「原発は要らない,原発なしでも電力は不足しない」と主張した本ブログ「2011年4月下旬の記述」を2021年4月上旬に再考する

             (2011年4月27日,更新 2021年4月8日)

 「 原発は要らない,原発なしでも電力は不足しない 」にもかかわらず,『日本経済新聞』2011年4月27日朝刊は「変な記事:今夏〔2011年に〕,電力不足がある」かのように脅かす報道をしていた

 

  要点・1 財界新聞の体制派的な報道姿勢

  要点・2 誤導を潜在的に意図していたかのような新聞記事

 

  福島第1原発事故「汚染地図」

 東日本大震災が発生して1カ月半が経過したいまごろ〔⇒2011年4月27日〕になってようやく,福島第1原子力発電所「爆発・損壊」事故による「放射線漏れの状況に関する図解」が新聞に公表されはじめた。こういう情報・資料は,極力早めに国民・住民に公開し,周知させるべきものである。

 ところが,この国の指導者たちは自国民を愚民視しているのか,あるいは,大震災・原発事故の影響によって生じるかもしれない「国家・社会の混乱惹起」を恐れてでもいるのか,遅れに遅れて〔遅らせるだけ遅らせて〕公表していた。

 まず,『日本経済新聞』2011年4月26日朝刊に出ていた「福島第1原発の事故による積算放射線量(3/12~4/24)の試算結果」は,福島第1原発から20㎞圏内における放射線量推定値の「分布図」を示していた。これは,いずれにしても,肝心な20㎞圏内のそれも推定値:試算によるものであった。 

 つぎに,『朝日新聞』2011年4月27日朝刊に出ていた「2012年3月11日までの推定積算線量の分布図(2011年4月21日までの実測値から推定)」も,東電福島第1原発から20㎞圏内の放射線汚染状況を教えていた。

 文部科学省と国立大学の福島大学とがこのように,連係もなしにバラバラに放射線量を観測する態勢について,本ブログの筆者は基本的な疑問も抱いた。 

 いうまでもないが,文部科学省は 2001〔平成13〕年1月6日,中央省庁再編により文部省と科学技術庁を廃止して設置された官庁組織である。文教政策と科学技術政策とはどのように組みあわされて行政がなされているのか。今回のような「大震災=原発事故」にかかわる関連情報の公開に関しては,なにかすっきりせず,不可解でもあって,一定の疑問を感じとるほかない。

  福島県内の放射線量,詳細な汚染マップ作成 文科省

 福島第1原発事故を受けて,文部科学省は4月26日,2012年3月までの福島県内の積算線量を推定した汚染マップを公表した。原発から北西方向の地域で避難区域の目安とする年間被曝量が20ミリシーベルトを超えている。今後,月に2回更新して,避難区域の設定などに活用していく。

 事故当日3月12日から4月21日まで,文科省福島県などが計測器を載せた車などで測った約2100地点の放射線量をもとに,2112年3月11日まで1年間の積算線量を推測した。木造の屋内で16時間過ごすと仮定して推計した。4月11日に公表後,今回は2度目だが,20キロ圏内を示したのは初めて。 

 f:id:socialsciencereview:20210408060030p:plain

 計画的避難区域に指定された地域内の14地点のうち,北西約24キロの浪江町赤宇木で235.4ミリシーベルトと最高値を示した。一方で,避難区域内でも飯舘村二枚橋は10ミリシーベルトとばらつきがあった。4月11日の公表時より,多くの地点で年間の推定値が低下したことから,20ミリシーベルトを超える範囲は少し狭まったという。

 詳細な線量マップができれば,臨機応変に避難区域の設定や解除にも使える。細野豪志首相補佐官は「実測に基づく汚染マップ作りは非常に重要。今後,土壌の汚染マップも作り,政策決定などに活用していく」と語った。

 注記)『朝日新聞』2011年4月27日朝刊。

 文部科学省がさきに4月11日にも公表していたのが,その「20㎞圏内を示したのは始めて」という4月26日19時現在での「福島第1及び第2原子力発電所周辺のモニタリングカーを用いた固定測定点における空間線量率の測定結果(地図)」であった。

  注記) http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1303747.htm この住所は2021年4月8日現在では削除されていた。

 ところで,文部科学省はなぜ,4月11日時点まで「20キロ圏内」での「放射線量の実測値」を示さなかったのか? なにか思惑があったと勘ぐられてもしかたあるまい。それとも観測していなかったのか?

