格的な作業工程はまだ始められておらず,実質的にはまったく手が着けられていない。原発事故から10年が経っているのに,である。つぎの10年もおそらく,瞬く間に過ぎていくものと予想するほかないのか。

 以上の「事故った原発」じたいがあたかも無限連鎖のように発生させていくコスト:経費の増大ぶりは,「日本の原発コストそのもの」をこれからも,ヨリいっそう嵩上げしていくわけである。この事実は未来に向けて覚悟しておくべき原発問題の前提条件であった。

 原発のコストが一番安いのだなどと空疎な喧伝を重ねてきた「原子力村の大虚言」は,いまとなってみれば,そのウソのヴェール(赤い腰巻き?)を完全に引き剥がされてしまい,その恥部を丸出しにしている。つぎの ③ は3年前の批判であるが,この指摘はよりまっとうなエネルギー「観」を提示して議論していた。

 
 原子力を推進したい経済産業省,必要性を訴えるも説得力を欠く」自然エネルギー財団』2018年3月23日https://www.renewable-ei.org/activities/column/20180323.html

 資源エネルギー庁が想定した国民からの質問のうち,とくに議論を呼ぶのは(3番目に挙げたこの)質問だろう。

 質問:『福島第1原発の事故処理や,「核のゴミ」の問題など,原発はコストがかさむと思います。本当に「安い」といえるのでしょうか』。

 回答:『すべてのコストを盛りこんで計算しても,なお安い原発』である。

 それは,従来から資源エネルギー庁が主張している原子力発電の優位性であった。2015年に実施した専門家によるコスト試算の結果を引用して,原子力発電は1kWh(キロワット時)あたり 10.1円以上で,石炭火力発電の 12.3円,太陽光発電の 24.2円と比較して安い,と断定している。

 現在では太陽光発電のコストが当時と比べて大幅に低下し,15円前後まで下がっているにもかかわらずだ〔既述に引用した説明によれば,2019年なると12.4円にまで下がっている〕。原子力については将来のコスト増加の可能性があるため,10.1円の後に「以上」を付けていることも見逃してはならない。

 補注)欧米や中国における太陽光のコスト低減傾向にはめざましい点がある。この事実は,前段ですでに触れていた。それこそ,年々にそのコスト削減が改善されており,その安価性は飛躍的に向上してきた。ところが日本はいまだに,そのずっと後方をよろよろと着いていくだけのミットモナイ姿になっている。

 しかも,原子力の発電コストは最新の状況を考えると,実態よりも低く出る条件で試算している。国内の原子力発電所の平均的な規模を大幅に上回る出力120万kW(キロワット)を前提に,設備利用率70%で40年間の運転を続けることを想定した(以下の図1参照)

 福島第1原子力発電所の事故以来,既設・新設を問わず安全性を重視して従来よりもきびしい条件で運転しなくてはならない。また,数多くの原子力発電所が40年間にわたって70%の設備利用率を維持できるかは大いに疑問である。

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 補注)原発コストの実勢をうかがうと,この図解の全体が徐々に大きく間延びしてきたかのようにして,原発のコストは,確実にじわじわと増大させつづけている。

原子力の発電コストは安全対策費が膨らみ,海外でもコストの大幅増加によって廃炉に至るケースや,建設中の発電所の計画遅延が続々と発生している。この点について資源エネルギー庁は記事のなかで,つぎのように反論する。

 『建設された実績があまり存在しない新型の原子炉であることや,長期間にわたって建設がされていない国で,ノウハウが失われていることなどが大きな要因で,これが日本にそのまま当てはまるものではありません』。

 東日本大震災の直後に発生した福島第1原子力発電所の事故によって,われわれがえた教訓はなにか。それは大規模な発電所が特定の地域に集中していると,災害時に大量の供給力が一気に失われて広範囲に停電を引き起こしてしまう危険性である。

 原子力発電所に限らず大規模・集中型の電力供給システムは災害に対して脆弱であり,自然エネルギーを中心とした小規模・分散型に転換していくことが電力の安定供給につながることを,あらためて認識すべきだ。

資源エネルギー庁は記事の最後に,原子力発電所を再稼働する理由を,つぎのように説明する。『命や暮らしを大切に思えばこそ,「安定的に」「安いコストで」「環境に負荷をかけず」「安全に」電力を供給するという,「3E+S」を追求することが重要になります』。

 補注)「3E+S」の「もとの英語」は,安定供給 Energy Security,経済効率性 Economic Efficiency,環境への適合 Environment,安全性 Safety  のこと。

 〔しかしながら〕欧米の先進国をみれば,この条件に合うのは原子力ではなく,自然エネルギーであることが分かる。

 補注)というか,原子力発電はこの「3E+S」という基本条件にとっては,一番危険性の高い,すなわち,反「3E+S」である。このような,いまどき分かりきった「真理」を認めたくない経済産業省・エネルギー資源庁の基本姿勢は,《悪魔の火》に炙られていても,快感をえているつもりでいられるのか。

 現有の原発施設は廃炉工程に入るまでと,実際にその廃炉工程に進む段階になっても,原子力工学の技術そのものを要求する。悪魔のような厄介ものである原発の後始末であっても,当然,その工学的な技術の対応をもってしなければ,適切に処理できない。

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