従軍慰安婦問題の本質(10)-「櫻井よしこ」の定例・狂妄「意見広告」,かつての従軍慰安婦問題に対する針小棒大的な否定・誤説,このごろのさばる極右のトンデモな歴史認識

             (2014年9月18日,更新 2021年9月27日)

 従軍慰安婦問題,その強制「性」の論点にだけ囚われ, “右往への一方通行” だけに終始する議論に絶大なる陥穽あり,歴史にひらすら無知でありながらまともに学習すらしようとしない人間や国家は,おのれの脆弱で空虚な立場・イデオロギーじたいに気づきえないし,むろん世界の出来事をありのままに認識できない できたわけで,それでは,なんどでも過去と同じに過ちを繰りかえす,すなわち「天にツバする」ごときに,いつも「日本の名誉」に異常にこだわる櫻井よしこ安倍晋三など「単細胞極右政治屋」たちの,「我が世の春」的な脳天気〈日より〉はいつまでつづく?

 

  要点・1 安倍晋三私設応援団隊長・櫻井よしこ女史は,かつてのジャーナリストの体験はすっかり忘却し,自民党政権の追いかけファンのごとき言論活動しかできない人物,はたしてこの女性は日本・国・民のために有益な貢献をなしえているのか

  要点・2 従軍慰安婦問題に関する一件では,大いに朝日新聞社をやっつけたつもりであった安倍晋三君だったが,世界水準で見渡す時,先進諸国におけるその問題認識は「女性全般の次元・視野」で再考されるべき重要問題である,この事実に無知・無関心である日本政府流の男女共同参画社会の志向・構築がその本心では積極さがみられない理由は,従軍慰安婦問題に対する認識のありように連結して表出されている

  要点・3 いまの世をまともに考える人たちであれば,このような全面広告を出す

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  櫻井よしこ「意見広告」-大嫌いな朝日新聞にも出したそれ,などから論じる-

 1) 朝日新聞には意見広告を出さないようになっていたのでは?〔ということでもないか?〕

 本日〔2014年9月17日〕の『朝日新聞』朝刊をみると,14面に櫻井よしこ女史を代表とする〈例のごとくの「意見広告」〉が出ていた。

 補注1)櫻井よしこが理事長を務める公益財団法人国家基本問題研究所が,ときおり新聞に意見広告を出すことがある。本日のこの記述(従軍慰安婦問題)に関連させてとなるが,該当するその一例がこれである。日付は2014年9月17日の意見広告であったが,各紙に出稿された日付は,以下のとおりであった。

  2014年9月17日(水) 産経新聞 読売新聞
     9月18日(木) 朝日新聞 毎日新聞 読売新聞(中部・大阪)
     9月20日(土) 日本経済新聞

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 補注2)公益財団法人国家基本問題研究所が直近の意見広告として出稿していたものとしては,たとえば『日本経済新聞』2021年9月20日朝刊15面の記事下に出稿されていた同研究所の意見広告「自民党総裁候補4氏に問う 国を守る覚悟を示せ」がある。

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 補注3)なお,ここで余談的な話題のひとつに触れてみる。これらの意見広告に使用されている「櫻井よしこ女史のお写真」は,この7年間の経過にもかかわらず,全然「加齢の様子」がみられはずもない事実は「同じ画像」を充てているゆえ当然であるとはいえ,あくまで愛嬌と受けとめておける許容範囲内か?

 といいたかったところだが,手元にある関係の資料(スクラップ)には,2009年のこれがみつかった。2021年マイナス2009年だとその差は12年となる。こうなると「ソレハナイダロウ,ね」という感じは,どうみても不可避……。

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 補注4)また櫻井よしこは,2014年夏から安倍晋三朝日新聞社を総攻撃する材料になった「従軍慰安婦問題」をめぐっては,つぎの見出しが謳われていた記事を通しても伝わってくる点であったが,『産経新聞』関連のネット記事に報道されていたとおり,たいそう意気軒昂にアベ君に加勢していた。

  「『朝日は全然,反省していない』桜井(ママ)よしこさんらが誤報を痛烈批判『言論テレビ』感謝イベント」『SankeiBiz』2014.9.15 18:37,https://www.sankeibiz.jp/macro/news/140915/mcb1409151837014-n1.htm

 もっとも,櫻井よしこ櫻井よしこが取材する-1991~1994-』ダイヤモンド社,1994年は「従軍慰安婦問題の責任」という項目のなかで,こう「取材して書いていた」はずである。同書の27・28・29頁を紹介する。櫻井は「自分が過去に執筆していたこの記事の内容」を,はたして「反省してい」たか? しかし,彼女はほっかむりのほうならば,しっかりとしてきた。

      f:id:socialsciencereview:20210927082519j:plain 27頁

 

   f:id:socialsciencereview:20210927082559j:plain 28頁

     

  f:id:socialsciencereview:20210927082703j:plain 29頁

 補注5)以上の櫻井よしこの健忘症的な履歴については,2019年中に『週刊金曜日』がつぎのように批判していた。現在でも,ネット記事『BLOGOS』にそのまま転載されていて,誰でもすぐに閲覧・購読できるこの記事は,「櫻井よしこ女史」に対する決定的な批判を繰り出していた。なお,その記事は,前段に画像記事で紹介した単著のなかの「従軍慰安婦問題の責任」の原文(元記事)に当たる。

    櫻井よしこ氏は「慰安婦」を「日本軍強制説」で報じていた ★

       = 徃住嘉文稿『週刊金曜日』2019年04月19日 18:20,
       http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2019/04/19/news-38/

