老朽原発を再稼働させる日本のエネルギー政策は,後進国的体制風の電源確保をいとわない愚かな方途,再生エネを全面的に導入・利用する体制の構築を妨げる電力政策は愚の骨頂

 中国やロシアのように強権独裁政治の国家ならばさておき,いまどき原発,それも40年以上もの老朽原発を再稼働させ,再生エネの本格的な普及を妨害するエネルギー確保の方法は,時代錯誤 である以上に,21世紀の日本においては完全に無用かつ暗愚

 新幹線の車両の耐用年限は,東海道新幹線の場合だと当初15年~20年,現在は13年と決められている,日本における原発のように地震国の立地にありながら,40年を越えて稼働させるという利用の仕方は恐怖そのもの

 

  要点・1 南海トラフは,「マグニチュード8~9クラスの地震」の「30年以内の発生確率が70~80%(2020年1月24日時点)」とされている,人的なミスによる原発事故発生とは別個に,「3・11」時の東電福島第1原発事故に似た原発事故が起きた分には,日本国は完全に沈没状態になるか,最低でも半身不随になる

  要点・2 電力の確保・需給は原発なしでもやりくりできるにもかかわらず,大手電力会社は「当面する短期の営利観点」によってのみ,「非常に危険な,国家の存亡事態に悪影響を与える可能性が大である」原発を,それも老朽でオンボロの原発を再稼働させるという重大な危険性,これを認める日本政府

 

 「〈社説〉原発の再稼働 地域の将来像,議論を」朝日新聞』2021年6月29日朝刊

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 中国電力が再稼働をめざす島根原発2号機(松江市)について,原子力規制委員会が7年半の検討のすえ,新規制基準を満たすとする審査書案を了承した。

 全国で唯一,県庁所在地にある島根原発は,避難計画策定が必要となる30キロ圏に,鳥取県内も含め約46万人が住む。住民は計画どおりに避難できるのか。敷地の南側の断層に関する規制委からの指摘で,中電は対策の拡充を迫られたが,これで万全か。課題や不安は尽きない。

 補注)基本的な疑念を提示する。原発ではなく,火力発電所や再生エネの発電所が,このような「原発事故発生時に似た種類の危険性」の想定を,地域住民に対して必要とすることはない。いいかえれば,原発事故発生の場合に似て,火力や再生エネの発電所「格別に心配の種」(放射性物質の汚染問題)になるなどといった事態は,もとよりありえない想定である。

 もちろん,火力発電所の装置・機械が爆発事故を起こす可能性がゼロではない。つぎの記述を引用しておく。

 原発事故のニュースを毎日みてると「こんな怖い事故はない」と思ってしまいますよね...。そこで今回は近年起こった発電所関連の災害ワースト5をチェルノブイリと比べてみました。基準にとったのは死者数・損害額・被害面積。こうして歴史・統計をみてみると,エネルギー源の種類というより,それを収容する施設の設計のほうが問題なことがよく分かると思います。

 

 事故が起こった場合,もっとも多くの人命を奪い,多額の被害をもたらすのは「水」です。とくに設計がまずいダムに水を貯めてる場合は最悪で,水力発電所ダム決壊の被害はチェルノブイリの比ではありません。また,被害額では石油・天然ガス関連の事故も突出しているんですね。しかもここでは死亡者の数しか考慮に入れていません。

 

 巨額の損失を出した米キングストン石炭火力発電所の石炭フライアッシュ廃棄物流出事故(Kingston Fossil Plant coal fly ash slurry spill)とメキシコ湾原油流出事故(Deep Horizon oil spill)では,どちらとも失われた人命こそ少なかったものの,陸・海の生き物を大量に破壊しました。

 註記)「発電所関連事故ワースト5とチェルノブイリを比べてみた」『GIZMODO』2011.03.22 14:00,https://www.gizmodo.jp/2011/03/post_8708.html

