新型コロナウイルス感染拡大を防遏・制圧するための野戦病院をいまだにひとつも設営しないこの国は「医療後進国」,コロナ専用病棟をろくに提供していない地域医療機能推進機構(JCHO〔ジェイコー〕,尾身 茂理事長)は,役立たずの木偶の坊である大病院組織

 開催してはいけないパラリンピックを強行し,コロナ禍の災厄をさらに拡大させる政府・都の狂気ぶりときたら,この冬までには襲来が予想される第6波のもとでは,日本の医療体制が大混乱に追いこまれるのではないかと心配する

 

  要点・1 コロナ禍対策に鈍感な政府と厚生労働省

  要点・2  「ウドの大木」的な病院組織なのか,国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)

  要点・3 新型コロナウイルスに襲われても,五輪の開催を強行するといったふうにもっとも愚かな選択をした,この国は後進国化への経路をひた走る 


  「『コロナ病床5%』旧国立・社保庁197病院への疑問-法律あっても病床確保は厚労相のお願いベース-」東洋経済オンライン』2021/08/23 (月) 11:10 配信,https://toyokeizai.net/articles/-/450095(寄稿者は松浦 新,朝日新聞記者)

 この朝日新聞記者による東洋経済への寄稿は,コロナ禍の問題をめぐってだが,ようやく肝心な領域に踏みこんでいた。本日の『朝日新聞』朝刊がつぎのように報道しているが,コロナ禍対策として病床の不足は「以前より深刻な場面として」,断続的に経験させられてきた。にもかかわらず,この ① で指摘・批判されているような「ある大病院組織のサボタージュに近い〈非協力〉ぶり」が,事実としてあった点はみのがせない。

  ★ 病床確保要請,効果は不透明  酸素投与に休眠病床活用 ★
      =『朝日新聞』2021年8月25日朝刊3面 =

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 政府や東京都は改正感染症法にもとづく要請で,新型コロナウイルスに対応する医師らの確保などを強化したい考えだ。きわめて逼迫する医療の改善をめざすが,医療関係者は今回の対応は「コロナ優先」で,一般診療が制限されることが伝わっていないと警鐘を鳴らす。

 都内では現在,酸素が必要な中等症の患者すら入院できない実態がある。政府は今回の要請と合わせて,酸素投与が必要な患者に対応しやすい病床の確保をめざす。

 確保をみこむのは,新型コロナ患者受け入れのために休止している一般の病床だ。これまで,中等症などのコロナ患者を受け入れてきた医療機関には休止中の病床が多い。中等症の患者を診るために院内の一部の病床を休止し,医師や看護師をコロナ対応に充てているためだ。ほかに,老朽化などに伴い使っていない病棟の病床も候補になる。

 政府は,それぞれどれぐらい存在し,活用可能か都に調査してもらい,必要な整備などを進めたうえで使ってもらう考えだ。

 補注)このような問題意識でもって,いまからでも病床の整理・発掘・調達をすることは,むろん必要不可欠な緊急の仕事になっている。だが,それ以前に,本日のこの記述全体が述べるところとなっているが,実は完全にみのがされている大病院組織があって,こちらがコロナ禍に対してさっぱりまともに活用:動員されていない事実が,世間にはよくしられていなかった。

 しかも,国立病院や,実質それに近似している独立行政法人の企業形態を採る大病院組織が,どうみても実質的にコロナ禍に対して罷業した状態をつづけてきた。いいかえれば,コロナ禍の問題に真正面から対処しようとはせず,逃げまわってきた状態にあった。

 しかもなんといっても,コロナ禍が発生してからすでに1年半以上が経っているいまどきになってもまだ,前段の諸病院はそうした不誠実な基本姿勢を保持しており,つまり病院体制本来の任務・課題から逃避するだけの基本姿勢を継続させてきた。

 新型コロナウイルス感染拡大「問題」が,2020年当初から世間を騒がす大問題になっていた。だが,この松浦 新記者の寄稿のなかでとりあげられている国立病院機構地域医療機能推進機構は,その本来の基本的な任務をまともに果たすことすらないまま,今日まで漫然と大病院風の経営管理方式を,のんびりと継続させてきた。

 その意味では,それらの国立(ならびに国立的)病院は,不作為的に日本におけるコロナ禍の蔓延に手を貸したとまで批難されても,まともに反論できない。もちろん,そちら側なりにヘリクツ的に反発がなされようが,コロナ禍に対してはたび重ねて緊急事態宣言が発令される情勢の推移のなかでとなれば,これらの大病院はずいぶん悠長に経営をしている,とみなされて当然であった。

