日本における大学生向け奨学金制度が貧困な水準にある実情,なぜ給付型奨学金が日本では普及していないのか?

 日本における大学生用の奨学金制度は「給付型奨学金」を基本として規定(=観念)されていない,生活保護政策の一環であるような位置づけしか与えようとしていない,この国における「文教政策のいちじるしい思想の貧困」が目立つ,そして,既存の国立大学学生向けの授業料減免制度を覆い隠すごとき「修学支援制度」が新たに設置されていたが,その選択に迷う国立大学生もいる現状

 高等教育体制における奨学金制度は,それも給付型を最初から重視しておらず,社会保障としては生活保護的な思想さえ感じさせる「就学支援制度」となれば,文字どおりに純粋な奨学金ではありえず,低所得の貧困層にかぎって「大学への進学をいくらかは支援するための制度」に留まっているのであって,高等教育段階において設置し運用するのにふさわしい制度ではない


 「知ってる?」『Money Motto!』2021年3月3日,https://news.hoken-mammoth.jp/menjo/ から

 本日のこの記述の前提になる「予備知識」として,既存であったこの「国公立大学の授業料免除制度」について,さきに説明しておきたい。

 a) 近年,教育格差や奨学金の返済などが社会問題化している。経済的な理由で大学進学を断念したり,卒業後の奨学金の返済が重荷となったりするケースが少なくないのである。

 政府はこのような現状から,2020年4月に「高等教育の修学支援新制度」(通称「大学無償化」)をスタートさせた。しかし,この制度は国公立,私立すべての大学に適用されるものの,条件がきびしく対象者が限定されている。

 一方で各国立大学では独自に授業料免除制度を設けており国公立大学に進学した学生は,こちらを活用する選択もある。

 経済的な理由があっても大学に通える制度として,国公立大学独自の授業料免除制度は,どういった中身なのか。その選考基準を満たせば,授業料の全額または半額(大学によっては1 / 3,1 / 4もあり)が免除になる。

 b) 国公立大学と学費  国立大学は,国立大学法人が設置・運営している大学であり,国の一般会計から運営費交付金が支給されるため,私立大学に比べて学費が安くなっている。公立大学は,公立大学法人地方自治体が設置・運営をおこなっている。

 補注)国立大学の授業料など “入学に要する納付金” が,私立大学よりも本当に安いかといえば,このように簡単にはいえない。世界各国の大学ともよく比較検討して表現すべきものである。

 また,授業料などが高くても,奨学金のそれも給付型が整備・充実している国であれば,その「高い」か「安い」という点の比較は,かなり相対的に幅をもたせて解釈する余地も大きく生じるゆえ,そう簡単に並べて比較するわけにはいかない。

 日本の場合,先進国〔のつもり〕である「この国」として観る時,授業料は高いし,給付型の奨学金制度は,もちろんないわけではないが,その大部分は貸与型である。しかも,日本を代表する奨学・育英機関である日本学生支援機構は,エグイ事業を展開しており,学生の未来への進路を支援し助力するだけではなく,妨害している始末を招来させてもいる。

 この機構は利子付きの貸与型奨学金まで設置し,実際に運営している。しかもその原資は金融筋から調達し,返還もしつつの「貸与型の奨学金制度の運用」だとなれば,どういう方針をとらざるをえないかは,おおよそ高がしれている。

 貸与型の奨学金というものは,純粋の意味でいえば “奨学金として本来の性格” を数段薄めた教育効果的な意義しか発揮しえない。

 たとえば,岩重佳治『「奨学金」地獄』小学館,2017年と題した本が公刊されていた。本書の宣伝文書は,こう解説している。著者は弁護士である。

 

 ★-1 出版社内容情報

 しらずにはすまされない奨学金の実態。いまや大学生の2人に1人は奨学金利用者です。その背景には,格差や貧困の拡大で親の経済的援助を受けられない学生の急増と,学費の高騰があります。

 

 国立大学の年間授業料は,1971年が1万2000円だったのに対し,昨年度は約54万円,初年度納付金は80万円を超えます。多くの学生は奨学金を借り,生活のためにバイトに明け暮れ,そして数百万円の借金(奨学金)を抱えて卒業するのです。

 

 しかし,いまは3人に1人は非正規雇用という時代です。生活するのさえ苦しく,奨学金を返したくても返せない人が増えています。一方,2004年に日本育英会から変わった日本学生支援機構奨学金制度は,金融事業になってしまいました。

