天皇徳仁がコロナ禍最中の五輪開催に懸念を抱いていると公表した宮内庁長官の発言,日本の政治社会のあり方と自民党腐敗政権の病理

 天皇が出てきてなにかをいわないことには,なにも始まらないかのように映る日本という国,そしてとくに「明治謹製・由来」である天皇天皇制の仕組 でさえ,できれば徹底して無視していきたい菅 義偉政権の態度,五輪開催によって生じるかもしれない「コロナ禍によるこの国への打撃」,その余波をかぶりたくない天皇家の思惑

 

  要点・1 誰もが自分たちの利害得失(私利我欲)しか考えない国になりはてている,つまり,なにがなんでも全員が自分ファーストになっているこの国の頽廃と腐朽

  要点・2 天皇家が平成天皇時代に具体的に開始させた「皇室生き残り戦略」の後継者としの立場を,コロナ禍においてそろそろ発露しはじめた令和天皇宮内庁長官を腹話術師にしたてて,五輪開催問題に対する「実質で反対」の発言を披露

  要点・3 SNS上のユーチューブ動画においては早くも,「【速報】日本の緊急事態!『天皇陛下 五輪開催による感染拡大に懸念と拝察』宮内庁長官天皇がコロナ懸念・御聖断五輪中止あるか?   安冨 歩教授  電話出演」『一月万冊』〔2021年6月25日5時20分過ぎで 64,736 回視聴,10時間前に公開済み,https://www.youtube.com/watch?v=HUJwHvbdlSE&list=RDCMUC_Q8cHoJnhNp6GHPkPOoSgw&start_radio=1  というテーマでとりあげられる話題となっていた


 「陛下,五輪で感染増懸念 宮内庁長官が『拝察』」日本経済新聞』2021年6月25日朝刊43面「社会2」

 宮内庁の西村泰彦長官は〔6月〕24日の定例記者会見で,開幕まで1カ月を切った東京五輪に関する質疑のなかで,「天皇陛下は現下の新型コロナの感染状況を大変心配されている」と述べた。そのうえで「国民の間に不安があるなかで,開催が感染拡大につながらないか懸念されていると拝察している」と述べた。

 

 陛下は東京五輪パラリンピックの名誉総裁に就いており,東京大会では開会式に出席し,開会宣言をされることなどが検討されている。西村長官は,陛下の「懸念」については「私が陛下とお話ししているなかで,肌感覚で感じていると受けとってほしい」と説明した。

 

 自身の見解として「感染が拡大するような事態にならないよう,組織委員会をはじめ関係機関が連携し,感染防止に万全を期してほしい」と要望した。

 この『日本経済新聞』の記事につづいて,このそばに掲載されていたもうひとつ記事:「『宮内庁長官自身の考え方』加藤官房長官」は,つぎのように報じてもいた。

 東京五輪の開催をめぐる天皇陛下の「懸念」について述べた西村泰彦宮内庁長官の発言を受け,加藤勝信官房長官は24日の記者会見で「長官自身の考え方を述べられたと承知している」と語った。「安全・安心な環境の確保を最優先に準備を着実に進めたい」と強調した。

 以上『日本経済新聞』から引用した令和天皇徳仁の意向とされるものは,「2020東京オリンピックの開催」を強行するつもりである菅 義偉政権のやり方に反発している,それも自身が「東京五輪パラリンピックの名誉総裁に就いて」いる「徳仁の立場(天皇としてさらには天皇家の立場や利害のこと)」にとって,「よからぬ結果を呼びこみかねない」可能性を危惧している点が,宮内庁長官の口を借りて表明された。

 この種の天皇天皇家(皇室)側の抱く考え方は,間接的であっても宮内庁長官を介して代弁的に婉曲に明らかにする〈政治手法〉は,つねづね使用されてきたものである。コロナ禍「感染」が7月から8月にかけて急増する予測がなされている。にもかかわらず,なにがなんでも五輪を開催したとなれば,その最中にどのような事態が起こるかは,すでに多くの医療専門家たち心配しているとおりである。

