菅 義偉はもちろん保守・右翼の政治屋であるが,その立ち位置がしごく曖昧,ただ権力欲一辺倒で「私利我欲為政の私(死)物化」のために生きている権力者

 2021年7月5日の都議選まで自民党は,重要な選挙で6連敗した,来たる衆議院総選挙は自民党にとって2009年の再来がささやかれている,2020東京オリンピックの開催を1年遅れで,しかも新型コロナウイルス感染拡大が「第5波」として再上昇しはじめているこの時期に,五輪を「開催して突入させるのだ」という狂気の沙汰,おまけに開催する時期は東京の盛夏であり,開催を強行したらどうなるのか心配しかない


  要点・1 生半可に疑似右翼的である自民党政権は,最近,安倍晋三君みずからが吐いた表現では「反日的」であり,昔のことばを充てていえば「非国民」と形容されるほかない為政ばかりに走っていた,もっともこの前首相は日本語がもともと得意ではなかったから,話は半分以下に聞いておけばよい

  要点・2 やはり昔の話だが,「反ソ」というコトバがあった,社会主義国家体制を構えていたソ連邦を批判する人びとは,おしなべてともかく「反ソ」,そこには「ソ連に賛成か反対か」の二択的な思考回路しかなかった

  要点・3 すなわち「反日(的)」という決めつけ方は,抽象的な表現としてその骨格は「反ソ(的)」と同類であり,このコトバのまわりには民主主義の基本精神は,いっさい寄りついていない,「敵か・味方か」しかありえない世間の観方である

  要点・4 「安倍政権は改革の到達点にみえるかもしれ」ない「が,与党幹部と官邸による側近主導であり,そこでは閣僚や政務三役は原則として排除されてい」る(牧原 出,asahi.com 2021年7月6日)ゆえ,日本の政治の頽廃・腐朽をいたずらに早めてきた


 「適菜 収著『ナショナリズムを理解できないバカ 日本は自立を放棄した』」小学館』2020/12/1,https://www.shogakukan.co.jp/books/09388801

 この文章(宣伝用の紹介)は出版元の提供であるが,要は,なにについて書いている本なのか理解するために引用する。このごろ日本の政治社会のなかでは,安倍晋三が第2次政権の首相に就いて以来,副首相の麻生太郎の〈馬鹿さ加減〉との相乗効果が発揮されての評判になっていたが,一国の最高指導者が「バカだ,阿呆だ」と呼称され軽蔑される表現が,なんら不思議もなく自然に使われる時代になってしまった。

 本当にこの国は恥ずかしい人間が総理大臣になっている。だが,その人を選び出す政権党(自民党と「創価学会」党との野合体)が担ぎ出すその最高指導者は,それこそ「神輿を担ぐなら軽い奴がいい」のだという要領でもって,いつも超軽量(軽薄)級の,しかも世襲3代目の国会議員から選ばれていた。

 しかし,2020年9月,お腹が痛いからといって首相を辞めた安倍晋三の後釜として登場した菅 義偉君は,世襲議員ではないものの,国家最高指導者としての資質・能力としては「必ずしも説明できなくはない〈不明解さ〉」をともないながら,なんとなく出てきた。

 世襲議員からではなく「叩き上げの首相」として登壇した菅 義偉君だという割りには,傲岸不遜で権柄尽くの態度だけは一流であった。この人が首相になってから11カ月ほど首相を務めてきたが,その間における仕事っぷりを観察してみるに,われわれなりにもちあわせているのではないかという具合に,彼を観察してみたかった「政治家としての教養や思想」に相当する内実は,皆目感じとることができなかった。

 国民たちに対して自身の夢や希望を語ることがまったくできないこの総理大臣であった。スガーリンといった愛称ならぬ憎称をいただくのが,精一杯であった。ところで1964年の出来事であったが,安倍晋三君のオジサンに当たる佐藤栄作が63歳で首相に就任した時,「栄ちゃんと呼ばれたい」と口にして世間の失笑を買ったのは,有名な話である。

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 それから半世紀近くが経った現時点で,首相になっていた菅 義偉が「よしチャン」とか「ヒデ君」などと呼ばれる可能性も,ハナから完全にゼロであった。あの辛気くさい,無表情でありながら,ドロンとしていて非常に陰険な2つの瞳孔をみた他者が,好印象を抱くことはありえない。