 

 返済が3ヶ月滞ると金融機関の「ブラックリスト」に入ります。4ヶ月滞納で「サービサー」と呼ばれる債権回収会社の回収が始まり,9ヶ月で裁判所を通じた支払督促がきます。中高年の人の記憶にある,育英会時代ののどかな奨学金とは別物なのです。

 

 本書は,返済苦にもがいている人の実例をもとに,いまの奨学金制度が抱えている問題点,返済に困った時の救済手段などを,長年この問題に取り組んできた弁護士である著者が詳細に解説します。

 

 ★-2 編集担当からのおすすめ情報

 この企画にあたり,実際に奨学金の返済に困っている方々や関係者に取材をさせていただきました。共通しているのは,返済しなくてはいけないという強い責任感です。そのために,就職した会社の給料ではまかなえず風俗で働く人がいます。

 

 「自分が返さないとつぎの若者が借りられなくなる」と過酷な労働の会社で働きつづけ,過労のため事故死してしまった人がいます。

 

 借りたものを返すのは当たりまえです。しかし,3人に1人が非正規雇用といういまの社会のなかで,就職に失敗する,リストラされる,あるいは病気になって収入がえられなくなるなどは,誰にでも起こりうることだと思います。

 

 格差社会のなかで苦悩する人びとの現実と,昔と違う,奨学金を取り巻く現在の状況をしっていただければと思います。

 

 ★-3 内容説明 -繰り返しになるが,あえてこの項目も紹介しておく「★-1と★-2」の要約的な説明である-

 貧困や格差の拡大と高騰した学費の影響で奨学金を借りる人は増えつづけ,大学生の5割以上が利用者だ。彼らは卒業時点で数百万円の借金を背負うが,非正規雇用などの低賃金・不安定労働に就かざるをえず,返せない人が増えている。

 

 一方,日本育英会から引き継がれた日本学生支援機構奨学金制度は金融事業になり,返済困難な人にも苛酷な取り立てがおこなわれる。生活苦と返済苦にあえぐ人びとの実態,制度の問題点と救済策を明らかにする。


 ★-4 目  次

  第1章 貧困社会と奨学金の落とし穴

  第2章 多発する返済トラブル

  第3章 高校と大学の現場から

  第4章 「奨学金」という名の学生ローン

  第5章 奨学金ローン返済の手引きと,救済の手立て

  第6章 制度の改善と今後の課題

 

〔ここで ① の本文・記事に戻る  ↓  〕

 1) 2020年度の国立大学(一部を除く)の受験料・学費は以下のとおりである。

  受験料    17,000円
  入学金    282,000円
  授業料    535,800円
  初年度納入金 817,800円

   ※  大学によって設備/実習/諸会費等,後援会費などがかかる
   ※  公立大学の受験料・学費は国立大学に準じるが,入学者の住所によって入学金の額が変わる

 国立大学に通う場合,4年間にかかる学費は240万円を超える。これはけっして少ない金額ではない。

 補注)前段に言及されていた事実であるが,昔,国立大学は授業料が1月分=1000円の時代が長くつづいた。今風に簡単にいいかえると,1月分が1万円(もっと低く5千円?)くらいに換算したらよいかもしれず,負担感としては非常に軽かった。

 その程度の金額であれば,そもそも無償(タダ)にしてもいい水準であった。多少は払ってもらうよ,授業料というものがあるんだよ,という程度の負担でしかなかった。

 国立大学の場合の,文系・理系によって授業料の差がない点(この点は現在も同じ)も比較の材料となるせいもあってなのだが,私立大学に入学した学生のほうの世帯・家庭の負担感は,とても大きく重たく感じられる。この点はいまでも変わらぬ事実である。

 ところで,国立大学の授業料が1月分:1000円を払う「月謝だった」時代すでに,国立大学においては授業料の減免制度があった。また教員になった国立大学の卒業生は,日本育英会日本学生支援機構の前身)から借りた奨学金の返済を免除された。ただし,この教員向けの特免制度は,以前に廃止されていた。

 以上の点に触れただけでも,日本の大学史のその後において,入学する学生に対して「授業料など納付金の〈値上げ〉」を,国立大学がわざわざ私立大学の水準をにらみながら,これに後追い的に相対的にだが合わせるかのようにして,絶対額においてもじわじわと値上げしてきた。文部科学省はそうした「まことに愚かな文教政策」を敢行してきた。

