コロナ禍における自殺の問題,それも女性の20歳台・30歳台が増加している現象

 本ブログは昨日〔2021年4月12日〕,「コロナ禍が世界の人口に与える影響は『出生数の急減』として現象,日米欧では1~2割減になると予想されているが,とくに日本政府の対応は?」と問う記述をおこなっていた。

 「それでなくとも人口減少傾向に抑制がかからない日本において,出生数・率の落ちこみが少しでも阻止できるか疑問だらけである」にもかかわらず,

  「要点・1」として「日本の人口減少阻止対策は弱体」であり,

  「要点・2」として「いまだけ・カネだけ・自分だけ」の現自公民政権に人口問題をとりあつかいうる政治的能力はないし,もともとその関心が希薄」であると,自殺に関した報道をとりあげ議論してみた。

 

 本日〔4月13日〕の『朝日新聞』朝刊13面「オピニオン」には,ちょうど自殺の問題を議論する人物が登場していた。

 昨日の話題にとりあげていた「自殺」の話題に関してだが,時宜をえたインタビュー記事になっていた。

 最初にこの記事を引照して議論する前に,「自殺の定義」に関して倫理学的考察をくわえた論者の意見を聞くなど,あれこれの議論もしてみたい。

 

  「自殺をめぐる倫理学的考察-カント自殺論に即して―」中村修一(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程,哲学哲学史

 あらためて自殺について考えるなら,以下のようになろう。理想的コミュニケーション共同体の存在(実現)のためには,現実にコミュニケーションをおこなう人類の生存が確保されていなければならない。

 

 すべての人間が自殺を図るとすると人類は滅亡し,理想的コミュニケーション共同体の存在(実現)の可能性も否定される。自殺を許容するかぎり,こうした事態に陥る可能性を否定できない。

 

 よって,自殺は道徳的に非難されるべき行為となる。したがって討議倫理学に拠れば,自殺を避けるべしという規範は正当化されうると考えられよう。

 註記)大阪大学大学院医学系研究科 医の倫理学教室『医療・生命と倫理・社会』第6巻,2007年3月20日,73-74頁。なお改行を入れた。

 この自殺に関する命題的な定義と,そしてそれから導出される倫理規範は,要するに「自殺を回避すべき必要性(必然性?)」になる。しかし,現実には本ブログ・昨日の記述のなかでとりあげた報道記事にように “自死する人びと” が,世の中から完全になくなることはない。

 また,コロナ禍のもと,とくに問題として注目される女性の自殺者が相対的・絶対的にその数を増やしている現状については,すでに専門家たちの議論がなされている。


  自殺問題をどう理解したらよいのか

 1) すでにとりあげたが,ユーチューブ動画サイト『一月万冊』2021/04/11(公開)は,題名を「コロナ対策を妨げる4大馬鹿四天王自民党政治家と吉村知事。兵庫と大阪は完全医療崩壊新型コロナウイルスというB29に竹槍で戦えというのか? 元朝日新聞記者ジャーナリスト佐藤 章さんと」とした記事を公表していた。

 まさしくこのとおりである。コロナ禍対策の現状は,日本国厚生労働省を率先指導しなければならない政府自身が,いまだに「東京オリンピックの開催」にこだわるあまり,あるいは「Go To トラベル」キャンペーンを再開させたくてうずうずしている自民党幹事長がとぐろを巻いているかぎり,新型コロナウイルス感染拡大「問題」を適切に抑えこむ方策はみつからない。

 五輪の開催都市である東京都の首長は,コロナ対策についてはいまだに,つぎのように発言していた。

 「小池知事『変異株と素手で闘うためにみなさん協力を』まん延防止適用で」『東京新聞』2021年4月12日 13時09分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/97537  といったのを聞いたとき,この都知事はコロナ禍に対して打つ手がもうないものだから,このように竹槍精神以前の「素手で闘え(闘っている!)」と来た。彼女の口からは,もはや信じられないような突飛発言まで登場した。

