老朽原発を再稼働させる日本のエネルギー政策は,後進国的体制風の電源確保をいとわない愚かな方途,再生エネを全面的に導入・利用する体制の構築を妨げる電力政策は愚の骨頂(続)

 中国やロシアのように強権独裁政治の国家ならばさておき,いまどき原発,それも40年ものの老朽原発を再稼働させ,再生エネの本格的な普及を妨害するエネルギー確保法は,時代錯誤である どころか,21世紀の日本においては完全に無用かつ有害

 新幹線の車両の耐用年限は,東海道新幹線の場合だと当初15年~20年,現在は13年と決められている,日本における原発のように地震国の立地にありながら,40年を越えて稼働させるという利用の仕方は恐怖そのもの

 原発の再稼働や新増設ばかり主張し,21世紀におけるエネルギー問題の趨勢がどこへ向かっているかを正視したくない日本経済新聞は,ひたすら「原発」に偏重した姿勢,つまり視野狭窄の観点から時代錯誤のズレまくった関連記事しか書けないのか

 

  要点・1 南海トラフは,「マグニチュード8~9クラスの地震」の「30年以内の発生確率が70~80%(2020年1月24日時点)」とされている,人的なミスによる原発事故発生とは別個に,「3・11」時の東電福島第1原発事故に似た原発事故が起きた分には,日本国は完全に沈没状態になるか,最低でも半身不随になる

  要点・2 電力の確保・需給は原発なしでもやりくりできるにもかかわらず,大手電力会社は「当面する短期の営利観点」によってのみ,「非常に危険な,国家の存亡事態に悪影響を与える可能性が大である」原発を,それも老朽でオンボロの原発を再稼働させるという重大な危険性,これを認める日本政府 

【本編の前編】

  


 「エネ基本計画,『原発建て替え』盛らず  脱炭素の道筋,不透明に」日本経済新聞』2021年6月30日朝刊1面

 経済産業省は今夏をメドに策定するエネルギー基本計画に,将来的な原子力発電所の建て替えを盛りこまない方向で調整に入った。東京電力柏崎刈羽原発で不祥事が相次ぐなど原発への信頼回復ができていないと判断した。原発建て替えの明記を見送ることで,2050年の脱炭素社会の実現に向けた道筋が描きにくくなる。(関連記事経済・政策面に)

 国の中長期のエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画はおおむね3年に1度見直しており,作業が大詰めを迎えている。二酸化炭素(CO2 )の排出抑制につながる原発の建て替えを明記するかどうかは,エネ基本計画見直しの最大の焦点となっていた。

 補注)いつも指摘する論点になるが,「二酸化炭素(CO2 )の排出抑制につながる原発の建て替え」という表現そのものが,現在では間違えた観点である。原発は,その建設段階から廃炉段階までの「全・利用工程」を概観すると,火力発電のほぼ半分くらいの二酸化炭素を排出する。そして発電時にかぎっては「二炭酸を排出しない」といってわざわざ強調される常套的な〈断わり〉は,原発「観」にまつわって,たいそうあやしげな「婉曲の表現」を示唆する。

 「3・11」の事故現場となった東電福島第1原発(6基)だけでなく,すぐ近くに立地する東電福島第2原発(4基)も廃炉の措置になったというニュースは,日本では当時まで最大基数の原発を所有していた東電が,新潟県に立地する柏崎刈羽原発の全7基も,いまだに再稼働できない実情のなかで(そのうちの2基を稼働したがっているが),もはや,原発を電力生産に大いに利用してきた電力会社の立場からの「原発の再稼働」は,非常に困難になっている。当面は,原発の稼働に関しては実質ゼロの状態をつづけるほかない。

 註記)「福島第2原発廃炉計画を認可   原子力規制委」nikkei.com 2021年4月28日 12:12,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA27EIC0X20C21A4000000/

 ちなみに上記の日本経済新聞記事によると,「福島第2原発の全4基の廃炉を決め,2020年5月に廃止措置計画を規制委に提出していた」東電は,「今後,福島県富岡町楢葉町から計画実施の了解をえ」てから,

 「提出時の計画によると,施設の解体には約2800億円かかると見積もっていた」廃炉「作業は4段階に分けて進め」ることなり,「第1段階では10年かけて汚染状況の調査や放射線管理区域外の設備の解体などをする」ということであった。

