学校法人日本大学は昔からなにかと財務問題では世間を騒がせる案件をかかえてきたが,今回の「日大・理事長田中英寿宅」などに対する東京地検特捜部の捜索は,日本の大学経営問題「全体」にとっても特別の意味があるのではないか

   2018年には,日本大学のアメフト部選手が試合中の相手大学選手に対して,背後から規則違反の強烈なタックルをしかけ,この彼の行為にアメフト部の監督が指示を与え関与したかどうかについて,社会的に大問題になっていた,その時,日大理事長はまったくそしらぬ振りの態度をとりつづけ,アメフト部の監督に全責任を負わせるだけで済ませていた
 
  要点・1 学校法人として昔から財務問題に関してあれこれと疑惑がなかったわけではない日本大学に対して,今回は東京地検特捜部の捜索が入った

  要点・2 学校法人は営利団体ではないだけに,財務問題をめぐっては問題が発生しやすい基盤・背景がある


 「前論の」-本日の新聞記事から-

 「日大や理事長自宅などを特捜部が捜索   付属病院建設巡る不透明資金の流れにメス」『東京新聞』2021年9月8日 20時58分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/129747

 日本大学の付属病院の建設工事をめぐり,大学関係者が大学側に損害を与えた疑いがあるとして,東京地検特捜部は〔9月〕8日,背任容疑で,東京都千代田区の日大本部など関係先を家宅捜索した。押収した資料を分析し,同大に絡む不透明な資金の流れの実態解明をめざす。

 

 ◆ 業者との契約に不正,大学幹部が関与か ◆

 他に捜索したのは,日大の関連会社「日本大学事業部」(世田谷区)や,田中英寿・日大理事長の杉並区内の自宅など。同社では午後1時すぎ,段ボールの束を抱えた地検の係官がなかに入っていった。

 

 関係者によると,日大医学部付属板橋病院(板橋区)の建設工事で業者との契約に不正があり,大学幹部が関与した疑いがある。

 

 ホームページによると,同社は日大が100%出資して2010年に設立。日大に関わる不動産事業や施設の管理・運営事業などを手がけている。民間信用調査会社によると,昨年の売り上げは68億円。

 

 日大は,学生数が約7万3000人に上る国内最大の総合大学。医学部や歯学部に付属する4つの病院も運営している。

 

 板橋病院は1935年に現在の場所に開設。現施設は1970年に建てられ,38診療科で計1000床をもつ。老朽化し,耐震性の問題も指摘され,建て替え計画が進められていたという。

 

 日大の広報課は「東京地検が捜査中であり,事実関係を把握していないことから,コメントは差し控える」としている。 

  ここでは,『朝日新聞』と『日本経済新聞』の本日朝刊「社会」面に報道された記事を,そのまま画像資料で紹介しておく。

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 とくに『日本経済新聞』の記事のなかからは,つぎの段落を抽出しておく。

 ※-1 自宅が捜索を受けた田中理事長は日大出身で,2008年に理事長に就任。学外でも日本オリンピック委員会(JOC)副会長や日本相撲連盟副会長などを歴任した。

 2018年に日大アメリカンフットボール部で危険タックル問題が起きたさい,第三者委員会の最終報告書で「理事長には絶大な権限と影響力があった」と指摘されていた。

 ※-2 関係者の話によると,かねて大学の事業や運営をめぐって不透明な資金の存在が疑われていた。

 特捜部での捜査経験がある検察幹部の1人は「(日大は)歴代特捜部の申し送り事項だった」と明かす。疑惑の舞台として関係者の間で取り沙汰されてきたのが,日大が2010年に全額を出資して設立した日本大学事業部(東京・世田谷)だった。

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 同社のホームページなどには「大学のスケールメリットを生かした事務の効率化」「事業活動でえられた収益を日本大学に還元する」などと経営方針がかかげられている。

 以上の報道で問題の核心に居た人物は,いうまでもなく理事長の田中英寿である。この人物はなかなか奥深い事情を背負っており,過去には暴力団関係者との仲もあるのではないかと,取り沙汰されたことが報道されてもいた。


「前論の」-2018年6月の記事から-

  元木昌彦稿「日大の暴力体質は50年前からそのままだ  勉強なんて東大に任せておけばいい」『PRESIDENT Online』2018/06/05 9:00,https://president.jp/articles/-/25325(この記事は有料であり途中までしか読めないが,https://blogos.com/article/302056/  からは全文を読める )