 大阪府(市)の関係では,テレビ番組のなかに登場した知事が,マスク会食の方法を説明する場面を提供したりしていた。こちらもいったいなにを考え,やっているのかという,実に情けない印象を受ける。その前にそれとは別に,コロナ禍対策としては医療専門的になすべき基本の対策がある。まるで古代や中世における呪術療法とみまがう “トンデモ・レベルの発言” が,東西の大都市首長の口から泡のように吹き出ている。

 われわれ市民・庶民は,うがち過ぎだなどという以前に,こうした「▼カ・▼ホ的な感性」しかもちあわせていない「都道府県の知事(首長)たち」が,これまでもそうであったけれども,対・コロナ禍に対面させられて披露してきた演技(パフォーマンス)は,このコロナ禍にまともに真正面より立ち向かいうる姿勢ではなかった。ただ,自分たちが政治家(政治屋)として,どう目立つかばかりを意識していたに過ぎない。

 2)「2020年の自殺者11年ぶり増加。2万1081人の性別や年代で見えてくること
統計から,女性や若年層で増えたことが全体の増加要因・背景と読み取れる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」,濵田理央(Rio Hamada)『HUFFPOST』2021年03月16日 12時41分 JSThttps://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60500144c5b6264a8fb65908

 この濱田里央の,2020年における自殺者に関する分析・整理は参考になる。

 --厚労省は〔2021年〕3月16日,警察庁の統計をもとに,国内における2020年の自殺者が,確定値で2万1081人だったと発表した。前年の2019年より912人(約4.5%)増え,11年ぶりに増加に転じた。

 自殺者は,男性が11年連続で減少している一方で,女性は2年ぶりに増加。統計から,女性や若年層で増えたことが全体の増加要因・背景と読みとれる。

 前年からの増加率は女性が15.4%(935人),未成年は17.9%(118人)。未成年のうち,女性は44%(95人)の大幅増だった。コロナ禍の影響や生活の変化などが,自殺者が増えた背景の可能性がある。

 a) 月別で見ると,1月~6月にかけてはおおむね例年を下回る水準だったが,7月から急増。もっともも多かったのが10月で,2000人を超え突出している。

 補注)ここの指摘は,2020年3月から経済社会への影響がはっきり生じてきたコロナ禍が事後,自殺者を増やす背景として効いてきた時期が「7月以降」になっていた点を教えている。

 b) 年代でみると,50~60代を除く各世代で前年より増加。20代がもっとも多い404人(19.1%)増で,10代も118人(17.9%)増えた。一桁だった他の世代と比べて,若い世代の増加率が顕著だった。

 c) 職業でみると,前年と比較して,自営業・家族従業者がもっとも大きく減少(144人,10.2%減)した一方で,被雇用者・勤め人がもっとも大きく増加(540人,8.7%増)した。増加率では学生・生徒等が17.0%(151人)ともっとも多かった。

 d) 増加の背景を統計全体でみると,減少傾向だった自殺者数が7月ごろから急増し,とくに女性や若年層で増えたといった傾向が読みとれる。

 この背景や要因に関して,厚生労働大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」(JSCP)が〔2020年〕10月,コロナ禍の自殺の動向の分析結果を報告した。そのなかで,人気俳優の自殺報道や,新型コロナウイルスによる生活環境の変化などが影響している可能性を指摘している。

 e) 女性の増加傾向については,経済生活問題や勤務問題,DV被害,育児の悩み,介護疲れなどさまざまな問題が背景にあることを指摘。「コロナ禍において,自殺の要因になりかねない問題が深刻化していることが,女性の自殺率の増加に影響を与えている可能性がある」とみている。

 f) 若年層では,とくに女子中高生から「休校明けでクラスが変わり,馴染めなくて辛い」「家族がずっと家にいていらいらしていて,ストレスのはけ口にされている」といった,コロナ禍の影響がみられる相談が相次いだという。(引用終わり)

 以上のごとき社会問題としての自殺は,どちらかというと,NPOやNGOによって改善・解決に向けて取り組まれている場合が多く,政府・自治体からの取組はいまひとつ通り一遍であるとしか受けとれない。

