原子力発電所を使いこなせない人類・人間は結局『魔法使いの弟子』に過ぎず,いまや原子力エネルギーの奴隷と化した,「放射性物質の悪魔性」に苦しむ日々は半永久的に続く

 東電福島第1原発事故の後始末として太平洋に排出するという「処理水の本質」は「汚染水でありつづける」点にあり,未来永劫的に地球環境を汚染していく ほかない,魔法使いにでもなれたつもりがそうではなく,人類・人間は原子力というエネルギーの奴隷になりつつある

 

  要点・1 東電福島第1原発事故の後始末はいったい,いつになったら片付いたとみなせる状況に到達できるのか

  要点・2 40~50年でその後始末(廃炉工程も含めて)ができるかのように説明していた東電や原子力村所属員たちは,自分たちのウソを先刻承知で騙っていた。だが,最近では最低でも百年(以上)かかると説明する,そのほかの専門家の意見・指摘が「自然・必然・当然の認識だと語られる」ようになっている


 「交響的スケルツォ魔法使いの弟子(フランス語  L'apprenti sorcier, scherzo symphonique)は,フランスの作曲家ポール・デュカスが1897年に作曲した管弦楽曲であるが,日本においては通例「交響詩魔法使いの弟子』」と表記される。

 同曲は,ゲーテが,サモサタのルキアノスの詩『嘘を好む人たち』(Philopseudes)にもとづき書き上げたバラード『魔法使いの弟子』(Der Zauberlehrling)の仏語訳を原典としているという。

 《詩の大意》

 「老いた魔法使い」が「若い見習い」に雑用をいい残し,自分の工房を旅立つところから物語が始まる。見習いは命じられた水汲みの仕事に飽き飽きして,箒に魔法をかけて自分の仕事の身代わりをさせるが,見習いはまだ完全には魔法の訓練を受けていなかった。

 

 そのためやがて床一面は水浸しとなってしまい,見習いは魔法を止める呪文が分からないので,自分に箒を止める力がないことを思いしらされる。絶望のあまりに,見習いは鉈で箒を2つに割るが,さらにそれぞれの部分が水汲みを続けていき,かえって速く水で溢れ返ってしまう。

 

 もはや洪水のような勢いに手のつけようがなくなったかにみえた瞬間,師匠の魔法使いが戻ってきて,たちまちまじないをかけて急場を救い,弟子を叱りつける。

 本ブログ筆者は原発問題を論じるとき,しばしばこの『魔法使いの弟子』をたとえ話に出して説明してきた。本日の記述も冒頭より,この音楽分野における作品の内容が示唆する「多分,世の中にはたくさんあるはずの出来事としての問題」のひとつとして,原発をとりあげている。

 東電福島第1原発事故現場においては,2011年「3・11」発生以後,絶えることなく湧出しつづけている放射性物質の「汚染水」が,大問題でありつづけてきた。その名称のこと関しては,その「汚染水」を浄化する加工作業を施しているゆえ「処理水」に変化させえていると解釈されているものの,その実体が「汚染水」である本質まで変えられているのではなかった。

 そして,その〈処理水〉の問題についてなのだが,東電側の説明によれば,これからも増えつづけるほかない汚染水を「保存しておくための貯蔵槽(タンク)」の設置場所が,あと2年でいっぱいとなるので,事後は太平洋に排出しておくほかないと主張されている。

 関連して指摘されているのは,その貯水槽の設置場所が足りないという東電側の説明は虚偽であるという批判や,そのタンクに貯めこんでいる汚染水の処理・始末は別途に方法がないわけではなく,こちらの方法が実施できれば太平洋への排出は不要になるはずだという指摘もある。

 補注)すでにこういう情報があった。「汚染水からトリチウム水を取り除く技術を開発  東日本大震災の復興支援プロジェクトから生まれた汚染水対策」近畿大学『大学プレスセンター』2018.06.29  10:00,https://www.u-presscenter.jp/article/post-39661.html

 近畿大学工学部(広島県東広島市)教授井原辰彦,近畿大学原子力研究所,東洋アルミニウム株式会社(大阪府大阪市)および近大発のベンチャー企業である株式会社ア・アトムテクノル近大らの研究チームは,放射性物質を含んだ汚染水から放射性物質の一つであるトリチウムを含む水「トリチウム水」を分離・回収する方法および装置を開発しました。