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 『朝日新聞』の日本軍「慰安婦」の記事を「強制連行を捏造した」と非難している櫻井よしこ氏が,自身も「日本軍によって強制的に従軍慰安婦にさせられた女性たち」とテレビ,雑誌で報道していたことが分かった。

 

 自身の報道を棚にあげ,他者を「捏造」呼ばわりするのはアンフェアではないだろうか。

 

 櫻井よしこ氏がキャスターを務めていた日本テレビのニュース番組「NNNきょうの出来事」とみられる動画がある。1992年12月9日,東京で開かれた「日本の戦後補償に関する国際公聴会」を櫻井氏にうり二つの女性はこう放送した。

 

 「第2次世界大戦中に,日本軍によって強制的に従軍慰安婦にさせられた女性たちが,当時の様子を生々しく証言しました」。画面では「韓国人元慰安婦」の字幕とともにチマチョゴリ姿の元「慰安婦」が公聴会の壇上で叫ぶ。「私の一生を台無しにして! 日本政府は隠さないでしっかり謝罪したらどうなの!」

 

 男性アナウンサーの声。「これは元従軍慰安婦らから事情を聴き日本政府に謝罪と戦後補償を求める公聴会です。今回初めて名乗り出たオランダや北朝鮮の元従軍慰安婦8人が当時の様子を生々しく語りました」。

 

 壇上では元「慰安婦」たちが泣いている。字幕の説明。「感極まって,韓国と北朝鮮の元慰安婦が抱き合った」。中国の元「慰安婦」,万愛花さん(64歳,当時)のインタビューもある。「私は15歳でした。日本軍に襲われて両手両足を押さえられ,乱暴されました」。約3分弱の動画だ。

 

 フェイクの時代だ。万が一にもと日本テレビに動画の確認をお願いした。「放送したものがすべて。答えられない」。櫻井氏からも「裁判中なので」と取材を断られた。


 「責任痛感すべき私たち」。

 

 しかし,櫻井氏は1992年7月18日号の『週刊時事』(時事通信社)でつぎのように書いている。

 

  〈東京地方裁判所には,元従軍慰安婦だったという韓国人女性らが,補償を求めて訴えを起こした。強制的に旧日本軍に徴用されたという彼女らの生々しい訴えは,人間としても同性としても,心からの同情なしには聞けないものだ〉

 

     〈売春という行為を戦時下の国策のひとつにして,戦地にまで組織的に女性達を連れていった日本政府の姿勢は,言語道断,恥ずべきであるが,背景にはそのような政策を支持する世論があった。とすれば,責任を痛感すべきは,むしろ,私たち1人ひとりである〉

 

 櫻井氏は,この記事などを再録し『櫻井よしこが取材する』(ダイヤモンド社)を〔19期比94年に出版した。少なくともこの年まで,櫻井氏は,日本が国策として強制的に「慰安婦」にしたと伝えていたことになる。ちなみに,手元にある本は櫻井氏のサイン入りだ。フェイク本ではおそらく,ない。(徃住嘉文・報道人,2019年4月19日号)

 

 ※編注※ 元『朝日新聞』記者の植村 隆氏が,元日本軍「慰安婦」に関する記事を「捏造」とされ名誉を傷つけられたとして,櫻井氏を訴えた札幌訴訟について,4月19日(金)発売の『週刊金曜日』4月19日号が詳しく報じている。同誌は書店などで販売する紙版のほか,アプリを使った電子版でも購読できる。

 引用内・補注)その裁判においては,国策的審理をおこなってきた裁判所の温情(ソンタク)に包まれたかたちで,櫻井よしこは敗けることはなかった。安倍晋三政権時に出された結審であった。

 本(旧)ブログはすでに,この女史が得意とする「見当違い・視野狭窄針小棒大の議論・主張(=思想?)」を吟味,批判したことがある。

 補注)ところで,今日=9月18日はなんの日か? これは「15年戦争」だとか,あるいは「アジア・太平洋戦争」とも呼称される,1945年8月に敗戦するまでの「戦争の時代」(戦時体制期)に日本が本格的にはまりこんでいく「最初の日付」である。

 さて,この1931〔昭和6〕年9月18日夜,板垣大佐,石原中佐ら関東軍幕僚たちは,中国軍(張 学良軍)側の仕業にみせかけて,みずからの手で日本の権益である南満州鉄道奉天(現在の瀋陽)北郊の柳条湖付近で爆破し(柳条湖事件),これを口実に,日本軍は奉天・北大営にある中国軍に対して攻撃を開始した。当時日本の新聞は真相をしらぬまま,関東軍の情報によって,中国側の仕業として報道した。

 

 なお,この「事変」とは国際法の交戦国条項を免れるための言葉であり,宣戦なき事実上の戦争であった。政府は当初,事態不拡大の方針を決めたが,閣内の不一致と,関東軍の要請に応じた朝鮮軍が越境するなど事態が拡大するとこれを事実上認めた。

 

 この「事変」が起きたとき,総会を開会中の国際連盟に対し中国は提訴し,連盟は日中双方に撤収交渉を求める決議を採択したが,関東軍は錦州爆撃に始まる戦線を拡大,翌年2月までに中国北東部三省の主要都市や鉄道沿線を占領する既成事実を作りあげた。さらに,関東軍は1932〔昭和7〕年7月~1933年3月熱河省も占領,国民政府もついには既成事実を黙認した。

 

 1932年3月1日には関東軍は清国最後の皇帝宣統帝溥儀を執政の座に据え,「満州国」(中国では『偽満〔偽満洲国〕』と呼ぶ)を樹立,支配下においたが,国際連盟が派遣したリットン伯爵を団長とする調査団が日本の主張を否認する報告書を採択すると,日本は連盟を脱退し,日本は国際的孤立化を深めていく。