 すなわち,私立大学の水準をにらみこれに合わせるかのようにして,国立大学のほうの授業料が,前段の意味でのように相対的にも絶対的にも値上げをしていくといった方針や手順は,ただちに「愚策」だと形容するほかなかった。

 それとは逆に,つまり「学生側,この世帯・家庭の側」にとってもつ大学進学という出来事が,もっとも好ましいかたちで,つまりなるべく負担の少ない条件で実現できるようにするためには,文教政策の一貫として公的な扶助としての教育制度が,どのように整備されるべきかという点が,当然のことだが,私立大学のあり方も含めたかたちで「総合的に再検討」され,その「根幹から再設計」されておく必要があった。

 2) ところが,そうした問題意識じたいがいまの文部科学省の立場にはあっては,「一国の〈百年の大計〉」であるはずの,とくに高等教育段階における奨学金制度に関して,不在であった。日本においては,その程度にまで貧相な文教思想しか準備されておらず,奨学金のあり方についての確かな思想の欠落が問題になっていた。

 民間の育英・奨学財団では貸与型奨学金ではなく,給付型奨学金で事業を運営しているところが多くある。だが,それらの全体的な規模は日本学生支援機構の比ではない。

 そのなかにあっては,高等教育体制段階における奨学金制度がいつまでも貸与型を主軸に続行され,この貸与型である奨学金制度のために,「日本の労働社会」とか「日本の産業社会」とかいう次元にまでつらなる問題点を解消できないでいる。

 「〈日本の社会〉全体そのもの国力」の問題にかかわって結果させられていた特定の問題,すなわち「国力の基礎」のひとつなるはずの「個々人としての労働力」の社会経済的な育成が,この国のなかでは大幅にそがれてきた。

  以下は,① の記述(引用・参照)の続き(となる文章)であるが,ここでいちおう ② として区切ったかたちで構成している。

 

  国公立大学の授業料免除制度

 国公立大学には授業料免除制度があり,経済的な理由によって授業料の納付が困難で,かつ,学業優秀と認められる学生は,授業料の納付が免除される。

 各大学とも,家計と学力による基準が設けられているが,それほどきびしいものではない。たとえば,金沢大学(学部・学類  平成26〔2014〕年度前期実績)を例にとると,申請者の85.8%が授業料の全額または半額の免除を受けていた。

 そのほか,他の国立大学でもつぎのような減免制度が置かれている。

  東京大学  授業料の全額または半額免除

  京都大学  授業料の全額または半額免除

  東北大学  授業料の全額,半額または3分の1の額の免除

  北海道大学 授業料の全額,半額または4分の1の額の免除

  金沢大学  授業料の全額,半額または一部の免除

 新型コロナウイルスの影響で授業料の支払いが困難な学生の方向けに,授業料減免や納付期限延長などの特別措置を設けている国公立大学もある。

 このように,どの国公立大学であっても授業料減免制度が存在している。経済的な理由で進学や受験をあきらめずに,積極的に制度を利用するとよい。(ここで ① から ② まど通しての引用はひとまず終わり)

 国立大学ではこのように,低所得である世帯や家庭にある学生に対しては,以前からそれなりに授業料をきちんと減免する制度を置いていた。ところが,そこへ新しくくわわっていた関連の制度があった。こちらの制度のその後について,本日:2021年10月25日の『朝日新聞』朝刊があらためて,つぎのように報じていた。

 

 「〈2021 衆院選  課題の現場から)380万円,教育支援の崖 年収基準超すと一気にゼロ」朝日新聞』2021年10月25日朝刊31面「社会」

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 衆院選のたびに,各党が競って打ち出す教育支援策。そもそも,いまの制度は本当に支援を必要とする層に届いているのか。支援の網からこぼれ落ちる中間層が政治に望むことは。

 「つぎは非課税から外れると思う」。大学2年,高校3年,中学3年の3人の娘がいる新潟市の女性(51歳)は今〔2021年〕夏,派遣社員の夫(54歳)からそう告げられた。夫の年収は300万円ほど。いままでは住民税を納めなくてよい住民税非課税世帯で,さまざまな公的支援を受けられたが,給料が少し上がり,来〔2022〕年度からは支援の対象から外れる。そんな説明だった。