 この元木昌彦の寄稿は冒頭のみ引用し,あとはだいたい,項目ごとの小見出しのみ紹介しておく。

 1) 超ワンマン体制を堅持したまま異例の4期目

 田中英寿・日大理事長の背後にはつねに暴力団の影がある。『週刊文春』(〔2018年〕6月7日号,以下『文春』)によると,司忍・六代目山口組組長や福田晴瞭・住吉会前会長と親密で,「山口組の若頭の高山清司親分とは兄弟の盃を交わしている」と堂々と自慢していたといわれる。

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 司組長とのツーショット写真が海外メディアで大きく報じられた時にも,「あれは合成写真だ」といい募り,超ワンマン体制を堅持したまま異例の4期目の再選をはたしている。

 学生数7万5000人,卒業生は100万人になるという超マンモス大学のトップに君臨する田中だが,酒が入る時の口癖は「勉強なんて東大に任せておけばいいんだよ。こっちはな,数と喧嘩だったら誰にも負けねえんだ」。ハナから自分のところの学生を用心棒要員としか見ていないようである。

 2) 日大の相撲部に所属し,34個のタイトルを獲得

 田中は,青森県北津軽郡金木町の出身。太宰治と同じ町だが,田中の尊敬する人物は,太宰ではなく吉 幾三だそうだ。

 日大の相撲部に所属し,現役時代は34個のタイトルを獲得。1学年後輩に初の大卒横綱になる輪島がいた。指導者として日大に残った田中は,多くの力士を角界に送りこんだ。

 『文春』〔これは『週刊文春』のこと〕によると転機は1996年に誕生した第10代総長の総長選挙参謀を務めてからだという。以来,順調に出世の階をのぼり,2008年,ついに理事長の椅子を勝ち取る。

 アメフト部を牛耳っていた内田正人前監督は田中に気に入られ,ナンバー2の常務理事にまで駆け上がってきた。

 『週刊新潮』(2018年6月7日号,以下『新潮』)によると,田中理事長の懐刀は内田ではなく井ノ口忠男という日大アメフト部のOBだという。井ノ口は内田のことなど歯牙にもかけていないそうだ。

 3)「日大特製バウムクーヘン」のビジネス

 彼は,危険タックルをした宮川泰介選手が会見を開くことをしると,宮川を呼びつけ,「監督の指示ではなかった,自分の判断だったといえ」と詰め寄り,宮川はかなり悩んでいたという。(以下は本文についてはだいたい割愛)

 4) 少数の権力者たちが学校を私物化するという「歴史」 

 5)  体育会系の猛者たちは,スト潰しに殴りこんだ

 6)  警察や機動隊が逮捕したのは,ケガを負った学生だった

 7) 日大講堂には3万5000人の学生が集結

 8) 日大闘争も東大闘争も学生たちの敗北で終わったが……

 9)  日大の根本的な体質は50年前となんら変わっていない(この項目からは,以下のように段落を引用しておく)

 10)  内田監督の辞任翌日,パチンコに興じた田中理事長(同上)

 9)  からの引用〔だけをしておく〕。「ワンマン理事長の周りにイエスマンばかりを侍らせ,甘い汁をすすりあう。運動部の学生たちには絶対服従を強いて,なにかことが起きると自分たちはしらを切り,逃げ隠れしてしまう」。

 「田中理事長のカミさんが都内で小料理屋をやっているそうである。そこに何回も顔を出せば,理事長の覚えがめでたくなるため,理事たちが足しげく通っているという。これもヤクザの世界と同じであろう」。

 「重要な事案があると理事たちをそこに呼び寄せ,密談して決めるというのだ。まさに側近たちによる “談合” で,学校が恣意的に運営されているといわれても仕方あるまい」。

 (中略)

 田中理事長は,日大関係者にいわせると「余計なことはせず,ダンマリを決めこんでいれば,いずれ問題は風化していく」という処世術を権力闘争のなかで身に着けたというが,まるで安倍晋三〔前〕首相のようではないか。

【翌日:2021年9月10日報道の関連記事

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 『文春』(〔2018年〕5月31日号)は,内田が監督辞任を発表した翌日,パチンコに興じている田中理事長の姿を撮り,グラビアページに掲載している。国から100億円もの補助金を受けている私学が,この惨状である。

 (中略)

 ……安倍〔前〕首相がしゃしゃり出て来てこういうかもしれない。

 「日大の理事長や理事の皆さんは間違ったことはしておられないと,私は思いますよ。私がやっていることを真似しただけですから」。ついでに,安倍首相の退陣要求もしてもらいたいものだ。(引用終わり)

