ワープロソフトの一太郎で文章を書くと関連して誤りを惹起させてしまい,ワードで書くとそうでないかのように報じたFNNのニュース,あるいは農林水産省国家官僚たちの「誤字・脱字」をめぐる責任転嫁のごときいいぐさ

 自分たちの日本語入力「力」の問題をワープロ・ソフト関連のせいにしたかのごとくに報道された農水省国家官僚たちのパソコン能力はいかほどか,一太郎を製造・販売するジャストシステムは怒り心頭ではないと思われるが,相手にもしない姿勢で応じていた,この関連する報道を聞いて・読んでずっこけたのは「私だけではない」と思う


  要点・1 ご飯論法にも劣る誤字・脱字の発生原因を「ワープロ・ソフト間の変換」のせいとする某テレビ放送局の思いつき的な報道?

  要点・2 日本語入力の「性能」で,ワードは一太郎には全然かなわない


 「法案ミスで “一太郎禁止” 報道に農水省『ミスが原因ではない』 現在は  Word が多数派」キャリコネニュース』2021.3.31,https://news.careerconnection.jp/?p=114409

 a) いまやワープロソフトといえばマイクロソフト社の「Word」が一般的だが,かつて国内では「一太郎」を使う人も多かった。現在でも一部の省庁や企業で使われているというが,ほとんどみかけなくなっている。

 そうしたなか,農林水産省が相次ぐ法案ミスを受けて,一太郎を原則として省内で使用しないよう通知を出したと報じられた。

 FNNが3月30日に報じたところによると,一太郎は互換性の問題から法案の条文ミスを招くだけでなく,民間企業とファイルをやりとりするさいにし不便だという理由で「事実上の一太郎使用禁止令」が出たという。しかし,農水省広報担当者は「法案ミスを受けての通知ではありません」と説明する。

 補注)この段落のごとき報道に接して,本ブログ筆者はそれこそずっこけた。日本語入力の手段として利用するワープロソフトに一太郎を使おうがワードを使おうが,入力ミスを発生することじたいは,その利用者自身が備えているワープロソフトの習熟度に直接関連することがらであって,どのソフトを使用するかとい点とは,ひとまずいっさい関係ない。

 したがって,日本語入力の手段として使用するソフトが一太郎かワードかという点を,誤字・脱字の問題の原因にむすびつける話題は,基本からなにかをとりちがえた議論である。あるいは,初めからなにかのタメにする話である。そもそもこの記事を読んだとき,いったいなにをいっているのかがピンとこなかった。

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 b) 2017年にも “一太郎禁止”を通知していた。

 一太郎ジャストシステムが販売する国産の日本語ワープロソフトだ。しかし,同ソフトで作成したファイルは Windows 以外のOSでは読みとることができず,互換性のあるフリーソフトもない。

 同担当者は,「以前から民間企業や地方公共団体など外部の人より『一太郎で送られると困る。 Word  を使用してほしい』といった声が寄せられていました。2017年にも省内で『極力  Word  を使用して』と通知したのですが,同じ内容をあらためて今〔3月〕月25日に通知しました」と話す。

 2017年の通知以降,省内で Word の使用者が増加し,いまや多数派となっている。「一太郎はなじみのある人が主に法令文書作成などで使っていますが,指定ソフトではないので,Word で作成しても大丈夫です。省外ではそちらを使う人のほうが多いですしね」と同担当者は語る。

 また,一太郎の使用が法案ミスにつながるという指摘については,「それはまた別の話です。『法案ミスを受けて』と報じられるのは想定していませんでした」とコメントした。

 c) 現在でも使っているのは50~60代?

