日本の天皇・天皇制のあり方,女性・女系天皇などの問題点を議論するために有識者会議に選ばれた学識経験者や俳優らが,はたしてまともに関連する討議ができるかと問えば力量不足

 天皇天皇制の専門研究者たちを中心に有識者会議の構成員を選ばないで,いかほど適切にかつ有効な議論が確保できるのか 大いに疑問あり,この会議に参与する人物たちの「有識者としての実像」を観察してみる


  要点・1 皇位継承を検討する会議の構成員に選ばれた有識者たちは,誰1人として天皇天皇制を専門とする識者にあらずという摩訶不思議

  要点・2 この会議体の人員構成を観るかぎり,天皇天皇制にかかわる基本的な課題を審議,吟味し,提言することは,どだい無理な仕事

 

 皇位継承,ようやく有識者会議 女性宮家女系天皇は / 男女同数起用 付帯決議から4年」朝日新聞』2021年3月17日朝刊

 この記事の見出し文句は「男女同数起用」という表現をもちだしていた。これには,男女雇用機会均等法という法律や男女共同参画社会という用語の含意が,多分に反映させているものと解釈できる。

 しかし,天皇天皇制のあり方に関する本格的な議論,いいかえれば,関連する学問・専門領域の思考回路をまともに備えている識者が中心になって討議されねばならない天皇問題が,今回,この記事に報道されていた有識者6名によって,それこそ必要かつ十分「以上に」「文句なしに推進できる」かといわれたら,これを肯んずることはできない。

 確かに,それなりに「ある種の〈有識者〉」だといえる人物たちが登場させられている。ところが,これら有識者全員をまとめて観察する段となるや,一定の重要な疑念が湧いてくる。要は,天皇天皇制問題に関して専門家である人物,すなわち,学術研究などとして,その領域を自身の専門領域とする人物が1人も入っていない。

 はっきりいって,異様な陣容にそろえたものだという印象を抱かざるをえない。いったいなぜ,このような人選になっていたのか? なによりもまず,その疑問を挙げておき,かつ論点にしておく必要もありそうである。ともかく,この記事をつぎに引用しておく。

 --政府は〔3月〕16日,安定的な皇位継承のあり方を議論する有識者会議を新たに設置し,来週に初会合を開くと発表した。政府に検討や報告を求めた国会の付帯決議に対応する措置。学識経験者や俳優ら6人を起用し,男女同数とした。

 補注)男女同数であるという強調じたいは理解できる。だが「ともかく,なんでもいいから,誰でもいいから〈男女を同数にした〉」という語感が強く感じられる。有識者といっても,天皇天皇制問題にくわしい者たち,つまり,その専門家を多数派にした組織でもってこの会議を構成するのが,常識的に考えても,もっとも自然な会議の組織化だったはずである。

 ところが,そのところのあたりに関する配慮は,なぜか(意図的に?)控えめにされたまま,なによりもさきに,構成する有識者を〈男女同数〉にした事実だけが強調されていた(というふうに聞こえる記事であった)。

 だが,今回,組織されたこの種の有識者会議は,天皇天皇制の問題領域に関して「専門知識をもたない有識者(?)」よりも,「その知見を確実・適格にもつ有識者(!)」が,少なくとも過半を占めたかたちで構成されるべき「当然の理由」がある。この基本的な要請は,常識次元における説明であるに過ぎない。

 そのところを当面は外しておき,ともかく〈男女同数〉という点を強調的にとなえ,今回のごときに有識者をそろえていた。しかし,「有識者であっても」「当該問題の専門家」であるべきだという「必要最低の前提条件」が,どこかへ置き去りにされている。そういうのがおおげさだとしたら,相当に軽んじられているといておく。

