大学教育体制の極端な貧困さ,自民党政権のゲスさ加減は高等教育体制問題の軽視に端的に表現されている,日本人研究者がノーベル賞を授賞されたのは四半世紀前までの研究成果の賜物,21世紀にその種は尽きたこの国(その1)

 「教育は国家百年の大計」という標語はダテではない,だが,その意味が皆目理解できなかったこの国の「安倍晋三や菅 義偉の政権」は,なかでも高等教育体制を生殺しにしてきた,教育体制の劣化・衰退は国家そのものの凋落・弱体化を意味する 
    

 「付加価値生む人材乏しく 揺らぐ成長の礎 博士号が欧米の半分以下,教育への財政支出は先進国最低」日本経済新聞』2021年10月18日朝刊3面「総合」

 人口減少の制約を超えて成長を続けるにはイノベーションにつながる発想が欠かせない。日本は高い付加価値を生み出せる人材の育成で世界に後れを取る。博士号の取得者は欧米の半分以下の水準にとどまる。未来への投資を怠れば停滞は避けられない。国の成長の礎となる教育・研究の針路を探りなおす必要がある。

 「日本の教育をどう改善するか,考えてほしい」。2021年のノーベル物理学賞を受賞する米プリンストン大学の真鍋淑郎上席研究員。授与決定後の〔10月〕5日の記者会見で表情を引き締める場面があった。日本の研究環境について問われ,好奇心にもとづく研究が減っているとも指摘した。

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 自然科学の世界で日本の地盤沈下は顕著だ。研究者の間で引用される回数が上位1%の「トップ論文」のシェアはわずか2%(2017~19年平均)。国別の順位は20年前の4位から9位に下がった。

 産業界でもイノベーションを担える先端人材が乏しい。付加価値をもたらす働き手が増えなければ生産性や賃金を押し上げる力は高まらず,成長の道筋はかすむ。

 経済産業省によると,IT(情報技術)でもとくに付加価値の高い人工知能(AI)などを専門とする人材は,2030年に27万人以上不足する見通しだ。科学や数学など「STEM」と総称される分野の教育を受けた人がそもそも少ない問題もある。

 補注)STEMとはアメリカに発祥の言葉であり,Science(科学),Technology(技術),Engineering(工学),Mathematics(数学)の頭文字をとって「ステム」と呼んだもの。

 米国は大学院で最先端のテクノロジーを学んだ若者の力をビジネスに活かす太い流れができている。米スタンフォード大学の報告書によると,2019年に北米でAI研究の博士号を取得した人の66%は産業界に進んだ。割合は2010年時点の44%から急上昇した。

 世界ではデジタル時代のつぎの扉を開く「量子革命」の競争が激化している。原理的にスーパーコンピューターをはるかにしのぐ計算能力をもつ量子コンピューターや,安全性のきわめて高い量子暗号通信などが主戦場だ。米国では関連の新興企業の上場や資金調達のニュースが相次ぐ。

 横浜国立大学の堀切智之准教授は量子暗号通信のスタートアップ,LQUOM(ルクオム,横浜市)を2020年に立ち上げ,テクニカルアドバイザーの立場に就いた。「人材を育てるところから始める必要がある」と危機感を隠さない。

 国内では大学院の博士号の取得者が2006年度をピークに減っている。直近の2018年度は人口100万人当たり120人(人文・社会科学系を含む)と米英独の半分以下。優れた頭脳の育成を競う世界の潮流に逆行してきた。

 若手研究者の多くは不安定な任期付きポストに就く。限られた期間で成果を求められ,大胆な研究に挑戦する気風は失われた。閉塞感が強まり,野心的な研究を志す若者が減る。悪循環がとまらない。(関連の画像は上段にまとめて前掲してあった)

 経済的な後押しも乏しい。内閣府が2020年にまとめた調査結果によると,米国では博士課程の学生の9割が大学や国からの支援を受けていた。日本は4割弱にとどまる。年間の平均受給額も米国の270万円強に対し,日本は約78万円だった。

 日本の教育に対する財政支出国内総生産(GDP)比で3.0%にとどまる。経済協力開発機構OECD)加盟国平均の4.4%を下回り,比較可能な38カ国でもっともも低い。初等・中等教育向け,高等教育向けのいずれも大きく見劣りする。