 いずれにせよ,東電が現在置かれている状況は『魔法使いの弟子』の立場そのものなのであり,しかも師匠がもともと1人もいなかったその弟子の立場でもあるゆえ,「原子力発電所本来の悪魔性が発揮された場合」に立ち向かう「実力(魔術用の)」は,たかがしれていた。

 そうでなければ,「3・11」が発生してから10年が経過した現時点において,「事故原発の後始末」からさらに「本格的な廃炉工程」に進む「日程管理」のメドすら,ろくに立たないでいるわけがない。

 問題の核心にはもともと,汚染水を絶え間なく湧き出させるほかない事故原発現場のその惨状的な困難性にあった。「汚染水の汚染水たるゆえん」は,その理化学的な本質である放射性に求められる。

 なにやかや弁解したところで,結局,トリチウムを最終的に残して含んでいれば,これもやはり「汚染水」とみなされるのが「科学的にまっとうな理解」である。『魔法使いの弟子』であってもさらにその師匠であっても,そう容易にあつかいうる相手などではけっしてない。

 「処理水放出 日本を支持 米大統領特使,韓国で記者団に」日本経済新聞』2021年4月19日朝刊

【ソウル = 細川幸太郎】 訪韓中のケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は〔4月〕18日にソウル市内で記者懇談会を開き,福島の原発処理水の海洋放出について「日本政府が国際原子力機関IAEA)と緊密に協力していると確信している」と日本の立場を支持する考えを示した。

 韓国メディアによる米政府の立場を問う質問に回答した。ケリー氏は中国訪問後に韓国を訪れ,17日に鄭 義溶(チョン・ウィヨン)韓国外相と気候変動に関する国際協力の枠組について協議していた。

 韓国政府は東京電力福島第1原発の処理水問題について「絶対に容認できない行動」として強く批判。同国の各メディアも大きく報じており,ケリー氏との記者懇談会でも複数の質問が出た。(引用終わり)

 補注)『読売新聞』の報道となると,日本政府に露骨に好意的な見出しを着けていた。

 「韓国外相『処理水放出で憂慮』『協力して』…米ケリー特使『プロセスに透明性』『介入は不適切』」『読売新聞 オンライン』2021/04/19 06:42,https://www.yomiuri.co.jp/world/20210418-OYT1T50141/

 この見出しの文言だけでも奇妙なアメリカ側の発言は感じとれる。「プロセス」とか「不適切」という文句は,問題の本質である「汚染水」の中身に触れておらず,『高みの見物』的な発言に聞こえる。

 この種の,海外から日本に向けられてきた汚染水「批判の問題」は,トリチウムだけでなくそのほか多くの核種も排出している『事故を起こした原発』に対する批判を意味している。アメリカが日本の立場を擁護するような発言を,それも中途半端にであるが,「日本政府が国際原子力機関IAEA)と緊密に協力していると確信している」といっていた。

 対米従属国家体制の日本に対してアメリカ側が助け船を差し向けたかっこうになっているが,問題の重大な本質を周知のうえで,アメリカはそのように韓国をなだめる発言をしていた。アメリカは昔,原子力の平和利用を世界に向けて宣言していたゆえ,その弊害=公害面について強くはいえない〈お家の事情〉があった。

 補注)有名な話である,再度ふれておく。1953年12月8日,ニューヨークの国連本部で開催された “原子力の平和利用” に関する国連総会で,ドワイト・D・アイゼンハワーは「原子力の平和利用」(Atoms for Peace)を唱えた。

 とはいっても,原爆のほうは破壊のための戦争用の兵器であり,その兵器の応用である原発は平和用であったとしても,事故ったさいにはその破壊力が「重大・深刻=過酷」を地球環境にもたらす点は,暗黙に了解はされていたかもしれない。だがここでは,当時においてはその点を,まだまともに考慮していなかったと解釈しておく。

 「原爆」が兵器として核エネルギーを直接的に利用するのとは対照的に,「原発」は発電のために間接的にそれを電力生産用に利用する。そうはいっても,双方に共通する原子力エネルギーの〈利用面それじたい〉を軽視してはならない。

 その技術的な特性から発生する結果でいえば,原爆が文字どおり兵器として直接に利用される時と原発が事故を起こした時は,ほぼ同質の現象を発生させる。前者は事故ではなく,原爆が「兵器として利用される破壊」をもたらし,後者は原発が「装置・機械である原発の起こす事故」が周辺地域の破壊をもたらす。