 この事実について「官僚たちのやること」は,けっして好意的に観察するわけにいかない。彼らのいいぶんを聞くとすれば多分,国民・住民への不安・心配を〈与えないようにしたかった〉とかなんとか説明するに決まっている。

 しかし,4月11日時点〔あるいはそれ以前〕で公表したら,なにかまずいことでもあったのか?

 補注)「3・11」に惹起された東電福島第1原発事故の後始末について,われわれは,つぎの記憶をけっして忘れてはいけない。

 

  SPEEDI とは ★

 緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEED)は,原子力発電所などから大量の放射性物質が放出された場合や,そのおそれがある場合に,放出源情報(放射性物質の種類ごとの放出量の時間的変化など)や気象条件,地形データにもとづいて,周辺環境における放射性物質の大気中濃度や被曝線量などを予測するためのシステムです。

 

 放出源情報は,原子力事業者から送られてくる原子炉内の状況などにもとづいて,コンピュータによって解析・予測されますが,今回の東京電力(株)福島第1原子力発電所の事故では外部電源の喪失などによって発電所からのデータ送付ができず,SPEEDI を活用した放射性物質の拡散予測ができませんでした。また,データ公表が遅れ,住民避難に活用されなかったとの指摘がありました。

 

 政府の事故調査委員会は,SPEEDI を活用できていれば住民避難のタイミングや方向を判断できる可能性があったとしています。
 註記)「〈エネ百科〉SPEEDIとは」『JAERO 日本原子力文化財団』https://www.ene100.jp/fukushima/482

 この解説は最後で,SPEEDI の「活用」「可能性」に関して問題があったかのように説明している。だが,これは甘すぎる解釈であった。すなわち,当時は,この SPEEDI の可能性などではなく,現実性(実際の運用)にかかわる問題が「3基もの原発が溶融事故を起こした」事態のなかで,切迫した事態となって生じていた。

 したがって,以上のごとき解説・解釈はきわめて生ぬるい内容として,相当きびしく批判されねばならない。いってみれば,この SPEEDI が肝心な時に活用されていなかった点をめぐっては,「当局側の職務怠慢あるいは意図的な罷業」の介在(の疑い)が指摘されていた。

 

  今夏に電力不足はない-日本経済新聞の奇怪な報道-

 1) 大停電という脅し文句

 本日〔2011年4月27日〕の日本経済新聞朝刊は「大企業の8割『25%節電』-大規模停電を回避 中小の削減不透明  過剰抑制なら景気に冷水も-政府15%に緩和へ,病院など負担軽く」という見出しの記事で,以下のように報道していた。

 夏の節電対策をめぐって政府は近く瞬間最大電力の削減目標を昨〔2010年〕夏比15%に引き下げる方針だが,大企業の8割が当初目標の25%削減を継続する計画であることが4月26日,日本経団連の集計でわかった。日本自動車工業会は同日,土日の替わりに平日2日間に一斉休業する「輪番休日」の実施を正式発表した。電力不足への懸念はなお残るが,電力の使用抑制が行き過ぎると生産など景気に負の影響がある。柔軟な対応が必要との声もある。

 

 「大規模停電を起こさないために多めの計画で進める」。米倉弘昌経団連会長は記者会見で企業に電力消費の25%削減を求める姿勢を強調した。経団連が4月20日までにまとめた自主行動計画の第1次集計によれば,543社・団体のうち,8割弱の418社が当初,大口需要家に政府が求めた25%削減目標の達成をめざしている。

 