 しかも,以前からある問題に加重するかたちとなって,コロナ禍のもとに新しく生じている困難が「とくに女性である彼女ら」に向けて集中しがちである傾向,いいかえれば「社会的に弱い立場に位置する彼女ら」のところに,社会矛盾が向かいがちである傾向が観取できる。

 3)「女性の自殺者,過去2番目の伸び率… コロナ禍の生活苦など影響か」『読売新聞』2021/03/16 11:40,https://www.yomiuri.co.jp/national/20210316-OYT1T50120/(内容は重複するが,いとわず全文を引用する。読売新聞なりに指摘されている論調に特徴がないわけではないゆえ……)

 厚生労働省警察庁は〔2021年3月〕16日,2020年の自殺者数が確定値で前年より4.5%(912人)増の2万1081人だったと発表した。

 女性は同15.4%(935人)増え,1978年の統計開始以降,雇用環境が悪化した1998年の23.5%増に次いで2番目に高い伸び率だった。厚労省新型コロナウイルスの流行で生活困窮や家庭内などの悩みが深刻化したと分析している。

 1月に公表した速報値と比べて162人増えた。

 自殺者数が前年を上回るのはリーマン・ショック直後の2009年以来,11年ぶり。男性は前年比0.2%(23人)減の1万4055人で11年連続で減少した。一方,女性は2年ぶりに増加に転じて7026人だった。

 女性の自殺者を職業別でみると,高校生が140人と前年比で75%増加したほか,勤め人や主婦,年金生活者など幅広い世代で増えた。動機別では,うつ病などの健康問題,親子や夫婦関係の不和などの家庭問題がそれぞれ同1割増だった。

 一方,男女合わせた全体では,20歳代が前年比19%増の2521人に上った。動機別では,多重債務や生活苦などの経済・生活問題が同2割増えた。

 厚労省の担当者は「緊急事態宣言や在宅勤務の普及で家族と過ごす時間が長くなり,不和やストレスを抱える人が増えた。雇用環境の悪化も長期化し,若年層の生活困窮による自殺者増が目立った」と分析する。

 4)「『コロナ禍で急増する日本の自殺者数』。速いデータ開示に米国が注目」『Forbes JAPAN』2021/02/18 06:30,https://forbesjapan.com/articles/detail/39685

 この記事が指摘するのは「日本の自殺統計」の有する特性である。そして,当該の医療専門家が指摘した対策はこうである。以下では,前後する記述に関連のある段落のみ引用する。

 --コロナ禍でのあらゆるストレス要因(失業,政情不安,死別の悲しみ,身体的な健康問題など)によって,人びとのメンタルヘルスが悪化するのはもちろん,その結果として自殺者が増えることも非常に懸念されるという。

 〔とくに〕米国ではほかの高所得国と同様,自殺率の顕著な増加はみられないが,その根拠となるデータは最新のものとはいいがたく,地域も限定されている。〔くらべてみるに〕 日本では自殺者のデータがリアルタイムで開示されるため,すぐに分析して対策を講じることができる。一方,米国ではずっとデータ待ちの状態だ。

 特定のグループの自殺リスクが高い,もしくは異なる影響が懸念される場合,自殺予防のための介入策をもっとグループごとに個別に考える必要がある。

 補注)この 4) の記事を参照したのは,その種の問題(特定の集団ごとに個別に分けて自殺の問題を検討すること)が強く意識されねばならないからであった。

 たとえば女性のうつ病は男性の2倍多いことがしられているが,多くの女性はうつ状態になっても発見に至らず,したがって治療を受けることもない。そうして見過ごされてしまうのだという。

 「自殺リスクの早期発見のためのスクリーニング検査を日常的におこなっているところは少ないので,必要な助けがえられないまま手遅れになってしまう」。

 それでも,ひとつ幸いな事実がある。それは,自殺は未然に防げるということだ。電話相談の増加や自殺願望の高まりといった傾向は,それだけ人びとが苦しみを抱え,助けを必要としている証拠なのだ。