 なお,日大アメフト部の問題について,その後になってからだが,つぎのように少し冷静にかつ公平に観察し,議論する文書も登場していた。ここではリンク先のみ紹介しておく。

 ⇒ 「無実だった日大アメフト部監督-悪質タックル騒動に踊ったメディアの責任-」(記事の一部抜粋)」『月刊ベルダ』2020年1月号,http://www.bestbookweb.com/verdad/article.php?id=20200103

 

「前論の
 「学校法人日本大学の問題が示唆する日本の私大経営に共通する難点」は,なんであるか?

 田中英寿に関する以上の言及は,ある意味では日本の私立大学があたかも「企業経営体」化している,それも営利的な体質を,突いている。日本における勤労者の平均年収が4百数十万の時代に,私大の学部では4年間でざっと5百万円の入学金・授業料を,学生側には納めさせる。

 ただし,それでも文系学部の場合であって,理系学部となれば歴史があってそれほど高い水準ではない,たとえば慶應義塾大学理工学部の場合でも,つぎのように納入する金額となっている。

    慶應義塾大学理工学部「4年間」の学費 ★

 

     入学金        200,000円
     その他         60,000円
     初年度納入額       1,813,350円
     1年次前期納入額  1,006,725円

     卒業までの4年間にかかる学費    6,463,350円

 いまの日本は,子どもの世界では7人に1人が食べるものにさえ不自由する経済・社会になっている。子どもの貧困はもちろん保護者の貧困に関連した社会問題である。

 その社会問題はさておき,現状において日本の私立大学全体は,定員の学生員数さえ確保できていれば,他業種の営利的事業体に比較すれば,ぼろ儲けはできないものの,安定経営は確実に保障される。

 それが日本大学ほどに大規模な学校法人となれば,教育産業の一大コンツェルンとしてのその旨味は,小規模な私大経営とはかなり異相となっており,さらに確実に味われるものたりうる。

 その意味でも日本大学は昔から「日本の高等教育界」の代表(チャンピオン)であったといえなくはない。

 ここまで書いてみたところで,本ブログ(旧ブログのこと)が2018年中に書いていた「日本大学の経営体質」に関する記述を,以下に復活・公表することにした。「前論 ①  ②  ③」に記述した内容と深い関連を有することは申しまでもない。

 

 ◆ 本(旧)ブログ『2018年7月31日』の記述を再掲する以下の記述 ◆

 

 『本  題』

 日本大学理事長田中英壽はいつまで逃げまわる気か? ガバナンスやコンプライアンスとは無縁の学校法人経営者は「出処進退の時機」が判らない化石的頭脳の持ち主

 「副  題」
   「人の噂も七十五日」といったものだが,日大アメフト部員「危険タックル」の問題では,オレとはなにも関係がないと,おろかにも〈豪語しえた〉私学経営者の驚くべき感性は,これからも維持されていくのか

   常務理事でアメフト部監督だった内田正人は懲戒免職となったが(2018年7月30日判明),この内田を事件のあと半年ほど経ったら,学内のそれ相応の場所に戻すと周辺に確言していたのが,この田中英壽理事長

   田中は内田を後任の理事長に据えて,自分が院政を敷く心づもりであったらしいが,そのもくろみは瓦解した。あとは田中の辞任あるのみ。日大のため,そして世間のために

  補注)なお,内田正人のその後については,前段でリンク先だけ紹介しておいた記事,「無実だった日大アメフト部監督(一部抜粋)」『月刊ベルダ』2020年1月号,http://www.bestbookweb.com/verdad/article.php?id=20200103  が説明している。ここでは,つぎの文言だけ引用しておく。

 裁判で争っていた日本大学とアメフト部の前監督,内田正人氏(64歳)の間で和解が成立した。

 

  問題の試合から約2カ月半が経過した7月の月末,メディアの過剰な同調は頂点に達し,世論に抗しきれなくなった日大は,内田監督とコーチを懲戒解雇処分としたのだが,逆に内田監督から解雇無効の民事訴訟を起こされていた。

 

  傷害罪で告訴された内田監督とコーチについて警視庁が捜査した結果,相手を負傷させるような危険なタックルを指示した事実はないと断定し,宮川選手だけを書類送検の処分にした。