 それゆえ,双方がその「結果」として現象させる「原子力エネルギーの危険性」,いいかえればその『悪魔性』(「悪魔の火」である本性)に,なんら違いはみだせない。チェルノブイリ原発事故(1986年4月)にしても,東電福島第1原発事故(2011年3月)にしても,仮に原発施設が本格的なテロ攻撃を受けて爆発を起こした事態を想定してみれば分かるように,本質的な理解として双方にあいだに違いなどありえない。 

 

 「処理水放出しても,タンクの増設必要  汚染水発生が上回る  朝日新聞社試算」朝日新聞』2021年4月19日朝刊27面「社会」

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 東京電力福島第1原発から海に流す方針が決まった処理水について,政府が基本方針で定めた放射能の放出上限まで処分しても,タンクに保管する水が減らない可能性が高いことが分かった。雨や地下水の流入で増える汚染水が,処分量を上回るためだ。政府や東電は2年後の海洋放出をみこむが,満杯が迫るタンクの増設は避けられそうにない。

 政府と東電の公表資料から朝日新聞が試算した。政府が〔4月〕13日に決めた基本方針では,海に流す放射性物質トリチウムの総量を年間22兆ベクレル以下とした。これは,事故前に福島第1から排出されていたトリチウムを含む水の放出上限だ。

 東電によると,敷地内のタンクの水に含まれるトリチウムの平均濃度は,昨〔2020〕年3月時点で1リットルあたり73万ベクレル。単純計算すると,22兆ベクレル分は,約3万トンの水に相当する。

 一方,建屋に入りこむ雨や地下水で,昨年は1日平均140トン(年間約5万1千トン)の汚染水が発生。降水量にもよるが,昨年と条件が同じなら,タンクに貯蔵する水の量は年間約2万トン増える計算になる。

 政府と東電は2025年に汚染水の発生量を1日平均100トン(年間約3万6千トン)まで減らす目標をかかげる。しかし,それを達成しても,汚染水の発生量は,処理水の放出量を年間数千トン上まわることになる。

 試算について,政府関係者は「きびしい結果。タンクを造らざるをえないだろう」と受けとめる。

 東電によると敷地内にあるタンクの容量は計約136万8千トン。先〔3〕月18日時点で約125万トンの水がたまっている。昨年と同じペース(1日130~150トン)で汚染水が増え続けると,2023年の春から夏ごろに満杯に達する。(引用終わり)

 この記事の内容どおりに理解すれば,東電福島第1原発事故から湧出している汚染水を,いうところの「処理水」に「浄化させて,太平洋に排出する」といっても,このために要求される処理能力が間に合わないと指摘されている。そもそもの問題は,通常の原発が排出する「トリチウムという “ひとつの核種” だけに限定されない」という困難に関係していた。

 補注)参考にまで参照しておくと,『東京新聞』は東電の姿勢に対してはきびしい姿勢で,つぎのように報道していた。

 ◆ 事故を起こしたのは東電なのに…「顔」も主体性も見えぬまま 原発処理水の海洋放出方針決定へ ◆
   =『東京新聞』2021年04月08日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1775

 

 世界最悪レベルの事故から10年,東京電力福島第1原発のタンクで保管が続く処理水の海洋放出処分に向け,政府が最終調整に入った。菅 義偉首相は〔4月〕7日,放出に反対する漁業団体の代表者らを官邸に呼び,みずからは出向かなかった。一方,東電の小早川智明社長は柏崎刈羽原発新潟県)の不祥事で謝罪の日々。当事者不在のまま,処分方針が決まろうとしている。(冒頭段落のみ引用)

 だから,東電福島第1原発事故「現場」は,現状のままでは『魔法使いの弟子』的な行為の水準に留まっていると指摘されていい。もっとも,処理水を “薄めるとか薄めないとか” いう前に,そんなもの面倒だからひとすくいにして太平洋に向けてぶちまけてしまえばよい” ,それで万事解決するという素人考えもありうる。

 ところが,東電福島第1原発事故現場にあっては,「1号機原子炉への注水を増量 2月の地震後に水位低下で」『東京新聞』2021年03月24日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1771  という報道もなされていたように,つぎのごと事象まで発生させていた。

 東京電力福島第1原発では〔3月〕22日,1号機原子炉への注水量を毎時3トンから4トンに増やした。2月13日の地震後に原子炉格納容器内の水位が低下したための措置。東電によると,事故で炉内に溶け落ちた核燃料(デブリ)の冷却に影響は出ていない。水位が下がりすぎると監視がむずかしくなるための対応だという。