 

 戦闘じたいは1933〔昭和8〕年5月の停戦協定によって終わったが,「満州事変」はこのあと1937〔昭和12〕年7月の盧構橋事件を発端とする日中全面戦争と,続く1941〔昭和16〕年からの太平洋戦争への序盤だった。

 註記)「満州事変(1931年9月18日~1933年5月)」http://royallibrary.sakura.ne.jp/ww2/yougo/manshujihen.html

 旧日本帝国軍はとくに,太平洋(大東亜)戦争に入る以前,日中戦争(「支那事変」)へと突きすすむ時期から,従軍慰安婦施設を直接と間接を問わず置くことになっていった。1937〔昭和12〕年12月中旬に起こされた南京虐殺事件も,以上の歴史の経過のなかで理解すべきものである。

 註記)同上。

 2) 本(旧)ブログにおける関連の記述

 2014年01月29日における記述,「都知事選・櫻井よしこ意見広告・脱原発問題など」は,【ポピュリズムの代表格である女性居士が「ポピュリズムを批判する」という漫画的構図の可笑しみ。都知事選に対してなにを意見しているのか不詳,この右翼・国粋・反動おばちゃんの「批判のための批判」を批判する】と題して論じていた。

 註記)該当のリンクはすでに削除されている。

 櫻井よしこは百年1日のごとき迷論を吐いてきている。しかも,最近の安倍晋三政権に対してとならば,この女史の発する周波数はぴったり合っていた。その後もいよいよ調子に乗ったかのように,大東亜戦争時における従軍慰安婦問題をめぐっては,とりわけその強制連行はなかったという『架空・想定の〈虚説〉』を唱えた。

 2014年も9月になってから本ブログ筆者は,つぎの記述をおこない,従軍慰安婦問題をもみ消しておきた安倍晋三〔政権〕の「欲望の本性」を解説してみた。それほどに,従軍慰安婦の事実に関する歴史理解は,この政権にとって〈目の上のタンコブ〉になっていたわけである。

 2014年9月12日「『慰安婦問題』と〈日本の名誉〉に関する『幼稚と傲慢の首相』安倍晋三の『すり替え発言』」は,

 

 【吉田清治朝鮮人女性:従軍慰安婦」「強制連行」物語の創作話に〈日本の名誉〉を短絡させうる安倍晋三の浅薄さは,ともかく慰安婦問題は否定したい立場に淵源している】。

 

 つまり【歴史の上に記録されており実在してきた慰安婦問題であっても,否定したくてしようがないのが,安倍晋三の立場:価値観である】。 【朝日新聞の「慰安婦誤報の問題になんでも直結させたがる安倍晋三の短慮】という問題点を論じていた。

 註記)リンクはすでに削除されているので,ここでは該当の住所は注記しない。

 ともかく,本日〔2014年9月18日〕この意見広告を観てみたい⇒下記の補注を参照〕櫻井よしこ「国家基本問題研究所」のホームページ( http://jinf.jp/ )にはすでに,読売新聞と産経新聞にこれと同じ意見広告を出したことが記されている。それにしても,あいもかわらず櫻井女史の見解は一方的であって独断に満ちている。

 補注)この意見広告は画像資料として前段にかかげてあった。「櫻井よしこの意見広告,朝日新聞2014年9月17日朝刊」のことである。

 前掲した都知事(これは当時の話題であった)に関して表明されていた,櫻井よしこによる脱原発問題「反対」の立場は,人類史・人間社会史にとってすれば,「原発原発など核兵器も含めて)がいかに罪深いもの」であるかを,まったく理解しようともしない反知性の立脚点をみずから鮮明にさせていた。

 補注)この段落の記述は少し分かりにくいので,つぎの,その意見広告の「現物」を紹介しておく。

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 再生エネルギー領域における開発・利用が,場合によっては多くの困難に立ち往生させられたり,櫻井のような感性の持ち主から妨害を受けたりしながらも,いまでは相当に進展・浸透している事実がある。

 すでに「3・11」の東電福島第1原発事故から10年もの歳月が経った現在(2021年9月下旬の段階)において,再エネが電力需給問題の全般にわたり,いかほどにまで進展・拡大してきたかを多少でもしっている者であれば,櫻井よしこ風「原発観」のアナクロ性に呆れないわけがない。

 だが櫻井は,そのような(2011年10月以降に実際に展開されてきた「電力事情」に関した)現実の動向にはまったく無頓着に,「原発維持・推進」の立場を強調していた。この櫻井女史は「なにごとにおいて」も「歴史の動向・発展にブレーキ役」を果たすことにかけては,それなりに自負があるものと拝察する。

 3) 櫻井よしこ女史に特有な〈倒錯の議論〉

 今回における従軍慰安婦に関した上掲など各種の広告意見は,問題の基本をまともに理解しようとする気がなく,核心となる論点を抑えられていない。

 櫻井よしこは,従軍慰安婦問題に対する場合,「吉田清治の虚偽証言」を必死になって非難している。この吉田の証言問題があるから,従軍慰安婦問題の「歴史の事実」そのものがありえなかったかのように語り,しかも平然と「おおもとに控える」「歴史じたいを無視」するように説く。

 しかし,この櫻井の主張は,噴飯モノという次元をはるかに超えた〈完全なる謬説〉である。

 櫻井また,『河野談話』(1993年)が「慰安婦は強制連行されたという誤解を広げた」といいはり,もともと存在したかのように間違えて語られていたのだと非難したうえで,さらに,その〈強制連行〉性をめぐる論点に向けても論難を向けていた。