 つまり,第5波の襲来が目前に必然的である現段階であればこそ,徳仁という現天皇の心中を代弁したつもりである宮内庁の立場は,これまでにたどってきた「五輪開催の可否問題」と「コロナ禍の進展状況」との絡みぶりを,よくよく観察したうえで明らかにされたものと推測できる。

 問題は「天皇の考えがこうである,ああである」ということがら,いいかえれば,いままですでに1年半もの長期間,日本の社会を動揺させてきた「コロナ禍のなかでの五輪開催強行」に関して露骨である「菅 義偉のかたくなな〈開催願望〉」に対してだが,宮内庁長官の口から間接的にであっても,あえて「天皇の意見はこうだ」と対抗させて公表した点は,それなりに日本社会に対して大きな影響をもたらすに違いない。

 この種の問題は,天皇天皇制という政治問題が憲法上の論点としては,どのように解釈されればよいのかという議論を,いつもともなうかたちで吟味されるほかない。ともかく,コロナ禍のもとで五輪の開催が強行されたりしたら,「東京五輪パラリンピックの名誉総裁」である天皇自身の権威にキズが付く事態になりかねず,この一点について宮内庁側は非常に憂慮している。

 東京五輪の1年遅れでの開催に向けて五輪組織委員会が活動してきており,菅 義偉政権もこの首相個人の政治的野望を達成するための手段に,五輪の開催実現を利用しようとしてきた。その意図は以前より明白であったが,天皇家側の立場・利害から評価・判断されるべき「五輪観」とのあいだに残る溝は深い。

 以上,議論の材料として参照した『日本経済新聞』の報道内容は,いわば,ほどほどになされているに過ぎなかった。だが,つぎの参照する『朝日新聞』のそれは,もっと論点を明晰にさせている。


 「『開催で感染拡大,ご懸念されていると拝察』陛下の様子,宮内庁長官が説明」朝日新聞』2021年6月25日朝刊,34面「社会」

 天皇陛下が名誉総裁を務める東京五輪パラリンピックについて,宮内庁の西村泰彦長官は〔6月〕24日の定例会見で,陛下が新型コロナウイルスの感染状況を心配しているとし,「開催が感染拡大につながらないか,ご懸念されていると拝察している」と述べた。

 五輪の開会式が近づくなかでの考えを問われ,そう言及した。西村長官は「私が肌感覚として受け止めているということ」とし,「直接そういうお言葉を聞いたことはない」と説明した。

 また,西村長官は「陛下が名誉総裁をお務めになる五輪・パラリンピックで,感染が拡大するような事態にならないよう感染防止に万全を期していただきたい」とも述べた。

 これまで,日本で開かれた五輪では当時の天皇が開会式に出席し,開会宣言をしている。今夏の五輪でどうするのかについて,政府は「開会式の具体的な内容は関係者間で調整している」としている。

 西村長官の発言について,加藤勝信官房長官は〔6月〕24日の記者会見で「宮内庁長官自身の考えを述べられたと承知している」と語った。大会組織委員会武藤敏郎・事務総長は24日夕,「私どもは,国民のみなさま,都民のみなさまの不安がないような安全安心な大会を開催することが,責務であります。その実現に最善を尽くしたいと思います」と述べた。

 補注)加藤勝信官房長にしても,五輪組織委員会の幹部武藤敏郎にしても,かなり晦渋した(完全にトボケた)応答を意図的に示している。だが,内心では「天皇はまずいこと(要らぬこと・余計なこと)を発言してくれた」と,反発して受けとめているはずである。

 なにせ,コロナ禍状態のもと,「安全・安心」などとはほど遠く,「不安と心配だらけ」である東京五輪の開催予定に向けて,宮内庁天皇の代わりに指摘した懸念は,なにも天皇の意向にだけかかわる特別の問題ではなく,これは誰にでも判りやすいしごく当然な理解に依ってるた。

 しかし,日本国においては,天皇がなにかについて意思を表明したという事実は,そのいちいちが異常なまで関心をもたれる。


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 ◆-1 会見,主なやり取り

 (質問)オリンピックの開会式が近づいてきたが,長官のお考えを。

 (長官天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を大変ご心配しておられます。

  国民の間に不安の声があるなかで,ご自身が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないか,ご懸念されている,ご心配であると拝察しています。