 節電手法はさまざまだ。電力使用の少ない夜間や早朝,土日への操業シフト,夏季休暇の長期化など,働きかたの変化を促す取組も含まれる。日本自動車工業会志賀俊之会長は4月26日の記者会見で平日休業について『機械や電機業界など他業界や個別企業にも参加を促している』と発言。業界を超えた輪番休業に広がる可能性もある。

 

 一方,政府は近く電力需給緊急対策本部を開き,今夏の電力の削減目標を一律15%に引き下げる方針だ。東電の電力の供給力上積みを受け,企業の負担を軽くするのが狙いだ。さらに,病院や鉄道,下水処理施設など,人命や国民生活に与える影響が大きい分野では削減幅の縮小も検討する。

 

 政府が企業活動に配慮して電力の使用制限を緩和する一方で,経団連などが慎重な姿勢を崩さない背景には「企業の節電姿勢が緩むとの懸念がある」と関係者は話す。夏の電力需要のピーク時,最大で800万キロワットの節電が必要とされる。そのうち大企業など大口需要家による昨夏比15%削減の効果は3割強の255万キロワット。残る7割弱は法的強制力のない中小企業や家庭の努力に依存している。計算の立ちやすい大口部分で節電を積み上げ,東京電力を “支援” する狙いがのぞく。

 

 7月をめどに供給能力を5500万キロワット前後まで回復させるとしている東電の計画の実現には課題が残っている。一つは火力発電所の老朽化。横須賀火力発電所(神奈川県)は1960年代の操業。2010年に停止した運転を震災後,急遽再開した。ほかにも老朽設備が複数あり「夏場に運転を継続できるか不安」(東電幹部)との声が聞かれる。

 

 夜間の余剰電力を使って昼間に発電する揚水発電の問題もある。東電は400万キロワット以上の揚水発電をみこむが,猛暑がつづけば電力需要が拡大,夜間に水をくみ上げる余剰電力が確保できない可能性も指摘されている。電力需要が瞬間でも供給能力を上回れば,ブラックアウトと呼ばれる大停電が首都圏で起こりかねない。第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「3日間の停電で実質国内総生産N(GDP)は0.6ポイント押し下げられる」と指摘する。

 

 ただ,節電の行き過ぎも景気を冷やす。「電力を15%削減したばあいの7~9月の生産の落ちこみは前期比2.8%減にとどまるが,25%削減のばあい,7.2%減となる」(SMBC日興証券)との試算もある。曜日分散や夜間シフトなどで生産への悪影響を抑えつつ,どこまで節電効果を上げられるか企業も試される。

 この記事はつづけて「家庭も工夫,震災後の電力使用7.8%減 冷房1度上げると15%節電」という見出しを付けた記事を出していた。

 電力使用量が増える夏に向けて,大規模な停電を回避できるか。電力消費の3割を占める家庭の節電もカギとなる。3月の東日本大震災後の計画停電の実施をきっかけに,家庭の節電意識は着実に高まっている。

 

 住環境計画研究所(東京・千代田)が東京電力管内の約1000世帯を対象にした調査では,4月分の電力消費量は前年同月比7.8%減少,政府が家庭での目標としている15%の節電を達成した世帯は3割を超えた。震災後,節電意識が向上したと答えた世帯は6割を占めた。

 

 具体策としては「照明をこまめに消す」「使わない家電のプラグをコンセントから抜く」「テレビの視聴時間を短くする」といった行動が目立ったという。もっとも,家庭では気温の上昇とともに,電力使用量が増えていく。夏の猛暑日に冷房を切るなど過度な我慢をせずに,どうしたら電力の消費を抑えることができるか。

 

 家庭の電力消費の多くを占めるのが冷房と冷蔵庫。ダイキン工業によれば,冷房の設定温度を1度上げると約15%の節電効果がある。こまめにフィルターを掃除して目詰まりを解消するのも効果的という。経済産業省によれば,400リットル級の冷蔵庫の強度を強から中に変更したときの省エネ効果は平均で11%。冷蔵庫いっぱいに食品を詰めこんだばあいと半分にしたばあいとでは,詰めこみ直後の電力使用量が8%違ってくる。パソコンやテレビの不使用時にコンセントを抜いて待機電力を抑制するのも効果が高いとされる。