 「あらゆる行政レベルにおいて,政治家は自殺防止対策に最優先で取り組むべきだ。これは精神保健制度だけの問題ではない。自殺を未然に防ぐことを,私たち全員の義務とすべきだ」。(引用終わり)

 さて,ところである,日本のいまはどうなっているか? コロナ禍の最中に増えている女性たちの自殺問題などそっちのけで,あいもかわらず「利権化・私物化政治」が横行している。それでも,東京オリンピックを1年遅れであっても開催するのだといっては,聖火リレーを3月25日から「本当の復興などままならぬ福島の事故原発現場」近くから発走させていた。脳天気というか無神経……。

 「オリンピックの開催」と「コロナ禍対策・予防」は相反するほかない「スポーツ大会行事と医療対策の問題」同士であって,前者を強行することになったら後者は全面的に妨害される。それでも,オリンピックのためにする関係もあってか,「Go To トラベル」キャンペーンも再開したいともくろんでいるのが,菅 義偉政権であり,自民党幹事長二階俊博である。

 自民党の総裁も幹事長も,まさに「亡国の反・国民的な立場に立つ政治屋」である。安倍晋三も同列というか,その路線を以前から敷いてきた政治屋であった。ゆえに,この3名をとらえて「3バカ大将」と蔑称してよいし,さらに東京都知事小池百合子もくわえるか,あるいは大阪府知事吉村洋文もくわえるかすれば,「4馬鹿四天王」の陣容がみごとに構えられることになる。

 なかでも都知事は,2020年3月時点ですでに,東京アラートだ,ロックダウンだなどといった,コロナ禍に対するコトバ遊びを始めていた。だが,1年以上が経った現在になっては,もうなす術がなにもみつからないようで,前述に紹介したように「いうにこと欠いて」ただ『変異株と素手で闘うためにみなさん協力を』まん延防止適用で」(『東京新聞』2021年4月12日)などと,敗北宣言に等しい,それも無駄口を利いていた。この知事はすでに東京都の有害粗大ごみになっていたどころか,新宿の都庁に居るだけで,コロナ禍対策を妨害するだけの人物になりはてていた。

 コロナ禍対策について過去1年を振りかえってみると,政府にくわえて東京都や大阪府は,肝心要となる基本的な対策をろくすっぽ,はたしてこなかった。

【参考記事】

 「PCR検査」の徹底はけっしておこなわず,「営業自粛」をさせても業者がまともサバイバルできるために必要な資金支援はせず,そのために実際には廃休業を余儀なくされた自営業者や零細企業は絶えない。最近になってようやく始まったワクチン接種もベタ遅れに経過しており,その実際ときたら,先進国のなかでは最後尾をヨタヨタと着いていくだけで精一杯という体たらくぶりであった。

 ところが,五輪組織委員会は,2020東京オリンピックの開催だけは1年遅れであっても絶対に開催するのだと,こちらに関する蛮勇だけは下していた。コロナ禍「予防対策」とは絶対的に相矛盾するほかない国際大運動会を,なにがなんでもやりぬきたいつもりである。

 だが,これほど馬鹿げた意思決定はない。「国民の生命・健康」よりも「五輪貴族のための国際大運動会」を開催させることが,どれほど大事な使命になりうるというのか? 凡人の神経には理解の域を超えている。五輪などやっている場合かと考えるのがしごく当たりまえな,現時点において日本内外をかこむ諸情勢に対する認識である。

 この国の現状における医療体制は,コロナ禍を本気で優先している様子をうかがわせていなかった。仮に,東京オリンピックの開催のために浪費してきた予算を,もしもコロナ対策に振り向けることができれば,この疫病問題の対策は大幅に改善・向上させることができる。ところが,安倍晋三や菅 義偉や森 喜朗などは,五輪を開催させて「自分のためのレジェント創り」を達成するほうが,われわれ「国民の生命・健康」よりもよほど大切なのである。

