「錯乱・狂気の原発観」,原子力:太陽の火を地球にそのままもちこむ「原子力エネルギー観」はありえない,國米欣明「原子力のあゆみ」への疑問

             (2018年8月13日,更新 2021年8月4日)

原子力:太陽の火を地球にそのままもちこんだ「原子力エネルギー観」が「錯乱・狂気の原発観」だと断言されてよいのは,もともと人類・人間のためにあってはならない技術利用であったからである,しかし,人間は 20世紀になってそのエネルギー観を技術的に実現させてしまい,この地球の環境を破壊する原因を提供しつづけている,本日はとくに,國米欣明『原子力のあゆみ』への疑問をめぐり,原発問題をあれこれ論じる


  要点・1 いまどき『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にできるか』読売新聞社,1954年のごとき錯誤を再発させたごとき「本の登場」に感じる疑問,

  その本は,國米欣明『決定版 核分裂発見から80年 原子力のあゆみ-〈激動の80年を超えて〉地上に太陽の火を』幻冬舎メディアコンサルティング,2018年7月

  要点・2   「地上に太陽の火:原子力」は要らない,太陽光・太陽熱としてもらえばいい,それで十分に過ぎるほど太陽の恩恵は受けられるゆえ,危険だらけの原子力からエネギーを採るのは邪道も邪道

  要点・3 原発コストはもっとも安いと喧伝されてきたが,これは虚偽の説明であって,今後はどうしようもないくらいコストを上昇させていく,現にその上昇具合は確実に表現されている 

 🌑 前  論  🌑

 國米欣明『決定版 核分裂発見から80年 原子力のあゆみ-〈激動の80年を超えて〉地上に太陽の火を』幻冬舎メディアコンサルティング,2018年7月に言及する前に,1954年の時点で,『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にできるか』読売新聞社公刊され,当時において日本国民向けの “原子力エネルギー問題に関する啓蒙書” としての性格をもたされていた事実を指摘しておく。

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 この『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にできるか』は,その後半世紀も経ってからこの日本でも東電福島第1原発事故が起きることなど,おそらく夢にも思っていなかったはずである。原子力がエネルギー源としてバラ色であるかのように語った同書であったが,一言でいえば悪書である。

 しかし,同書が発刊されて四半世紀が経った1979年には,アメリカのスリーマイル島原発で事故が発生し,とくに原発先進国であったアメリカは,原発の電源としての利用じたいは止めなかったものの,それ以降における原発の導入に対しては一定の抑止要因になっていた。

 ここではまず,「各電源の発電コスト比較と一覧」『電力計画.com』http://standard-project.net/energy/statistics/cost.html という解説を手がかりに,つぎの「電源別の発電コスト」に関した諸統計をめぐる解説を紹介しておく。


 ◆- 各電源の発電コスト比較と一覧

 各種再エネや原発,火力発電の発電コストについて,コスト等検証委員会や発電コスト検証ワーキンググループさらには資源エネルギー庁『エネルギー白書』の報告を踏まえながら,なるべくくわしく,できれば分かりやすく案内したい。

 1) 「コスト等検証委員会」による発電コスト試算(2011年12月)

 政府によって開かれたエネルギー・環境会議「コスト等検証委員会」は2011〔平成23〕年12月,各発電設備の発電コストについての試算を報告した。

 その背景には同年の原発事故を受け,2004年のコスト等検討小委員会の報告から見直されることがなかった「従来のコスト試算への指摘や意見」(主に原子力発電の試算額が低すぎないか,という趣旨もの)に応えるべく,中立性を高めた情報の提供が主な目的としてかかげられていた。

 以下は,同上の報告が示したそれぞれの電源における発電コスト試算の一覧である。

 ★ 2011年 コスト等検討小委員会・発電コスト試算 ★

 

        2010年 モデルプラント  2030年 モデルプラント

  原子力     8.9~ 円/kWh        8.9~ 円/kWh
  石炭火力    9.5円/kWh        10.3円/kWh
  LNG火力   10.7円/kWh        10.9円/kWh
  石油火力    22.1~36円/kWh      25.1~38.9円/kWh
  陸上風力    9.9~17.3円/kWh        8.8~17.3円/kWh
  洋上風力    9.4~23.1円/kWh        8.6~23.1円/kWh

 