 2013年に安倍晋三政権で始まった教育再生実行会議は9月に廃止が決まった。入試改革が頓挫するなど,教育・研究の環境整備は迷走も目立つのが実情だ。

 岸田文雄首相は〔10月〕8日の所信表明演説で「成長戦略の第一の柱は科学技術立国の実現」と訴えた。立憲民主党も政策集に「研究開発のあり方を質量ともに変革」と盛りこんだ。しかし具体論も含む政策論争には発展していない。国の基盤となる人材育成の骨太な戦略はみえないままだ。(引用終わり)

 この最後の文言,「国の基盤となる人材育成の骨太な戦略はみえないままだ」という表現は悲観的である。本ブログ筆者は日本は後進国「化」してきたし,その仲間入りしたかのような大学における高等教育の疲弊・衰退を心配してきた。

 以上の記事に書かれている中身には,そうなるべくしてなったというほかない,日本国の文部科学省(など)の〈基本姿勢〉や〈科学技術の思想〉がうかがえた。

【参考記事】

 

  日本の大学,そのあれこれを考えてみる

   1)「『Wedge  (ウェッジ)2020年8月号「【特集】大学はこんなにいらない 」WEDGE Infinity』2020年8月3日,https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20237 の議論

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 a) 政府は新型コロナウイルスにより経済的な影響を受けている学生への支援を進め,独自に授業料減免をおこなった大学等への助成もおこなう。意欲ある学生の学びの機会が失われないよう,今後も早急な対応が求められる。

 ただ,こうした緊急支援とは異なり,今後将来にわたり現在のかたちのまま全国に大学を残して運営し,そこに税金を投入するとのあり方は,国民的な議論が必要だ。

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 1990年には約200万人いた18歳人口は,2020年には約116万人と,約4割減少した。一方で,大学の総数は507から786(2019年度)へと,約5割増加している(上図)。人口減少の局面にありながら,〔ところが〕いまだに大学は「増殖」している。

 補注1)この「大学は増殖している」事実は,とくに私立大学にまつわる問題である。日本の私大のうち同族経営が占める割合が非常に高い。このあたりの問題については最近作がちょうど公刊されている。つぎの本を紹介しておく。

    ジェレミー・ブレーデン&ロジャーグッドマン,石澤麻子訳『日本の私立大学はなぜ生き残るのか―人口減少社会と同族経営:1992-2030』中央公論新社,2021年9月。

 

 本書の「内容説明」……2010年代半ば,日本では,大学の「2018年問題」がさまざまに議論されていた。18歳人口の減少によって,日本の弱小私立大学はつぎつぎと経営破綻すると予想されたのだ。しかし,日本の私立大学の数は逆に増えている。なぜなのか。著者たちは人類学者ならではのフィールドワークとデータの分析によってその謎に迫る。導き出されたのは,そのレジリエンスと「同族経営」の実態であり,内側からはみえにくい日本社会の本質でもあった。

 補記)レジリエンス(resilience)とは,「回復力」「弾性(しなやかさ)」を意味する英語。

 

 著者たちは人類学者ならではのフィールドワークとデータの分析によってその謎に迫っていく。導き出されたのは,日本独自の「同族経営」の実態であり,それは私立大学のみならず,日本社会の本質をも炙り出している。他に例をみない私立大学論であり,卓抜な日本社会論ともなっている。オクスフォード大学教授・苅谷剛彦氏による解説を付す。

 

 「目  次」

  序 章 「2018年問題」
  第1章 予想されていた私立高等教育システムの崩壊
  第2章 日本の私立大学を比較の視点から見る
  第3章 ある大学の危機―MGU:1992-2007
  第4章 法科大学院とその他の改革―MGU:2008-2018
  第5章 日本の私立大学のレジリエンス
  第6章 同族ビジネスとしての私立大学

 

 「著者等紹介」

  ブレーデン,ジェレミー[Breaden,Jeremy]……豪モナッシュ大学准教授。1973年生まれ,メルボルン大学人文学部・法学部卒業,同大学博士号取得(人文学)。専門は日本の教育・雇用システム。