 ここまで記述が進んできたところで,本日の『朝日新聞』朝刊「オピニオン」に掲載された「最近における自殺」の問題に関する「インタビュー記事」の紹介に移りたい。

 「〈インタビュー〉生きるのをやめたい国 NPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表・清水康之さん」朝日新聞』2021年4月13日朝刊13面「オピニオン」

※人物紹介※ 「しみず・やすゆき」は1972年生まれ,NHKディレクターを経て2004年にライフリンク設立,自殺対策の法制化に携わる。SNSや電話で相談事業も実施。

 日本の自殺者数が,11年ぶりに増加に転じた。女性,そして若者の「生」が脅かされたのが特徴だという。この数字が物語ることはなんなのか。「死にたい」というよりも「生きるのをやめたい」という願望が語られる社会を,「未来が脅かされている」とNPO法人ライフリンク代表の清水康之さんはいう。

 付記)以下では記者は◆,清水は◇。

 ◆-1 2020年,国内の自殺者数は前年より4.5%多い2万1081人で,2009年以来の増加に転じました。新型コロナ禍が影響しましたか。

  ◇-1  「転機は,昨〔2020〕年2月末の『一斉休校』宣言でした。休校になって働きにいけない保護者は,当然収入が減る。もともとギリギリの生活をしている人にとっては,死活問題です。借金を重ねたり,家族関係が悪化したりしかねない。これはまずい,と」

  補注)その「一斉休校」は,当時の首相安倍晋三が全国一律に適用させる非常措置として国民たちに要請した〈宣言〉であったが,当時,コロナ・ウイルス感染者が1人も出ていない地方の県にまで,半強制的に一斉休校させる事態を作りだしていた。

 国家の最高指導者が,自分自身の脳細胞の出来具合をまともに認知できていないせいで,日本はコロナ禍に対する当初の対応からして,要らずして大きな齟齬を生んだり,勇み足も犯していた。

 そのために社会全体に対して無用で不要な混乱がもたらされ,経済活動にもよからぬ影響が余計に振りかかる始末にあいなっていた。「ベンチがアホやから……」という某プロ野球投手の愚痴は,なにも野球界にかぎっていわれるものではない。

  「私たちの念頭にあったのは,1998年の自殺の急増です。このときは,中高年男性を中心に,前年よりも8千人以上多く自殺で亡くなりました」

 ◆ 山一証券の経営破綻(はたん)などが相次いだのが1997年でした。

  ◇ 「当時は上場企業に就職すれば安泰という時代です。そのため,正規雇用で働く人へのセーフティーネットが整備されていなかった。それも大きな要因となりました」 「同様の自殺リスクの高まりを予想しましたが,予想とは違う経緯をたどりました」

 ◆ なにが違ったのでしょうか。

  ◇ 「まず,〔2020年〕4,5月に自殺者数が急減しました。パンデミックをはじめとする社会的危機のあと,自殺者数は減少するとされています。9・11後のアメリカや東日本大震災直後もそうでした。それでも,前年に比べて15%以上減ったのには驚きました」

  「理由は,命の危険を感じて多くの人が防御的になったことと社会的な連帯感の高まりにあると考えています。もともと自殺念慮を抱えていた人も『自分だけがしんどいわけじゃない,と感じた』といっていました。みんなで我慢してこの危機を乗り越えよう,という感覚になった」

 ◆ つまり,社会の危機が,個人の抱える苦しさを弱めた,ということですか。

  ◇ 「そうです。ただ,あくまで短期的に,です。長い時間軸でみれば,社会的な危機は,自殺リスクを高めていきます。比喩的にいえば,引き金がひかれるのが一時的に止まっただけで,弾はどんどん込められていた」

  「収入が下がる。失業が増える。家庭内でのトラブルが増える。こうした問題が玉突き的に起きてくる。いったんは『自分だけが苦しいわけではない』と思えても,その後は問題に直面させられる人とそうでない人の格差も顕在化します。データをみても〔2020年〕4,5月で自殺者数は大幅に減りましたが,7月以降は増えていきます」