 つまり,40年をかけて福島第2原発廃炉工程を完了させるもくろみである。しかし,原発廃炉工程が40年でその工事全部を終えられるという保証はない。欧米諸国の実例でも「40年」で完了させられるといった実例はみいだしにくい。

 「原発廃炉」といういわば「原発利用」の後始末,その静脈産業的な廃炉という問題側面については,本ブログ筆者が検索するたびに関連して登場するのが,鈴木 耕『時々お散歩日記』148,2013-08-21http://www.magazine9.jp/osanpo/130821/ の記述,題目は「廃炉作業の費用と期間に隠されている原発の真っ黒な現実。廃炉だけに特化した『廃炉庁』を早急に作れ!」であった。

 どだい「原発廃炉工程」が40年で済むかのように説明するのは,完全にまやかしのヘリクツ,ないしは虚偽に近い言説であった。鈴木 耕はいまから7年前にこう指摘していた。ここは補注の記述のなかであるが,さらに少し長い引用になる。

 イギリスは「廃炉先進国」といわれている。その先進国が「廃炉には計90年かかる」と想定しているのに,日本の場合,たとえば東海原発ではこんな工程表が作成されている。

 

  原子炉領域解体前工程  1998~2013年( 16年間)

  原子炉領域解体撤去   2014~2019年(  5.5年間)

  原子炉建屋解体撤去   2019~2020年(  1.5年間)

  原子炉領域以外の撤去  2001~2020年( 18.3年間)

  放射性廃棄物の短期処理 1998~2020年( 23年間)

  原発廃止後の高レベル放射性廃棄物の恒久処理・隔離・管理に関しては未定。数千~数万年が必要(2020年~ )

 

 この工程表を,前出のイギリスの例〔⇒「『解体先進国』  英の原発(は)稼働26年 廃炉90年」という説明〕と比べてみるがいい。その楽観的見通しに愕然とする。東海原発は2020年までに,つまり,作業に入ってから23年間ですべての廃炉処理が終了するとしているが,イギリスの場合は90年間を要する,といっているのだ。

 

 出力はほぼ同じ程度だし,炭酸ガス冷却炉方式も同じ。ならば,なぜこんなにも処理期間に差があるのか。日本の廃炉技術がイギリスと比べ,3分の1ほどに期間を短縮できるほど進んでいるというのか。

 

 東海原発の場合はともかく,東電福島事故原発の最終的廃炉に,いったいどのくらいの期間が必要なのか。東電によれば,こんな具合だ(NHK〔2013年〕6月27日配信)。

 

  東京電力福島第1原子力発電所廃炉に向けた工程表の改訂を,政府と東京電力は,27日の会議で正式に決定しました。(略)

  溶け落ちた核燃料の取り出しを始める時期について,1号機から3号機の号機ごとに差をつけているのが特徴で,もっとも早いケースでは,1号機と2号機でこれまで目標としていた平成33年(=2021年,注・NHKはなぜか西暦を使わない)度末より1年半,前倒しするとしている一方,

  現場の状況によっては,すべての号機で反対に遅くなるおそれもあるとしています。そして,核燃料を取り出したあとの原子炉建屋の解体など,廃炉の作業は最長40年に及ぶとしています。(略)

 

 ほとんど絵に描いた餅だろう。

  補注中の 補注)この指摘・批判のとおりになっていた。原子炉内に溜まっているデブリの取り出し作業にかかれる時期は,東電自身がまともに答えられる「廃炉工程」関係の事実ではありえなかった。実際には「現場の状況によっては,すべての号機で反対に〔ズルズルとひたすら〕遅くなるおそれ」だけが,現実的にたどってきた日程として記録されている。そして,いまもなお,そうした事態は確実に継続しており,進行中である。東電側がいろいろと外部向けに広報する関連の情報は,聞くたび・みるたびに,失望感しか与えてこなかった。

 

〔鈴木 耕に戻る→〕 安定的に冷却停止し,スムーズに廃炉作業に入った小規模の原発でさえ,イギリスの場合は90年が必要といっているのだ。溶融核燃料がどこにあるかさえ分からず,現在も大規模な高濃度汚染水の漏出を止めることすらできていない東電や政府が,廃炉作業は「最長で40年」… 。よくもこんな工程表を恥ずかしげもなく発表できるものだ。