  陛下が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックで,感染が拡大するような事態にならないよう組織委員会をはじめ関係機関が連携して感染防止に万全を期していただきたい。

 (質問)長官の拝察ということか。

 (長官)拝察です。日々陛下とお接しするなかで私が肌感覚として受け止めているということです。

 (質問)これは陛下のお気持と受け止めて間違いないか。

 (長官)私の受けとりかたですから。陛下はそうお考えではないかと,私は思っています。ただ陛下から直接そういうお言葉を聞いたことはありません。

 ◆-2 憲法に配慮して,国民に姿勢示す

 名古屋大の河西秀哉准教授(歴史学)の話。 五輪の開催について,国民の間にさまざまな意見が飛び交うなか,天皇がこのままなにもせずに開会式に出たら理解がえられないと考えたのではないか。長官の発言は,天皇の考えを反映していることは間違いないだろう。

 政権には感染対策の徹底を暗に求めることができ,国民に対しては,天皇がなにもしなかったわけではないことを示すことができる。ただ,天皇が発言の主体になると,政治問題に発展しかねない。長官の発言や感想として発表することで,憲法に抵触しないよう配慮したかたちだ。宮内庁はよくよく考えて発表したと思う。

 ◆-3 政治問題に言及,国民主権を侵害

 一橋大の渡辺 治名誉教授(政治学)の話。 天皇の命令で戦争を招いた反省から,政治的な決断は国民とその代表である議員がおこない,天皇にいっさいの政治的行為を許さない「象徴」とするのが憲法の「国民主権」だ。

 東京五輪は開催をめぐる賛否が分かれ,政治的な論点になっている。宮内庁長官が「拝察」する間接的なかたちでも,国民は「天皇はいまのかたちでの開催に否定的だ」と受け止め,開催反対派の意見を権威づけることになる。

 こうした政治的問題は国民や議員がみずからの責任で決めるべきことで,国民主権を侵害するこの発言の危険性を認識すべきだ。

 この渡辺 治のこの論評は,首相である菅 義偉にとって都合のよい要素も含むところが興味深い。つまり「こうした政治的問題は国民や議員がみずからの責任で決めるべきことで,国民主権を侵害するこの発言の危険性を認識すべきだ」という文句を,菅 義偉のほうから宮内庁天皇)に向けて返すことも十分可能である。しかし,この首相にそのたぐいに関する文句(セリフ)を吐ける資格は,まったくない。

 補注)前段〔『朝日新聞』6月25日朝刊3版〕に報道された河西秀哉と渡辺 治の寸評に対しては,その後さらに,「放送大の原 武史教授(日本政治思想史)の話」のそれも,asahi.com  の記事において追加されていた。

 放送大の原 武史教授(日本政治思想史)の話。 天皇の考えを受けての発言と考えるのが自然だろう。天皇の意思表明は,2016年の生前退位をにじませた「お気持ち表明」の前例がある。天皇の発信には憲法抵触への懸念がつきまとうが,当時は多くの憲法学者が問題にせず,世論も支持した。

 

 今回は直接の表明ではなく,宮内庁長官の発言というかたちではあるが,前例を踏まえれば今回もまた問題にはならず,受け入れられるだろう。政府が天皇の発信を「長官の考え」にしようとしても,2016年の時と同じく民意に影響を及ぼすのではないか。

 註記)「宮内庁長官の発言,識者の考えるその意図『前例がある』」asahi.com 2021年6月24日 22時25分,https://digital.asahi.com/articles/ASP6S6T61P6SUTIL04X.html?ref=mor_mail_topix1

 数日前から報道されていたが,職場や大学でおこないはじめて新型コロナウイルス向けの集団接種のために提供されるはずのワクチンの供給・準備が,いきなり間に合わなくなってきたという情報で明らかになった。ワクチン接種が順調に進めば,それで五輪の開催が可能になるなどと格別に強調してきた菅 義偉の立場にとって,またもや不都合な事情が発生していた。

 東京五輪を控えて各国の選手が徐々に入国しだしたところで,コロナ禍に対する日本政府当局各部署の防疫体制がきわめてズサンである実情が,すでに露呈していた。これで五輪を強行など計った分には,新型コロナウイルスに関しては,新たに「日本オリンピック株」と名づけたらよい新種が,追加されて発生するかもしれないと心配されている。 