 補注)この記事の指摘は納得のいく部分とそうではない部分とがある。原発事故の被害に関していえば,量的にも質的にも,また不詳・不明のまま将来に向けてつけまわしが,なされている。それだけでなく,使用済み核燃料が「トイレのないマンション」の周辺をひたすら浮浪する現状すら,適切に考慮されているとはいえない。

 

 すなわち,引用した文章はもともと比較しづらい「火力・水力発電所」と「原子力発電所」との「事故発生時における被害発生の問題」を語っているが,そもそも双方の発電方式が「時間の軸」(歴史の流れ)のなかで残していく「被害状況の基本的かつ具体的な相違性の軌跡」は,当面する検討事項のなかには取りこまれていない。

 

 科学的な性格としては質的にも絶対的な差異をもたらす,すなわち「原発側の事故発生」がとくに将来にむけて影響を残していく重要な要因を軽視した議論になっている。「火力・水力発電所」も「原子力発電所」も大事故を起こしたさいには,深刻な被害を生むことに変わりはない。けれども,両者の事故発生にさいして,技術経済面と地域社会面に与えるその被害次元の質的相違は,けっしてないがしろにできない問題となる。

 

 東京電力はなぜ,東京湾内沿岸地帯には火力発電所を多数立地・配置させてきたのに,原発は1基も置いていなかったのか? この1点の疑問を突きつけただけで,以上のごとき疑問が,強く提示されてよい事由が理解できるはずである。

 

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 付記)この地図のなかにある,東電の火力発電所についてくわしくは,つぎを参照されたい。

   ⇒  火力発電所|数表でみる東京電力|東京電力ホールディングス株式会社

 〔記事に戻る→〕 島根県松江市をはじめとする地元自治体の同意の動向が今後の焦点だ。再稼働ありきの判断は許されない。住民の安全・安心を最優先すべきである。さらに訴えたいのは,地元の住民を中心に,地域の将来について考えることの大切さだ。

 松江市では2018年末から2019年初めに,有志の呼びかけで市民協議会が開かれた。選挙人名簿から無作為抽出で選ばれ,参加を承諾した主婦や会社員,高齢者ら21人に,事務局の一部を担った島根大の学生5人もくわわり,計4日,議論を重ねた。

 原発については賛否が対立したままになりがちだ。その壁を乗り越えるため,無作為抽出での議論を各地で支援しているシンクタンク構想日本」の協力をえて,工夫をこらした。

 特定の結論を打ち出すことは最初から放棄した。傍聴席の一般市民も含めてヤジは禁止。大学の専門家や中電の幹部を招き,エネルギー政策の変遷や原発が生む雇用,税収なども確認しながら,参加者は「他者の発言をじっくり聞いて,自分の頭で考える」ことに努めた。

 「経済効果の大きさを痛感」「何代も先の子どもが安全に暮らせるように」「どう考えたらいいか,堂々めぐりになった」。

 発言をもとにまとめた「九つの提案」は,原発について「誰かが考えるのでなく,自分の問題とする」「どう暮らしたいかを問う」「情報に触れる機会を増やす」など,目新しさには乏しい。ただ,立地地域の大半が高齢化や人口減少に直面するなか,原点に立ち返ったこうした議論こそ必要ではないか。

 運転開始から40年を超えた老朽原発が再稼働した福井県では,経産省を事務局に,自治体や電力会社のトップらがメンバーとなって「立地地域の将来像共創会議」が今月発足した。ところが,初会合では原発を抱える4市町がそれぞれの地方創生戦略を強調するばかりで,実務者協議を経て秋の次回会合で早くも基本方針を示すという。

 これでは,原発の維持・再稼働に対し,予算配分や地元協力を約束する場になりかねない。住民をまじえての議論が求められることを思い起こすべきだ。(引用終わり)

 限られた字数での社説文章とはいえ,やや食い足りない内容であった。前段の補注中に触れていたが,なにゆえ,原発は過疎地に立地するのかという事実については,初歩的な言及すらなかった。

