東電福島第1原発事故現場から湧出する「汚染水」は「処理水に浄化(?)」されても汚染された水に変わりなし,問題なのは世界中の原発施設からも海に垂れ流されているトリチウム

 松尾和子和田弘とマヒナスターズの「お座敷小唄」の歌詞は,♪  富士の高嶺に降る雪も  京都先斗町に降る雪も  雪に変りはないじゃなし  融けて流れりゃ皆同じ……  ♪  となっていた

 世界中の原発が最終的に除去できない放射性物質トリチウムという残存汚染物を海に排出している事実こそが,原発という「原爆マガイの危険な電力発電」装置・機械の悪魔性を,端的に物語っている

 菅 義偉は,安倍晋三のセリフを借りて,東電福島第1原発事故現場はいまだにアンダーコントロール状態にあるなどと,完全に開きなおった「無知・無恥の為政の立場」をさらけ出している

 トリチウムは現在,人間側が技術的にどのように対処しようにもアンダーコントロールできない〈核種〉である,人間の立場が『魔法使いの弟子』になっている事実を突きつけられていても,この真相には目をつむったまま,菅 義偉流の〈ド・ヘリクツ〉がを誇示される日本国の哀れさは,まさしく『3・11〈第2の敗戦説〉』を,あらためて強く印象づける

 

  要点・1 トリチウムが無害だという誤説は実証されておらず,科学の基本的な見地に反する主張

  要点・2 原発事故を起こした現場から海に排出される汚染水が本当に「キレイな処理水」でありうるならば,トリチウムを含有する余地などまったくない,ところが,その化学的な特性ゆえに除去しきれず,その代わりヘリクツ的に「トリチウムは無害だ,安全だ」と喧伝してきた,しかしトリチウムが事実そのとおりであるという科学的に完全な,いいかえれば十分かつ必要な条件を満たす証明は,まだなされていない

【参考記事】

 ウィキペディアトリチウム三重水素)の生体濃縮率についての記述があるので引用します。

 

 海水のトリチウムが5~50 Bq/Lであったのに対し,英国ブリストル海峡二枚貝やカレイでは,2000~3000倍もの濃縮がされていたということです。英国ブリストル海峡のまわりには,ヒンクリー・ポイントなどいくつか原発があります。

 

 1リットル当たり数ベクレルの濃度だからまったく問題ない,というのは間違いです。魚介類は何千倍にも濃縮し,最終的にそれを人間が食べるのです。東電の安易な汚染水放出を許してはいけません。

 註記)「英国ブリストル海峡二枚貝やカレイのトリチウム濃縮率は2000-3000倍」『阿修羅』2021年4月12日 13:39:31,http://www.asyura2.com/20/genpatu53/msg/436.html

 

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 つぎに紹介するこの記事は笑止千万,奇想天外,有害無益……。


  東電福島第1原発事故現場の「後始末の一環」としてだが,「汚染水」を浄化したから「処理水」に変化させえたという,つまり,放射性物質トリチウムでまだ汚染された状態のままである「汚染水」は,これを薄めて長い年月をかけて太平洋に排水していくのだという処理方法は,単に地元に風評被害をもたらすだけの問題ではいえない

 昨日〔2021年4月13日〕の新聞夕刊がすでに大々的に報じていたのは,東電福島第1原発事故の後始末として,いまだに未解決である汚染水問題についてであった。以前からいわれていたとおり太平洋に排出する方法を採ることにし,これを2年後に開始することを,菅 義偉政権が決定したというニュースであった。

 この「汚染水」の排出問題については,たとえば,② にとりあげる地方紙「社説」のごとき反論・批判が,もっとも代表的な論説として提示されている。事故を起こしていない原発であっても,問題のトリチウムという放射性物質は,常時「周辺地域の地球環境」に向けて排出・放散させている。この事実も踏まえたうえで,つぎに引用するこの社説を読む余地がある。

 ただし,福島第1原発の場合はあくまで,事故を起こした以後において継続してきた問題になっていたわけだが,トリチウムという放射性物質を最終的に除去できないまま,このたびはそれを外部環境に向けて放出することを政府が決めた点に,問題の焦点が合わせられていた。