        2010年 モデルプラント  2030年 モデルプラント

  地熱        9.2~11.6円/kWh      9.2~11.6円/kWh
  産業用太陽光  30.1~45.8円/kWh      12.1~26.4円/kWh
  住宅用太陽光  33.4~38.3円/kWh      9.9~20.0円/kWh
  一般水力      10.6円/kWh          10.6円/kWh
  小水力       19.1~22.0円/kWh       19.1~22.0円/kWh
  バイオマス(専焼) 17.4~32.2円/kWh  17.4~32.2円/kWh
  バイオマス(混焼) 9.5~9.6円/kWh         9.5~9.6円/kWh

 以上では,ポイントとして原子力発電のコストに事故リスク対応費用( 0.5円)がくわわったことが挙げられる。

 他の発電方法が下限と上限が設けられているのに対して,原子力だけ下限のみが示されている理由は,この事故リスク対応費用に加算すべき費用として原発事故の被害額がさらに増える可能性を考慮している。損害想定額が1兆円増えるごとに発電コストには0.1円加算されるとされます。

 補注)ここ注意したい点があった。なぜか,原子力についてだけは「8.9~ 円/kWh」とか,次項でのように「10.1~ 円/kWh」と記入されている。 この「~(以上)」という表記は意味深長である。どうしても上限が記入できないでいるのか,という疑問がもとからあった。

 この点はのちに登場する表現「事故リスク対応費用」が,その事由を文字どおりに語っている。この費用は “要するに「 ∞ 」の可能性” を秘めているのである。その可能性を開花させる契機は,原発の過酷事故の発生によって具体化させられてきた。


 2)「発電コスト検証ワーキンググループ」による発電コスト試算(2015年2~4月)

 2015年2月から4月にかけてコスト等検証委員会の試算をアップデートしながらより実質的な発電コストを検証することを目的に,「発電コスト検証ワーキンググループ」が開かれた。

 以下は,同ワーキンググループによって示された2014年と2030年のモデルプラントによる発電コスト一覧である。

 ★ 2015年 発電コスト検討ワーキンググループ・発電コスト試算 ★

 

        2014年 モデルプラント  2030年 モデルプラント

  原子力    10.1~ 円/kWh      10.3~円/kWh
  石炭火力      12.3円/kWh        12.9円/kWh
  LNG火力     13.7円/kWh        13.4円/kWh
  石油火力      30.6~43.4円/kWh        28.9~41.7円/kWh
  陸上風力      21.6円/kWh        13.6~21.5円/kWh
  洋上風力    -            30.3~34.7円/kWh


        2014年 モデルプラント  2030年 モデルプラント

  地熱        16.9円/kWh        16.8円/kWh
  産業用太陽光  24.2円/kWh          12.7~15.6円/kWh
  住宅用太陽光  29.4円/kWh       12.5~16.4円/kWh
  一般水力    11.0円/kWh       11.0円/kWh
  小水力        23.3~27.1円/kWh    23.3~27.1円/kWh
  バイオマス(専焼)  29.7円/kWh        29.7円/kWh
  バイオマス(混焼)  12.6円/kWh        13.2円/kWh

 こちらの計算方法は,2011年のコスト等検証委員会のものを踏襲しており,2010年時点のモデルプラントとの比較が容易にできる。

 2010年の試算から見直しが入った部分としては,初期費用の計算方法を適正化したことで,とくに建設費の大きい電源において発電コストが小さく見積もられる傾向を調整した。

 そして発電量500億kWh以下の比較的規模の小さな電源においても政策経費を反映するようにした。

 「コスト等検証委員会」および「発電コスト検証ワーキンググループ」の試算を比較してみると,それぞれの発電コストは,固定価格買取制度で大きく価格低下が起こった太陽光発電を除いてすべての電源が,2010年よりも2014年のほうが高くなっている。


 ◆- つぎに,経済産業省総合資源エネルギー調査会発電コスト検証ワーキンググループ(第7回会合)資料2として公表した,『発電コスト検証に関するこれまでの議論について』令和3〔2021〕年7月12日を,これは画像資料も含めて該当頁から紹介する。

 a) 発電コスト検証の位置づけについて

 2030年の電源構成における系統制約を前提に,各電源を一定量増やした場合に電力システム全体として生じる「統合コスト」(火力効率低下や揚水活用などの費用)を,増加させた電源にすべて帰属させた場合のコストは,左〔下〕図のとおり(クリックで拡大・可)。

 註記)青棒:新たな発電設備を更地に建設・運転した際のkWh当たりのコスト,黄色ドット:帰属させた後の費用。(  ↓  この図表は最下部)