〔記事に戻る→〕 加藤勝信官房長官は同日の記者会見で「皇族数の減少への対応はさまざまな考え方がある」と強調。有識者会議について「皇室制度や歴史の専門家にヒアリングをおこいながら,予断をもつことなく議論をおこなっていただきたい」と語った。
 補注)この加藤勝信のいいぶんは,あいまいな表現であって,同時に完全に逆立ちしている。本来・本筋であれば,「皇室制度やこの歴史の専門家」がこの有識者会議の多数派を構成して当然であり,そこにさらに「そのほかの隣接領域や異分野で関連する専門家」にも意見を聞くという「方法」が,一番まっとうなこの種の会議を組織する場合の常道である。にもかかわらず加藤は,あえておこなっていたらしい「専門家軽視(無視?)の視点:意向」を,なんとも思っていないかのように発言していた。

 有識者会議のメンバーは,天皇退位のさいの有識者会議の経験者から40代の教授,財界人や俳優まで幅広く選んだ。政権幹部は「大事なのは平均的な国民の感覚だ」と指摘した。

 補注)この「大事なのは平均的な国民の感覚だ」というのは,ずいぶん奇妙な意見である。むしろ,単純かつ平明に考えてだが,「もっと大事なのは専門家の深い学識だ」といったら,なにかまずいか? この有識者会議は初めから「平均的な国民の感覚」を代表しうる会議体だとでも思っているのか?

 もしもそうだとしたところで,彼らが有識者として天皇問題に立ち向かい議論する人士たちとして,その品質基準を,誰がどのように保証できるというのか? そもそも,有識者たちを選んだ政府当局は「平均的な国民の感覚」をまともに捕捉しえていたのか?

 安倍晋三にしても菅 義偉にしてもふだんは,さんざんに国民たちの日常生活をないがしろにする為政しかしていない。それなのに,天皇天皇制の問題になるといきなり「大事なのは平均的な国民の感覚だ」とのたもうている。口先だけで調子いいことばかりいうのはたいがいにしてほしいと思うのは,本ブログ筆者1人だけではあるまい。

 そもそも,国民:大衆・庶民に対して自公民政権は,「対米従属国家体制」に置かれているこの日本という国の「情けない実情」(沖縄県横田基地などの現状をみよ!)をめぐって,安倍晋三みたく「戦後レジームからの脱却」といったまさに空想的な夢物語を語るのは,銭湯内での屁こきに等しい(自分の鼻先にだけならば,ちょっとのあいだだけ少しは臭うだけ)。

 敗戦直後から「在日米軍的な軍事レジームの堅い枠組」を継続させてきた「米日従属国家体制」は,現在まで日本の政治体制の骨格をなしている。日本国憲法のもとにあっても実質的に「戦前的な皇室像」をおおよそは継承できていた「象徴天皇制」は,そのあり方のなかから「女性・女系天皇」の発想を閉め出していた。

 日本国憲法が男女平等を謳っていることを否定する者はいない。ところが,いまの政権・政府の中枢部分にうごめく政治屋たちは,心底においては「男女平等」が本当に嫌いなのであり,また別姓も嫌う。それゆえ,天皇天皇制という問題の根柢に控えている「男系天皇」(明治憲法とは同格の位置づけであった「旧・皇室典範」に規定されているその天皇像)の封建主義思想から脱却しえていない観念形態は,いまだに彼らの精神構造内にかかえこまれている。

 民主主義の政治体制を徹底的に考えて論断してしまえば,天皇天皇制はそれに矛盾するほかない政治制度だから要らないという主張が,当然のように前面にせり出てくる。敗戦後は,そうした主張が自由に唱えられる時代になっていた。しかし,人びとの政治意識の改革・成長は一気に進むものではない。敗戦後76年目になる2021年になっても「天子様,万歳」の国であることを,無条件に好む老人政治屋たちがたくさん生存している。

 とはいっても,日本で女性が市民権・参政権を獲得できたのは,明治維新体制(1868年)が敗戦(1945年)によって崩壊させられたあとであった。旧日本帝国政府は女性たちにその権利を与えることをしなかった。敗戦前のそうした歴史:近代政治史は,明治維新という歴史の転換期に,古代史のなかから天皇天皇制を再生させたつもりの政治思想を昂揚させていた。

 要は,日本における「明治以降の天皇政治史」はどうみても,その『古さ』の根拠エビデンスを明証できていなかったにせよ,ともかく「いにしえ(古)の衣装」をまとわされて歩んできた。