 本日(2021年4月14日)の各紙朝刊にも汚染水問題に関して論説が執筆されているが,つぎに引照しつつ議論する『中國新聞』に比較してみると,その〈本質面〉の分析や批判に物足りなさを感じる。

 

 「〈社説〉原発処理水,海洋放出へ ごり押しは許されない」中國新聞』2021/4/11 6:39,https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=743612&comment_sub_id=0&category_id=142

 付記)以下の引用では,この社説の文章以外に,筆者による挿入的な文章〔補注の記述のこと〕が多く追加されているので,この色づけ にしておき,双方を区分するための便宜:目印にしておく。

 結局は地元にツケを押し付けるのか。東京電力福島第1原発の汚染水を浄化した処理水を海洋放出する方針を政府が固めた。〔4月〕13日にも関係閣僚会議を開いて正式決定するという。

 海洋放出については,地元はもちろん,全国漁業協同組合連合会(全漁連)も「絶対反対」をかかげている。菅義偉首相は先日,全漁連の岸宏会長と面会して理解を求めた。トップ会談で手続きを済ませたつもりだとしたら,お粗末すぎよう。

 岸会長の返事は「反対の立場は,いささかも変わらない」だった。説得はおろか,十分な議論もないまま,ごり押しは許されない。あまりにも無責任だ。

 補注)菅 義偉の,例によって例のごとくである,ひたすら強権づくしである為政のやり方が,この汚染水の最終的な処理方法決定にさいしても,ムキだしになっている。菅は福島第1原発事故の現状については,安倍晋三が逆立ち的に使用した文句「アンダーコントロール」の状態にあるなどと,実にデタラメそのものである発言をオウム返しに放っていた。

 この菅 義偉という首相ははたして,原発やこの事故の問題についていかほど知見があるのか,非常にあやしい。というか,それ以前に控えている政治的な立場,2021年7月になったら五輪を無理やりにでも開催したい意向が,以上の言動には直接反映されていた。そのように,ひたすら無理筋でしかありえない,つまり「事故原発から湧き出ている汚染物質はアンダーコントロール」状態だといった,アベ流の迷セリフを故意に鵜呑みにしたごときに,途方もない発言を犯している。

【参考記事】

〔社説に戻る→〕 国内の原子力災害では史上最悪となった事故から10年,福島では漁業復興への努力が続いている。対象魚種や海域を限定した「試験操業」を今〔2021〕年3月に終え,本格操業に向けた取り組みを始めたところだった。それなのに,処理水を海洋放出するのではいままでの苦労が水の泡になりかねない。「再び風評被害にさらされる」と地元の漁業者らが反発するのも当然だろう。

 福島第1原発では,事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすための水や,原子炉建屋に流れこむ地下水などの汚染水が毎日100トン以上生じている。それを多核種除去設備「ALPS(アルプス)」などで浄化した処理水は,いままでに 125万トンたまっているという。

 処理水には,アルプスでも取り除けない放射性物質トリチウムが含まれている。それでも,薄めて海に流せば,科学的には安全だと政府は主張する。国内外の原発でもトリチウム水を海に放出しており,国際的にも認められているというわけだ。

 補注)現段階の科学的認識だけをもって「トリチウム安全説」を説くのは,問題の本質を取り違えている。本ブログ筆者は過日の記述でその点をくわしく説明した。後段に指示する諸記述を参照してほしい。例によって長文であるが,この程度の理解は一般市民も常識として獲得しておく必要があった。面倒であれば,それら記述の冒頭段落のみ再度かかげておくので,こちらだけをざっと目を通してくれれば好都合である。

 さて,問題となっている点は,「汚染水」(トリチウム以外の核種をたくさん含んだ水)を浄化させれば「処理水」(しかし,トリチウムという核種だけは除去できずに残されている水)になるのだ,といったふうな「非科学的な表現」にあった。この種の非科学的な誤解については,これを許さないための〈常識的な感覚とまともな理性〉が,われわれ側においても要求されている。

 ところが,政府や無主体と化している東電側は,あと2年分しか汚染水を保管する場所に余裕がないという理由を一方的にかかげ,ともかくその後は汚染水を処理水のかたちにしてから,太平洋に排出することを決めた。