  グッドマン,ロジャー[グッドマン,ロジャー] [Goodman,Roger]……オックスフォード大学日産現代日本研究所教授。1960年生まれ,英国エセックス州出身,ダーラム大学人類学社会学部卒業,オックスフォード大学博士号取得(社会人類学)。専門は日本の社会福祉政策,高等教育。

 補注2)日本の大学生(とくに学部)がいかに勉強しないかという現実的な話題については,「日本の大学 vs 海外の大学『なぜ日本の大学生は,世界でいちばん勉強しないのか?』を読んで受けた衝撃」『live Colorfully』2019年12月24日,https://www.live-colorfully.com/entry/japan-vs-abroad  を参照されたい。

 ともかく「日本の大学生は世界のなかで一番勉強をしない」などと決まっているとなれば,この問題も大問題であるはずである。しかし,この問題を真正面から本格的に論じる学術書に接したことがない。教養書としてとりあげ議論する本がけっこうな数あるが,社会科学的に解明し,人文科学的に思考している論著はみつからない。 

 上の,題名になかに「襲撃」を入れていた論者は,実体験をもとに長々と語っていたが,そのなかからつぎの段落のみ参照しておく。なお〔 〕内補足は引用者。

 〔日本の大学で〕私立は,はっきりいえば商売なので,生徒〔の親〕から入ってくる学費を確保するために “必要” なのかもしれない。だが,海外でそんなことをすると,大学や教授の評判が落ちるだけであり,そうはいかない。やる気のない生徒は容赦なく落とされるし,もう無理だと思った時点で自分から辞めていく場合もある。

 

 非常に残念だと感じたのは,いわゆる早慶上智やMARCHと呼称される名門大学でも,そういった授業がなくはない点である。日本の大学生だって,あれだけ勉強してきて大学に入っているわけなので,賢い人が多いはずなのに,なぜ勉強しないのか

 

 その理由は,簡潔かつ的確にいえば,日本の大学生がだらしないからではなく,構造的な問題とみるほかなく,日本の大学では勉強に力を入れる必要,利点がない。

〔『Wedge』の記事に戻る  ↓  〕

 国立大学は,各都道府県に1校以上設置され,現在86校ある。この数は2008年以降変わっておらず,定員数もこの15年で約1%しか減少していない。他方, “増殖中” なのが公立大学だ。1989年には39校だったが,2006年には国立大の数を上回り,現在全国に93と,一部統合はあったがこの30年で2倍以上に増えた。 

 公立大学自治体が設置し,学生からの授業料のほか,地方公共団体から運営費交付金が拠出される。原資が地方交付税のため,直接的にはその自治体の懐が痛まないことから,最近では定員割れの私立大学が公立化し,結果的に志願倍率が高まる事例が相次いでいる。

 ある大学関係者は「公立大学自治体が設置し,地方交付税総務省が管理する。文部科学省としては国立大の設置と違い口出しすることもないので,結果的に数ばかり増えたのでは」と指摘する。

 それだけではない。私立大学も新設が進む。だが,約600ある大学のうち,約3割が定員割れしている。また赤字経営の大学も約4割にのぼる。

 私立大の収入は学生からの授業料が主だが,私学助成金というかたちで国から補助金が支給され,総額は毎年約3000億円。定員割れ大学の方が補助金への依存度が高い。

 経営維持のために入学のレベルを下げてまで学生を集め,一方で優秀な教員が集まりにくくなるなど,教育の質の低下も懸念される。

 b) 20年後の地方大に目立つ “空き” 「1県1大学」固執の限界

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 20年後〔この記述では2040年〕には,日本の18歳人口は88万人にまで減少する。文科省が2018年に推計した40年度の入学定員充足率は,とくに地方部で大きく低下する試算だ。

 補注)なお2020年における出生数は84万人であり,2021年以降はコロナ過の影響もあってさらに落ちこむ見通しである。したがって,2040年度の大学受験生となる18歳人口は2012年度に生まれる年齢層となるゆえ,実際に2040年度になった時におけるその18歳人口は,75万人近くまで低下すると予測されてよい。

 国公私の入学者の割合は青森,岩手,秋田の東北3県をはじめ,新潟,徳島では70%を切っている(上の表)。たとえば秋田県では,国立70.7%,公立67.6%。私立に至っては56.5%と,充足率が約半分の割合になる。