   ★ 隔離免除の特例入国  感染者さらに4人判明,計6人に 東京五輪
  =『毎日新聞』速報,毎日新聞 2021/6/24 17:45,最終更新 6/24 19:42)=

 

 東京オリンピックパラリンピックに参加するため日本に入国した外国の選手や関係者のうち,新型コロナウイルスの感染が確認された人は,ウガンダ選手団の2人のほかに4人いることが判明した。内閣官房毎日新聞の取材に明らかにした。

 

 内閣官房によると,入国後に感染が確認された選手や関係者は,2月にフランス1人,4月にエジプト1人,5月にスリランカ1人,6月にガーナ1人,ウガンダ2人。多くは来日直後の空港検疫で確認されたが,スリランカ1人は入国5日目,ウガンダ2人のうち1人も入国5日目に判明した。

 

 政府は現在,すべての国・地域からの外国人の新規入国を原則拒否しており,人道上の理由など「特段の事情」で入国を許可する場合は指定施設などでの14日間隔離を求めているが,五輪・パラリンピックの選手や関係者に対しては隔離を免除する特例がある。

 補注)実際面ではすでに,この「特段の事情」や「隔離を免除する特例」の適用が乱発・乱用されはじめている。東京五輪大会は,新型コロナウイルス「各(国)株」(なおすでに,ウイルスの名称については,各国名は付けずアルファー,ベータ,ガンマー,デルタと符号で呼ぶことに変更されている)が跳んだりはねたりし,それこそ大活躍しそうな「国際大運動会の舞台」の予兆がする。

 

 1月1日~6月13日に入国した選手や関係者は2925人で,うち7割超の2213人が隔離免除を希望し,入国直後から事前合宿や予選大会,開催準備に参加した。五輪・パラリンピック終了までに入国者は7万人前後に達する見通しだ。

 

 加藤勝信官房長官は24日の記者会見で,入国する選手や関係者からの感染拡大防止について「ホストタウンや組織委員会が受け入れ責任者だ」としたうえで「飛行機を使って国内で移動する場合にどう対応するかを含め,(対応が)検討されている」と述べた。 

 現時点ではまだまだ,ごく少数の選手が入国しただけの段階であり,前段に触れた程度のわずかなコロナ感染者の発生・発見に留まっている。ところが,日本政府当局によるその「感染対応」は,現段階においてすら,まともになされていない。その緩慢な対応ぶりは問題があり過ぎる。

 選手だけでなく関係者やマスコミ・メディアの人びとに対しても,入国を許可するに当たり,指定施設などでの14日間隔離を求めている督励の手続は省略できている。これでは,コロナ禍をわざわざ呼び入れるような “ユルユルな検疫体制” にあるとみなさざるをえない。

 

  SNS上の反応など

 「【東京五輪宮内庁長官の “拝察” 発言で『天皇陛下』がトレンド1位に!」『YAHOO!JAPAN ニュース』2021/6/24  (木) 18:03 配信,https://news.yahoo.co.jp/articles/001d17fd6e6423ced9322d7a3f69c7c0b1217987(元記事『東スポWeb』)が,こう書いていた。

   東京五輪パラリンピック開催への不安は消えない ★

 

 新型コロナウイルスの影響で国民の間に東京五輪パラリンピック開催への不安が広がるなか,ツイッターで「天皇陛下」がトレンド1位となり,大きな話題となっている。

 

 宮内庁の西村泰彦長官(65歳)は〔6月〕24日の記者会見で天皇陛下新型コロナウイルスの感染状況について「大変心配されている」としたうえで,「国民に不安の声があるなかで,開催が感染拡大につながらないか,懸念されていると拝察している」と述べた。

 

 西村長官の発言が報じられると,ネット上では「天皇陛下が仰っているってことは相当なこと」「陛下は非常に,心を痛めている」「長官個人としての意見を表明しているわけではないだろう」「天皇陛下の意向に反する現政権」などとさまざまな意見が飛び交った。

 

 ツイッターでは「天皇陛下」がトレンド1位となったほか「宮内庁長官」「懸念と拝察」など関連ワードが相次いで上位にランクインした。

 

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 天皇になにかをいわれないことには,この社会の仕組がうまく作動しないと受けとめられるとしたら,はたして「国際政治社会」のほうから日本に投じられる視線は,どのような性質のものになるか?