 

 1970年代の石油危機時と異なり,今回は電力の供給力が瞬間的な電力需要を賄いきれなかったばあいに起きる大停電が懸念されている。各家庭の節電の工夫と消費量の上昇への目配りが停電回避につながる。

 注記)『日本経済新聞』2011年4月27日朝刊。

 2) 大停電などありえない

 本ブログ筆者が,先週〔(2011年の)4月17日~24日〕から昨日〔4月26日〕までの新聞報道でみたかぎりで判断するなら,節電へ向けてのいろいろな工夫・努力が,産業界や各家庭において積極的に試みられようとしている。電力をゼイタクに消費するのはともかく止めようとか,この電力を生産するために,どのような資源がどのように費消されているのかとかいう問題にまで人びとの関心が向けられ,節電意識がいやがおうにも高まっている。

 さて,ここで気になるのが,日本経済新聞が懸念すると指摘する「大停電」の問題である。電力需要の増える夏期(盛夏の時期:それも午後の時間帯)を念頭に置き,東電管内の電力需給を具体的に推測しておくべきである。いまのところの見通しでいえば,「電力の供給力が瞬間的な電力需要を賄いきれなかったばあいに起きる大停電」は,産業界・各家庭双方における節電・削電協力によって,無理なくその回避が可能である。

 『日本経済新聞』2011年4月21日朝刊は,当時の「東京電力管内における当面の見通し」について,「東電,夏の電力供給積み増し 5500万キロワットで調整」という報道をしていた。その要点を摘出しておく。

 東京電力は4月20日,「今夏,東電電力供給可能量」について,こういう予測を立てた。

 

 〔2011年〕7月末の電力需要のピーク時に現状の計画より電力供給力を約 300万キロワット引き上げ,5500万キロワット前後とする方向で調整に入った。設置が比較的容易なガスタービン備を増強するほか,夜間の余剰電力を使って昼間に発電する揚水発電を上積みする。今夏の最大電力需要は5500万~6000万キロワット程度とみられている。今夏の大規模な電力不足が避けられる見通しになりつつあるが,東電は供給力のさらなる積み上げをめざす。

 

 東電は,東日本大震災直後,電力供給力が約3100万キロワットまで落ちこんだが,その後,火力発電所の復旧や企業の自家発電設備からの供給拡大などで,現在は4000万キロワット前後まで回復した。東電は7月末の電力供給力を約4650万キロワットから3割増の5200万キロワット程度に引き上げることを決めていた。さらには,ガスタービン設備の増設などで余剰電力を確保し,他社分も含め東電管内で約1千万キロワットの設備容量がある揚水発電を最大限活用する方針である。

 

 東電は現在,揚水発電を約400万キロワットだけみこんでいる。猛暑がつづけば「水をくみ上げる電力量が確保できず,ピーク時対応の揚水発電にも限界がある」(東電幹部)との声もあるが,震災で被災していない揚水設備を使いピーク時の電力供給力を拡大する方向で調整している。一方で,8月中に柏崎刈羽原子力発電所新潟県)の1号機と7号機が定期点検に入ることもあり,8月末時点で電力供給力が約190万キロワット減少する見通しである。

 以上のごとき「東京電力管内における当面の見通し」はきわめてズサンであって,しかもみかたによってはかなり誤導的な含意も汲みとれた。東電は,今〔2011年〕夏電力供給量を「5500万キロワットで調整」するといっているし,その後も電力供給源は,新しく発電設備の急設や民間企業の自家発電設備の協力もえて,今夏供給目標である5500万キロワットの確保は,ほぼ確実な見通しである。

 それにもかかわらず,7月・8月・9月の電力供給量は,それも7月については多分「東電は7月末の電力供給力を約4650万キロワット」といった数値を参考にしているものと思われるが,故意に少ない数値を提示していた。しかし,今〔2011年〕夏は5500万キロワットの電力供給が確保できる。そのうち,大停電をまえもって回避する状態を維持・常備しておくための電力の余裕率8%を見積もっておいても,各界の節電努力などによって今夏の電力需要は十分に乗り切れる。そういう見通しが立っている。