 夫は10年ほど前に大病を患い,正社員として働けなくなった。以来,一家で夫の実家に住む。次女と三女は学用品費の補助,長女は修学支援制度など,国や自治体による住民税非課税世帯が主な対象の支援を受けながら通学。女性もフランチャイズの学習塾を経営して年に50万円ほど稼ぎ,なんとかやりくりしてきた。

 いま,不安なのは教育費だ。浪人して地元の国立大に進学した長女は,来〔2022〕年度から国の給付型奨学金や授業料減免を受けられないか,支援額が減るかもしれない。国公立大進学をめざす受験生の次女も同じ状況になるかも。制度を調べた結果,そう覚悟した。

 補注)ここまでの記事が示唆するのは,奨学金の問題〔とこれに関連する諸制度〕がとくに,低所得の水準にある世帯・家庭に関連づけられていた事実である。学生の世帯・家庭がある程度,たとえば,ここでの話となれば500万円で子どもが3人いる場合であっても,以上に出ている公的支援の支給がはずされるというごとき現実は,日本社会の非常に貧しい「教育に関する思想・理念」を,直截に教えている。

 基本としてこういう仮定話を設定して考えてみたい。その3人の子どもたちが皆成績が優秀で(たとえば上位15%以内)である時,とくに大学生の話の場合,授業料や修学経費も支給されるかたちで,大学に通学できる条件が与えられて当然だという考え方もあって当然である。

 ここで,その15%以内に入る成績とは,1年生に対してならば,たとえば「大学入学共通テスト(大学入試センターセンター試験)」でもいいし,2年生以降ならば1年時の学業成績に拠っていい。

 大学に進学しようとする生徒がそれだけの好成績を上げられるのであれば,これを判断基準に使い,奨学金制度の網をかけて支援する制度があっていいはずである。ただし,ここでは学生の世帯・家庭の年収水準はいっさい問わないでいいとする判断も,合わせて適用する制度の運用を考えている。

〔記事に戻る→〕 「ちょっと実入りが増えただけで,負担がすごく大きくなる。対象から外れたら急になにもなくなるのではなく,収入に見合ったきめ細かい支援をしてほしい」。

 大学などの授業料減免と,返済しなくていい給付型奨学金の2つを柱とする修学支援制度は,10%への消費増税による増収分の一部を財源に,昨〔2021〕年度から始まった。2017年の衆院選安倍晋三首相(当時)が「高等教育の無償化」として打ち出し,創設された。私立大の下宿生で,年間で最大約160万円の支援を受けられる(入学金の減免分を除く)。

 補注)消費税はその2割しか社会保障費に充てられていないという「正式なる堂々の国家的ウソ」がまかり通る税制における「実際面」に注目しないまま,以上のごとき説明を聞くとなれば,特定の違和感を抱くほかない。

 ともかくも,国家じたいが用意し,提供すべき高等教育向けの奨学金制度(むろん給付型とするもの)の不備・不足が,この日本では目立つ。

 この問題に関連しては,大学に在籍する学生比率が,およそ「私立大学の比率が7割5分」「公立大学の比率が5分」「国立大学の比率が2割」である内訳が看過できない。

 私大の授業料はとても高いのだが,これに追随(!)するかのようにして国大も,一定の金額の差(間隔)は保ちながらも,同期させるかのようにして授業料を逐次的に上げてきた。

〔記事に戻る→〕 ただ,全額の支援を受けられるのは「両親,本人,中学生の4人世帯」の場合,年収約270万円未満の住民税非課税世帯に限られる。年収が380万円を超えると支援はない。(前掲の表を参照)

 また,もともと各大学には授業料の減免制度があり,国公立大の多くは,全額免除とする年収基準が修学支援制度より高かった。そのため,修学支援制度の導入前なら支援を受けられた学生が,新制度導入後の入学では支援の対象にならない事態が起きている

 ※-1 コロナ禍により,公的支援の対象でなかった学生が困窮するケースも相次ぐ

 高等教育無償化を求める学生団体「FREE」が今〔2021〕年4~7月に実施し,約400人の学生が回答したアンケートでは,コロナでバイト収入が減った人が約4割,保護者の収入が減った人は約3割に上った。また,約2割が,修学支援制度の利用を希望したが,対象外になるなどして利用できなかったと回答した。

 「授業料などの負担軽減策を衆院選の主要論点にすべきだ」。FREEの学生たちは今〔10〕月21日に文部科学省で会見し,訴えた。その1人で慶応大2年の女子学生は,世帯年収が800万円ほどあるが,大学受験生の妹がいて家計に余裕はない。授業よりバイトを優先させる日々だ。「高等教育は無償化された,とかかげる政党もあるが,要件がきびしく,対象から外れる人もいる。必要な人に支援が届く制度にしてほしい」と話す。