 以上の経過に関係する報道として,つぎの記事があった。

      ▼ 日大,アメフト・内田正人前監督の解雇撤回 悪質タックル問題で和解,大学は退職 ▼
 =『サンスポ』2019/12/11 19:16,https://www.sanspo.com/article/20191211-FENK2F6FRVOQJANE4NCJM3HVFQ/

 

 悪質な反則を指示したとして大学を懲戒解雇された日本大アメリカンフットボール部の内田正人前監督(64歳)が,解雇無効を求めた訴訟について,日本大は〔2019年12月〕11日までに,東京地裁の勧告を受けて和解したと発表した。懲戒解雇を撤回し,前監督は大学を退職するとの内容。和解は〔12月〕6日付。

 こうした事後の経過は,以下に再掲・復活させる2018年7月31日の記述には反映されていない。しかし,いまの段階となっては,議論の前提に置いて読んでもらえることになった。

 

 「日大,内田氏を懲戒解雇,役員報酬の返納も要求」『日刊スポーツ』2018年7月30日19時20分,https://www.nikkansports.com/sports/news/201807300000602.html

 日本大学アメリカンフットボール部の悪質な反則問題について,日大アメフト部第三者委員会が〔7月〕30日,都内で最終報告記者会見を開いた。そのなかで,日大が辞任した内田正人前監督と井上 奨前コーチを同日に懲戒解雇したことを明らかにした。

 委員長の勝丸充啓弁護士は,会見の質疑応答の中で「(会見前)大学当局から,つぎのような連絡を受けました。日大は本日,人事給与委員会からの答申により臨時理事会を開き,内田氏,井上氏の懲戒解雇,常務理事,理事長の役員報酬の返納」などと語った。

 補注)この臨時理事会は当然,理事長が臨時に開催したものであり,その理事長は田中英壽である。内田正人から事後,それも少し間をおくことになってからと推察するが,「なんらかの反応」が起こされないとはかぎらない。

 補注の 補注)その「なんらかの反応」に関して事後に展開された経過は,不十分ながらでも「前論」において関説されていた。

〔記事に戻る→〕 質疑応答のなかで,経営トップの田中英壽理事長に対し,辞任を含めた出処進退を問うことは第三者委員会としてできるか(?)などの質問が相次いだ。そのなかで,勝丸弁護士は日大が内田,井上両氏に処分を下したと明らかにした。

 そのうえで,田中理事長の進退については「出処進退の問題は,本人(田中理事長)が判断することだろうし,処分は大学当局で考えることだろう。内田氏,井上氏においても,スポーツマンシップにおいてとんでもない行為だと指摘した。大学当局において判断すべきだろう」と説明するにとどめた。

 註記)https://www.nikkansports.com/sports/news/201807300000602.html

 世間の常識的な判断にしたがえば,日大理事長田中英壽は日大アメフト部員「危険タックル」の問題が表ざたになってしまってから,ほどなくその職位を辞任するのが筋道であった。だが,今回事件の発生して間もないころ,この理事長に突撃取材したマスコミ記者に対して田中が応えた文句は,「オレはなにもしらない,関係がないことだ」といいきり,完全に無責任である態度に終始していた。

 学生時代に日大相撲部でアマ横綱だった田中理事長は1983年に日大相撲部監督に就任。舞の海琴光喜らを育成し, “アマチュア相撲界のドン” と呼ばれている。2013年にはJOC副会長にも就任,去年までその任にあった。

 先週発売の『週刊文春』によると,田中理事長は内田前監督と井上コーチの謝罪会見翌日,パチンコに3時間あまりも興じていたといい,突撃取材を敢行した同誌の記者に対し「俺,しらないもん。全然フットボールなんて。ルールもしらないし,いまいったことがすべて」とコメント,どこか “他人事” のようだった。

 註記)「日大・田中英壽理事長は会見を開き,リーダーシップの発揮」『AbemaTIMES』2018年05月28日 14:48,引用は,http://blogos.com/article/300251/?p=1

 それでいて,内田正人前常務理事については世間のほとぼりが醒めたころ,自分の近くに再び呼び戻す算段であったらしい。ところが,その後における世間の関心が醒めることはなく,第三者委員会の組織・介在によって事件の真相究明がなされ,前段のように「内田正人前監督と井上 奨前コーチを同日に懲戒解雇」の処分に付していたことが判明した。それも理事長(田中英壽)が開催する理事会での話題であった。

【2021年9月9日,追補記事】

 