 3) 実態を反映しない発言

 東電側の説明は,7月→8月→9月に進むにつれ,とくに「原子力による発電供給量の減少」に並行させたかたちで,電力供給量のほうも「減少させてきていた」。そういう関連づけあるいは意味づけでもって,夏期における電力需給の様相を描いていた。はたして,その「3カ月間の電力供給量の予測」は,適切な資料利用とこれにもとづく的確な情勢判断でありえたのかどうか,そして「節電する側:産業界と各家庭側」がすでに工夫・努力して案出している節電策の実行という前提を,全体的に考慮に入れてのものなのか疑問があった。

 補注)前後する記述は,いうまでもなく2011年4月時点における内容であって,その後10年が経過した現在まで,以上のごとき指摘・批判がそれなりに適宜になされてきたと回想できる。「3・11」直後の時期,東電側が加害者企業として披露してきた基本姿勢は,当時の勝俣恒久会長に典型的に表現されていた。勝俣は当時,東電内では天皇あつかいされていて,この会長が出席する会議は「御前会議」とまで尊称されていたというのだから,東電内において彼が掌握していた権勢は並たいていのものではなかった。

 要するに,われわれは,原子力発電による電力供給には頼らない時代に向かってより早く歩をすすめねばならない。原子力を切り捨てたうえで,電力利用を考える国民経済生活体制への変革が要求されている。

 その間にでもたとえば,原発推進派が主張する,つぎのようなズサンな議論が頻繁に登場していた。この種の議論じたいがすでに破綻していた事実は,「3・11」の発生を契機により明白に実証されてきた。

 これまで,電力会社は3E(安定供給,環境保全,経済性)の観点から,バランスの取れたエネルギーミックスを実現してきました。しかし,震災以降,3Eに優れる原子力発電所の停止に伴い,国民の経済的負担や環境負荷のいちじるしい増大が生じています。

 

 また,原子力発電を代替する火力発電所では,設備の監視体制を強化するなど安定供給確保に最大限努めていますが,定期検査時期の繰り延べや高経年機の稼働により,潜在的な故障リスクを抱えており,きびしい運用が続いています。

 

 今後,安全性の確保を大前提に,原子力発電も含む多様な選択肢を組み合わせたエネルギーミックスを再構築することが必要と考えています。

 註記)電気事業連合会工務部長・早田 敦「東日本大震災以降の電力需給状況と安定供給確保に向けた取り組み」『日本貿易会月報オンライン』2015年7・8月号(No.738),https://www.jftc.jp/monthly/feature/detail/entry-344.html

 この主張は「3・11」のほぼ4年半あとに書かれていた文章である。しかし,とくに「3E(安定供給,環境保全,経済性)の観点」というものは,すでに完全に破綻しており,「砂上の楼閣」となった議論である。それでもなお,性懲りもなくこの種の陳腐な原発擁護論が反復されている。電気事業連合会に属する組織人の立場からだとこの程度にしか発言できないとはいえ,いまどきにあっては説得力はゼロである。

 まず,原発が電力の安定供給になるかといえば,否であった。稼働時に操業度(稼働率)を「0%~100%」の範囲内で高下させて弾力的に稼働させえない「原発の不利性」(その融通・柔軟性のなさ)そのものが,詭弁的に「電力の安定供給」という表現にいいかえられているに過ぎない。各種の火力発電と比較して考えれば,以上の指摘はただちに納得がいくはずである。

 つぎに,環境保全の問題に触れたとなれば,東電福島第1原発事故じたいが,この主張を真っ向から否定しつくした。そのように断わっておけば,このいいぶんを否定するのには十分である。

 さらに,経済性という観点も,これまた「完全に不利」であった。この事実は,原発コスト論としていよいよ明確になっている事実であって,もはや常識的な理解になってもいる。