 

 廃炉費用にいたっては,日本政府(経産省)の試算のいい加減さは目に余る。

 以上,鈴木 耕の指摘・批判は,格別に卓越した原発廃炉工程」観ではなくて,欧米で実際に体験してきた廃炉作業の「基本的に困難である道程」に触れたに過ぎない。そもそも,40年前後の耐用年数になる「原発のその後につづく廃炉工程」(後始末作業)に要する年数が,なんとその何倍にもなるなどといった話は,それこそ極度にトンデモでベラボウなそれであった。

 そのように超困難な技術特性をもつ原発は,本来,発電のために利用すべき装置・機械ではなかったのである。要するに,単に原爆の応用技術であったゆえ,「原子力の平和利用(Atoms for peace)」などといった標語は,《悪魔の火》の本性から逃れえない原発の本質を,美しく粉飾して化けさせようとしたに過ぎない。それにしても滅相もないかたちで,原子力の「平時利用」がしくまれ,実現していたものである。

〔ここからは,日経記事にあらためて戻る→〕 法律上の稼働期間の上限である60年に達する原発が今後出てくることから,政府として建て替えを進めていく方針を明記し,将来にわたって原発を活用する姿勢を示せるかに注目が集まっていた。東電福島第1原発の事故後の2014年に策定したエネ基本計画で,原発建て替えの表現を削除して以来,建て替えの記載は消えたままだった。

 〔2021年〕7月にも原案を示す新たな計画では建て替えを明記しない方向だ。判断を先送りし,3年後に計画を見直すさいにあらためて判断する。

 国内の原発は建設中の3基を含め36基ある。東電福島第1原発の事故後,再稼働できたのはこのうち10基にとどまる。直近では東電柏崎刈羽原発でテロ対策の不備など不祥事が相次ぎ,信頼回復が遠のいている。

 原発はCO2 を排出しない脱炭素電源だ。政府は2030年度までに温暖化ガスの排出量を2013年度比で46%以上削減し,2050年には実質ゼロをめざすと決めた。エネ計画について議論する経産省有識者会合でも「最大限活用すべきだ」との指摘が出ていた。

 補注)この段落では,「原発はCO2 を排出しない脱炭素電源だ」といったごとき,そもそもの基本からして,おおよそ事実に反する立言が堂々と反復されている。だが,原子力が「脱炭素電源になる」という原発に関する理解は,虚説であった。

 原発事故には電源喪失ということばが,とくに重要な用語として関係してくる。みずから電力を生産する原発が,いざという時,発電所内で故障が起こり,発電じたいに不具合が起きてしまった状況においては,外部からの電力を供給してもらわねば,ただちに「事故(原子炉の溶融という危険な事態)」につながるという技術特性は,原発の最大の弱点であった。

 東電福島第1原発事故の原因もそこにあって,「原発はCO2 を排出しない脱炭素電源だ」という強調点は,実はこの種の裏腹である「原発の特徴」,事実としてはその最大の弱点をも物語っている。

〔記事に戻る→〕 地球環境産業技術研究機構(京都府木津川市)が5月にまとめた脱炭素のシナリオ分析によると,原発の活用は電力コストの上昇を和らげる効果もある。

 2050年に再生エネで電力すべてを賄うと電力コストはいまの4倍程度に増える。送電網の整備などに大きな費用がかかるとみこまれるためだ。一方,再生エネで5割,原発で1割を賄うケースでは2倍程度に上昇を抑えられると試算する。(引用終わり)

 この日経記事で最後の記述は,ほとんど詐術的話法であった。

 第1に「2050年に再生エネで電力すべてを賄うと電力コストはいまの4倍程度に増える」という,いいかえれば,ほとんどデマのごときいいぶんは,これまで再生エネの原価がどれほど急激に下降してきたかについて,まともに考慮に入れた主張ではない。

 第2に「送電線の整備」という問題に関するこの記事は,原発を100%稼働(現有の原発が全基稼働状態)を想定しており,現在における送電線利用状態を完全に無視している。つまり,実際にはかなり多くが空いていて,遊んでいる送電線を,それもわざと利用させないために,再生エネを電源とする電力の送電を妨害する理由として,けっして現実の状態ではない「原発全基稼働状態での送電線利用」を騙り,これを常態であるかのように主張していた。