 しかし,つぎの『河野談話』のどこに,その誤解があったというのか? 誤解を意図的に世間に向けて誘導させたいのは,むしろ櫻井よしこである。「意見の違い」を「相手側の誤解だ」といいのがれるのは,拙劣な話法であった。

   慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話 ☆
               平成5年8月4日

 

 いわゆる従軍慰安婦問題については,政府は,一昨〔1991〕年12月より,調査を進めて来たが,今般その結果がまとまったので発表することとした。

 

 今次調査の結果,長期に,かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され,数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は,当時の軍当局の要請により設営されたものであり,慰安所の設置,管理及び慰安婦の移送については,旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。

 

 慰安婦の募集については,軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが,その場合も,甘言,強圧による等,本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり,更に,官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また,慰安所における生活は,強制的な状況の下での痛ましいものであった。

 

 なお,戦地に移送された慰安婦の出身地については,日本を別とすれば,朝鮮半島が大きな比重を占めていたが,当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり,その募集,移送,管理等も,甘言,強圧による等,総じて本人たちの意思に反して行われた。

 

 いずれにしても,本件は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は,この機会に,改めて,その出身地のいかんを問わず,いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また,そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては,有識者のご意見なども徴しつつ,今後とも真剣に検討すべきものと考える。

 

 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく,むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは,歴史研究,歴史教育を通じて,このような問題を永く記憶にとどめ,同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。

 

 なお,本問題については,本邦において訴訟が提起されており,また,国際的にも関心が寄せられており,政府としても,今後とも,民間の研究を含め,十分に関心を払って参りたい。

 註記)http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html 読みやすくするため改行を入れた段落もある。

 櫻井よしこだけではないが,ことの歴史事情や本質把握に関して,意図的なのか「勝手に誤解」してきた。この談話の文章をどこをどのように読むと,戦争中の日本政府が「〔従軍〕慰安婦の問題」の歴史のなかに「〈強制連行〉そのものがあった」と「明確に書いている」のか? 

 だから,この河野談話の見直しをいいだしていた安倍晋三〔政権〕であっても,最初の意向であったはずの「この見直しじたい」を,その後撤回せざるをえなかったのである。

 4) 櫻井よしこ(バージョン)の誤読的な歴史解釈-強制「連行」はなかった?-

 ところが,櫻井女史風の読み方をしつつ,くわえて吉田清治の虚説〔への批難〕を介在させると,今日〔の意見広告⇒冒頭に記述したあったが,2014年9月17日・18日・20日に各紙に出稿された全面広告〕のような,独自に,そして,みごとなまでに想像たくましい「歴史解釈」ができるらしい。

 吉田清治の虚説問題があれば,従軍慰安婦問題が完全に解消できる,いいかえれば,歴史において旧大日本帝国陸海軍はこの問題とは無関係であったと断言できるかのように思いこみたい,ずいぶんピント外れの勘違いが開陳されていた。

 櫻井よしこいわく,あとは,日本政府が国際社会に戦略的逆宣伝の発信をおこない「日本の名誉」を守ることにしなければならない。そのように,とてもむきになって,声高に提唱していた。

 櫻井による,このような宣伝広告は「誇大妄想」というよりは,単なる「針小棒大」の倒錯論であった。本(旧)ブログでは,いくつかの記述を充てて,このような謬説がまかりとおらせようとする〈虚偽のイデオロギー〉的な問題性を検討してきた。

 a) 2014年09月12日「『慰安婦問題』と〈日本の名誉〉に関する『幼稚と傲慢の首相』安倍晋三の『すり替え発言』」は,

 【吉田清治朝鮮人女性:従軍慰安婦」「強制連行」物語の創作話に〈日本の名誉〉を短絡させうる安倍晋三の浅薄さは,ともかく慰安婦問題は否定したい立場に淵源している】

 【歴史の上に記録されており実在してきた慰安婦問題であっても,否定したくてしようがないのが,安倍晋三の立場:価値観である】

 【朝日新聞の「慰安婦誤報の問題になんでも直結させたがる安倍晋三の短慮】

などと副題を立てて,論じていた。

 註記)旧ブログの記述であったので,現在,リンクはなしである。

 b)  本ブログはさらに,2014年09月02日「大東亜〔太平洋〕戦争の犠牲者数一覧・概算(従軍慰安婦も含めて)」で,【従軍慰安婦の戦争犠牲者を外した計算は間違えている】と題しても論じていた。

 註記)リンクは,同上。

 旧大日本帝国陸海軍における従軍慰安婦問題は,将兵たちの性欲望処理管理体制としての軍部(日本政府の正式機関)が大々的にかかわってきた歴史の出来事であった。とりわけ,日中戦争以後「国家総動員体制」になっていたこの国は,戦地・戦場における兵士たちの,その性欲望処理管理体制の構築と展開のために,直接・間接を問わず深く関与してきたのである。

 そのさい,そこで性奴隷的に働かせる女性たちの過半(大部分)は植民地にしていた朝鮮から調達したのである(おおよそ8割)。この歴史の事実は,強制「性」そのものの「ある・なし」など問う余地もないほどに,過去に記録されてきた現実的な問題であった。

 仮に強制『連行』そのものがなかったとしても,河野談話が上手に表現していたとおりであって,慰安婦とするための女性を狩りたてるさいには,各種各様の手練手管が駆使されてきたのである。

