五輪招致に浮かれるニッポン,フクシマを切り捨てる国の本性と実態,そのさもしさやいけ図々しさばかりがめだつこの国の哀れと非情さ

             (2013年9月9日,更新 2021年3月30日)

 聖火リレーコンボイの本末転倒,「馬の前に馬車をつけて」なんの聖火リレーか? コロナ禍の最中に「商業主義のための聖火リレー」を誘導する「ガサツな営利企業のオリンピック悪用の非理」

 コロナ禍(新型コロナウイルス感染拡大)が日本では第4波となって襲来しそうな情勢になっているのに,「聖火リレーどんちゃん騒ぎ」をするだけの企業宣伝用コンボイを日本全国に走らせる愚行

 現在(2021年3月)でも,“The crippled Fukushima nuclear plant was under control in the final presentation by the Tokyo bid for the 2020 Olympic Games” などとは,けっしていえない「東電福島原発事故現場」が存在しつづけている

 にもかかわらず,聖火リレーを3月25日から発走させて,おおはしゃぎしている最中であるJOC五輪組織委員会は,現状のごとき日本の窮状のなかでは,まさしく「狂気である」という「自己認識を欠いた特定集団」だと批判されていい,この事実を「彼ら・彼女ら」はまったく理解できない(しようともしていない)ところは,悲喜劇の同時公演を意味する

 

  要点・1 コロナ禍の最中にオリンピックを開催しようとする「愚中の愚」

  要点・2  聖火リレーは「馬の前に馬車をつける」企業宣伝隊に営利主義的に悪用されている

  要点・3 オリンピック招致でこの国は良くなるのか?

 

【参考記事】

 

  この元記事は,つぎのものだが,有料記事で最初部分しかのぞけない。全文は前掲で読める。

 【東京五輪】欺瞞の聖火リレー 菅首相よ,今五輪をやめれば“英雄”だぞ|日刊ゲンダイDIGITAL 

 

 本日〔2013年9月9日〕の朝まで,東京への招致が決まった「2020年オリンピック」に関する報道をちらほら観ていたが,最後の段階において日本の代表者たちが意見表明(プレゼンテーション)する場面で,安倍晋三首相が,上記「nuclear plant was under control ・・・」のように,「正々堂々と事実・現状に反した,それも限りなくウソに近い意見」を吐く場面を観て,失望した。

 こういっていた。『事故を起こした福島の核施設は『〈管理されている状態〉:under control 』にあるといった。だが,これはウソであると断定されていい発言である。

 その “under control” とは,辞書を引いてその意味を聞くと「正しく制御・管理」されている,という謂いである。これを聞いて,毎日われわれがニュースでしりえている福島原発事故現場の現実は,はたしてそのように表現するふさわしい状態にあったのかと問えば,まったくその逆さまであったと断言できる。

 補注)本日は2021年3月30日であるが,コロナ禍は世界(特定の各国では)ではまだまだ蔓延中であり,終息するみこみがいつごろになるのか,いまの時点では見当がつかないでいる。東電福島第1原発事故の後始末も以前膠着状態のままであり,廃炉工程にまで進めそうな段階にあるとは,ともてではないがいえない。

 本日,『朝日新聞2021年3月30日朝刊は,1面に冒頭記事としてつぎのように報じていた。以前出されていた緊急事態宣言は3月21日に解除されていたが,その理由がなんであったかは,医科学的に明確に説明されていなかった。

 f:id:socialsciencereview:20210330091920p:plain

 なかんずく,1年遅れになっている「2020東京オリンピックの開催」の「聖火リレー」が3月25日に開始予定になっていたゆえ,これに間に合わせるために緊急事態宣言を解除したとか思えず,おおよそコロナ禍対策としてには無為・無策でありつづけてきた菅 義偉(と安倍晋三の)自民党政権の正統的な基本姿勢を,あらためて暴露させる経緯になっていた。

 『朝日新聞』本日の社説は,「国の観光支援  感染防止妨げぬ制度に」などと,生ぬるいというかただに生半可な論説を掲示していた。この社説はつぎのように,へっぴり腰で説いている。