 補注)たとえていうことにしたらこの記事は,『魔法使い弟子』の1人である東電にとって現状においてとりうる技術的対応は,この程度でしかありえないと「説明する」記事であった。まず「原因の分析」⇒その「結果に対する対応」の前後関係をみきわめようにも,初めの分析からしてなにもできていないに等しい。ただ「漏れたらしい分の水量をさらに追加して注入しておく」という話であった。

 2月の地震後,1号機の水位は約1メートル低下。事故時の損傷部から水が原子炉建屋内に漏れているとみられる。〔3月〕22日午後8時25分ごろ,水位が格納容器底部から高さ92センチの水位計を下回ったため,注水量を増やした。23日午前4時前には,水位が水位計の位置を上回った。

 3号機原子炉格納容器では地震後,水位が30~40センチ低下し横ばいになっている。注水はデブリ冷却のため1~3号機で続いている。(引用終わり)

 なお,その2月13日の地震に関して記録された情報は,こうであった。「3・11」の余震のひとつとみなされている。これじたいとしては,大きな地震であった。

 

  発生時刻 2021年02月13日 23時08分ころ
  震源地  福島県沖  最大震度 震度6
  震源   マグニチュード  M 7.3
  深さ   約60km

 つまり,いまだに手探り状態に終始しているのが,原発事故の後始末にさえ苦しんでいて,廃炉工程にまで進めえないでいる,東電福島第1「事故現場」の「10年後のいま」である。どうみても,このゆきづまり状態を打開してくれそうな〈助っ人〉がみつからない。ましてや,お師匠さんとなって呪術を使い解決してくれそうな魔術師もいない。

 

 IAEA 福島第1原発の処理水 安全性検証で国際調査団の派遣検討」『NHK NEWS WEB』2021年4月15日,https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210415/k10012975261000.html?utm_int=all_side_ranking-social_005

 IAEA国際原子力機関のグロッシ事務局長がNHKの単独インタビューに応じました。

 

 東京電力福島第1原子力発電所で増えつづける処理水を,国の基準を下まわる濃度に薄めて海に放出する日本政府の決定に対し,周辺国などから懸念が出ていることを受け,さまざまな国からの専門家をくわえた国際的な調査団の派遣を検討していることを明らかにしました。(引用終わり)

 この記事についてはあえて,文章の字面だけで判読する。通常において原発から排出されている「トリチウムという核種」にかぎった問題ではなくて,「東電福島第1原発事故の後始末」の問題としてだが,その「ほかの何種類もの別の核種」が「処理水(汚染水)」のなかに含まれている問題があった。それをそのまま太平洋へ排出されている点を伝えているという具合にも解釈できるニュースであった。この問題はつぎの ⑤  ⑥ でさらに説明していく。


 原発汚染水にトリチウム以外の核種…自民原発推進派が指摘」日刊ゲンダイ』2021/04/14 14:10,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/287910

 専門家が危惧しているのは,トリチウムだけがクローズアップされていることだ。大新聞テレビは,汚染水を多核種除去設備「ALPS」で浄化しても,トリチウムだけは除去できないと報じ,原子力ムラは「トリチウムが放出する放射線は弱い」「自然界にも存在する」「通常の原発でも発生し,基準を満たせば海に流している」と,海洋放出は問題ないと訴えている。

 しかし,大手メディアはほとんど問題にしていないが,「ALPS」で取り除けないのは,トリチウムだけではないという。トリチウム以外にもヨウ素129,セシウム135,セシウム137など,12の核種は除去できないという。(引用終わり)

 通常の原発から最終的にトリチウムが排出されて地球環境が汚染されている事実,その公害として性格が実際に疑われて当然である科学的な根拠が明示されているなかで,東電福島第1原発事故から日夜吐き出されつづけている,それも最終的に除去できない「ほかの何種類もの核種」が重要な問題であった。

 

 「汚染水『放出ありき』の非道。政府と東電の “密約” が炙り出す大嘘」『きっこのメルマガ  MAG2NEWS』2021年4月15日,https://www.mag2.com/p/news/493817

 あの忌まわしき福島第1原発事故から10年,ついに処理水の海洋放出を決めた菅政権。首相は「政府を挙げて風評対策を徹底する」としていますが,そもそも処理水の安全性は完全に担保されるのでしょうか。