 これだけの・あれだけに大事件化した日大アメフト部員危険タックル「問題」の発生に対する田中英壽理事長の応答ぶりは,きわめて散漫というか,あえて完全に無反応をよそおい,ひたらす世間の関心が薄らいていくことばかりを期待している。

 大学などの事業経営体としては超大規模を誇る日本大学の理事長が,ガバナンス(企業統治)やコンプライアンス法令遵守),あるいは “良き社会法人” たる基本姿勢とはかけ離れた「事後における対応ぶり」だけを,タップリ披露していた。

 現に田中英壽は理事長として事件後,マスコミの前に現われて弁明なり謝罪なりするという行為は,いっさい回避していた。通常の企業社会であれば事業経営体の長がこのような対応をしたら, “1発でアウト” である。だがなぜか,田中英壽日大理事長の場合は,今日まで生き延びていられるのであった。

 つぎの ② は,本日(2018年7月31日)の『朝日新聞』朝刊の報道を参照する。① と重複する中身があるが,委細かまわず引照する。

 

 「スポーツと経営結合,独裁の背景 日大アメフト,最終報告」朝日新聞』2018年7月31日朝刊18面「スポーツ」から

 1)『最終報告書の骨子』をさきに引用しておく。

 「事案を招いた背景・原因」

  (1) 内田氏の独裁体制下での指導 / 選手に一方的に過酷な負担を強いる実態があり,パワハラとも評価すべきものだった。

  (2) 指導体制に対するガバナンスの欠如 / 保健体育審議会が形骸化し,内田氏の独裁を可能にしていた。

 2「日大による事後対応上の問題点」

  (1) 必要な責任体制がとられなかった点 / 日大の危機管理委員会,危機対策本部などは有効に機能することなく後手にまわった。大学側の当事者意識が希薄で,対応を部任せにし,措置の実施などの責任の所在も不明確だった。

  (2) 事実調査の適正性の欠如 / 当時理事であった井ノ口氏や日大職員によって,関係者に対する口封じという重大な隠蔽工作があった。

  (3) 対応措置の遅延,ずさんさ / 日大の対応は本件試合後約10日を経過してから。その間,当事者である内田氏の意向を反映した,部によるずさんな対応を放置していた。

  (4) 広報の適切さの欠如 / しっかりとした説明責任を果たす必要があったが,事後対応の基本的な視点が欠けていた。

 「幹部のガバナンスや事後対応における問題点」

  (1) 内田氏 / 自己の指示を否定し,選手の認識に問題があったとする不合理な主張を続けるなど,責任逃れに終始していた。

  (2) 大塚学長 / 教学の第一義的責任者として,保体審の会長として,責任感・当事者意識に乏しかった。内田氏による支配やガバナンスの機能不全を放置していた。

  (3) 田中理事長 / 学校法人の最高責任者であり,重要な人事においても絶大な権限と影響力を有していたが,部に対するガバナンスの機能不全を放置していた。みずから十分な説明を尽くすべきところ,いまなお公式な場に姿をみせず,理事長としての説明責任も果たしていない。

 補注)田中英壽理事長はこの (3) の理由だけで辞任に値する。われわれもよくしっているが,マスコミ関係の前に出てきて「頭を1回でも下げること」もないまま,今日にまで至っている。このような学校法人の理事長(経営者)が実際に居るとは,驚きである。即刻,辞任すべきである。

 「再発防止策に関する提言」

  (1) 監督・コーチらの質を確保する新たな評価制度の導入(自己評価,監督・コーチ相互のピアレビュー,選手による評価)。

  (2) 指導陣と選手の定期的な面接制度の導入。

  (3) フェアプレー精神確保のための研修。

  (4) 保体審の組織改編(スポーツ推進支援センター=仮称=の設置)。

 「適切な事後対応への提言」

  (1) 関連規定,危機管理対応マニュアル,広報体制の整備。

  (2) 危機管理委員会に外部の人材を登用する。

 「悪質タックル問題の経緯」

  5月6日 日大の守備選手の悪質なタックルで関学大選手が負傷退場
    12日 関学大が抗議文を送付したことを発表
    17日 関学大が日大からの回答文書を公表し,「誠意ある回答とは判断しかねる」との見解

    18日 日大の守備選手が両親とともに被害選手に謝罪
    19日 日大の内田監督が関学大の選手らに直接謝罪し,辞意を表明
    22日 日大の守備選手が謝罪会見,内田前監督らから相手選手にけがをさせる指示があったと証言