 朝日新聞の松浦 新記者が2日前〔2021年8月23日〕,『東洋経済 ONLINE』に投稿した文章は,本来であれば率先してコロナ禍に対処しているはずの,それこそ全力を挙げて医療態勢をととのえ,前面に出て大々的に活動していなければおかしかったはずのこの2つの医療機構が,実質的には完全にといっていいくらい逃げまわってきたと形容してよい〈非協力〉ぶりを,ここまで記録してきた。

 その実情は,日本におけるコロナ禍を不必要に拡大させる日本的な医療体制の重大問題のひとつとして,けっして看過できない事実になっていた。


 以下に松浦 新記者のこの寄稿を全文,引用する。

 a) 国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)をご存じだろうか。いずれも厚生労働省が所管する独立行政法人であり,旧国立病院など公的医療機関を傘下に置く。そのネットワークは国立病院機構が全国140病院で計約3万8000床,地域医療機能推進機構は全国57病院で同約1万4000床を有している。

 医療に詳しい人でなければ,JCHOの存在を認識していないかもしれない。ただ,JCHOの理事長が政府対策分科会の尾身 茂会長と聞けば,公的医療機関のなかでも重要な位置にあると想像がつくだろう。

 新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大によって,入院できずに自宅で亡くなる患者が相次ぎ,千葉県柏市では新生児が亡くなる悲劇も起きた。日本は災害同然の事態に見舞われている。

 b) NHOとJCHOのコロナ病床は〔なんと〕約5%

 そのなかにおいて,国立病院機構地域医療機能推進機構は,どれほどコロナ患者を受け入れているのだろうか。筆者が入手した資料によると,7月末時点で,国立病院機構の全国140病院の計約3万8000床のうち,コロナ病床は1854床(4.8%),地域医療機能推進機構は全国57病院の同1万4000床のうち,816床(5.7%)。合わせてざっと5%程度にすぎない。

 2機構には,それぞれよって立つ法律もある。国立病院機構法と地域医療機能推進機構法は,それぞれの21条に「公衆衛生上重大な危害が生じ,若しくは生じるおそれがある緊急の事態に対処するため必要があると認めるときは,(厚労相が)機構に対し,必要な業務の実施を求めることができる」といった規定がある。

 いま,まさに「公衆衛生上重大な危害」は目の前で進んでいる。東京都では,コロナ陽性と診断されて療養している患者約4万5000人(8月20日現在)のうち,入院できているのはわずか8.7%の3845人だ。1カ月前はこれが25.2%だった。4人に1人が入院できたのに,1カ月で10人に1人も入院できなくなった。入院やホテルなどでの療養を調整中の人は,1カ月前の1671人から,1万2000人余りに急増した。

 コロナはいつ急変するか分からない。こうしているあいだにも,酸素吸入が必要でも入院先がみつからないコロナ難民が,救急車でたらい回しにあっている。

 この東京で,国立病院機構は3病院の計1541床のうち128床しかコロナ病床に提供できていない。地域医療機能推進機構も5病院の計1455床のうち158床だ。実際の入院患者は8月6日時点で計195人と,同日に都内で入院していた患者3383人の5.8%にとどまった。災害同然の危機的な状況なのに,国が関与する医療機関の対応として妥当なのかと疑問に思う。

 〔だが〕なぜ,厚生労働相は両機構に緊急の指示を出さないのか。8月20日,記者会見でこの点を田村憲久厚労相に聞くと,つぎのように答えた。

 「法律にのっとってというより,いまもお願いはしておりまして,病床は確保いただいております。無理やり何百床空けろといっても,そこには患者も入っているので,転院をどうするという問題もあるので,いうにはいえますが,実態はできないことをいっても仕方がない。極力迷惑をかけないなかで最大限の病床を確保してまいりたい」。

 c) 病床確保に強制力をもたせる法整備の議論が進むなかで,要するにあくまでもお願いベースなのだが,いま民間病院を想定して,病床確保のために強制力を持たせる法整備をするべきだとの議論もある。

 すでに今〔2021〕年2月の感染症法改正によって,厚労相都道府県知事が医療機関などに対して医療提供を勧告できるようになった。罰則はないが,正当な理由がなく従わない場合は施設名などを公表できる。

 一方,両機構の法は,機構は「求めがあったときは,正当な理由がない限り,その求めに応じなければならない」とも定めている。にもかかわらず,「お願い」しかできないのが実情なのだ。要するに,「法整備」は立法する官僚と政治家の自己満足にすぎず,実効性はないといっているのと同じではないか。