 版籍奉還廃藩置県につづいて富国強兵だとか殖産興業だとかいった旗印をかかげて,近代化・産業化への道を歩まねばならなかった旧・日本帝国が,「天皇天皇制」を国家思想の須要な制実度に意義づけたうえで,「政治・経済」体制を構築させつつ前進してきたそのとどのつまりが,敗戦をもたらしたともいえる。

 ともかく,旧日帝は1945年8月(9月)に中国・アメリカなどを相手にした大戦争に敗北した。当時,大元帥であった天皇裕仁は,自身の延命を非常に気にしていた。民草がいなければ彼(自身)は存在しえない,庶民(臣民)あっての天子(玉としての自分)だというふうに,みずからの地位・立場を本気で心配していた。

 15年戦争(「満洲事変」から敗戦までの時期)において,自分の生命をうしなった帝国臣民は310万人だという。この数字には,植民地支配下になっていた「二等臣民たち」がその戦争において犠牲者になった統計は含まれていない。

 その人(天皇裕仁)が日本国憲法に大転換した「敗戦後の政治社会」を生きていくことになった。だから,その後における彼はしばらくのあいだ,戦後体制との妥協・調整を余儀なくされた「自分の立ち位置」を,仕方なしにでも納得し受容できるまでには,だいぶ時間がかかった。

 さて,天皇制が男系でなければ意味をなさないとか,女系天皇は絶対にいけないという議論は,古代史からの問題として解明されてきた天皇問題の基本的な概要や,その古代からつづく歴史の現実的な経過をろくにしらない無見識「ただの=無知」を意味する。

 そもそも「天皇は男でなければならず,女はいけない」といったたぐいの,「先進国における政治意識としては落ちこぼれ:落第」を意味するほかない「現在日本政治機構論」の主張は,古代史と現代史をいたずらにチャンポンにしたごとき知性の稚拙さを露呈させている。

 補注)最近作,工藤 隆『女系天皇天皇系譜の源流』朝日新聞出版,2021年1月を読めば分かることがある。「男系天皇でなければ日本の天皇ではない」という勝手な決めつけは,非科学的かつ反歴史的な見解であって,もとよりその根拠・理由のない思いこみであった。

〔記事に戻る→〕 国会は2017年,天皇退位の特例法を制定したさいの付帯決議で,「安定的な皇位継承を確保するための諸課題,女性宮家の創設等」を「法施行後速やかに」検討し,報告するよう政府に求めた。昨〔2020〕年11月の「立皇嗣の礼」で一連の代替わりの儀式が終わったことに伴い,政府は有識者会議を立ち上げた。

 補注)「女性宮家」の設置は「男系天皇」を継続させるための「皇室の足元:基盤を固める材料造り」を意味している。それは,女性天皇を予定する発想ではない。

 女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設のほか,母方にのみ天皇の血筋を引く女系天皇や,旧宮家からの養子の解禁などについて議論される見通し。専門家らの意見を集め,論点を整理するという。

 補注)この種の天皇問題に関係した話題となると,当該論点を議論する以前にまず,民主主義の国家体制として日本が「天皇天皇制」そのものをどのように受けとめ,考えなおすのかという問題意識が不可欠である。ところが,天皇天皇制の実在を当然の所与条件とみなすだけであり,その可否を根源から問う問題意識じたいが希薄である。

 敗戦後史において “反・天皇論の視座” を徹底させ議論してきた井上 清の立場・思想は,21世紀になった現在にあっても, “その賛否はさておき” よく咀嚼したうえで,再論すべき価値がある。もっとも,井上の天皇批判論がこのたびにおける有識者会議とどのように議論を交わせるかといったら,とてもではないが,無理が過ぎる期待にしかなりえない。

 政府内には年内をメドに議論をまとめるべきだとの声もあるが,加藤氏は「スケジュールありきではなく,落ち着いた議論をしっかりおこなっていただきたい」と述べるにとどめた。議論の進め方や会合の頻度,議事の記録・公表方法なども,これから有識者会議で協議する状態だという。宮内庁の幹部は「そう簡単に結論が出る問題ではない」と語った。