 原発の経済効果をウンヌンしたいのであれば,大事故を起こしてしまった東電福島第1原発の場合でなくとも,事業としては初めから採算がとりにくい〈事業〉であった点を,よく理解しておくべきである。この事実は,東芝原発事業で大失敗を冒してきた事実を介しても,さらに説明されている。

 原発に関しては電源三法がある。これは,1974(昭和49)年に制定された

   「電源開発促進税法」

   「電源開発促進対策特別会計法」

   「発電用施設周辺地域整備法」

を総称するものである。立地地域に対して “発電所の利益” が十分還元されるようにも工夫しておいた制度である。

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 そのように,「立地地域に発電所の利益が十分還元されるための制度でもある」「電源三法」にくわえて,大手電力会社に対してはつい最近まで,「地域独占の企業体制」および「総括原価方式」が保障されていたからこそ,原発が地方の過疎地域に立地できていたという経緯があった。

 アメリカでは,1979年3月28日に発生したスリーマイル島原発事故が,事故の深刻度の水準としては7段階のうち5段階であったものの,それ以降,国内における原発の新設を抑制させる要因になっていた。

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 またアメリカでは “business is business” に徹する国として,採算のとれなくなった原発は休止・廃止させることが当然になっていた。21世紀にはいって原発ルネッサンスが叫ばれたところに,2011年「3・11」が日本の東電福島第1原発事故として発生し,さらに原発の新設に至ってはきわめて消極的になった局面を迎えていた。

  原子力発電所はもともと,発電にさいしていくつかの問題を抱えている。20世紀末には,原子力撤廃の流れが生まれたなかで,原油の価格高騰と地球温暖化防止を背景として,原子力発電所の建設を推進する動きが再び出てきた。

 

 しかし,2000年代後半に鋼材などの材料費が高騰し(たとえば,アメリカで150万kwの原子炉を建造する場合,2005年ころには約30億ドルで可能だったのが,2008年には約70億ドルとなった,原子力発電所は政府の支援抜きには語れない存在となっていった。

 

 2002年時点では,原発の数は世界で400基に達し,発電量のトップ5はアメリカ,フランス,日本,ドイツ,ロシアである。同年,発電量に占める割合は,フランス77パーセント,ベルギー57パーセント,ウクライナ44パーセント,韓国36パーセント,日本33パーセントであった。

 

 2011年に発生した福島第1原子力発電所事故の影響により,ヨーロッパ諸国では脱原発再生可能エネルギーへのシフトの機運が高まっているが,アメリカ,日本,フランス,中国,ロシア,韓国,カナダなどの原発メーカーによって,脱原発の道を選んだ一部ヨーロッパ諸国(ドイツ,イタリア,スイス,スペインなど)以外での原発新設の受注を狙っての競争が激化している。

 註記)以上,ウィキペディア参照。

 原発は各国が国策的に採用してもいる発電方式であるゆえ,採算の点,いいかえれば事業経営のあり方では「資本の論理」から大きくはずれがちになる要因を抱えこんでいる。核兵器生産という軍事的な背景もみのがせない。いずれにせよ,もしも原発事故が発生した時は,ほかの発電方式とは質的・次元的に異なった,それもその深刻度(時間的かつ空間的)において尋常ではない被害を必至とする。

 以上に引用した『朝日新聞』本日「社説」に並べて,同じその12面「オピニオン」の「声」欄には,つぎの読者からの投書を採用・掲載していた。社説にほうではすっきりしなかった論点を,つまり『朝日新聞』の基本的な立場に相当する考え方を,こちらの投書主に代弁させている。

   ★〈声〉原発「再評価」は阻止すべきだ ★
      = 医師 池野浩行(静岡県 62歳)=

 

 「環境分野のノーベル賞」と呼ばれるゴールドマン環境賞を平田仁子さんが受賞した。東日本大震災後,「原発よりはまし」と石炭火力発電の建設が再び注目されるなか,その建設予定地に足を運び,気候変動や大気汚染の危険性を訴えたという。その功績にみあう評価だろう。