 補注)この記述を復活・再掲している最中,ある関連するユーチューブを視聴していたが,旧日本陸軍の衛生兵であったある人が「慰安婦慰安所」の存在について,「私の属していた部隊」には「それがあった」と確言していた。衛生兵であった彼の立場から,避妊具を兵士たちに配る仕事にもたずさわっていたと語っていた。「従軍」の「慰安婦慰安所」という施設は,軍制上における兵站の一端として,実質,各部隊に配置されていた。

 櫻井女史などは,むしろこの河野談話から「強制《連行》」を想像妊娠的に発想し,この連行「性」をもってすべての従軍慰安婦は強制連行されたといいつのっている。だが,もともとこの歴史の認識は間違えていた。この種の非難を繰り出す立場じたいからして,本心においては「根本的な誤解」を連想させたい意図にこだわっていた。だが,従軍慰安婦問題に関した基本理解は手抜きで不徹底なまま,この問題には強制連行がなかったなどと『筋違いの「批判」』を提示していた。

 5) 朝日新聞社を批判する意見広告朝日新聞に出した意味

 もしもの話となる。この櫻井よしこ(国家基本研究所理事長)の意見広告は,朝日新聞社をも真正面から批判していた。それゆえ,これを朝日新聞が掲載(広告出稿)を拒否したりしたら,いままで関連する別個の諸経緯もあり,これを材料にさらにもう一騒ぎする算段で(用意が)あったと思われると書いたら,過剰反応になるか?

 すなわち,朝日新聞社は絶対に気に入らないけれども,朝日新聞に対して意見広告を「出稿」(掲載)し,実際にこの意見広告を掲載させるのもまた一興,とても「おもしろいという読み」があったものと推察する。

 

 櫻井よしこの「横尾忠則マーク」使用方法の問題(2011年10月)

 当時の話題である。インターネット上ではつぎの指摘がなされていた。それは,櫻井よしこの「原発推進意見広告」に関連して,横尾忠則氏が抗議をしていた1件である。昨日〔2011年11月4日17時21分に〕横尾忠則が下記のツイートをしていた。

   横尾忠則  櫻井よしこさんが原発推進と思われる意見広告を読売新聞に出されたことを今日,そのコピーでしりました。そこにぼくが3年前に描いたマークが使用されているのも初めてしりました。当初は原発が問題になっていない時で,日本を考えていくための有識者の団体だと聞いていました。

 

    それが原発推進の行動を起こそうとされているようです。ぼくはもともと原発には反対の立場で,現在,脱原発のポスターも制作中です。

 

 そんなぼくのマークを使用することじたいこの団体はみずからの主旨に反することをおこなっていることになるので,以後マークの使用をいっさい禁止するよう抗議しました。

 註記)http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-1074.html 

 

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 補注)横尾忠則櫻井よしこに対して不適切な使用を抗議していたのは,上ににかかげた「このマーク」のことであった。この「マーク」については,本日のこの記述中であれば少し上段に戻ってもらうと,国家基本問題研究所の「意見広告」の枠内「左下にそれが配置」されている点が確認できる。     

 原発推進に関する場合,櫻井よしこの意見(以下に文章で参照しておく)は,歴史への反動形成分子である彼女の立場・思想をよく表現している。2011年の「3・11」における原発事故の原因については,これを「津波」だけのせいだと決めつける根拠は,必要かつ十分にえられていない。にもかかわらず,自分の好み(原発に対して抱いている価値観)でもってのみ,そのように,独断に過ぎる意見をしかも得意になって吐いていた。

 櫻井よしこは,その「〈意見広告掲載〉選ぶべき道は脱原発ではありません-原発事故で大きな岐路に立つ日本-」において,つぎのように主張していた。

 事故は2つのことを教えてくれました。事故が原発管理の杜撰さによる人災だったこと,震源地により近かった東北電力女川原発が生き残ったように,日本の原発技術は優秀だったこと,この2点です。だからこそ,人災を引き起こした「管理」の問題と,震災,津波に耐えた「技術」の成果を明確に分離して考えることが重要です。

 補注)「管理」の問題と「技術」の問題を,このように「明確に分離させて考える」というのは,完全に素人考えである。技術の管理もあるし,人間の管理もあるのであって,この2要素がからみあう「総合的な技術と人間の管理」となる。

 これらが有機的に相互に関連する技術・管理の問題として展開するのが,実際における工学的な領域でのありようである。当初からいきなり示された「明確に管理と技術とを分離して考え〔られ〕る〔のだ〕」という考え方じたいのなかには,そもそも工学的技術に関する理解不足というか,それ以前の幼稚な認識が控えている。

 こうもいっていた。

 エネルギーの安定供給は社会と経済の基盤です。今日本がなすべきは,事故を招いた構造的原因を徹底的に究明し,より安全性を向上させたうえで原発を維持する事です。選ぶべきは脱原発ではありません。

 補注)この理屈も詭弁的である。「原発事故の徹底究明」と「脱原発」は無関連のことがらと決めつけているけれども,これほど没論理にはまった屁理屈もない。両者の問題をあえてこの無関連にしか「むすびつけて」考えないところ(?)が,間違いなく「視野狭窄」の立場なのである。

 脱原発をするためであっても,また原発を推進させるためにであっても,その双方の立場においてともに「原発事故の徹底究明」は,絶対に必要不可欠である。櫻井の論法は根本的に,かつまた,論理的・文法的にもちぐはぐな中身を充満させている。

 原発の技術的安全性は飛躍的に高まっています。再生可能エネルギーの開発ともに,国際社会に置いて原子力関連の技術革新・高度な管理システムを牽引していくことこそ日本の国益になります。(これにつづく後段は省略する)

 補注)ここで櫻井よしこが断わっている「再生可能エネルギーの開発」とは,申しわけ程度にいわれているに過ぎない。ともかく「原発の技術的安全性は飛躍的に高まってい」るのだから,と強弁するばかりである。