 コロナ以外の病気やケガのために病床を確保しなければならないという大義名分はあるだろう。ただし,それは民間病院も同じことである。なぜ,未曾有の事態においても国は両機構に対して手をこまぬいているのか。そこには,「消えた年金問題」で政権交代震源となり,売却寸前だったのに公的病院として残った「ゾンビ」のような大病院があった

 しりあいの厚労省官僚がこんなことを教えてくれた。

 地域医療機能推進機構は,厚労省の外局だった旧社会保険庁が国民から保険料を集めてできた病院の寄せ集めだった。前身の「旧社会保険病院」は中小企業などが加入する「旧政府管掌健康保険(現・協会けんぽ)」の積立金から,「旧厚生年金病院」は厚生年金積立金から,「旧船員病院」は,年金部門が厚生年金に統合された「旧船員保険」の積立金でつくられた経緯がある。

 こうした公的保険制度は,日本が高齢化する前の戦前から戦中にかけてできたため,多額の積立金を保有していた時期がある。そのひとつの厚生年金積立金については『厚生年金保険制度回顧録』で,制度ができた当初の旧厚生省年金課長が積立金について次のような証言をしている。

 「年金を払うのは先のことだから,いまのうち,どんどん使ってしまっても構わない。使ってしまったら先行困るのではないかという声もあったけれども,そんなことは問題ではない。20年先まで大事にもっていても貨幣価値が下がってしまう。だからどんどん運用して活用したほうがいい。せっせと使ってしまえ」。

 d) 国民の年金積立金を湯水のように垂れ流した

 こうしてできた施設のひとつが厚生年金病院だ。ほかにも,「年金福祉事業団」という旧厚生省の天下り先があり,リゾート施設などに採算度外視の投資をして,国民の年金積立金を湯水のように垂れ流した。まさに,元年金課長が予言したとおりのことが起きた。

 こうした批判に当時の自公政権は,旧社保庁を解体し,厚生年金病院や社会保険病院などを含めた旧社保庁関連施設の民間売却も決めた。ところが,年金記録問題から社保庁解体のきっかけを作り,2009年8月に政権の座についた民主党は,1カ月もたたないうちに方向転換して,3病院の公営を維持する方針を打ち出す。

 当時は,赤字の病院が多いなどの理由で引き受け手がみつかりにくいとして,このままでは地域の中核医療拠点がなくなりかねないとされた。結局,3病院は2014年に統合され,地域医療機能推進機構が生まれた。

 ところが地域医療機能推進機構は赤字どころか,優良病院そのものだ。2020年度決算によると,201億円もの黒字になっている。好業績は昨年度だけではない。貸借対照表によると,総資産約5800億円に対して負債は約1051億円しかなく,自己資本比率は82%という超健全経営なのだ。

 その分析は別の機会に譲るとして,いま,コロナ禍で,民間病院は経営難にあえぐところが多い。民間病院がコロナ患者を引き受けることは,ひとつ間違えば院内感染を引き起こすことにもなり,たちまち経営は傾く。

 e) いまこそ公的医療機関としての役割を

 いまこそ,国が主導して民間に範を示すべき時ではないか。〔8月〕20日の記者会見で,田村〔憲久〕厚労相に,コロナ専門の病院をつくるために指示を出すつもりはないかと質すと,つぎのように答えた。

 「働いている方々が,覚悟をもって対応していただかなければならないこともありえます。つねに想定しながら,いろいろなお願いをしている。まったく考えていないわけではありませんが,いろいろな問題点があるなかで,つねに検討しているということであります」。

 まどろっこしいいい方だが,考えていないわけではないといいたいようだ。

 つぎに,取材に対する厚労省医療経営支援課からの回答を紹介する。なぜこんなにコロナ病床が少ないのか,公的病院の役割を果たしていると考えるか,なども聞いたが回答はなく,都道府県の要請に応じて提供した結果であると,木で鼻をくくったような中身だった

 旧社保庁系病院は,一度は民間などに売却されることが決まり,公共性があるという判断で公的医療機関として生き残った。その後に培ってきた経営体力は,今回のような危機の時にこそ活用されなければならないだろう。それができないのであれば,こんどこそ,解体・売却したほうがいい。これだけ立派な黒字病院なのに,公的な役割を果たせなければ,公的な優遇措置を続ける意味がない(引用終わり)

 純粋な民間病院の場合,大病院であってもまた各種の補助金が支給されていても,新型コロナウイルス感染者を受け入れるには「カネ・ヒト・モノ,情報・管理」のすべてにおいて非常な負担になる。