 補注)年収が800万円ある世帯・家庭であっても,それほど極端ではない実例としてたとえば,2人の子どもが1学年あいだを空けて家族構成の場合,私立大学にこの2人とも進学させるとしたら,現実,これはたいそうな負担になる。もっとも,国立大学でもこのごろはそれほど変わりないといえるが……。

 足かけで最低4年間はその年収のうちの可処分所得から,この子ども2人が大学に通うために充てねばならない金額は,2人とも家から通うにしてもその半分近くにはなる。そもそも年収1000万円あっても「貧乏な生活だ」という記事は,ネット上にはしっかり説明されている。

 なかでも,問題である教育費関係「負担の点」は,年収が日本における「単純の平均年収」(男女間での差が大きいのだが,この点はあえて触れない)である世帯・家庭を想定してみるに,その金額である4百数十万円という賃金水準では,子どもを大学に行かせるという経済的な負担は,相当に重いものとなっている。

 学資保険で大学進学に備えるだとか日本学生支援機構からの貸与型奨学金を支給されて大学に通うというのは,本来であれば国家・為政側が最大限に国民たちに援助の手を差し伸べておこなうべき筋合いに照らして,

 しかも,「住宅・医療・教育」という人生における3大費目に対した国家側による社会保障体制のあり方として,医療(はコロナ過でさんざんフラついてきているが)はともかく,住宅と並んで教育関連が非常に貧弱である。

 税金の使途を介して,そのあたりの社会保障をめぐる課題は,いくらでも改善できる方途がありうる。ところが,現政権はこの実態を改善する意向がほとんどない。消費税を本当に社会保障の領域に向けて,本来どおりまわして活かせば,ただちにあれこれが改善する展望が期待できる。

 だが,自民党公明党の野合政権にはその気がない。公明党ときたら「平和と福祉の党」を自称しているが,もともと偽称であった。

 ※-2 少ない公的支出,対象も狭い日本

 衆院選では,主要各党が修学支援制度の拡充や大学授業料の値下げなどを公約にかかげる。岸田文雄首相も「中間層の拡大」を強調する。しかし,はたしてその恩恵を受けられるのか。ギリギリの生活を送りながら,支援対象からこぼれ落ちる人は少なくない。

 そもそも,日本は以前から高等教育にかかる費用の家計負担割合が高いと指摘されてきた。OECD経済協力開発機構)の2021年版「図表でみる教育」によると,日本の教育機関向け公的支出の対GDP(国内総生産)比は4%で,加盟38カ国の中では下位25%に位置する。また,国公立大学の学士課程の授業料は,データが入手できる国々のなかで5番目に高いと指摘されている。

 補注)この「国公立大学の学士課程の授業料は,データが入手できる国々のなかで5番目に高い」という点は,前段の記述で述べたとおりであり,相当に問題となる事実であった。

 桜美林大学小林雅之教授(教育社会学)は,こうしたなかで,修学支援制度で支援対象が広がったことは「所得の低い家庭の子どもの進学率を上げる一定の効果があった」とするが,「多くの中間層は対象外。複数の党が制度の拡充を主張するのは良いが,財源まで示すべきだ」という。

 また,支援額が変わる年収の区分が3段階しかない点を問題視。「がんばって働いて年収が増えたら,対象から外れて負担が増すという事態も起きる。せめて8段階くらいにすべきだ」と,より幅広い層を支援の対象にするよう求める。(引用終わり)

 以上のように論じてみた「日本における奨学金制度」に固有の不合理性,いいかえれば本来の「育英思想の不在」,つまり「国家百年の大計」と直結させうるための「教育理念の欠落」が,とりわけ顕著であった。

 ここまで記述してきた「日本の奨学金制度」に不可避にまつわる,いってみれば本筋から脱線していた教育「観」の全般については,本ブログはすでに以下の2編--2019年12月28日と2020年3月17日--を公表していた。できればついでに,こちらの記述も読んでほしい。

 こちらのブログは,本日の記述の前提かつ核心になっていた議論をくわしく展開している。その間,1年と10カ月が経過してきたが,具体的に改善されたとみなせる「日本における奨学金制度」はあったかと問われると,否としか答えようがない。

【本ブログ内・関連記述】

 

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