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【解 説】

 . 各電源のコスト面での特徴を踏まえ,どの電源に政策の力点を置くかといった,2030年に向けたエネルギー政策の議論の参考材料とする。

 . 2030年に,新たな発電設備を更地に建設・運転したさいのkWh当たりのコストを,一定の前提で機械的に試算。(既存の発電設備を運転するコストではない)。

 . 2030年のコストは,燃料費の見通し,設備の稼働年数・設備利用率,太陽光の導入量などの試算の前提を変えれば,結果は変わる。

 . 事業者が現実に発電設備を建設する際は,ここで示す発電コストだけでなく,立地地点毎に異なる条件を勘案して総合的に判断される。

 . 太陽光・風力(自然変動電源)の大量導入により,火力の効率低下や揚水の活用などに伴う費用(電力システムへの「統合コスト」)が高まるため,これも考慮する必要がある。この費用について,今回は,系統制約等を考慮しない機械的な試算(参考 ① )にくわえ,系統制約等を考慮したモデルによる分析も実施し,参考として整理(参考 ② )。


 b) 2020年の電源別発電コスト試算の結果概要(クリックで拡大・可)

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【解説】

 .各電源のコスト面での特徴を踏まえ,どの電源に政策の力点を置くかといった,2030年に向けたエネルギー政策の議論の参考材料とする。

 .2020年に,新たな発電設備を更地に建設・運転したさいのkWh当たりのコストを,一定の前提で機械的に試算。(既存の発電設備を運転するコストではない)。

 .事業者が現実に発電設備を建設するさいは,ここで示す発電コストだけでなく,立地地点ごとに異なる条件を勘案して総合的に判断される。

 以上の経済産業省(エネルギー資源庁)が解説する「電源別の発電コスト」については,図表のなかでは棒グラフの「緑色」部分で表現されていた「政策費用」,くわえては「黄色」部分で表現されていた「社会費用」が注目すべき項目となる。

 つぎの統計図表は2014年時点における「電源別の発電コスト」を表わした一例であるが,こちらでは「黄緑色」部分がとくに「事故リスク対応費用」と記入されている。この費用は「政策経費」とは性格を基本で異にしており,また「社会費用」とは共通性が完全にないとはいえないにしても,同じにくくるわけにはいかない項目である。

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  國米欣明『決定版 核分裂発見から80年 原子力のあゆみ〈激動の80年を超えて〉 地上に太陽の火を』の発刊

 先週〔ここでは,2018年8月6日(月曜日)~〕の週中のことであったが,つぎの新刊本の広告をしった。早速,紀伊國屋書店のホームページから関連する情報を探ってみたところ,以下のとおりであった。

 1) 國米欣明『決定版 核分裂発見から80年 原子力のあゆみ〈激動の80年を超えて〉 地上に太陽の火を』 幻冬舎メディアコンサルティング,2018年7月19日発売,2160円。

 それにしても,この本の書名の最後に出ている「地上に太陽の火」という文句には,思わずのけぞった。
 放射線を医療などに利用する分野はさておき,電力を入手するためにウラン鉱石を核燃料に加工して原発(原子炉)で水をわざわざ炊き,水蒸気を作り,タービンをまわして電力をうるという「機械工学的な方法」を利用した原子力発電は,その核燃料の使用に必然的にともなってくる,
 それも人類史上経験したことのない「深刻・甚大な原発事故」を惹起・誘発させてきた事実などそっちのけにしたまま,またぞろ,それも「〈激動の80年を超えて〉 地上に太陽の火:原子力を」などと,オダを上げている様子がうかがえたからである。
 補注)いうまでもない事実であるが,原子力《悪魔の火》である。というのは,最終的に,人間の手・技術によっては,けっして “under control” にできない相手だからである。もちろん安倍晋三君の手などには,まったく負えない「超の何乗かが付く難物」である。
 「地上に太陽の火=悪魔の火」を呼びこむといった第2次大戦以降の,この地球における出来事がじたいが「たいそう罪作り」であったにもかかわらず,同じ間違いを反復するように,またぞろ説かれていた。
 原発を世界中に広める役目を果たしてきたアメリカでさえ,自国内でスリーマイル島原発事故(1979年3月28日)を実際に体験してからというもの,原子力を利用する発電は一気に停滞気味を余儀なくされてきた。
 21世紀に入り,あの「お△△な世襲2代目の大統領ブッシュ」(2001年から2008年に2期務めた)が,当時,欧州や米国で原子力発電の見直しと建設計画の動きを推進しはじめたことがあった。当時アメリカのブッシュ政権は,原子力新設計画と「グローバル原子力パートナーシップ」を策定した。
 補注)以上の経過に関しては「原子力ルネッサンス」という用語を説明しておく必要があった。つぎの説明は2006年時点のものなので,現在向けとして適切な内容ではなくなっているが(2021年現在となっては,かなりズレた説明になっているという意味),あえてこのまま借りて引用する。なお,疑問(議論の余地)ありの項目には 印を付しておく。