 

 今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが,これまで処理水をめぐり前政権と東電サイドがつきつづけてきたウソの数々をあらたて振り返るとともに,その処理水の70%が安全基準を満たしていないという現状を紹介。

 

 さらに海洋放出が開始される2年後までに完璧な再処理など不可能な理由を挙げるとともに,放出処分が強行されれば,風評被害ではなく海洋汚染という「実害」が発生することになると警鐘を鳴らしています。

 ※ 海洋放出という破綻したシナリオ ※

 a) 福島第1原発では,放射性物質トリチウムを含む処理水が溜まりつづけており,現在は125万トンを超えています。1061基にも及ぶ巨大な貯水タンク群の総容量は約137万トン,余裕は残り10万トン少々しかありませんが,処理水の増加量は年間約5~6万トンなので,来年2022年の秋には満杯になってしまうと予想されています。

 そのため,東京電力は貯水タンクの増設を計画しており,敷地内の空きスペースに可能なかぎり増設した場合,満杯になる時期を約1年ほど先送りできると試算しました。しかし,貯水タンクの増設には約1年かかるため,すぐに着手しないと間に合わなくなってしまいます。

 一方,政府側はといえば,「菅義偉首相が処理水の海洋放出の方針を固めた」と4月9日に報じられ,その後「13日の閣僚会議で決定する」と報じられました。大量の処理水を海洋放出するには,貯水タンク群から海までのパイプラインを建設しなければなりませんし,手続も含めると約2年間の時間が必要になります。

 こうした現状を踏まえると,政府と東電の間で,すでに「2年後の海洋放出ありき」という密約が交わされていたことが分かります。この計画をシナリオどおりに進めるために,東電は2年後までカバーできる貯水タンクの増設に着手し,菅首相は福島の人たちの声を無視して政府方針を決定した,というわけです。

 菅首相の任期は最長でも今〔2021〕年の秋までなので,あとはしったこっちゃありません。そして,現在の菅政権を引きついだつぎの首相が,沖縄の辺野古の米軍基地建設のように「前の政権での決定事項」として,民意を踏みにじりながら粛々と海洋放出の計画を進めるのです。

 b) トリチウムの海洋放出は,他の国もおこなっていますし,日本でも日本原燃の六ケ所再処理工場(青森県六ケ所村)が試験的におこなって来ました。2006年から2008年にかけて断続的におこなわれた再処理システムの試験運転では,なんと合計で約2150兆ベクレルものトリチウム津軽海峡へ海洋放出されました。福島第1原発に溜まっているトリチウムの総量は約900兆ベクレルなので,その2倍以上です。

 補注)関連する記事として,「海に流したトリチウム,福島第1原発『処理水』の5倍以上  茨城・東海再処理施設」『東京新聞』2021年4月16日,https://www.tokyo-np.co.jp/article/98391 がある。この記事の図解を参照しておく。

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 六ケ所再処理工場は来年2022年から商業運転を開始する計画になっていますが,もしもフル稼働した場合,年間に,この何十倍,何百倍のトリチウムが海洋放出されるのか,それは,少なくとも福島第1原発に溜まっているトリチウムの総量の5~10倍と試算されています。

 トリチウム半減期は12~13年ですが,安全になるまでには100年もかかります。人体に取りこんだ場合は,内部被曝によって遺伝子を傷つけつづけます。そのため,六ケ所再処理工場の商業運転は,トリチウムの分離技術が確立されるまでは絶対に許されません。

 補注)「トリチウムの分離技術」に関しては前段で,近畿大学が2018年に開発しているという話題を取り上げていた。

 c) しかし,もっと許されないのが,福島第1原発の処理水の海洋放出なのです。なぜなら,これまで政府が説明して来た「トリチウムを含む処理水」という大前提が大嘘だからです。福島第1原発に125万トン以上も溜まっている処理水は,原子炉から溶け落ちた核燃料に触れて高濃度放射能汚染水となってしまった地下水を処理したものです。

 処理の手順は,初めにセシウム134と137,ストロンチウム90を分離し,その後,当時の安倍晋三首相が「汚染水処理の切り札」として鳴り物入り導入した多核種除去装置「ALPS(アルプス)」によって,残った放射性核種を62種類,基準値以下になるまで除去するという方法です。そして,この「ALPS」でも分離できないトリチウムだけが残ってしまったものが,大量に溜まりつづけている処理水だというのが,これまでの政府と東電の説明です。