 安倍晋三の第2次政権時,「7年と8カ月」もの長期間,官房長官を務めていた菅が世間に与えてきた自分の印象は,「権力をむやみやたらに振りまわす人だ」という印象しかなかった。その人がいまは首相である。

 前段に出てきた佐藤栄作も人気のない首相であった。けっして大衆的な政治家ではなく,官僚出身で居丈高さを感じさせた。演説も下手で,岸 信介が実兄だった点も,栄作のイメージを悪くする遠因を提供していた。だから,その人が首相になれた時,「栄ちゃんと呼ばれたい」といったところで,世間の失笑を買った。


 さて,2021年7月5日に実施された都議選(定数127名,欠員1名)は,菅 義偉の「自民党都議」を33名しか当選させず,その「下駄の雪(▼ソ)である公明党」の当選者数23名を併せても過半数に達しなかった。

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 ※-1「関連記事」から

  自民党は,歴史的大敗を喫した前回の23議席から増やしたが,当初の想定以上に伸び悩んだ。4月の衆参3選挙でも不戦敗を含めて全敗しており,菅 義偉首相は「選挙の顔」として課題を残した。

 註記)『毎日新聞』 2021/7/4 20:53,最終更新 7/5 00:49,https://mainichi.jp/articles/20210704/k00/00m/010/217000c

 補注)より具体的に指摘する。今〔2021〕年10月に衆議院の任期が来るが,この解散総選挙になる時期を目前にして,菅首相は4月の衆参補選・再選挙で3連敗しただけでなく,千葉県知事選挙と静岡県知事選挙にも敗北していた。


 前置きが長くなったが, ここから,適菜 収著『ナショナリズムを理解できないバカ 日本は自立を放棄した』」『小学館』2020年12月発行に関する,出版元の宣伝文句を引用しておく。

 ◆-1 愛国者売国奴を礼賛する摩訶不思議

 「ナショナリズム」という言葉を聞くと反射的に「右翼」「軍国主義」と認識し,毛嫌いするきらいがある。しかし,本来の意味は違う。簡単にいえば,歴史や共同体を大切にし,安定的,文化的で保守的なものだ。

 ところが,日本の政治は日本人の利益を破壊してきた。一例を挙げれば,雇用市場を不安定化させ,格差を拡大させてきた。移民政策を拡大させ,さらに水道の民営化で海外企業に売却が噂されるなど,かつてならば「国賊」「売国奴」と罵られてきたはずの政治家が「自称保守」を自認する人びとに支持されてきた。安倍晋三前総理大臣だ。

 安倍氏の後を継いだ菅 義偉総理もたいした差はない。 “政商” 竹中平蔵氏,「中小企業の再編」を菅総理に吹きこんだ元ゴールドマン・サックスデービッド・アトキンソン氏を「成長戦略会議」のメンバーに入れたくらいだ。

 おそらく日本の富が海外(とくにアメリカ)に流出しつづけ,日本の貧国化はさらに進む。いつの時代も泣きをみるのは,一般庶民だ。まずは国家とはなにかを理解する必要がある。ナショナリズムと近代とは深い関係がある。近代国家について考えるときは,まずはナショナリズムを理解する必要があるのだ。

 ◆-2「編集者からのおすすめ情報」

 ナショナリズムを理解しないと,左翼,右翼,保守といった概念もわからなくなります。そうなると,保守の対極にあるものを「保守」と担ぎ上げてしまいます。いい例が「新自由主義=保守」と認識しているようなものです。

 著者〔適菜 収〕は学生時代に哲学を専攻し,さまざまな文献からナショナリズムの本質を定義し,アカデミックな内容をやさしく解説する一方,舌鋒鋭く,「エセ保守政治家」たちをこき下ろすなど,痛快な内容となっています。

※ 目 次 ※

  第1章 ナショナリズムとは何か
  第2章 ナショナリズムの思想史
  第3章 民族主義保守主義
  第4章 グローバリズムが世界の秩序を破壊する
  第5章 ナショナリズムと日本人

 

 「倉持 仁院長が菅首相発言に憤慨『日本においては努力や英知は結集せず。ほぼほぼ自助』『なんの絆かはわかりません』」『YAHOO!JAPAN ニュース』2021/7/4(日) 15:41配信,https://news.yahoo.co.jp/articles/55a0ca1f629121c54101d57f859562bf908182b9(元記事『中日スポーツ』)