〔社説に戻る→〕 ただ,地元の理解がえられないのに決定を急ぐ背景には,処理水を入れるタンクが来〔2022〕年秋に満杯になるという東電の事情があるようだ。しかし敷地内でタンク置き場を広げたり近隣の土地を借りたりもできたはずだ。東電は汗をかこうとしないだけではなく,ずさんなテロ対策や地震計の故障放置など失態は最近も後を絶たない。政府は東電に甘すぎるのではないか。

 補注)まだ「敷地内でタンク置き場を広げたり近隣の土地を借りたりもでき」る事実は,すでに指摘されている。けれども,東電側はこれに耳を貸す姿勢がない。政府もそうした東電の姿勢のほうを,まるで無条件に後押しする態度である。

 汚染水からトリチウム水を分離する方法を開発したと近畿大が発表したのは3年前だ。それらを含め,政府がすべての手だてを真剣に検討した形跡はみられない。にもかかわらず海洋に放出するというのは「日程ありき」のごり押しでしかなかろう。福島の人たちをさらに犠牲にするのはとうてい容認できない。

【参考記事】-東電福島第1原発事故現場が排出するのはトリチウムのみにあらず-

 補注)この「汚染水からトリチウム水を分離する方法を開発した」という点がまったく活かされていない現状にあるとしたら,政府や東電の対応は無責任であるとしか思えない。

 ところで,今回とくに話題になっていた日本の「汚染水・処理水」の放出問題について,アメリカ側は一定の理解を示し,トリチウムの太平洋への排出・拡散を側面から支援するごとき態度を採っている。

 もともとアメリカは,1953年12月8日,ニューヨークの国際連合総会「演説」において,ドワイト・D・ハワー大統領の口から「平和のための原子力」(atoms  for  peace)を唱えていた因縁があって,トリチウム汚染「残存の問題」を真正面から批判できない立場にあった。

 「東電福島第1原発事故の後始末」がこれからも半永久的に解決される展望がもてない現在の状況のなかでの「汚染水排出問題」である。つまり,「トリチウムの問題」にかぎっては,「処理水」のなかにこの「トリチウムも含まれていて」もよいといったあつかい方は,いってみれば「原発の利用に固有である〈ひとつの欠陥〉」を誤魔化すための「イデオロギー的な立場・見解」として,きわめて醜く継承されている。

 なお,トリチウムの有害性については,本ブログ内ですでになんども議論してきた。以下にその住所(アドレス)を掲示し,その冒頭の段落(主題・副題)に記入してあった文句も再掲しておく。

※ 第1の記述 ※

  「2020-02-01」 東電福島第1原発事故現場の汚染水問題は半永久的に残存する原発公害

 「融けて流れりゃ皆同じ」という要領に似せて「薄めて流せば皆同じ」なのか,「汚染水」(処理水ともいう)は太平洋に排出してしまえば,東電福島第1原発事故現場の汚染流水問題は,安倍晋三風にアンダーコントロールになるとでも考えているのか?

 

  要点:1 東電福島第1原発事故現場における汚染水問題は,半永久的な解決過程(?)を迫られつづける「難題」である

  要点:2 『朝日新聞』は汚染水といい,『日本経済新聞』は処理水というが,放射性物質を完全に除去できずに残している「汚染水」を「処理水」といいかえたところで,問題の本質はなにも変えられない。つまり,処理水は「水 + トリチウム」であるから汚染水であるが,これを処理水と呼んだところで汚染水である事実に,なんら変わりなし

  要点:3 《悪魔の火》がもたらした災厄にこれからも悩ませられる運命に置かれた東電(東京電力ホールディングス株式会社)は,その原発事故の残り火(超自然的な・宇宙的な因果)のために,これからも苦労を強いられていく


※ 第2の記述 ※

  「2020ー03ー08」 東電福島第1原発事故現場における汚染水の排出問題,トリチウムを残す汚染水を太平洋に排出する処理方法にともなう公害的な重大性 

 原発事故現場から生まれる汚染水は「海に捨てる以外に処理方法はない」(田中俊一・前原子力規制委員長)だとか  註記1),「処理済み汚染水の外部放出の方法論は世界的に確立されている慣行に合致する」(ラファエル・グロッシュIAEA事務局長)だとかいっている  註記2)