 ※  他日の記述で利用した関連する図表をここで挿入しておく。

 

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  補注)これは埼玉県の自殺統計である。下の日本全体のそれとほぼ同一傾向を記録している。

 

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 ◆-2 自殺者数を性別でみると,男性の微減に対して,女性が15%増。この差をどうみますか。

  ◇-2 「まず前提として,自殺者数は2010年以降,減少傾向にありました。この10年で,3万人超だったのが約2万人まで減った。これは主に,大きな割合を占めてきた中高年男性の自殺が減ってきたからです。自殺は,『追いこまれた死』であるとして行政が取り組む課題になった。相談窓口の拡充など対策が全国に広がりました」

  「コロナ禍で,これだけ経済がストップしても男性の自殺者数が増えなかったのは,雇用調整助成金をはじめ,政府の経済対策が一定の役割を果たしたということでしょう。ただ,正規雇用の人に対して,にとどまってしまった」

  「女性の自殺者数を細かくみると,〔2020年〕7月以降に前年比4割増と大幅に増えます。『雇用の調整弁』などと呼ばれる非正規労働者に女性の割合は大きい。さらに家庭内の暴力でも女性は被害者になりやすい。コロナ禍が強いた育児や介護の負担増も女性に偏りました。正社員は守れたが,非正規労働者は守れなかった。その差が男女差に表れた可能性があります」

  「さらにコロナ禍では,報道をはじめとしたメディア環境が自殺リスクを大きく高めることがはっきりしました」

 ◆ どういうことですか。

  ◇ 「自殺者数の傾向は7月と9月のある日を境に大きく変わっています。いずれも著名な芸能人の自殺が報じられた翌日です。それから1週間程度をみると,自殺者数が1日100を超える日があるなど前年比で2倍近い日が続いています」

 ◆ 自殺の方法を詳細に報じない,相談窓口の情報をくわえる,といったWHO(世界保健機関)の指針については,多くのメディアが守り,実践していました。どう評価しますか。

  ◇ 「改善はされてきたと思います。ただ,『速報』の段階では記事のなかに自殺の詳細についての記述や,相談窓口の情報が欠如したものもあった。スマホなどを通じてしる速報は,いわば『不意打ち』みたいなものです。インパクトが大きい」

  「自殺リスクをこれだけ高める芸能人の自殺をそもそも速報する必要があるのか,と個人的には思います。ひとたびガイドラインを守っていない情報がネットに出てしまうとSNSで一気に拡散します」

 ◆-3 そもそも,どういう時に人は自殺するのでしょうか。

  ◇-3 「自殺のリスクは,生きることへの阻害要因と促進要因で決まります。阻害要因とは,失業やいじめ,虐待などです。そして,促進要因は自己肯定感や未来への希望,手応え。いくら失業という阻害要因が大きくなっても,生きることへの安心感という促進要因が上回れば自殺リスクは高まりません」

  「阻害要因も促進要因も,個人レベルでどうにもならないものが少なくない。その意味で,昨〔2020〕年の自殺者数のデータをみると,気になることがあります」

 ◆ なにですか。

  ◇ 「若者の自殺の急増です。休校宣言明けの6月と,短くなった夏休み明けの8月に自殺が増えました。小学生から高校生までの8月の自殺者数は前年同月の2倍です。『いのち支える自殺対策推進センター』の分析では,『学校 いきたくない』という検索ワードが増えたあとは,実際に自殺が増えています。これはコロナ禍以前から問題でした」

  「相談窓口での話からみえてくるのは,若者の生きるモチベーションの低さ=促進要因の弱さです。『死にたい』というよりも『生きるのをやめたい』という子が多い。実際にさまざまな調査データをみても,海外の若者と比較して日本の若者の自己肯定感の低さは顕著です。しかも年齢が上がっていくごとに,その傾向が高まるというデータもある」

  「たとえば失業といった同じ『衝撃』があっても,いずれ起業家になりたいという希望をもつ人と,周囲の評価におびえつづけている人では,自殺リスクへの影響はまったく違う。生きる促進要因が弱いと『死』へのハードルが下がります。とくに若者がそうだというのは深刻です」