 地方大学の関係者は「1県に1つ国立大があることで教育機会が均等になる」「若者が地域に残る」と意義を強調する。とはいえ,その県の高校生が自県の大学に進学する割合(自県進学率)をみると,国公私立合わせても和歌山で約11%,鳥取で約13%など,地方の学生の多くが近隣の都市部へと流出している(下の図)。

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 すでに多くの学生が都市圏へ動いている以上,県境を超えた再編統合をしていかなければ地域人材の育成という大義も揺らいでしまう。

 平成の30年〔1989-2019年〕で「増殖」しつづけた大学。これまで文科省は,「ポストドクター等1万人支援計画」「留学生30万人計画」など日本の大学の研究力・国際競争力強化のため数を増やす施策を打ちつづけ,大学のグローバル化やマネジメント強化など「前向きな」改革ばかりを進めてきた。

 他方,18歳人口の減少に歯止めがかからないなか,箱ものばかり増えるアンバランスな現状をどうするか,その改革にはほぼ手を付けずにきた。

 近年「日本人がノーベル賞を取れなくなる」「世界の大学学術ランキングにおける日本の存在感が薄くなっている」などの懸念が高まっている。国際的競争力を強化すべく,限られた資源をできるだけ研究に回し,競争力を備えた大学への支援を強化するなど,資金を戦略的に振り分ける必要がある。

 補注)ところで,2021年のノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎(しゅくろう)・米プリンストン大学上席研究員(90歳)は,こう発言し,話題を呼んだ。

 米国籍をもつ真鍋氏は,受賞後の会見で「日本に戻りたくない理由の一つは,周囲に同調して生きる能力がないからです」と発言したのである。日本の大学に一番欠けている,それも非常に重要な背景(基本的な欠陥?)を遠慮なく指摘していた。

 そのためには,18歳人口減少下における大学の存在意義の見直しが急務だ。このままのかたちで大学を残すのではなく,国公立大の県の枠組みを越えた再編統合や定員の減枠,定員割れの続く赤字私大の市場撤退の促進など,質を高めながら量的規模を縮小し,浮いたコストを少しでも教育の質の向上に付与する必要がある。

 c) 縮小一途の教育財政  再編統合加速させる制度を

 大学の適正規模はどうあるべきか。小誌の取材に対し,国公私立問わず多くの大学関係者は異口同音に「明らかに数が多いと感じる」と答えた。だが「立場上それを表立っていうことができない」という声も聞かれた。

 文科省の担当者も「将来的な定員削減など規模の適正化が必要」としながら「国立だけ定員を縮小すれば,学生の選択肢のバランスが崩れる。公立,私立とともに歩調を合わせる必要があるが,あくまで公立は自治体,私立はその法人と,設置者の判断が優先される。現在の制度ではわれわれはそこに踏みこむのはむずかしい」と話す。

 補注)この国家側,文部科学省側のいいぶんは遁辞である。少なくとも,安倍晋三前々政権から菅 義偉前政権までの専制的独裁志向の内政を想起するに,本気で大学改革をやる気であったのであれば,以上に指摘されてきたような問題など,一気に着手でき,解決めざして方向付けをすることは可能であった。民間企業の経営・運営にじかに口出しや手出しをするのとは,まったく異質の課題である。

 安倍晋三や菅 義偉という首相は,学術会議には裏から口出しし,その任命人事に容喙しても,日本における大学体制がすでに水ぶくれ体質であり,とくに私立大学の肥大化,公立大学の無秩序な新・増・改設(これは私大の編成替えのこと)は,実質的にまるまる放置状態にしてきた。

 だが,国立大学に対する指導は絶対的な力関係のもとで,強権的に実施してきた。この実績に照らしても,日本の大学全体として高等教育体制問題を抜本から手をつけないでいる文部科学省側の〈逃げの姿勢〉は,理解に苦しむところである。

〔記事に戻る→〕 だが,現実を直視すれば,いまこそ国は各大学とも連携しながら量的規模の縮小を円滑に進める法整備など,今後の方針を示すべきだろう。定員に満たない国立大や赤字私立大の運営,法人解散後の処理など,「現状放置」の先にある “リスク” のツケを払わされるのは国民である。

 d)Wedge』〔2020年〕8月号では,大学の再編に関してさまざまな分野の話題についてレポートする。PART2では,定員割れする地方の私立大学に税金が投入され,公立化という「延命」が図られる現場に迫る。