 そもそも「安全性の確保を大前提に,原子力発電も含む多様な選択肢を組み合わせたエネルギーミックスを再構築することが必要と考えてい」るのであれば,なによりも最初になすべきは,原発抜きの「多種多様な電源別の選択肢による組み合わせ」による「エネルギーミックスを再構築することが必要」な時代に,すでに移行している。

 4) 論ずるとしたらこう書くべき- 3)  に登場した早田 敦のリクツを否定するための積極的な議論-

 「定着した原発ゼロの電力需給原発ゼロでの電力需給および経済的影響の評価-」『iesp 環境エネルギー政策研究所』2015年6月15日,https://www.isep.or.jp/archives/library/7712 が,すでにこう提言していた。


 当研究所は,福島第1原発事故後,5年目の夏を迎えるにあたり,原発ゼロでの電力需給およびその経済的影響の評価をおこなった。また,政府の検討するエネルギーミックスに対して,下記のとおり政策を提言する。

 

 【要旨と提言】

 福島第1原発事故後,5年目の夏を迎えて原発稼動ゼロを前提とする電力需給が定着しており,原発稼動ゼロでも,関西電力九州電力をはじめとするすべての電力会社で,2015年夏のピーク需要時の電気は十分に足りる。

 

 政府の2015年夏の電力需給検証は,旧来型の考え方によるもので,ピーク需要を過大に予測し,揚水発電再生可能エネルギー等の供給力を過小に評価している。その政府試算でさえ一基の原発も再稼動せずに,ピーク需要時の供給予備力は確保されることが示されている。

 

 ただし,政府が織りこんでいない「現実的な対策」(本来なら政府の役割)をおこなうことで,さらに余裕をもった電力需給を確保することができる。

 

 政府のエネルギー基本計画や電力需給検証では,原発停止に伴う化石燃料費用の増大を過度に強調し,意図的に誤解を与える説明をしている。正確には,以下のとおり。

   ※-1 化石燃料購入費総額の増加分(3兆円超)の大半(7割)は,円安や原油価格上昇による。

   ※-2 2014年は減少傾向だったが,原油価格の一時的な下落によるもので楽観できない。

   ※-3 政府や電力会社が原発再稼動に固執し,原発に依存しない電力改革を迅速に進めてこなかったことが,年間3兆円を超える経済的な追加負担が継続している真因である。

   ※-4 政府は時代錯誤のエネルギーミックス案ではなく,福島第1原発事故の教訓に真摯に学び,自然エネルギー・エネルギー効率化・地域主導を「3本柱」とする「統合エネルギー政策」をめざすべきである。

 

  節電〔削電〕への努力

 a) 東京大学は,東電管内で盛夏の電力需要6千万キロワットに対して,本郷キャンパスだけで最大5万キロワットを使用する大口消費組織であった。この東大は大震災後,今夏に向けて昨年比30%節減の目標を定め,対策に乗り出したという。

 注記)『朝日新聞』2011年4月21日朝刊「科学」欄「東大が節電に秘策 消費量『見える化』-データ集計,携帯,PCに-」。

 原子力発電はクリーンなエネルギーであり,温暖化〔二酸化炭素〕対策にも有効であるという〈根拠のない俗説〉を,りっぱな科学者・研究者・学者たちが口をそろえて唱えてきた。だが原子力発電は,事故がなくても放射線を放出しているし,チェルノブイリ,スリーマイル,フクシマの原発事故でより明確にもなったように,いったん原発に事故が起こると,とりかえしのつかないくらいに地球環境および人間生活を破壊し,汚染された国土を残す。。

 つまり,原子力発電は核燃料として放射性物質を利用するゆえ,とても汚くかつものすごく危険なのである。また,環境汚染の問題でいえば,原発施設が必らず海岸沿いに建設されている〈技術環境的な特徴〉にも注目しなければならない。原子炉の冷却などのために海水を利用し,海に向けて排熱〔廃熱〕している。この熱交換作用のために原発の立地する海岸地帯は,自然界としてはいままでなかったような異常な温度上昇を強いられ,近隣の漁業には悪影響がもたらされている。

 b) 日本経済新聞』2011年4月18日『核心』欄に,同紙の本社コラムニスト土谷英夫は「トインビーをもう一度  不都合な真実に『応戦」を」を執筆している。こう主張している。 