 つまり,「政府は早ければ6月に,全国を対象にした観光支援策「Go To トラベル」の再開をめざしている。今回の支援策はそれまでのつなぎとの位置づけの,いわば『「地域版 Go To』といえるものである」。

 

 けれども「これまで,新型コロナウイルスの感染が収束するまでは,通常の不況対策のような需要喚起策はとらないよう政府に求めてきた」。「ただし,感染が抑制できている地域内に限って需要を促すことは,選択肢の一つではあろう。いまも独自の支援策を実施している県が少なくない」と。

 『日本経済新聞』朝刊が毎日まとめて掲載している,日本全国都道府県において発生した「新型コロナウイルス感染者数」は,昨日(3月29日)に関して,その統計をつぎのように公表していたが,いまの段階においてはこのように全国的に感染者が増加( 的に展開)中である。

 f:id:socialsciencereview:20210330092143j:plain

 関連しては「島根県知事〔が〕『4月半ばまでに判断』 聖火リレー実施可否」nikkei.com 2021年3月10日 19:20 と判断するといっていた。同県知事の丸山達也は,聖火リレーが「コロナ禍に対してきわめて無責任に実施される予定」を,真っ向から批判していた。島根県は人口が少ない地方の1県(69万人)註記)であるためか,いままでもこのようにコロナ禍の被害が少ない地域であった。

 註記)島根県のこの人口69万人を東京都各区の人口とくらべてみる。練馬区人口が一番多く72万人,ついで江戸川区68万人,足立区67万人。なお,東京都23区の総人口は927万人。

 『朝日新聞』朝刊に戻る。社会面に「聖火リレー,『密』難題 著名人に人だかり 栃木で発生」との見出しのついた記事も出ている。聖火リレーはまさかコロナ禍「着火・リレー」ではあるまいや,といいたくなる。

 JOC(日本オリンピック員会)の五輪組織委員会は,すでに開始した聖火リレーについて「道路の狭い地域においては2階が観ることはするな」などと,トンデモナイ,身勝手な統制をかけているらしいが,大名行列天皇の巡幸ではあるまいし,なにをかいわんやの傲慢きわまりない統制をかけている。

 つぎの画像は,平成天皇が皇太子時代に正田美智子との結婚式を挙げたあとに執りおこなったパレードに関する1葉である。2階部分にも鈴なりになった国民たちが,この馬車行列を見物した。

 f:id:socialsciencereview:20210330093254p:plain

 また,その「聖火リレーどんちゃん騒ぎ:コンボイ行列」の動画を撮ったものは,ユーチューブに上げて流すことは許さない,もしそれを上げて公開している場合,3日を制限にして削除せよと指示を出している。

 これも,IOC(国際オリンピック委員会)はいったい何様のつもりで〈著作権〉関係(?)の統制をかけているつもりかしらぬが,いい加減にしろといいたくなる傲慢・僭越な態度を,このIOCは示している。

 もっとも,この指示に対しては「それならば,その動画は「3日ごとに削除⇒再度(なんどでも)上げつづけ,みんなに閲覧してもらえばいい」などといったふうな,面白おかしく混ぜっ返した意見がすでに提示されている。

 ここまでの記述が2021年3月30日の今日に書いた段落であるが,本日は昨日〔3月29日〕の記述を受けてさらに議論していく。つぎの ② の以下は,いまから8年と半年も前に書いていた文章であるが,いまにあってもまだ通用する議論をしていた。

 

  深刻かつ重大な原発事故を起こした国が「フクシマの復興」をかかげて「2020東京オリンピックの開催」をめざした,そもそものボタンのかけ違い

 前段で断わったように,ここでの話題は,2013年9月時点に戻ってする。

 --オリンピック招致を決定するIOC〔国際オリンピック委員会〕側も「阿吽の呼吸」なのか,東京から250㎞離れている福島の原発事故現場の問題は,ともかく切り離して招致を東京に決めたと思われる。