 なお重ねて指摘するが,ここで言及しているこの「意見広告」は,公益財団法人国家基本問題研究所(理事長櫻井よしこ,副理事長田久保忠衛)が2011年10月下旬に,新聞各紙などに掲載したものであった。

 この研究所の役員の氏名が一覧されている。このなかには以前(だいぶ昔のことだが),筆者に,ある辞典の分担執筆を依頼してきた有名な学者もいた(せっかくの依頼であったが辞退させてもらった)。いずれも保守・右翼・反動・国粋の国家〔全体〕主義者と呼ぶのがふさわしい〈布陣〉である。

       =公益財団法人国家基本問題研究所役員=

 

    荒木和博    石川弘修    井尻千男    伊藤 隆    上田愛彦    梅澤昇平    遠藤浩一

   大岩雄次郎    小倉義人    工藤美代子    五島幸雄    佐藤 守    島田陽一

 すぎやま・こういち    高池勝彦    立林昭彦    塚本三郎    冨山 泰    中條高徳

 西 修    西岡 力    春山 満    平川祐弘    平松茂夫    福田 逸    渕辺美紀

 屋山太郎    渡辺利夫

 

  櫻井よしこと協働・連動する極右の人士,最近におけるその言動

 1) 高市早苗が「国家社会主義日本労働者党員とツー・ショット」

 本(旧)ブログにおける先日,2014年9月11日の記述

  主題高市早苗ら『国家社会主義日本労働者党』員とツー・ショット」

   副題「早速始まった自民党極右議員,この軽率的・ノリノリ行為,相手が誰かをしらずにツー・ショットするのか?」

が指摘した,高市早苗が政治家として「ピント外れ」に記録したこの行為に関しては,以下のように論じてみた。

 『朝日新聞』2014年9月11日〔本日〕朝刊に,「高市総務相ら,『ネオナチ』と写真撮影 英紙など報道」という報道が出ていた。さきに断わっておくのは,本ブログは「2014-09-08」「女性大臣5名で目くらまし,第2次安倍内閣の改造(怪増?)人事,この女性閣僚たちの本性・実力」の最後で,こう警告していたことである。

 へたをするとこの女性大臣(閣僚)たちのなかから安倍晋三の脚を引っぱる者が出てくるかもしれない。そういう危険な〈雰囲気〉を強く感じさせる女性議員の面々なのである。今回における内閣改造人事によって安倍晋三はみずから,「妖怪みたいな雰囲気」以前・以外のリスク要因を,政権にしこんだことになる。

 2011年夏の出来事であったという。高市早苗総務相(現在)ら自民党の国会議員3人が,ナチス・ドイツのシンボル「かぎ十字」に似た旗などをかかげて行動する団体の男性代表と一緒に写真に納まっていた。団体のホームページ(HP)に一時掲載された。欧州を中心とした海外メディアが相次ぎ報じていたのである……。

 2) 山谷えり子が「在特会元幹部とツー・ショット」

 ところが本日〔2014年9月18日〕の『朝日新聞』朝刊には,最近なされた安倍晋三改造内閣で入閣した5名の女性議員のうち山谷えり子が,つぎのように報道されていた。

      ☆ 山谷氏,在特会元幹部と写真 2009年撮影  「所属,知らなかった」☆

 

 山谷えり子国家公安委員長が2009年,「在日特権を許さない市民の会在特会)」幹部(当時)の男性と一緒に写真に納まっていたことがわかった。自身 のホームページ(HP)でこの写真を公開していた男性が取材に答えた。山谷氏の事務所は「(男性について)別団体の事務局長として面識はあったが,在特会に所属していることは承知していなかった」と説明している。

 

 男性やHPなどによると,写真は男性が在特会関西支部長だった2009年2月,「竹島の日」にあわせて訪れた松江市のホテルで撮影した。男性のほかに山谷氏と一緒に写真に納まった6人のうち,1人は在特会の元京都支部幹部という。

  

 男性は「山谷氏とは約15年前に教育再生をめぐる活動を通じて知りあった。在特会の活動として会ったわけではない」と話した。週刊文春の取材を受けたこと がきっかけで今月16日,HPから写真を削除したという。一方,山谷氏の事務所は「多くの方からの写真撮影に応じているが,ご依頼いただいた個々の方の身分については承知していない」とコメントした。

 註記)『朝日新聞』2014年9月18日朝刊。

 しかし,だからといって問題がないとはいえまい。この種の問題は政治家であれば,ふだんから用心すべき性質のものであり,発生しないように慎重でなければならない。高市早苗といい,この山谷えり子といい,もともと極右勢力が近づいてきて当然の政治的な立場と思想の持ち主なのであるがゆえに,この種の問題は日常的にかかえている。なるべくしてなっていた「それぞれの行為の記録」であったに過ぎない。

 2) 朝日新聞社吉田清治誤報問題」に西山太吉」の沖縄密約問題と短絡させる「げすの勘ぐり,その愚昧」

  『週刊新潮』や『週刊文春』を発行する新潮社や文藝春秋は,ふだんから抱いている朝日新聞社コンプレックスをこのときばかりと大発散させたかったのか,今日の朝日新聞に出稿された両誌の広告では,見出しだけでもいいたい放題であった。

 補注)ここではその広告の現物は示せないので,『朝日新聞』2014年9月18日朝刊11面と13面に出ていた点だけ指摘しておく。今日〔ここではの朝日新聞朝刊2面にはさらに『新潮45』10月号の広告も出ていた。この10月号も「朝日新聞社叩き」に必死の様子である。こういう特集を組んでいた。