 

 一方,石炭火力が「原発よりはまし」との考えは,現状では一理あると思う。地球を破滅から守るため全力で取り組む人たちには,水を差す暴論かもしれない。太陽光や風力発電など自然エネルギーの開発・普及は喫緊の課題だが,それらで全電力が供給可能となるまで,最小限の石炭火力利用は不可避とも思う。

 

 いま,私がなにより危惧するのは,原発の「再評価」だ。脱炭素の名目で最近さらに力を増している。この流れは阻止しなければならない。原発は過酷事故の可能性を常に抱える。東京電力福島第1原発の事故を思い出してほしい。いったん事故が起きると,被害の甚大さ,人類への悪影響は石炭火力とは桁違いだ。

 

 全原発の即時停止と早急な廃止が最優先されるべきだ。日々あまり考えもせずに電気の恩恵を受けながらおこがましいが,私はそう思う。

 

 東京新聞』の報道から関連する記事をとりあげ議論する

 『東京新聞』は,常設の調査・解説記事欄として『原発のない国へ』を儲けている。原発反対の立場が鮮明である東京新聞社の主張・論旨であるゆえ,① で言及した論点をめぐり明快な報道をしている。なにゆえ,原発だけがとくに,このような関心をもたれて社会問題化していたのか,という意識が必要と思われる。


 1)「県庁所在地に唯一立地する島根原発2号機が新基準『適合』 規制委が審査書案を了承」『東京新聞』2021年06月23日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1790

 原子力規制委員会は6月23日の定例会合で,中国電力島根2号機(松江市)の事故対策が新規制基準に適合するとした審査書案を了承した。事実上の新基準適合判断となる。1カ月の意見公募(パブリックコメント)を経て正式決定する。新基準適合は10原発17基目。中国電は対策工事を2021年度中に終える予定で,それ以降の再稼働を見込んでいる。

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 島根原発は全国で唯一,県庁所在地に立地。避難計画の策定が義務づけられる30キロ圏内には島根,鳥取両県の6市があり,人口は約46万人に上る。そのうち,寝たきりの高齢者や障害のある人ら避難時に支援が必要な住民は約5万2000人。30キロ圏内人口が約94万人と最多の日本原子力発電東海第2原発茨城県)周辺の要支援者約3万8000人を上回り,避難計画の実効性が課題となる。

 補注1)この段落は,原発「事故発生時」における緊急避難対策としての「計画策定」を話題にしている。だが,こうした,それも「放射性物質」の発生状況から住民を避難させるための「計画策定が必要である」という点には,格別な留意が要請される。

 前段でも触れてみたが,東電管内でも東京湾内には火力発電所が多数立地しているが,原発は1基もなかった。しかも,東電が保有している〔いた〕原発は,すべて管内ではなく福島県東北電力管内)と新潟県(同)のものである。

 補注2)東電福島第1原発は6基,同第2原発は4基を設置している。しかし,現在では全基の廃炉が決定している。東電柏崎刈羽原発は7基あるが,東電はそのうちの6・7号機の再稼働をめざしてきたが,いまだに1基も稼働できていない。

 「3・11」以降の東電は,原発の稼働なしで営業してきた。東電はその間,国側からは最大限の資金援助を行政的にえており,倒産することもなく,ゾンビ企業として〈りっぱに〉生きのびてきた。

 東電の場合,もしも,東京湾内に原発が存在していたと仮定する話となるが,島根原発のように,事故想定時における地域住民の避難計画を用意する手順は,最初から準備不可能である。この点は,原発という怪物的な特性を端的に説明する。

〔記事に戻る→〕 原発の再稼働には立地自治体の同意が必要になるが,島根県松江市は取材に対して,いずれも賛否を明らかにしなかった。

 中国電力は2013年12月に規制委へ審査を申請。審査では,原発近くの宍道断層の長さを申請時の22キロから39キロに見直し,耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)を引き上げた。最大の津波高さも,申請時から2.1メートル高い11.6メートルを想定し,海抜15メートルの防潮堤を建設した。