【参考資料】-2021年6月23日現在,原発稼働状況一覧-

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 日経の記者がその程度の事実をしらないわけがない。本当にしらないで「送電線の整備」を語っているとしたら,記者失格である。しっていてそれでも,以上のように記事をまとめているとしたら,原子力村の召使いである日経記者の立場に対して〈哀れ〉を感じる。

 

  日本の原子力関連行政は「3・11」後,暗礁に乗り上げたまま今日まで来た

 本日〔2021年6月30日〕『日本経済新聞』朝刊の記事は,① に関連する記事として5面「経済・政策」に,つぎの報道を掲載していた。 

  原発政策,空白続く 技術磨く欧米に後れ ★

 国の脱炭素のあり方をどうするのか。2011年3月の東京電力福島第1原子力発電所の事故以降,置き去りにされてきた課題がまた先送りされる。原子力発電所の建て替えは今夏に見直すエネルギー基本計画に盛りこまれない見通しだ。(1面参照 ⇒ ① のこと)

 国は温暖化ガスについて2050年までに実質排出ゼロとする目標を打ち出している。問題は原発を使うのか,使わないのか国の姿勢をあいまいにしたままでは,再生可能エネルギー化石燃料といったほかのエネルギー政策も定まらなくなることだ。事業化や研究開発を担う民間企業も右往左往する。

 国は原発をベースロード電源と位置づけ,2030年度の電源構成のうち2割とする目標をかかげてきたものの,2019年度実績の比率は6%にすぎない。

 補注)「原発をベースロード電源と位置づけ」るという原発観,換言するに,エネルギー問題をともかく,なんでもかんでも原発中心に発想しようとする立場は,時代錯誤というか,完全にピンボケの理解である。

 最近における経済産業省・エネルギー資源庁側の変化は,電源として観る原発原子力)のことを「重要なベースロード電源」と形容するようになっていた。以前は無条件に原発を「ベースロード電源」だと定義づけていた。

 しかし,原子力原発)をどのように位置づけようが,いまとなってはそれをベースロード電源として議論することじたい,間違いになっている。再生エネの方途と原発のそれとは「水と油の関係」にある。

 それでも,原発原子力)の備える「電源としての特性」(出力をつねに100%稼働状態にしておきたい特徴)をもって,これをベースロード電源に分類したうえで,なおかつ再生エネの仲間にも無理やりに入れておこうとする立場は,ただの厄介ものである電源「原子力原発)」が,現状において置かれている苦境を端的に物語っている。

 再生エネの導入・利用の成長・進展に対して,もっとも阻害するほかない電源として存在したのが原発原子力)である。日経記事のように原発を重視する立場・イデオロギー固執したいのであれば,この原発全体の負的特性である「トイレのないマンション」性を,終局的に克服できるなにものかを用意し,実証しなければならない。しかし,その点を説得的に展開しえた原発再稼働論側の識者はいない。

    ◆ 5000億円増で14兆円超え  膨らみ続ける使用済み核燃料の再処理事業費 ◆
 =『東京新聞』2021年06月25日,https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1792

 

 日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の事業費が,工場の完成が遅れることで2020年より5000億円増えることになった。再処理事業を担う国の認可法人「使用済燃料再処理機構」(青森市)が精査し,〔6月〕25日に公表した。

 

 総事業費は5年連続で増加し,14兆4400億円に。政府が繰り返し核燃料を再利用できるかのように宣伝ながらも,実態は破綻している「核燃料サイクル」の要の施設は,費用だけが膨らんでいく。

 

 再処理機構の公表資料によると,再処理工場の竣工時期が2021年度上期から2022年度上期に延期となり,維持費や新規制基準への事故対策工事費用が増えたため。新基準への対応費用は前年より2700億円増え,計9800億円。機構が2020年6月に公表した総事業費は,13兆9400億円だった。

 

 再処理事業の費用は,電力各社の使用済み核燃料の量に応じて拠出金を出す仕組で,電気料金を通じて消費者が負担している。今回は単価が前年度と変わらないため,電気料金への直接的な影響はないとみられる。