 『Wedge』8月号では,以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店,アマゾンなどでお買い求めいただけます。

 

 ▲  大学はこんなにいらない

  Part 1 日本の研究力向上に必要な大学の「規模」の見直し

  Part 2 経営難私大の公立化にみる “延命策” の懸念

  Part 3 進むのか 国立大学の再編統合

  Part 4 動き出した県を越えた再編 まだ見えぬ「効率化」へのビジョン

  Part 5 苦しむ私大3割が定員割れ  延命から撤退への転換を

  Column 地方創生狙った「定員厳格化」 皮肉にも中小私大の “慈雨” に

 以上のように議論されうる「日本の大学問題」であるが,要は量的にも質的にも問題がありすぎる。すなわち「大学としての存在意義が根底から問われている」現状が,以前から積みこまれてきた「何重層にもなった問題」となって,継続的に意識されてきてはいる。だが,いまだに,その根本からの徹底的なリストラ(全国大学の再編成)が企図されようとする気配がうかがえない。

 当然,その全体的な責任部署は文部科学省である。だが,この文部科学省が,経費節減をやりやすい対象として,それこそ血祭りに上げてきたのが,国立大学であった。すでにそれまで,相当程度にまで疲弊させられてきた国立大学に固有であった「従来の不利点」を,真摯に反省し,抜本から救済してきたわけではない。

 安倍晋三は首相の時期,自分の主観によれば得意だったらしいが,実際は「本当に下手くそな外交」をしかも数多くこなしてきた。この「世襲政治屋のボクちん」は,外遊するたびに海外諸国に対して,ODA援助などの名目で日本の予算をばらまいてきた(キックバック〔3%が相場〕をえるのが彼のその目的だったとの指摘もある)なかで,その100兆円にも上ぼった「われわれの血税」のそのほんのわずかでもよかったから,高等教育体制問題の改善のために充てていれば,以上までに記述してみた問題の大部分は解決するための前提条件を付与されていたかもしれない。

 なかんずく,「知性と教養」ではない「痴性と狂気」ばかりが優れていた安倍晋三のような宰相の立場は,しかももともと,大学時代はろくに勉強に集中することもせず,父親晋太郎の後ろ姿に学ぶこともしてこなかった4流世襲政治屋であったからこそ,高等教育体制に関した日本的な問題に対して,世界的な視野に立って取り組むという意識すらもちあわせていなかった。

 また「岸田文雄という幽霊」の背後霊:安倍晋三は,防衛費(従来の基準枠,GDP比率1%)を2倍にするなどと,あの化粧のオバケみたいな高市早苗に代弁させているが,日本の国家予算に余裕(?)というかスキマ的なそのたぐいの原資がみいだせるならば,まずなによりも教育予算に大幅にそれをまわして活かすことが先である。

 大学問題,とくに高等教育体制問題としての議論をするとなれば,何回も記述を重ねていかねば満足な議論はできない。だが,今日のところは,『WEDGE』2020年8月号の「Column 地方創生狙った『定員厳格化』 皮肉にも中小私大の “慈雨” に」なったという話題に関してのみ,つぎの ③ にとりあげてみたい。

 

   定員厳格化の実際的な効果

 「【文科省通知】私立大の入学定員管理強化,超過ペナルティ措置は3年間見送り」『NETWORK NEWS』2018年9月,http://www.networknews.jp/index.php/News/Education/archives/15 が,当時(3年前)にこう語っていた。

 文科省は〔2018年〕9月11日付で,日本私立学校振興・共済事業団理事長に宛て,「平成31〔2019〕年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について」の通知(※)を出した。

 この※については,以下の住所(リンク)を参照されたい。

 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/__icsFiles/afieldfile/2018/09/19/1409177.pdf

 同省のホームページによれば,入学定員充足率が1.0倍を超えたさいに学生経費相当額を減額するペナルティ措置は,当面実施を見送り,3年後をめどに実施か否かを再検討する,とした。定員を上回る入学生が1人でもいたら,その人数に応じて私学助成金を減らす予定だったが,すでにおこなっている管理強化で一定の効果が上がっていると判断した。