 原子力発電はかっての低迷の時機を脱し,米国ではブッシュ政権によってウラン濃縮の積極的奨励,新しい燃料サイクルの研究着手,新規発電所の建設検討など原子力推進が打ち出された。

 

 また,欧州においてはフィンランドで30年ぶりに大型原発の建設が始まり,段階的に原発の閉鎖を決めていたドイツで再開の声があがっている。このような米国,欧州における原子力発電への追い風の流れを原子力ルネッサンスと呼んでいる。この背景には,以下の項目が控えていた。

 

  (1)エネルギー消費量の増大

  (2)二酸化炭素の排出による地球温暖化の防止

  (3)石油,天然ガス価格の高騰

  (4)化石燃料の枯渇

  (5)原子力支持拡大

 註記)「原子力ルネッサンスhttps://atomica.jaea.go.jp/dic/detail/dic_detail_2261.html

 だが現在まですでに,原子力発電は政治的な批判や一般市民からの不安感の根強さにくわえて,電気事業の民営化・自由化・規制緩和の流れのなかで,経営面・投資面からも魅力を失い,中国〔やロシア〕など一部を除いて原子力開発は停滞し,脱原発に向かっていた。日本でも1990年代末から急速に停滞していた。
 しかし,つぎのごとき原発事業をめぐる情勢の変化も生じている。
   (1)   米国で原子力発電所の統合によって規制緩和環境下で競争力のある原子力発電事業が登場,
 
   (2)   地球温暖化防止や原油価格の急騰,エネルギー安全保障への対応策として見直され, 
 
   (3)   米国・ブッシュ政権の強い後押しなどを背景に,原子力ルネサンスの動きが生じたとされる。
 ただし,そのころは原発の飛躍的な拡大というよりも,既存原発の寿命延長や建て替えが主な市場であった。原子力の抱える根本的な課題である巨大事故のリスクと核廃棄物の最終処分問題はなにも解決されておらず,原子力ルネッサンスもあだ花に過ぎなかった。
  註記)以上,途中からは,飯田哲也環境エネルギー政策研究所所長(2008年),『知恵蔵』参照,https://kotobank.jp/word/原子力ルネサンス-182481」参照。 
 もういちど繰り返して説明する。原子力発電(nuclear electricity generation)とは,原子力を利用した発電であり,原子核分裂時に発生する熱エネルギーで高圧の水蒸気を作り,蒸気タービンおよびこれと同軸接続された発電機を回転させて発電する方式である。 
 ところが,この発電の方法は,東電福島第1原発事故(2011年3月11日)の発生によって三度までも,非常に危険であるだけでなく,地球環境を一気に大規模に破壊する装置・機械である事実が,よりいっそう鮮明に実証された。 
 
 2) 本ブログは,2016年07月19日の記述,主題「原発産業の『文化遺産』のひとつ,福島県双葉町にかかげられていた『原子力 明るい未来のエネルギー』という大看板」,副題「原発は明るい未来のエネルギーではなく,人類・人間にとって,暗い将来をもたらしつつある《悪魔の火》である」で,こういう段落を記述していた。少し長くなるが,大事な論点が含まれているので,その一部分をここに再度転載しておく。

 註記)http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1059458527.html

 読売新聞社編『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にするか-』読売新聞社,昭和29〔1954〕年)に関する言及であった。

 

 いまもなお原発推進の立場にある読売新聞社は,昭和29〔1954〕年にみずからが編者となって,また当時の東京大学助教授・理学博士中村誠太郎の校閲をもらい,著作『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にするか-』を公刊していた。この本の題名はより正確にいえば『ついに《悪魔の火》は人間をとらえた-原子力を人を不幸にする-』と名づけるべき性質をもっていた。

 

 事故を起こすとわずか2~3時間でメルトダウンを惹起させるような装置・機械である原発が,人間に幸福をもたらすとか・そうではないとかいった次元で話題にすることじたいからして,議論の方向をとりちがえている。

 