 ITジャーナリストの井上トシユキさんは,「1990年代には一大シェアを築いた一太郎ですが,現在も使用している職場は少ないです。しかし,一太郎の形式で作成された書類があるため,ずっと使いつづけている職場はあるかもしれません」と話す。

 「使っているのは主に50~60代です。昔からの利用者が多く,日本語の文章を感覚的に作成できるため,便利だという人もいますね。でも,若い人は触ったことがないという人が多いです」。

 新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する企業が増えている。以前は対面やファックスで書類の受け渡しができたが,テレワークが進むなか,自身の環境では開けないファイルが送られてくると業務に支障が生じかねない。誰もが閲覧可能な形式でファイルを送るに越したことはないといえるだろう。(引用終わり)

 一太郎とワード(→ Microsoft社のワープロソフト)とのあいだで読み書きができない,いいかえれば互換性がないというのは,完全なる誤解説である。

 この ① の記事を読んだのをきっかけに,たとえばつぎのような記事をみつけた。

 本ブログ筆者は,だいぶ以前から日本語入力の手段としては一太郎を使用しているが,最初はワープロ専用機で富士通の機械を使用していた関係で,パソコンを使用しだしてからは,日本語入力をオアシス(OASYS)というワープロソフトを使用することになっていた。

 しかし,この OASYSワープロソフトとして,日本語入力の道具としての性能を,とくには一太郎に対してだいぶ遅れをとっていくほかなかった。富士通という会社本体が21世紀に入る以前に経営状態がかんばしくなくなっていた事情もあって,たいして儲かりもしないワープロソフト部門は活性力を低下させていった。

 本ブログ筆者の場合,パソコンでは当初,ワープロソフトとしてオアシスを使用していたが,21世紀になってからは一太郎に変えざるをえなった。そのもっとも大きな理由は〈本格的な註記の機能〉がオアシスには備わっていない点であった。

 ウィキペディアをみると,その後におけるオアシスは,ワープロソフトじたいとしてではなく,日本語入力ソフトの『ジャパニスト(Japanist 2003)』として,しばらく生き延びてきた印象があった。このジャパニストは2006年が最終版となっている(ウィキペディア参照)。

 その『Japanist 2003』という名の日本語入力ソフトは,本ブログ筆者の手元にはまだある。また,ウィンドウズ10になっても特定のパソコンにはインストールしてあった時期もある。

 ということで,本ブログ筆者は,ワードをいじっていたことがないわけではないが,日本語入力ソフトは「オアシス」から「一太郎」へとたどってきた。そのオアシスのほうの使い勝手は,使いこんで慣れていたという事情もあってか,それなりによかったという感想を残している。

 とくに,原稿用紙に手書きで文字を書きこむという感じに即して表現するとしたら(横書きだったが),オアシスの場合,カチカチとよく画面が決まって動くように入力できるので気分がよかった。だが,一太郎の画面はその原稿用紙だとみててつもりであると,どうも文字列がいつもぐらぐらと揺れるように動く点は,いまでも慣れることができない。この〈揺れる点〉はワードでも同じに感じていた。

 ワードの場合,世界各国・地域の言語それぞれに応じて使用されているソフトのためか,画面そのものの造りが日本語に最適であるかどうかについては,特定の疑問があった。この疑問は一太郎を使用する者にとっては歴然とした点ではないか。

 以上の話題については,ネット上に関連する解説があれこれ出ているので,興味ある人はのぞいてほしい。ともかく,日本語入力に関してその〈誤打字の原因〉を一太郎のほうにありと指摘するのは,濡れ衣どころか,説明不足で見当違いのいいがかりとみなしていい発言であった。

 

 「〈ニュースQ3〉農水省法案ミス,ワープロ一太郎』ぬれぎぬ」朝日新聞』2021年4月2日朝刊「社会」

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 農林水産省が,原則として米マイクロソフト製のワープロソフト「ワード」を使うよう省内に呼びかける通知を3月25日付で出した。同省の法案作成に使われているのは,ロングセラーの国産ワープロソフト「一太郎」。通知をきっかけに思わぬ騒動が広がった。

 1)「原則ワード」通知

 農水省広報評価課によると,通知を出したのは,政府の行政改革推進本部に「一太郎のファイルを開くことができない自治体が多い」という意見が寄せられたためだという。同省は2017年12月にもワード使用を求める通知を出していたが,この意見を受け,「対外的にやむをえない場合を除いて」という留保をつけたうえで,あらためて文書を出したのだという。