 中国電は建設中の3号機の審査も2018年に申請している。3号機はほぼ完成しており,審査を通過すれば,東京電力福島第1原発事故後としては初めての新設炉の稼働になる可能性が高い。(引用終わり,以下後略)
 
 さて,瀬尾 健『原発事故…その時,あなたは!』風媒社,1995年6月は,2011年5月20日に6刷を発行していたが,日本各地に立地する原発が事故を起こした場合の,そのシュミレーション(被害予想観測)を試みていた。全国の原発(当時)から17か所の原発を選び,事故発生時に関するシュミレーションを展開し,いかに事故が身近で大惨事を招き,そして広範囲に長期にわたる影響を及ぼすかを分析,説明していた。

 瀬尾 健の同書の危惧は,「3・11」に発生した東電の原発事故には活かされなかった。政府側当局は当時 “SPEEDI” を運用していながら,被災地住民のために観測した資料を提示しなかった。

 補注)なお,「SPEEDI」⇒「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム,System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information」)とは,原子力施設が事故を起こし,自然環境の中に多量の放射性物質が放出された時に備えて災害対策用として,日本原子力研究所を中心に気象研究所などの協力をえて開発された,計算による環境影響の予測を迅速におこなう計算システムである。

 しかし,「3・11」直後に発生した原発事故おいては,この SPEEDI がまともに利用されなかった。ウィキペディアから該当する段落を以下に引用するが,当時,経済産業省の関係部署が露呈させた “呆れるくらいのデタラメさ加減” が分かるはずである。

  ▼ 福島第1原子力発電所事故における試算 ▼

 2011年3月に起きた福島第1原子力発電所事故では,3月11日夜以来,原子力安全・保安院が,12日未明以来に文部科学省が,多数試算してみていた。

 その試算では,福島第1原子力発電所のプラントデータを配信する緊急時対策支援システム(ERSS)のデータが使用不能になっていたため,放射性物質放出量の条件については仮想事故データなどの仮定を入れて,実際の風向きなどでの20~100km四方程度の地域について一定時間後の各地の大気中濃度,地表蓄積量などを SPEEDI で出して配信した。

 SPEEDI は100億円以上かけて開発され,事故後5,000枚以上の試算結果があったとされるが「試算なので国民の無用な混乱を招くだけ」と判断されたため,一般国民に情報公開されず,自治体が住民避難を計画する参考にも供されなかった。情報を非公開としたことにより,放射性物質の飛散方向と同じ方向に避難した住民を多く発生させてしまい,強い批判を受けた。

 補注)ここでいわれている「試算なので国民の無用な混乱を招くだけ」だと表現された文句は,官僚組織側に不可避であった当時の混乱状況を棚に上げての戯れ言であった。つまり,責任回避のために量れた「事後の逃げ口上」。

 情報を非公開としたことについては,のちに日本国政府が「パニックを避ける」ことを優先させすぎたがゆえの誤判断だったと認め,謝罪している。しかし,事故直後の3月14日に,文部科学省は試算結果を外務省を通しアメリカ軍に提供していた。

 補注)対米従属国日本の官庁組織のやることがこれである。より正確にいうとしたら,自分たちがパニックになったためか,宗主国に対してだけは(あわててだが)きちんと SPEEDI の分析を報告している。自国民の命などそっちのけの姿勢があからさまに出ていた。

 また,原発立地地域の住民に対する従前の説明では,万一の事故時の避難にさいしては SPEEDI のデータを活用する前提であると説明していたことが,明らかになっている。

 情報公開を求める声が多く,〔2011年〕3月23日に一部が公開されたが,国会で全容の公開が強く求められた結果,5月になって試算結果が関係省庁のサイトに揃って公開された。