 有識者会議のメンバー ★

   大橋真由美 上智大学法学部教授

   清家 篤  前慶応義塾

   冨田哲郎  JR東日本会長

   中江有里  俳優・作家・歌手

   細谷雄一  慶応義塾大学法学部教授

   宮崎 緑  千葉商科大学教授

 

 この画像資料は,③ で引用する『日本経済新聞』からさきに借りた。

      f:id:socialsciencereview:20210323201531j:plain

 以上,『朝日新聞』の記事を紹介しながら,本ブログ筆者の寸評をいちいちウルサク挿入する記述になっていた。この記事を批判的な意識を添えて読んで感得できるのは,結局「時間だけはかけても,結論など出さなくともいい(のか?)……」といった雰囲気が,なんとはなしにでも伝導してくる点である。ゲスの勘ぐり的な感想でなければいいが,それでもなくとも,確実にダルさを感じさせる記事ではなかったか。

 

  皇位継承問題の有識者会議構成員たちの略歴などの紹介

 前段に有識者として氏名の出ていた6名について,ごく簡単に略歴的に紹介したい。さきに断わっておくが,学究の立場から天皇天皇制問題を主専攻とする者,あるいは今回のごとき特定の問題を学術研究の対象として本格的にとりあげている者は,1人もいない。

 以下の人物紹介に当たっては,それぞれの専門領域や職務の内容がすぐに分かる程度の説明しかしない。結局,天皇天皇制の問題を,研究者の立場や担当業務に本格的に関連づけられる立場をもって真正面から議論しうる人士は,1人もみあたらない。

 これでは,前段で加藤勝信が, 有識者会議の構成員は「皇室制度や歴史の専門家にヒアリングをおこいながら,予断をもつことなく議論をおこなっていただきたい」という作業手順からして,実際上,円滑に遂行できるか疑問が抱かれる。

 1) 大橋真由美(おおはし・まゆみ)は,1975年生まれ(2021年で46歳)。 1996年一橋大学卒,一橋大学大学院法学研究科博士課程,博士(法学,一橋大学),上智大学法学部教授(法科大学院兼担)。担当授業「環境法総論,行政救済」。

 

 2) 清家 篤(せいけ・あつし)は,1954年生まれ(66歳)。

 1978年慶應義塾大学経済学部経済学科卒,慶應義塾大学商学研究科博士課程,博士(商学),慶應義塾大学商学部教授。研究分野「労働経済学」。

 

 3)   冨田哲郎(とみた・てつろう)は,1951年生まれ(70歳)。

 東京大学法学部卒,日本国有鉄道入社,2012年社長,東日本旅客鉄道JR東日本)取締役会長。2018年日本経済団体連合会副会長。

 

 4) 中江有里なかえ・ゆり,本名は中江幸恵:なかえ・ゆきえ)は,1973年生まれ(48歳)。

 1994年東京都立新宿山吹高等学校卒,2013年法政大学通信教育部文学部日本文学科卒。日本の女優・脚本家・文筆家・歌手・コメンテーター・元アイドル。

 

 5) 細谷雄一(ほそや・ゆういち)は,1971年生まれ(50歳)。

 1994年立教大学法学部卒,慶應義塾大学大学院法学研究科在学中にイギリス・バーミンガム大学大学院留学,1996年同大国際関係学修士。帰国後,1997年慶大大学院法学研究科修士課程修了,博士課程,博士(法学),慶應義塾大学法学部教授。専門は国際政治史,イギリス外交史。

 

 6) 宮崎 緑(みやざき・みどり)は1958年生まれ(63歳)。

 1981年慶應義塾大学法学部政治学科卒,大学院法学研究科修了(法学修士)。ジャーナリスト・国際政治学者・国際政策学者,千葉商科大学国際教養学部教授,同学部長。東京都教育委員,国家公安委員会委員。

 

 