 ところが,前段に紹介してきた松浦 新「寄稿」では,コロナ禍の発生時に当たってこそ率先したかたちで,もっとも最前線に出て任務に当たるべき国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)とがともに,現状の姿をみると,それこそ “知らぬ顔の半兵衛を決めこんでいた” がごときに,ずいぶん少数の感染者しか受け入れていない。

 政府・厚生労働省側も「側」であって,新型コロナウイルス感染症問題が社会的に騒がれ出した2020年2月の時点では,野戦病院の設営を準備する以前の対策としてだが,これら「国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)」がかかえている各地の病院のうちから,いくつかの病院を選んで専用病院に特定し,公的な医療体制としてととのえておくべきであった。

 ところが,それから現在の2021年8月下旬の時点になっても,そのような対応はまったくおこなわれておらず,ほかの公立病院や国立大学付属病院並みにしかコロナウイルス感染者を入院させていない。そうした 国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)の基本姿勢はだから,これら機構の成立経緯や組織特性に鑑みれば,完全にサボタージュをしている,とまで指弾されて当然である。

 それにしても今日の時点まででも,コロナ禍のためにこの国は大混乱させられ,社会経済活動も低迷せざるえない状況をつづけてきた。この苦境を横目に観ながら,それこそ「ノウノウしている」のが,この「国立病院機構(NHO)」と「地域医療機能推進機構(JCHO)ではないか」と形容し,猛烈に批判をくわえられて当然も当然である。

 いざという時にこそ,まず最初に自院のもてる諸資源を総動員して事態に当たるべき大病院であるはずだったのが,この国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)であった。ところが,いつまでも目立たぬように,つまり隠れていたいかのようにしていて,コロナ禍に対して積極的に対抗しようとはせずに,つまり逃げまわっていた経過を記録してきた。

 まさに,この2院はその存在意義について「鼎の軽重を問われていた」のだが,すでにデルタ株からラムダ株まで発生しているコロナ禍の進展状態のなかで,いつまでもトボけて逃げつづけるつもりか?

 政府・厚生労働省田村憲久大臣側のいい分・説明になると,ほとんど寝ぼけているのかとしか解釈できない。前段に紹介したこの田村の語り方は,意味も意図も不明に近い口舌であった。

 以上,朝日新聞記者の松浦 新が捕捉したのは,国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)」の無責任な病院経営態勢,そしておまけに,政府・厚生労働省側における当事者能力の欠落ぶり,いいかえればとくに,その指導力のなさや任務遂行で確たる自信をみせない田村憲久の,大臣としてのあいまいな基本姿勢であった。

 また,朝日新聞記者の松浦 新はなぜ,自紙の記事においてではなく『東洋経済 ONLINE』に寄稿するかたちで,国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)」のコロナ禍に対するサボタージュ態勢を指摘することになったのか?

 この疑問を最後に提示しておき,つぎは,本日(8月25日)の『日本経済新聞』朝刊3面の解説記事を引用することにしたい。同じ2面には関連する「社説」も掲載されているが,食い足りない。

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 ともかく,次項 ② に引照する記事も合わせて読んでみれば,日経の論説委員が勉強不足・情報欠如のまま,中小の病院に向けてもただちに,大病院並みにコロナ禍に対応せよと迫る論旨をまとめることが,いかに焦点ボケ(論点はずし)であるかが理解できるはずである。

 先回りして指摘しておくが,諸外国の関連事情に言及するのもいいけれども,自国・足元の問題をみのがす議論は,画竜点睛を欠くどころか,基本における見当違いを惹起がはなはだしい。


 「医療逼迫打開へ総力戦 都,7000床へ法的手段も 3分の1の250病院,コロナ対応せず」日本経済新聞』2021年8月25日朝刊3面「総合」

 厚生労働省と東京都が改正感染症法にもとづいて都内の全医療機関に連名で新型コロナウイルス対応への協力を要請した。都は〔8月〕24日,オンラインで医療関係者に要請内容を説明。感染拡大で東京都を中心に医療の供給体制は逼迫している。

 コロナ医療に直接関わっていない病院や診療所からも,宿泊療養施設などで対応にあたる人材を確保し,医療措置を受けられる患者を増やす。法的手段も含め,総力戦での打開が必要となっている。

