「再生エネルギーの導入・利用」にさいして原発に触れる話題,ほとんど触れられないエネルギー変換効率に関する「原子力の絶対的な不利性」,時代遅れの電力生産方法である原発

 熱交換率(エネルギー変換比率)でたいそう分が悪く,しかも危険がいっぱいである原子力発電について「3E+S」を強調 してやまない原発推進派のみえすいた虚説が,いまだに大声で提唱され流通しつづける不思議

 

  要点・1 「3E+S」を原発にかぎって主張する原子力村的に「欺瞞の論理」

  要点・2 「汚染水」を「処理水」と称して太平洋に排出する政府の傲慢と横柄,東電の逃げの姿勢

【参考記事】

 

 「3E+S」という原発虚説がいまだに亡霊のようにエネルギー産業を徘徊

 その「3E+S」とは,「安全性(Safety)を前提としたうえで,エネルギーの安定供給(Energy Security)を第1とし,経済効率性の向上(Economic Efficiency),環境への適合(Environment)を図ること」だと説明されている。

 補注)この図解は経済産業省が公表しているものである。

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 だが,いまどきこの説明に現実味があるかと問われたら「完全に否(NO !)」である。

 a) まず,原発に関して無闇に強調されてきたその「安全性」を批判する。そもそもが非常に危険な放射性物質原子力(ウラン鉱石から精製する原料)」を核燃料に加工し,使用する発電装置・機械の「物理化学的な特性」は,もともと危険きわまりない構造と機能を備えている。この事実を否定する原子力工学者はいるはずもない。

 だからこそ(逆転の発想!),あえて「安全性」を基礎に置き,格別にその意味づけを強調しなければならない,前掲のごとき「原発をめぐる『3E+S』の概念図」が描かれていた。

 b) つぎに「安定性」とは,もともと融通がうまく効かない「原発の稼働・操業性」,つまり,原子炉運転の技術的な特性上,100%の操業度で稼働させておくことが一番安全である原子炉の負的性格を,こちらもまた逆手にとって表現したつもりである〈苦肉の語句・表現〉であった。すなわち,原発による電力の生産においては,とてもあつかいにくい設備(装置・機械)に頼っているという「技術面の基本特性」が,逆説的に意味されていた。

 c) さらに「経済効率性の向上」とは,原発のエネルギー交換比率が33%である点にかかわっていわれてきた点であった。もっとも,半世紀以上にもおよぶ原発「技術利用発達」史のなかでは, “ 一貫して変化(向上)はなかった” のが,その比率の水準33%であった。

 ただし,最近開発されつつある新型の原発(小型)の場合では,数%程度はその向上が期待されている。というだけの話題であって,原発はもとよりその熱効率(エネルギー変換効率)の面に関しては,改善の余地なしという「劣等生ぶり」を誇ってきた。

 d) くわえて「環境への適合」となると,原発ほど地球環境に対する害悪を及ぼすエネルギー源はない。というのは,科学の立場からはいうまでもない常識である。アメリカにおける原発史のなかで発生したスリーマイル島原発事故(1979年3月)は,アメリカじたいにおいて事後,原発における導入・利用のあり方に多大な影響を与えた。

 わけても「3E+S」に欠けていた決定的な要素があった。それは,原発運転そのものに関した「技術」面での経済効率性の問題ではなくして,その「採算」面での収益(利益)管理の問題であった。この「3E+S」は不思議なことに,後者の論点には直接触れておらず,関連づけようとする意図もない。

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 ところで,スリーマイル島原発事故(1979年3月の「5段階  事業所外へリスクを伴う事故」)は,チェルノブイリ原発事故(1986年4月)および東電福島第1原発事故の深刻度(「7段階  深刻な事故」)よりも,2段階は低い事故と認定されていた。それでも,アメリカの原発産業および発電事業体はそれなりにかなりの衝撃を受け,その後から今日までの経過においては,原発の新増設に勢いを失わせる契機になっていた。

 

 「米国の原発新設は,老朽化との『タイムレース』」だ」『WIRED』2015.11.04 WED 16:00,https://wired.jp/2015/11/04/new-nuclear-plants-in-us/