 皇位継承 ようやく議論 有識者会議,来週にも初会合 衆院選後に方向性」日本経済新聞』2021年3月17日朝刊4面

 この記事は ① に引照した『朝日新聞』の記事と同一の内容を取材した報道であるが,こちら『日本経済新聞』の記事は字数をだいぶ多めに充てていた。

 --政府は〔3月〕16日,安定的な皇位継承策を話し合うための有識者会議を新たに設けると発表した。来週にも初会合を開く。継承問題を速やかに検討するよう付帯決議で求めた皇室典範特例法の施行から2年近くたち,ようやく議論に着手する。

 皇位継承権の範囲や皇族の対象の変更などが論点となる。今〔2021〕年は秋までに衆院解散・総選挙があるため,一定の方向性をまとめるのは衆院選後になるとみられる。

 加藤勝信官房長官は16日の記者会見で「安定的な皇位継承の維持は極めて重要な問題だ」と述べた。有識者会議で「さまざまな専門的知見をもつ人の意見を踏まえて議論し,整理する」と説明した。

 会議は男女3人ずつからなる。このうち日本私立学校振興・共済事業団清家篤理事長と宮崎 緑・千葉商科大教授の2人は,天皇だったいまの上皇さまの退位をめぐる2016~17年の有識者会議のメンバーだった。

 補注)この2人が有識者として入っていれば,より意義のある会議の進展や成果が期待できそうだといいたい紙面である。だが,天皇天皇制の研究に現に盛んに従事している,あるいは長年蓄積してきたごとき専門家が,いいかえれば,この問題を十分に適格にあつかいうる学究がほかにいくらでもいる〈学界の実情〉をしっている者にとっては,なぜ,このような人選をもって会議の構成を決めたのか不可解に感じる。

〔記事に戻る→〕 有識者らが示すことになる方向性が国民に幅広く受け入れられるようメンバー構成も工夫したとみられる。

 補注)前段でも関説したが,「国民に幅広く受け入れられる」という狙いはどういう意味あいがある,と解釈すればよいのか?

 2012年12月の時点に発足してから足かけ10年近くにもなる自公民政権は,これまで国民たちをとことん愚弄する内政を執りおこなうばかりであって,われわれ側の生活や権利などこれを徹底して軽視(蔑視?)するだけの為政をつづけてきた。

 それでいて,この「国民に幅広く受け入れられる」と強調されても,まだピンとこない。天皇天皇制の問題にかぎっては,国民たちが受容してくれそうな「適当な材料」が用意できる,とでもいうのか?

 行政法が専門の大橋真由美・上智大教授と,国際政治に詳しい細谷雄一慶大教授はいずれも40代の学者だ。経済界からは経団連副会長でもある冨田哲郎JR東日本会長を起用し,女優で作家の中江有里氏も選んだ。皇室制度や日本史の専門家から意見を聞きながら安定継承のあり方を探る。加藤氏は「色々な意見をうかがいながら予断をもつことなく議論してほしい」と語った。

 補注)ここに基本的な疑念が頭をもたげる。ならば(そういう有識者会議を構成したのだというのであれば),初めから「皇室制度や日本史の専門家」の5~6名はくわえて(これで人数が増えてしまい多くなるというならば,現在の会議員数の6名は半減すればよい),当初から本格的な議論を展開しつつ取り組むべきである。

 それでこそまた,「国民に幅広く受け入れられる」ところの意見が案出できるのではないか? 問題は民主主義国家体制下での天皇問題である。国民たちの関連する意識のあり方そのものについて,初めから特定の方向に誘導するような意図は,ひとかけらであっても介在してはいけない。

 もっとも,そこまで議論するつもりはなく,ともかく所与の課題に適当に答えておけばよいという程度(「お茶を濁す」程度の有識者会議運営でよろしいという意味)ならば,以上のようにウルサく発言して,追加の要求を示しておく必要はない。

〔記事に戻る→〕 皇位の安定継承をめぐっては,2017年6月に成立した皇室典範特例法が付帯決議で「安定的な皇位継承を確保するための諸課題,女性宮家の創設等」を重要な課題と位置づけた。法施行後,速やかに検討して結果を国会に報告するよう明記した。

 2019年4月の特例法の施行後,政府は非公式に有識者へのヒアリングを重ねてきたものの,本格的な協議はしていない。天皇陛下の即位に伴う一連の儀式を優先してきたためだ。