 だが,福島県民とくに浜通り地区のなかでは,原発事故のために生活を破壊された住民が多くいる。要は,世界を挙げてのスポーツ競技お祭り大会の場所を決める程度の問題で,フクシマに囚われることはないのだ,といった決定のしかたになっていた。

 東電福島第1原発の4基の原子炉は,「3・11」の大地震・大津波によって破壊された状態をいまだに修復できないままであり,いったいいつになったら解決のメドがつくのかさえ不明である。皮肉っぽくいえば,これが “under control” といえるかもしれないが,しかし,このようなふうに表現を使っていたら,まともな大学の入試には合格できない程度の英語理解である。

 補注)あらためて指摘するまでもないが,このように8年半前に書かれていた東電福島第1原発事故の「現況」は,その後も技術本質的にはなにも変化がないまま,今日まで来ている。破壊された原子炉(圧力容器⇒格納容器⇒建屋の全体)からは,いったいいつになったらデブリ(溶融した核燃料などの塊)を本格的取り出すことができる状態になるのか,その後始末に関する日程計画は全然見通しがつけられないでいる。

 より正確に表現することにし,あえて別様にその意味を受けとってみよう。“under control” とは,control の under にある〔control 状態まで到達していない〕という意味でもあり,けっして,under のもとに control がある〔← control できている〕という意味ではない。under という語にはいろいろ語彙があるゆえ,いかようにでも解釈はできる。しかし,福島原発事故現場に関する解釈は,その現実に即してなされるべきものである。

 とくに,4号機に保存〔放置?〕されていた使用済み核燃料については,こう説明されている。「東京電力は2013年5月29日,福島第1原発4号機の使用済み核燃料プールから燃料をとり出すために建設している原子炉建屋カバーの鉄骨を組み上げたと発表した。6月には燃料を引き上げるクレーンの設置工事を始め,予定どおり〔2013年〕11月から燃料取り出しを始める方針」である。

 註記)この段落のみ,http://www.47news.jp/CN/201305/CN2013052901001971.html

 補注)現在(2021年3月段階),東京電力ホールディングスのホームページは,この4号機についてこう説明している。

 福島第1原子力発電所4号機は,事故当時,水素爆発は起きたものの,定期検査中であったためすべての燃料が使用済燃料プールに保管され,大きな損傷を被ることなく保管されていました。 この使用済燃料プールから燃料棒を取り出し,共用プールへ移送する作業を2013年11月18日より開始しておりましたが,2014年12月22日,すべての移送作業を完了しました。

 註記)「4号機燃料取り出し作業」『TEPCO』更新日:2014年12月22日,https://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/removal4/index-j.html

 補注)東電福島第1原発について,すでに利用してきた画像資料であるが,この写真を参照しておく。下方が南方向,上方が北方向の位置関係にあり,原発は手前から4号機⇒1号機と並んでいる。3号機は原子炉じたいが核爆発事故によって破壊されていたという指摘もある。ともかく一番ひどく破壊されている点は,一目瞭然である。

 

f:id:socialsciencereview:20201227133431j:plain

 

      f:id:socialsciencereview:20210315064226j:plain

       補注)この写真では左側が北方向,右側が南方向。

 
 識者の意見を聞く。2013年9月7日に元外交官の天木直人は,こう指摘している。これは,東京へのオリンピック招致が決定する直前の記述である。本ブログ筆者なりに要約しながら引用する。

 --日本の将来に大きな影響を与える五輪となる。しかし,その結果,日本はさらなる分裂が進む。東京五輪が決まれば安倍政権は勢いづき強権的になり,それへの反発が強まる。五輪開催決定がどっちにころんでも,それを日本の再出発につなげなければならない。

 成熟した日本経済が,1964年当時のように東京五輪をきっかけに高度成長に走り出すなどということはありえないが,さまざまな経済効果が生まれると期待される。だが,安倍首相の抱える課題はあまりにも大きく五輪招致の成功だけで政権が安定することはありえない。