 文科省は収容定員8000人以上の大規模大学を中心に定員管理の厳格化を2016年度から段階的に進めており,大規模大は今〔2018〕年度からは入学者が定員の1.10倍以上になった場合,助成金をゼロにしている。

 この結果,定員割れをする小規模大は減ったが,当初の合格者数を絞って追加合格を出す大規模大が相次ぎ,受験生に混乱が広がっていた。文科省はこうした状況を考慮し,3年間は今年度と同じ基準を続けたうえで,あらためて効果などを検証することにした。

 この文部科学省の指導の結果は,つぎのように報道されていた。

       ★ 私大入学100%割れ 今〔2021〕年度,コロナ禍背景か ★
       =『朝日新聞』2021年10月4日朝刊3面 =

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 私立大全体の入学定員に対する今年度の入学者数の割合は99.81%で,調査開始以来,初めて100%を割ったことが日本私立学校振興・共済事業団の調査で分かった。歯止めのかからない少子化や,コロナ禍による家庭の経済状況の悪化などが背景にある。

 調査は1999年度から実施・公表され,今年度は私立大597校から回答をえた。全体の定員数(49万5162人)に対する入学者数(49万4213人)の割合(入学定員充足率)は,前年度(102.61%)から2.8ポイント低下。調査開始以来,初めて100%を割りこんだ。

 補注)2018年⇒2019年⇒2020年と私立大学の定員充足率がなんとか維持されたのは,以上に言及された文部科学省の「定員厳格化」の措置があったからである。しかし,18歳人口の低減傾向はこれからも続くゆえ,そうした厳格化の措置だけでは,一時的な弥縫策にしかなりえない。この点はこの上の図表からも感得できる。

〔記事に戻る→〕 入学定員充足率が100%を下回り,定員割れした大学は前年度から93校増えて277校。回答した大学の46%に達した。

 私立大の延べ志願者数は前年度から53万3千人(12.2%)減って383万4千人。減少幅は前年度より11ポイントも広がり,落ちこみが大きい。

 補注)いわゆる,昔からいわれていた「大学冬の時代の到来」を踏まえてだったが,文部科学省はいちおう “なにやかや” 対策は打ってきた。といっても,その時代が本格的に到来する時期を先送りにするための工夫ばかりをしてきた。

 けれども,つまり,一方で「18歳人口」の減少は以前から変わらぬ趨勢であるのに対して,他方で,たいして減りもしない私立大学と,少しずつだが確実に増えてきた公立大学を念頭に置いて考えれば,「私立大学が全数(総数)」として「定員割れの事態」を迎えていく今後は,事実としてきわめてはっきり展望できていた。

 その傾向・趨勢は,基本の潮流を正直に反映しており,これからもさらにきびしく迫ってくる。日本の大学の問題はとくに私立大学を中心に,学生の勉強に関してはその質的な水準と中身が,以前から大問題であった。この大問題は,とりわけ非一流大学における学生の資質(学力・実力・能力)の低い水準に規定されざるをえなかった。

 非一流大学ではない2・3流大学にあっては,実質,全入状態になっていた「大学受験戦線」の実情に照らしていうが,その教育現場では「中学生でも出来の悪い程度」の「それでも本当の大学生(!?)」を相手にして,「大学の講義や演習・実験」を指導しなければならない大学が,実際に多々存在する。この種の大学がいままでもなお淘汰されることがないまま,サバイバルだけはできている。

 もとより,そのような非一流大学に “大学としての存在価値” などみいだせるわけもなかった。だが,それでもネコも杓子も大学に進学する(しなければ)という風潮は,いまでもまだ根強く残っている。

 だが,すでに後進国化した日本の現状のなかで,18歳になった若者たちがともかくどの大学でもいいからいきたいと進路を希望したところで,彼らの保護者の経済状況に鑑みる時,そう簡単には大学への進学を許さない「困窮した家計」になっている場合が多い。

 次回につづく「本稿(その2)」は,そうした大学進学のためにかかる経費の問題を取り上げる方途でもって,さらに日本の大学問題を本質面から分析してみたい。

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