 〔8月〕24日のオンライン説明会で都はコロナ患者に酸素を投与する「酸素ステーション」への人材派遣などを要請した。

 都内には約8万の一般病床がある。都はコロナ対応で確保する病床数をいまより1割積み増し7000床をめざす方針だ。

 都内には病院が約650あり,うちコロナ患者を受け入れている病院が約400ある。コロナ対応に直接かかわっていない病院は約250と,3分の1を占める。要請では400病院にはさらなる患者受け入れや病床の確保を求めた。残る250病院には宿泊療養施設や臨時の医療施設の運営にかかわるよう要請。どう対応するかの回答期限はいずれも31日に設定した。

 ただ,院内感染の防止のため動線を確保しやすい200床以上の病院は,都内に170カ所ほどに限られる。中小病院が多く,病床が分散している。なお使っていない空き病床はあるとみられるが上積みは簡単でない。〔8月〕13日に大阪府も病床確保を要請したが上積みのメドがついたのは70床にとどまった。医療機関は看護師不足などを理由にした。

 今回は改正感染症法にもとづく要請に国も初めて名を連ねて踏みこむ姿勢をみせた。法律にもとづく勧告や病院名公表は,患者の生命・健康などへの影響や代替手段がないなどの状況での実施が求められており,限定的との見方もある。どこまで法的手段の実効性をもたせられるかも課題となる。

 補注)いままで国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)が,この種の議論(批判)の俎上に上らせられなかったのは,不思議であった。すでにこの2機構が先頭に立ってコロナ禍対策に尽力してきたというのであれば,話は別であるが,その真逆をいっていたとなれば,なにをかいわんやであった。 

 コロナに感染した重症者への対応から,都内の集中治療室(ICU)の空床率は22%と,全国の27%を下回る。ICUにくわえ,それに準じる治療室の合計は4月時点で都内に2482ある。2017年度から約400増えたがそれでも追いつかない。

 コロナ以外にも急病やケガなどの患者は多い。ICUでの対応も含めた都内の救急は,約1割の案件が制限されたり,停止されたりする状態となっている。限られたICUを有効活用するためにも医療資源の効果的な配分が欠かせない。

 ※-1 抗体カクテル,宿泊療養は1カ所 医療人材不足なお

 病床が逼迫するなか,主に軽症者の受け入れ先となるのが,ホテルなどの宿泊療養施設だ。看護師が常駐するため,症状の急変にも対応しやすい。

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 だが,居室数と稼働率は伸びていない。都内の受け入れ可能な宿泊療養施設は3210室(20日時点)で1カ月前と比べて1割増えただけだ。しかもフル稼働できず,療養者は1996人(23日時点)で稼働率は62%にとどまる。

 背景には,施設内で患者をケアする看護師らの慢性的な不足があり,都や国は今回,宿泊療養施設への人材派遣を求めた。コロナ患者の受け入れに応じていない病院や約1万3500カ所ある診療所の協力がどこまで広がるかがカギだ。

 ※-2 宿泊療養施設にいる比較的軽症な段階で,抗体カクテル療法が活用できれば重症化を防げる可能性が高まる。

 抗体カクテル療法は〔8月〕13日に厚生労働省が通知をあらため,宿泊療養施設でも使えるようになった。だが都内で投与可能な宿泊療養施設は品川プリンスホテル(東京・港)イーストタワーの1カ所のみ。重いアレルギー反応に対応できる医師の配置が望ましいが,確保が難航している。

 人材不足の解消に向け,31日の回答期限までに医療機関が派遣に応じる動きはある。産婦人科を経営する医師は「新たにコロナ病床を設けるのはむずかしい」とする一方,「手が足りない現場に医師や看護師を派遣できるかもしれない」と検討を始めた。「要請があれば手伝いたい」と声を上げる職員もいるという。

 こうした協力が積み重なれば,医療提供体制の改善が期待できる。

 ※-3 体育館などの臨時大規模施設,東京ようやく検討

 病床不足が深刻化するなかで,体育館などに多数の病床を並べる臨時の大規模医療施設を検討する自治体も出はじめた。新型インフルエンザ等対策特別措置法にもとづき都道府県知事が開設する。感染者のうち入院できている人の割合を示す入院率が東京都で9%(23日時点)まで低下しており,政府も整備を呼びかける方針に転じた。

 補注)いまごろにもなって,この「体育館などに多数の病床を並べる臨時の大規模医療施設を検討する」動きが出てきたという事実じたいが,そもそも問題であった。安倍晋前政権,菅 義偉政権ともにその種の野戦病院の設営には,ほとんどなにも関心を向けてこなかった。

 諸外国のその設営ぶりは当初から報道などされてきたが,日本ではなぜか関心が向けられなかった。つぎの段落でも「野戦病院的な施設は今後,必要になると思う」「・・・課題だ」などと述べられているが,コロナ禍の流行は待ってはくれない。なにを悠長なことをいっているのか,という印象である。