 この記事は5年半ほど前の内容であるが,こうアメリカの原発産業の実情を説明していた。

 米国内の原子力発電総量は,老朽化した原子力発電所の相次ぐ閉鎖と,新しい発電所の建設の遅れにより,2010年代末に減少する可能性がある。大型の新施設が完成すれば,2020年までに5.5GWの原子力発電能力が新たに追加されるとみこまれている。

  (中略)

 重要なのは,これらの追加はあくまでも「可能性」ということだ。ヴォーグル原発やV.C.サマー原発の建設プロセスは,どちらもかなり遅れている。このまま遅れつづけると,両施設の完成は2020年以降に大きくずれこむだろう。こうした遅延は,巨額の予算超過につながっている。

 新しい原子炉の建設は,ある意味,古い原子炉の運転停止・廃炉とのタイムレースだ。2014年にはヴァーモント州のヤンキー原発(出力600MW)が停止し,マサチューセッツ州ピルグリム原発(出力685MW)や,ニュージャージー州オイスター・クリーク原発(出力675MW)の閉鎖も決まっている。同年11月3日には,ニューヨーク州のジェームズ・A・フィッツパトリック原発(出力84万KW)の停止も発表された)。

 補注)MW(メガワット)は1000kW,つまり1000000W。600MWならば60万キロワット。

 これらの判断は,安価な天然ガス再生可能エネルギーと比べて,原子力発電の採算が悪いと判断されたことによる。

 EIAの予測によれば,米国内の原子力発電総量は,全体的に見れば100GW周辺でわずかに増減するだけだ。だが,より大規模な原発が免許更新を迎える20年後には,原子力発電総量はかなり下がる可能性がある。

 註記)EIAとは,U.S. Energy Information Administration の略称。

 要するに,原発の技術的な特徴(長所?)だとして強調されてきた「3E+S」ではあっても,実は,エネルギーを生産させるための装置・機械として工学的に評価する次元において,それもとくに原発「事業の内容」に関する「効率性の問題」を総合的に分析するとしたら,すでに落第生の烙印を押されていた。

 

  エネルギー変換効率の一覧(発電関係)

 a)「エネルギー効率」とは「入力=出力+損失」および「効率=出力÷入力」で表現される。

 つまり,エネルギー効率とは,広義には投入したエネルギーに対して回収(利用)できるエネルギーとの比であり,狭義には,燃焼反応のうちどれだけのエネルギーが回収できるかという比率である。

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 b)「エネルギー変換効率」 エネルギーを他の形態に変換する場合は,その効率は入力エネルギーと出力エネルギーを,同一のエネルギー単位に換算して求められる。

 火力発電の場合,燃料の保有発熱量が入力エネルギー,電気エネルギーが出力エネルギーであり,いずれもジュールに換算することで効率がえられる。そして,電気エネルギーに変換されなかった分が廃棄熱(エネルギー)に相当する。

 c) 全世界の2008年度発電実績に関していうと,グロス(総量)での効率は39%,最終(実質)効率は33%であった。

 d) エネルギー変換効率の一覧

 ここでの「効率」に関する説明は「前工程・機器等での消費や損失は考慮していない。エネルギー変換工程・機器への直近に投入されるエネルギーと出力との比較である」と断わっている点に,とくに注意が必要である。

 というのは,原発原子力)の場合,建屋など関連の設備・機械および敷地全体に関した外構関係工事面はさておくとして,核燃料を調達して原子炉で焚き発電する工程の「前行」工程(前段が触れている工程)と「後行」工程(バックヤード)に関しては,もとから膨大な関連経費が発生していたし,事後にもそれはさらに発生していく。

 廃炉工程がその様相を代表的に表わすことになっているが,とくに大事故を起こしてしまい現場が破壊された原発については,その「後行工程においてはこれから発生しつづけていく莫大かつ法外な経費」を,予定・覚悟しておかねばならない。この点はすでに,東電福島第1原発事故現場の様相が既知ならしめている。

 以上の説明は,原発原子力を燃料に使用する発電方法)というものは,その科学技術的な特性に関してとなれば,そのほかすべての発電方法と決定的に異質である基本の要因をもっていた。