 補注)後段でも話題に出ているが,一太郎のメニューには「他形式の保存」という機能がある。ワード形式で保存することできる。

 「一太郎」の言葉がネットで急激に注目されたのは3月30日夜。夕方にフジテレビ系ニュースサイトが「法案ミスで『一太郎』禁止令?」という見出しの記事を配信していた。

 補注)該当のニュースの見出しは,「『一太郎』禁止令? 農水省『ワード原則化』通知」『FNNプライムオン』2021年三月30日 火曜 午後 5:01,https://www.fnn.jp/articles/-/162457

 この記事は政府内で法案ミスが相次いでいることに触れ,「互換性の問題から,相次ぐ法案の条文ミスの理由とされたり,民間企業とのやりとりで不便が生じ,政府内で『一太郎』の使用を問題視する声が上がっている」と指摘。

 「こうしたなか,農水省が省内で『ワード使用を原則化』する通知を出したことがわかった」と続けた。この記事はヤフーニュースでも編集部が注目のニュースを集めた「ヤフートピックス」に掲載され,5千件超のコメントが付くなど反響は大きかった。

 補注)今朝〔4月2日〕午前7時15分現在で,この「ヤフートピックス」の該当記事を閲覧しようと探しあててクリックしてみたところ,現在すでに削除されていた。ヤフー内の関連する類似の記事も同じあつかいになっていて「削除」されている。その理由はつぎの段落に説明がある。

 報道を受け,農水省はフジテレビに事実関係をあらためて伝え,報道内容との違いを指摘したという。記事は翌31日に修正された。同局広報局は取材に「一部指摘を受け,改めて取材し記事を更新した。あわせて動画も削除した」と説明している。

 2) ミスは人間の問題

 では,法案文書のミスはなぜ起きたのか。農水省文書課によると,誤りがみつかったのは,農水産業金保険法の改正案につける参考資料。

 縦棒を横棒にしたり,「全て」を「すべて全て」としたり,計3カ所の表記ミスがあった。入力には一太郎が使われていたが,「ソフトのためではなく,担当者による確認不足が原因」だった。

 ITジャーナリストの西田宗千佳さんも「人間の作業の問題」とみる。一太郎で作った表をワードにコピーすると,書式が崩れたりまれに色が変わったりすることもあるが,作業する人が気をつければ防げると話す。

 3) 書式厳格,脈々と

 省庁ではなぜ,いまも一太郎を使っているのか。西田さんによると,一太郎は日本語の行ごとの文字数を完全に同じにしやすく,文字が多い文書を作るさいに均一に配置されることも選ばれる理由のひとつだという。

 ただ,ワードでも設定で文字数を完全に均一にそろえることはできる。農水省文書課によると,法案のほとんどは一太郎で作成している。法案は字数や行数など書式が厳格に決まっており,一太郎のほうが作業しやすいためだという。

 文部科学省の元幹部(59歳)は「われわれの世代は若いころ,『なるべく一太郎を使いなさい』と指導された」と振り返る。在職中は議員説明用の資料から法案の文書まで一太郎で作成していた。「日本企業を応援しようという考え方が背景にあった」と話す。(引用終わり)

 さて,ここでの問題はまず,「日本企業を応援しようという考え方」以前の地点で考えるべきものとなる。日本語用ワープロソフトとしての一太郎の特徴(性能)は,それなりに評価されてよい。この日本語専用に開発されてきた一太郎ゆえ,世界各国・地域の言語すべてに対する汎用を前提に制作されたワードに対して「市場の問題=商圏の範囲=その販売力可能性」でかなうわけなど,初めから全然ない。そうみるのが当然の判断である。

 

  Microsoft のワードの席捲とジャストシステム一太郎に日本における孤塁              -基本的な歴史の理解-

 1)「なぜ法律家には『一太郎ファン』が多いのか?  Word 全盛でも目立つ “偏愛” ぶり」『YAHOO!JAPAN ニュース』2031/3/8 (月) 10:10 配信,https://news.yahoo.co.jp/articles/b3feabbefe580318d235c7a6fb3958cc8fd4acdd(元記事は『弁護士ドットコムニュース』)