 補注)この「五輪効果」そのものについてはもともと疑問があった。コロナ禍が襲来してきた時点で,その効果は期待薄どころか「逆効果」になるほかなくなっていた。

 とりわけ,原発事故収束のために克服する問題はあまりにも大きく,五輪招致に成功したところで,原発推進とはならない。福島事故の現実がそれを許さない。放射能汚染の危険性がそれを許さない。それどころか,五輪招致に成功したからこそ,安倍政権はいままで以上に原発事故処理をすすめなくてはならなくなる。

 私が安倍首相であれば東京五輪の敗北によって脱原発宣言をする。福島原発事故の収束を最優先し,福島原発事故を克服することによって,その他の山積する重要課題についても全力投入できるようにすると宣言する。そうすれば多くの国民は拍手喝采するだろう。安倍政権は安定し,その勢いでその他の政策についてもどんどんと国民の望む政策をおこなえばいいのだ。

 もし,安倍首相が東京五輪の敗北にもかかわらず,開きなおっていままでのような強硬政策を続けるようであれば,自民党の良識政治家たちは,その時こそ,安倍・菅政権を引きずり下さなくてはいけない。それができないようでは自民党もまた野党と同様に未来がなくなる。まさか自民党はそこまで愚かではないだろう。そう自民党を褒め殺したい。

 補注)いまから8年半前にこう指摘されていた。けれども,現時点においては「国民の望む政策」の大多数が「原発反対」であり,また「五輪開催不可」でもある意向にまったく応える気がないのが,自民党政権である。

 菅 義偉は傲慢きわまりなく,こういいはっていた。自分たちは国民・有権者から過半数の支持をえている政党として執権しているのだから,なにをしようと自由だと,そのように好き勝手にデタラメ発言をしていた。

 その要領=考え方にしたがっていうとしたら,「五輪は開催しない」「原発を廃絶する」というのが,現在における国民側の大多数の意見であり,菅はこれにしたがう国家運営の立場を採らねばならない。

天木直人の記事に戻る→〕 これを要するに,東京五輪の結果は勝っても負けても,安倍首相や自民党の出方しだいで日本にとってよい結果に終らせることができるのだ。あるいは,安倍首相が反省してその政策を軌道修正し,あるいは安倍首相にそれができなければ自民党の手によって安倍政権を代えて国民のための政策を優先する責任政権を作る。

 東京五輪は勝っても負けても日本にとって良かったことにつなげなければならない。そして,それができるかどうかは安倍首相の政治的決断と自民党の自浄力にかかっているのである。メディアも国民もそれを安倍自民党政権に求めていかなくてはならない・・・。

 註記)http://www.amakiblog.com/archives/2013/09/07/#002697

 補注)天木直人が当時,「2020東京オリンピックの開催」に関してであったが,批判もしながらこのように期待してみた〈正の効果〉は,いまとなってみれば,コロナ禍のために全面的についえた。その間,安倍晋三から菅 義偉に首相が替わっていたが,自民党政権のやってきたことといったら,自国破壊につながっていく為政にしかなっていなかった。

 1964年の東京オリンピックのとき,これに関していえば韓国の1988年のオリンピックもそうであったことであるが,中進国(発展途上国)がいよいよ先進国の仲間入りを,経済発展を同時的に実現させる目標とあいまって,この五輪大会を活用する方向で達成する一助として開催してきた。

 しかし,今回の東京オリンピックはすでに成熟(爛熟,未熟?〔というよりは腐敗・頽廃)した日本国の首都トーキョーで,再び開催されるオリンピックであるからには,つまり「単なる世界スポーツ大会」(国際大運動会)で終わらせたくないのであれば,フクシマの原発汚染問題に対して,あたかも「臭いものに」フタをするための道具として,2020東京オリンピックを利用することは絶対に止めるべきである。

 今回〔2013年9月〕,アルゼンチン・ブエノスアイレスのIOCでの五輪招致委員会に参加した,日本の委員・選手・タレント・皇族たちは,フクシマの問題をどのように真正面から受けとめているのか,いまだに不詳の状態である。