 日本国憲法の本質問題があらためて再考されるべき材料のひとつとして,このたび宮内庁が公表した「五輪開催問題に向けられた〈徳仁天皇の意向〉」を認めるほかない。

 あとは,菅 義偉という専制的な独裁志向の政治屋首相が,その種の『天皇天皇性』問題を,強権的に蹴散らすことができるかどうかという関心に移る。この首相はが,自分のやることについてはすべて,どこまでも「問題ない,問題ない……」といってのけていうゆえ,天皇(家)の意向を完全に無視する可能性がないとは限らない。

 おそらく,いまごろ,菅 義偉は宮内庁の公表した「天皇の意向」に対して,どのように応じればいいのか困惑しているはずである。「オレは勝負したんだ」といって開催を決めておいて五輪大会である。天皇の意向がどうあっても,初めから全面的に無視しておきたいが,こればかりはそうは問屋が卸さない。いままでの諸問題とは基本から性質の異なる難題が目の前に登場した

 もっとも,初めから困った者(人物)であったのが,この菅 義偉。そして,この菅  義偉の立場からみて困った者(相手)が,このたび全面に出現してきた天皇徳仁。要は,いままで国民たちをさんざっぱら困らせてきた首相菅 義偉であるが,自分好み方途でもって五輪開催を強行できたとしても,その時までには高い確度で懸念されているコロナ禍の急速な蔓延,「第5波の襲来」が巻き起こってきたさい,この首相はまともに責任が負えるのか? 問題の性質上,自分1人が辞めればいいというものではない。仮に切腹するといったところで,自身の誤判断が許されるわけでもない。

 菅 義偉にとってみれば本当は,天皇の意向を十二分に忖度した体裁をとり,五輪開催不可を,いますぐにでも決定することが,より懸命な判断である。が,そう簡単に決断できるか? 肝心のもう1人,都知事小池百合子はこのところ,自分の思いどおりにいっていなかった五輪がらみの都政運営のせいか,過労気味になってしまい,ここしばらくはお休みモードとか。小池百合子がまず最初に五輪は中止だといえばいいものを,この「緑のタヌキ」,そうはいえずにどこかの穴蔵に逃げこんだ。 

 つぎのような指摘が参考になる。ただし,後段の解釈はコロナ禍の趨勢を,希望観測的に読み間違えている(菅 義偉への忖度的な記述あり)と観るほかないので,この点には注意して読んでほしい。

 菅氏が腹をくくった「コロナ禍での五輪開催」という命題については,どれだけ国会の予算委員会で追及されようとも同じ答弁が繰り返され,その硬直性に国民の不満が高まる。

 

 平時には菅氏の戦略を支える武器であり,実際に並み居るライバルを圧倒してきた「緻密な情報に立脚した判断の隠密性」と「決断後の猪突猛進性」がいま,コロナ禍という乱世にあって皮肉にも菅氏を追いこんでいる。

 

 ワクチン接種が進めば,いずれはコロナ禍も収まっていく。五輪と総選挙さえ乗り切れば,菅政権は望外の長期政権になるかもしれない。移り気な無党派層だけでなく,期待してきた庶民層が愛想を尽かさなければ,だが。

 註記)北島 純(社会情報大学院大学特任教授)「政治家・菅 義偉の『最大の強み』が今,五輪の強行と人心の離反を招く元凶に」『ニューズウィーク日本語版』2021年6月16日(水)19時24分,https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/post-96518_5.php,&  post-96518_6.php

 さてここで登壇したのが,宮内庁が公表した天皇徳仁の,すなわち「東京五輪パラリンピックの名誉総裁である彼」が五輪開催に対して投じた疑念であった。日本特有のある種の政治力学が,この段になって満を持したかのように出現した。開催まで1カ月を切った東京五輪の開催が予定どおりに始まるかどうか,まだ予断を許さない。

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