 つぎに,ともかく各発電方法の「エネルギー変換効率」を一覧しておく。

  変換形態入力       エネルギー 有効出力   効率%  (備考)

 

  火力発電(石炭)      化学    電力    40~43

  コンバインドサイクル発電  化学    電力    50~60  (燃料が天然ガスの場合)

  CHPコージェネ      化学    電力,熱  65~75,<98 (発電効率15~33パーセント,総合効率で65~75パーセントが可能である)


  原子力発電         原子力   電力    33  (独版には「効率は10%」の注意書きが〔も〕ある)

  水力発電          力学    電力    80~90  (水を高所に上昇させる過程を含む揚水発電の効率は70%程度)

  風力発電          力学    電力 <59


  太陽光発電      電磁波(太陽光) 電力 5~40 (普及品12%~21%,理論限界85~90%)

  MHD発電(電磁流体発電) 熱源    電力 <30

 

  全世界の発電効率      すべて   電力 39 (総合効率は33%,電力の内部消費,送電ロスなどで減少。2008年度の実績)

 このなかでも原子力は,エネルギー変換効率でもっともさえない,将来性のない電源である事実が分かる。この判断は電源として利用されている普及度も考慮していう点である。原発はどだい,半世紀以上も熱効率(エネルギー変換効率⇒)33%を続けていて,これ以上高くなっていなかった。

 というのでは,蒸気機関車の熱効率10%程度はさておき,ディーゼル機関車の熱効率35%程度を比較の相手に挙げてみたりもできるが,前段に触れてあった問題:「3E+S」じたいにまとわりつく固有の不利:欠陥に照らして考えるに,あるいはまた廃炉工程から生じる多大な不利に関連させていえば,これからさきの長い将来に向けても,原発という装置・機械が発生させつづけていく負担は,一言ではとうていいいつくせないほど膨大・甚大である。

 ここまで説明するだけでも,原発コスト「論」がそれこそ〈魔物〉論的な話題になって来るほかない点は,容易に理解できるはずである。つぎの ④ が本日の新聞報道から拾う話題となる。


 「古い石炭火力,30年にかけて廃止か更新 最先端の発電効率基準に,全廃に踏み込まず」日本経済新聞』2021年4月10日朝刊2面「総合1」

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 経済産業省は温暖化ガスの排出量の多い石炭火力発電所を国内で減らすため規制を強化する。新たな基準などで発電効率の高い発電所に絞りこむ。低効率の古い石炭火力の多くが2030年にかけて休廃止や更新が必要になる。欧州を中心に全廃をかかげる国もあり,世界の流れとは溝がある。

 補注)石炭火力の発電効率で最良水準は43%である。ここでは,炭酸ガス(CO2 )を稼働中の原発は(いっさい・完全に)出さないなどと,ひどい「誤定義をおこなっている事実」も踏まえていうことにする。原発のその効率は33%であるゆえ,地球環境の温暖化問題に関して石炭火力と原子力火力とでは,はたしてそのどちらかより有利な(=より無難な)発電方法になるかなどと議論することじたい,いささかならず無意味であるという所感を抱かざるをえない。

〔記事に戻る→〕 非効率な石炭火力の縮小に向けては,梶山弘志経産相が20年7月に新たな仕組の導入の検討を指示した。総合資源エネルギー調査会経産相の諮問機関)で議論を進め,〔4月〕9日の会合で新たな規制の方針をとりまとめた。今後は関係する省令の見直しを進める。 

 石炭火力は全国に150基ある。電力会社ごとに石炭火力の発電効率を43%にするよう新たな基準を設ける。現状は石炭だけでなく液化天然ガス(LNG)や石油も含めた火力発電の全体としての指標で,44.3%だ。

 石炭火力は最新鋭の設備でも発電量あたりの二酸化炭素(CO2 )排出量がLNGの2倍以上ある。石炭に限った基準にし,他の火力の効率化では補えないようにするのがポイントだ。

 電力会社で構成する電気事業連合会は「43%は非常に高い目標だ」として簡単ではないとの認識を示す。43%は石炭火力で最高水準にあたる。経産省の集計では大手電力の発電所のうち2019年度時点で40%以上は31基で,43%以上は2基だったという。2030年にかけて発電効率の実績が低い石炭火力の廃止や更新が相次ぐと想定される。