 代替わり行事は,秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)になられたと示す,昨〔2020〕年11月の「立皇嗣の礼」で区切りがついた。新型コロナウイルスの感染者数が緊急事態宣言の再発令などに伴って落ち着いてきたことも,有識者会議を立ち上げる雰囲気につながった。

 補注)このコロナ禍対応のための緊急事態宣言に関する「ここの理解」は,甘めの解釈になっている。政府は昨年当初から,新型コロナウイルス感染症問題に対する医療体制としては,極端にデタラメな指導しかしてこなかった。

 厚生労働省の存在意義がみえない対応に終始しているのは,現在においても同じである。なんといっても,コロナ禍対策よりも東京オリンピックの開催にこだわってきた政府の基本姿勢では,もしかすると来月の4月以降,コロナ禍がぶり返す危険性すら抱かせる。

 皇族数の減少に対応し,父方に天皇の血を引く男系男子による継承を保つかどうかが主な論点になる。今の皇位継承者は

   (1)  秋篠宮

   (2)  秋篠宮家の長男・悠仁

   (3)  上皇さまの弟の常陸宮

の3人に限られる。

 中長期的に若い男性皇族がいなくなる恐れがあるため,天皇制を続けるには女性天皇女系天皇を認めた方がよいとの意見もある。他方,自民党内には男系の伝統を守るべきだとの立場から,父方に天皇の血を引かない女系天皇に否定的な声が多い。

 有識者会議では女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設や,戦後に廃止された旧宮家皇籍復帰についても議題になるとみられる。皇族数が減っていけばそれぞれの皇族の公務負担も重くなる。それを軽くするため,女性皇族が結婚した後も公務を続けられる制度なども話題にあがる可能性はある。

 皇室制度をめぐる議論は国論を二分しかねない。自民党内の意見集約も難航が予想される。今年秋までにある衆院選で争点になるのは避けたいと考える与党議員は多い。

 加藤氏は「有識者会議はスケジュールありきではなく,落ち着いた議論をしっかり行ってほしい」と話す。政府高官は「議論を始めるだけなら選挙で争点になることはない。結論を出す時期と選挙の時期がかぶるのはよくない」と指摘する。(引用終わり)

 要は,今回における「安定的な皇位継承のあり方を議論する有識者会議」の新たな設置は,旧・皇室典範の流れに乗った議論を期待するものであって,日本国憲法下の問題だとはいっても,けっして「日本の民主主義のあり方」の問題には近づかない,それも「意識的には配慮をしないような,それでいて意図的な配慮」がうかがえる。

 「皇室制度をめぐる議論は国論を二分しかねない」という理解が興味深い。天皇が日本というこの国と民の統合的な象徴であることが,その天皇問題に関する国民側における政治的な議論に「二分」をもちこみかねないという指摘は,天皇が主人(主権財君)であるのか,それとも国民が主権者(主権在民)であるのかというもっとも初歩的な憲法に関する認識を,いまさらのようにあらためて提起する始末にあいなっている。

 天皇天皇制の問題を学術的に本格的に研究する識者が,有識者会議の構成員に入れさせないという組織編成のあり方は,天皇問題そのものを考えるさいして「隔靴掻痒」どころか,あえて見当違いの方向をとらせかねない。この有識者会議に女性宮家女系天皇に関連する議論をさせたところで,それほ実りある提案は期待できない。

 

  2021年3月24日の新聞報道から若干の論点抽出

 本日は2021年3月24日,筆者の購読する2紙,『朝日新聞』と『日本経済新聞』の朝刊ともに,以上に論じてきた話題につづけて,関連する報道をしていた。ここでは日経の記事を引用して,若干の議論をおこなってみたい。例の頑迷固陋・明治化石的な極右反動の憲法学者が登場している。これが,みもの(聞きどころ)のひとつである。

  皇位安定継承へ変化必要  有識者会議が初会合  専門家に聞く ◆

 女性・女系天皇の是非や女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設など,安定的な皇位継承策を話し合う有識者会議で想定される論点を専門家に聞いた。