 読売新聞社編『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にするか-』は,原発のすばらしさを解説する本だと,そのころは宣伝されて発売されていた。だが,半世紀以上も経った現在の地平から回顧するに,この本は,原発の危険性・反人類性を自己証明するための告白をしていた書物であったことになる。

 

 同書のなかには「ついに太陽をとらえた」という同名の1章が設けられているが,その副題には「原爆から水爆へ-壮大きわまる思いつき実現-」という文句がつけられていた(同書,184頁)。しかし,この「壮大」さというものは,原発がいったんでも事故を起こした分には,まことにもって「壮大極まる」「過酷事故」「核惨事」の発生となる宿命を,まえもって説明するための形容であったことにもなる。

 

 「原子炉というのはどういうものか?」と問うこの本は,こう答えている。「一言にしていえば,爆弾が原子力を一時に出させるものとしたら,これは原子力が小きざみに出させる装置」である(175頁)。すなわち,原発事故は,この原子力の使用法を間違えるという意味での操作失敗を指すが,事故を起こした時には「原子力を一時に出させる」 原子「爆弾」となる。物理学的にいってそう説明できる。

 

 読売新聞社『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にするか-』1954年から30年後,こんどは,朝日新聞科学部編になる『あすのエネルギー』朝日新聞社,1974年が公刊されていた。本書はつぎのように楽観的な観方を披露していた。いわゆる「安全神話」の幸福感ないしは満足感に満たされた見解であった。

 

 原子力発電所は,……安全対策を立ててある。運転中に突然,炉の中の水が全部抜けてしまい,燃料棒が熱のために溶けるという,現実にはほとんど起こりえない事故を考え,そういう事故が起きた場合でも,付近の住民にひどい放射能の害が及ばないように非常装置をとりつけ,発電所の立地も決めてあるのだ(『あすのエネルギー』138頁)。

 

 いうまでもないが,ここに説明されている内容はすべてウソになっていた。前述したように前世紀から今世紀にかけて起きた原発の大事故は,それぞれ以下の日付けに起きていた。

 

  ★-1 1979年3月28日,スリーマイル島原発事故
  ★-2 1986年4月26日,チェルノブイリ原発事故
  ★-3 2011年3月11日,東電福島第1原発事故

 

 川村 湊『福島原発人災記-安全神話を騙った人びと-』現代書館,2011年4月25日に対するブック・レビューのなかには,「悪魔は誰か本当の黒幕は誰かわかって来ました」という感想もみられるが,この悪魔そのものは,〈原子力〉という物理・化学的な太陽のエネルギーである。この悪魔を人間の側から “とらえることができた” などと勘違いしたところから,そもそもの原発的な間違いが開始されていた。 

 3) それでもいまごろにもなって,この新刊本,國米欣明『決定版 核分裂発見から80年 原子力のあゆみ 〈激動の80年を超えて〉 地上に太陽の火を』は,2世紀にまたがって過ちを説いている。國米はこの本の内容を宣伝するための文句として,つぎのごとき説明を連ねていた。

 1938年に核分裂が発見されてから80年。安全確保が叫ばれている原子力発電所の問題や,熾烈化する核兵器開発競争,新型ミサイルの開発など,近年,原子力をめぐる世界の情勢は激変している。

 

 核分裂はどのように発見されたのか。原爆投下以後,世界はなぜ核兵器開発競争に突入したのか。原子力の未来の展望は--。

 

 数々の疑問に対する正確な情報を伝えるべく,本書では,宇宙創成期に起こったビッグ・バンの時代にまで遡り,壮大な歴史を紡ぎながら,原子力のあゆみや原子力をとり巻く国内外の状況を徹底分析。

 

 また,核分裂が発見されてから,1945年に広島・長崎に原爆が投下されるまでのしられざる7年間についても明らかにする。原子力との向きあい方を考え,将来にわたり原子力をどう有効利用すべきかを提言した決定版。

 

 ※ 著者紹介 ※ 國米欣明(こくまい・よしあき)岡山県津山市出身,広島大学理学部物理学科,広島大学医学部医学科卒業。岡山大学医学部付属病院第一外科講師,岡山大学医学部第一外科医局長,岡山大学教育学部養護教員養成所講師兼務。幸町病院院長,幸町記念病院名誉院長。

 以上,國米欣明の経歴はひとまず置いておき,いまどき「原子力との向きあい方を考え,将来にわたり原子力をどう有効利用すべきかを提言」するもしないも,「なにもありえない」といわざるをえない。