 「一太郎」をしっていますか。発売から40年近くたつ文書作成ソフトです。かつてはトップシェアを誇っていましたが,近年は官公庁でも廃止するところが出ています。ところが,この一太郎,未だに法曹三者(弁護士,検察官,裁判官)の間では,とくに愛用者が多いというウワサです。

 

 「Microsoft Word」全盛のいま,なぜ一太郎がこれほどまでに支持されるのでしょうか。一太郎ユーザーの弁護士や,元裁判官に偏愛する理由を熱く語ってもらいました。(ライター・国分瑠衣子)

 a) Word に比べ高い自由度(図表も簡単)。最初に聞いたのは都内の30代の男性弁護士です。Zoom で画面共有しながら,一太郎の使い方を説明してもらいました。 「一番使いやすいのがインデントです。動かしたい部分だけ,ピンポイントで簡単に設定できるんです」。

 インデントとは,行の頭や末尾を揃える機能のこと。 「インデント機能はもちろん Word にもありますが,ツールバーを使って設定する方法など素人にはむずかしく感じてしまいます」。文中に図や表を入れこむのも楽だといいます。目の前で実際に表を書いてもらいましたが,ノートに線を引くような感じで表を作っています。表の行や列を指定しなければならない Word と比べると自由度が高そうです。

 また民事訴訟の「準備書面」では,代理人弁護士の名前がずらりと並んだものをみることがあります。ここでも一太郎の出番です。名前の文字数が違っても,全員の名前の最初と最後をぴったりそろえて美しく仕上げることができます。Word にもこれらの機能はありますが,一太郎ではマウスなども使って,より直感的にレイアウトができる印象です。

 b) 学生時代は Word を利用,修習がきっかけに 男性が一太郎に出会ったのは,司法試験に合格した2013年。司法修習生として研修にいった裁判所や検察庁一太郎を使っていました。「大学では Wor dを使っていたので戸惑いましたが,皆に合わせたほうがいい」と一太郎に乗りかえました。

 男性の事務所では全員が一太郎ユーザーです。周りの事務所をみると年次が高い弁護士ほど一太郎率が高い印象だということです。「とにかく文書を書くことに集中したい」という男性。弁護士にとって,仕事時間の多くはテキストを打つことに費やされるためです。

 一太郎を使いつづけるのはもうひとつ大きな理由があります。「裁判官が読みやすい美しい書面を作りたいという気持があります。もちろんそれで判決が左右されることはないんでしょうけれど,安心感というか,1ポイントでもそれで変わるなら,という感じですね」。

 ちなみに,メールに添付された一太郎のファイル(拡張子は.jtd)が開けないと困ったことがある人もいるのでは。実は一太郎には Word やPDF形式でエクスポートする機能も備わっています

 c) 一太郎開発するジャストシステムって? 一太郎を開発しているのはジャストシステムという1979年創業のソフトウエア開発会社です。創業の地は徳島県で,会社のホームページには「一太郎開発秘話」が紹介されています。

 創業夫妻が開発した日本語ワードプロセッサ一太郎」が発売されたのは1985年。製品名の「一太郎」は,創業者が家庭教師をしていた中学生の名前にちなんでいるそうです。その後もバージョンアップを重ね,いまはスマホタブレットアプリ対応した製品も出しています。2009年には検出・計測制御機器大手のキーエンスと資本・業務提携しました。データ分析ツールや,通信教育「スマイルゼミ」も展開しています。

 2021年2月9日に発表した2021年3月期第3四半期(2020年4~12月)決算は,売上高は前年同期比11.7%増の303億円,本業の儲けを示す営業利益は同10.3%増の120億円でした。最高純益を更新し順調に業績を伸ばしています。

 d) 裁判所は数年前から Word 移行。現場にはあきらめも。話をユーザーに戻します。つぎは数年前まで裁判官だった男性弁護士に,裁判所での一太郎の利用状況について聞いてみました。が,男性が裁判官だったころから裁判所は Word への移行を進め,いまはほとんどの文書を Word で作成しているといいます。