 大手電力ではないが,宇部興産山口県宇部市に2つの石炭火力をもつ。同社はいずれも発電効率43%はクリアしているとみている。経産省は基準を達成できなかったとしても罰則や強制的な措置は設けない方向だ。基準より低い場合に指導・助言で実効性を担保するという。

 電力会社は対応を迫られる。全国7カ所に計14基の自前の石炭火力をもつJパワーは,総発電量のうち3割以上を非効率な石炭火力が占める。「高効率を促すシステムを導入するなどして達成へ尽力する」と話す。

 日本は燃焼時にCO2 を出さない水素や,アンモニアを石炭に混ぜて燃やす技術で世界に先行している。排出したCO2 を回収,貯留する技術開発も急ぐ。石炭火力は日本全体のCO2 排出量の約4分の1を占める。政府は2050年の温暖化ガス排出量実質ゼロをかかげており,石炭火力の大幅な縮小が必要だと判断した。

 ただ,2019年度の国内の発電量のうち,石炭火力は32%を占め,37%のLNGに次いで2番目に多い。原子力発電所の再稼働がなかなか進まないなかで,一定程度は必要とみて高効率のものは稼働を認める。(引用終わり)

 この『日本経済新聞』の記事は,原発に関しては最後の段落で言及していた。石炭火力の問題を「炭酸ガス排出⇒地球温暖化」にむすびつける議論は,それじたいとしては当然であった。だが,ただしそのためなのか,原発の再稼働のみならず新増設まで示唆したい口調(語感と論調)が感じられた。

 最後の文句「原子力発電所の再稼働がなかなか進まない」という修辞は,原発の再稼働を所与の前提にしておきた “いい方” であった。なかんずく,日本経済新聞社の立場は原子力村の一員として原発再稼働・推進派とみなされる。

 しかし,日経のこの立場は,原発のエネルギー交換比率(熱交換比率)が33%だという事実は,これまで棚上げしてきた。それだけでなく,この「原発の害悪性」には触れずにひたすら盲目的な態度でもって,石炭火力の代替「火力」に「原発が有用である」と語りかけたい気持をこめて,前段の修辞も使い「記事を締めて」いた。

 「原子力発電所の再稼働がなかなか進まない」技術経営的な理由と社会経済的な事情を,まさか日経の編集委員たちがしらぬわけがない。石炭火力で熱交換比率が43%,原発(火力)のそれは33%であり,こちらはさらに,廃炉工程からは比較にならないくらいの経費が要求されつづけていく。それが「原発のいま」における実際である。

 日本経済新聞社は,当面する石炭火力の代替問題としては “原発を想定するほかない” かのように,それも誤導を狙った記事(奇妙な文章)を書くのは止めるべきである。なぜ「再生エネルギー」といえばいいところを,故意になのか原発が必要だといいかえねばならないのか? 日本経済新聞社原子力村の一員だと指摘する事由があった。


  原発に批判的な立場にある『東京新聞』の報道記事

 最近の問題としては,2011年の「3・11」東日本大震災に惹起された東電福島第1原発事故の後始末問題に明らかになっているとおり,原発が外部経済に経費(社会的責任費)を押しつけ負担させる事態が,いっこうに収まる気配すらありえない「問題のひとつ」に関して,『東京新聞』が報道した記事を2点紹介しておく。

 1)「事故を起こしたのは東電なのに…『顔』も主体性も見えぬまま  原発処理水の海洋放出方針決定へ」『東京新聞』2021年4月8日 06時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/96486

 世界最悪レベルの事故から10年,東京電力福島第1原発のタンクで保管が続く処理水の海洋放出処分に向け,政府が最終調整に入った。菅 義偉首相は〔4月〕7日,放出に反対する漁業団体の代表者らを官邸に呼び,みずからは出向かなかった。

 一方,東電の小早川智明社長は柏崎刈羽原発新潟県)の不祥事で謝罪の日々。当事者不在のまま,処分方針が決まろうとしている。 

  ◆ 疑念と不信で「反対」10回 ◆

 菅首相と全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長らの面会は午後4時前に首相官邸で始まり,わずか20分で終わった。