 東京五輪パラリンピック開催について,ラジオ番組であらためて意欲を示した菅 義偉首相に対し,新型コロナ感染症の診療する宇都宮市のインターパーク倉持呼吸器内科の倉持 仁院長が〔7月〕4日,自身のツイッターを更新。「日本においては努力や英知は結集せず。ほぼほぼ自助」と憤った。

 菅首相は4日,FMのNACK5の番組に出演し「世界全体がコロナ禍という困難に直面しているからこそ,人類の努力や英知を結集して乗り越えられるということを世界に発信したい」と述べ,感染対策に万全を期す考えを強調した。

 補注)NACK5というFMの放送局は,埼玉県のFMラジオ放送局「NACK5のサイト」を指す。周波数は79.5MHz。 

 これに対して倉持院長は「残念ながら日本においては努力や英知を集結はせず,ほぼほぼ自助ときおり共助,ほぼなし公助,そして絆。なんの絆かはわかりません」と反論。

 さらに,感染拡大で苦境に立たされているエンタメや文化・芸術の業界にフリーターの関与が多いとして,社会保障制度の見直しに首相が意欲を示したことについても「『フリーターが関与していることが多い』。なんの話でしょうか? 1年前の話ならやる気を感じ,納得します!」と手きびしくコメントした。(引用終わり)

 菅 義偉の政治標語である「自助・共助・公助」の価値観は,国民たち側からは非常に評判が悪い。新自由主義規制緩和が強行されてきた生活の全般に苦しむ人びとが大勢いるなかで,まるで「政治」が国民たちを見殺しにする政策観を平然と披瀝するのだから,国民たちの側から「憤怒と怨恨の反撥」が湧き出てくるのは,あまりにも当然である。

 菅 義偉は以前,給付型の奨学金について「そのような育英制度は不要である」といった反応をみせていた。この政治屋は自分の体験にこじつけた世界観・価値観しかもっていない。夢がもともと抱けない,希望などもたない政治屋である「この人の感情・気分」は,あの顔つきによく浮刻されている。

 

 菅内閣靖国』派ズラリ 改憲・右翼政治も “継承” 議連に18人」しんぶん赤旗』2020年9月21日 (月),https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-09-21/2020092101_01_1.html

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〔2020年9月〕16日発足の菅義偉内閣のうち,菅首相自民党籍の閣僚計20人中18人が「靖国」派改憲右翼団体と一体の議員連盟に加盟していることが,本紙の調査で明らかになりました。また,いずれの議連にも未加盟の小泉進次郎環境相も,2009年の衆院議員当選後,毎年の終戦記念日(8月15日)に靖国神社(東京・九段北)を参拝しており,19人が事実上の「靖国」派閣僚です。

 補注)さきに断わっておくが,靖国神社に正式に参拝にいきたがる国会議員たちは,はたして靖国神社の歴史的な由来や今日的な本質,くわえてなぜ現在,皇室・天皇靖国に参拝にいかないのかなどについて,まともに説明できるのか。「票のため」という共通項ならば明晰に表出されているが……。

 問題の「日本会議国会議員懇談会」と「神道政治連盟(神政連)国会議員懇談会」は,改憲右翼団体の「日本会議」,「神道政治連盟」とそれぞれ一心同体の議連です。両団体とも,日本の過去の侵略戦争を「自存自衛」「アジア解放」の “正義の戦争” として肯定・美化してきた靖国神社と同じ立場から,「憲法改正」,天皇や首相の同神社公式参拝,「愛国心教育」強化を主張するなど,戦前の日本への回帰を志向。

 一方で,ジェンダー平等や夫婦別姓には反対の立場です。両団体は,みずからの政策にもとづく「推薦基準」に応じて政治家を国政選挙で推薦し,当選後は議連の会員として迎え,行動をともにしてきました。

 補注)「選択的夫婦別姓の導入『必要ない』は主要100社ゼロ〈会員記事 景気アンケート2021年春〉」asahi.com 2021年6月16日 6時00分,https://digital.asahi.com/articles/ASP6C44TWP69ULFA001.html  という記事もみつかるが,いまどき「明治謹製」の夫婦同姓そのものに反対するというのは,古代史の時代にまでは突き抜けられない,まったくに中途半端な化石的石頭。昨今の日本社会のなかで「家族の絆」を強調するのは,くわえて倒錯的な勘違いの発想。