 註記1)田中俊一「科学者は議論オープンに」『日本経済新聞』2020年3月5日朝刊4面「政治」。

 註記2)ラファエル・グロッシュIAEA事務局長「処理水放出『監視で支援』意向 福島第1巡り IAEA事務局長」『朝日新聞』2020年2月28日朝刊11面「国際」。

 だが,そうした「核種」に原因する汚染の問題に関する思想は,原発利用のせいで,トリチウム汚染を最終的に残すほかない「その汚染水の難題」を糊塗しておこうとする専門家たちの無責任を表象している。

 しかも,トコトンのところではけっして処理しきれない汚染物質:トリチウムは,大気中に放出したり,海洋に捨てればいいといっている。この態度は,無責任を恥ずかしげもなく披露しており,トリチウムが安全ではない核種である事実に目を覆ってもいる専門家たちのまやかしは,原発政策の基本的な矛盾を隠蔽する立場である。

 「3・11」以前にいうべきことを,いまごろにもなって「科学者は議論オープンに」というのでは,率直にいって “ちゃんちゃらおかしい” 。東電福島第1原発事故以前においては,トリチウムの問題などろくに注目もされず,まさに「問題外」であったが,東電福島第1原発事故を契機にこのように,トリチウムの汚染水問題があらためて話題になっている。なお,トリチウム半減期は約12年である。

 

  要点:1 トリチウムという放射性物質の危険性から目をそむけたい原子力工学の専門家たちの軽弁的な主張は,説得力なし

  要点:2 日本じたいがすでに少子高齢社会の真っ最中であり,過疎化現象などはそのまた以前の時代から進行してきたが,そのなかで,東電福島第1原発事故「被災地」の「まち再生」は,地域社会の復旧目標として,その効果をまともに期待できるわけがなかった。

  要点:3 橘川武郎は,経営学者(日本経営史・エネルギー産業論専攻)の立場にありながら,原発に対する視座を巧妙に移動・変質させている

 

 ※ 第3の記述 ※

 【2009-09-11】 東電福島原発事故における放射能汚染水問題の解決には,あと何年の歳月がかかるのか,「悪魔の火」との因縁つきあいは,未来永劫に続くのか

 東電福島第1原発発電所原発が爆発事故を起こしていたが,廃炉工程に漕ぎ着ける以前に,その後始末が未達成のままである「汚染水の問題」

 2013年9月IOC総会で,フクシマは「アンダーコントロールだ」といって大きなウソをつき,2020東京オリンピックの招致に成功した安倍晋三の政権であったが,その開催が延期されて以後,今日の日付はもう「2020年の9月11日」

 コロナ禍のためにおそらくは,東京オリンピックの開催そのものが不可能だといわれている状況のなかで,東電福島第1原発の事故現場は「汚染水問題で溢れんばかりの窮状」に追こまれている

 その間,安倍政治の「いまだけ,カネだけ,自分カネだけ」であるさもしい政治屋の精神は,まさしく「後進国化しつつあるこの日本国」を,みずからがあえて急速に貶める役目を機能させてきた。安倍のデタラメとウソを充満させた為政の結果は,2020東京オリンピックの招致・開催の延期=失敗をもってしても端的に反映されている。

 

  要点:1  《悪魔の火》に手を出した人類・人間側の罪業は「永遠に不滅」

  要点:2 東電福島原発事故現場の汚染水問題としてトリチウムという核種

   ◆ 安倍政権の「幻」に身を委ねた日本~菅政権は「幻」を継承するのか              少子高齢化,借金,原発……。そして,国力の衰退から目をそむけた安全保障論 ◆

   = 大野博人・前朝日新聞論説主幹『論座』2020年09月10日,https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020090900001.html

 

 ※ 第4の記述 ※ 

 【2020-11-03】 東電福島原発事故現場の「汚染水問題」は,最終的にトリチウムを残して含むほかない「処理水問題」にいいかえたところで,けっしてアンダーコントロールにはならない