  【特集】朝日新聞の落日

   ◆  二つの「吉田問題」が息の根を止める/阿比留瑠比
   ◆  これは朝日にとっての「西山事件」である/河内 孝
   ◆  朝日新聞と「言論の不自由」/辻堂雄一
   ◆「急ぎ足のメディア」の陥穽/武田 徹
   ◆  原発建設を推進した上からの「広報と啓発」/有馬哲夫
   ◆「天声人語」という諸悪の根源/大口卓造
   ◆「従軍慰安婦」だけではない「罪深き黒歴史」/編集部編
   ◆  一コマ漫画「我々は朝日憲兵である。」/木村ケン

 このなかで「◆これは朝日にとっての「西山事件」である/河内 孝」というのは,誤導を狙った表題である。

 西山〔太吉〕事件(1970年代に問題が進行した)は,日本政府(当時の首相は佐藤栄作)が米日間における核兵器持ちこみ問題に関しておこなっていた「国民無視の自民党政権」の密議を暴いて,毎日新聞の記事にした「事件」である。

 だが,その事件の経過のなかで問題とされた「外務省女性職員と西山記者の情事」へと向けた,この事件の矮小化(佐藤栄作自身がそう方向づけていた)と,今回の朝日新聞社従軍慰安婦問題」とを一緒くたにしたい記事である。

 西山太吉記者が暴いた沖縄密約問題は,当人が上梓した『沖縄密約問題-「情報犯罪」と日米同盟-』岩波書店,2007年にくわしい解説されているので,ここでは触れない。

 結局,国民を騙したのはもっぱら政府側・佐藤栄作であった。だが,これを西山記者が暴いた過程にからむ一件をとらえては,謀略的に針小棒大に前面化させてカムフラージュし,政府側・佐藤栄作側が自分たちの起こしていた事件を曖昧にさせていた。

 しかし,その後における時間の経過とともに,西山が記者(毎日新聞)として報道したその事件は,まともにその事実が正しく国民に伝達されたことになる。

 今回大騒動にもなっていて,朝日新聞社を盛んに叩く材料になっている従軍慰安婦問題も,まるでこの存在じたいが強制「性」〔いいかえると故意に「強制連行」だとすり替えられて批判されているのだが〕があるとかないとかの論点に変質させられた関係のなかで,この歴史に刻まれてきた問題の深刻さを隠蔽するのに懸命になっている。

 その旗振りをし,音頭もとっているのが安倍晋三自身であり,この権力者につらなる愚昧な政治家たちや反動右翼の「提灯もち」知識人たちである。

 安倍晋三を先頭に彼らは盛んに「日本の名誉」を口にしている。「従軍慰安婦問題」の歴史的な実在が「わが日本の矜持」に対して,否定的に扱われる材料になることに抵抗をしたいのか。そうであればさらにすすんで考えるに,山田盟子が以下のような諸著作をもって公表してきた「従軍慰安婦問題」の「歴史の実在」に関する解明は,その「日本の名誉」をおとしめるものではなかったのか?

 3) 山田盟子の研究

 この段落の記述はもとは,2014年09月07日「慰安婦問題,朝日新聞のドタバタ・ヨタヨタ・グズグズ・イヤイヤの対応姿勢」に書いた文章である。ここに再利用しておく。以下の b)  の諸文献は「日本の名誉」にはけっしてなりえない歴史における出来事であった。「日本の名誉」と戦争の問題についていえば,隣国から人員(女性)調達をして従軍慰安婦に強制した歴史にのみ,その「名誉の問題」がとりざたされ,限定されるものではなかったはずである。

 山田盟子の従軍慰安婦問題・研究成果が物語る〈真実〉がある。ここではとくに,山田盟子が提供した従軍慰安婦の問題視角は,単に朝鮮人のみならず,日本女性自身やアジア諸国の女性たちも巻きこまれていった諸様相を解明している。山田が公刊してきた著作から,以下のように整理することも可能である。

 a)  朝鮮人慰安婦問題

   『従軍慰安婦-「兵備機密」にされた女たちの秘史-』光人社, 2006年。

   『慰安婦たちの太平洋戦争-沖縄篇-』光人社, 1992年。

   『慰安婦たちの太平洋戦争』光人社, 1991年。

   『続・慰安婦たちの太平洋戦争』光人社, 1995年。

   『従軍慰安婦たちの真実-戦争の習わしを蔑む-』元就出版社, 2009年。

 

 b)  日本人慰安婦問題

  『「娘子軍」哀史-からゆき,娼婦,糸工女たちの生と死ー』光人社, 1992年。

  『ウサギたちが渡った断魂橋-からゆき・日本人慰安婦の軌跡  上-』新日本出版社, 1995年。

  『ウサギたちが渡った断魂橋-からゆき・日本人慰安婦の軌跡  下-』新日本出版社, 1995年。

  『占領軍慰安婦講談社,1995年。

  『ニッポン国策慰安婦―占領軍慰安施設・女たちの一生-』光人社,1996年。

 山田はまたとくに「墓誌」として「戦中従軍慰安婦50万人  占領慰安婦7万余人」という数値を算定している。

 この50万人という数値は,朝鮮人・中国人・日本人のみならず,あの戦争の時代に関係したアジア各地すべてにおいて〈慰安婦〉の役目を強制された多くの人びと(アジア人およびオランダ系などの白人女性)をも含んでいる。