    23日 日大が緊急記者会見,内田前監督,井上奨コーチが出席し「指示」を否定
    25日 日大の大塚吉兵衛学長が記者会見,大学として初の謝罪
    29日 関東学連が理事会で処分を決定,内田前監督,井上前コーチは除名処分

  6月1日 日大が理事会で前監督の内田常務理事の辞任を承認,辞任は5月30日付
    29日 日大が設置した第三者委が中間報告,内田前監督らの「指示」を認定,日大職員らが事実をもみ消すために部員に圧力をかけたことも明らかに

  7月17日 日大がチーム改善報告書を関東学連に提出,問題の原因は内田前監督の圧迫的な指導体制と認定
    30日 日大が設置した第三者委が最終報告,大学のガバナンス(組織統治)の機能不全が内田前監督の独裁体制を招いたと結論づけた

 2) 記事本文

 日大アメリカンフットボール部の悪質タックル問題を調査した第三者委員会は,〔7月〕30日に公表した最終報告で日大本体の問題点にきびしく言及した。

 第三者委は田中英寿理事長にも危機管理対応を怠った責任を指摘した。一連の問題は本来,運動部を統括する保健体育審議会会長の大塚吉兵衛(きちべえ)学長が対応する。法人トップの理事長にまで言及したのは,スポーツ強化と大学経営が密に結びついたことが背景にある。

 スポーツ強化が大学のブランド力を高めて志願者を増やし,経営を安定させる。その構造のなかで勝利至上主義が求められ,看板のアメフト部では内田正人前監督の独裁体制が敷かれ,今回の問題を生んだ。

 日大特有の人事構造から生じたガバナンス(組織統治)の欠如も問題の一因だ。第三者委は,常務理事だった内田前監督が,保健体育審議会の事務局長という立場を利用して体育局を支配したと指摘。アマ相撲で横綱に輝いた田中理事長は大学経営のトップとして運動部の躍進を期待した。

 ただ,スポーツでのブランド化をめざすのは日大だけではない。第三者委はガバナンス強化のための組織改編を日大に提言。勝丸充啓委員長は「スポーツに対する考え方は昔とは違う。選手の,人間としての成長を部に期待できるような組織が必要。他大学にとって参考になるような体制づくりにとり組んでもらいたい」と述べた。

 アメフト部はいま,今季公式試合の出場資格停止処分中だ。すでに再発防止策として組織改編などを盛りこんだ「チーム改善報告書」を提出した。本当に生まれ変われるのか。31日,関東学生連盟は理事会で,処分解除の可否を判断する。

 a)「〈視点〉理事長みずから説明を」

 第三者委の勝丸委員長は「(常務理事などを兼務していた)内田前監督にモノをいえるのは事実上理事長以外いなかった」と述べた。つまり,内田前監督の独裁は「事実上絶大な権限と影響力を有していた」田中理事長の大学における独裁が生んだということだ。だが,報告書は田中理事長の責任について,部のガバナンスの機能不全の放置や,説明責任を果たしていない事後の対応への言及にとどまった。

 補注)この田中英壽による大学運動「部のガバナンスの機能不全の放置や,〔自身の〕説明責任を果たしていない事後の対応」は,これじたいで即,「辞任に十分値する問題性」である。

 そもそも田中は独自に,このような世間の常識以前の観念世界をもっているらしく,いわば前近代的なスポーツ従事者の感覚で「問題の事象すべて」に対応(?)してきた。その具体的な対応方法はダンマリ戦術であり,「オレはなにもしらない」などとどこかの国の最高指導者に「瓜二つの対応姿勢」を保持している。

 ここまで世間をさわがせ,なんども新聞の紙面で大きくとりあげられ,テレビやネットの言論界でもさんざん話題にされてきていても,当人はまだこのまま「台風一過」の時が来るのを待ちつづけている様子に映る。

 昭和40年代の日大紛争のときは会頭を務めていた古田重二良(ふるた・じゅうじろう) が,学生側の批判・抗議を制圧する手腕を発揮してきたものの,その因果が回りまわって田中英壽理事長の上に,「背後霊」のごとく宿っている。

 〔記事に戻る→〕 田中理事長は日大相撲部で学生横綱となり,卒業後は大学職員を務め,3度のアマチュア横綱に。大学の常務理事などを経て,2008年から理事長を務める。

 力をもった背景に,1968年の日大全学共闘会議全共闘)を挙げる大学関係者は多い。大学の不正経理問題に学生が反発し,校舎を占拠。日大側は体育会学生を動員して運動を抑えさせた。それで,学校法人のなかで体育会出身者の発言力が大きくなったという。