 現場の裁判官からは,一太郎が使えなくなることへの絶望の声があがらなかったのでしょうか。「うーん,さかのぼればタイプライターからワープロ,となんども移行を繰り返してきているので,あきらめの感覚でしょうか。もちろん愚痴はありましたが,皆あきらめて若い人に Word の使い方を聞いていましたね」。

 男性もいまは Word を使っています。「ただ,Word は英語での作成を前提としている感じがしますね。日本語で大量の文章を書くにはやっぱり一太郎が合っています」と懐かしみます。付属する日本語変換ソフト ATO Kの精度の高さも魅力だといいます。

 裁判官時代は,一太郎で書かれた書類のデータが送られてくると「こだわりのある人なんだな」と親しみがわいたといいます。「大げさかもしれませんが,裁判官が書く判決文は,国家意思を反映しているといえます。それなのに誤字脱字があったり,文書のスタイルが乱れていたりすると,説得力に欠けます。

 弁護士の書面をみても誤字脱字があると,中身を精査していないんじゃないかと思ってしまいます。もちろん,文書の美しさが判決の内容に影響することはないのですが,文書へのこだわりが感じられるのはいいですよね」。

 民事訴訟の判決文は100ページに及ぶものもあります。判決文作成にかける時間は,短くても1カ月,長ければ3カ月ほどかかるそうです。3人の裁判官で構成する「合議体」の場合,左陪席が判決文を書き,右陪席と裁判長がそれぞれチェックし,さらに書記官も確認する流れが一般的だといいます。

 e) 検察庁はいまも一太郎で起訴状作成 最高裁に聞いてみると,「Wordに 移行はしていますが,一部では一太郎を使っています。ただ,すべての裁判所ではなく,他の機関と文書のやりとりをする裁判所になります」という回答でした。具体的にどんな裁判所がどのような文書作成に使っているのかは非公表でしたが,少なくともいまも一部では使われています。

 検察庁はどうなのでしょうか。現役の検察官は「入庁した時から一太郎がメインなので,それに従って使っています。Word も使えるのですが,周りの同僚は使っていないですね。起訴状も一太郎で作成しています」と説明します。

 思い入れについて聞いてみましたが,「周りが使っているだけという理由です。特別思い入れがあるわけではありません」とドライな回答でした。

 f) さらに法務省の職員にも取材すると,政務三役問(大臣,副大臣政務官)の答弁は一太郎で,総理と官房長官の答弁は Word で作成と,分けているようです。その理由は「様式が指定されているから」とのことでした。

 g) このように組織内で昔から使われているからという声がある一方,取材した一太郎ユーザーのうち多くで共通していたのが「文書作成に集中して,美しい書面を完成させたい」という職人魂でした。法曹界でも Word に押され気味ではありますが,日本語の文書作成に秀でた一太郎は,これからも静かに支持されそうです。(引用終わり)

 以上『弁護士ドットコムニュース編集部』の書いた文章ということで,一太郎に軍配を上げるような含意の文章(法曹界におけるワープロ事情解説)になっていた。本ブログ筆者もこの判断に異論はない。ワードを使おうと試みたことがあったが,一太郎にくらべたら話にならない〈造り〉だと感じて以来,ワードとは縁がなくなった。

 2)「世界標準になれなかった『一太郎 ジャストシステムが身売り」『NETIBNEWS』2009年4月23日 11:24,https://www.data-max.co.jp/2009/04/41_3.html

 この記事は,日本国内市場向けの製品であるがゆえに,販売圏域確保に関して不可避の制約を背負ってきたジャストシステムワープロソフト『一太郎』の苦境を説明している。一太郎の誕生とその後における変遷を理解するのに役立つ記事である。2009年の記述であった。

 a)一太郎」 かつては日本語ワープロソフトの代名詞であったが,世界標準競争に敗北。その「一太郎」を看板製品としている,ジャスダック上場のジャストシステム徳島市,浮川和宣社長)は身売りすることになった。1995年をネット元年とすると,それ以前の世代に愛用された「一太郎」の時代は終焉を迎えた。