 だが,前段において天木直人が指摘したごとき諸問題について,彼らがどのような態度を示し,具体的に表明していくのか,けっして無視されていい論点ではなかった。もっとも,彼らの存在じたいが,なにかを発言しつつ行動するとも思えない。それゆえ,その種の期待はいっさいしないほうがいいというほかなかった。

 補注)最後の段落で断わってみたこうした留意点は,2021年2月に発信された森 喜朗前会長による「病膏肓」的な「女性差別」発言によって,はしなくもその一端が露呈していた。

 

  ビデオニュース・ドットコムhttp://www.videonews.com/ )は,インターネット版のミニ放送局であるが,体制派マスコミ(別称マスゴミ)とは違った角度から,日本社会の各種問題をとりあげている。最近放送中の題名を,最新のものから,いくつか順に紹介しておきたい。タイトルと冒頭の解説部分だけで,その中身はほぼ察知できると思う。

 a) 第647回「マル激トーク・オン・ディマンド」(2013年09月07日,現在放送中,PART1:69分,PART2:52分) 『東電に任せてる場合ですか』,ゲスト:田中三彦氏(元国会事故調委員・科学ジャーナリスト)。

 --今日のテーマは福島第1原発の汚染水問題と第4号機問題,そして日本のみならず地球全体の未来に大きな影響を及ぼしかねないその2つの問題を,これだけ失態が続く東京電力に,このまま委ねていて本当にいいのだろうかを考えたい。

 b) 「プレスクラブ」(2013年09月03日,無料放送中) 『東電社長らを公害処罰法違反疑いで告発-福島原発告訴団記者会見-』 東京電力福島第1原発の汚染水問題で,東京電力とその幹部を公害犯罪処罰法違反容疑で福島県警に告発した福島原発告訴団が9月3日,東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見をおこなった。

 c) 「プレスクラブ」(2013年09月02日, 無料放送中) 『基準値以下の汚染水は海洋投棄もやむを得ず-田中俊一原子力規制委員会委員長 外国特派員協会講演-』。--原子力規制委員会の田中俊一委員長は9月2日,外国特派員協会で講演し,東京電力福島第1原子力発電所敷地内に保管されている高濃度の汚染水について,基準値以下の汚染水は海に流すことも検討しなければならないと語った。

 d) 第640回「マル激トーク・オン・ディマンド」(2013年07月20日) 『なぜ原発が選挙の争点にならないのか』 ゲスト:武田 徹氏(ジャーナリスト)。なお,以下は〈解説の内容から抜粋〉。

 これまで国策として推進してきた原発をゼロにするためには,それに依存する地元経済の問題や,代替エネルギー源をどうするのか,再生可能エネルギーへの移行期間に電気代の高騰をいかにして防ぐか,国際協調や対米関係など,多くの解決しなければならない難問が横たわっている。

 そうした問題への解決策をなにひとつ提示せずに,単に脱原発を叫んでいるだけでは,原発ゼロなどとうてい実現できないばかりか,下手をすると原発推進に手を貸すことにさえなりかねない。

 原発が選挙の争点にならない最大の理由は,原発の賛成,反対で議論が止まったまま,そうした数々の具体的な問題にどう対処していくかまで議論が至っていないところにあるのではないか。福島原発事故をきっかけに脱原発に舵を切ったドイツは原発の残余のリスクを科学的視点からだけではなく,倫理・哲学的な面からも徹底的に議論して合意形成をはかってきた。

 そして,なによりもドイツでは1990年代から電力の自由化を進め,それと並行して再生可能エネルギーを推進してきた。ドイツが脱原発に舵を切れたのは,単に原発反対の世論に押されたのではなく,脱原発を選ぶことで実際に生じるさまざまな問題に対する解決策がみえたからであった。

 --以上の武田 徹の議論・指摘を参考にして考えてみたい。

 日本は「3・11」によって,ドイツに原発を廃棄させる方針転換の契機を “与えたほうの国” になっていた。にもかかわらず,自国では現在,そのほとんどの原発が稼働を停止した状態になっていても 註記),まだぐずぐずと原発維持にこだわる姿勢をとりつづけていた。なにごとにおいても,きちんと徹底的に議論することを避けたがる「この国の哲学・思想のなさ」が,その推移のなかにかいまみえる。