 日大特有の歴史的背景もあるなか,運動部出身の理事長のもとで起こったきわめて反スポーツ的な問題。スポーツに育てられた田中理事長だからこそ,説明責任を果たす必要がある。

 b)「責任は理事長,学長に」第三者

 記者会見では,田中理事長の責任について質問が集中した。勝丸委員長との主なやりとりはつぎのとおり。

 ◆ アメフト部は内田前監督の独裁体制だった。それを許した田中理事長の責任はどう考えるか。

  ◇  「大学のガバナンス体制が機能していなかった。その責任は,理事長,(大塚)学長にあると思っている」。

 

 ◆ 田中理事長は,われ関せずの態度に映る。

  ◇「理事長をはじめ,日大幹部は本件をアメフト部の問題だと捉えていた。その理由を合理的には説明できない。問題意識があればこのようなことにはならなかった。無責任だった。理事長も今後,対外的な説明責任を果たしてくれるだろう」。

 

 ◆ 田中理事長の処分がない。「トカゲのしっぽ切り」の印象がある。

  ◇「出処進退は本人が,処分については大学当局が判断されることだ。内田氏,井上 奨(つとむ)前コーチは危険タックルを指示した当事者,理事長は広い意味での監督責任。責任のとり方が違うのは当然だが,(理事長に)責任がないかというと,それは大学,本人が考えること」。

 

 ◆ 日大関係者の隠蔽工作が書かれている。さらに(田中理事長ら)上からの指示があったのか。

  ◇  「その可能性は否定できないが,本人も否定しているし,断定するだけの証拠はもちあわせていない」。

 

 ◆ 大学におけるスポーツ強化と経営が結びついて,勝利至上主義を生んでしまった側面がある。

  ◇ 「大学の部活動が教育の一環としてきちんと組織的に位置づけられていなかった。スポーツに対する考え方は昔と違う。大学が公共的な場として一層開かれていくことが大事だ」。

 問題は,今回に事件に関して「(田中英壽理事長ら)上からの指示があったのか」にかかわらず,この理事長が責任をとって去るべき経緯になっている点は,世間の常識的な認識からも十分にいえる。第三者委員会は,まさか暗に「田中に理事長辞任を求める」わけではなく,当然のこと「辞任がなされるべきだ」と強く期待しているはずである。

 問題は田中英寿自身にある。絶対に理事長を辞めようとはしない気持らしいゆえ,いまはともかく「人の噂も七十五日」(事件発生の5月6日⇒7月20日)を過ぎても,そしてさらには,この「人の噂も七十五日」の2倍・3倍もの日時をかけて,世間の関心・意識が薄まるだけでなく,消滅するのを待っているはずである。

 補注)本日のこの記述の「前論」部分は,田中英寿の世間を舐めてきた大学経営者としての基本姿勢が,東京地検特捜部の捜査が入った事実によってだが,あらためて「刑法的にも問題にされる」局面に対峙させられるほかなくなった事実を教えている。

 日本相撲協会関係者の体質もそうであったが(最近では「土俵の上は女人禁制」の問題があった),ともかく強い風が吹いている時だけはガマンしてやり過ごしておき,あとは世間の目が完全に向けられなくなる日を待っている。この相撲界的な感覚・精神が田中英壽にも徹底して植えつけられている。だが,大学経営の問題としての今回における「アメフト部員危険タックル」から,理事長が立場上無関係であるなどとはいえない。おおありであった。

 

 「日大理事長の対応指弾 第三者委最終報告『謝罪と説明を』 悪質タックル問題」朝日新聞』2018年7月31日朝刊30面「社会」

 日本大アメリカンフットボール部の悪質タックル問題で,日大が設置した第三者委員会(委員長=勝丸充啓弁護士)は〔7月〕30日,東京都内で記者会見し,最終報告を発表した。

 問題の背景には,アメフト部の指導体制に対するガバナンス(統治)の欠如があったと指摘。田中英寿理事長については「絶大な権限と影響力がありながら,ガバナンスの機能不全を放置した」としたうえで,「反省と謝罪を含めたみずからの説明責任を果たすべきだ」と批判した。(▼スポーツ面=最終報告骨子)

 報告書は大塚吉兵衛学長についても「責任感・当事者意識に乏しく,機能不全を放置した」と指摘。「事後対応においても,積極的役割をほとんど果たそうとしなかった」と述べた。