 補注)当時,役立たずだったのは SPEEDI という装置じたいではなくて,むしろ国家官僚たちであった。そう批判されてよい典型的な事例が発生していた。

 2011年9月2日,原子力安全・保安院は,かつて存在した日本の官公庁のひとつで,原子力その他のエネルギーに係る安全及び産業保安の確保を図るための機関であり,経済産業省の外局である資源エネルギー庁の特別の機関であった。 2012年9月19日に廃止され,環境省の外局である原子力規制委員会へ移行した。

 同院は,3月11日の事故以後の緊急時対策支援システム(ERSS)による事故進展予測試算結果を公表した。それによれば全電源喪失による原子炉停止から1号機では15時間22分後,2・3号機では8時間35分後の炉心溶融を予測し,さらに格納容器過温破損とその後1時間後,5時間後,10時間後の放射性物質の放出率(Bq/h)や環境中の残存量率(Bq)を予測した。

 補注)原発事故時に現象する危険な事態は,その原子炉が溶融するに至るまでが,いかに早く進行していくかという経過に現出する。従来の物質が燃える場合には考えられないほどの高温の,3千度にもなった炉内では事故発生とともに急速に炉心溶融が開始する。

 また1号機の予測結果をもとづき, SPEEDI での放射性物質の拡散予測・試算などもおこなっていたが,総理大臣官邸危機管理センターには2・3号機の緊急時対策支援システム(ERSS)の予測を送付しただけで,SPEEDI での放射性物質の拡散予測結果は報告していなかった。原子力安全・保安院で解析した45件もそのうち2件のみしか送付しなかった。

 送付しなかった理由は分からないが, SPPEDI の結果を使うという思いが至らなかった。問題があったとしている。危機管理センターに送付された結果は官邸でどのように生かされたかはまったく分からない。保安院から官邸側に説明がおこなわれた形跡もないとし,情報が適切に伝わらなかった可能性を認めている。1・3号機の予測値は9月2日に初めて公表された[10]。

 一方,2011年6月17日の参議院東日本大震災復興特別委員会にて,自由民主党の森まさこが,高木義明文部科学大臣に対して,3月12日に SPEEDI の算出結果を公開しなかったことを質問したところ,高木は「現地情報がないため計算できなかった」と答弁したが,保安院の指示で文部科学省所管の原子力安全技術センターが計算していることをさらに問われると,「計算していることを私はしらなかった」と答弁した。

 2012年3月3日の『中国新聞』によると,2011年3月15日,政務三役らが出席した会議において,SPEEDI の計算結果を高木らがみて「一般には公表できない内容であると判断」し,他のデータを用意することになったという。

 このときは,原子炉内のすべての放射性物質の放出を想定し「関東,東北地方に放射性雲が流れるとの結果が出た」と広範囲な流出も予測したという。文部科学省が最悪の事態を想定し,計算を繰り返していたことが明らかになった。なお,翌3月16日の三役会議において,文部科学省はデータの提供に徹し評価はせず,今後は原子力安全委員会が公表すると,鈴木寛副大臣が提案し合意されたという。(参照終わり)

 いざ,緊急事態が発生した時,その政府・内閣(中枢部)が記録してきた情けない対応ぶりが把握できるが,とくに経済産業省の外局である資源エネルギー庁の特別機関であった原子力安全・保安院が,肝心な時に役立たずであった事実がみのがせない。同院は「原子力その他のエネルギーに係る安全及び産業保安の確保を図るための機関」であったはずであった。だが,単に恥さらしをしただけでなく,「3・11」の原発事故時においては被災地の地域住民を右往左往させるだけという体たらくぶりを記録していた。

 2)「原発再稼働の同意権どこまで? 『事故が起きれば被害は同じ』 島根2号機の周辺6自治体が要望」『東京新聞』2021年06月23日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1791