 「(海洋放出に)反対という考えは変わらない」

 記者団の取材に応じた岸会長は「反対」という言葉を10回使って,不快感をあらわにした。「東電の近々の不祥事は,安全性が担保されるかを考えると,きわめて強い疑念を抱かざるをえない」とも強調した。

 漁業者から不信を抱かれている小早川社長は,この面会の1時間半前,新潟市で記者会見。柏崎刈羽原発でのテロ対策不備をめぐり謝罪するなどおわび行脚のまっただなかにいる。

 首相と全漁連会長の面会について,小早川社長は「コメントは差し控える」。処理水処分をめぐり,原子力規制委員会の更田豊志委員長は「トップの顔がみええない」と東電を批判しているが,最終局面でも当事者としての「顔」を隠した。(引用終わり)

 以上,「3・11」の東電福島第1原発事故「後始末」に関係させて,汚染水問題の話題を報道した記事であった。原発事故が外部経済的にばらまきつづけている加害=損害は,いつ果てることかすら分からない状態のまま,これからも確実に残っていくものである。これがまた,安倍晋三が “アンダーコントロールだ” といってのけた原発の事故現場をめぐる困難の一例であった。ところが,菅 義偉はその事実にフタをかぶせたり,底に穴を空けておく意向である。

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 2)「『政府は押し切るのか』原発汚染処理水の海洋放出に福島の漁業関係者が憤慨」『東京新聞』2021年4月8日 06時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/96490

 東京電力福島第1原発で保管が続く汚染水を浄化処理したあとの処理水をめぐり,菅義偉首相は〔4月〕7日夜,近く処分方法の方針を決めると明言した。政府が念頭に置く海洋放出処分となれば,漁業関係者への打撃は必至で,福島県や隣接する茨城県からは強い反対の声が上がった。

 福島県北部の新地町の漁師小野春雄さん(69歳)は「全国漁業協同組合連合会(全漁連)も福島県漁連も絶対反対というなか,政府は押し切るのか。原発事故の被害を受けた地元や漁業者への説明も足りない。十分に声も聞かず,話し合いもせず決めるのか」と憤慨した。(引用終わり)

 原発コスト論はこうした次元・領域の現実問題も考慮に入れた吟味をしなければならなかった。単にエネルギー変換比率の問題に終始しうる論点でない事実は,誰にでも理解できるはずである。

 それに現状のコロナ禍にもまだめげずに菅 義偉は,1年延期になっている2020東京オリンピックの開催を本気で考えているのだとしたら,狂気の沙汰でしかありえない。だが,東電福島第1原発事故における汚染水の太平洋に向けての排水問題は,この五輪を開催するつもりであるこの現首相の意向に即した方向性が明示されている。

 政府は,東電福島第1原発事故の後始末として未解決である汚染水排出の問題については,それを薄めて太平洋に排出してしまえば,それでこと足りるといった姿勢である。東電や日本経済新聞社もそうであるが,そうした措置が必要である「汚染水」のことを「処理水」と呼称してきた。

 汚染水とよばずに処理水といったところで,最終的にはトリチウムという核種が含まれた「その汚水」を太平洋に放出することに変わりない。トリチウムは人間に害がないなどと,その科学的な根拠(あるいは確実な解明)もなく,強調されている。そして,この疑問など一顧だにせず,原発事故現場から流出が止まらないでいる汚染水を「太平洋に垂れ流すしかないF1の日常」を,わざと作りあげようとしている。

 政府は,事故を起こしていない原発(海外各国)であっても,平常時からトリチウムを排出しているといい,それば原発の現状だとして開きなおった態度でいる。東電福島第1原発事故から湧出する汚染水の問題を「風評被害」だけといいぬけ,問題を矮小化するのに懸命である。

 しかし,その風評被害であってもなくても,福島県浜通り地区の漁業従事者が原発事故の後遺症である被害を受けつづけている事実は,これからも継続していく。ともかく,日本は東電福島第1原発事故の後始末を,これから半永久的におこなっていく運命にある。

 補記)わし(  ↓  )は,歳のせいで頻尿気味……。

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