 弁護士7人でつくる第三者委は5月末から,部員や教職員ら約100人から聞きとりなどをしてきた。先月末の中間報告では,悪質タックルは内田正人前監督と井上 奨前コーチの指示で,関西学院大の選手にけがをさせる意図があったと認定していた。

 最終報告では,内田氏の「独裁体制」のもとで指導がおこなわれた背景には,運動部を統括する「保健体育審議会(保体審)」の形骸化があったと指摘した。保体審会長は大塚学長だったが,人事担当常務理事の内田氏が「保体審を事実上,牛耳る立場にあった」と認定。このことが,ガバナンスの機能不全につながったと判断した。

 問題発覚後には井ノ口忠男元理事が,反則をした部員らに口封じをしていたことも認定。田中理事長が内田氏や井ノ口氏の行動に対して「危機対応責任者として適切な措置を指示することもなかった」とした。むしろ大学の不手際が続いたため批判が高まり,「ブランドイメージが大きく損なわれた」と指摘。田中理事長は説明責任があるにもかかわらず,公式の場で発言をしておらず,「理事長としての説明責任を果たしていない」と断じた。

 第三者委はガバナンス強化策として,保体審を解体して新たな組織を設置することや,理事長や常務理事,学長らが競技部の部長や指導者を兼任することの禁止を求めた。

 1) 理事が口封じ「総力挙げて潰す」

 学生を守る姿勢がなく,説明責任も果たしていない。日大の悪質タックル問題で第三者委は問題発覚後に「隠蔽工作」をするなど後ろ向きな対応に終始した姿勢について指摘した。

 「学生ファーストの視点があれば大学も真相に迫れただろう。だが,実際におこなわれたのは口封じだった」。第三者委の勝丸委員長は約100人が集まった会見で,こう指摘した。

 最終報告書によると,問題発覚後の5月,理事だった井ノ口氏が反則をした選手に,監督らの指示がなかったと説明するよう暗に要求。「(同意すれば)私が,大学はもちろん,一生面倒をみる。ただ,そうでなかったときには日大が総力を挙げて潰しにいく」といったという。日大職員による口止めも認定した。

 また,第三者委は田中理事長にもヒアリングを実施。勝丸氏は「アメフト部任せにして放置した。あまりに無責任」とし,「公の場に出ることも含めて説明できる方法を考えてほしい」とした。ただ,報告書では,田中理事長に「反省と説明」を求める一方,経営責任については言及しなかった。勝丸氏は「第三者委の責務は提言。処分する権限はもっていない」と説明した。

 補注)この最後の指摘,田中理事長に「反省と説明」を求めるが,経営責任(田中自身の処分問題)について言及しないと断わった点は,実に不可解である。本丸を攻めずに勝丸は「第三者委の責務は提言。処分する権限はもっていない」と説明しているが,画竜点睛を欠くいいわけである。

 2) 内田前監督ら解雇

 日大は〔7月〕30日,内田前監督と井上前コーチを同日付で懲戒解雇したと報道各社にファクスを送付した。第三者委の報告については「事実認定の部分は真実として受け入れる。再発防止策についても誠実に対応していく」とした。田中理事長,大塚学長ら10人から,報酬の20%を3~5カ月,自主返納するとの申し出があったことも明らかにした。(引用終わり)

 この「田中理事長,大塚学長ら10人から,報酬の20%を3~5カ月,自主返納するとの申し出があったこと」などは,問題の本質からはかけ離れた「彼らの演技的な対応」である。自主返納で『コトが済まされる』なら,これほどたやすい事後の対応策はない。これで沈静化してくれ,おしまいにしたい,という気分であるはずである。

 補注)また第三者委員会の報告内容は,事案の本質からはずれた基本理解のもとに以上のごとき発言(まとめ:総括)をしていた点は,「前論」において指摘されていた。

 つまるところ,「自主的に退陣はしないで……」,肝心の田中英壽が理事長として残るかぎり,いまの日大の本性・体質に変化は生まれず,もちろん抜本改革なども無理。日大は,田中の肉体的な寿命が尽きるのを待つつもりか?

 補注)繰り返すが,「前論」で本日の新聞朝刊で社会面がとりあげた「日大問題」が,この大学の歴史的に塗り固めてきた汚濁体質に斬りこむ東京地検特捜部の捜査体制を報じていた。

 最後に参考にまでと国士舘大学拓殖大学のことをしらべようとしたが,ヘドが出てくるような事件をたくさん生んできたこれらの大学である。止めにした。

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