 菅首相自身,日本会議系議連の副会長を務めているほか,同議連特別顧問の麻生太郎副総理兼財務相,政審副会長の萩生田光一文部科学相ら安倍政権の「靖国」派閣僚の多くをそのまま引き継いだのにくわえ,同議連副幹事長2氏を主要閣僚(加藤勝信官房長官と岸 信夫防衛相)に起用しました。初入閣,再入閣の閣僚も軒並み「靖国」派です。

 就任直後の記者会見(〔2020年9月〕16日)で菅首相は,「安倍政権が進めてきた取り組みをしっかり継承し,前に進めていく」ことが「使命だ」と語りました。閣僚の顔ぶれからも,安倍政権の歴史修正主義にもとづく改憲・右翼政治を “継承” する姿勢は明らかです。(引用終わり)

 「戦後レジュームからの脱却(?)」すらもとより全然できていなかった安倍晋三君が,戦前・戦中のレジュームがいかほど恋しくてなのか,いったいそのなにを希求したかったのか,もうひとつよく理解できない。なかんずく,幻想すら湧いてこないはずの〈架空の観念〉に彼は囚われていた。

 アメリカにはヘイコラしかできない安倍晋三君が,ただ靖国神社に関してだけは参拝にいけば,それでもって「終戦」という言葉が「勝戦」に変換しうわけでもなし。観念で「歴史の事実」を書きかえることはできない。安倍が靖国神社に参拝する意向を示したさい,アメリカ側から彼を矯正させるための指導が入っていた事実は,日本の国民(主権者)たちにとっても忘れられない歴史の一コマであった。

 「戦後と戦後」に関したどこまでも詮ないレジューム論の腸捻転的な展示であったゆえ,安倍君が自身のその提唱を,まともな米日間政治体制論として語ることは,とうていできていなかった。

 

 「菅新内閣20人中14人が『日本会議』のメンバー…右翼色は依然と」中央日報(日本語版』2020.09.16 16:08,https://s.japanese.joins.com/JArticle/270289?sectcode=A00&servcode=A000

 〔2020年9月〕16日に発足する菅 義偉新内閣でも日本右翼の本流である「日本会議」の影響力がそのまま維持されることが明らかになった。

 菅内閣の閣僚20人を「日本会議」の国会組織である「日本会議国会議員懇談会」(以下,日本会議懇談会)の名簿と突き合わせてみた結果,14人が同組織の所属であることが分かった。菅首相本人を含めると21人中15人に増える。

 直前の安倍第4次内閣(2019年9月発足)が閣僚20人のうち15人が日本会議の所属だったことと比較すると,菅内閣でも日本会議の影響力がほぼそのまま維持されるとみることができる。これは菅内閣が安倍政権継承を前面に出していて,実際に安倍内閣の閣僚の半分をそのまま起用したためだ。

 新たに入閣した10人のうち7人が日本会議懇談会の所属だ。安倍氏実弟である岸 信夫防衛相をはじめ,田村憲久厚労相武田良太総務相平沢勝栄復興相,野上浩太郎農水相井上信治万博担当相,坂本哲志一億総活躍担当相らが所属であることが確認された。

 この他に麻生太郎財務相日本会議の特別顧問であり,加藤勝信官房副長官萩生田光一文科相茂木敏充外相らも日本会議懇談会のメンバーだ。

 日本会議懇談会に入っていない閣僚は上川陽子法務相小泉進次郎環境相赤羽一嘉国土交通相平井卓也デジタル担当相,河野太郎行政改革相,小此木八郎国家公安委員長ら5人だけだ。

 ただし,日本会議の比重がそのまま維持されているというものの菅 義偉氏は右翼指向が強くないことが伝えられた。したがって安倍政権の時ほどは日本会議の影響力が強く維持されないだろうと見る向きもある。

 恵泉女学園大学の李 泳采(イ・ヨンチェ)教授は「日本会議比率がもっとも高かったのは2014年安倍第3次内閣の時」としながら「菅内閣では約70%が日本会議所属と把握されるが,安倍中心の日本会議と菅中心の日本会議は重さが違う」と分析した。

 日本会議憲法改正や日本の核武装などを主張する「日本を守る国民会議」と神道系宗教団体の集まり「日本を守る会」が1997年5月に統合して発足した。全国47都道府県にそれぞれ本部を設置し,3000を超える地方自治体に支部を置いた点組織で,政財界や学界などを総網羅した「地下極右指令塔」「極右大本営」と呼ばれる。

 安倍晋三氏が団体の特別顧問を務めており,安倍政権の強力な支持基盤としてしられており,国会議員懇談会には自民党を中心に200人を超える議員が所属している。(引用終わり)