 原子力規制委員会が事実上の新規制基準「適合」と判断した中国電力島根原発2号機(島根県)の再稼働をめぐっては,地元自治体の同意が今後の焦点になる。中国電自治体との協定で,事前了解が必要なのは原発が立地する県と松江市だけ。避難計画の策定が義務づけられる30キロ圏内の6自治体も,事前了解の権限を認めるよう中国電に求めているが先行きは不透明だ。

 東京電力福島第1原発事故では被害が広範囲に及んだことを受け,各原発周辺では立地自治体に限られた事前了解権の対象を広げる動きが活発化した。

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 2018年には東海第2原発茨城県)の再稼働をめぐり,30キロ圏内の6市村を事前了解の対象にした全国初の協定を,日本原子力発電自治体と結んだ。東電柏崎刈羽原発新潟県)でも,地元議員らが対象拡大をめざす運動をしている。

 島根原発でも,鳥取県と県内2市が2012年に事前了解権を認めるよう中国電に協定の見直しを申し入れており,島根県内の3市も「事前了解権は必要」との姿勢だ。鳥取県平井伸治知事は今〔2021〕年3月の県議会で「中国電に投げたボールが返ってこないかぎり,再稼働の議論を前に進めることはむずかしい」との見方を示した。

 一方,立地自治体である島根県の丸山達也知事は〔3月〕23日の記者会見で,「松江市と周辺自治体との意見が異なり,私がどちらかにくみするつもりはない」と静観する姿勢を示した。

 中国電は,協定見直しを求める周辺自治体に「協定の運用は立地自治体と同様にする」と回答したが,事前了解権を認めるか言及していない。本紙の取材にも「自治体と協議中で回答は控える」と明言を避けた。(引用終わり,以下後略)

 大規模水力発電所の下流地域や大規模火力発電所がある周辺地域において,住民たちとのあいだで以上のごとき交渉や了解や合意が必要となることは,通常ではありえない。日本だけの問題ではないが,レベル7の最高段階の原発事故が再び起きた分には,日本は壊滅的な悪影響を受けるに「決まっている」。そう断言していい。

 それでも原発を再稼働させ,新増設させたいと思っているのか? 愚かなことである。ちなみに昨日〔2021年6月288日〕の日本経済新聞「社説」は,つぎの題名を付して論説を語っていたが,あいもかわらず原発に執心する見地を捨てられないでいる。『日本財界新聞』という異名たりうるゆえんである。


 「〈社説〉エネルギー政策の議論を停滞させるな」日本経済新聞』2021年6月28日朝刊(抜粋・引用)

 脱炭素は経済・社会構造の変革を伴う挑戦だ。もたついている余裕はない。経済性や安全保障とのバランスを考えながら,排出ゼロを達成する方策を,国は逃げずに議論すべきである。

 排出ゼロの実現は,温暖化ガスの排出量が多い石炭や石油などの化石燃料を減らし,太陽光や風力などの再生可能エネルギーを増やすことが基本だ。そこに原子力発電をどう位置づけるのか。原発は発電のさいに温暖化ガスを出さないが,東京電力福島第1原発の事故以降,国民が向ける目はきびしい。

 補注)「原発は発電のさいに温暖化ガスを出さない」という点は,完全なる誤説であるゆえ,そもそも,「国民が〔原発に〕向ける目がきびしい」という点とは,基本的になにも関連はなかった。「原子力発電をどう位置づけるのか」というもっともらしく表現された文句そのものからして,疑問があった。

 関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)が,運転開始から40年を超す原発として初めて再稼働した。長期で考えると,古い原発を使い続けることは抜本的な解決策にはならない。運転期間を延ばしても,このままではいずれ稼働する原発はなくなる。

 補注)日本経済新聞の立場からだとすれば,原発を40年以上も稼働させることの「工学的な危険性」をも「営利の観点」に当然からませて議論すべきである。ところが,こちらの技術経済的に原発が抱えている困難には,いままでどおりいっさい触れない。