 そのつど一時しのぎで,太平洋沿岸へ排出(放出)しておき,問題を現象的にごまかすだけであって,そもそも事故現場の汚染水はこれからも当分止まるみこみがない

 風評被害だけでも大問題であるにもかかわらず,トリチウムの廃棄問題に関する本質的な理解,つまり科学的な認識から逃げまわってきた東京電力と日本政府の欺瞞

 原発事故の被災地とくに福島浜通り地区(など)の漁業被害は,風評被害の範囲を超えて,これからも半永久的に継続していく

 「東日本大震災・東電福島原発事故」の発生直後,米軍が災害救助活動として派遣した米海軍原子力空母「ロナルド・レーガン」の乗組員たちが受けた放射性物質被害の問題もあった 

 

  要点・1 トリチウムもまた非常に厄介な放射性物質(核種)であり,人類・人間はその被害を受けつづけていく

  要点・2 国際的次元においてたびたび誤魔化そうとしてきた「原発事故」の「深刻な産業公害」性ならびに「地球環境破壊行為」としての重大性は,これからさきもそう簡単に消せることがないし

  要点・3 21世紀において最大・最悪の公害問題を発生させた原発事故の凶悪さは無限大 

〔社説に戻る→〕  福島第1原発事故は「起きた」のではなく,いまも「起きている」。廃炉には,何十兆円というコストと最短でも何十年という時間がかかるとみられている。

 補注)この指摘はまっとうな「東電福島第1原発事故」観であるが,触れられている金額(コスト)も年数(最短の期間)も,いまのところ,それで収まるという見当はまったく付いていない。というよりは,何百兆円と何百年という単位の水準にまで膨らんでいく今後を覚悟しておく必要があった。

 そのように東電福島第1原発事故は冷厳に観察されるべきであって,トリチウムを「最終的に除去できない汚染水」を「処理水」と称して太平洋に放出する最終手段を許容するのは,原発という《悪魔の火》の利用によって必然的に派生させられた結果,すなわち「人間の手にはとうてい負いきれない〈技術的な至難〉」を,だた一時的に糊塗させうるに過ぎない。だから,引用中の『中國新聞』「社説」も,つぎのように批判をつづけていた。

 だが,安倍晋三首相は五輪誘致に「アンダーコントロール」というレトリックをもち出した。実際はアンダーコントロールどころか,廃炉への道はいまも予測できない試練に満ちている。

 補注)菅 義偉はこの安倍晋三の戯れ言:「アンダーコントロール」を,いまさらのように開きなおって,自身も再使用している。率直にいって,この首相,あえてヤケクソ的にメチャクチャをいいはなっているとしか受けとれない。

 その点でも,廃炉事業は日本にとって五輪など取るに足りないくらいの世紀のメガプロジェクトのはずだ。過酷な現実を,幻で覆い隠す。東京五輪はその象徴的な事例だ。それが本当の幻になるとしたら,皮肉というしかない。

 福島で事故が起き,安全神話を広めてきた原子力関係者らの「うそ」が露呈した。それが骨身に染みた人には,「薄めれば科学的には安全」と専門家に強調されても疑念は消えまい。

 そもそも,トリチウム以外の放射性物質もアルプスで完全に除去されるわけではない。どんな放射性物質がどのくらい残るのか。人体への影響はどのぐらいか。きちんとデータを出して説明することが先だろう。

 事故10年の節目に,国連の人権専門家が「汚染水は環境と人権に重大なリスクをもたらす」との声明を発表した。太平洋への放出は容認できる解決策にはなりえないとも指摘している。

 政府は,海洋放出の方針はただちに撤回し,地元はもちろん,環境にも負担を押し付けない方法を検討すべきである。(以上,飛び飛びになったが,『中國新聞』「社説」引用終わり)

 『中國新聞』社説を引用しながらその行間には,本ブログ筆者の意見をたくさん入れたので読みにくくなったとは思うが,この社説はともかく,処理水問題を汚染水問題そのものと位置づけたうえで,その本質を突いた議論をしていた。

 要するに,トリチウムが,この地球環境に生きているわれわれ『人類・人間』にとって,無害であるといった証明はまだできていない。それだけのことであって,その反対の説明「有害である」という事実は,上記に一覧した本ブログ筆者の諸記述のなかで論及してあった。この論点を素通りした「トリチウム無害論」は,原発推進派の論者にとってみれば必要不可欠の便法かもしれないが,その説得力はもとよりなかったし,すでに社会悪の次元にまで逸脱した技術社会「感」になっている。