 前段の『しんぶん赤旗』に関連する一覧表が出ていたが,本ブログ筆者はここで,とくに問題となる2点を指摘しておきたい。

 ひとつは,それら「日本会議」という組織や「日本会議国会議員懇談会日本会議懇談会)」という組織の中身・実体についてだが,これに関与・参加している議員たちが,日本会議の基本理念や具体的な主張の本義を,はたして,いかほど理解できたうえでそこに氏名を連ねているのかという問題・疑問が,まずあった。

 もうひとつは,2020年代に入るころには,その日本会議の地盤そのものに揺らぎが出はじめている事実に関した問題があった。この点はつぎの ⑤ の識者が語ってくれている。こちらの ⑤は 少し長くなる文章であるが,日本会議関係の問題を理解するうえで必要と考え,全文を紹介する。


  古谷経衡(ふるや・つねひら)「『日本会議』は衰退するのか? ~神社本庁全面敗訴の衝撃~」『YAHOO!JAPAN ニュース』2021/4/1(木) 9:17,https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20210401-00230370/

 著述家の菅野 完氏の著書『日本会議の研究』(扶桑社)のベストセラーにより,一躍全国区となった草の根保守団体「日本会議」。同会は,日本各地に支部をもつ「日本最大規模」の保守団体で,関連組織に神道政治連盟国会議員懇談会(神政連)をもち,自民党(安倍前首相や菅義偉現総理ら)を筆頭に保守系政治家や保守業界に多大な影響力をもつ,と「されて」きた。

 その日本会議の主要構成メンバーである神社本庁(以下,本庁などと略)をめぐって,司法の裁きが下った。本庁の元職員をめぐる解雇問題で,元職員側が本庁による解雇は不当だとして本庁側を提訴。2021年3月18日,東京地裁は原告である元職員の訴えを全面的に認め,本庁側が完全敗訴したのだ。

 報道によれば,本庁側は自身が被告となったこの裁判を,「今回の裁判は絶対に負けられない戦い」「(敗訴すれば)包括宗教団体としての組織維持ができなくなる。被告(*神社本庁のこと)は,伊勢神宮や皇室と密接な関係があって,いわば『日本の国体』の根幹を護っている最後の砦である。(中略) けっして裁判所が日本の国体破壊につながることに手を貸す事態があってはならないと信じるしだいである」(『週刊文春』2021年4月1日号,*括弧内筆者〔古谷経衡〕)と息巻いたが,結果は前述のとおり全面敗訴。

 はたしてこの本庁による敗訴は,保守界隈に隠然たる影響力をもつと「されて」きた日本会議の勢力弱体化にもつながる分水嶺となるのだろうか。

 1) 神社本庁の「国体の破壊につながる」はよくある抗弁

 そもそも,日本会議の主要メンバーとはいえ,神社本庁が今回の裁判を「絶対に負けられない戦い」とか「(敗訴は)日本の国体破壊につながる」などといささか極端とも思える抗戦姿勢を宣言したのはなぜなのか。

 筆者はこの問題に詳しい,雑誌『宗教問題』編集長の小川寛大(おがわ・かんだい)氏に話を聞くことにした。

  小川)  神社本庁にかかわらず,この手の伝統宗教勢力が「国体の破壊」などといって大仰な抗戦姿勢を宣言することはよくあることです。原告である元職員と被告である本庁に対して,裁判所は当初,和解勧告を出していましたが,本庁側がその提案を蹴って徹底抗戦の姿勢に変更したようです。今回,本庁は完全敗訴したものの,結局は控訴するのではないか。

 なぜなら控訴することによって控訴審にいき,そこでまた負けても上告審の可能性があるわけです。本庁が上告審まで争うとなれば,それこそ数年,下手をしたら十年近くの歳月が流れる場合もある。すると,本庁側の現幹部が「名実ともに完全敗北した」事実を次の幹部の代に先送りすることができるわけで,いわば敗北の希釈化・遅延戦術を狙った格好でしょう。「国体の破壊」というフレーズは,いわば “格好を付けている” ようなものではないでしょうか。

 なるほど,敗訴=国体の破壊とまで述べた本庁の抗戦姿勢は,特段珍しい抗戦姿勢ではないようである。本庁側が控訴するかどうかは定かではないが,今後の被告側(本庁)の動きには注目すべき点がありそうである。