 太陽のエネルギーからは太陽光・太陽熱発電で受けとめ電気として活かせばよいのであって,わざわざ「原子力:核種」を燃料にして原発でお湯を沸かし,タービン回転させて発電する方式を採る,それも非常な危険とともなうどころか,実際に大事故をなんども起こしてきたこの原発について,前段のように「どう有効利用すべきか」と頭をひねって考える必要はない。

 それでなくとも,いまでは原発廃炉問題をこれから長い将来に向けて,いったいどのくらいの時間と労力と経費がかけて処理していかねばならないのか,初歩的な予想すらまだ的確にできない現状にある。

 にもかかわらず,いまだに原子力について〔医療部門でに限定された応用はともかくも〕いかなるその有効利用ができるというのか? それよりも現実に目を向ける必要がある。原子力の問題に対する理解・認識の問題はさておいても,いまだに原子力に未来があるかのように語りたがるとしたら,それは夢物語以前の有害無益な方途しかありえない。

 

 「〈真相深層〉太陽光発電 真夏の支え 猛暑なのに節電要請いらず,なぜ-出力ピーク時は需要と時差」日本経済新聞』2018年8月11日朝刊2面「総合1」

 記録的な猛暑が続く日本列島。エアコン使用が増えて電力需要は伸びているにもかかわらず,政府が国民に節電を要請するような事態にはなっていない。

 2011年〔3月〕の東日本大震災以降,稼働する原子力発電所は大きく数を減らしている。なぜ電力は足りているのか。その謎を解く鍵の一つが,ここ数年で急速に普及した太陽光発電だ。

 電力各社は管内の夏の需要を事前に予測し,政府に報告する。「10年に1度の猛暑」との予測にもとづいて需要をはじき出し,安定供給に最低限必要とされる3%の「予備率」を確保できると5月に発表した。

 1) 管内の5分の1賄う

 原発停止で供給が不安定だった震災後は経済産業省が夏に節電を要請していたが,2016年以降は見送りが続く。世耕弘成経産相は〔2018年〕7月24日に「いま,節電をお願いする状況にはまったくない」と語った。

 「なにせ太陽光発電が1000万キロワット弱ありますから」。東京電力ホールディングス(HD)の関係者はこう明かす。東電管内の電力需要は足元で5000万キロワットを超えるが,瞬間的には5分の1ほどを賄っている計算になる。企業や家庭の屋根などにとりつけられた太陽光パネルからの電気を制度にもとづき買いとっている影響が大きい。

 補注)この日経の記事は,太陽光発電は「瞬間的には5分の1ほどを賄っている」と書いているが,また別様に「最大時には5分の1ほど」とも書けないわけではない。だが,瞬間と最大という表現は「含意させうる点を異ならせうる」だけの違いがあるといえる。
 本日午前9時30分ごろの全国大手電力会社における太陽光発電実績を紹介するが,同時に,日本全国の気象条件(雨雲のある・なしの状況)も添えておく(とくに上図はクリックで拡大・可)。
 

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 福島第1原発の事故以前,東電は年間の電力供給ベースの3割弱が原発の電源であったが,現在は稼働ゼロ。しかも,需要が増えたさいに追加で発電する石油火力発電所2基を〔2018年の〕7月から長期停止した。余裕の戦略を「ソーラーが支えているのは間違いない」(東電幹部)。

 補注)ここで指摘されているのは,東電管内では現在まで「原発が1基も稼働していなく」とも,その代替:穴埋め用として相当の電力量を発電しているのが,太陽光発電だという事実である。「瞬間的には5分の1ほどを賄っている」とまでいわれている。しかも,夏場であれば電力使用量が頂上(ピーク)時になればなるで,太陽光発電も同時並行的に高まる。つぎの図表は本日:午前9時50分現在までのものである。

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 いまでは,以上のごとき電力に関する需給関係が「原発不要論」を現実的に裏づける根拠となってもいる。繰りかえすが,現在,東電(東京電力ホールディングス株式会社,東京電力HD)は,ともかく,原発は1基も稼働させえていない。この状態は2011年の「3・11」以来つづいてきた事情である。
 〔記事に戻る→〕 そもそも国内全体で電力需要が減った影響もある。震災を機に節電意識や家電の省エネ化が進んだ。日本の夏のピーク時の需要は2010年度に1億7800万キロワットだったが,2016年度は約12%減った。ただ今夏は半分以上の電力会社で予想を上回る需要をすでに記録した。