 トインビー流にいえば,大地震・大津波という自然的環境からの挑戦と,原子力エネルギーに依存する人間的環境からの挑戦を同時に受けているのが,いまの日本。間違いなく66年前の「敗戦」以来の逆境だ。太陽光,風力,バイオマスなど自然エネルギーの供給を増やす一方,スマートグリッド(次世代送電網)や,さらなる省エネで使用効率をあげる。夏場のピークをしのぐには,休暇のとりかたなど,ライフスタイルの転換も考えられよう。

 原子力発電の不要性・無用性,さらにいえば,その不便性・有害性から早く逃れるためには,電力政策の基本転換が要請されている。「原発利権」の存在はたしかであり,この日本的な権力構図のなかにはめこまれている日本経済新聞社に,その利権の構造を真正面から斬るような〈社会の木鐸〉的任務は,とうていできない期待・相談である。

 要は,原発は要らないし,原発に電力を頼らなくても今夏は乗り切れる。来年以降も,原発による電力供給がなくても,東電管内で決定的な電力不足に至る事態は起こらない。これは,産業界や各家庭でまじめに節電〔削電〕の工夫・努力をしていけば,なんの苦もなく実現できる《現実的な目標》である。

 補注)ここでは2011年の3月下旬・4月上旬の時点で,当時,電力不足が懸念されていた状況をどのように克服するかに関して,たとえば,東京大学の関係機関からは,つぎのような提言(  ↓   )がなされていた。この提言の内容は総合的・包括的・有機的に,しかも積極的に構成されていた。

 c) 前掲のこの提言のほか,この記述をおこなっていた前後の時期,4月の18日~22日にかけては,つぎのような関連する報道もなされていた。

   ☆-1 「夏の電力不足  企業が対策,自家発電 150万キロワット拡大,原発1基分 化学など20社で」『日本経済新聞』2011年4月22日朝刊。

   ☆-2 「化学・石油 自家発電を拡大 『隠れ電源』生かせ」『日本経済新聞』2011年4月22日朝刊,編集委員 西條郁夫。

   ☆-3 「夏の電力規制に備え  LED照明 節電需要,リコーが算入,東芝・羽ソニックも拡充」『日本経済新聞』2011年4月21日朝刊。

   ☆-4 「東ガス,風力発電を強化 蓄電池融合のノウハウ蓄積,日立系に出資,第2株主に」『日本経済新聞』2011年4月21日朝刊。

   ☆-5 「思えば私たちは,自然の摂理を相手に多大な電気を使っている。ありのままに少し立ち戻れば,結構な節電が実現しよう」『朝日新聞』2011年4月18日朝刊「天声人語

   ☆-6 「この危機を乗り切るためには,需要サイドの改革が不可欠である。省電力型の産業構造へのシフトはもとより,増えつづけてきた家庭の電力消費を抑制する必要がある」『日本経済新聞』2011年4月19日朝刊「大機小機」。

 本日〔2011年4月27日〕現在,日本の各電力会社の原発都合54基のうち半数は,定期点検も含めて停止中である。稼働中の原発を全部停止させ廃炉にしても,日本の電力事情に決定的な支障が生じる事情にはない。電力を贅沢三昧に浪費してきたわれわれの生活を,少しだけ工夫・努力して我慢さえすれば,大停電という異常事態とは無縁でありうる。それでもなお,わわれれはいままでどおり豊かに電力を利用した生活が維持できる。

 補注)その後においては,こういう経過が記録されていた。2013年9月,関西電力大飯原発3・4号機が停止して以来,ほぼ2年間,全国の原発は停止していた。2015年8月11日, 九州電力の川内原子力発電所1号機(鹿児島県)が起動するまで,原発ゼロの期間が続いたのである。その間,日本が電力需給に関して,なにか決定的な不都合が生じたという話は聞かなかった。