  「子どもは,これから大人になっていく人たち,つまり日本の未来です。それが自殺におびやかされている」

  補注)ここでは,少子化の傾向に対してじわじわと拍車をかけてきた要因そのものが,ここに指摘されている要因によってさらに強まるほかない事実が指摘されている。こういうことである。

  たとえば,いま10歳の子どもがいるとして,この子どもが10年後に20歳になる。その時期になって,前段で触れられているような精神状態に追いこまれている彼ら彼女らが,自殺欲望を抱きやすい日本社会になってきたのではないか,という心配が強まっている。

 以上のごときに指摘される問題状況になっている。コロナ禍は,最近の日本社会におけるそうした困難の発生に対して,さらに悪影響をくわえている。

 ◆-4 どの時代もそうだったといえませんか?

  ◇-4 「確かに日本はかつて自殺大国といわれるほどで,大人の自己肯定感も高いとはいえません。一方で,ある年齢以上は,経済が右肩上がりだった社会を経験し,漠然とした希望をしっている。若い世代にはそうした経験がない。希望はどんなものであれ,自分でみつけないといけなくなっている」

  「希望がみつけられさえすれば,チャレンジをして,時に成功したり失敗したりする自由を謳歌(おうか)できる。でもその最初のところでうまくいくかどうかは,偶然も含めた個々の力や置かれた状況に大きく左右されてしまう」

  「自殺問題が示すのは,特別な人が特別な理由で死んでいるわけじゃない,という事実です。誰にでも起こりうるし,自分の身のまわりでも起きかねない。遺族の多くが,『まさか』という言葉を使います。ですが2万人が自殺しているという数字の意味は,社会全体でみると自殺は『まさか』ではなく『またか』なんだということ。個々人では『まさか』,社会的には『またか』のギャップを埋めなければいけない」

 ◆ そのギャップはどうなってきた,とみていますか。

  ◇ 「この四半世紀で大きく変わってきたと思っています。自殺は個人(他人)の問題から社会の問題になった。そしていま,社会問題から『私たち』の問題になりつつある」

  「コロナ禍は,日本社会が,いや世界中の人が自分の死におびえた経験でもありました。『困っている人に手を差し伸べる』ではなくて,『手を差し伸べる』ことを通じて自分もまた助けられる社会にしていく。そういうおたがいさまの社会が必要だという感覚が広がりつつあると思いますし,そうしないといけない。自殺のない社会とは,誰もがおびえて生きなくていい社会です」(聞き手・高久 潤)(引用終わり)

 以上のインタビュー記事を読んでみても,いまの日本政府はいったいなにをやっているのかと,深甚なる疑問を抱くのは,本ブログ筆者1人だけではあるまい。

 もちろん自殺の問題をとりあつかう官庁の関係部局がないわけではない。だが,そもそもこの国の頂点に立つ人間指導者自身に問題があり過ぎて,自殺の問題がもっと前面にもちだされて吟味されたり対処されたりしないまま,実際には弾かれてしまう現状にしか映っていない。

 コロナ禍の第4波が襲来しはじめている国家次元の社会衛生環境にあっても,なお「東京オリンピックの開催」を必死になって画策している菅 義偉(安倍晋三もそうであったが)は,どうみても政治家落第である。現状において日本が置かれている経済社会の状況が,いったいなにを最優先にして政治の対象にすべきか,一目瞭然である。 

 この程度のことすらまともに感知しようとする政治的な感覚力がない政治屋たちは,政治の舞台からさっさと退場すべきである。もっとも,いつまでも「羊のようにおとなしい国民たち」側にも,一定の重大な問題があった。

 この国はこのままに進行していくとしたら,国民たちはただの精神的に怠惰なブタになりはてる。さらにはそれどころか,このままいいく前にコロナ禍に罹患せずとも,いとも簡単に餓死(頓死)させられる。その種の存在に終始する「日本国民」になっていても,いいのか。

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