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 補注1)この画像資料は〈出所の機関〉の体質上,「再生エネ:太陽光発電」をすなおに認知したくない(できない?)発想をもっている点を感じさせるが,この点以外では参照に値する黒を背景とする画像である。
 出所)http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/stat/01/
 

 補注2)直前(前掲)の統計図表では,再生エネの比率など不透明であるので,つぎの記述も紹介しておく。「東京電力,ピーク時の最大電力が4年連続減少の想定,自由化や節電が影響」(『新電力ネット』2016年04月10日,https://pps-net.org/column/16392)が,〔2018年から〕2年以上も前の事実として,下記のように説明していた。

 

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 ※-1東京電力のピーク時発電量,2012年から連続で減少」

 東京電力のピーク時発電量が,減少傾向にあります。発電端3日最大電力においては,2010年の5722万kWから,2011年の4697万kWと1年間で約18%減少しました。この時期の発電量減少は,震災に伴う節電要請の影響が強いものと考えられます。

 

 ※-2「新電力への離脱等で577万kW,節電で735万kWの減少想定(2010年度比)」

 東京電力における今夏(2016年)の発電端1日最大電力の見通しは,4503万kWとの想定です。2010年度は5886万kWだったので,6年間で1383万kWの減少となります。

 

 内訳としては,景気影響(GDP等の増加)で電力需要は上向いたものの,新電力などへの離脱(577万KW)や,節電(735万kW)などが影響したかたちです。また,気象状況も関係しており,最高気温が上がると最大発電量も増加する計算となります。仮に2016年度も2015年度猛暑並みの気温であった場合,電力需要が増え,4503万kWから4810万kWとなる見通しです。

 

 その後,2012年には5039万kWと,2011年度比で342万kW増加しましたが,2012年以降は年々減少し,2016年で4年連続の想定となります。2016年度においては,2010年度比1219万kW(約20%)の減少,前年の2015年度比でも159万kW(約3%)の減少想定です。

 

 要因別にみると,主に「①経済影響」,「②離脱影響」,「③節電影響」の3つに大別できます。近年の電力需要の減少は,「②離脱影響」と「③節電影響」が関係しており,新電力への切り替えに伴う電源開発や,節電意識の向上が影響していると考えられます。

 

 ※-3「予備率は3%以上を確保,安定運用の見通し」

 東京電力における今夏の需給バランスは,予備率が6.4%~9.4%となり,3%%以上を確保できる見通しです。また,トラブル時においても安定した電力供給を実施できるみこみです。

 

 仮に,大型火力機(100万kW)がトラブルにより停止した場合においても,当日の供給力は5%程度は確保可能,また供給力トラブルが夜間継続した場合においても,翌朝運用に支障とならない水準まで回復可能な見通しだとしています。

 

 ※-4原子力の停止後も,火力の発電量は減少傾向」

 東京電力による火力発電量は原発の停止に伴い,2011年の4166万kWから2012年には4407万kWと約250万kW増加しました。しかしそれ以降,年々と火力による発電力は減少していき,2016年度は3923万kWと,原発が稼働していた2010年度の4150万kWよりも200万kWほど少なくなる見通しです。

 

 火力による発電量が減少している要因として,節電や新電力の台頭,そして太陽光発電の増加が挙げられます。太陽光発電に関しては,年々と増加しており,2012年度は24.8万kWであったものが,2015年度には377.9万kWと15倍近くになっています。

 

太陽光発電量に関して,2016年度は一見すると147万kWと2015年度の377.9万kWよりも減少しているかのように思われます。しかし,これは2016年度は推定値,2015年度は実績値であるためです。2015年度も,推定値は約123万kWでしたので,それと比較すると2016年度は147万kWと増加していることが分かります。また,2016年度も,実績値は推定値を上回るものと考えられます。

 

 ついでに2018年7月の東電による電力需給関係に触れておくが,猛暑のせいで相当に高い水準にまで電力供給量が増えているものの,原発の稼働は以前ゼロで済ますことができている。

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 国内で2010年度は合計約50基の原発が稼働し,年間の電力供給量の25%を占めていた。現在〔2016年4月〕は関西電力で2基,九州電力で3基が稼働するだけだ〔2018年8月現在では全部で9基にまで稼働原発が増えていた〕。ただ,いま〔2018年夏に〕電力需給でヒヤっとする場面があったのは,比較的余裕があるはずの関電だった。