 註記)山田『従軍慰安婦たちの真実-戦争の習わしを蔑む-』174頁。

 この山田の指摘は,大日本帝国の圏内における従軍慰安婦の,それも広狭に幅のある強制性の問題点も絡ませながらの「数値に関する結論」であった。

 この結論は数値ではあっても,これをさらに「戦争の世界史」の視野にまで関心を拡大すれば,最近新たに公刊されていた関連の著作,マグヌス・ヒルシュフェルト『戦争と性』明月堂書店,2014年との接点が開削できるはずである。

 従軍慰安婦の歴史的な観点から「強制性」の関連問題を除いたら,「戦争と性」の問題は,モノクロの視野でしかみようとしない「天然色の映像」になってしまうのである。

 逆にいえば,平時(平和)な時代における「性の問題」の方角からも併せて,その強制性の論点に関心をもちつつ立ち入らなければ,こちらからもまた,平面的・断片的な観察しかできなくなる(→「売春(の)社会学」という学問名もあるくらいである)。

 ただし,戦争の時期になると「性と生活」の問題は,一挙に乱気流に巻きこまれたかのような様子を呈するほかなくなる。

 要は,従軍慰安婦の歴史的な考察をするに当たり,当初から「強制性の有無」を度外視し,彼女らは「商売で金儲けをしていた」という逃げ口上を使うのは,歴史の現実に発生していた問題に目をつむったまま,その歴史の記憶を遠ざけておきたいからである。

 正直な愛欲の感情などとは無縁に,1日に何十人もの兵士との性交渉をもたされた日本軍の慰安婦の場合,それでは,軍票をリュックに詰めこむほどたくさん稼げたからといって,彼女らがそれをもとに戦後にいい生活をしたという話は聞かない(→そう主張する者に限って,実はこの点を証明〔実証〕できていない)。

 そもそも旧日本軍の軍票は,敗戦する以前からすでに無価値になっていたことを否定できる者もいない。

 もっとも,戦場では将兵とともにいっしょに戦って命を落としたり,戦わなくとものたれ死にしたりした彼女らも大勢いたのだから,戦争史という問題全体を大局的に認識するためには,「軍隊慰安婦社会学」とでも名づけたらよい学問の立場も要求されている。

 4) む す び-えげつなくも下品な朝日新聞社叩きに沸き返る」この日本国の惨状-
 いま(2014年夏以降)この国では,朝日新聞社さえ消滅すれば,この日本国がよい国になれるのだとでもいいたいかのように,それも右翼論調の新聞紙・雑誌などがわがもの顔に,ひどく得意になって叫んでいる最中である。

 
 念のために第2次大戦中に,ドイツで起きていた,つぎの有名な話を紹介しておく。 ナチスに抗議し,収容所に送られたドイツの牧師マルティン・ニーメラーは,つぎのような警句を書き残していた。

  ナチスコミュニスト共産主義者)を弾圧した時,私は不安に駆られたが,自分はコミュニストではなかったので,なんの行動も起こさなかった。

 

 そのつぎ,ナチスはソーシャリスト(社会主義者労働組合員)を弾圧した。私はさらに不安を感じたが,自分はソーシャリストではないので,なんの抗議もしなかった。

 

 それからナチスは学生,新聞人,ユダヤ人と,順次弾圧の輪を広げていき,そのたびに私の不安は増大したが,それでも私は行動に出なかった。

 

 ある日ついにナチスは教会を弾圧してきた。そして私は牧師だった。だから行動に立ち上がったが,その時は,すべてがあまりに遅過ぎた。

 いまの日本はどういう政治状況にあるのか? 特定秘密保護法が2014年12月から実施要領を具体的にとりきめて施行される。集団的自衛権行使容認はすでに同年7月初旬に閣議決定されていた。

 ぼんやりと興味本位で朝日新聞社叩きを見過ごしていたら,21世紀のこのあとにおける日本国がどのような国になりそうであるか,ほぼその姿が浮かんでくるはずであるのに,これをみうしなってしまうかもしれない。

 朝日新聞社の問題性じたいは,ひとまず置いてでも,誰もが考えておく余地がある。ドイツの例を出しておいたのだから,戦前における日本の国家全体主義(ファッショ体制)も,根本ではドイツと同じような政治社会構造であった〈歴史の事実〉を忘れてはいけない。

 誰かがいっていたではないか。「戦後レジーム」を破壊して「戦前・戦中を郷愁し,追い求める」のがよいことであると。いまの首相,「ふつうの国」だとか「美しい国」だとかいいふらし,曖昧模糊としたこの抽象概念をもてあそんできた。

 けれども,けっして昔の日本には帰れないのが,いまにあるこの国である。彼はそれでも,昔に似たような国家体制にしたいと切望している。民主主義の基本理念とは無縁の「暗愚な幼稚で傲慢な男」がこの国の最高指導者である。

 朝日新聞社叩きはその嚆矢(こうし:とっかかり)に過ぎなかった。

 安倍晋三は,福島における東電原発事故の現状は,2011年3月11日午後2時46分より以前に戻すことなどできない相談であったにもかかわらず,それでいて,東京都からみた福島の原発事故現場を “under control” だといいはった。

 この「3・11」よりもさらに大昔の「敗戦以前の時点・状況」にまで,この日本国を戻せるわけがないではない。だが,安倍晋三による失敗つづきの為政の結果は,実際にこの国を壊しつづけてきた〈後遺症〉となって,歴史そのものは逆転させえないままに,ただ,この日本の社会経済を確実に「後進国化」させてきたのである。

 朝日新聞社をいままでムキむきになって叩きつづけ,いくらかでもその効果が上がったといっては喜んでいる人びとは,よくよく注意しなければならない。その他者を叩く自分の手が,いつのまにか「自身の頭」を叩くように「強制される」時期がこないとはかぎらない。

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