 まず,再生エネを最大限伸ばすことに注力すべきだ。ただ,必要なエネルギーを満たせるまでには時間がかかるだろう。その間,原発を使わざるをえないとすれば,古い原発を建て替え,安全性を高めた最新の原発に代えることも考えるべきではないか。

 補注)再生エネの導入・利用が十分に整備させるまでは燃焼効率の非常に高い火力発電(LNG利用)を活用すればよい。わざわざオンボロの原発を再稼働させるとか,原発そのものをさらに新設するといった発想は,「経済の論理」に照らして判断するまでもなく,ただ不採算の経路にはまりこむほかない。なにゆえ,この程度にまで分かりきって矛盾する主張を,日本経済新聞はできるのか? だから日本財界新聞に名称を変更しろと,たびたびいわれる。

 経済性にみあうのか,立地地域の理解をえられるのかなど課題は多い。福島の復興や使用済み燃料の最終処分など原発が抱える問題に向き合う努力も欠かせない。

 補注)「経済にみあうのか」と断わってはいるものの,経済性どころか採算そのものすらおぼつかいほどの高額な原発を,あえて製作して輸出しようとした日本の製造業(東芝日立製作所三菱重工)は,原発事業において完全に失敗していた。10年前までであれば1基5千億円で売る原発が,その後,日本国の原子力規制委員会のよりきびしい指導(安全基準達成)にしたがい製造される原発としては,販売価格がその倍の1兆円に高騰していた。

 つまり,原発が「経済にみあうのか」という問題提起じたいが愚問であった。日本経済新聞社の社説としては,どうみても,掘り下げ不足がめだつ稚拙な記述が提示されていた。

〔記事に戻る→〕 しかし,石炭火力に対する批判は強まり,高効率であっても使いつづけることはむずかしくなるだろう。原発も石炭も欠いてはエネルギー供給の青写真を描ききれず,日本経済の土台が揺らぎかねない。

 補注)日経のこの社説は石炭火力には言及しても,LNG火力発電には触れようとしない。議論そのものに公正性・客観性がない。意図的に原発推進の気分を盛り上げるための姑息な議論を立てている。

 海外では緊急時の原子炉の冷却方法に工夫をこらし,安全性を高めた小型炉の開発が進む。新技術の潮流を追求し,脱炭素の選択肢とすることを放棄すべきでない。

 補注)原発に関してだが,小型炉といままでの大型炉をいっしょくたに話題にしたところで,現状において日本がまだ抱えている多くの原発の再稼働問題が,同時並行的に片付くというわけではない。原発は小型でも大型でも基本で抱えている危険性に変わりはない。

 もうすぐ衆院選を控える。自民党政権原発の位置付けの議論に正面から向き合うことを避けつづけてきた。今回のエネルギー基本計画をめぐる議論の足踏みもその繰り返しなら残念だ。

 補注)自民党政権原発の維持・新増設に自信をもてないでいる。国民の7~8割が反対している原発利用である。日経の社説は財界向けの「原発活用のための洗脳」に努力している様子がみうけられるが,つぎの最後の段落に対する結論は,とうに明白になっていたはずである。

 原発を使いつづけるのか,やめるのか。つづけるならどうするのか。その答えを出さないかぎり,エネルギー政策の停滞はつづく。原発の将来を議論する時だ。(引用終わり)

 原発抜きで日本のエネルギー政策を進展させればそれでよい。しかも簡単に済む議論を,このように「いかにも,原発が恋しい!」みたいな論調を前面に出して語っていた。

 しかし,本日〔6月29日〕『日本経済新聞』朝刊13面「特集 脱炭素」という紙面の全体に関してだが,奇妙なことに原発という文字はまったく登場しない。不思議,あるいは,奇怪。「投資家は原発に向かい,なんといっているのか」?

 

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【本編の続編】⇒  老朽原発を再稼働させる日本のエネルギー政策は,後進国的体制風の電源確保をいとわない愚かな方途,再生エネを全面的に導入・利用する体制の構築を妨げる電力政策は愚の骨頂(続) - 社会科学者の批評

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