 2)「日本会議」の政治的影響力は思うほど強力ではない ~ネット全盛時代に封書・FAXの古典姿勢~

 では一方で,今回の本庁側の完全敗訴は日本会議の影響力にどのような変化をもたらすのであろうか。結論からいって,そもそも日本会議じたいには,保守業界に対し,巷間いわれているような強大な影響力というモノじたいが最初から存在していない―,と筆者は思料するのである。

 冒頭で述べた菅野氏の『日本会議の研究』によって日本会議が第2次安倍内閣自民党保守系議員の黒幕になっているという説は,実しやかに唱えられてきたのは事実である。

 しかし,筆者は永年保守業界にその居を構え,いまや保守業界と合体した所謂ネット右翼の動静をつぶさに観察してきたが,日本会議の影響力はまったく大きくない,というのが正直な実感である。

 よって『日本会議の研究』で描かれた日本会議像は,よく調べられているとはいえ,かなり日本会議の存在を極大化して捉えているきらいがある,と思うのである。

 2009年に政権党が自民党麻生内閣)から民主党鳩山内閣)に交代し,菅 直人内閣,野田佳彦内閣を経て2012年末に,第二次安倍内閣率いる自公連立政権が再び政権党に返り咲く約4年弱,保守業界(論壇)はネット右翼勢力と一体となり,共通の敵,つまり「アンチ民主党政権」のスローガンのもとで,あらゆる中小の団体や言論人やネット右翼勢力が横断的に連携して共同戦線を張った。巨視的にみればこの時こそ,保守業界や右派,ネット右翼にとって正しく「黄金時代」が訪れたのである。

 この間,自民党はネット戦略に力を入れ,J-NSC自民党ネットサポーターズクラブ)が本格的に始動し,野党となった自民党を支えた機軸のひとつは間違いなくネット空間であった。この動きをけん引したのが,独自の政治団体をも保有するCS放送局『日本文化チャンネル桜』や,保守論壇誌である月刊『正論』(産経新聞社),『WiLL』(WAC,その後,月刊 “HANADA=飛鳥新社” に分裂),『Voice』(PHP)などの保守系論壇媒体である。

 とくに日本文化チャンネル桜は2010年代中盤に『DHCチャンネル(株式会社DHCが運営するCS放送局)』にその権勢を譲るまで,この時期にあって保守論壇ネット右翼にインターネット動画という「新媒体」を通じて圧倒的な影響力をもった。

 この時,日本会議の位置づけはどうであったのかというと,多くの保守論壇関係者やネット右翼は,神社本庁を主軸メンバーとする日本会議を「近代化の遅れた旧い組織」とみなしていた。

 時代は光ファイバーが各家庭に普及し,高速インターネットの爆発的普及によりテキストから「動画の時代」へと完全に移り変わっていった。数々の刑事事件を起こすことになる『在日特権を許さない市民の会(略称:在特会)』がネット動画や配信といった “新技術” を駆使して,加速度的に会員数を増やしていったのもこの時期である。

 一方,日本会議はというと,神社本庁を筆頭とする中小の所謂「宗教右派」の集合体であるとみなされ,草の根的全国組織を有するものの,その会員間の通信手段は21世紀が10年を過ぎた当時でも相変わらず,機関誌や封書,あるいはFAXといった旧態依然としたツールしかもちえず,保守界隈の多くやネット右翼からは「時代(インターネットという新ツール)に対応できない近代化の遅れた旧い組織」としてあまり見向きもされなかったのが,率直な観察であった。

 当時,こういった保守業界の中枢に近いところに居た筆者は,「インターネットすら活用できない日本会議なぞ,所詮は高齢者の互助会であり,同業ではあるものの,ライバルになることなどありえない」とやや嘲笑気味に評価する保守業界の重鎮の言葉を恒常的に耳にしていた。

 ただし,たとえば前述『日本文化チャンネル桜』のなかに,日本会議の影響がゼロだったのかといえば,そうではない。

 冒頭に記した菅野氏の『日本会議の研究』に詳述されているが,宗教法人『生長の家』の事実上の始祖である谷口雅春(たにぐち・まさはる)氏を熱心に信奉する一派(これを, “旧生長の家系統” とか, “谷口派” などと呼ぶ)が,同局のコーナー番組に出演していたりと,わずかながらに影響力を行使していた。