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 1)  男系維持,旧宮家皇籍

 百地 章国士舘大特任教授  126代にわたり一系の男系で継承されてきた皇室や王朝は世界でも例がない。長い歴史の大切さを次世代に伝えていかねばならない。

 補注)初めからこのように非常識な暴論,でっち上げられた偽説のたぐいがぶちまけられている。「126代にわたり一系の男系で継承されてきた皇室や王朝は世界でも例がない」という点に対しては,遠慮なく存分にいわせてもらうとするが,「冗談は夢のなかでだけいっていたらいい」と批難されて当然。そもそも,神武天皇という初代は〈架空の天皇〉である。賢い中学生であれば周知の事実。

 まさか百地 章は,欠史8代(あるいは欠史10代でもいいが)をしらないわけではあるまい。もちろん,この欠史の介在を認めたくない “想像力豊かな” 日本古代史研究者もいないのではない。だが,神武天皇からして架空の天皇の1人である「歴史の事実(?)」などそっちのけにして,日本の古代からの「長い歴史の大切さ」を強説するのが,百地であった。

 歴史は事実史のことではなかったのか? いくらなんでも大昔の古代史だからといっても,虚説史を学究が語ってはまずい,いけない。神話の話題を憲法にかかわる論題といっしょくたにしてはいけない。こうなると百地 章は,有識者というよりは学識者としての専門知識そのものが問われている。

 百地 章自身の皇室問題に関した「憲法学者としての見地」は,以上のような批判などものともせず,また別様に真剣に,神話的にであっても堅持されていると拝察する。その見地はすでに,《日本天皇教の境地》に解脱しきった精神状態を教示している。今回の有識者会議に百地がくわわったりしていたら,大混乱必至……。

〔記事に戻る→〕 憲法2条に定める「世襲」は男系重視を意味するのが政府の公式見解だ。皇室典範1条も皇位継承について「男系の男子」と明記する。

 補注)この「世襲」の観点,天皇の地位に就く者は「男系の男子」でなければダメだという決まりは,あくまで明治謹製であった。それゆえ,男系天皇に囚われる発想じたいが,政治思想としてもともと,「日本の歴史」を通観して理解・把握・提示されたものではない。要は極端に偏った考え方である。

 政府の有識者会議は例外なく男系が続いてきた原理原則を前提に話し合う必要がある。「男系か女系か」「女性天皇の是非」といった二者択一の議論をすべきでない。

 天皇だったいまの上皇さまの退位を実現する皇室典範特例法の付帯決議は,

   (1)  安定的な皇位継承を確保するための諸課題
   (2)  女性宮家の創設等

の検討を求めた。

 まずは順番どおりに安定的な継承策から考えるのが望ましい。旧皇族の男系男子の皇族身分の取得,養子制度の導入を検討すべきだ。かつて直系の継承がむずかしくなったとき,傍系の宮家が継いで危機を乗り越えた。

 戦後に皇籍を離れた旧宮家の若い方が皇族になれば,傍系からの継承も可能になる。そうすれば男系男子を維持でき,女性宮家の議論は要らなくなる。

 補注)あえて断わっておくが,この提言はあくまで百地 章のものである。

 2)  女性・女系天皇選択肢

 白河桃子・相模女子大大学院特任教授  女性の社会進出がますます進む現代で,男性しか天皇を継承できないというのは一般の国民にとって理解しにくいのではないか。女性の天皇をかたくなに拒むのは不自然に映る。

 補注)この指摘はまさに,百地 章を赤面させてやまない材料をもちだしている。この百地のごとき極右反動の憲法学者が抱く「非歴史的な天皇観」は,極端に反動的であるという意味あいを,反科学的に発揮させてきた。だが,それでも男系天皇固執する「明治謹製的な百地の頭脳内構造」は,未来永劫にかわりえないらしい。ある意味,不幸。

 推古天皇のように,女性の天皇はこれまでもいた。女性天皇や,母方が天皇の血を引く「女系天皇」への抵抗感は必らずしも強くないように感じる。

 現代社会で結婚や出産を強制することはできない。皇室を存続させるには男系男子の継承を前提とする現制度のままだときびしいのではないか。女性天皇女系天皇も選択肢の一つにせざるをえないだろう。