 しかし,2018年8月,メディアのスクープによって,信じられない事実が発覚したのです。当時,合計で約89万トンまで溜まっていた処理水のうち,なんと84%に当たる約75万トンが安全基準を満たしていなかったことが分かったのです。それも,基準値を大幅に超えたストロンチウム90,ヨウ素129,ルテニウム106,テクネチウム99などの放射性核種がつぎつぎと検出されたのです。

 これらのなかでとくに危険なストロンチウム90は,もっとも含有量の高い貯水タンクのものは,1リットル当たり約60万ベクレル,なんと基準値の約2万倍でした。他の放射性核種も,基準値の数十倍から数百倍のものが数多く検出されました。

 皆さん,はたしてこれが「処理水」でしょうか? これは完全に「放射能汚染水」ではないでしょうか? それも「高濃度」の。毎度のことながら「やってる感」と「やってるふり」,これが東京電力クオリティーであり,安倍政権クオリティーなのです。

 d) そして,さらに呆れるのが,この年の経済産業省の対応です。このスクープの直前,経産省は「ALPS」の処理水を海洋放出するための公聴会を開いたのですが,そこで配布された処理水に関する資料によると,トリチウム以外の核種は,すべて基準値以下か未検出と記されていました。つまり,経産省は実際の計測データを配布して「海洋放出しても問題ない」とアピールしたわけです。

 しかし,その直後,このスクープによって,全体の84%に当たる処理水に基準値を超えた複数の核種が含まれていたことが発覚したのです。これはおかしいと,この公聴会で配布された処理水に関する資料を調べてみると,なんと4年も前の2014年のデータが使われていたのです。そして,その後の東電の処理水の内部データを調べてみると,2015年から2017年にかけて,トリチウム以外の核種が基準値を大幅に超えているものが散見されたのです。

 つまり,東電も経産省も安倍政権も,「ALPS」の処理水の多くに基準値を大幅に超える危険な放射性核種が複数含まれていることをしっていながら,その事実を隠蔽していたということになります。そして,隠蔽しただけでなく,海洋放出を強行するために,わざわざ4年も前の都合の良いデータを探して配布し,国民を騙そうとしたのです。ちなみに,この時の経産大臣は,安倍政権のゲッベルスこと世耕弘成でした。

 もしも,このスクープ〔2018年8月〕がなければ,安倍政権は国民を騙して海洋放出を正当化し,基準値の約2万倍もの猛毒ストロンチウム90が含まれた殺人レベルの「高濃度放射能汚染水」を,すでに大平洋へと廃棄していたのです。これは周辺海域の自然環境と日本の漁業を壊滅させるだけでなく,日本も批准している「国連海洋法条約」に違反する悪魔の所業です。

 e) 2013年9月,当時の安倍晋三首相は,アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたIOC総会で「原発事故は完全にコントロールしている」「放射能汚染水は完全にブロックしている」と述べ,東京に五輪を招致しました。しかし,実際には,大雨によって未処理の放射能汚染水の水位が上がり,1リットル当たり50万ベクレルを超えるストロンチウム90などが含まれた大量の汚染水が,堰を超えて流出するという事故が相次いでいました。

 こうした状況を受け,安倍首相は「汚染水問題は,今後は東電に丸投げせず,この私が責任者となり,政府が前面に立ち,完全に解決すると国民の皆さまにお約束いたします」と宣言しました。しかし,それ以降,安倍首相は一度も対策会議を開かず,5年間にわたり視察すらおこないませんでした。要するに,毎度おなじみの「無責任にいい散らかしただけ」だったのです。そして,その結果が,今回の菅首相による「2年後の海洋放出ありき」という強行策なのです。

 f) 現在の東電や政府は,海洋放出する場合には二次処理をおこない,残留している複数の核種をすべて基準値以下にしたうえで,水で希釈してから放出するので問題ないといっていますが,こんな言葉は信用できませんし,そもそも不可能なのです。

 現在,125万トン以上ある処理水の約70%は基準値を超えており,基準値の100倍を超えるものも10万トン以上も存在します。「ALPS」の処理能力は1日500トン,3基あるので1日1500トンですが,100万トン以上の処理水を再処理するためには,毎日増加しつづける新たな汚染水の処理と並行しておこなった場合,3基をフル稼働しても3年以上はかかってしまいます。しかし,これは「ALPS」の処理能力が完璧だと仮定しての話であって,汚染水対策の切り札であるはずの「ALPS」は,不完全な欠陥品なのです。