 しかし2010年の段階でもって,彼らの量数は全国を俯瞰しても数千人という規模で,そのなかでもとりわけ目立った存在でも小都市の地方自治体議員(*地方議員が国会議員より下位である,といっているわけではない)クラスが関の山で,保守業界やネット右翼に多大な影響力をもっていたとは判決できない。

 3)「日本会議」の影響力は10万~15万の小所帯 ~思うほどその影響力は小さい~

 2013年に筆者が独自に調査したところ,保守業界と融合したネット右翼人口は日本全国で200万人を有するという結論に達した。この数字は,2020年の「愛知県知事リコール問題」の分析にさいしてのヤフーニュース個人の拙稿『リコール不正署名問題-立証された「ネット右翼2%説」』でも数次にわたって裏打ちされた数字であるが,日本会議の勢力のそれは,いったいどのくらいあるのか。

 大前提的に,日本会議の構成メンバーは「約4万人程度」とされ,しかもこの「ネット右翼200万人」と部分的に重複する場合はあるが,完全に内包されているわけではない。

 繰り返し述べているように,日本会議神社本庁を筆頭とする「宗教右派」の集積体の性格をもつが,そのほとんどがいちじるしく高齢化しており,比較的若い(といっても,40代から60代)が主軸のネット右翼よりさらに年齢層的には上をいくと思われるので,200万人のネット右翼日本会議の勢力は,完全に一致している訳ではない。

 a) たとえば,日本会議は2013年参議院全国比例で有村治子候補(自民)を推薦候補とし,2016年参議院全国比例では山谷えり子候補(自民)を推薦候補とした。この両者の得票をみてみる。

 全国比例の得票に於いて,有村候補(自民)は約19万1000票を獲得して当選しているが,保守業界やネット右翼業界では著名な赤池候補(自民),佐藤候補(自民),中山候補(維新)はそれを遥かに上回る得票をえて当選している。

 端的にいえば,会員数約4万人に過ぎない日本会議のすべての会員が知人や友人を「勧誘」して投票行為を喚起しても,日本会議推薦候補と保守系日本会議非推薦候補の彼我格差は,19万1000対84万1000で,その対比は1.0:4.4程度となる。

 b) つぎにに,2016年参院選挙全国比例の状況をみてみる。

 この年の参議院選挙で日本会議山谷えり子候補に推薦を出したが,山谷候補は約25万票を獲得して当選するも,やはり保守業界やネット右翼業界では著名な青山候補(自民),片山候補(自民),宇都候補(自民),山田候補(自民)に対比させれば,日本会議推薦候補と保守系日本会議非推薦候補の彼我格差は,25万対116万3000で,その対比は2013年と同じように1.0:4.7程度となる。

 要するに,日本会議は会員数4万人の小所帯ながら,がんばってはいるものの非日本会議推薦候補に1/5程度劣後するのである。

 当然,2013年の有村,2016年の山谷候補の得票は100%日本会議会員が投票したものではないので,このデータに含んでいない当時の「次世代の党=日本のこころ」を加味すると,この彼我格差は実質的にはさらに拡大しよう。

 そうすると,日本会議の「チカラ」というのは,おおよそ好意的に評価しても約10万~15万とみてよい。そもそも「4万人」しかいない日本会議の国政選挙における影響力とは,この程度のものなのである。

 よって筆者は,そもそも日本会議のチカラというのは,小なりといえ存在するが,保守界隈やネット右翼にそこまで強烈に訴求する量的勢力を確保していない,と判断する。

 c) ではなぜ,第2次安倍政権や菅政権の閣僚の多くが日本会議の関連団体である「神政連」に参画しているかというと,衆院小選挙区衆院比例ブロックや参院比例で,1000票,2000票の僅差で当落の明暗が分かれる状況も珍しくないなか,1000票単位での政治力をもつ日本会議の「神政連」に参加しているのは小なりともメリットしかないからである。

 それをいえば,「日韓議員連盟」には与野党問わず膨大な国会議員が参画しているが,そのメンバーに於いて必らずしも韓国に対し融和的な思想をもちえない議員までも含まれているのが証左である。

 日韓議員連盟には安倍前首相や麻生太郎氏も所属している事実がある。小選挙区比例代表にあっては,たとえそれが1000票足らずの加算であっても,とりあえず所属しておく価値を見出すのが当然である。

 日本会議の関連団体である「神政連」に自民党保守系政治家がこぞって参画しているのは,彼らが「日本会議に操られている」のではなく,純然に1000票単位の票が欲しいからであり,日本会議の影響力を斟酌した結果ではない。