 キーエンスの傘下に。業績低迷が続くジャストシステムは2009年4月20日東証1部上場のFA関連メーカー,キーエンス大阪市,滝崎武光会長)を引受先とする第三者割当増資を実施した。キーエンスは総額45億円を引き受け,発行済み株式の43.96%を保有する筆頭株主になり,ジャストシステムを持ち分法適用会社にした。

 ジャストシステム創業者の浮川和宣社長は,キーエンス出資後も社長職にとどまるが,持ち株比率は23.96%から13.43%に低下し,初めて筆頭株主の座を降りる。ジャストシステムの2009年3月期の連結最終損益は19億円の赤字だ。最終赤字が4期連続となり,財務体質が悪化。キーエンスの傘下で再建を図ることになった。

 文書作成ソフト「一太郎」で一時代を築いたジャストシステムは,米マイクロソフトの「Word」に押されてシェアを落とし完敗した。そこに,世界標準競争をめぐる優勝劣敗の法則をみることができる。

 余談だが,筆者(引用されている原文の著者のこと)が初めて使った日本語ワープロソフトも「一太郎」だった。

 b)一太郎」の誕生。  「一太郎」の生みの親は,ジャストシステムの浮川和宣社長(59歳)と浮川初子専務(58歳)の夫妻。浮川和宣氏は愛媛県新居浜市の生まれで,愛媛大学工学部電気工学科に入学。そのときの同級生の紅一点が徳島市生まれの橋本初子氏だった。彼女は小さいころから数学が得意で,高校生のときにはプログラマーになろうと決めていたという。

 1973年に卒業した浮川氏は兵庫県姫路市の西芝電機に。一方,橋本氏はプログラマーになるため上京し,高千穂バローズ(現・日本ユニシス)の相模原研究所に入り,言語処理を担当した。1975年に2人は結婚。浮川初子となった彼女は,姫路の小さなオフコン販売会社に再就職。販売管理システムを1人で作り納入していた。

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 浮川氏は初子氏の才能をみこんで独立を決意。徳島市に戻り1979年7月,浮川夫妻は初子氏の実家を事務所にしてジャストシステムを創業。オフコンの販売会社を始めた。浮川氏が営業,初子氏がプログラマー。初子氏の母親から建設会社への納入を紹介されたのが初仕事だった。

 b)   その後,初子氏は当時としては珍しい「かな漢字変換ソフト」を開発。1982年10月に東京のデーターショーに出品したことが,世に出るきっかけになった。この「かな漢字変換ソフト」に注目したのがアスキーだ。

 アスキーは当時,NECの「PC-100」にマウスで動かせる業務用ソフトを供給する約束だったが,日本語ワープロだけは適当なソフトがみつかっていなかった。そんなとき,データーショーで日本語ワープロソフトに出会う。これが縁でジャストシステムはNEC向けのワープロソフトの開発をアスキーから受注することとなった。

 ソフト名はジャストシステムの頭文字から「JS-WORD」と命名。NECの「PC-100」に採用された。しかし,浮川氏にとってショックだったのは,「JS-WORD」がアスキーのブランドとして売られたことだった。浮川氏は「われわれは下請けではない」と反発。アスキーとの契約を打ち切った。

 c) アスキーの下請けから独立したジャストシステムが1985年8月に開発したのが,日本語ワープロソフト「一太郎」。名前は,浮川氏が学生時代に家庭教師をしていたときの病死した中学生「太郎」にちなんで命名した。

 「一太郎」は大ベストセラーとなり,日本語ワープロソフトの代名詞となった。現在,日本語入力の操作になっている,「スペースキーでかな漢字変換」「リターンキーで変換確定」というスタイルも,もともとは「一太郎」独特の操作法だ。