 

  近著による原発批判の「著作」

 1) 原子力資料情報室 / 原水禁編著『破綻したプルトニウム利用』緑風出版,2010年7月

 本書は2011年4月に第2刷を重ねていた。本書は原発をこのように批判している。

 「発電所建設の根拠となる電力需要が伸びないのに,原発の出力は大型化している」。「その大型原発を,運転中はつねにフル出力で動かすため,小回りがきかない」。「刻一刻とかわる電力需要の変動に対応するには,低稼働率に甘んじてくれる出力調整用の火力発電所が必要となる」。

 

 「他方で,原発は事故や地震,不正の発覚などでしばしば運転を停止し,多数基の同時停止や長期停止も珍しくない。出力が大きなぶん,影響は広範囲に及ぶ」。「地球温暖化対策の数字合わせにも齟齬を来す。くわえて投下コストの回収に時間のかかる原発は,電力会社の経営を脅かす」。「原発の静寂性がいよいよ顕在化してている」。

 

 「原子力発電をつづける意味はない。原子力発電の廃止を具現化することで,エネルギー供給や地球温暖化対策から不確定要素を減らし,原子力に投じられた厖大な資金を持続可能な社会に向けたより有効な投資に振り向けることも可能となる」(213-214頁)。

 福島第1原発の事故は,このような原発批判をまったきに実証した。小回りの利かない原発は技術経済的にやっかいものであるだけでなく,政治社会的にも災厄をもたらす可能性を無限大に秘めた《悪魔の火》であることを,重々承知・反省しておく必要がある。

 2) 桜井 淳『新版 原発のどこが危険か-世界の事故と福島原発-』朝日新聞出版,2011年4月

 本書は,福島第1原発の事故を契機に〈新版〉を公表していた。「福島の危険性は本書が指摘していた!」「事故は『想定外』ではなかった。なにが盲点だったのか?」と,原発の技術専門的な分析をもって解明する。

 桜井 淳のいうことは興味深い。本ブログの筆者も前述で「原発利権」や「電力マフィア」という表現を使っていたが,桜井はこういう体験をしたことがあると述べていた。

 「原発推進派(通産省技術顧問,電力会社幹部,原子炉メーカー幹部,研究機関幹部,電力会社の広報費で運営されている電力広報を目的として広報誌を編集している会社の幹部,大学教授,元大学教授など)から約1500回,原発反対派から約500回の脅迫や妨害を受けたが,それらについては実名を記し,すべての記録(1988年4月から今日までのテープレコーダー記録を含む)を1冊の著書にまとめる準備を進めている」( 20頁)。

 今回もそうであるが,「事故のときにはまたしゃしゃり出てインチキな解説をする」電力会社の広報係がいた。「日本は,マスコミが甘いからインチキ論者を培養する結果になっている。マスコミの意識改革を求めたい」(182頁)。

 本書『原発のどこが危険か-世界の事故と福島原発-』1995年初版は「福島第1原発の事故を予言した書である」。「著者のもとには,マスメディア関係者から事故後の1週間に100を超す取材や問い合わせが殺到した」(208頁)。

 3) ところで,いったいどこの誰が桜井 淳のなにを黙らせようとしてきたのか? その背景事情を探ることになれば,社会科学としての立場で,現代日本資本主義の支配体制論(エスタブリッシュメント論)を大上段から論及しなければならない。

 とくに,前段 の記述中には「幹部,幹部,幹部・・・そして大学教授!」という文字が踊っていた。これら人物のなかには「体制の走狗・提灯持ち・幇間・使い走り」が大勢含まれていた。もちろん「カネで釣られたり買われたり」して「飼われている」者たちである。

 ここに復活した以上の記述は初め,2011年4月27日に書かれていた。だが,前段のように形容され批難される特定の社会集団は,現在の2021年4月になってもまだまだ〈健在〉である。原発の再稼働から新増設までを力説してやまない人士が,いまでも『日本経済新聞』の紙面にときおり登場する。

 ------------------------------