 註記の 補注)「定着した原発ゼロの電力需給原発ゼロでの電力需給および経済的影響の評価~」『isep 環境エネルギー政策研究所』2015年6月15日,https://www.isep.or.jp/archives/library/7712 が,当時の電力需給事情について,こう語っていた。

  2013年9月以来すべての原発が停止しているため,2014年はまったく原発が動かないなかで夏の需要ピークの時期を迎えた。原発依存度が高く,とくに電力需給がきびしいとされている関西電力においても供給力に余裕があり,さらに周辺の中部・北陸・中国の各電力には電力の融通余力があった。

 

 この「日本の全原発が停止していた期間」は,2015年8月11日に九州電力の川内原子力発電所1号機(鹿児島県)が1年11カ月ぶり再稼働することで,終わっていた。

 とりわけ,「まっとうな政治の哲学やその倫理を備えていない政治家しか存在しない」日本政治の現状は,なげかわしくも情けない。自民党の国会議員がとくに大勢いるのだが,いま,いったい彼ら(なかでもとくに例の「魔の3回生」)はなにをしているのか?

 オリンピック招致の成功に単純に喜んでいるようでは,頭のなかのお里〔の程度〕がしれる。21世紀における日本の方向性をどのようにもっていきたいのか,あいもかわらず「高度成長時代」の幻想にとらわれつづけているような虚相(アベノミクス)に満足していられるのか? いてもいなくても同じような自民党の陣笠・余剰議員たちは要らない。

 21世紀に入るや早速人口は減少しはじめ,高齢社会はいよいよ本格化した。「65歳以上人口,初の3000万人超え 総人口28万人減」(『日本経済新聞』2013年4月16日)。

 補注)その後も日本の総人口はじわじわ減少している。

 それでいて,厚生労働省は来年度から,正社員と非正規労働者の中間に位置する新たな雇用形態の「准正規労働者」の創出に乗り出す,といっていた。これは中途半端な労働者の分類を,いかにも意味ありげに謳っていた。

 すなわち,「働く期間に定めがない無期雇用にして賃金を上げ,正社員に近づける一方,昇進などは制限するともいえる形態で,増えつづける非正規労働者の労働条件の改善につなげる狙いがある」というけれども,財界側の要望に沿った「労働者の細かい範疇化」を整備しただけであった。

 労働者・サラリーマン社会集団側にとってみれば,日本政府による労働経済関連の施策は「労働階層差別化」体制をさらに体よく推進するものに過ぎず,労働環境をさらに悪条件化してきた。

 非正規労働者はこの10年間に年平均約30万人のペースで増えつづけ,2012年は約 1813万人と労働者全体の 35.2%を占めるまでになった。このうち約 400万人は正社員を希望しながらかなわずにいる非正規労働者だ。

 補注)その後さらに,非正規労働者層が全体に占める比率は38%まで上昇してきた。「女性対男性」のその対応数は約「2人対1人」であって,圧倒的に女性がより不利な雇用形態に置かれている。

 たとえば,こうした「高齢社会における労働者問題の解決」にオリンピック招致は役に立つのか? 招致した東京都は,オリンピック大会の準備のために3千人の労働力調達が必要だといわれている。だが,その間,この3千人をどこからどのように調達するにせよ,一時的にかぎられた労働経済面での効果しか上げられない。きわめて限定的な効用しか期待できない。

 

 オリンピックは儲かる商売の種になるのか?