〔記事に戻る→〕 都幹部は〔8月〕24日「国の求めに応じこれから検討していく。患者を1カ所で集中管理する野戦病院的な施設は今後,必要になると思う」と明かし「医師や看護師の確保が課題だ」と語った。大阪府の吉村洋文知事も23日「(整備に)後ろ向きではない」と述べ「感染が拡大している状況で,医療従事者の確保に大きな課題がある」と指摘した。

 人員に関して厚労省は,日中1人以上の医師,常時1人以上の看護師配置を求めている。全体の見通しがきく施設なら「個室のケアが必要なホテルと違い(医師・看護師が少数でも)患者の急変に気づきやすい」(都内の開業医)のは利点だ。

 福井県は〔8月〕3日にいち早く設置方針を発表。体育館に100床を置く計画で,医師派遣に県医師会が協力する。利用するかどうかは未定で,県担当者は「あくまで最後の砦(とりで)」と話す。

 補注)このように地方自治体で個別に,それも諸外国の事例に比較したら小規模の野戦病院を設営しなくてはならない現状は,問題があった。ちなみに国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)は,もちろん全国各地に病院をもっている。こちらの諸病院こそが先頭を斬るかっこうで,猛烈なコロナ禍に対して「野戦病院」体制をととのえたうえで戦うための第1線を形成すべきところを,だいぶ距離を置いた状態のまま,しらんぷりしてきている。

 海外では感染が広がり始めた2020年から開設が相次いだ。最近でもタイ政府が7月,バンコクの空港倉庫に1800床を設置。米国では8月中旬,ミシシッピ州の大学病院の駐車場に2つのテントが登場。合計50床超を用意している。(引用終わり)

 この記事の最後の終わり方が「?」であった。まるで “他人ごと・他国ごと” みたいにその野戦病院の設営が語られていた。それよりも足下にこそ重要な問題があったのでは?

 

  ① と ② の議論を復習する-こういった記事がすでに今年1月には報道されていた,ただし大手紙の報道ではなかった-

 1) 「尾身茂会長の『系列病院』にコロナ患者受け入れ “後ろ向き” 疑惑... 都内1500床以上で60人足らず」『日刊ゲンダイ』2021/01/17 06:00,更新日 2021/01/18 15:04,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/283949

 a)「みずから範を示すべきではないか」

 厚労省はコロナ患者用の病床確保に向け,国や都道府県知事が病院などに患者受け入れを勧告できるよう,感染症法を改正する方針だ。同省は,勧告に従わない場合,病院名などを公表することも視野に入れている。そうした強硬手段が浮上している一方,政府のコロナ対策の前線に立つ人物が運営する病院が, “コロナ患者の受け入れに後ろ向きなのではないか” と疑われているのだ。

 ※ コロナ対策の“顔”に疑惑浮上  補正予算に「尾身枠」65億円の謎 ※

 b) 都内に1500床以上はあるが…

 疑問視されているのは,政府の感染症対策分科会の尾身 茂会長が理事長を務める,独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)」だ。全国に傘下の57病院が存在する。

 都内には「東京蒲田医療センター」「東京高輪病院」「東京新宿メディカルセンター」「東京山手メディカルセンター」「東京城東病院」の5つの傘下病院がある。5病院で計1532床ある。ところがコロナ患者用の病床はごくわずか。

 『週刊新潮』20210年1月21日号によると,5病院でコロナ患者用病床は,たったの計84床。受け入れ患者数も同57人という少なさなのだ(いずれも1月6日時点)。

 『日刊ゲンダイ』にも昨〔2020〕年末,関係者から「東京城東病院」を除く4病院のコロナ患者用病床数と受け入れ患者数の内部情報がもたらされた。4病院計1415床のうち,コロナ病床数は計84床。12月21日時点で受け入れ患者数は41人だったという。いずれにしろ,その規模に比べてかなり少ないのだ。

 c) JCHOに問い合わせると…

 都内では,入院・療養先が決まらない「調整中」の感染者が7046人もいる。病床使用率は8割を超えている。さらに,都立3病院は実質的な「コロナ専門病院」になる予定だ。

 〔しかし〕感染症対策の前線に立つ尾身会長が “トップを務めるJCHO傘下病院” こそ,積極的にコロナ患者を受け入れるべきではないのか。JCHOに問い合わせると,「地域に求められる医療推進のため,自治体と調整して運営している」(医療担当部)とし,「個人情報につながりかねないので,コロナ用病床数や受け入れ患者数は非公表」(同)と回答した。