 たとえば,林 智裕「原発『処理水』を,なぜマスコミは『汚染水』と呼び続けたのか『科学を振りかざすな』に対する違和感」『現代ビジネス』2019年10月6日,https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67575?page=2は,つぎの図解をかかげて原発からのトリチウム排出の問題を “ノー・プロブレム” だといいたい論旨を提示していた。

 しかし,この見解はトリチウムの有害性に無知なまま語っていた。だが,この種の比較をしようとする論議は,後ろ向きにためにするものにしかなりえない。

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 最後に反原発の立場である『朝日新聞』が本日,2021年4月14日朝刊に載せた「〈社説〉処理水の放出 納得と信頼欠けたまま」を,以下に引用しておくが,ここまで議論の材料に活かしてきた『中國新聞』の論旨以上に勝る中身がないように感じた。

 東京電力・福島第1原発で生じる汚染水を処理した水について,政府は海洋放出すると決めた。懸念を抱く国民は多く,強い反対があるなかでの決定だ。政府や東電は社会の理解を得ぬまま放出することなく,対話を尽くす責務がある。

 

 事故以来,溶け落ちた核燃料を冷やす注水や地下水流入で汚染水は増え続け,処理済み汚染水のタンクは1千基を超えた。東電は2022年秋にタンクが満杯になると説明する。

 

 敷地内には今後,核燃料を一時保管する施設も必要とされ,経済産業省の小委員会は2020年2月,複数の方法から海洋放出を有力とする姿勢を示していた。

 

 経産省によると,処理で取り除けないトリチウムを含んだ水は国内外の原発でも放出されており,周辺への影響は確認されていないという。政府や東電は,風評被害を抑える説明をし,漁場などの放射性物質の調査も拡充していく。被害があったら東電は,地域や期間,業種を限らず賠償するという。

 

 それでも,住民や消費者が不安を抱くのは当然のことだ。事故を起こした原発からの,溶け落ちた炉心の冷却に使った水の放出であり,いつまで続くかもわからない。初めての試みで不測の事態も心配される。

 

 東電への不信も根深い。汚染水から除去できるとしていた放射性物質が残留していたのに,積極的に説明していなかったことが2018年に発覚。最近もテロ対策の不備や地震計故障問題があり,安全文化や企業体質に改めて疑問がもたれている。原発事故の賠償でも,被災者との和解を拒否する事例が相次いだ。

 

 福島の漁業者は今〔4〕月,本格操業への「移行期間」に入ったばかりで憤りは大きい。全国漁業協同組合連合会も放出反対の姿勢を変えていない。東電は2015年に福島県漁連に「関係者の理解なしには,いかなる処分もおこなわない」と文書で回答している。この約束はどうなるのか。

 

 政府や東電は,納得が得られるまで対話を尽くすとともに,放出する場合は客観的で信頼できる放射性物質のモニタリング体制を整えるべきだ。なによりも,不都合なことが起きた時,制度上は公表が義務となっていなくても,積極的に情報公開する必要がある。怠れば不信が深まり,風評被害も拡大する。

 

 放出に必要な設備の設計や建設,原子力規制委員会の審査などに2年ほどかかるという。2022年秋にタンクは満杯になるというが,新たなタンクを設けるなど,さらに貯蔵する余地はないのか。期限ありきの放出は許されない。地元の理解が不可欠であることを,政府と東電はあらためて胸に刻むべきだ。

 2011年「3・11」の東日本大震災と東電福島第1原発事故は,原子力(核エネルギー)を燃料に使用する電力発電がいかに危険に満ちていたかを,スリーマイル島原発(1979年3月)とチェルノブイリ原発事故(1986年4月)につづけて,警告ではなく事実として明証した。

 ある意味,トリチウムの残存問題は,枝葉末節的な話題でありうる一面を有するとともに,この核種が他面で拡大鏡的に明示するほかない「原発の反・地球環境性,非人間性」じたい,原発利用に関する深刻かつ重大な実害を教示する。 

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【参考記事】

 

 付記)つぎに紹介する「記事」は長文であるので,読みたい人は覚悟あれ。

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