 福島第1原発で汚染水を処理している「ALPS」は3基ですが,最初の「ALPS」は米ピュロライト社の技術を使用した試験装置,いわばプロトタイプです。なんの実績もなく,福島第1原発がデビュー戦でした。実際に試験運転してみると,一定の効果はみられるものの実用には耐えられないため,導入は見送られました。そして,これを東芝の技術でなんとか使えるように改良した1基目,さらに改良した2基目が,2013年に導入されました。さらには,GE日立が性能をアップさせた新型も2014年に導入されました。

 g) しかし,こ〔れら〕の3基もすべて,しょせんはなんの実績もないプロトタイプなのです。福島第1原発での「実戦」という名の試験運転では,ストロンチウム90,コバルト60,ヨウ素129,炭素14などの核種を十分に分離することができず,基準以下にすることはできませんでした。それなのに東電は,この3基の「ALPS」による処理水の大半で,すべての核種が「ND(検出されず)」になったと嘘の報告を続けてきたのです。

 その結果が,先ほど紹介した,約89万トンの処理水のうち84%に当たる約75万トンが基準値超だったという2018年のスクープなのです。もしも,このスクープがなければ,東電はいまも嘘の報告を続けていたでしょう。

 そして,これもあまりしられていないことですが,この3基のプロトタイプの「ALPS」は,現在も「試験運転中」なのです。それは,まだ確実にすべての核種を分離できるという確証がえられていないため,ああでもない,こうでもないと,様子をみながら運転しているからです。これほど頼りない「切り札」しかないのに,再処理など不可能です。

 h) こんな現状なのに「2年後の海洋放出ありき」で推し進める菅首相は,「1年後の開催ありき」で推し進めたことで,大失敗が目前の東京五輪の計画からなにひとつ学習していないようです。ここまで破綻している何年も前のシナリオに沿って海洋放出を強行すれば,2年後に待っているのは「風評被害」ではなく,間違いなく「海洋汚染」という「実害」でしょう。

 ま,東京五輪にしても新型コロナ対策にしても汚染水問題にしても,すべては「歩く無責任」こと安倍晋三前首相 が「やってる感」と「やってるふり」だけで先延ばしして来た結果なので,その尻ぬぐいに振りまわされている菅首相も気の毒ですが,もっと気の毒なのは,ここまで劣化した政権に,いまだに振りまわされつづけている国民です。

 沖縄しかり,福島しかり,みずからの政策の失敗のツケを国民に押しつけ,私利私欲のために有無をいわさぬ数の暴力で民意を踏みにじりつづけるいまの自民党政権には,そろそろ日本から退場してもらわないと,この国は本当に滅びてしまいます。

 付記)『きっこのメルマガ』2021年4月14日号より一部抜粋・文中敬称略。←この付記は,投稿者・魑魅魍魎男,日時 2021年4月16日 05:13:47: FpBksTgsjX9Gw 6bOWo@mx6bKSag,http://www.asyura2.com/20/genpatu53/msg/464.html  から,以上を引用したので付いている。

 結局,現状のごとき東電福島第1原発事故現場の実情は『魔法使いの弟子』(たち)の犯した大失敗を意味する。いまさら「その師匠が登場してくれた」ところで,もはや助けられる状況にはなく,完全に手遅れになっている。これでは,もう絶望させられる気分に落ちこむほかない。

 安倍晋三だとか菅 義偉だとかいった日本の何流であるかどうかさえおぼつかない政治屋たちの手にかかっている,現状のごとき「東電福島第1原発事故の後始末」は,その始末どころか,さらに新しい災厄を追加中である。海外諸国からの批判は,けっして風評被害」などではなく「海洋汚染」という「実害」に向けられているのであった。

 2011年に「3・11」の東日本大震災が発生し,その後に大津波が襲来した。そのために,東電福島第1原発が過酷な事故を起こした。だが,この事故発生はあくまで人災であった。

 「当時の東電幹部」✕「安倍晋三・菅 義偉政権」による,その後における「原発災害を相乗的に悪化させるばかりの為政:悪政」は,これからも絶対に消すことができない〈21世紀になって日本国を没落させた真因〉として,永遠に記録されることになっている。

 われわれも,この国に生きる人間としてそれなりに覚悟をしておくほかない。

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