 そもそも,日本会議には政治に影響を与えるだけの強大な力などはなから存在していないのだ。

 4) 苦悩する全国各地の神社経営者たち

 前出の小川氏は,今次神社本庁における全面敗訴判決と日本会議の影響の衰微いかんについて,つぎのように語った。

 小川)    今次の一審における神社本庁の全面敗訴について,日本会議全体にダメージ,衰微があるのかないのかと問われれば,正直なところ元来あまり関係がないというところです。そもそも日本会議の枢機たる神社本庁が一審で敗訴したからといって,神社本庁に所属する日本各地の神社の神主さんが,「日本の国体が損壊された」といって立ち上がって行動するということは,まずありえないでしょう。

 現在,日本各地にある本庁に所属する神社は,そんな世俗の民事裁判の行方など正直いってどうでもよく,自身の神社の経営で精いっぱいで,本庁の動向にかまっている余裕はないのです。お祭りをどうするか。檀家へのケア・サービスをどうするか。

 各地の神主はいま,自分の神社の経営維持に精いっぱいで,政治的な動向に関与する暇はない。とくに昨年(2020年)から発生したコロナ禍で,神社への参拝客が減って,それに伴い当然のことお賽銭も激減するなか,もっぱら自己防衛に終始しており,本庁が民事裁判で負けただの,あるいは勝っただのという事案に関しては正直無関心で,かまっている余裕すらないのでははないでしょうか。

 小川氏のいうとおり,日本会議の構成メンバーの筆頭に挙げられる神社本庁の政治力とは,辛辣にいえばしょせんこの程度にしか過ぎない。『日本会議の研究』により,日本会議神社本庁が「政権を牛耳る秘密結社」のように吹聴されたが,はてさてその実態とは,経済不況で苦心する等身大の神主の声にほかならないのであった。

 よって日本会議は今次の判決いかんにかかわらず,緩やかに衰微していく時代の趨勢に飲みこまれていくのであろう。神社本庁を筆頭とする日本会議は,時の政権に関係なく,時代の必然的流れのなかで,緩やかに枯死していく旧世界の互助団体なのかもしれない(引用終わり)

※人物紹介※ 古谷経衡(ふるや・つねひら,1982年生まれ)は作家・文筆家・評論家。1982年北海道札幌市生まれ,日本ペンクラブ正会員,立命館大学文学部史学科卒,テレビ・ラジオ出演など多数。

 主な著書に『愛国商売』小学館,『日本型リア充の研究』自由国民社,『女政治家の通信簿』小学館,『日本を蝕む極論の正体』新潮社,『意識高い系の研究』文藝春秋,『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』コアマガジン,『左翼も右翼もウソばかり』新潮社,『戦後イデオロギーは日本人を幸せにしたか』イースト・プレス,『ネット右翼の終わり』晶文社,『欲望のすすめ』ベスト新書,『若者は本当に右傾化しているのか』アスペクト,など等多数。

 --以上,だいぶ長い紹介になった。要するに,国会議員たちにとってみれば,日本会議神社本庁の存在は「一定の票田」として価値をみいだせる相手であるに過ぎない。国家神道的な宗教心はそのつぎの問題であり,ホンチャンのそれなどでは全然ない。国会議員たちは単に利用できる相手,付き合っておけばいざという時,自分たちの得になると評価できる対象として「それら」を観ている。

 簡潔にいえば,日本会議神社本庁の存在を買いかぶらないほうがいいという警告であった。

 靖国神社は最近,祭神である英霊たちとその遺族たちとの〈絆〉を,国家神道的に霊界において結合させるための「宗教的なイデオロギー」の彫造に苦しんでいる。また,神社本庁は,日本の神道すべての元締め機関でありたい意向ばかりにこだわるあまり,それでは,「日本における宗教形態のひとつ」のあり方として,もっと地道に神道の精神を全国各地・津々浦々に浸透させるという意識・覚悟がない。高見に位置している気分だけは横溢させている。

 そもそも,安倍晋三にしても菅 義偉にしても,靖国神社に参拝したり,その代わりに真榊を献納したりしたところで,これら首相たちの立場には「神道固有であるとみなせる〈本当の宗教心〉」に相当する〈何物〉もみいだせない。要は「政治による宗教の利用」であるに過ぎない。遺族会も票田を意味してきた。「政教分離の原則」をもちだす以前の次元における話題であった。

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