 補注)この個人情報ウンヌンは説明とかいいわけになっていない,意味不詳の答えである。なんのためにこのような論法になるのか理解しにくい。

 高千穂大教授・五野井郁夫氏(国際政治学)はこういう。

 「『コロナ専門』になることが決まった都立病院〔たとえば都立広尾病院〕では,転院を余儀なくされる患者が出ています。それほどの状況なのに,尾身会長がかかわる病院は受け入れが少ない。なぜ受け入れ状況に偏りがあるのか,行政は理由を明確に示すべきです」。

 

 「でなければ,政府に近く発言力が強い病院は対象から外れ,弱い病院が恣意的に対象に選ばれると勘繰られても仕方ありません。国民の命がかかっているのですから,政府や都は説明責任を果たさねばなりません」。

 尾身会長は最近,会見で「医療現場の皆さんは疲弊して限界にきている」と険しい表情で訴えている。みずからが運営する病院をコロナ専門病院にできない理由があるなら,国民に説明すべきだろう。

 補注)本ブログ筆者は寡聞にしてそうした説明をまだ聞けないでいる。

 2)「政府分科会『尾身会長』傘下の病院,コロナ患者受け入れに消極的だった 全病床の5.5%  癌専門病院であるがん研有明〔よりも〕以下〔の受け入れ実績〕」『デイリー新潮』2021/01/20 (水) 5:57,https://www.dailyshincho.jp/article/2021/01200557/

 ※-1 数字が物語る消極性

 菅首相が緊急事態宣言の再発令を決断したさい,中川会長と同等かそれ以上の役割を果たしたのは,「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身 茂会長である。わが国のコロナ対策の「顔」だが,その尾身氏が理事長を務める独立行政法人地域医療機能推進機構」が東京都内で運営する主な病院のコロナ患者専用の「確保病床数」と,2021年1月6日時点での受け入れ患者数が分かる表を掲載した。

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 それをみると,総病床数520床の「東京新宿メディカルセンター」の確保病床は35床,受け入れ患者数は31名。総病床数247の「東京高輪病院」の確保病床は20床で,受け入れ患者数は7名。総病床数230床の「東京蒲田医療センター」の確保病床は29床で,受け入れ患者数は8名。総病床数418床の「東京山手メディカルセンター」はコロナ重点医療機関に指定されていないので,確保病床数はゼロ。が,なんらかの事情により,11名の患者を受け入れている。東京城東病院の確保病床もゼロである。

 「これはコロナ患者受け入れに非協力的であることを示す数字です。“首都圏は感染爆発相当” などと国民の不安を煽っている彼は,実はコロナ患者受け入れに消極的なのです」。

 そう話す厚労省周辺関係者によると,たとえばがんの専門病院である「がん研有明病院」はこれまで,コロナ患者は受け入れないという方針を貫いてきたが,昨〔2020〕年末,40床をコロナ病床とする決断を下したといい,

 「この病院は全686床ですから,5.8%のコロナ病床を確保したことになる。一方,尾身氏傘下の5病院のコロナ病床は全病床の5.5%で,がん専門病院であるがん研有明病院以下の数しか確保していないのです」。

 入院患者らをすべて他へ転院させたうえ,全99病床をコロナ病床とした東海大付属東京病院のようなケースもある。尾身氏も傘下病院で積極的にコロナ患者を受け入れてこそ,その発言の説得力が増すはずだが,そうはなっていないのが現状なのだ。

 東京出身で1949年生まれの尾身氏。東京教育大附属駒場高校(現筑波大附属駒場高校)から慶応大法学部に進むも,在学中に医学の道を志し,新設開学した自治医大の1期生となったという,一風変わった経歴の持ち主である。

 「彼は大学時代から人をまとめる能力に長けていた」。そう語るのは,尾身氏の自治医大生時代の同級生。

 「自治医大は全寮制なのですが,入寮して間もなくのころ,寮のルールを決める話し合いがあり,その時に議論の中心に立ってリーダーシップを発揮していたのが彼だった。自己主張型ではなく聞き上手で,それでも最後には彼の意見に皆がまとまっていく感じでした」。

 別の同級生は尾身氏の最初の自己紹介をいまでも覚えているという。

 「自治医大の1期生に女性は1人だけだったのですが,彼は『僕は紅一点を守る会の会長になります』と宣言して皆の笑いを取っていました。高校時代にアメリカに留学していたからなのか,そういう紳士的というかユーモアのあることをよくいっていましたね」。