 2) 融通で乗り切る

 関電は7月17,18日,事前契約した工場などに節電してもらう「ネガワット取引」を初めて発動。東電なども実施例がある新手の需給安定策だ。それでも18日には需給が逼迫し,東電などから計100万キロワットの融通を受けて乗り切った。とはいえ,関電の全体的な供給力が足りないわけではない。実際,19日の電力需要は前日を上回ったが,融通を受けずに乗り切った。 関電はフォーメーションを毎日変えるためと解説する。

 補注)2018年5月時点において関電は,4基の原発を再稼働させていた。

 電力各社は基本的に前日の段階で,予想最高気温などから翌日の電力需要を予想。それにあわせて「予備力」の火力発電所などを動かし,供給力を調整する。関電は〔2018年の7月〕17日の段階で18日の最大電力を2770万キロワットと予想していたが,融通を受けた18日午後4時~5時は「異例だが100万キロワットも多かった」という。

 業界関係者はこの時間帯に注目する。「昔は真夏の暑さは午後2時か3時ごろだったが,いまは夕方にシフトしている」。四国電力の幹部はこう話す。夕方は日が落ちてきて太陽光発電の出力がガクッと落ちる時間帯でもあり,需給バランスが崩れやすくなっている。

 実際,関電エリア内では18日昼ごろに350万キロワット超だった太陽光の発電量は午後4時から5時に半分以下の160万キロワットまで落ちた。関電はこの傾向は織りこみ済みとするが,午後4時を過ぎても大阪市内の気温が高止まりし,需給見通しに狂いが生じた。結果的に他社からの電力融通はこの時間帯におこなわれた。

 「ソーラーの普及で,いままでとはオペレーションが変わった」と東電幹部は話す。電気はためられず,蓄電池も普及が進まないため,昼間の供給に余裕はあっても,夕方に太陽光発電が減るタイミングで需給を安定させる作業がいまや必須だ。

 東電関係者がむしろ心配するのは日照時間が減る冬場だ。今〔2018〕年1,2月に気温が低下し,積雪で太陽光が機能しなかったさいには電力需給が綱渡りとなり,ネガワット取引や電力融通を連日発動した。エネルギー環境の変化は電力大手に新たな対応を促している。(引用終わり)

 この記事を読むと,以前よりすでに「原発無用・不要の時代」に入りかけていた「日本の電力事情」が,より現実的に理解できるはずである。 

 原発のように図体ばかりでかくて,「オレ様が電力を生産しているとき(⇒稼働中の原発は100%の操業度でないといけない,そうしていないと不安定な稼働状態になりやすく,事故につながる危険性が増すのである)は,積極的に「みな必らず・絶えず電気を使っていろ!」みたいに,いわば,逆立ち:主客転倒してしまった「電力需給関係のあり方」(いわゆる『原発がベースロードであるとした電源説』)は,もはや過去の伝説,物語化しつつある。 
 この「でくの坊の原発」に電力生産を任せていると,ときにトンデモない事態や事故が起きらないとはかぎらない。それもものすごく大規模で,かつ非常な危険を発生させるほかない大事件として,である。われわれは実際に,甚大な被害を残し,無残な結果をいまももたらしつづけている大事故を,なんども体験させられてきた。そのつど人類・人間側は〈臍をかむ思い〉をさせられてきたのではないか?
 再生エネの発電方法とは「自然・環境に対する接触面」のあり方において「対極に位置する」のが,原発の本質である。とりわけ,廃炉工程から将来に向けて延々と続くことになる原子炉などの後始末は,この問題に関する技術経済に関して視野を広くとって考慮することにしたら,いまでは「原発は完全に時代遅れの発電装置・機械である」と断定できる。 
 それだけでなく,原発がいったん過酷事故を起こしたぶんには,もうとりかえしのつかない「地球環境への深刻・甚大な損害」を与えるだけでなく,その事故が発生した直後から人命を奪っていくし,事後においては長期間にわたりいつまでも悪影響を継続していく。
 比較して考えるために,たとえば,火力発電所で100万kw時の性能を有する火力発電の装置・機械1基が「爆発事故を起こした」とする。そのさい同時に,燃料倉庫(貯蔵タンク)なども巻きこんだ大事故になったと仮定する。しかし,この程度の発電所の事故であっても(変ないい方になるが),原発の大事故に比較すれば(同じ100万kw時の1基の事故だとしても),はるかにその被害は少ないで済むはずだと想定できる。どこまでも「比較しての話題」となるはずであるが,そのように説明するのが妥当である。
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