 補注)ところで,コロナ禍のせいで2020年は婚姻数まで急激に低下傾向を記録している。たとえば新生児の出生数は,2021年にかけてさらに減少していく要因の登場を覚悟せざるをえない。百地 章流の天皇制度観では,この種の人口問題が深刻になっている日本社会の現実など,どうでもいいことがらなのかもしれない。

【参考記事】

 皇族数の減少を踏まえると議論は避けて通れない。いまは少人数の皇族に公務の負担が集中し,大変な重圧を負われている。早急に軽くすべきだ。そのためには「女性宮家」創設の可能性も探るべきだろう。

 補注)ここでいわれている「皇族の公務」とはなにか? 既定の事実であるがごときに主張がなされているが,疑問だらけである。その公務というものを合理化したり削減したりする余地はないのか? だいたいにおいて,いままで増やすことはあっても減らそうとはしていなかったのではないか?

 女性宮家でなくても,結婚後も公務を続けられる制度があれば皇室の負担軽減につながる。女性天皇女系天皇を認めるには国民的な議論が必要になる。皇室の負担軽減策の議論を先行させるのも一案ではないか。

 補注)既述の論点であったが,ここでもいわれている「国民的な議論」の「必要」といわれたものは,そのもとからあらためて考えるとしたら,いったいどのような方途として期待されればいいのか。本ブログ筆者はまだ適当な解説に出会えていない。あいまいな意味を有するのが,この種の「国民がどう思うか……」というたぐいの論調であった。要警戒の議論。

 3)  欧州は長子が主流に

 君塚直隆・関東学院大教授  諸外国の王室と比べると,男系男子による皇位継承を続ける日本は少数派だ。欧州を中心に,男女に関係なく長子が継承順位1位となる方式が主流になりつつある。

 国王が男子だけだったスウェーデンは1979年に切り替えた。当時,国王の男子は1人しかなく,王朝の存続と男女平等の観点から決めた。オランダやノルウェーも同様の制度を取り入れた。

 欧州で女性が王位に就くことに否定的な声はほとんど聞こえない。英国のエリザベス女王は70年近く在位し,国民からの信頼は厚い。英王室が積極的に広報し,国民との距離が近いのも一因だ。

 その点,日本は皇室の現状についての発信が弱い。皇族数が減り,皇位継承者が3人しかいないとどれだけの国民がしっているだろうか。宮内庁はもっと皇室と国民を近づける努力をすべきだ。

 スウェーデンやベルギー,オランダ,スペインは女性が王位継承順の1位にあり,将来的に女王がさらに増えそうだ。

 日本の皇室も男系男子にこだわりつづけず,女性天皇女系天皇にも道を開くべきではないか。時代に合わせた見直しが必要だ。(引用終わり)

 最後に一言。「時代に合わせた見直し」とは,より具体的により厳密に説明できないか? 専門家の意見としてその一端でもいいから,この記事のなかで提示してほしかった。

 明治の時代にあらためてその大部分が新しく創られたのが「天皇天皇制の問題一式」であったとなれば,21世紀の現段階においても「皇室のあり方」を大々的に変革して,なにも悪いことはない。ただしそのさい,民主政という土俵から逃げた議論にしてはいけない。

 21世紀のいまごろ,天皇天皇制の将来に対して,そのなにをどのように修正・改造していけばいいのか,真っ向からする議論を聞かない。「菊のタブー」が絶対にないとはいいきれない事実が,日本政治社会の最大の弱みであった。

 いずれにせよ「1946年11月3日に公布され,1947年5月3日に施行された」日本国憲法「冒頭部分」,つまり第1条から第8条までに規定されているのが「天皇天皇制」であった。

 敗戦後における日本は一気に民主主義国家体制に移ったはずであった。しかしいまでもなお,その天皇条項にまつわっては各種の問題が残されたままである。その実態については明々白々に属する事情が多くあったとはいえ,それでも正面だった議論がなされてきたとはいいにくい。

【参考資料】

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