 『HUFFINGTONPOST』〔in association of THE ASAHI SIMBUN DIGITAL〕の2013年9月5日は,こういう論説を掲載していた。この一部分を引用する。

 註記)以下は,http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/05/2020_olympics_n_3870947.html

 オリンピック開催の経済的利益について2009年に書かれた論文を共同で執筆したカリフォルニア大学バークレー校のアンドリュー・ローズ教授は,1950年から2006年までの間にオリンピックの開催地となった国々は,IOCに好印象を与えようとしておこなった対策(自由貿易の開始や,自国通貨の為替取引上の規制緩和などの政治的決定)のおかげで,国際貿易が30%急増したという。

 一方で,多くの経済学者が,オリンピックの実際の開催によって開催国が利益をえることはほとんどないと指摘している。実際に開催地に選ばれた都市は,スタジアムや選手村に巨額の資金を費やすが,これらの施設が将来には役に立たなくなることも多い。

 建設期日が近づくにつれて,ただでさえ費用がかかるプロジェクトには,さらに多額の追加費用が発生する傾向がある。さらに,9・11後の世界では,警備にかかる費用が数十億ドルに達し,利益をもたらすオリンピックを開催できる可能性はさらに低くなっている。

 このテーマについておこなった徹底的な研究によって,オリンピック開催の争いを勝ちとる可能性がもっとも高い都市とは,特別な利益を追求する不透明な政治的システムを擁する都市だということが判った,と同教授は述べるのだ。

 「開催を勝ちとるのは,多くの建設会社や建設組合があり,おそらくは弁護士や投資銀行などもくわわって,これらすべてが開催を求めて懸命に努力するような都市だ。それは,みずからを永続させようとする強大なシステムなのだ」。(引用終わり)

 この話を真に受ければ,東京オリンピックの場合,遠くにある福島の原発事故現場など度外視しておいてよい「軽い問題」だという結論が出てくる。この国家の実情は本当は,“under control” どころか,“out of control” なのである。

 いわば,「2020東京オリンピックの開催」が現在の日本にとって有しうる意味は,こうなる。

 いまや21世紀において国家全体が衰退過程に入りはじめたこの日本が,燃えつきるロウソクの火を,無理やり一時だけでもいい,ただパッと盛大に燃やしたいという気分になっている。もちろん,さらに無理をしてでも,2020年東京オリンピック開催〔1年延期になっているが〕のときには,威勢よく打ち上げ花火も上げたいのである。

 しかし,2020年の時点までこの国の経済・社会の状態は,いったいどこまで落ちこんできたか。こちらのほうが現実そのものの,かつ近未来的な心配事である。オリンピックなんぞやらないで,その分のもろもろの予算および努力そして諸資源を,じかに社会経済全体のために使えばよかったに決まっている。

 以上の意見は,転ばぬ先の杖のつもりで,いまから要らぬ心配かもしれない〈悲観的な予測〉(2013年9月時点におけるそれ)を,あえて提示した発言である。だが,そうした見通しはけっして的外れとはいえない。より現実的に未来を考えたいのであれば,当然の意見である。フクシマを平気で見捨てる自民党〔プラス某政党〕政権が,はたして,日本国じたいを再生できるのか? 一時の「にぎやかしさ」に終わりそうな,悪い予感がしてならない。

 以上の記述(本筋の部分)は,もちろん2013年9月におけるものであった。ところがやはり,2021年3月までになっての話だが,その「悪い予感」は現実のものになっていた。とりわけコロナ禍が,その現実の日本社会をよりいっそう悪い様相のほうに引き寄せる原因になっていた。

 安倍晋三はいま〔2021年3月〕は前首相になっているのでさておくが,現首相の菅 義偉は,まだ「Go To トラベル」キャンペーンの再起動をもくろんでいる。第4波の新型コロナウイルス感染拡大の予兆がみえはじめている現段階において,この首相はいったいなにを考えて,内政にとりくんでいるつもりか?

 日本という国をぶち壊している〈実感〉が,彼にはまったくない。

 スガーリンと別称(蔑称)されるこの日本国総理大臣は,安倍晋三という前首相と相並び,みごとなまでに「出来損ないの政治屋であった」。彼らは自民党総裁としても,21世紀の歴史に特筆大書されうる〈異大な国家最高指導・破壊者〉である資格を,遺憾なく存分に披瀝してきた。

 要は,日本の政治社会は2012年12月26日以来,この2人のダメ政治屋によって決定的な損傷を受けてきた。彼らのあとにつづいて登場する首相は,この日本を正常化させるために多大な労苦を強いられるに違いあるまい。

------------------------------