 補注)「政府分科会『尾身会長』傘下の病院,コロナ患者受け入れに消極的 医療逼迫を叫ぶ裏側で」『週刊新潮』2021年1月21日号,https://www.dailyshincho.jp/article/2021/01200557  も同じ内容の記事であるが,日付が1日ずれている分,若干相違がある。

 厚生労働省と東京都は〔2021年1月〕23日,改正感染症法にもとづき,都内のすべての医療機関に対し,新型コロナウイルス患者向けの病床確保と最大限の患者受け入れを要請すると発表した。

 2月に同法成立後,国としての要請は初めて。感染者急増による病床逼迫を受けた対応。法改正後,医療機関が人員不足など正当な理由なく要請に従わなかった場合は勧告し,従わなければ病院名を公表することができる。

 酸素吸入を受けられる「酸素ステーション」や宿泊療養施設への人員派遣も求める。医学部がある大学や看護学校に対しても協力を要請する。同日,田村憲久厚労相小池百合子知事が直接面会し,正式に決めた。(引用終わり)

 しかしなぜか,政府・厚生労働省側からする,国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)に対する態度は甘く,徹底されない,中途半端「以前」の,まるで手つかずの状態に等しかった。

 前段に出ていた厚生労働大臣の答えは,こういう表現になっていた。これは,繰り返して引用するが,どこまでも “まったく煮えくらない態度・発言” であった。これでは,ほかの諸病院に対して,たとい法制面の勧告がなされた以後になっていたしても,まともに示しがつくわけがない。

 「法律にのっとってというより,いまもお願いはしておりまして,病床は確保いただいております。無理やり何百床空けろといっても,そこには患者も入っているので,転院をどうするという問題もあるので,いうにはいえますが,実態はできないことをいっても仕方がない。極力迷惑をかけないなかで最大限の病床を確保してまいりたい」。

 日本におけるコロナ禍の今後を考えてみると,パラリンピックを愚かにも開催したという悪・要因もくわわったかっこうにもなって,秋を挟んで冬になるころには「季節的要因」の現われとして,その第6波の襲来が予測されている。その時になってもまだ,国立病院機構(NHO)や地域医療機能推進機構(JCHO)は,コロナ用に振り向ける病床をごく少数で済ませるつもりか?

 尾身 茂は,コロナ禍対策をあつかう会議や会見の場では,いつも菅 義偉首相のそばに居た。われわれは,この事実の意味を慎重(深長)に解釈しておくべきである。

 最後にこういった話題を添えておきたい。

 「江東区江戸川区がパラの学校連携観戦の参加を中止  新型コロナの感染拡大受け」『東京新聞』2021年8月24日 17時40分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/126481 といった報道もあるのだが,学童たちが大挙動員され,パラリンピックの観戦にいかせられる。その機会が家・家庭のなかに感染源をもちかえる企画にならないという絶対の保証はない。

 そこで「小池知事,パラ学校連携観戦を『より一層安心に』と意欲…授業は『感染リスクが高い活動は中止を』」『東京新聞』2021年8月23日 18時43分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/126305  などと,その意味がさっぱり理解できないどころか,発言じたいとしてからして矛盾するほかない狂躁(狂信)ぶりをさらけだしていた。

 子どもをコロナ禍の犠牲者にする気か? 学童をパラリンピックの会場に送りこむのは「特攻隊」精神によく似ている。「より一層安心に」ですと? 本当にもう「▲カ,いってんじゃネェーよ」「百合子よ!」。

 いま現在,コロナ禍が伝染(感染)する場所としては,自宅が一番多くなっていた。その病状が中等症から重症になっても入院ができず,感染した人びとが命をむざむざ落とす事件が少なからず発生している。

 この最中に,パラリンピックの「感染を『より一層』安心に」などと小池百合子がのたもうた。だが,ここには「安全」ということば出ていなかった。恐ろしいの一言につきる。

 安全ではないが安心してこの五輪の感染(観戦)にいけばよい,などといえる無責任さは,許しがたい発想であった。学徒出陣ならぬ学童観戦を強行したら,このあとにかえって,コロナ禍の「感染がより一層確実に」ならないか?
 
 もう一度いう。都民にとって恐ろしいのは,「新型コロナウイルスそのものである」よりも,あの「東京都知事の〈緑のタヌキ〉」の存在である。

 ともかく,コロナ禍対策のための「国次元での本格的な野戦病院」をひとつも設営してこなかった日本である。後進国である自己(事故)証明を,みずからすすんで発行していたことになる。

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【参考記事】

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