 補注)日本語仕様のキーボードには,スペースキーの両側に「無変換キー」と「変換キー」が並んでいるが,富士通ワープロソフト「オアシス」ではこの2つのキーを使い,日本語変換をしていた。

 だいぶ昔の話になるが,本ブログ筆者がワープロソフトをオアシスから一太郎に変更・移行したさい,その操作法に違いに慣れるために「しばらく苦労とした」点は,よく記憶している。オアシスの場合,指使いの点でも異なる機能が割り付けられているキーもあったりして,これを使わないで打字できるまでには,それ相応に時間がかかった。

 富士通ワープロ専用機の時代からの「親指シフト」をまだ使用している高齢者(彼らの「いまの年齢では」という意味だが)もいると聞く。

 d) マイクロソフトの Word に敗れる

 一太郎の前に立ち塞がったのが,米マイクロソフト(MS)の「Word」である。
 MSの「ウィンドウズ95」が世に出た1995年はネット元年である。

 ノートパソコンブームの到来によって,群雄割拠状態から抜け出て,基本ソフト(OS)の世界標準になったのがMSのウィンドウズだ。世界中のパソコンの9割以上が,基本ソフトにウィンドウズを使っている。

 日本語変換機能に関して,「一太郎」はMSの「Word」よりも数段上。かつて一太郎の機能の一部であった,かな漢字変換ソフト「ATOK」は最高水準の変換精度を誇っている。しかし,ウィンドウズをOSの世界標準にしたMSは,ウィンドウズと「Word」の抱き合わせ販売によって「一太郎」のシェアを奪っていった。

 世界標準の「Word」に比べて,一太郎は日本だけのローカルなワープロソフト。このため市場から駆逐されていった。

 若い人のなかには,「一太郎」といってもしらない人もいるが,依然根強い「一太郎」ファンは少なくない。官公庁や一部の企業では,公文書作成のために「一太郎」を標準のワープロソフトに指定しているところもある。

 e)一太郎」の最大の特徴は,縦書きのための機能が充実していること。映画やTVのドラマの原作・脚本を手がける脚本家は,「一太郎」で執筆している。日本語の縦書き文化が続くかぎり,「一太郎」は不滅だ。「Word」は横書き文化だ。

 しかし,「一太郎」は,縦書き・原稿用紙・専用用紙など日本語ワープロとしての機能を充実させたため,世界的な規格から離れてしまうという皮肉な結末を招いた。「一太郎」は世界標準になりえなかった。

 補注)世界各国・地域の言語の特性に適合したその国・域なりのワープロ・ソフトの開発は,日本以外の国々においてはできないものか? Microsoft 社のワードの画面をみていると,これは本ブログ筆者だけに特有の感じ方かもしれないが,なにか情緒不安定になるといったらおおげさか?

 ネットの時代には,最初に最大のシェアを奪った企業だけが生き残ることができる。世界標準の地位を獲得したものだけが勝ち残る1人勝ちの世界だ。これがIT(情報技術)時代における優勝劣敗の法則であった。(引用終わり)

 Microsoft 社が一太郎のめだった特徴,日本語的な特性および機能に相当するような,各国・地域のすべての言語に対しても汎用的にこなせるワープロ・ソフトが開発できないでいるのは,世界中の諸言語「表記法」(など)の特徴が障壁になっているからか?

 そうした事情がこれからもつづくとしたら,前段に出ていた「これがIT(情報技術)時代における優勝劣敗の法則」だといわれた決め文句のどおりには,まだまだいかない,つまり,今後における「ワープロ・ソフト技術水準」のさらなる発展・高度化が期待できるにしても,なお解決できずに残るほかない技術問題をかかえているのが「ワープロ」とこの「各言語」入力をめぐる「課題」だといえそうである。

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 付記)左側のワープロ専用機は富士通の「親指シフト」仕様である。右側は同じ富士通の通常型になるワープロ専用機だが,変換キーと無変換キーを使って操作し,日本語を入力する仕様。