 

 また,再処理で取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料の加工工場(日本原燃青森県六ケ所村)の事業費も,前年より900億円増えて,2兆4300億円となった。増額は,竣工時期を2022年度上期から2024年度上期に延期したことによる。

〔記事に戻る→〕 この10年間で,経済産業省から原子力安全・保安院が分離され原子力規制委員会が誕生した。避難計画も強化され住民同意のハードルも高くなった。エネルギー基本計画の原子力政策への影響力は限定的になった現実を直視しなければならない。

 原子力の推進には課題が山積している。廃棄物の最終処分場は原発導入から半世紀以上経つのに決まっていない。福島の事故処理費用は20兆円を超す試算で廃炉作業を終えられるかも不透明だ。大量導入が進む再生エネを前にコスト競争力も落ちている。

 補注)この段落のこの記述「大量導入が進む再生エネを前に〔原発の〕コスト競争力も落ちている」と触れたくだりは,前段のほうでも触れていた点,すなわち「2050年に再生エネで電力すべてを賄うと電力コストはいまの4倍程度に増える」という説明に対して,噛みあうところがみいだしにくい。

 各種電源に関する単位コストの比較はすでに,原発コストの非有利性を明白にしてきた。この事実を棚上げできたかのような日経記事には驚く。まるで与太記事に近い不躾な記述内容が目立つ点には,本当に驚かされる。

 それでも現状の技術では炭素排出の実質ゼロは原子力抜きで達成は困難だ。英国やフランス,米国などの欧米諸国も原発を脱炭素の重要な手段と位置づけ技術開発を進めている。

 国は原発活用のメリットとデメリットを逃げずに議論し,是非を明確に示すべきだろう。その覚悟がなければ2050年の脱炭素はおろか,2030年度に2013年度比46%減とする直近の脱炭素戦略も画餅に終わるだけだ。(気候変動エディター 塙 和也)(引用終わり)

 以上に紹介してきた記事は,このように最後で「国は原発活用のメリットとデメリットを逃げずに議論し,是非を明確に示すべきだ」とまとめているが,そのままそっくり,この記事の執筆者に返してあげてよい〈実質的な中身〉であった。

 この筆者は,「英国やフランス,米国などの欧米諸国も原発を脱炭素の重要な手段と位置づけ技術開発を進めている」という。そうなのであれば,これと同時に中国やロシアにおける原発関連の事情・動向,そして,すでに原発を止めたイタリアや,2023年には原発を全廃するための日程をこなしつつあるドイツの電源事情に言及していないのは,公平性・客観性・中立性を欠く。

 もとより,この種の執筆者はきわめて教条的に(信仰的に?),「原発を脱炭素の重要な手段と位置づけ」た議論しかしていなかった。しかし,原発がCO2 を出さない(発電のための稼働中している時間に限ってだが)という説明は「説明にならない説明」であった。くわえて,原発を再生エネの同居人あつかいするわけにはいかない事情までも,完璧に無視したコジツケの議論を,恥じらいもなく展示してきた。

 「英国やフランス,米国など欧米諸国」が原発の利用においてかかえてきた特定の諸困難は軽視していながらも,再生エネの圧倒的な有利性には目をつむりたい論調が,この日経記事には顕著であった。

 ドイツやイタリアの電力事情はけっして満点ではないけれども,それでも英国やフランス,米国の電力事情と比較検討する余地はある。このあたりの論点はすっ飛ばして,原発があたかもCO2 削減のために強力な助っ人になりうるかのように論理を構成するのは,根本的に作為の過誤であった。

【参考資料】-世界各国の電源比率-

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 原発が電源中に占める割合の一番高いフランスであっても,原発の比率を下げる努力はしている。「3・11」直後に発生した東電福島第1原発事故は,世界中の原発事情に与えた衝撃は大々的であった。この事実は,いうまでもない点になっていた。

 再生エネが生産する電力を中軸あるいは基盤に据え,しかもスマートグリッド方式による電力の配送電網を整備・確立することは,原発による電力の生産・配給とは根幹において対立するほかない電力観を要請する。だから,原子力村の一員である日本経済新聞の記事は,原発を無条件にタップリ擁護する,いいかえれば,そのために実質では,没論理の内容にならざるをえない。

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